「うちは年収910万円を超えるから対象外」——その認識は2026年4月から完全に過去のものです。 令和8年法律第8号(2026年3月31日公布・4月1日施行)により、高等学校等就学支援金の所得制限は撤廃され、公立高校相当額の年11万8,800円が全世帯に支給されるようになりました。さらに私立高校在学の世帯は所得制限なしで年最大45万7,200円まで受給可能で、多子世帯(子3人以上扶養)はこの加算が所得制限なしでさらに拡充されます。本記事は文部科学省の一次ソースに基づき、新制度の全体像・申請手順・年収帯別シミュレーションを整理します。
結論:2026年度から「全高校生」が授業料支援対象
撤廃
118,800円
457,200円
R8法律8号
施行日は2026年4月1日。在校生は学校から配布されるe-Shien案内に従って4月の意向確認・7月の本申請を行うだけで、所得書類提出を省略できるケースが増えています(マイナンバー連携利用時)。
§1 改正の核心:所得制限撤廃と「11.88万円」の全世帯化
2026年度改正のポイントは次の3点に集約されます(出典:文部科学省 高校生等への修学支援)。
- 所得制限の完全撤廃:旧制度で支給対象外だった年収約910万円以上世帯も含め、日本国籍等の生徒は全員が支給対象となる(所得書類の提出も原則不要)
- 私立高校支給上限の引き上げ:私立高校(全日制)在学の場合、支給上限が旧制度の39万6,000円から45万7,200円(457,200円)/年に引き上げられた。所得制限は廃止され、全世帯が対象(文部科学省都道府県向け説明資料 PAGE 5・PAGE 42)
- 多子世帯支援の拡充:扶養する子が3人以上いる世帯では、所得にかかわらず授業料相当額の支援がさらに拡充される。国が定める授業料実費相当額を上限に、都道府県が設定する加算額が上乗せされる(都道府県の運用詳細は各教育委員会に確認)
1-1 根拠法令
- 改正法名:高等学校等就学支援金の支給に関する法律の一部を改正する法律
- 改正法番号:令和8年法律第8号
- 公布日:2026年3月31日/施行日:2026年4月1日
- 提出主体:内閣
- 出典:内閣法制局 最近公布された法律 令和8年法律第8号
文部科学省は2026年3月31日付で「高等学校等就学支援金の支給に関する法律の一部を改正する法律の施行等について(通知)」を発出しており、各都道府県教育委員会・私立学校所管課を通じて学校現場に運用が指示されています(出典:文部科学省 高等学校等就学支援金制度)。
§2 旧制度 vs 新制度 Before/After
| 項目 | 旧制度(〜2026年3月) | 新制度(2026年4月〜) |
|---|---|---|
| 所得制限 | 年収約910万円以上は対象外 | 撤廃(日本国籍等の生徒は全世帯対象) |
| 公立高校 基準額 | 年11万8,800円(910万円未満のみ) | 年11万8,800円(全世帯) |
| 私立高校 上限額(全日制) | 年39万6,000円(590万円未満) | 年45万7,200円(所得制限なし・引き上げ) |
| 通信制(私立) | 年29万7,000円(590万円未満) | 年33万7,200円(所得制限なし・引き上げ) |
| 高専1〜3年(国公立) | 年23万4,600円(590万円未満) | 年23万4,600円(継続) |
| 多子世帯加算 | 限定的 | 所得制限なしで授業料相当額まで拡充 |
| 申請方法 | e-Shien(紙併用) | e-Shien(日本国籍生徒はオンライン完結) |
【参考:旧制度との違い】 旧制度では年収約910万円(市町村民税の課税標準額×6%−調整控除が30万4,200円以上)で支給対象外でしたが、令和8年度からこの要件は廃止されました。「910万円以上世帯に就学支援金が支給されない」という情報は旧制度の内容です(出典:文部科学省 令和8年度都道府県向け資料 PDF)。
§3 学校種別 支給上限額一覧(2026年度)
118,800円/年
457,200円/年
337,200円/年
234,600円/年
| 学校種 | 2026年度 支給上限額(年額) | 備考 |
|---|---|---|
| 公立高校(全日制) | 118,800円 | 全世帯共通 |
| 公立高校(定時制) | 32,400円 | 全世帯共通 |
| 公立高校(通信制) | 0円(多くの場合) | 公立通信制は授業料を徴収しない都道府県が多く、授業料が0円の場合は就学支援金受給額も0円となる(在学校に要確認) |
