最終更新:2026年10月6日
国土交通省は、建設現場の生産性向上と省人化を目的に「i-Construction」および「BIM/CIM」の活用を直轄事業で原則適用としている。本記事では、発注者が受注者に求める技術要件――3次元モデルの納品基準(LOD・IFC形式)、ICT施工の出来形管理基準、遠隔臨場の実施要領、小規模工事や地方自治体発注工事への段階的適用――を体系的に整理する。受注者側の実務担当者が「何を・いつまでに・どの基準で」対応すべきかを判断できる情報を網羅した。
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i-Constructionの全体像と政策目標
i-Constructionの経緯
国土交通省は2016年(平成28年)を「i-Construction元年」と位置づけ、ICT(情報通信技術)の全面的活用、規格の標準化、施工時期の平準化という3本柱で建設現場の生産性向上を推進してきた。2024年(令和6年)4月16日には「i-Construction 2.0」を策定して政策を進化させ、建設現場のオートメーション化による省人化を前面に打ち出している。
i-Construction 2.0の3本柱
i-Construction 2.0は、以下の3つの柱で構成される(国土交通省「i-Construction 2.0 ~建設現場のオートメーション化~」令和6年4月16日公表)。
| 柱 | 内容 | 主な施策 |
|---|---|---|
| 施工のオートメーション化 | 自動施工・自律施工技術の開発・実装 | 自動化施工技術の現場実証、山岳トンネル自動施工の試行 |
| データ連携のオートメーション化 | BIM/CIMによるデジタルデータの一気通貫活用 | BIM/CIM原則適用、3次元データの設計―施工―維持管理連携 |
| 施工管理のオートメーション化 | 遠隔・リモートによる施工管理 | 遠隔臨場の本格実施、AR活用による施工管理DX |
数値目標
| 項目 | 目標値 | 基準年 | 目標年 | 根拠文書 |
|---|---|---|---|---|
| 建設現場の省人化 | 3割以上 | ― | 2040年 | i-Construction 2.0(令和6年4月16日) |
| 生産性向上 | 1.5倍 | ― | 2040年 | 同上 |
| ICT施工の直轄工事適用率(土工) | 約9割 | 2024年度実績 | ― | 国交省ICT導入評議会資料(参考:2023年度実績は約87%) |
| ICT施工の都道府県・政令市適用率(土工) | 約24% | 2024年度実績 | ― | 同上 |
BIM/CIM活用ガイドラインの概要
BIM/CIMとは
BIM(Building Information Modeling)/ CIM(Construction Information Modeling/Management)は、3次元モデルに属性情報を付与し、設計・施工・維持管理の各段階でデータを一気通貫で活用する手法である。国土交通省は、直轄土木事業におけるBIM/CIMの適用を体系的に規定するため、複数の基準・要領を整備している。
主要な基準・要領の体系
| 文書名 | 最新版 | 位置づけ |
|---|---|---|
| BIM/CIM取扱要領 | 令和8年3月(令和7年3月版から更新。新旧対照表あり) | BIM/CIM適用の基本要領。義務項目・推奨項目を規定 |
| BIM/CIM活用ガイドライン(案) | 令和4年3月 | 工種別の活用方法を具体的に解説(共通編+8分野編)。全9編とも令和4年3月版のままで、その後の改定はない |
| 土木設計業務等の電子納品要領 | 令和6年3月 | 3次元モデルの納品ファイル形式の根拠(BIM/CIM取扱要領 表-4 が一部修正のうえ引用) |
BIM/CIM活用ガイドライン(案)の構成
| 編 | 対象分野 |
|---|---|
| 第1編 共通編 | 全分野共通の基本的事項 |
| 第2編 河川編 | 河川工事 |
| 第3編 砂防及び地すべり対策編 | 砂防ダム・地すべり対策工事 |
| 第4編 ダム編 | ダム建設・改修工事 |
| 第5編 道路編 | 道路設計・工事 |
| 第6編 機械設備編 | 機械設備工事 |
| 第7編 下水道編 | 下水道工事 |
| 第8編 港湾編 | 港湾工事 |
