処遇改善加算の計画書作成・届出ガイド|記入例・ミス事例・実績報告の実務

本記事は法令・通達・官公庁資料に基づき編集部が作成・検証しています。個別の法的・税務判断ではありません。最新の法令はe-Gov法令検索でご確認ください。
処遇改善加算の計画書作成・届出ガイド|記入例・ミス事例・実績報告の実務
目次▼

最終更新日: 2026年9月14日
本記事は、介護職員等処遇改善加算の計画書の作成方法・届出手続き・実績報告に特化した実務ガイドです。現行の根拠通知は老発0313第6号(令和8年3月13日)「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」です。加算率の全サービス一覧・6区分体系の制度解説は関連記事に譲り、本記事では計画書の記入例・届出スケジュール・差戻し事例に絞って解説します。


関連記事
– 処遇改善加算2026年6月改定|新区分Iロ・IIロの要件と6区分の加算率一覧 — 2026年6月臨時改定による6区分体系・新設Iロ・IIロの生産性向上要件・全サービス加算率を解説
– 介護報酬改定2026年6月|基本単位数は据え置き、変わったのは処遇改善加算 — 2026年改定の全体像・LIFE関連加算・経営シミュレーション
– 障害者法定雇用率2.7%引上げ2026年7月 — 介護・福祉事業所にも影響する障害者雇用率の引上げと実務対応


いまの加算の全体像(2026年9月時点)

介護職員等処遇改善加算は、2024年6月に旧3加算(介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算)を一本化する形で創設された。移行のための経過措置区分だった加算Ⅴは2025年3月末で廃止済み。そして2026年6月の臨時改定により、Ⅰロ・Ⅱロが新設されて6区分(Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳ)に拡充され、これまで対象外だった訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援等にも対象が広がった。この改定はすでに施行済みである。改定では、介護職員のみならず介護従事者を対象に月1.0万円(3.3%)の賃上げを実現する措置が講じられ、生産性向上や協働化に取り組む事業者の介護職員にはさらに月0.7万円(2.4%)が上乗せされる(厚生労働省「令和8年度介護報酬改定の概要」)。

制度の全体像・6区分の加算率一覧・新設区分Ⅰロ・Ⅱロの詳しい要件は処遇改善加算2026年6月改定ガイドで解説している。本記事では、計画書作成・届出・実績報告の実務に必要な範囲で、代表的なサービスの加算率のみを示す。

代表的なサービスの加算率(令和8年6月以降)

サービス区分 Ⅰイ Ⅰロ Ⅱイ Ⅱロ Ⅲ Ⅳ
訪問介護 27.0% 28.7% 24.9% 26.6% 20.7% 17.0%
通所介護 11.1% 12.0% 10.9% 11.8% 9.9% 8.3%
介護老人福祉施設(特養) 16.3% 17.6% 15.9% 17.2% 13.6% 11.3%

全15サービスの加算率一覧は処遇改善加算2026年6月改定ガイドを参照。

令和8年6月から新たに対象化されたサービス(単一加算率)

サービス区分 加算率
(介護予防)訪問看護 1.8%
(介護予防)訪問リハビリテーション 1.5%
居宅介護支援、介護予防支援 2.1%

これらのサービスは令和8年5月まで加算算定の対象外だった。

加算算定の対象外サービス(令和8年6月以降)

(介護予防)福祉用具貸与、特定(介護予防)福祉用具販売、(介護予防)居宅療養管理指導の3つのみが対象外である。居宅介護支援・介護予防支援は上記のとおり令和8年6月から対象化されているため、対象外に含めないこと。


算定要件の整理

月額賃金改善要件

処遇改善加算の共通要件として、賃金改善額のうち一定割合を基本給又は決まって毎月支払われる手当(以下「基本給等」)の改善に充てることが求められる。この割合は、

仮に処遇改善加算Ⅳを算定した場合の加算見込額 × 1/2 ≦ 基本給等の改善に充てる額

である。自事業所が加算Ⅳ以外の区分(Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ)を算定する場合も、基準となるのは自区分の加算見込額ではなく「仮に加算Ⅳを算定した場合の加算見込額」である点に注意する。

