2026年6月1日、改正保険業法(令和七年法律第五十四号「保険業法の一部を改正する法律」) が施行されました。カーディーラー系の保険金不正請求事案や保険料調整行為を背景に、特定の大規模乗合損害保険代理店への規制が抜本的に強化されました。
最大の変更点は、年間手数料20億円以上の「特定大規模乗合損害保険代理店」 に対し、営業所単位の「法令等遵守責任者」と本店の指揮者(実務上「統括責任者」と呼ばれます)の設置を義務付けたことです。なお、乗合代理店の比較推奨販売から「ハ方式」を廃止する改正も別途決まっていますが、こちらの施行・適用は2028年3月1日です(詳細は5章)。
改正保険業法は2026年6月1日に施行済みです。この記事では、法改正の背景から具体的な体制整備手順まで、実務担当者が対応状況を確認するための情報を提供します。
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1. 改正の背景:相次ぐ不祥事が招いた規制強化
ビッグモーター事件と業界への波及
2023年に発覚した自動車修理業者による保険金不正請求事案(いわゆる「ビッグモーター事件」)は、兼業代理店のガバナンス欠陥を白日の下に晒しました。修理費用を意図的に過大に見積もり、損害保険会社に過剰な保険金支払いを求めた行為は、保険業法が想定していた「顧客保護」の観点を根本から覆すものでした。
さらに同時期、複数の大手乗合代理店において、保険会社からの便宜供与(接待・販売支援費)の多寡に基づいて推奨商品を決定する商慣行(いわゆる「手数料連動型推奨販売」)が問題化。金融庁は2024年以降、業務改善命令を連発しました。
金融庁の問題意識
金融庁は2024年の報告書で、次の構造的問題を指摘しています。
- 大規模乗合代理店において、保険会社からの手数料水準が商品推奨を実質的に左右している
- 兼業代理店(修理工場・自動車販売店等)で、本業と保険募集の利益相反が管理されていない
- 「ハ方式」による比較なし推奨販売が、顧客の適切な商品選択機会を阻害している
これらを受け、2025年5月30日に改正保険業法が国会で成立、同年6月6日に公布されました。
2.「特定大規模乗合損害保険代理店」の定義
改正法で新設された「特定大規模乗合損害保険代理店」は、保険業法第294条の4の柱書により、「損害保険代理店のうち、二以上の所属保険会社等を有する法人」であって、かつ手数料等の額が一定基準以上であることその他内閣府令で定める要件に該当するもの、と定義されています。手数料等の具体的な基準額は保険業法施行規則第227条の16(損保)・第215条の3(生保)で定められています。つまり、個人の代理店や、所属保険会社等が1社のみの代理店は、手数料額にかかわらず対象になりません。
対象基準(損害保険代理店の場合)
| 区分 | 要件 |
|---|---|
| 損保専業代理店 | 直前事業年度の損害保険手数料等が 20億円以上 |
| 生損兼営代理店 | 直前事業年度の損保手数料等が 10億円以上、かつ生損合算が 20億円以上 |
💡 TIPS
主に大手保険代理店グループ、自動車ディーラー系代理店、金融機関系代理店が該当します。自社が対象かどうかは、直前期の損害保険手数料収入の総額を確認してください。
⚠️ 注意
「手数料等」には、代理店手数料だけでなく、各種インセンティブ・販売奨励金も含まれる可能性があります。自社の対象可否を判断する際は、保険業法施行規則第227条の16の定義に照らして計算対象を確認してください。
一度対象になると、基準を下回ってもすぐには対象外にならない場合がある
保険業法施行規則第227条の16第3項は、ある事業年度に上記の基準へ該当した損害保険代理店について、翌事業年度・翌々事業年度の判定で基準を下回った場合でも、一定の条件(同令第236条の2第2号ロに該当するとき)に該当するときは、引き続き基準に該当するものとみなす旨を定めています。「今期は20億円を割ったから対象外」とは即断できないため、該当し得る代理店は施行規則第227条の16第3項の条件を確認してください。
特定大規模乗合生命保険募集人(生保側)の基準
生保の場合も同様に、生保専業で20億円以上、生損兼営で生保10億円以上かつ合算20億円以上が基準となります。
