最終更新日: 2026年2月10日(2024年度報酬改定反映済み)
免責事項: 本記事は、障害者総合支援法および関連法令に基づき、障害福祉サービス事業所の開設に必要な情報を整理したものです。法令・通知の改正、自治体独自の運用により内容が変わる可能性があります。実際の申請にあたっては、必ず指定権者(都道府県・政令指定都市・中核市)の窓口で最新情報をご確認ください。本記事の情報に基づく判断・行動によって生じた損害について、筆者は一切の責任を負いません。
障害福祉サービスの全体像
障害福祉サービスは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(障害者総合支援法、平成17年法律第123号)に基づき提供される公的サービスである。利用者は市町村から「障害福祉サービス受給者証」の交付を受け、指定事業所からサービスを利用する仕組みとなっている(同法第19条〜第22条)。
サービス類型の一覧と分類
障害福祉サービスは大きく「自立支援給付」と「地域生活支援事業」に分かれ、自立支援給付はさらに以下のカテゴリに細分化される。
| 分類 | 主なサービス | 概要 |
|---|---|---|
| 訪問系 | 居宅介護(ホームヘルプ)、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援 | 利用者の自宅を訪問して介護・支援を提供 |
| 日中活動系 | 生活介護、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援(A型・B型)、就労定着支援、就労選択支援 | 事業所に通所して訓練・就労・生産活動に参加 |
| 施設系 | 施設入所支援 | 入所施設において夜間の生活支援を提供 |
| 居住支援系 | 共同生活援助(グループホーム)、自立生活援助 | 住まいの場を提供し地域生活を支援 |
| 相談支援系 | 計画相談支援、地域移行支援、地域定着支援 | サービス等利用計画の作成・地域移行の支援 |
なお、2024年4月から新たに「就労選択支援」が創設され(障害者総合支援法第5条第14項)、就労アセスメントの手法を活用して利用者の就労先・働き方の選択を支援する仕組みが加わっている。
指定権者(都道府県 or 市町村)の区分
事業所の指定を行う権限を持つ「指定権者」は、サービスの種類と事業所の所在地によって異なる。
| 指定権者 | 対象サービス |
|---|---|
| 都道府県(政令指定都市・中核市は当該市) | 居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援、生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援(A型・B型)、就労定着支援、就労選択支援、施設入所支援、共同生活援助、自立生活援助、計画相談支援 等 |
| 市町村 | 地域生活支援事業(移動支援、地域活動支援センター、日中一時支援等) |
根拠条文: 障害者総合支援法第36条第1項(都道府県知事の指定)、第29条第1項、第51条の14第1項。
政令指定都市(地方自治法第252条の19)および中核市(同法第252条の22)については、都道府県から権限が移譲されているため、事業所の所在する市が指定権者となる。新規開設を検討する際は、まず事業所所在地の指定権者を確認することが第一歩である。
指定基準の3本柱を類型別に解説
障害福祉サービス事業者の指定を受けるためには、厚生労働省令で定める「人員基準」「設備基準」「運営基準」の3要件を満たす必要がある(障害者総合支援法第36条第3項)。具体的な基準は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第171号、以下「指定基準省令」)に規定されている。
人員基準(サービス管理責任者・支援員等の配置数)
人員基準は、利用者に対して適切な支援を提供するために必要なスタッフの職種・人数・勤務形態を定めたものである。主要なサービス類型別の配置基準は以下のとおりである。
就労系サービスの人員配置基準
| 職種 | 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | 就労移行支援 |
|---|---|---|---|
| 管理者 | 1人(常勤、兼務可) | 1人(常勤、兼務可) | 1人(常勤、兼務可) |
