建設業許可の業種追加・般特新規申請の実務ガイド
建設業許可を取得した事業者が事業拡大を図る際、業種追加や般特新規(一般建設業から特定建設業への切替え)の申請が必要になる場面は多い。本記事では、建設業法(昭和24年法律第100号)の条文に基づき、申請手数料・必要書類・審査期間・専任技術者の資格要件などを体系的に解説する。2020年(令和2年)10月施行の建設業法改正事項も反映している。
免責事項: 本記事の情報は2025年6月時点の法令・通知に基づいています。申請にあたっては、必ず管轄の許可行政庁(都道府県知事または国土交通省地方整備局)の最新の手引きをご確認ください。具体的な案件については、建設業許可に精通した行政書士等の専門家にご相談されることを推奨します。
建設業許可制度の基本構造
建設業法第3条第1項は、建設業を営もうとする者に対し、軽微な建設工事のみを請け負う場合を除き、建設業の許可を受けることを義務づけている。許可は29の業種ごとに取得する必要があり、許可を受けていない業種の工事を請け負うことはできない(建設業法第3条第2項)。
軽微な建設工事とは、建築一式工事の場合は工事1件の請負代金の額が1,500万円未満の工事または延べ面積が150平方メートル未満の木造住宅工事、その他の建設工事の場合は工事1件の請負代金の額が500万円未満の工事をいう(建設業法施行令第1条の2)。
29業種の一覧と区分
建設業の許可は、2種類の一式工事と27種類の専門工事の合計29業種に分類される(建設業法別表第一)。
一式工事(2業種)
| No. | 業種名 | 略号 | 工事内容の例 |
|---|---|---|---|
| 1 | 土木一式工事業 | 土 | 橋梁工事、ダム工事、トンネル工事、道路築造工事 |
| 2 | 建築一式工事業 | 建 | 新築工事、増改築工事、建築確認を要する大規模修繕 |
専門工事(27業種)
| No. | 業種名 | 略号 | 工事内容の例 |
|---|---|---|---|
| 3 | 大工工事業 | 大 | 大工工事、型枠工事、造作工事 |
| 4 | 左官工事業 | 左 | 左官工事、モルタル工事、吹付け工事 |
| 5 | とび・土工・コンクリート工事業 | と | 足場工事、杭打ち工事、コンクリート打設工事 |
| 6 | 石工事業 | 石 | 石積み工事、石張り工事 |
| 7 | 屋根工事業 | 屋 | 屋根葺き工事、屋根板金工事 |
| 8 | 電気工事業 | 電 | 発電設備工事、送配電線工事、照明設備工事 |
| 9 | 管工事業 | 管 | 冷暖房設備工事、給排水設備工事、ガス配管工事 |
| 10 | タイル・れんが・ブロック工事業 | タ | タイル張り工事、れんが積み工事、コンクリートブロック積み工事 |
| 11 | 鋼構造物工事業 | 鋼 | 鉄骨工事、鉄塔工事、橋梁上部工事 |
| 12 | 鉄筋工事業 | 筋 | 鉄筋加工・組立て工事、ガス圧接工事 |
| 13 | 舗装工事業 | 舗 | アスファルト舗装工事、コンクリート舗装工事 |
| 14 | しゅんせつ工事業 | しゅ | しゅんせつ工事(河川・港湾等) |
| 15 | 板金工事業 | 板 | 建築板金工事、ダクト板金工事 |
| 16 | ガラス工事業 | ガ | ガラス加工取付工事、ガラスフィルム工事 |
| 17 | 塗装工事業 | 塗 | 塗装工事、溶射工事、ライニング工事 |
| 18 | 防水工事業 | 防 | アスファルト防水工事、シーリング工事 |
| 19 | 内装仕上工事業 | 内 | インテリア工事、天井仕上工事、床仕上工事 |
| 20 | 機械器具設置工事業 | 機 | プラント設備工事、エレベーター設置工事 |
| 21 | 熱絶縁工事業 | 絶 | 冷暖房設備の熱絶縁工事、化学工業等の設備の熱絶縁工事 |
| 22 | 電気通信工事業 | 通 | 電気通信線路設備工事、データ通信設備工事 |
| 23 | 造園工事業 | 園 | 植栽工事、景石工事、公園設備工事 |
| 24 | さく井工事業 | 井 | さく井工事、温泉掘削工事、観測井工事 |
| 25 | 建具工事業 | 具 | 金属製建具取付工事、サッシ取付工事 |
| 26 | 水道施設工事業 | 水 | 上水道施設工事、下水処理施設工事、浄化槽工事 |