3. 法令等遵守責任者・統括責任者の設置義務
改正保険業法の核心は、特定大規模乗合損害保険代理店に対する体制整備義務の新設(保険業法第294条の4)です。同条は5号構成で、本節では第1号〜第3号(体制整備の骨格)を扱います。兼業代理店に上乗せされる第4号は次の§4で解説します。
設置が必要なポストと役割
| 役職 | 根拠条文 | 設置場所 | 主な職務 |
|---|---|---|---|
| 法令等遵守責任者 | 第294条の4第1号/施行規則第227条の17 | 保険募集を行う営業所・事務所ごと | 当該営業所の役員・使用人への法令遵守の助言・指導 |
| 統括責任者(※) | 第294条の4第2号/施行規則第227条の18 | 本店・主たる事務所 | 法令等遵守責任者を指揮;役員・全使用人への助言・指導 |
※「統括責任者」は、保険業法(法律)本体の第294条の4第2号には出てきませんが、保険業法施行規則第227条の18で定義語として使われています(「統括責任者(法第二百九十四条の四第二号の助言又は指導を行う者をいう。)」)。
統括責任者は、代理店全体の保険募集コンプライアンスを統括し、各拠点の法令等遵守責任者を監督します。法令等遵守責任者は、営業所単位での現場指導・モニタリングを担います。
設置・欠員時の要件(施行規則第227条の17・第227条の18)
法令等遵守責任者(施行規則第227条の17第2号〜第4号)
– 欠員が生じたときは、その事由が発生した日から起算して3か月以内に新たな法令等遵守責任者を設置すること
– その業務を的確に遂行するに足りる能力を有する者であること
– 他の営業所又は事務所の法令等遵守責任者と兼任できない。ただし、法令等遵守責任者としての業務の実施に支障を及ぼすおそれがない場合は、この限りではない
統括責任者(施行規則第227条の18第2号・第3号)
– 欠員が生じたときは、その事由が発生した日から起算して3か月以内に新たな統括責任者を設置すること
– その業務を的確に遂行するに足りる能力を有すること
– 統括責任者としての業務を適切に実施することができる管理的又は監督的地位にあること
– 保険募集に現に従事していないこと
– 法令等遵守責任者と兼任できない
実務上よく聞かれる論点(金融庁パブリックコメント回答、2026年3月30日公表)
- 統括責任者は本店又は主たる事務所に1名設置すべきものとされています。「法令等遵守責任者を指揮するという統括責任者の業務内容に鑑みれば」という理由づけです
- 「管理的又は監督的地位」という要件は、部長以上や取締役など特定の役職についていることを求めるものではありません。適切に管理・監督する立場にあれば足ります
- 統括責任者の「保険募集に現に従事していないこと」という要件は、保険募集人としての登録を抹消することまでは求めていません。実際に保険募集に携わっていなければ要件を満たします
- 一方、法令等遵守責任者が保険募集を行うこと自体は禁じられていません。ただし、「保険募集の業務に従事する者や、保険募集の挙績に係る責任を有する者とは異なる者」が就任することが望ましいとされています。統括責任者(保険募集への従事が禁止)と法令等遵守責任者(従事は可能だが望ましくないとされる)とで、扱いが異なる点に注意してください
🎯 プロの目
「営業所ごと」という文言が実務上の鍵です。拠点が多い代理店では、専任者を置けない拠点が出てくることがあります。法令等遵守責任者は原則として他の営業所・事務所との兼任ができません(施行規則第227条の17第4号)。ただし、業務の実施に支障を及ぼすおそれがない場合は例外的に認められます。統括責任者は、保険募集に現に従事していないこと、法令等遵守責任者と兼任できないことが条文で定められています(施行規則第227条の18第3号)。専任・兼任の判断を誤ると、形式的には設置したが実態が伴わないとして行政処分の対象になるリスクがあります。
具体的な業務内容
法令等遵守責任者が行う「助言・指導」としては、実務上、次のような業務が想定されます。
- 保険募集に関する法令・社内規程の周知徹底
- 保険募集に係る苦情・トラブルへの対応状況のモニタリング
- 不適切な募集行為の早期発見と是正指導
- 研修・教育プログラムの実施管理