| サービス管理責任者 | 利用者60人以下:1人以上、61人以上:1人+40人ごとに1人追加(1人以上は常勤) | 同左 | 同左 |
| 職業指導員 | 利用者10人につき1人以上(7.5:1の上位配置あり)。1人以上は常勤 | 利用者10人につき1人以上(7.5:1、6:1の上位配置あり)。1人以上は常勤 | 利用者6人につき1人以上。1人以上は常勤 |
| 生活支援員 | 利用者10人につき1人以上(7.5:1の上位配置あり)。1人以上は常勤 | 利用者10人につき1人以上(7.5:1、6:1の上位配置あり)。1人以上は常勤 | 利用者6人につき1人以上。1人以上は常勤 |
根拠条文: 指定基準省令第186条(就労継続支援A型)、第197条(就労継続支援B型)、第175条(就労移行支援)。
補足事項:
– 職業指導員と生活支援員は、それぞれ1人以上の配置が必要であり、かつ「いずれか一方は常勤」でなければならない
– 「10:1」とは「利用者10人に対し職員1人以上」を意味する常勤換算の配置基準であり、7.5:1や6:1は手厚い配置を行うことで上位の基本報酬が算定できる仕組みである
– サービス管理責任者は、実務経験要件(3年〜8年、業務内容により異なる)と相談支援従事者初任者研修・サービス管理責任者研修の修了が求められる
生活介護の人員配置基準
| 職種 | 配置基準 |
|---|---|
| 管理者 | 1人(常勤、兼務可) |
| サービス管理責任者 | 利用者60人以下:1人以上(1人以上は常勤) |
| 生活支援員 | 障害支援区分に応じ、利用者3人〜6人につき1人以上(区分6:利用者2.5人に1人以上) |
| 看護職員 | 1人以上 |
| 理学療法士又は作業療法士 | 必要に応じて配置 |
根拠条文: 指定基準省令第78条。
設備基準(訓練室・相談室等の面積要件)
設備基準は、サービス提供に必要な物理的環境を定めたものである。
| 設備 | 主な要件 | 根拠条文(指定基準省令) |
|---|---|---|
| 訓練・作業室 | 訓練又は作業に支障がない広さを有すること。必要な機械器具等を備えること。目安として利用者1人あたり約3.3㎡(1坪)以上※ | 第186条第1項、第197条第1項 |
| 相談室 | 室内における談話の漏えいを防ぐための間仕切り等を設けること | 同上 |
| 洗面所 | 利用者の特性に応じたものであること | 同上 |
| 便所 | 利用者の特性に応じたものであること | 同上 |
| 多目的室等 | サービスの内容に応じて必要な設備を備えること | 同上 |
※面積基準に関する重要な注意点: 指定基準省令上、訓練・作業室の具体的な面積数値(「○㎡以上」)は明記されていない。「訓練又は作業に支障がない広さ」という抽象的な要件となっている。ただし、自治体によって独自の面積基準を設けている場合があり、利用者1人あたり3.3㎡を目安とする自治体が多い。東京都では利用者1人あたり約3.3㎡、神戸市では有効面積で利用者1人あたり3㎡以上とするなど、自治体ごとに異なるため、必ず指定権者に確認すること。
物件選定のポイント:
1. 用途地域の確認: 都市計画法上の用途地域によっては福祉施設の設置が制限される場合がある
2. 建築基準法上の用途変更: 既存建物を転用する場合、用途変更の確認申請が必要になることがある(床面積200㎡超の場合)
3. 消防法の適合: スプリンクラー設備や自動火災報知設備等の設置義務を確認する
4. バリアフリー: 障害者が利用する施設であるため、段差の解消、車椅子対応トイレ等のアクセシビリティ確保が求められる
運営基準(個別支援計画・苦情処理等)
運営基準は、サービスの質を担保するための事業運営上のルールを定めたものである。
| 運営基準の項目 | 概要 | 根拠条文(指定基準省令) |
|---|---|---|
| 個別支援計画の作成 | サービス管理責任者が利用者ごとにアセスメントを行い、個別支援計画を作成・交付する。少なくとも6ヶ月に1回以上のモニタリングを実施 | 第58条〜第62条 |
| 運営規程の整備 | 事業の目的、運営方針、利用定員、職員の職種・員数、営業日時、利用料、苦情処理体制等を定めた運営規程を策定し掲示する | 第34条 |
| 苦情処理体制 | 苦情受付窓口の設置、苦情処理の記録・保管。都道府県運営適正化委員会との連携体制を整備 | 第39条 |