| 27 | 消防施設工事業 | 消 | 屋内消火栓設置工事、スプリンクラー設置工事 |
| 28 | 清掃施設工事業 | 清 | ごみ処理施設工事、し尿処理施設工事 |
| 29 | 解体工事業 | 解 | 工作物の解体工事 |
注記: 解体工事業は2016年(平成28年)6月1日に新設された29番目の業種である(建設業法等の一部を改正する法律(平成26年法律第55号))。
指定建設業7業種
以下の7業種は指定建設業(建設業法施行令第5条の2)に該当し、特定建設業の許可を受ける場合の専任技術者要件が他の業種より厳格である(実務経験のみでは特定建設業の営業所専任技術者になれない)。
- 土木一式工事業
- 建築一式工事業
- 電気工事業
- 管工事業
- 鋼構造物工事業
- 舗装工事業
- 造園工事業
一般建設業と特定建設業の違い
建設業許可には一般建設業許可と特定建設業許可の2種類がある(建設業法第3条第1項)。両者の最大の違いは、下請契約の金額制限にある。
| 比較項目 | 一般建設業 | 特定建設業 |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 建設業法第3条第1項第1号 | 建設業法第3条第1項第2号 |
| 下請契約の制限 | 発注者から直接請け負った1件の工事について、下請代金の合計額が4,500万円以上(建築一式工事は7,000万円以上)の下請契約を締結できない | 制限なし |
| 財産的基礎 | 自己資本500万円以上、または500万円以上の資金調達能力 | 資本金2,000万円以上、自己資本4,000万円以上、流動比率75%以上、欠損比率20%以下(全て充足が必要) |
| 専任技術者 | 1級または2級国家資格者、指定学科卒業+実務経験、10年以上の実務経験 | 1級国家資格者、技術士、大臣特認(指定建設業7業種は1級国家資格等に限定) |
| 技術者の配置 | 主任技術者を配置 | 監理技術者を配置(元請の場合で下請代金合計が4,500万円以上) |
| 更新時の財産要件 | 更新時は審査されない(許可取得後5年間の営業実績で代替) | 更新時にも毎回審査される |
重要: 同一業種について一般と特定の両方の許可を同時に受けることはできない(建設業法第3条第6項)。ただし、異なる業種であれば、ある業種は一般、別の業種は特定という形で許可を受けることは可能である。
知事許可と大臣許可の違い
| 比較項目 | 都道府県知事許可 | 国土交通大臣許可 |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 建設業法第3条第1項 | 建設業法第3条第1項 |
| 営業所の要件 | 1つの都道府県内にのみ営業所を設置 | 2つ以上の都道府県に営業所を設置 |
| 申請先 | 営業所所在地の都道府県知事 | 主たる営業所所在地を管轄する地方整備局長等 |
| 新規申請手数料 | 9万円(許可手数料) | 15万円(登録免許税) |
| 更新・業種追加手数料 | 5万円(許可手数料) | 5万円(許可手数料) |
| 標準処理期間 | 約30日〜45日(都道府県により異なる) | 約120日(都道府県経由期間含む) |
注記: 知事許可であっても営業エリアの制限はなく、全国どこでも工事を施工できる。知事許可・大臣許可の区分はあくまで営業所の所在地に基づくものである。
業種追加申請の実務
追加可能な業種の検討方法
業種追加とは、すでに建設業許可を受けている事業者が、許可を受けていない別の業種について新たに許可を取得する申請をいう。
業種追加を検討する際のチェックポイントは以下のとおりである。
- 実際に施工する工事の内容を確認: 請け負おうとする工事がどの業種に該当するか、国土交通省告示に定める「建設工事の内容」(昭和47年建設省告示第350号)を確認する
- 専任技術者の確保: 追加したい業種について、営業所に常勤できる専任技術者の候補がいるか確認する
- 経営業務管理責任者の確認: 既存の許可で設置している常勤役員等(経営業務管理責任者)がそのまま要件を充足するか確認する(2020年改正後は建設業全般の経験で可)
- 財産的基礎の確認: 一般建設業の追加であれば自己資本500万円以上等、特定建設業の追加であれば資本金2,000万円以上等の基準を充足するか確認する