| 私立高校(全日制) | 457,200円 | 所得制限なし・全世帯対象(旧制度比+61,200円) |
| 私立高校(通信制) | 337,200円 | 所得制限なし・全世帯対象(旧制度比+40,200円) |
| 国公立高専(1〜3年) | 234,600円 | 全世帯共通 |
| 私立高専(1〜3年) | 457,200円 | 私立高校全日制と同等 |
| 専修学校(高等課程) | 私立高校相当 | 設置形態に応じて適用 |
| 特別支援学校(高等部) | 授業料相当額 | 都道府県が措置 |
数値出典:文部科学省 令和8年度版リーフレット PDF / 文部科学省 高等学校等就学支援金制度
3-1 【参考】旧制度の所得判定計算式
重要: 令和8年度(2026年度)の新制度では、日本国籍等の生徒は所得判定が不要です。以下は旧制度(〜令和7年度)または外国籍の在校生等に経過措置が適用される場合に参照する計算式です(文部科学省説明資料 PAGE 4「所得制限の撤廃」参照)。
旧制度(および経過措置対象者)での支給区分判定は、親権者全員(共働きなら両親合算)の以下の数値で行われていました。
判定額 = 課税標準額 × 6% − 市町村民税の調整控除額
- 判定額が 15万4,500円未満 → 旧制度の私立加算(最大年39.6万円)の対象
- 判定額が 30万4,200円未満 → 旧制度の基本支給11.88万円の対象(年収910万円未満相当)
- 判定額が 30万4,200円以上 → 旧制度では対象外(新制度では廃止)
外国籍の生徒の取り扱いは、在留資格等の条件によって旧制度の経過措置が適用される場合があります。在学校・都道府県教育委員会に確認してください。
§4 多子世帯加算の詳細
多子世帯(扶養する子が3人以上いる世帯)は2026年度から授業料支援が拡充されます。ポイントは以下です。
- 「多子」の定義:保護者の扶養に入っている子(年齢上限は税制上の扶養親族の範囲で運用)が3人以上いる世帯
- 所得制限なし:年収にかかわらず適用される
- 判定:マイナンバー情報により都道府県・JASSO等が扶養人数を確認
- 対象学校:私立高校に通う第何子か等の運用詳細は都道府県により異なるため、在住自治体・在学校の案内を確認
§5 申請の流れ:e-Shienでの手続き
5-1 必要書類
- e-Shien ログインID(学校から配布)
- 保護者全員のマイナンバー(情報提供等記録同意書)
- マイナンバー利用に同意しない場合は、市町村発行の課税証明書(保護者全員分)
- 申請者(生徒)の氏名・生年月日確認書類
5-2 オンライン申請の拡大
2026年度から、日本国籍の生徒についてe-Shienでのフル・オンライン申請が可能となりました(出典:文部科学省 e-Shien利用案内)。学校窓口での紙提出を経ずに完結できるため、申請忘れ・書類不備のリスクが下がります。
【外国籍の生徒へ】 文部科学省の運用方針(説明資料 PAGE 45)により、国籍が「日本国以外」の場合は書類による申請が継続されます(e-Shienのフル・オンライン申請の対象外)。また、在留資格等の条件によって適用される支援内容が異なる場合があるため、在学校・都道府県教育委員会の案内を必ず確認してください。
5-3 申請を逃した・遅れた場合
文部科学省は「申請時期が遅れた場合でも、4月分から受給できるよう、弾力的に取り扱うこと」と都道府県に通知しており、年度途中の追加申請でも遡及支給される運用が行われています(出典:文部科学省 高等学校等就学支援金制度)。
§6 年収帯別シミュレーション(5パターン)
2026年度新制度では所得制限が廃止されたため、日本国籍等の生徒は全世帯が私立高校上限額457,200円の対象です。学校種別に受給額の上限を示します。
45.72万円/年
33.72万円/年
11.88万円/年
45.72万円/年
| モデル | 世帯年収(給与) | 公立高校 受給額 | 私立高校(全日制)受給額 |
|---|---|---|---|
| ① 専業主婦/夫+子1人 | 400万円 | 118,800円 | 457,200円 |
| ② 共働き夫婦+子1人 | 600万円(夫400/妻200) | 118,800円 | 457,200円 |
| ③ 共働き夫婦+子2人 | 700万円(夫450/妻250) | 118,800円 | 457,200円 |
| ④ 単身世帯主+子1人 | 910万円 | 118,800円 | 457,200円(旧制度では118,800円) |