| 秘密保持 | 従業者は、正当な理由なく業務上知り得た利用者等の秘密を漏らしてはならない。退職後も同様 | 第36条 |
| 事故発生時の対応 | 事故発生時の市町村・家族への連絡、記録の作成・保管。損害賠償すべき事態への対応方針を整備 | 第40条 |
| 虐待防止 | 虐待防止委員会の設置(年1回以上開催)、研修の実施、虐待防止責任者の設置 | 第40条の2 |
| 身体拘束の適正化 | やむを得ず身体拘束を行う場合の記録、身体拘束適正化委員会の設置(年1回以上開催) | 第35条の2 |
| 業務継続計画(BCP)の策定 | 感染症・災害に備えた業務継続計画を策定し、研修・訓練を実施(2024年4月から義務化、経過措置終了) | 第35条の3 |
就労継続支援A型 vs B型の完全比較
就労継続支援は、一般企業での就労が困難な障害者に対し、就労の機会と生産活動の機会を提供するサービスである。「A型」と「B型」では制度設計が根本的に異なるため、事業所開設を検討する際には両者の違いを正確に理解する必要がある。
雇用契約の有無と最低賃金の適用
| 比較項目 | 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 |
|---|---|---|
| 雇用契約 | あり(労働基準法が適用) | なし(福祉的就労) |
| 最低賃金 | 適用あり(都道府県の最低賃金以上を支給) | 適用なし(工賃として支給) |
| 対価の名称 | 賃金(給与) | 工賃 |
| 全国平均額(令和4年度) | 月額約83,551円 | 月額約17,031円 |
| 利用対象者 | 通常の事業所に雇用されることが困難で、雇用契約に基づく就労が可能な65歳未満の者 | 通常の事業所に雇用されることが困難で、雇用契約に基づく就労が困難な者(年齢制限なし) |
| 利用期間 | 定めなし | 定めなし |
| 労働時間の目安 | 1日4〜8時間程度 | 1日4〜6時間程度(短時間利用も多い) |
根拠条文: 障害者総合支援法第5条第14項(就労継続支援A型)、第5条第15項(就労継続支援B型)。
報酬体系の違い(スコア方式 vs 工賃連動)
就労継続支援A型:スコア方式
A型の基本報酬は「スコア方式」により算定される。7つの評価項目の合計点(最大200点)に基づき、報酬単位が決定する仕組みである。
スコア評価項目と配点(2024年度改定後):
| 評価項目 | 最大配点 | 評価の観点 |
|---|---|---|
| I. 労働時間 | 80点 | 利用者1人あたりの1日の平均労働時間(長いほど高得点) |
| II. 生産活動 | 40点 | 生産活動収支が賃金総額を上回るか(収支率で評価。上回れば加点、下回れば減点あり) |
| III. 多様な働き方 | 15点 | 短時間勤務、在宅勤務等の多様な働き方に関する規程整備 |
| IV. 支援力向上 | 15点 | 外部研修受講、資格取得支援等の職員のスキルアップへの取組み |
| V. 地域連携活動 | 10点 | 地域企業との協働、官公庁との連携活動とその公表 |
| VI. 利用者の知識及び能力向上(新設) | 20点 | 一般就労に向けた利用者のスキルアップ支援の取組み |
| VII. 経営改善計画(新設) | 20点(減点方式) | 改善計画書の未提出や連続提出に対する減算評価 |
A型の基本報酬単位数(定員20人以下・人員配置7.5:1の場合):
| スコア区分 | 報酬単位(日額) |
|---|---|
| 170点以上 | 739単位 |
| 150点以上170点未満 | 713単位 |
| 130点以上150点未満 | 676単位 |
| 105点以上130点未満 | 655単位 |
| 80点以上105点未満 | 620単位 |
| 60点以上80点未満 | 586単位 |
| 60点未満 | 555単位 |
根拠: 令和6年厚生労働省告示第87号(障害福祉サービス費等の報酬算定構造)。
就労継続支援B型:平均工賃月額連動型
B型の基本報酬は、原則として「平均工賃月額」に応じた報酬体系となっている。利用者に支給する工賃の月額平均が高いほど、高い報酬が算定される仕組みである。2024年度改定では、従来の7.5:1配置に加え、より手厚い6:1配置の報酬体系が新設された。
B型の基本報酬単位数(定員20人以下の場合):