申請手数料(5万円)と必要書類一覧
手数料
| 許可区分 | 業種追加手数料 | 支払方法 |
|---|---|---|
| 知事許可 | 5万円(許可手数料) | 収入証紙、電子決済等(都道府県により異なる) |
| 大臣許可 | 5万円(許可手数料) | 収入印紙 |
注意: 一般建設業と特定建設業をそれぞれ業種追加する場合は、それぞれ5万円(合計10万円)が必要である。
必要書類一覧
業種追加の申請に必要な主な書類は以下のとおりである(都道府県により若干の差異あり)。
【申請書類(法定様式)】
| 様式番号 | 書類名 | 備考 |
|---|---|---|
| 様式第1号 | 建設業許可申請書 | 申請区分「業種追加」を選択 |
| 別紙一 | 役員等の一覧表 | |
| 別紙二(1) | 営業所一覧表(新規許可等) | |
| 別紙四 | 専任技術者一覧表 | 追加業種の技術者を記載 |
| 様式第2号 | 工事経歴書 | 追加業種分 |
| 様式第3号 | 直前3年の各事業年度における工事施工金額 | |
| 様式第4号 | 使用人数 | |
| 様式第6号 | 誓約書 | 欠格要件に該当しない旨 |
| 様式第7号 | 常勤役員等(経営業務管理責任者)証明書 | 変更がない場合は省略可の場合あり |
| 様式第8号 | 専任技術者証明書(新規・変更) | 追加業種の技術者について |
| 様式第9号 | 実務経験証明書 | 資格で要件を満たす場合は不要 |
| 様式第11号 | 建設業法施行令第3条に規定する使用人の一覧表 | |
| 様式第14号 | 株主(出資者)調書 | |
| 様式第17号〜17号の3 | 財務諸表 | 直近の決算期分 |
| 様式第20号〜20号の4 | 営業の沿革、所属建設業者団体、健康保険等の加入状況等 |
【確認書類・添付書類】
- 専任技術者の資格証明書(合格証明書、免許証の写し等)
- 専任技術者の常勤性を示す書類(健康保険被保険者証の写し等)
- 登記事項証明書(商業登記簿謄本)
- 納税証明書(法人事業税または所得税)
- 定款の写し(法人の場合)
- 社会保険加入を証する書類
- 営業所の写真(都道府県によっては必要)
専任技術者の資格要件(業種別対応表)
専任技術者は、建設業法第7条第2号(一般建設業)または第15条第2号(特定建設業)の基準を満たす必要がある。以下に主要業種と対応する国家資格の対応表を示す。
主要業種別・専任技術者資格対応表
| 業種 | 一般建設業(主な対応資格) | 特定建設業(主な対応資格) |
|---|---|---|
| 土木一式工事 | 2級土木施工管理技士、2級建設機械施工管理技士、技術士補(建設部門) | 1級土木施工管理技士、技術士(建設部門)、1級建設機械施工管理技士 |
| 建築一式工事 | 2級建築施工管理技士、2級建築士 | 1級建築施工管理技士、1級建築士 |
| 大工工事 | 2級建築施工管理技士(仕上げ・躯体)、2級建築士、1級・2級建築大工技能士 | 1級建築施工管理技士、1級建築士 |
| 電気工事 | 2級電気工事施工管理技士、第1種電気工事士、第2種電気工事士(免状交付後3年以上の実務経験) | 1級電気工事施工管理技士、技術士(電気電子部門) |
| 管工事 | 2級管工事施工管理技士、給水装置工事主任技術者(1年以上の実務経験) | 1級管工事施工管理技士、技術士(機械部門・上下水道部門等) |
| 鋼構造物工事 | 2級土木施工管理技士(土木)、2級建築施工管理技士(躯体) | 1級土木施工管理技士、1級建築施工管理技士、技術士(建設部門) |
| 舗装工事 | 2級土木施工管理技士、2級建設機械施工管理技士 | 1級土木施工管理技士、1級建設機械施工管理技士、技術士(建設部門) |
| 造園工事 | 2級造園施工管理技士、造園技能士(1級・2級) | 1級造園施工管理技士、技術士(建設部門) |
| 内装仕上工事 | 2級建築施工管理技士(仕上げ)、2級建築士、1級・2級内装仕上げ施工技能士 | 1級建築施工管理技士、1級建築士 |
| とび・土工・コンクリート工事 | 2級土木施工管理技士、2級建築施工管理技士(躯体)、1級・2級とび技能士 | 1級土木施工管理技士、1級建築施工管理技士、技術士(建設部門) |