通知の注記(老発0313第6号): 処遇改善加算を未算定の事業所等が新規に算定し始める場合を除き、本要件を満たすために賃金総額を新たに増加させる必要はない。基本給等以外の手当又は一時金により行っている賃金改善の一部を減額し、その分を基本給等に付け替えることで、本要件を満たすこととして差し支えない。

つまり、すでに一時金や諸手当で賃金改善を行っている事業所は、原資を新たに増やさなくても、内訳の付け替えだけで要件を満たせるケースが多い。

キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅴ

要件 内容
キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系) 介護職員の職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系を整備し、就業規則等で明文化のうえ全介護職員に周知する
キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施) 介護職員の資質向上の目標と具体的な研修計画を策定し、研修の実施又は研修機会の確保を行う。資格取得支援(勤務シフト調整・費用援助等)を含む
キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組み) 経験年数・資格・評価に基づく昇給の仕組み(昇給時期の明確化を含む)を設け、就業規則等で明文化する
キャリアパス要件Ⅳ(改善後の賃金水準) 経験・技能のある介護職員のうち1人以上について、賃金改善後の賃金見込額が年額440万円以上となること(処遇改善加算による賃金改善以前から440万円以上の者は除く)
キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置) サービス類型ごとに定められたサービス提供体制強化加算・特定事業所加算等の届出により、介護福祉士等の配置を担保する

加算区分別の必要要件

要件 Ⅰイ・Ⅰロ Ⅱイ・Ⅱロ Ⅲ Ⅳ
①月額賃金改善要件 必須 必須 必須 必須
②キャリアパス要件Ⅰ(任用・賃金体系) 必須 必須 必須 必須
③キャリアパス要件Ⅱ(研修) 必須 必須 必須 必須
④キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組み) 必須 必須 必須 不要
⑤キャリアパス要件Ⅳ(年額440万円) 必須 必須 不要 不要
⑥キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等配置) 必須 不要 不要 不要
⑦職場環境等要件 必須(詳細は次項) 必須(詳細は次項) 必須(詳細は次項) 必須(詳細は次項)
⑧令和8年度特例要件 ロのみ必須 ロのみ必須 不要 不要

加算Ⅳは、キャリアパス要件Ⅰ(任用・賃金体系)とキャリアパス要件Ⅱ(研修)の両方が必須である。「いずれか一方でよい」という扱いはない。旧・介護職員処遇改善加算Ⅲ(2024年度に廃止済みの旧制度)には「どちらか1つを実施」とする要件があったが、現行の加算Ⅳには存在しない。要件を1つしか整備せずに加算Ⅳを届け出ると、要件未達=過誤調整(遡及返還)に直結するため注意する。

職場環境等要件

加算区分 5分野(入職促進・資質向上・両立支援・心身の健康管理・やりがい) 生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組 見える化
Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ 各分野2以上 3以上(うち⑰又は⑱は必須) 必要
Ⅲ・Ⅳ 各分野1以上 2以上 不要

生産性向上推進体制加算を算定している場合は、「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」の要件を満たすものとして扱われる。また、1法人1施設のみを運営する小規模事業者は、取組項目のうち㉔(内容は通知別紙1表4を参照)を実施していれば同要件を満たす。

取組分野の名称は「生産性向上のための業務改善の取組」から「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」に変わっている。見える化要件(Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロのみ必須)は、介護サービス情報公表システムでの公表、または当該制度の対象外の場合は事業所ホームページ等での公表で満たす。

令和8年度特例要件(Ⅰロ・Ⅱロの上乗せ要件)

加算Ⅰロ・Ⅱロ(6区分体系で新設された上位区分)を取得するには、Ⅰイ・Ⅱイの要件に加えて「令和8年度特例要件」を満たす必要がある。内容は、生産性向上・協働化に関する次のいずれか1つ。

  • (ア)ケアプランデータ連携システムの利用(対象は訪問・通所系および多機能系・短期入所のサービス)。未利用でも、令和9年3月末までの加入・利用を誓約すれば可
  • (イ)生産性向上推進体制加算Ⅰ又はⅡの算定(対象は多機能系・短期入所および施設系・特定施設のサービス)。未算定でも、算定を誓約すれば可
  • (ウ)社会福祉連携推進法人への所属(誓約による代替はない)