| 平均工賃月額 | 従来型7.5:1(日額) | 新設6:1(日額) |
|---|---|---|
| 4.5万円以上 | 748単位 | 837単位 |
| 3.5万円以上4.5万円未満 | 721単位 | 805単位 |
| 3万円以上3.5万円未満 | 680単位 | 758単位 |
| 2.5万円以上3万円未満 | 662単位 | 738単位 |
| 2万円以上2.5万円未満 | 647単位 | 726単位 |
| 1.5万円以上2万円未満 | 631単位 | 703単位 |
| 1万円以上1.5万円未満 | 606単位 | 673単位 |
| 1万円未満 | 537単位 | 590単位 |
根拠: 令和6年厚生労働省告示第87号。
なお、B型にはもう一つの報酬体系として「利用者の就労や生産活動等への参加等」をもって一律に評価するサービス費(Ⅳ)も存在する(定員20人以下で566単位/日)。新規開設の事業所や、工賃実績がまだない初年度の事業所はこちらを選択することが多い。
経営リスクの比較
| リスク項目 | A型 | B型 |
|---|---|---|
| 賃金支払リスク | 最低賃金の支払義務あり。生産活動収入だけで賄えない場合、訓練等給付費(報酬)から補填不可(指定基準省令第192条第2項) | 工賃に最低賃金の適用なし。ただし事業所は「工賃向上計画」の策定が求められる |
| 利用者確保 | 雇用契約を結ぶため利用者のハードルは比較的高い | 雇用契約不要のため利用者確保は相対的に容易 |
| 報酬変動リスク | スコア方式のため、生産活動収支の悪化が直接報酬減に直結 | 平均工賃月額が下がると基本報酬が下がる |
| 行政指導リスク | 生産活動収支が赤字の場合、経営改善計画の提出が義務。未提出で減算 | 2024年度改定で短時間利用減算が新設。4時間未満利用者が5割超で30%減算 |
| 労務管理の負担 | 労働基準法・労働保険・社会保険の完全適用 | 雇用契約なしのため労務管理負担は相対的に小さい |
| 廃業・倒産リスク | 近年、A型事業所の大量閉鎖が社会問題化。厚生労働省も監視強化 | B型は比較的安定しているが、工賃水準の低い事業所は報酬単価引き下げの影響を受ける |
新規指定申請の手続きフロー
事前相談から指定までのスケジュール
新規指定申請は、一般的に以下のフローで進行する。指定日は原則として毎月1日付け(自治体によっては4月・10月等の年2回に限定される場合もある)であり、申請から指定までの標準的な期間は3〜6ヶ月である。
【STEP 1】 法人設立(1〜2ヶ月前)
↓
※株式会社・合同会社・NPO法人・社会福祉法人等を設立
※定款の事業目的に「障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス事業」を明記
↓
【STEP 2】 事前相談(指定希望日の4〜6ヶ月前)
↓
※指定権者の障害福祉課等に事業計画を持参して相談
※自治体によっては「事前協議」として正式な手続きが必要
↓
【STEP 3】 物件確保・内装工事(指定希望日の3〜4ヶ月前)
↓
※設備基準を満たす物件を確保
※建築基準法上の用途変更・消防法の確認
↓
【STEP 4】 指定申請書類の提出(指定希望日の2〜3ヶ月前)
↓
※必要書類一式を指定権者に提出
↓
【STEP 5】 書類審査・現地確認(提出後1〜2ヶ月)
↓
※1次審査 → 補正指示 → 2次審査 → 現地確認
↓
【STEP 6】 指定通知・事業開始
根拠条文: 障害者総合支援法第36条〜第38条。
申請に必要な書類チェックリスト
以下は、一般的に求められる書類の一覧である。自治体ごとに様式や追加書類が異なるため、必ず指定権者の公式サイトで最新の様式を入手すること。
法人関係書類:
– [ ] 法人の定款(事業目的に障害福祉サービスの記載があること)
– [ ] 法人の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
– [ ] 役員名簿及び役員の経歴書
– [ ] 役員の誓約書(欠格事由に該当しないことの誓約)
事業所関係書類:
– [ ] 指定申請書(指定権者所定の様式)
– [ ] 事業所の平面図(各室の面積・用途を明記)
– [ ] 事業所の写真(外観、各室の内部、設備等)
– [ ] 建物の賃貸借契約書の写し(自己所有の場合は登記事項証明書)
– [ ] 建築基準法の検査済証の写し
