はじめに――2026年4月、保険料に「新たな徴収」が始まった
2026年4月から、私たちが毎月支払っている公的医療保険料の中に、新たな項目が加わりました。それが「子ども・子育て支援金」です。
児童手当の拡充や、こども誰でも通園制度の整備など、少子化対策に必要な財源を「社会全体で連帯して支える」という考え方のもと、医療保険料に上乗せして徴収されます。給与明細や保険料通知書に新たな項目が現れた、という方も多いのではないでしょうか。
この制度は、会社員・自営業者・年金生活者を問わず、公的医療保険に加入するほぼすべての人に影響します。また企業にとっても、従業員負担分と並んで事業主負担分が発生し、給与計算システムや保険料申告の実務に対応が求められます。子どものいない世帯も一律に負担することから「独身税では」との指摘もあり、この点は「独身税」と呼ばれる子育て支援金の負担を検証で年収別の実額とあわせて整理しています。
本記事では、子ども・子育て支援金の制度概要から徴収の仕組み、保険料の算定方法、企業・個人それぞれが取るべき実務対応まで、わかりやすく解説します。
1. 子ども・子育て支援金とは何か
制度の概要と法的根拠
子ども・子育て支援金は、2024年に成立した「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」(令和6年法律第47号)に基づき創設された財源制度です。正式名称は「子ども・子育て支援納付金」とも呼ばれます。
この法律は「こども未来戦略」を具体化するためのものであり、次の3つの給付・事業の財源として充てられます。
- 児童手当の拡充(所得制限撤廃・高校生年代までの延長)
- こども誰でも通園制度(保育所等への通園支援)
- 育児休業給付の拡充(給付率の引き上げ等)
専門家コメント
子ども・子育て支援金は、従来の「子ども・子育て拠出金」(旧:事業主拠出金)とは別の制度で、拠出金は廃止されていません。両者は現行の子ども・子育て支援法に並んで規定されており、事業主は引き続き拠出金を負担したうえで、支援金の事業主負担分を新たに負うことになります。
子ども・子育て拠出金(従来) 子ども・子育て支援金(2026年4月〜) 根拠 支援法第69条第1項・第70条第2項 支援法の子ども・子育て支援納付金の規定 負担者 一般事業主のみ(法第69条第2項「一般事業主は、拠出金を納付する義務を負う」) 事業主と被保険者が折半 率 0.36%(施行令「千分の三・六」) 0.23%(2026年度・被用者保険一律) 賦課標準 厚生年金保険の標準報酬月額・標準賞与額 医療保険の標準報酬月額・標準賞与額 徴収 厚生年金保険料の徴収の例による(法第71条) 医療保険料とあわせて徴収 給与計算実務では、事業主負担の合計は「拠出金0.36%+支援金0.115%」(従業員負担は支援金0.115%のみ)になります。拠出金を支援金に置き換えてしまう設定ミスに注意してください。
財源規模と段階的引き上げ
政府は2028年度に約1兆円の支援金を確保することを目標としています。財源は段階的に拡大され、以下の3段階で引き上げが行われます。
約6,000億円
約8,000億円
約1兆円
2. 徴収の仕組み――どこから、どのように取られるのか
公的医療保険料への「上乗せ」方式
子ども・子育て支援金は、単独の保険料として徴収されるのではなく、既存の公的医療保険料に上乗せして徴収されます。対象となる医療保険は次の3種類です。
| 保険の種類 | 対象者 | 徴収方法 |
|---|---|---|
| 健康保険(協会けんぽ・健保組合) | 会社員・公務員等 | 毎月の保険料に上乗せ(労使折半) |
| 国民健康保険 | 自営業者・無職等 | 国保保険料に上乗せ(市区町村が徴収) |
| 後期高齢者医療制度 | 75歳以上 | 後期高齢者医療保険料に上乗せ |
実務ポイント
会社の給与担当者は、健康保険料率の改定として処理します。協会けんぽ加入企業であれば、協会けんぽから通知される新しい保険料額表を使用します。健保組合加入企業は、組合からの通知に従った対応が必要です。対象は2026年4月分(5月納付分)の保険料からで、実務上は5月支給の給与から天引きが始まります。給与計算ソフトの保険料テーブル更新を忘れないでください。
賃金・所得に応じた算定方式