| 電気通信工事 | 2級電気通信工事施工管理技士 | 1級電気通信工事施工管理技士、技術士(電気電子部門) |
| 解体工事 | 2級土木施工管理技士(土木・解体)、2級建築施工管理技士(躯体・解体)、解体工事施工技士 | 1級土木施工管理技士、1級建築施工管理技士、技術士(建設部門) |
ポイント: 指定建設業7業種(土・建・電・管・鋼・舗・園)の特定建設業の専任技術者は、1級の国家資格者、技術士、または国土交通大臣の特別認定者に限定される(建設業法第15条第2号ロ、建設業法施行規則第7条の3)。実務経験のみでは認められない。
注記: 上記は主な対応資格の抜粋であり、全ての有資格者コードを網羅したものではない。完全な一覧は、国土交通省が公開する「営業所専任技術者となり得る国家資格等一覧」を参照されたい。
審査期間の目安(都道府県別)
建設業許可の審査期間(標準処理期間)は、許可行政庁により異なる。以下は主要都道府県の目安である。
| 許可行政庁 | 標準処理期間(目安) | 備考 |
|---|---|---|
| 東京都 | 約30日 | 申請件数が多く、繁忙期はさらに要する場合あり |
| 神奈川県 | 約45日 | |
| 大阪府 | 約30日 | |
| 愛知県 | 約30日 | |
| 埼玉県 | 約30〜45日 | |
| 福岡県 | 約30日 | |
| 岐阜県 | 約60日 | |
| 国土交通大臣許可 | 約120日 | 都道府県経由期間(約30日)+地方整備局審査期間(約90日) |
注意: 上記はあくまで標準処理期間であり、書類の不備・補正があった場合や年度末の繁忙期は、さらに期間を要する。申請から許可が下りるまでの間も、既存の許可業種では営業を継続できる。
般特新規(一般から特定への切替え)の申請
般特新規とは
般特新規とは、一般建設業許可のみを有する事業者が、新たに特定建設業許可を取得する場合の申請区分をいう。逆に、特定建設業許可のみを有する事業者が一般建設業許可を取得する場合も般特新規に該当する。
般特新規は「業種追加」ではなく「新規」の扱いとなるため、手数料が業種追加(5万円)ではなく新規(知事許可9万円、大臣許可15万円)と同額になる点に注意が必要である。
| 申請区分 | 知事許可 | 大臣許可 |
|---|---|---|
| 般特新規 | 9万円(許可手数料) | 15万円(登録免許税) |
| 業種追加(参考) | 5万円 | 5万円 |
| 更新(参考) | 5万円 | 5万円 |
特定建設業に必要な財産的基礎の数値基準
特定建設業の許可を受けるためには、建設業法第15条第3号に基づく財産的基礎の要件として、以下の4つの基準を全て満たす必要がある(建設業法施行規則第7条の4)。
| No. | 基準項目 | 数値要件 | 確認書類 |
|---|---|---|---|
| 1 | 資本金 | 2,000万円以上 | 登記事項証明書、貸借対照表 |
| 2 | 自己資本 | 4,000万円以上 | 貸借対照表の純資産の部の合計額 |
| 3 | 流動比率 | 75%以上 | 貸借対照表(流動資産 / 流動負債 x 100) |
| 4 | 欠損比率 | 資本金の20%を超えないこと | 貸借対照表(繰越利益剰余金が負の場合に判定) |
重要: 一般建設業の財産的基礎要件(自己資本500万円以上等)は更新時には審査されないが、特定建設業の財産的基礎要件は5年ごとの更新時にも毎回審査される。更新時に基準を満たせない場合、特定建設業許可が更新できなくなるため、継続的な財務管理が不可欠である。
資本金が不足する場合の対応
資本金が2,000万円に満たない場合は、許可申請前に増資の手続きを行う必要がある。増資は株主総会の特別決議(会社法第466条・第309条第2項第9号)を経て、法務局での変更登記が完了した時点で効力が生じる。増資の登記完了後に申請を行うこと。
監理技術者の要件
特定建設業の許可業者が元請として4,500万円以上(建築一式工事は7,000万円以上)の下請契約を締結する場合、工事現場に監理技術者を配置しなければならない(建設業法第26条第2項)。
監理技術者は、建設業法第15条第2号イ・ロ・ハのいずれかに該当する者でなければならない。
| 要件区分 | 内容 |