| ⑤ 高所得+子1人 | 1,200万円 | 118,800円(旧制度では0円) | 457,200円(旧制度では0円) |
§7 高等学校等就学支援金 vs 高校生等奨学給付金の違い
混同されやすい2制度を整理します。
| 比較項目 | 就学支援金 | 奨学給付金 |
|---|---|---|
| 目的 | 授業料を支援 | 授業料以外(教科書・教材・通学費等)を支援 |
| 所得要件 | 2026年度から撤廃(全世帯対象) | 令和8年度から年収490万円程度まで拡充(生活保護・非課税世帯は満額、270〜490万円世帯は段階的給付) |
| 返還 | 不要 | 不要 |
| 申請先 | 学校経由 e-Shien | 居住する都道府県(学校経由あり) |
| 国の補助率 | 私立:国3/4・都道府県1/4 | 1/3(都道府県事業に対する補助) |
| 受給代理 | 学校が代理受領 | 家庭口座に振込 |
【ポイント】 令和8年度から奨学給付金の対象が年収490万円程度まで拡大されました。非課税世帯以外でも対象となる世帯が増えているため、「うちは非課税じゃないから対象外」と思い込まず、居住する都道府県に確認してください。非課税世帯は「就学支援金(授業料最大45.72万円)+奨学給付金(教科書等)」の併用受給が可能です(出典:文部科学省 高校生等奨学給付金)。
奨学給付金の年額は世帯区分(生活保護/非課税)、子の順位(第1子/第2子以降)、国公立か私立かで異なります。具体的な金額は都道府県により上乗せがあるため、必ず文部科学省 高校生等奨学給付金から都道府県問合せ先を確認してください(年額の詳細は文部科学省公表の最新パンフレット要確認)。
医療費の高額負担をカバーする高額療養費制度の自己負担上限、子育て世帯の現金給付の柱である児童手当の所得制限撤廃と年間受給額と組み合わせると、高校3年間の家計設計が立てやすくなります。
§8 よくある質問(FAQ)
Q1. 2026年4月時点で高校2年生・3年生でも所得制限撤廃の対象になりますか
A. はい、対象です。学年・在学開始年に関係なく、2026年4月以降の授業料分から所得制限なしで支給されます。在校生は4月の意向登録(または収入状況届出)でe-Shienから受給意思を改めて表示する必要がある場合があるため、学校からの案内を必ず確認してください。出典:文部科学省 高校生等への修学支援。
Q2. 私立高校に通っていますが、年収600万円です。支援は受けられますか
A. 2026年度の新制度では所得制限が撤廃されているため、年収600万円でも私立高校(全日制)在学の場合、最大45万7,200円(457,200円)/年を受給できます(日本国籍等の生徒)。旧制度にあった「年収590万円未満」「年収910万円未満」による支給区分は廃止されました。e-Shienで意向登録・収入状況届出を行えば、所得書類の追加提出も原則不要です。出典:文部科学省 Q&A。
Q3. 親が海外赴任中で日本にいません。就学支援金は受けられますか
A. 親権者の一方が国内、一方が海外居住の場合は、日本在住の親のみの課税証明書で所得判定を行います。海外勤務手当等は判定に算入されません。ただし、海外居住の親の所得が反映されない結果、判定額が下がって加算対象になる代わりに、家計実態と支給額が乖離するケースがあるため、学校・都道府県への相談が確実です。出典:文科省Q&A Q14・Q15。
Q4. 公立から私立、私立から通信制に転学した場合、支給期間はどう計算しますか
A. 就学支援金の支給期間は学校種によって異なります。全日制・昼間定時制は36月、夜間定時制・通信制は48月が上限です。全日制から通信制へ転学した場合は、通信制の48月枠をもとに「48月 −(全日制在籍月数 × 4/3)」で残期間を計算します。例えば全日制(公立)を20月で転学した場合は「48月 −(20月 × 4/3)= 48月 − 26.7月 = 21.3月」が通信制での残期間です(通信制は単位制で計算係数が異なるため)。詳細は文科省Q&A Q22で計算式が示されています。
Q5. 高校中退してから再入学した場合、もう一度受けられますか
A. 再入学後の学校種に応じた受給対象期間(全日制:36月、定時制・通信制:48月)の枠が残っていれば再申請が可能です。前回の在籍期間が消化期間としてカウントされるため、長期ブランク後の編入や定時制への再挑戦でも残月数の範囲で支給を受けられます。手続きは編入先の学校経由でe-Shien登録を行います。出典:文部科学省 高等学校等就学支援金制度。