苦情処理体制の整備(第294条の4第3号)
特定大規模乗合損害保険代理店には、保険募集の業務に係る苦情を受け付けるための体制整備と、苦情処理に関する記録の作成・保存も義務付けられています。具体的には、次のような措置が求められます。
- 苦情受付窓口の整備
- 苦情処理に関する記録の作成・保存
- その他、苦情の適切かつ迅速な処理を確保するために内閣府令で定める措置
4. 兼業代理店の業務管理体制強化
今回の改正で特に注目すべきが、兼業代理店(保険業以外の本業を持つ代理店)への上乗せ規制です。これは保険業法第294条の4第4号に定められています。
兼業代理店とは
自動車修理工場、カーディーラー、不動産仲介業者、医療機関など、本業と並行して保険募集を行う代理店を指します。ビッグモーター事件の主役がこのタイプでした。
改正の要点
改正保険業法第294条の4第4号は、兼業代理店に対し、次のイ・ロの2点を追加で義務化しています。
イ(本業が保険金支払の請求に不当な影響を及ぼすことの防止):兼業代理店が行う保険募集以外の業務(例:自動車修理)が、保険金の支払の請求に関する事項について不当な影響を及ぼさないよう適切に監視すること、その他顧客の利益が不当に害されることを防止するために必要な措置。
ロ(本業に係る苦情対応体制):保険募集以外の業務(本業)に関して顧客から寄せられる苦情についても、受付体制を整備し、処理に関する記録を作成・保存すること。
⚠️ 注意
修理工場やカーディーラーの場合、従来は「保険代理店業務は別部門」と形式分離していれば足りると考えられていました。改正後は、実質的な利益相反管理の仕組みが求められ、書面による規程整備だけでは不十分とみなされる可能性があります。
🎯 プロの目
保険会社側にも変化があります。改正保険業法第100条の2の2により、保険会社は兼業特定保険募集人等が行う取引に伴う情報を適正に管理し、その実施状況を適切に監視するための体制整備を行うことが義務付けられています。代理店側が体制整備を怠ると、保険会社との委託契約の見直しや打ち切りにつながるリスクもあります。
5.「ハ方式」の廃止(2028年3月1日適用)
比較推奨販売の3方式とは
2014年の保険業法改正で導入された乗合代理店の比較推奨販売には、「イ方式」「ロ方式」「ハ方式」の3種類がありました。
| 方式 | どういう場面か(施行規則第227条の2第3項第4号) | 説明しなければならない事項 | 2028年3月1日以降の扱い |
|---|---|---|---|
| イ方式 | 一の保険契約の契約内容につき、他の保険契約の契約内容と比較した事項を提供しようとする場合 | 当該比較に係る事項 | 継続 |
| ロ方式 | 二以上の比較可能な同種の保険契約の中から、顧客の意向に沿った保険契約を選別して提案しようとする場合 | 顧客の意向に沿った比較可能な同種の保険契約の概要、及び当該提案の理由 | 継続・標準方式 |
| ハ方式 | 二以上の比較可能な同種の保険契約の中から、ロの規定による選別をすることなく提案しようとする場合 | 当該提案の理由 | 廃止(2026年8月28日公布の改正内閣府令。適用は2028年3月1日から) |
ロとハの違いは「提案理由を説明するかどうか」ではありません。 提案理由の説明はロ・ハのいずれでも必要です。違いは、ロには加えて「顧客の意向に沿った比較可能な同種の保険契約の概要」を開示する義務がある点にあります。
なぜ「ハ方式」が問題視されたか
「ハ方式」は、保険代理店が「自社推奨商品」として設定した商品を、顧客の個別の意向に照らした比較なしに提案することを認めるものでした。問題は、この「推奨商品」の選定基準が、保険会社からの手数料・インセンティブの高さによって事実上左右されていたケースが多数確認されたことです。
金融庁は、2026年8月28日公表のパブリックコメント回答で、「ハ方式」の廃止についてビッグモーター事案等の個別事案への対応にとどまらず、顧客の最善の利益を重視する法制度の整備や金融審議会ワーキング・グループの提言を踏まえた、乗合代理店における比較推奨販売の在り方の見直しによるものだとしています。同日付けで「ハ方式」を廃止する改正内閣府令・監督指針が公布・確定しましたが、施行・適用は2028年3月1日からです。