支援金の額は、加入する保険の種類と被保険者の収入・報酬によって異なります。
① 健康保険(被用者保険)の場合
被用者保険(協会けんぽ・健保組合・共済組合)では、標準報酬月額および標準賞与額を基準に支援金率を乗じて算出されます。健康保険法第160条の2は「子ども・子育て支援金率は、…政令で定める率の範囲内において、保険者が定める」としており、制度上は保険者が定める建て付けです。ただし2026年度は、国が示した共通の率が被用者保険で一律に適用されています。
2026年度(令和8年度)の支援金率は0.23%
こども家庭庁の資料は「被用者保険(健保組合、協会けんぽ、共済組合)に共通の支援金率(一律の率):0.23%」と明記しています。協会けんぽも、国から示された一律の支援金率を踏まえて0.23%としています。労使折半のため、本人負担は約半分(0.115%相当)です。
支援金は健康保険法上、標準報酬月額・標準賞与額に「一般保険料率と子ども・子育て支援金率とを合算した率」を乗じて算出される仕組みで、健康保険料と一体で徴収されます。この構造は、後述する育児休業中の免除の扱いにも効いてきます。
徴収の開始時期: 協会けんぽの一般被保険者は令和8年4月分(5月納付分)から。実務上は5月に支給される給与からの天引きが最初になります(任意継続被保険者・日雇特例被保険者は令和8年4月分=4月納付分から)。「4月の給与から引かれていないので自社は対象外」という判断は誤りです。
約230円/月
約345円/月
約575円/月
注意: 上記は2026年度の目安額です。支援金率0.23%は被用者保険で一律のため保険者による差はありませんが、実際の控除額は自身の標準報酬等級によって変わります。正確な金額は加入する保険者からの通知を確認してください。
段階的な引き上げスケジュール
支援金は3年かけて段階的に導入されます(総額の目安は前掲「財源規模と段階的引き上げ」を参照)。ただし法律が定めているのは「支援金総額」の目安であって、年度ごとの支援金率ではありません。 率が示されているのは2026年度の0.23%だけで、2027年度以降の率は本記事の更新時点(2026年8月)では公表されていません。
【注意】年度ごとの率を先読みして予算を組まないこと。 支援金は「社会保障の歳出改革等による社会保険負担の軽減効果の範囲内で導入する」ことが法定されています。2026年度は、歳出改革等による軽減効果が令和5年度からの累計で0.60兆円程度積み上がったため、目安の6,000億円(=0.60兆円)が軽減効果の範囲に収まることを確認したうえで総額が決定されました。2027年度以降も同じ確認が入るため、総額が目安どおりに伸びる保証はなく、率が総額に比例する保証もありません。
2026年度の1人あたり負担額(こども家庭庁試算・平均月額)
| 加入する制度 | 平均月額 | 負担者 |
|---|---|---|
| 被用者保険(健保組合・協会けんぽ・共済組合) | 約550円 | 被保険者一人当たり(本人拠出分。別途、同額を事業主が負担) |
| 国民健康保険 | 約300円 | 一世帯当たり(全額自己負担) |
| 後期高齢者医療制度 | 約200円 | 被保険者一人当たり(全額自己負担) |
これは制度完成時ではなく初年度(2026年度)の平均額です。あくまで全加入者の平均であり、高収入の方はそれ以上、低収入の方はそれ以下となります。
② 国民健康保険(国保)の場合
国保加入者(自営業者・フリーランス・無職など)は、市区町村が運営する国民健康保険料に支援金相当分が上乗せされます。算定方式は自治体によって「所得割」「均等割」「資産割」などの組み合わせが異なりますが、所得割に上乗せされるケースが多くなります。
国保の場合、事業主という概念がないため負担は全額自己負担です。
実務ポイント(自営業・フリーランスの方へ)
国保保険料の年度更新通知が届いた際に、支援金分が上乗せされた金額になっています。前年度と保険料が増加している場合、支援金分も含まれていると考えてください。確定申告で使用する社会保険料控除の額は、支援金を含めた国保保険料全額が対象となります。
③ 後期高齢者医療制度の場合
75歳以上の方が加入する後期高齢者医療制度でも、支援金は保険料として上乗せ徴収されます。低所得者への軽減措置は従来通り継続されます。
3. 企業・事業主への影響と実務対応