| 第9編 電気通信設備編 | 電気通信設備工事 |
原則適用の対象と除外
2023年度(令和5年度)からBIM/CIMは直轄土木業務・工事で原則適用となった。ただし、以下の条件により適用対象が区分される。
| 区分 | 適用状況 | 備考 |
|---|---|---|
| 土木設計業務共通仕様書に基づく設計・計画業務 | 原則適用 | ― |
| 土木工事共通仕様書に基づく土木工事(河川・海岸・砂防・ダム・道路) | 原則適用 | ― |
| 測量業務・地質土質調査業務 | 原則適用 | 上記に関連するもの |
| 維持工事 | 適用除外 | 小規模・定型的なため |
| 災害復旧工事 | 適用除外 | 緊急性を考慮 |
| 単独の機械設備工事・電気通信設備工事 | 適用除外 | BIM/CIM適用土木工事との取り合い箇所に関わるものは適用対象 |
3次元モデルの納品基準
詳細度(LOD)の定義
LOD(Level of Detail)は、3次元モデルの形状の作り込み度を示す指標であり、国土交通省はLOD100からLOD500までの5段階を定義している(「BIM/CIM活用ガイドライン(案)第1編 共通編」)。地質・土質モデルにはLODは適用されない。
| LOD | 名称 | 形状の精度 | 主な用途 | 適用段階 |
|---|---|---|---|---|
| 100 | 概略 | 位置・概形を示す程度 | 配置検討、初期合意形成 | 計画段階 |
| 200 | 概略形状 | 構造形式が判別できる概略形状 | 代替案比較、概略数量算出 | 予備設計 |
| 300 | 詳細形状 | 附帯工・接続部を除く外形を正確に表現 | 干渉チェック、数量算出 | 詳細設計 |
| 400 | 施工精度 | 附帯工・接続構造・配筋まで正確に表現 | 施工計画、積算、出来形管理 | 施工段階 |
| 500 | 竣工精度 | 現実の形状を反映(as-built) | 竣工図書、維持管理への引継ぎ | 竣工・維持管理 |
属性情報の付与基準
3次元モデルには形状情報だけでなく属性情報(材質、強度、寸法、施工年月日等)を付与する必要がある。属性情報は義務項目と推奨項目に区分される。
| 区分 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 義務項目 | 発注者が必ず求める属性情報。構造名称、材料種別、設計値等 | BIM/CIM取扱要領(令和8年3月) |
| 推奨項目 | 活用目的に応じて付与が望ましい属性情報。施工情報、点検記録等 | BIM/CIM活用ガイドライン(案) |
データ形式と納品ファイル構成
| 項目 | 規定内容 | 根拠文書 |
|---|---|---|
| 構造物モデル | オリジナルファイル(作成ソフトの固有形式)及び IFC | BIM/CIM取扱要領(令和8年3月)表-4 |
| 地形モデル・線形モデル・土工モデル | オリジナルファイル及び J-LandXML | 同上 |
| 地質・土質モデル/統合モデル | オリジナルファイルのみ | 同上 |
| 工事で ICON・BIMCIM 両フォルダに必要なデータ | 協議によりいずれかに納品(特段の事情がなければ ICON フォルダを優先) | 同上 |
4D・5Dモデルの標準化動向
国土交通省は、3次元形状に時間軸(工程)を加えた4Dモデル、さらにコスト情報を加えた5Dモデルの標準化を進めている。
| モデル次元 | 構成要素 | 活用場面 | 標準化状況 |
|---|---|---|---|
| 3D | 形状+属性情報 | 設計照査、干渉チェック | 原則適用済み |
| 4D(3D+時間) | 形状+属性+工程情報 | 施工ステップの可視化、近接工事の調整 | 標準化推進中 |
| 5D(4D+コスト) | 形状+属性+工程+コスト | 積算連動、予算管理 | 試行段階 |
BIM/CIM積算への展開
3次元モデルの属性情報を積算に活用する「BIM/CIM積算」の取組みが進んでいる。IFC形式を活用し、異なるソフトウェア間でも数量情報を共有できる仕組みの構築が目指されている(国土交通省「BIM/CIM積算の取組について」)。
ICT施工の出来形管理基準と要領
ICT施工の概要