– [ ] 消防設備等の設置に関する書類(消防法令適合通知書等)
人員関係書類:
– [ ] 管理者の経歴書
– [ ] サービス管理責任者の実務経験証明書、研修修了証の写し
– [ ] 職業指導員・生活支援員等の資格証・経歴書
– [ ] 従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表
– [ ] 組織体制図
運営関係書類:
– [ ] 運営規程
– [ ] 利用者との契約書の案(重要事項説明書含む)
– [ ] 苦情処理体制の概要
– [ ] 個別支援計画の作成手順に関する書類
– [ ] 業務継続計画(BCP)
– [ ] 虐待防止に関する体制の概要
– [ ] 協力医療機関との契約書(又は協力の承諾書)
財務関係書類:
– [ ] 事業計画書(収支計画含む)
– [ ] 損害賠償保険の加入証明書
自治体ごとのローカルルールへの対応
指定基準省令は全国一律のルールであるが、実際の運用においては自治体独自の上乗せ基準やローカルルールが存在する。以下に代表的な例を挙げる。
| 項目 | ローカルルールの例 |
|---|---|
| 事前協議の義務化 | 大阪府・大阪市等では正式な事前協議手続きが必須。協議完了から申請受付まで一定期間が必要 |
| 訓練・作業室の面積基準 | 省令上は「支障がない広さ」と規定されるのみだが、自治体によって「利用者1人あたり3.3㎡以上」等の独自基準を設定 |
| 定員上限の制限 | 地域の需給バランスを考慮し、就労継続支援A型の新規指定に定員上限を設ける自治体がある |
| 指定時研修の受講義務 | 指定通知後に管理者・サービス管理責任者に対する研修受講を義務付ける自治体がある |
| 総量規制 | 一部自治体では障害福祉計画に基づく総量規制を実施し、計画上の必要量を超える新規指定を制限 |
対策: 事前相談の段階で、指定権者に対し「当自治体独自の基準・手続きはあるか」を明確に確認することが重要である。
2024年度報酬改定の影響と対応
2024年度(令和6年度)の障害福祉サービス等報酬改定は、全体で+1.12%の引き上げとなった。これは障害福祉分野における人材確保・処遇改善と、サービスの質の向上を両立させることを目的としたものである。
根拠: 令和6年度障害福祉サービス等報酬改定について(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部)。
主な改定項目と事業所への影響
| 改定項目 | 内容 | 事業所への影響 |
|---|---|---|
| 処遇改善加算の一本化 | 従来の3加算(福祉・介護職員処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算)を「福祉・介護職員等処遇改善加算」に統合。2024年6月施行 | 事務手続きの簡素化。加算率はI〜IVの4段階。最上位の加算IはA型で12.4%、B型で9.3% |
| 就労継続支援A型のスコア方式見直し | 評価項目が5項目→7項目に拡大。「利用者の知識及び能力向上」「経営改善計画」を新設 | 一般就労移行に向けた取組みが評価対象に。改善計画未提出は減算あり |
| 就労継続支援B型の6:1配置新設 | 従来の7.5:1配置に加え、手厚い6:1配置の報酬体系を新設 | 6:1配置で高い報酬単位を算定可能。ただし人件費増加とのバランスが課題 |
| B型短時間利用減算の新設 | 4時間未満利用者が全体の5割超の場合、所定単位数の30%減算 | 短時間利用が多い事業所は経営に大きな打撃 |
| B型の平均工賃月額算定方法の見直し | 延べ利用者数÷年間開所日数で1日平均利用者数を算出し、工賃支払総額を除する方式に変更 | 短時間利用者の多い事業所では平均工賃月額が変動する可能性 |
| 業務継続計画(BCP)未策定減算 | BCPの策定が義務化(経過措置終了)。未策定の場合は基本報酬の1%減算 | 未策定の事業所は早急に対応が必要 |
| 虐待防止措置未実施減算 | 虐待防止委員会の未設置、研修の未実施等で基本報酬の1%減算 | 委員会の年1回以上開催と研修実施が必須 |
| 地域移行支援の強化 | 施設入所者全員の意向確認を義務化。地域移行実績に応じた加算の充実 | 入所施設・グループホームは地域移行への取組み強化が必要 |
加算の取得戦略
新規開設時から計画的に加算を取得することは、経営安定化の重要な要素である。以下に、取得優先度の高い加算を整理する。