|---|---|
| 第15条第2号イ | 法第7条第2号イ・ロ・ハ(一般の専任技術者要件)に該当し、かつ、元請として4,500万円以上の工事に関し2年以上の指導監督的実務経験を有する者 |
| 第15条第2号ロ | 国土交通大臣が定める国家資格を有する者(1級施工管理技士、1級建築士、技術士等) |
| 第15条第2号ハ | 国土交通大臣がイ・ロと同等以上の能力を有すると認定した者 |
指定建設業7業種の特則: 指定建設業(土・建・電・管・鋼・舗・園)における監理技術者は、上記ロまたはハの者(1級国家資格者・技術士・大臣特認者)に限定される。イ(実務経験)のみでは監理技術者になれない(建設業法第26条第2項、施行令第5条の2)。
同時申請(業種追加+般特新規)の手続き
事業者が業種追加と般特新規を同時に行うケースは実務上しばしば発生する。例えば、一般建設業で土木一式と建築一式の許可を持つ事業者が、「建築一式を特定に切替え(般特新規)」と「管工事を一般で追加(業種追加)」を同時に申請する場合である。
この場合の手数料と手続きは以下のとおりとなる。
| 申請内容 | 区分 | 手数料(知事許可) |
|---|---|---|
| 建築一式:一般から特定への切替え | 般特新規 | 9万円 |
| 管工事:一般建設業の業種追加 | 業種追加 | 5万円 |
| 合計 | 14万円 |
同時申請の場合は、それぞれの申請書類を一括して提出できる。ただし、手数料はそれぞれ個別に必要であり、合算して1件として扱われるわけではない。
実務上のポイント: 般特新規と業種追加を同時に行う場合、経営業務管理責任者や営業所の確認書類は共通書類として1部で足りる場合が多い(都道府県により取扱いが異なる)。事前に窓口に確認することを推奨する。
2020年改正の反映事項
2019年(令和元年)6月に公布された「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律」(令和元年法律第30号)の主要部分は、2020年(令和2年)10月1日に施行された。本改正は建設業許可の実務に大きな影響を及ぼしている。
経営業務管理責任者要件の緩和
改正前の要件
改正前は、建設業法第7条第1号により、許可を受けようとする建設業に関し5年以上の経営業務管理責任者としての経験を有する者を、1人の個人で充足する必要があった。また、許可を受けようとする業種以外の建設業に関しては6年以上(後に7年以上に変更されたのち緩和)の経験が必要とされていた。
改正後の要件(2020年10月1日施行)
改正後は、2つのルートで要件を満たすことが可能となった。
ルート1: 従来型(常勤役員等の個人要件)
以下のいずれかに該当する常勤役員等(取締役、執行役、業務を執行する社員等)を置くこと。
- 建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する者
- 建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者に準ずる地位(経営業務を執行する権限の委任を受けた者)としての経験を有する者
- 建設業に関し6年以上の経営業務の管理責任者に準ずる地位(経営業務を補佐した経験のある者)としての経験を有する者
ポイント: 改正前は「許可を受けようとする建設業」の経験が求められていたが、改正後は「建設業に関し」と業種の限定が撤廃された。これにより、例えば土木工事業の経営経験5年で、建築工事業の許可申請における経営業務管理責任者の要件を充足できるようになった。
ルート2: 新設(常勤役員等+補佐者の組織体制)
以下のa.とb.の両方を満たす体制を整備すること。
a. 常勤役員等が以下のいずれかに該当すること:
– 建設業に関し2年以上の役員等としての経験を有し、かつ、5年以上の役員等または役員等に次ぐ職制上の地位にある者としての経験を有する者
– 建設業に関し2年以上の役員等としての経験を有し、かつ、5年以上の役員等としての経験を有する者
b. 上記常勤役員等を直接に補佐する者として、以下の3分野それぞれについて5年以上の経験を有する者を置くこと:
– 財務管理の業務経験を有する者
– 労務管理の業務経験を有する者
– 運営業務(業務運営)の業務経験を有する者