ICT施工とは、3次元起工測量、3次元設計データの作成、ICT建機による施工、3次元出来形管理、3次元データの納品という一連のプロセスをICT技術で実施する施工方式である。
ICT施工のプロセスと対応基準
| プロセス | 内容 | 対応基準・要領 |
|---|---|---|
| 3次元起工測量 | UAV写真測量、地上レーザースキャナ等による現況計測 | 空中写真測量(無人航空機)を用いた出来形管理要領(案)等 |
| 3次元設計データ作成 | 設計図面から3次元の設計データ(TINサーフェス等)を作成 | 3次元設計データ交換標準(案) |
| ICT建機による施工 | MC(マシンコントロール)/MG(マシンガイダンス)搭載建機で施工 | ― |
| 3次元出来形管理 | 施工後の出来形を3次元計測し、設計値との差分を面的に管理 | 3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案) |
| 3次元データ納品 | 上記データを電子成果品として納品 | 工事完成図書の電子納品等に関する要領 |
出来形管理手法の比較
国土交通省は、工種・規模に応じて複数の計測技術を認めている。
| 計測手法 | 精度 | 適用場面 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| UAV写真測量 | ±5cm程度 | 広範囲の土工 | 短時間で広域を計測可能 |
| 地上型レーザースキャナ(TLS) | ±数mm~数cm | 構造物、法面 | 高精度、狭い範囲に適する |
| UAVレーザー測量 | ±5cm程度 | 植生下の地形含む広域 | 樹木下の地盤も計測可能 |
| トータルステーション(TS) | ±数mm | 構造物の出来形 | 従来型。ポイント計測 |
| RTK-GNSS | ±数cm | 土工の施工中管理 | リアルタイム位置情報取得 |
ICT施工の発注方式
| 発注方式 | 内容 | 適用条件 |
|---|---|---|
| 発注者指定型 | 発注者がICT施工を条件として指定 | 一定規模以上の土工を含む工事 |
| 施工者希望型(I型) | 受注者がICT施工を提案(当初設計に計上) | 受注者の判断で選択可能 |
| 施工者希望型(II型) | 受注者がICT施工を提案(設計変更で対応) | 受注者の判断で選択可能 |
ICT施工の工種別原則適用状況
ICT施工の原則適用(発注者指定型の必須化)は工種ごとに段階的に拡大されている。
| 工種 | 原則適用開始年度 | 備考 |
|---|---|---|
| 土工 | 2025年度(令和7年度) | 直轄工事で原則化 |
| 河川浚渫工 | 2025年度(令和7年度) | 直轄工事で原則化 |
| 港湾浚渫工 | 2025年度(令和7年度) | 直轄工事で原則化 |
| 舗装工 | 2027年度以降(予定) | 2026年度から発注者指定型を段階的拡大 |
| 地盤改良工 | 2027年度以降(予定) | 2026年度から発注者指定型を段階的拡大 |
| 付帯構造物設置工 | 検討中 | コンクリートブロック工、側溝工等が対象 |
ICT活用工事の積算補正
ICT施工に伴う追加経費は、共通仮設費率に補正係数を乗じて積算される(ICT補正)。対象となる出来形管理手法・工種は国土交通省が通知で明確化している(会計検査院「ICT活用工事の出来形管理等経費の積算に関する報告」参照)。
遠隔臨場の実施要領
遠隔臨場とは
遠隔臨場とは、ウェアラブルカメラ等の映像・音声通信機器を活用し、発注者(監督員)が建設現場に赴くことなく、「材料確認」「段階確認」「立会」の3つの臨場業務をリモートで実施する仕組みである。
根拠文書
| 文書名 | 策定日 | 内容 |
|---|---|---|
| 建設現場における遠隔臨場に関する実施要領(案) | 2022年(令和4年)3月29日 | 遠隔臨場の実施手順・映像品質基準を規定 |
| 建設現場の遠隔臨場に関する監督・検査実施要領(案) | 2022年(令和4年)3月29日 | 監督員・検査員の遠隔臨場実施手順を規定 |
遠隔臨場の対象業務
| 対象業務 | 内容 | 遠隔臨場での実施方法 |
|---|---|---|
| 材料確認 | 工事材料の品質・規格の確認 | 映像により材料の外観・品質試験結果を確認 |
| 段階確認 | 施工途中の出来形・品質の確認 | 映像により施工状況・計測値を確認 |