事業主負担の発生
健康保険(被用者保険)加入の企業・事業主は、従業員の支援金と同額を事業主が負担します(労使折半の原則)。
たとえば従業員50人の会社で、全員の標準報酬月額の平均が30万円だとすると:
- 従業員1人あたりの支援金(労使合計):30万円 × 0.23% ≒ 690円/月
- うち事業主負担:345円/月
- 従業員50人合計の事業主負担:約17,250円/月(2026年度)
2027年度以降は総額ベースで6,000億円→8,000億円→1兆円と拡大する見込みのため、事業主負担も増加します。ただし年度ごとの支援金率は未公表であり、「2028年度に◯倍」という形での試算はできません。予算化する際は、率が公表される各年度の保険料率改定通知(協会けんぽは例年1〜3月に公表)を待って確定させてください。
345円/月
約17,250円/月
約20.7万円
【注意】上表は月額給与分のみの試算です。 支援金は標準賞与額にも同率がかかるため、賞与を年2回支給している企業では実際の年間負担はこれを上回ります。たとえば賞与が年間2か月分(平均60万円)であれば、従業員1人あたり60万円×0.23%÷2=690円が年額に加わり、50人で約3.5万円の追加となります。2027年度以降の欄を置いていないのは、支援金率が未公表で試算できないためです。
実務ポイント(経理・給与担当者向け)
事業主負担の支援金は、既存の社会保険料と同様に法定福利費として計上します。勘定科目の変更は不要ですが、内訳管理のために補助科目として「子ども・子育て支援金(事業主負担)」を設けておくと、将来の管理・開示に便利です。
給与計算・システム対応のチェックリスト
チェックリスト(企業担当者向け)
– [ ] 加入している健保組合または協会けんぽから、2026年4月改定の保険料額表・通知を受領・確認した
– [ ] 給与計算ソフト・人事システムの保険料テーブルを2026年4月分保険料(5月支給給与での控除)から更新した
– [ ] 子ども・子育て拠出金(0.36%・事業主のみ)の設定を消さずに、支援金の欄を追加した
– [ ] 給与明細書の項目・表示が新しい徴収額に対応しているか確認した
– [ ] 役員報酬についても同様に見直した
– [ ] 月次の社会保険料納付書の金額変更を経理部門と共有した
– [ ] 年度途中入社・退社者の保険料日割り計算に対応しているか確認した
給与明細・保険料通知の見方
2026年4月分の給与から、健康保険料の金額がわずかに増加します。給与明細上の表示方法は会社・システムによって異なりますが、一般的には以下のいずれかとなります。
- 「健康保険料」に一体として表示:従来の健康保険料に支援金を合算した金額が表示される
- 「子ども・子育て支援金」として別行表示:一部のシステムや健保組合では、内訳として別途表示される場合がある
専門家コメント
給与明細(支払明細書)の交付義務は、所得税法第231条第1項が根拠です。同項は「その給与等…の金額その他必要な事項を記載した支払明細書を、その支払を受ける者に交付しなければならない」と定めるにとどまり、社会保険料の内訳をどこまで分解して表示するかまでは規定していません。したがって支援金を健康保険料と合算して一体表示すること自体が同項に反するわけではありません。なお労働基準法施行規則第54条は「賃金台帳」の記載事項(労基法第108条に基づき使用者が備え付ける内部記録)を定めた規定であり、従業員に交付する給与明細の根拠条文ではありません。両者はしばしば混同されますが、別物です。
ただし従業員への説明という観点では、支援金を独立項目として表示するか、少なくとも社内通知・説明資料を用意することが実務上望ましいでしょう。
4. 個人への影響と注意点
被扶養者・専業主婦(夫)は直接負担なし
健康保険の被扶養者(専業主婦・主夫、被扶養の家族等)は、直接保険料を支払っていないため、支援金も直接の負担はありません。ただし、世帯主(被保険者)が支払う保険料の中に支援金が含まれる形となります。
育児休業中の保険料免除との関係