Q6. 父親が転職して年収が大きく下がりました。年度途中で増額されますか
A. 「家計急変支援」の対象になり得ます。失職・離婚・死亡・長期療養等で世帯収入が急減した場合、急変後の見込所得で再判定し、就学支援金と同等の支援が受けられる仕組みです。事由発生から速やかに学校・都道府県に申し出てください。支給限度額は月33,000円(公立は月9,900円)。出典:文部科学省 家計急変支援。
Q7. 多子世帯ですが、上の子はもう大学生で扶養から外れています。多子加算は受けられますか
A. 多子加算の「3人以上」は税法上の扶養に入っている子で判定されます。大学生の上の子を扶養親族として申告している場合は対象になりますが、本人がアルバイト等で扶養から外れている場合はカウントされません。マイナンバーから扶養状況が確認されるため、年末調整・確定申告で扶養申告を正しく行っておくことが重要です。出典:文部科学省 高等学校等就学支援金制度。なお、進学後の大学等向け多子世帯支援(給付型奨学金)は別制度のため、JASSO 多子世帯支援拡充で別途確認してください。
§9 まとめ・アクションチェックリスト
2026年度の就学支援金は「日本国籍等の全高校生が所得制限なしで受給対象」「私立高校(全日制)の上限は45.72万円に引き上げ」「多子世帯は所得制限なしで授業料相当額まで拡充」が三本柱です。在校生・新入生ともにe-Shien経由の意向登録と7月の収入状況届出を確実に済ませることが最重要です。
出典・参考法令
- 内閣法制局 最近公布された法律 令和8年法律第8号(公布日・法律番号)
- 文部科学省 高校生等への修学支援(2026年度新制度概要)
- 文部科学省 高等学校等就学支援金制度(制度詳細・施行通知)
- 文部科学省 制度Q&A(所得判定計算式・転編入・海外居住)
- 文部科学省 e-Shien案内(オンライン申請)
- 文部科学省 家計急変支援
- 文部科学省 高校生等奨学給付金
- 文部科学省 令和8年度版リーフレット PDF
- 文部科学省 令和8年度都道府県向け資料 PDF
- JASSO 多子世帯支援拡充
FAQ Schema用
faq:
– q: “2026年4月時点で高校2年生・3年生でも所得制限撤廃の対象になりますか”
a: “対象です。学年・在学開始年に関係なく、2026年4月以降の授業料分から所得制限なしで支給されます。在校生は4月の意向登録または7月の収入状況届出でe-Shienから受給意思を表示してください。”
– q: “私立高校で年収600万円の場合、就学支援金はいくら受けられますか”
a: “2026年度新制度では所得制限が撤廃されたため、年収600万円でも私立高校(全日制)在学なら最大457,200円/年を受給できます(日本国籍等の生徒)。旧制度の『590万円未満』という条件は廃止されています。”
– q: “親が海外赴任中ですが、就学支援金は受けられますか”
a: “親権者の一方が国内、一方が海外居住の場合、日本在住の親のみの課税証明書で判定します。海外勤務手当は算入されません。”
– q: “公立から私立、私立から通信制に転学した場合の支給期間は”
a: “学校種によって上限が異なります。全日制・昼間定時制は36月、夜間定時制・通信制は48月が上限です。全日制から通信制へ転学した場合は『48月−(全日制在籍月数×4/3)』で残期間を計算します。”
– q: “高校中退から再入学した場合、再受給できますか”
a: “再入学後の学校種に応じた受給対象期間(全日制36月・定時制/通信制48月)の枠が残っていれば可能です。前回在籍期間は消化期間としてカウントされ、編入先でe-Shien再登録します。”
– q: “年度途中で家計急変が起きた場合、増額されますか”
a: “家計急変支援の対象になり得ます。失職・離婚・死亡・長期療養等で収入急減した場合、急変後の見込所得で再判定され、月最大33,000円(公立は月9,900円)の支援が受けられます。”
– q: “奨学給付金は非課税世帯以外でも受けられますか”
a: “令和8年度から奨学給付金の対象が年収490万円程度まで拡大されました。生活保護・非課税世帯は満額、年収270〜490万円程度の世帯も段階的給付の対象となっています。詳細は居住する都道府県の教育委員会に確認してください。”
– q: “多子世帯加算は上の子が大学生でも対象ですか”
a: “税法上の扶養に入っている子が3人以上いれば対象です。大学生の上の子を扶養親族として申告していれば多子加算の判定に含まれます。”