| 立会 | 施工状況の確認(臨場による立会) | 映像・音声によりリアルタイムで状況確認 |
通信機器の要件
| 項目 | 要件 |
|---|---|
| カメラ | ウェアラブルカメラ(頭部または胸部装着型)が推奨。目線での撮影が可能なもの |
| 映像品質 | 発注者・受注者間で事前に品質を確認し合意。材料の文字情報が判読できる程度 |
| 通信方式 | LTE内蔵型またはスマートフォン連携型。Web会議システムを利用 |
| 防護性能 | 防水・防塵・耐衝撃性能を備えること(屋外現場環境を考慮) |
| 録画機能 | 映像・音声の記録が可能であること |
遠隔臨場の適用範囲
| 区分 | 適用状況 | 備考 |
|---|---|---|
| 直轄工事 | 2022年度(令和4年度)から本格実施 | 通信環境が確保できる現場で適用 |
| 地方自治体工事 | 各自治体が個別に試行・実施 | 埼玉県(令和6年4月要領策定)等が先行 |
| 適用除外 | 通信環境が整わない現場、遠隔では確認困難な工種 | 発注者・受注者協議で判断 |
小規模工事への段階的適用
小規模工事におけるBIM/CIMの取扱い
BIM/CIMの原則適用は主に直轄の大規模土木事業を対象としているが、小規模工事への適用拡大も段階的に検討されている。現状の位置づけは以下のとおりである。
| 工事規模 | BIM/CIM適用 | ICT施工 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 直轄大規模工事 | 原則適用 | 発注者指定型が拡大中 | 義務項目への対応必須 |
| 直轄中規模工事 | 原則適用 | 施工者希望型も選択可能 | 推奨項目は協議で決定 |
| 直轄小規模工事(維持工事等) | 適用除外 | 施工者希望型で任意適用 | 維持工事・災害復旧は除外 |
| 都道府県・政令市発注工事 | 自治体ごとに判断 | 自治体ごとに試行段階 | 国交省基準を準用する自治体が多い |
| 市区町村発注工事 | 大半が未適用 | 一部自治体で試行 | 技術者・予算の制約が大きい |
小規模工事向けのICT施工支援
国土交通省は、小規模工事へのICT普及に向けて以下の施策を展開している。
| 施策 | 内容 | 対象 |
|---|---|---|
| ICT施工の簡易手順書 | 小規模現場でも対応可能な簡略化された手順・基準の整備 | 中小建設企業 |
| ICT建機のレンタル支援 | 自社保有が困難な中小企業向けに、レンタル建機のICT補正を積算対象化 | 中小建設企業 |
| 技術者育成研修 | 地方整備局等で実機を用いた研修プログラムを実施 | 地方自治体職員、中小企業技術者 |
| 3次元データ作成の外注許容 | 3次元起工測量・データ作成を測量会社等に外注することを認容 | 自社でICT人材を確保できない企業 |
地方自治体発注工事での対応状況
普及状況の概観
直轄工事ではICT施工の適用が進んでいるが、地方自治体発注工事では普及に大きな差がある。
| 項目 | 直轄工事 | 都道府県・政令市 | 市区町村 |
|---|---|---|---|
| ICT施工実施率(土工) | 約9割(2024年度) | 約24%(2024年度) | 数%程度(推定) |
| BIM/CIM適用 | 原則適用 | 一部自治体で試行 | ほぼ未適用 |
| 遠隔臨場 | 本格実施 | 一部自治体で試行 | ほぼ未実施 |
| ICT活用支援制度の有無 | ― | 約39%が制度あり(2025年10月時点) | 把握困難 |
先行自治体の取組み例
| 自治体 | 主な取組み | 根拠文書 |
|---|---|---|
| 静岡県 | ICT活用工事に関する独自基準・要領を整備。国交省基準を準用しつつ県独自の運用を規定 | 静岡県ICT活用工事に関する基準・要領 |
| 埼玉県 | ICT活用工事を積極推進。遠隔臨場の実施要領を令和6年4月に策定 | 埼玉県県土整備部ICT活用工事要領、遠隔臨場に関する実施要領(令和6年4月) |
| 神奈川県 | 県土整備局でICT活用工事の独自基準を整備 | 神奈川県県土整備局ICT活用工事 |
| 札幌市 | 建設局ICT活用工事の独自制度を運用 | 札幌市建設局ICT活用工事要領 |
| 山口県 | ICT活用関連情報を体系的に公開 | 山口県ICT活用関連情報 |