育児休業中は健康保険料・厚生年金保険料が免除されますが、子ども・子育て支援金も同様に免除の対象となります。健康保険法第159条は、育児休業等をしている被保険者について「当該被保険者に関する保険料…は、徴収しない」と定めており、支援金は同法上「一般保険料率と子ども・子育て支援金率とを合算した率」を乗じて算出される保険料の一部だからです。支援金だけが別建てで徴収され続けることはありません。育休中の従業員については、事業主から保険者等への申出が済んでいるかをあわせて確認しておきましょう。
社会保険料控除への反映
支援金は保険料として徴収されるため、所得税・住民税の社会保険料控除の対象となります。年末調整では、健康保険料の一部として自動的に控除計算されるため、特別な手続きは不要です。国保加入者も同様に、国保保険料全体(支援金含む)が社会保険料控除の対象です。
低所得者・軽減措置
国民健康保険における低所得者向けの保険料軽減措置(7割・5割・2割軽減)は、支援金の上乗せ後も引き続き適用されます。生活保護受給者は公的医療保険の適用対象外のため、支援金の負担はありません。
チェックリスト(個人向け)
– [ ] 勤め先からの給与明細で4月分の健康保険料が増加していないか確認した
– [ ] 国保加入の場合は、自治体からの保険料決定通知書の内訳を確認した
– [ ] 育児休業中の場合、会社の給与・社会保険担当者に免除適用の確認をした
– [ ] 年末調整・確定申告で社会保険料控除の金額が正しく反映されるか確認した
5. 健保組合・協会けんぽごとの違い
制度上は「保険者が定める」が、2026年度は事実上一律
ここは誤解が生じやすいところなので、法律の建て付けと運用の実態を分けて整理します。
| 建て付け(健康保険法) | 2026年度の実態 | |
|---|---|---|
| 健康保険料率 | 協会けんぽは都道府県ごと、健保組合は組合ごとに設定 | 加入先によって異なる(協会けんぽの2026年度平均は9.9%) |
| 子ども・子育て支援金率 | 第160条の2「政令で定める率の範囲内において、保険者が定める」 | 被用者保険で共通の0.23%(こども家庭庁が「一律の率」と明記) |
つまり法律上は保険者に裁量の余地がありますが、2026年度に関しては、健保組合に加入していても協会けんぽに加入していても支援金率は0.23%で同じです。「健保組合だから支援金の率が違うのでは」という前提での試算は、2026年度については不要です。
ただし将来年度まで一律が続くと決まっているわけではありません。自社が健保組合に加入している場合は、組合から送付される「保険料率改定通知」で、健康保険料率と支援金率がそれぞれどう示されているかを毎年度確認してください。
年度更新(算定基礎届)との関係
毎年7月に行う算定基礎届(標準報酬月額の見直し)は従来通り実施されます。9月以降に標準報酬月額が変更になった場合は、支援金の額も連動して変わります。10月改定時の標準報酬月額変更の際も同様です。
実務ポイント
月額変更届(随時改定)が発生した場合も、健康保険料の変更と合わせて支援金の額が自動的に変わります。給与計算担当者は、標準報酬月額が変更になった月の翌月から、新しい金額で計算されていることを必ず確認してください。
6. よくある質問(FAQ)
はい、払います。子ども・子育て支援金は「社会全体で子育てを支援する」という考え方に基づいており、子どもの有無にかかわらず、公的医療保険に加入するすべての人が負担します。これは年金保険料を現役世代が負担して高齢者を支える「世代間扶養」と同様の考え方です。
従来の「子ども・子育て拠出金」は事業主のみが負担する制度でしたが、新しい「子ども・子育て支援金」は事業主と被保険者(従業員)が折半して負担します。
既存の拠出金は廃止されておらず、引き続き並行して存在します。 子ども・子育て支援法第69条第2項は現行法でも「一般事業主は、拠出金を納付する義務を負う」と定めており、同法施行令が拠出金率を「千分の三・六」(0.36%)としています。つまり事業主は、旧来の拠出金0.36%に加えて、新たに支援金の事業主負担分0.115%相当を負うことになります。
給与計算ソフトの設定では、拠出金の欄を支援金に「置き換える」のではなく、支援金の欄を追加するのが正しい対応です。両者は賦課標準も異なり、拠出金は厚生年金保険の標準報酬月額・標準賞与額、支援金は医療保険の標準報酬月額・標準賞与額を基礎とします(比較表は本記事冒頭の専門家コメントを参照)。