取得を最優先すべき加算
| 加算名 | 単位数(日額) | 取得のポイント |
|---|---|---|
| 福祉・介護職員等処遇改善加算I | 基本報酬の12.4%(A型)/ 9.3%(B型)等 | 月額賃金改善要件、キャリアパス要件、職場環境等要件の全てを満たすこと |
| 福祉専門職員配置等加算I | 15単位/日 | 常勤の直接処遇職員のうち、社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士・公認心理師の有資格者が35%以上 |
| 送迎加算 | 片道21単位(重度者等は28単位) | 送迎を実施する場合に算定可能。利用者確保にも直結する重要な加算 |
業務改善に伴い取得可能な加算
| 加算名 | 単位数 | 取得のポイント |
|---|---|---|
| 目標工賃達成指導員配置加算(B型) | 72〜89単位/日 | 目標工賃達成指導員を常勤で配置。工賃向上に直結する取組み |
| 就労移行支援体制加算(A型・B型) | 利用定員・移行人数に応じ6〜46単位/日 | 利用者が一般企業に就職した実績に基づく加算 |
| 医療連携体制加算 | 32〜500単位/日 | 看護職員の訪問等による医療的ケアの提供体制を評価 |
| 食事提供体制加算 | 30単位/日 | 低所得者等に食事を提供する場合に算定。経過措置が延長中 |
開業後の運営で押さえるべきポイント(FAQ含む)
運営上の重要チェックポイント
- 実地指導(運営指導)への備え: 指定後は原則として3年に1回以上、指定権者による実地指導が行われる。個別支援計画の作成状況、人員配置の遵守状況、記録の保管等が重点的に確認される
- 指定の更新: 障害福祉サービスの指定の有効期間は6年間(障害者総合支援法第41条第1項)。更新申請を怠ると指定が失効するため、期限管理を徹底すること
- 変更届の提出: 事業所名称、所在地、管理者、サービス管理責任者、利用定員等に変更があった場合は、変更後10日以内に届出が必要(指定基準省令第49条)
- 国保連への請求: サービス提供月の翌月10日までに国民健康保険団体連合会(国保連)に報酬を請求する。請求ソフトの導入と正確な実績記録の体制を整備すること
- 情報公表制度への対応: 障害福祉サービス等情報公表制度に基づき、事業所の情報を公表する義務がある(障害者総合支援法第76条の3)
FAQ(よくある質問)
Q1. 法人格は何がよいですか?株式会社でも開設できますか?
A1. 障害福祉サービス事業所の指定を受けるためには法人格が必要であるが、法人の種類に制限はない(障害者総合支援法第36条第3項第1号)。株式会社、合同会社、NPO法人、一般社団法人、社会福祉法人のいずれでも申請可能である。ただし、社会福祉法人は施設整備費補助金や税制優遇の面で有利な場合がある一方、設立手続きが煩雑で時間がかかる。実務上は株式会社や合同会社で開設し、事業拡大後に社会福祉法人への移行を検討する事業者も多い。
Q2. サービス管理責任者(サビ管)の確保が難しいのですが、対策はありますか?
A2. サービス管理責任者は実務経験要件(障害者の保健・医療・福祉・就労・教育の分野における直接支援・相談支援等の実務経験が3年〜8年以上)と、相談支援従事者初任者研修(講義部分)及びサービス管理責任者研修の修了が必要である。確保策としては、(1) 自社職員に計画的に研修を受講させる、(2) 福祉人材バンクや専門求人サイトを活用する、(3) 開設準備段階から早期に採用活動を開始する(研修は年1〜2回の開催であるため、タイミングを逃すと指定日が大幅に遅れる)ことが挙げられる。
Q3. 就労継続支援A型で「生産活動収支が赤字」の場合、どうなりますか?
A3. 就労継続支援A型においては、生産活動に係る事業の収入から生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額が、利用者に支払う賃金の総額以上であることが求められている(指定基準省令第192条第2項)。生産活動収支が赤字、すなわち賃金総額を下回る場合は、経営改善計画の提出が必要となる。2024年度改定では、経営改善計画の未提出や数年連続での提出に対するスコア減算が新設された。継続的に改善が見られない場合は、指定取消しに至る可能性もある。
Q4. 開業に必要な初期費用はどのくらいですか?