地方自治体が国交省基準を準用する際の留意点
| 項目 | 留意事項 |
|---|---|
| 基準の適用範囲 | 国交省基準は直轄工事を前提としており、自治体工事の規模・特性に合わせた読み替えが必要 |
| 積算基準 | ICT補正係数は国交省積算基準に準拠するが、自治体独自の補正を設定している場合がある |
| 納品要領 | 電子納品の保管先システムが自治体ごとに異なるため、フォーマットの確認が必須 |
| 技術者要件 | 国交省基準で求められるICT技術者の資格・経験要件を、自治体が緩和している場合がある |
受注者の実務対応フロー
BIM/CIM対応の実務フロー
受注者がBIM/CIM適用工事を受注した場合の標準的な対応手順は以下のとおりである。
| ステップ | 対応内容 | 根拠・留意事項 |
|---|---|---|
| 1. 特記仕様書の確認 | BIM/CIM適用の有無、義務項目・推奨項目の範囲を確認 | 発注図書に記載。BIM/CIM取扱要領に基づく |
| 2. BIM/CIM活用計画書の作成 | 活用目的、作成するモデルのLOD、使用ソフトウェア、体制を記載 | 受注後速やかに発注者と協議 |
| 3. 3次元モデルの作成 | 設計図書に基づき3次元モデルを作成。LODは計画書で合意した水準に準拠 | BIM/CIM活用ガイドライン(案)を参照 |
| 4. 属性情報の付与 | 義務項目の属性情報を付与。推奨項目は協議結果に基づく | BIM/CIM取扱要領(令和8年3月)を参照 |
| 5. 情報共有システムへの登録 | 作成したモデルを情報共有システム(ASP等)に登録し、発注者と共有 | 3次元モデルの「情報共有への活用」は義務 |
| 6. 施工段階での活用 | 干渉チェック、施工ステップの可視化、数量照査等に活用 | 活用実績を記録 |
| 7. 電子納品 | モデル種別ごとの形式(構造物=オリジナル+IFC、地形・線形・土工=オリジナル+J-LandXML 等)で納品 | BIM/CIM取扱要領(令和8年3月)表-4・土木設計業務等の電子納品要領(令和6年3月)を参照 |
| 8. 活用報告書の提出 | BIM/CIM活用の効果、課題等を報告書として提出 | 発注者の指示に基づく |
ICT施工対応の実務フロー
| ステップ | 対応内容 | 根拠・留意事項 |
|---|---|---|
| 1. 発注方式の確認 | 発注者指定型か施工者希望型かを確認 | 特記仕様書で指定 |
| 2. ICT施工計画書の作成 | 使用するICT建機、計測手法、出来形管理方法を記載 | 施工計画書の一部として提出 |
| 3. 3次元起工測量 | UAV写真測量・TLS等で施工前の現況を3次元計測 | 出来形管理要領(案)に準拠 |
| 4. 3次元設計データ作成 | 設計図面から3次元のTINサーフェス等を作成 | 3次元設計データ交換標準(案)に準拠 |
| 5. ICT建機による施工 | MC/MG搭載建機で施工 | ― |
| 6. 3次元出来形計測 | 施工後の出来形を3次元計測し、設計データとの差分を面的管理 | 出来形管理基準に基づく管理値を遵守 |
| 7. 帳票作成・データ納品 | 出来形管理図表、ヒートマップ等を作成し、電子成果品として納品 | 電子納品要領に準拠 |
遠隔臨場対応の実務フロー
| ステップ | 対応内容 | 根拠・留意事項 |
|---|---|---|
| 1. 事前協議 | 遠隔臨場の対象項目、使用機器、映像品質、通信方法を発注者と合意 | 実施要領(案)に基づき協議 |
| 2. 機器の準備・テスト | ウェアラブルカメラ、通信環境を整備。事前に通信テストを実施 | 現場の通信状況を確認 |
| 3. 遠隔臨場の実施 | 材料確認・段階確認・立会を映像・音声で実施 | 監督員がリアルタイムで映像確認 |
| 4. 記録の保存 | 映像・音声データを記録・保存 | 保存期間は発注者の指示に従う |
| 5. 結果の記録・報告 | 遠隔臨場の実施結果を監督日誌等に記載 | 従来の臨場記録と同等の記録を作成 |
2026年の制度改正と最新動向
2026年4月:BIM図面審査の開始