国保加入者の場合、市区町村から送付される「国民健康保険料(税)決定通知書」(通常は6〜7月頃)に支援金を含んだ年間保険料が記載されます。2026年度は2026年6〜7月頃に届く通知書から反映される予定です。納付方法(普通徴収・特別徴収)は従来通りです。
はい、対象です。社会保険(健康保険)の被保険者であれば、雇用形態に関わらず支援金の負担が発生します。ただし、パート・アルバイトで社会保険未加入(国保加入)の場合は、国保を通じた徴収となります。いずれにせよ、公的医療保険に加入しているすべての方が対象です。
多くの場合、給与明細上では健康保険料に一体化して表示されており、支援金が独立した項目として表示されない場合があります。健康保険料の金額が前月と比べてわずかに増加していれば、支援金が含まれていると考えられます。正確な内訳を確認したい場合は、会社の給与・社会保険担当者または加入する健保組合・協会けんぽに問い合わせてください。
2026年度の場合、標準報酬月額20万円なら約230円、30万円なら約345円、50万円なら約575円が本人負担分の目安です(標準報酬月額 × 0.23% ÷ 2)。こども家庭庁は被用者保険の被保険者一人当たり平均を月約550円と試算しています。賞与にも同率がかかるため、年収ベースでは月額換算より負担が増える点に注意してください。
2027年度以降は支援金総額が6,000億円→8,000億円→1兆円と拡大する見込みですが、年度ごとの支援金率は公表されていません。「◯年度に◯倍」という試算は現時点ではできません。支援金率は被用者保険で一律のため、健保組合か協会けんぽかによる差はありません。
健康保険(協会けんぽ・健保組合)の場合、支援金は被保険者本人の標準報酬月額に基づいて算定されるため、扶養家族の人数は負担額に影響しません。被扶養者(配偶者や子ども)は直接の負担がなく、被保険者の保険料に含まれる形で徴収されます。一方、国民健康保険の場合は、自治体によっては均等割(加入者1人あたりの定額部分)に支援金が上乗せされるケースがあり、家族で国保に加入している場合は加入者数に応じて負担が増える可能性があります。詳細はお住まいの市区町村にご確認ください。
退職後は加入する医療保険が切り替わるため、支援金の徴収先も変わります。任意継続被保険者を選んだ場合は健保組合・協会けんぽを通じて、国保に切り替えた場合は市区町村を通じて徴収されます。転職先で新たに健康保険に加入した場合は、転職先の保険料率に基づいて自動的に計算されます。いずれの場合も支援金の負担自体がなくなることはありません。
はい、徴収されます。健康保険料は毎月の標準報酬月額だけでなく標準賞与額(賞与支給額の千円未満切捨、年度上限573万円)にも保険料率を乗じて徴収される仕組みのため、上乗せ徴収される支援金も同じく賞与から控除されます。たとえば2026年度の協会けんぽ拠出率0.23%(労使合計)で賞与50万円なら、本人負担は50万円×0.115%=約575円が賞与明細から控除されます。賞与時の社会保険料計算をしている給与計算ソフトでは、保険料率テーブルを2026年4月分から更新していれば自動的に反映されます(参考:日本年金機構「標準報酬月額、賞与等」 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/index.html )。
産前産後休業期間中(産休)と育児休業期間中(育休)は、健康保険料・厚生年金保険料と同様に支援金も免除されます。免除を受けるには事業主が「産前産後休業取得者申出書」または「育児休業等取得者申出書」を年金事務所・健保組合に提出する必要があり、本人の手続きは原則不要です。免除期間中も健康保険の被保険者資格は継続するため医療機関の受診や出産育児一時金の受給に支障はありません。なお、出産手当金・育児休業給付金そのものからは支援金は徴収されません(給付金は標準報酬月額の算定対象外のため)。男性の育休でも同じく免除対象になるので、取得時は会社の給与担当者へ申し出てください。