注記: 上記3分野の補佐者は、兼任が認められる場合がある(1人で複数の分野を兼ねることが可能)。
社会保険加入の許可要件化
2020年10月1日の改正施行により、適切な社会保険への加入が建設業許可の要件に追加された(建設業法第7条第1号、建設業法施行規則第7条第1号)。
具体的には、以下の保険について、適用事業所に該当する全ての営業所について届出を行っていることが求められる。
| 保険種類 | 適用基準 |
|---|---|
| 健康保険 | 法人の事業所、常時5人以上を使用する個人事業所 |
| 厚生年金保険 | 健康保険と同様 |
| 雇用保険 | 労働者を1人でも雇用する事業所 |
重要: 社会保険未加入の事業者は、新規許可・更新・業種追加のいずれにおいても許可を受けることができない。改正前は加入指導にとどまっていたが、改正により許可の拒否事由となった。
技術検定制度の見直し
2021年(令和3年)4月1日から施行された技術検定制度の見直し(建設業法の一部改正)により、以下の変更が行われた。
| 改正項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 検定の構成 | 学科試験+実地試験 | 第一次検定+第二次検定 |
| 合格者の称号 | 学科合格(合格のみ) | 第一次検定合格者 = 「技士補」 |
| 学科+実地合格 = 技士 | 第二次検定合格者 = 「技士」 | |
| 1級技士補の活用 | ー | 監理技術者の補佐として配置可能 |
| 受検資格 | 一定の実務経験が必要 | 2級第一次検定は17歳以上で受検可能(実務経験不要) |
1級技士補の意義: 1級技士補を監理技術者の補佐として配置した場合、監理技術者は2つの現場を兼任できるようになった(建設業法第26条第3項)。これにより、監理技術者不足の解消が期待されている。
令和6年度以降の受検資格の見直し: 令和6年度(2024年度)から、1級技術検定の第一次検定の受検資格がさらに緩和され、19歳以上であれば実務経験不問で受検可能となった(一部種目を除く)。
都道府県別の手引き・様式リンク集
各都道府県の建設業許可申請に関する手引き・様式は、以下の公式ウェブサイトからダウンロードできる。申請前に必ず管轄の許可行政庁の最新版手引きを確認されたい。
| 地域 | 都道府県 | 手引き・様式入手先 |
|---|---|---|
| 関東 | 東京都 | 東京都都市整備局「建設業許可 手引、申請書類等」 |
| 神奈川県 | 神奈川県県土整備局「建設業許可申請の手引き及び申請書等のダウンロード」 | |
| 埼玉県 | 埼玉県県土整備部「建設業許可申請の手引き・様式集」 | |
| 千葉県 | 千葉県県土整備部「建設業許可申請の手引き」 | |
| 中部 | 愛知県 | 愛知県建設局「建設業許可申請手引・様式ダウンロード」 |
| 静岡県 | 静岡県交通基盤部「建設業許可の手引き」 | |
| 近畿 | 大阪府 | 大阪府住宅まちづくり部「建設業許可申請書類」 |
| 兵庫県 | 兵庫県県土整備部「建設業許可申請等の手引」 | |
| 京都府 | 京都府建設交通部「建設業許可申請の手引き」 | |
| 九州 | 福岡県 | 福岡県建築都市部「建設業許可の手引き、申請書類」 |
| 東北 | 宮城県 | 宮城県土木部「建設業許可申請書等ダウンロード」 |
| 北海道 | 北海道 | 北海道建設部「建設業許可の手引き」 |
| 大臣許可 | 国土交通省 | 国土交通省「許可申請の手続き」 |
注記: 各都道府県のウェブサイトURLは変更される場合がある。「(都道府県名)建設業許可 手引き」で検索すると最新のページにアクセスできる。
FAQ:実務担当者からよくある質問
Q1. 業種追加と般特新規を同時に申請できますか?
A. 可能である。例えば、一般建設業で建築一式の許可を持つ事業者が、「建築一式を特定に切替え(般特新規)」と「内装仕上工事を一般で追加(業種追加)」を同時に申請することができる。この場合、手数料は般特新規(知事許可9万円)と業種追加(5万円)の合計14万円が必要となる。共通する確認書類は1部で足りる場合が多いが、事前に許可行政庁に確認することを推奨する。
Q2. 業種追加の際、経営業務管理責任者は新たに用意する必要がありますか?