国土交通省は2026年(令和8年)4月から、建築基準法に基づく建築確認申請を対象に、BIMモデルを用いた図面審査(BIM図面審査)を開始した。これは、従来の2次元図面ベースの確認申請・審査プロセスを、3次元BIMモデルベースに移行する取り組みである。直轄営繕工事に限った話ではなく、民間の建築物を含む確認申請制度そのものの改革であり、BIMに対応可能な指定確認検査機関から段階的に導入される。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開始時期 | 2026年4月(開始済み。BIM対応可能な指定確認検査機関から段階的に導入) |
| 対象 | 建築基準法に基づく建築確認申請(民間の建築物を含む)。国交省は将来的にすべての新築建築物の確認申請をBIMデータで行えるようにすることを目指している |
| 提出形式 | IFC形式+PDF図面(CDE:共通データ環境を経由して提出) |
| CDE(共通データ環境) | BIMモデル・図面・関連文書を一元管理するクラウドプラットフォーム |
| 期待される効果 | 審査の効率化、設計品質の向上、手戻りの削減 |
| 受注者の対応 | IFC形式でのモデル出力体制の整備、CDE運用フローの確認 |
| 関連公開文書 | 建築確認におけるBIM図面審査ガイドライン(初版 令和8年3月24日版)、BIM図面審査 申請・審査マニュアル(初版 令和8年3月24日版)、入出力基準(BIMデータから書き出された図書の形状・属性・計算に関する基準)、入出力基準適合申告書、確認申請図書表現基準、設計者チェックリスト |
省力化投資促進プラン(2025年6月策定)
国土交通省は2025年(令和7年)6月に「建設業省力化投資促進プラン」を策定し、ICT施工・自動施工・ロボット活用への投資を促進する施策体系を整備した。
同プランが「2.1 投資補助・金融支援」で挙げている既存施策は、以下のとおりすべて補助金・助成金である。税制は1つも含まれていない(原本42ページ中に「税制」の語は1度も出てこない。出典:省力化投資促進プラン ―建設業― 令和7年6月13日 国土交通省 2026年9月21日にPMが全文取得・確認)。
| 施策 | 概要 | 対象 |
|---|---|---|
| 中小企業省力化投資補助金(一般型・カタログ注文型) | 省力化設備・システムの導入費用を補助。一般型は従業員規模別に750万〜8,000万円(大幅賃上げ特例で最大1億円)、カタログ注文型は最大1,500万円 | 中小建設事業者 |
| デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)の通常枠 | BIMソフトウェア・CDE導入費用を補助(通常枠の補助率は1/2以内、補助額は1プロセス以上で5万円以上150万円未満・4プロセス以上で150万円以上450万円以下) | 中小建設事業者 |
| 働き方改革推進支援助成金・業務改善助成金 | 労働時間短縮・賃金引上げに伴う設備投資等を支援 | 中小建設事業者 |
| 建設市場整備推進事業費補助金 | 建設業の生産性向上・担い手確保の取組を支援 | 建設業団体等 |
別制度:特定生産性向上設備等投資促進税制(建設業向けではない)
上記プランとは無関係の、全業種向けの税制です。 令和8年度税制改正で新設されたもので、策定主体(財務省・与党)も時期(令和7年12月19日の大綱公表)も、建設業限定の省力化投資促進プラン(国交省・令和7年6月13日)とは異なります。「省力化投資促進税制」という通称は財務省・経産省のいずれの一次資料にも存在しないため、この名前で検索しても公式情報には行き着きません。
生産性向上設備等の取得に対する即時償却または税額控除(取得価額の7%、ただし建物・建物附属設備・構築物は4%)が受けられますが、投資下限額は35億円以上(中小企業者等でも5億円以上)、年平均投資利益率15%以上が要件です。
i-Construction 2.0ロードマップの進捗
i-Construction 2.0(令和6年4月16日公表)は、2040年度までに建設現場の生産性1.5倍を目標としている。2026年時点での進捗は以下のとおりである。
| マイルストーン | 目標年度 | 2026年時点の状況 |
|---|---|---|
| 直轄土木でのBIM/CIM原則適用 | 2023年度~ | 適用中(対象工事の約85%で活用) |
| 自動施工の直轄現場実証 | 2024~2025年度 | 河川・道路工事で実証完了、ガイドライン整備中 |