支援金は健康保険料に上乗せして徴収されるため、全額が所得税・住民税の社会保険料控除の対象です。会社員の場合は給与天引きの健康保険料に含まれるため、年末調整で会社が自動的に控除計算するので個人の追加手続きは不要です。国保加入の自営業者は確定申告の社会保険料控除欄に支援金を含む国保保険料の年額を記入します(市区町村から送付される「国民健康保険料納付済額のお知らせ」に記載の合計額をそのまま転記すればOK)。なお市区町村の通知書では、支援金分が個別行として記載される場合と、保険料合計に含めて表示される場合がありますが、いずれの表示方式でも合計額の全額をそのまま社会保険料控除欄に転記すれば問題ありません。生命保険料控除のように別枠の上限額はなく、支払った金額の100%が所得から差し引かれる点は従来の社会保険料控除と同じ扱いです(参考:国税庁「No.1130 社会保険料控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1130.htm )。
まとめ
子ども・子育て支援金は、2026年4月から公的医療保険料に上乗せして徴収が始まった新たな財源制度です。主なポイントを整理します。
制度の骨格
– 根拠法:子ども・子育て支援法等改正(令和6年法律第47号)
– 目的:児童手当拡充・こども誰でも通園制度・育休給付拡充の財源
– 対象:公的医療保険加入者すべて
– 徴収方法:各公的医療保険料に上乗せ(健保は労使折半、国保は全額自己負担)
2026年度の支援金率は0.23%(被用者保険で一律・労使折半)。こども家庭庁の試算では、被用者保険の被保険者一人当たり平均が月約550円、国民健康保険は一世帯当たり約300円、後期高齢者医療制度は被保険者一人当たり約200円です。支援金総額は2026年度6,000億円→2027年度8,000億円→2028年度1兆円を目安に段階導入されますが、2027年度以降の率は未公表です。
企業の実務担当者は、給与計算システムの保険料テーブル更新・給与明細の確認・事業主負担の経理処理という3点を最優先で対応してください。
個人(特に国保加入者)は、夏頃に届く保険料通知書の内容を確認し、社会保険料控除に正しく反映されているか年末調整・確定申告時にチェックすることをおすすめします。
支援金率は毎年度改定されます。加入する健保組合・協会けんぽや市区町村からの通知・案内を見逃さず、最新情報を定期的に確認する習慣をつけておきましょう。
本記事は2026年8月時点の制度情報に基づいています。支援金率は被用者保険で一律ですが、保険料額は標準報酬等級によって異なり、国民健康保険・後期高齢者医療制度は保険者ごとの算定方式によります。詳細は加入する保険者または社会保険労務士にご確認ください。
参考文献・一次ソース
- こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」(令和8年3月・成育局支援金制度等準備室) https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001670257.pdf
- こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」(制度ページ) https://www.cfa.go.jp/policies/kodomokosodateshienkinseido
- 全国健康保険協会「協会けんぽの子ども・子育て支援金率について」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/about/business/insurance_rate/003/index.html
- 全国健康保険協会「令和8年度保険料率のお知らせ」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/lp/2026hokenryou/
- 子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)第69条〜第71条 — 拠出金の徴収等
- 子ども・子育て支援法施行令(平成26年政令第213号) — 拠出金率「千分の三・六」
- 子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律(令和6年法律第47号)
- 健康保険法(大正11年法律第70号) — 一般保険料等額への支援金率の合算、第159条(育児休業等期間中の保険料免除)、第160条の2(子ども・子育て支援金率)
- 所得税法(昭和40年法律第33号)第231条第1項 — 給与等の支払明細書の交付義務