サービス類型によって選べる選択肢が異なる。全対象サービスの当てはめは処遇改善加算2026年6月改定ガイドに譲るが、実務上の要点は次項で述べる「令和8年度の誓約措置」そのものの利用条件にもなっていることである。

令和8年度の誓約による代替(経過措置)

令和8年度は、②キャリアパス要件Ⅰ・③要件Ⅱ・④要件Ⅲ・⑤要件Ⅳ・⑦職場環境等要件の5項目について、実際の整備が間に合っていなくても、「令和9年3月末までに整備を行う」ことを処遇改善計画書で誓約すれば、加算の申請時点から要件を満たしたものとして取り扱われる経過措置がある。誓約した場合は、令和9年3月末までに実際に整備を行い、実績報告書でその旨を報告する必要がある。未整備のまま令和9年3月末を過ぎると、遡って要件未達=過誤調整の対象になる。

この誓約が使えるのは、前項の「⑧令和8年度特例要件」を満たす(又は同じく令和9年3月末までの整備を誓約する)事業所等に限られる。 特例要件を満たさない、又は満たす見込みのない事業所は、令和8年度時点でキャリアパス要件・職場環境等要件を現に整備していなければならない。

ここは読み違えやすいので補足する。「加算区分別の必要要件」表で⑧特例要件が「不要」とされているのは、Ⅰイ・Ⅱイ・Ⅲ・Ⅳを算定するために⑧を満たす必要はないという意味である。一方、この誓約措置は⑧の充足(又は誓約)を別途の利用条件とする。したがって、たとえば加算Ⅳを狙う事業所が、キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱの未整備を誓約で補いたい場合には、⑧特例要件を満たす(又は誓約する)必要がある。⑧に手を出さないのであれば、加算Ⅳであってもキャリアパス要件Ⅰ・Ⅱと職場環境等要件を申請時点で現に整備していなければならない。

①月額賃金改善要件(実際の賃金支払を伴う要件)には、この誓約による代替はない。


計画書の作成手順【記入例付き】

様式と入手先

処遇改善計画書は別紙様式2-1から別紙様式2-3までの様式一式で作成する。通知上の呼称は、2-1が「総括表」、2-2が「個票(4、5月)」、2-3が「個票(6月以降)」である。令和8年度は4・5月分と6月分以降で加算率・区分が異なるため、個票が2枚に分かれている点に注意する。実績報告書は別紙様式3-1及び別紙様式3-2、加算区分・配分方法の変更届は別紙様式4、賃金改善が計画どおり行えない特別の事情に係る届出書は別紙様式5を使う。

入手先: 厚生労働省「介護職員の処遇改善:加算の申請方法・申請様式」https://www.mhlw.go.jp/shogu-kaizen/apply.html

注意: 都道府県ホームページに転載された様式では、Excelの計算式が正しく反映されないケースが報告されている。計算式に不具合がある場合は、厚生労働省公式ページからの再ダウンロードを推奨する。

賃金改善額の算定方法と記載例

計画書に記載する賃金改善額は、以下の手順で算定する。

ステップ1: 加算見込額の算出

加算見込額 = 介護報酬総額(見込み)× 加算率

【記載例】通所介護事業所(加算Ⅱイ取得の場合)

項目 金額
年間介護報酬総額(見込み) 30,000,000円
加算率(通所介護・加算Ⅱイ、令和8年6月以降) 10.9%
加算見込額 3,270,000円

ステップ2: 賃金改善所要額の計算

賃金改善所要額 = 賃金改善後の総額 − 賃金改善前の総額
  • 賃金改善前の総額: 加算を算定しない場合の賃金水準(前年度実績ベース)
  • 賃金改善後の総額: 加算算定に伴い引き上げた後の賃金水準

重要: 賃金改善所要額は加算見込額を上回るように計画する必要がある(加算額以上の賃金改善を行うことが要件)。

ステップ3: 月額賃金改善要件の判定

仮に加算Ⅳを算定した場合の加算見込額 × 1/2 ≦ 基本給等の改善に充てる額

【記載例】(通所介護・加算Ⅱイの事業所。加算Ⅳの加算率は通所介護で8.3%)