| BIM図面審査の開始 | 2026年度 | 2026年4月からBIM対応可能な指定確認検査機関で段階的に開始。2029年春からはBIMデータそのものを審査対象とする「BIMデータ審査」へ発展する計画 |
| 小規模工事へのICT施工拡大 | 2026年度~ | 令和8年度の積算基準等の改定で、小規模工事を対象に、2次元建設機械による施工など簡易なICT技術を加えた新たな枠組み「導入型ICT活用工事」が整備された |
| 3次元都市モデル(PLATEAU)との連携 | 2025~2028年度 | 設計段階でのPLATEAU活用ガイドライン策定中 |
今すぐやること:建設DX対応チェックリスト
最優先:すぐに対応
- BIM図面審査ガイドラインの入手・読み込み(技術部門):BIM図面審査は2026年4月に開始済みで、対応する指定確認検査機関が段階的に増えています。令和8年3月24日公表の初版ガイドライン・マニュアル(ICBA BIM審査ポータル https://bimpermit.jp/guideline/ )を技術部門で共有し、IFC出力体制の課題を洗い出す
- 特記仕様書のBIM/CIM適用条件を再確認(現場担当):受注済み工事について、義務項目・推奨項目・LODレベルを発注者と再確認し、認識のズレがないか着手時協議で文書化する
重要:今月中に判断する(補助金の締切が迫っています)
- ICT施工の計測手法・機材の調達計画策定(工事部門):2025年度から土工が原則化されたことを踏まえ、UAV・TLS等の計測機材のレンタル契約またはリース契約の見積を取得する
- 遠隔臨場の通信環境テスト実施(現場技術者):担当現場でモバイル回線の速度測定(特に映像を送る上り速度)を行い、実施要領の目安に届かない場合は衛星通信端末等の代替手段と費用を設計変更協議に盛り込む
- 中小企業省力化投資補助金・デジタル化・AI導入補助金の適用検討(経営企画):BIMソフトウェア・CDE導入費用について補助金申請の要否を判断する。デジタル化・AI導入補助金の次の締切は第6次 2026年10月30日(金)17:00で、これに間に合わないなら第7次以降を狙う判断になる。申請にはGビズIDプライムとSECURITY ACTIONの宣言が事前に必要で、いずれも取得に日数がかかる点に注意
中期:年度内
- 3次元モデル作成・IFC変換の内製化体制の構築(技術部門):外注依存から段階的に脱却するため、社内のBIM/CIM技術者育成研修(地方整備局等)への参加計画を策定する
- 自治体発注工事のICT施工試行要領の調査(営業部門):管轄自治体のICT活用工事要領を収集し、施工者希望型での提案機会を営業戦略に組み込む
FAQ
原則適用とは、直轄土木業務・工事のうち、土木設計業務共通仕様書に基づく設計・計画業務、土木工事共通仕様書に基づく土木工事(河川・海岸・砂防・ダム・道路)およびこれらに関連する測量業務・地質調査業務が対象である。ただし、維持工事、災害復旧工事、単独の機械設備工事・電気通信設備工事は適用除外となっている。適用対象であっても、具体的に何を義務として求めるかは特記仕様書で個別に指定されるため、受注後に発注者と協議のうえ確認する必要がある。
一般的に、予備設計段階ではLOD200(構造形式が判別できる概略形状)、詳細設計段階ではLOD300(附帯工を除く外形を正確に表現)、施工段階ではLOD400(配筋等を含む施工精度)、竣工・維持管理段階ではLOD500(現実の形状を反映)が目安となる。ただし、実際に求められるLODは工種・活用目的ごとに異なるため、BIM/CIM活用計画書の作成時に発注者と合意する必要がある。なお、地質・土質モデルにはLODの概念は適用されない。
発注者指定型は、発注者がICT施工を契約条件として指定する方式であり、受注者は必ずICT施工で実施しなければならない。施工者希望型は、受注者が任意にICT施工を提案できる方式で、I型(当初設計にICT経費を計上)とII型(設計変更で対応)がある。発注者指定型の対象工種は段階的に拡大されており、2025年度時点で土工・河川浚渫工・港湾浚渫工が原則化され、舗装工・地盤改良工は2027年度以降の原則化が予定されている。