A. 既存の許可における常勤役員等(経営業務管理責任者)がそのまま要件を充足する場合は、新たに用意する必要はない。2020年10月の改正により、経営業務管理責任者の経験は建設業全般(業種を問わない)で判断されるようになったため、既存許可で認められた経営業務管理責任者は、異なる業種の追加であってもそのまま有効である。ただし、退任・退職等により経営業務管理責任者が不在になっている場合は、速やかに後任を届け出る必要がある。
Q3. 特定建設業の許可を取得した後、更新時に財産的基礎の要件を満たせなくなった場合はどうなりますか?
A. 特定建設業の財産的基礎要件(資本金2,000万円以上、自己資本4,000万円以上、流動比率75%以上、欠損比率20%以下)は、更新時にも毎回審査される。更新時にこの基準を満たせない場合、特定建設業の許可は更新できない。対応策としては、(1) 増資により資本金を充足する、(2) 決算期前に利益計上できるよう経営努力を行う、(3) やむを得ない場合は特定を廃業し一般建設業に切り替える(般特新規の逆パターン)、等が考えられる。更新期限の6か月以上前から財務状況を確認し、必要な対策を講じることが重要である。
Q4. 専任技術者を1人の技術者が複数業種で兼任することは可能ですか?
A. 可能である。1人の技術者が複数の業種の資格を有している場合(例:1級土木施工管理技士は土木一式、とび・土工・コンクリート、石、鋼構造物、舗装、しゅんせつ、塗装、水道施設、解体の各工事業で専任技術者になれる)、同一の営業所においては複数業種の専任技術者を兼任することができる。ただし、専任技術者は営業所に常勤(通常の勤務時間中、その営業所に勤務し得る状態)でなければならず、異なる営業所間での兼任はできない。
Q5. 電子申請(JCIP)で業種追加や般特新規の申請はできますか?
A. 国土交通省は建設業許可・経営事項審査の電子申請システム(JCIP:Japan Construction Industry electronic application Portal)の導入を進めており、2023年(令和5年)1月から段階的に運用が開始されている。2025年時点では多くの都道府県で電子申請が利用可能となっているが、対応状況は自治体により異なる。利用にあたってはgBizIDプライムアカウントの取得が必要である。詳細は国土交通省のJCIPポータルサイトまたは管轄の許可行政庁に確認されたい。
Q6. 許可の有効期間中に決算期を変更した場合、業種追加の申請に影響はありますか?
A. 決算期を変更した場合でも、業種追加の申請自体は可能である。ただし、変更後の決算期に対応した決算変届(事業年度終了届)を提出していることが前提となる。決算変届が未提出の場合は、業種追加に限らず、更新を含む全ての許可申請が受理されない。決算期変更後は速やかに決算変届を提出し、その上で業種追加申請を行う必要がある。
Q7. 一般建設業の許可で下請に出せる金額の上限はいくらですか?
A. 一般建設業の許可では、発注者から直接請け負った1件の工事(元請工事)について、下請代金の合計額が4,500万円以上(建築一式工事の場合は7,000万円以上)となる下請契約を締結することはできない(建設業法第3条第1項第2号、建設業法施行令第2条)。この金額は2023年(令和5年)1月1日施行の政令改正により引き上げられた(改正前は4,000万円、建築一式6,000万円)。なお、この制限は元請としての下請発注に関するものであり、下請として受注する金額には制限はない。
まとめ
建設業許可の業種追加・般特新規申請は、事業拡大のための重要な手続きである。申請にあたっては、以下の点を確実に確認されたい。
- 専任技術者の確保: 追加業種・特定建設業に対応する有資格者が営業所に常勤できること
- 財産的基礎の充足: 特定建設業は4つの数値基準全てを満たすこと(更新時にも毎回審査される)
- 社会保険の加入: 2020年改正により許可要件化されており、未加入では許可を受けられない
- 手数料の準備: 業種追加5万円、般特新規は知事許可9万円・大臣許可15万円
- 決算変届の提出: 直近の事業年度終了届が提出済みであること
事前の十分な準備と、管轄の許可行政庁の手引きの確認が、スムーズな許可取得への近道である。
本記事は建設業法(昭和24年法律第100号)、建設業法施行令(昭和31年政令第273号)、建設業法施行規則(昭和24年建設省令第14号)および国土交通省の公表資料に基づき作成しています。
最終更新日: 2025年6月15日