項目 金額
(再掲)加算見込額=加算Ⅱイの見込額 3,270,000円
賃金改善所要額(合計) 3,300,000円
仮に加算Ⅳを算定した場合の加算見込額(30,000,000円×8.3%) 2,490,000円
月額賃金改善要件のライン(上記×1/2) 1,245,000円
うち基本給・毎月の手当の引上げ分 1,800,000円
うち賞与・一時金等の引上げ分 1,500,000円
判定① 賃金改善所要額 ≧ 加算見込額 3,300,000円 ≧ 3,270,000円 → 充足
判定② 基本給等の改善額 ≧ 月額賃金改善要件のライン 1,800,000円 ≧ 1,245,000円 → 充足

判定は2つある。「加算額以上の賃金改善を行うこと」(ステップ2)と「月額賃金改善要件」(ステップ3)は別の要件であり、両方を満たす必要がある。月額賃金改善要件だけを見て「1,245,000円を基本給等に充てれば足りる」と判断すると、加算額以上の賃金改善という大前提を落とすことになる。

基本給等への充当額がラインを下回る場合は、既存の一時金・諸手当の一部を基本給等へ付け替えることで、賃金総額を増やさずに要件を満たせる(前項の通知注記を参照)。

対象職員の範囲と配分計画の立て方

新加算では対象職員の範囲が柔軟化されているが、計画書作成にあたっては配分方針を明確にする必要がある。

対象職員の範囲

【配分の優先順位(原則)】
  介護職員(常勤・非常勤・パート) ← 最優先
    ↓
  その他の職種(看護師・事務員・栄養士等) ← 事業所判断で柔軟に配分可
    ↓
  管理者・役員 ← 兼務の場合、介護職員としての勤務分に限定

配分ルール(旧制度との比較)

項目 旧制度(旧3加算) 新制度(処遇改善加算)
配分対象 加算により異なる(処遇改善加算:介護職員のみ/特定処遇改善加算:経験・技能のある介護職員に重点) 介護職員への配分を基本としつつ、事業所内で柔軟に配分可能(介護職員以外も対象可)
職種間の配分比率 特定処遇改善加算では3グループ間で配分比率のルールあり 職種間の配分比率ルールは撤廃
基本給への反映 ベースアップ等支援加算は基本給等の引上げに充当 仮に加算Ⅳを算定した場合の加算見込額の1/2以上を基本給等の改善に充てる(月額賃金改善要件)
配分の制限 職種・グループ間の厳格なルールあり 「職務内容や勤務実態に見合わない著しく偏った配分」は禁止

実務上のメリット: 配分ルールの柔軟化により、事務職員・相談員・管理栄養士等への配分も可能となり、事業所全体の処遇改善が図りやすくなった。ただし、あくまで介護職員の処遇改善が主目的であることに留意する。

【専門家の視点】 経営コンサルタント・介護事業経営の立場から:配分ルール柔軟化の最大のリスクは「介護職員以外への配分に偏る」ことではなく、「配分方針が曖昧なまま運用を開始する」ことである。職種間比率のルールが撤廃されたからこそ、事業所独自の「配分方針書」を作成し、理事会・経営会議で承認を得たうえで全職員に開示することが不可欠。具体的には「介護職員70%・看護職員15%・その他職種15%」のような目安比率を明示し、毎年度の実績報告時に乖離がないか検証する仕組みを設けるとよい。この透明性が、職員間の不公平感を防ぎ、離職率低下にもつながる。

配分計画チェックリスト

計画書の作成・提出前に、以下の項目を確認する。

  • [ ] 加算見込額を上回る賃金改善所要額となっているか
  • [ ] 基本給等への充当額が「仮に加算Ⅳを算定した場合の加算見込額×1/2」以上になっているか
  • [ ] キャリアパス要件の充足状況を正確に記載しているか(未整備の場合、⑧令和8年度特例要件を満たす事業所等に限り、令和9年3月末までの誓約書で代替できる)
  • [ ] 職場環境等要件の取組項目を各分野から必要数以上選択しているか
  • [ ] 加算区分に誤りがないか(事業所番号との整合性)
  • [ ] 就業規則・賃金規程の添付(または整備予定の誓約書)があるか
  • [ ] 介護職員への周知方法を記載しているか
  • [ ] 法人内の全対象事業所の情報が漏れなく記載されているか