「建設現場における遠隔臨場に関する実施要領(案)」(2022年3月29日策定)によれば、ウェアラブルカメラ(頭部または胸部装着型で目線での撮影が可能なもの)が推奨される。通信方式はLTE内蔵型またはスマートフォン連携型で、Web会議システムを利用する。カメラには防水・防塵・耐衝撃性能が求められる。具体的な機器仕様は発注者との事前協議で合意する。通信環境が確保できない現場では、遠隔臨場の適用除外とすることも可能である。
地方自治体発注工事におけるBIM/CIM・ICT施工の適用は、各自治体の判断に委ねられている。2024年度時点で都道府県・政令市のICT施工実施率(土工)は約24%にとどまり、ICT活用支援制度を整備している自治体も約39%(2025年10月時点)である。静岡県、埼玉県、神奈川県など先行自治体では独自の基準・要領を整備しているが、多くの市区町村ではまだ本格的な導入に至っていない。受注者は、当該自治体の最新の発注要件を個別に確認する必要がある。
国土交通省は中小企業向けに以下の支援策を講じている。第一に、ICT建機はレンタルでの利用が認められており、レンタル費用はICT補正として積算に反映される。第二に、3次元起工測量やデータ作成は測量会社等への外注が許容されている。第三に、地方整備局等で実機を用いた技術者育成研修が実施されている。自社でICT人材や機材をすべて確保する必要はなく、段階的に技術力を蓄積していく方法が現実的である。
IFC形式のみの納品では不十分である。現行の「BIM/CIM取扱要領」(令和8年3月)表-4 では、構造物モデルはオリジナルファイル(作成ソフトの固有形式)及び IFC、地形・線形・土工モデルはオリジナルファイル及び J-LandXML、地質・土質モデルと統合モデルはオリジナルファイルのみを納品する。IFC はすべてのモデルに共通の形式ではない点に注意する。ネイティブ形式の納品は、データの再利用性を確保し、維持管理段階での活用に備えるためである。
免責事項
本記事の情報は、2026年10月時点で公表されている国土交通省の通知・ガイドライン・要領等に基づいて整理したものである。建設DXに関する基準・要領は頻繁に改定されるため、実務にあたっては必ず国土交通省の公式サイト(BIM/CIMポータルサイト等)で最新版の文書を確認されたい。個別の工事における発注者要件は、特記仕様書および発注者との協議により確定するものであり、本記事の記述がすべての工事に一律に適用されるものではない。技術的・法律的判断が必要な場合は、建設コンサルタント、BIM/CIMマネージャー等の専門家に相談されることを推奨する。
参考文献
- 国土交通省「i-Construction 2.0 ~建設現場のオートメーション化~」(令和6年4月16日公表。https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001085.html)
- 国土交通省「BIM/CIM取扱要領」(令和8年3月。https://www.mlit.go.jp/tec/tec_fr_000184.html )
- 国土交通省「直轄土木業務・工事におけるBIM/CIM適用に関する実施方針」(令和8年3月)
- 国土交通省「BIM/CIM活用ガイドライン(案)」(令和4年3月、共通編+8分野編)
- 国土交通省「土木設計業務等の電子納品要領」(令和6年3月)
- 国土交通省「BIM/CIM関連基準要領等(令和8年3月)」 https://www.mlit.go.jp/tec/tec_fr_000184.html
- 国土交通省「3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)」
- 国土交通省「空中写真測量(無人航空機)を用いた出来形管理要領(案)」
- 国土交通省「3次元設計データ交換標準(案)」
- 国土交通省「建設現場における遠隔臨場に関する実施要領(案)」(2022年3月29日策定)
- 国土交通省「建設現場の遠隔臨場に関する監督・検査実施要領(案)」(2022年3月29日策定)
- 国土交通省 ICT導入評議会資料
- 国土交通省 BIM/CIMポータルサイト(https://www.nilim.go.jp/lab/qbg/jyouhou/bimcim/bimcimindex.html)
- 国土交通省 社会資本施工高度化研究室 基準類(https://www.nilim.go.jp/lab/pfg/kijun/std.html)
- 会計検査院「ICT活用工事の出来形管理等経費の積算に関する報告」