A4. 初期費用は事業所の規模や立地によって大きく異なるが、就労継続支援B型(定員20名)を例にした概算は以下のとおりである。
| 費目 | 概算金額 |
|---|---|
| 法人設立費用(株式会社の場合) | 約25万〜30万円 |
| 物件取得費用(保証金・前家賃等) | 約100万〜300万円 |
| 内装工事・設備費 | 約100万〜500万円 |
| 備品・什器購入費 | 約50万〜100万円 |
| 人件費(開設前2〜3ヶ月分) | 約200万〜400万円 |
| その他(保険料、広告費等) | 約50万〜100万円 |
| 合計 | 約525万〜1,430万円 |
なお、自治体によっては障害福祉サービス事業所の開設に対する補助金・助成金制度を設けている場合がある。また、日本政策金融公庫の「ソーシャルビジネス支援資金」等の融資制度も活用可能である。
Q5. 「指定取消し」になるのはどのような場合ですか?
A5. 指定取消し事由は障害者総合支援法第50条第1項に列挙されており、主な事由は以下のとおりである。
- 人員基準を満たすことができなくなったとき
- 設備・運営基準に従った適正な事業運営ができなくなったとき
- 不正の手段により指定を受けたとき
- 報酬の請求に関し不正があったとき
- 虐待又はその疑いがある場合で、改善命令に従わないとき
指定取消しを受けた場合、原則として取消しの日から5年間は再指定を受けることができない。また、不正請求があった場合は、不正に受領した額の返還に加え、その40%の加算金が課される(同法第8条の2)。
Q6. グループホーム(共同生活援助)と日中活動系サービスの併設は可能ですか?
A6. 可能である。グループホームの利用者が日中に就労継続支援や生活介護等の日中活動系サービスを利用する「日中分離型」の運営は一般的である。ただし、同一建物内で両サービスを提供する場合は、それぞれの設備基準を独立して満たす必要があり、スタッフの兼務についても制限がある。指定申請は各サービスごとに個別に行う。
Q7. 処遇改善加算の一本化で、既存事業所は何をすべきですか?
A7. 2024年6月1日から従来の3加算(処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算)が「福祉・介護職員等処遇改善加算」に統合された。既存事業所は以下の対応が必要である。
- 新加算の区分を確認: I〜IVの4段階のうち、自事業所がどの区分を満たすか要件を確認
- 賃金改善計画の策定: 加算額の2分の1以上を基本給又は毎月決まって支払われる手当の引上げに充てること
- キャリアパス要件の整備: 賃金体系・昇給条件の明文化、研修計画の策定・実施
- 職場環境等要件の充足: 6つの区分から指定数以上の取組みを選択し実施・公表
- 届出の提出: 指定権者に対し新加算の届出を所定の期限までに提出
経過措置期間が設けられているが、遅くとも2025年度末までに完全移行する必要がある。
本記事のまとめ: 障害福祉サービス事業所の開設には、(1) 指定基準省令が定める人員・設備・運営の3基準の充足、(2) 指定権者への申請手続き、(3) 報酬体系の理解と加算取得戦略の立案が不可欠である。特に2024年度報酬改定により、就労継続支援A型はスコア方式の厳格化、B型は短時間利用減算の新設と6:1配置の導入、さらに全サービス共通の処遇改善加算の一本化など、事業運営に直結する変更が多数行われている。計画段階から最新の法令・通知を確認し、自治体のローカルルールにも対応した準備を進めることが、安定的な事業運営の基盤となる。
参考法令・資料:
– 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)
– 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)
– 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について(平成18年12月6日障発第1206001号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)
– 令和6年度障害福祉サービス等報酬改定について(厚生労働省)
– 障害福祉サービス費等の報酬算定構造(令和6年厚生労働省告示第87号)
本記事は行政書士・福祉事業コンサルタントの実務知見に基づき作成しています。法令の解釈や運用は自治体によって異なる場合があるため、具体的な申請にあたっては必ず指定権者の窓口で最新情報をご確認ください。