届出から実績報告までのスケジュール(令和8年度基準)

手続き 期日 備考
処遇改善計画書の提出(原則) 当該事業年度で初めて加算を算定する月の前々月の末日まで 都道府県知事等が延長を認める場合あり
令和8年4月・5月分の計画書 令和8年4月15日 経過済み
令和8年6月以降に新規算定する事業者の計画書 令和8年6月15日 経過済み
体制届出(居宅系サービス。居宅介護支援・介護予防支援を含む) 算定を開始する月の前月15日
体制届出(施設系サービス) 算定を開始する月の1日 短期入所生活介護・短期入所療養介護・(地域密着型)特定施設入居者生活介護・認知症対応型共同生活介護・地域密着型介護老人福祉施設等を含む
令和8年度の実績報告書 令和9年7月31日 最終加算支払月(令和9年3月分・支払は令和9年5月)の翌々月末日
令和7年度の実績報告書 令和8年7月31日 経過済み

表中の「令和8年4月15日」「令和8年6月15日」は、令和8年度の年度当初および6月の制度改正に限って設けられた個別の期日であり、「前々月の末日」という原則を当てはめた結果ではない。いずれも経過済みのため、これから算定を始める事業所には原則どおり「算定を開始する月の前々月の末日」が適用される。

「体制届」とは、介護給付費算定に係る体制等状況一覧表又は介護予防・日常生活支援総合事業費算定に係る体制等状況一覧表等の必要書類一式を指す。処遇改善計画書とあわせて、事業所の所在地を所管する指定権者へ提出する。なお、記事中の「国保連」は国民健康保険団体連合会の略で、介護給付費の請求先である。処遇改善加算の届出先は国保連ではなく指定権者なので混同しないこと。

届出の提出先

項目 内容
提出先(計画書・体制届・実績報告書) 事業所の指定権者(都道府県知事、政令指定都市の長、中核市の長)
変更届(別紙様式4) 計画書の内容に変更があった場合に提出。期日は体制届と同じで、居宅系サービスは変更後の加算の算定を開始する月の前月15日、施設系サービスは同1日まで(老発0313第6号 5⑴)。加算区分そのものを変更する場合・新規に算定する場合は、変更届出書に加えて別紙様式2-1〜2-3も提出する
特別な事情に係る届出書(別紙様式5) 賃金改善が計画どおり行えない特別の事情がある場合に提出
提出方法 郵送・窓口持参・電子申請(自治体により異なる)

実績報告書の作成ポイント

加算を算定した事業所は、各事業年度終了後に実績報告書(別紙様式3-1及び別紙様式3-2)を提出する義務がある。

提出期限: 各事業年度における最終の加算支払があった月の翌々月の末日まで(例: 令和8年度は令和9年3月分の支払が令和9年5月のため、令和9年7月31日)

実績報告書の主要チェックポイント:

  • [ ] 加算総額と実際の賃金改善総額を正確に記載しているか
  • [ ] 賃金改善額が加算総額を上回っていることを確認しているか(下回る場合は返還が必要)
  • [ ] 基本給等への充当額が「仮に加算Ⅳを算定した場合の加算見込額×1/2」以上であったことを確認しているか
  • [ ] 令和9年3月末までに誓約した整備事項を実際に行い、その旨を報告しているか
  • [ ] 根拠資料(賃金台帳等)を2年間保存する体制が整っているか
  • [ ] 職員への配分実績が計画書の内容と著しく乖離していないか

加算総額 > 賃金改善実績額の場合: 差額分は介護報酬の返還が必要となる。実績報告の段階で発覚するため、年度途中での進捗管理が重要である。


ありがちなミスと都道府県からの差戻し事例

処遇改善計画書の提出において、都道府県から差戻しとなる主なケースを紹介する。

No. ありがちなミス 対処法
1 事業所番号の記載誤り:複数事業所を運営する法人で、事業所番号と加算区分の組み合わせが不一致 提出前に事業所台帳と照合する
2 加算見込額の算定誤り:当年度の見込額ではなく古いデータで計算 直近の報酬実績をもとに合理的な見込みを算出する
3 月額賃金改善要件の判定誤り:分母を「賃金改善所要額の合計」など別の額と取り違え、正しい基準(仮に加算Ⅳを算定した場合の加算見込額)で計算していない 「仮に加算Ⅳを算定した場合の加算見込額×1/2」を基準に再計算する
4 キャリアパス要件・職場環境等要件の根拠書類不備 令和8年度は、⑧令和8年度特例要件を満たす事業所等に限り、令和9年3月末までに整備する旨の誓約書で代替できる(該当しない場合は現に整備が必要)
5 Excelの保護解除・数式破壊:色なしセル(自動計算セル)に手入力して数式を破損 厚生労働省公式の様式を使用し、色付きセルのみに入力する。入力前のファイルバックアップと、入力完了後のPDF出力による合計値の目視確認を徹底する
6 職場環境等要件の取組項目数不足:必要な分野数の取組を選択していない Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロは各分野2以上・生産性向上3以上、Ⅲ・Ⅳは各分野1以上・生産性向上2以上を満たしているか確認する
7 提出先の誤り:指定権者(都道府県・市町村)ではなく国保連に提出してしまう 事前に提出先を確認する(通常は指定権者)

今すぐやること:処遇改善加算 対応チェックリスト(2026年9月時点)

まだ算定を始めていない事業所

  • 訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援等、令和8年6月から新たに対象化されたサービスは、年度途中からでも算定を開始できる。処遇改善計画書の提出期日は「算定を開始する月の前々月の末日」が原則。例えば11月分から算定を始めたい場合、計画書の提出は9月末が目安になる
  • 体制届出は、居宅系サービスが算定開始月の前月15日、施設系サービスが算定開始月の1日

すでに算定している事業所

  • 加算区分の見直しを検討する。サービス類型によってはⅡロの加算率がⅠイを上回るケースがある(詳細な加算率一覧は処遇改善加算2026年6月改定ガイドを参照)。上位区分(Ⅰロ・Ⅱロ)を狙う場合は、⑧令和8年度特例要件の充足状況をあわせて確認する
  • 令和9年3月末までの誓約で何を約束したか(どのキャリアパス要件・職場環境等要件を、いつまでに整備すると誓約したか)を棚卸しし、実績報告に間に合うよう着手する
  • 令和8年度の実績報告(令和9年7月31日)に向けて、加算総額と賃金改善額の進捗を四半期ごとに確認する
  • 加算は賃金改善に使い切るお金であり、求人費や紹介手数料の原資ではない。採用手段ごとの実施率と効果、加算と採用予算の切り分けは介護事業所の人材確保と処遇改善の原資2026で整理している

FAQ:現場管理者からよくある質問

A

現在の要件充足状況と事業所の体制を踏まえて判断する。キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士配置)を満たせない場合はⅡ系列、昇給の仕組みが未整備の場合はⅣからの段階的な取得を検討する。Ⅰロ・Ⅱロを狙う場合は⑧令和8年度特例要件の充足も必要になる。全区分の加算率比較は処遇改善加算2026年6月改定ガイドを参照。

A

いいえ。配分対象は柔軟化されており、介護職員以外の職種(事務職員、看護師、管理栄養士等)にも配分可能である。ただし、介護職員への配分を基本とすることが前提であり、職務内容や勤務実態に見合わない著しく偏った配分は認められない。また、賃金改善総額は加算総額を上回る必要がある。

A

可能である。計画書の内容に変更が生じた場合は変更届(別紙様式4)を指定権者に提出する。期日は体制届と同じで、居宅系サービスは変更後の加算の算定を開始する月の前月15日、施設系サービスは同1日まで。加算区分そのものを変更する場合・新規に算定する場合は、変更届出書に加えて別紙様式2-1〜2-3も提出する。なお、就業規則を改訂した場合(介護職員その他の職員の処遇に関する内容に限る)は、その概要を変更届出書に記載し、実績報告書の提出時にあわせて届け出れば足りる。

A

加算額が賃金改善実績額を上回った場合、その差額分は介護報酬の返還が必要である。返還を避けるためには、年度途中で賃金改善の進捗状況を確認し、不足がある場合は追加の一時金支給等で対応することが重要である。実績報告書の提出期限(最終支払月の翌々月末日)までに正確に集計する。

A

はい。パート・非常勤職員も賃金改善の対象となる。派遣職員については、派遣元事業所との契約内容に基づき、実質的に賃金改善が行われる仕組みが確保されている場合は対象に含めることができる。ただし、計画書には対象職員の範囲を明確に記載する必要がある。

A

いいえ。キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅳ・職場環境等要件について「令和9年3月末までに整備する」旨の誓約で代替できるのは、⑧令和8年度特例要件(ケアプランデータ連携システムの利用、生産性向上推進体制加算Ⅰ・Ⅱの算定、社会福祉連携推進法人への所属のいずれか)を満たす、又は同じく誓約する事業所等に限られる。これに該当しない事業所は、令和8年度時点で各要件を現に整備している必要がある。加算Ⅲ・Ⅳを狙う場合も同じで、「加算Ⅲ・Ⅳの算定に⑧特例要件は不要」であることと、「誓約措置を使うには⑧が要る」ことは別の話である。また、①月額賃金改善要件(実際の賃金支払を伴う要件)には誓約による代替はない。

A

見える化要件とは、処遇改善に関する取組状況を介護サービス情報公表システム等で公表することを求めるもので、Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロの算定にあたって必要になる。具体的な取組内容や賃金改善の状況を外部に公表し、透明性を確保することが求められる。公表方法は、情報公表システムへの入力のほか、事業所のホームページへの掲載でも認められる。


まとめ

処遇改善加算は、計画書の作成・届出と実績報告の実務が要件充足そのものと同じくらい重要である。ポイントを整理すると以下のとおり。

ポイント 内容
現行区分 Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳ(6区分。令和8年6月から)
対象拡大 訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援等が令和8年6月から新たに対象化
月額賃金改善要件 仮に加算Ⅳを算定した場合の加算見込額の1/2以上を基本給等に充当
加算Ⅳの要件 キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱは両方とも必須(いずれか一方では不可)
計画書様式 別紙様式2-1〜2-3
届出先 指定権者(都道府県・政令市・中核市)
令和8年度の実績報告 令和9年7月31日まで
令和8年度の誓約措置 ⑧特例要件を満たす事業所等に限り、令和9年3月末までの整備誓約で代替可(月額賃金改善要件を除く)

参考資料・一次情報

本記事の作成にあたり、以下の公的資料を参照している。最新の情報は各機関の公式サイトで確認すること。

  1. 老発0313第6号「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」(令和8年3月13日厚生労働省老健局長通知) — https://www.mhlw.go.jp/shogu-kaizen/download/6_tsuuchi_kihontekikangaekata_jimushoritejun.pdf
  2. 介護職員の処遇改善(制度概要) — 厚生労働省
  3. 介護職員の処遇改善:加算の申請方法・申請様式 — 厚生労働省
  4. 令和8年度介護報酬改定の概要 — https://www.mhlw.go.jp/shogu-kaizen/download/5_R8_houshuu_kaitei.pdf
  5. 処遇改善加算2026年6月改定ガイド — 全サービスの加算率一覧・6区分の詳細要件

免責事項: 本記事は、2026年9月時点で公開されている法令・通知・公表資料に基づき作成した一般的な解説記事です。加算の届出・算定にあたっては、必ず最新の法令・通知及び所管の指定権者(都道府県・市町村等)の案内をご確認ください。本記事の内容に基づく届出・運用により生じた損害について、筆者及び運営者は一切の責任を負いません。個別の事案については、社会保険労務士や行政書士等の専門家にご相談されることを推奨します。

JG

実務ガイド編集部

AI執筆 + 編集部レビュー済み

本記事はAIが初稿を作成し、編集部が法令原文・官公庁通知・審議会資料等の一次情報と照合のうえ、内容を確認・編集しています。行政手続き・法改正・制度改正の実務情報を専門に扱う編集チームが、企業実務担当者・士業専門家向けに正確性の高いコンテンツを提供します。