実務への影響
「ハ方式」で営業している代理店も、現時点(2026年9月)では、この方式による比較推奨販売は引き続き適法です。廃止の適用開始は2028年3月1日のため、それまでに次の対応への移行を終える必要があります。
- 顧客の意向把握プロセスの整備:ヒアリングシートや意向確認記録の整備。ロ方式では「顧客の意向に沿った」選別が要件になるため必要になります
- 顧客の意向に沿った比較可能な同種の保険契約の概要の開示:ロ方式で新たに必要になる説明事項です(施行規則第227条の2第3項第4号ロ)。ハ方式にはこの開示義務はありません
- 提案理由の説明と記録保存:ハ方式でも既に義務付けられており、ロ方式でも引き続き必要です
金融庁は2026年8月28日付けの発表で、「改正後の内閣府令の施行日及び監督指針の適用日を待つことなく、可能な限り速やかに体制整備を行い、比較推奨販売を適切に実施されることが望ましい」と、適用日を待たない前倒し対応を促しています。
💡 TIPS
ロ方式への移行は単なる書類整備ではありません。営業担当者が「顧客の意向に沿った比較可能な同種の保険契約の概要」を正しく整理し、顧客に開示できるよう、商品知識の底上げとトレーニングが必要です。2028年3月1日の適用開始前に、全営業拠点でロールプレイング研修を実施することを推奨します。
6. 保険会社側の管理義務強化
今回の改正は代理店だけでなく、保険会社側の義務も強化します。根拠は保険業法第100条の2の2(顧客の利益の保護のための体制整備)で、今回の改正により対象に「兼業特定保険募集人」が新たに加わりました。
保険会社に求められる対応(第100条の2の2)
- 代理店の体制整備状況のモニタリング:兼業特定保険募集人等が行う保険関連業務の実施状況を適切に監視するための体制整備
- 保険関連業務に関する情報の適正管理:兼業特定保険募集人等が行う取引に伴う情報を適正に管理する体制の整備
代理店側から見ると、保険会社によるこのモニタリングが、委託関係を通じて体制整備を促す圧力として働きます。体制整備の状況について保険会社から確認を求められた場合の対応は、FAQ Q5 を参照してください。
7. 違反した場合のリスク
行政処分の類型
保険業法上、代理店(特定保険募集人)に対する行政処分は以下の段階があります。
- 報告徴収・立入検査(保険業法第305条):まず実態把握
- 業務改善命令(第306条):体制整備の是正を命令
- 業務停止命令(第307条・6月以内の期間):一定期間の保険募集業務停止
- 登録取消(第307条):悪質・重大な場合
業務停止命令と登録取消は、いずれも第307条という同じ条文で規定されています。内閣総理大臣は、特定保険募集人が同条各号のいずれかに該当するときは、登録の取消し、又は6月以内の期間を定めての業務停止のいずれかを命ずることができます。
近年の行政処分事例では、「業務改善命令+公表」のパターンが増えており、レピュテーションリスクも甚大です。
⚠️ 注意
保険業法施行規則第227条の17第1号・第227条の18第1号は、「新たに特定大規模乗合損害保険代理店に該当することとなった日から起算して六月以内」に法令等遵守責任者・統括責任者を設置すればよいと定めています。金融庁は2026年3月30日公表のパブリックコメント回答で、施行日(2026年6月1日)時点で既に基準を満たしていた代理店については施行日が起算日になるとの考え方を示しています。したがって、これに該当する代理店の設置期限は2026年12月1日です。施行日以後に新たに基準を満たすことになった代理店は、該当する事業年度の初日が起算日となります。特定大規模乗合損害保険代理店に該当する見込みの代理店は、期限までに設置を終えられるよう直ちに対応状況を確認してください。
8. 体制整備チェックリスト(施行前スケジュール・記録)
【本節の位置づけ】 改正保険業法は2026年6月1日に施行済みです。以下のStep区分に付した月は施行前の想定スケジュールであり、いずれも経過しています。 法令等遵守責任者・統括責任者の設置には、施行規則第227条の17第1号・第227条の18第1号により「新たに特定大規模乗合損害保険代理店に該当することとなった日から起算して六月以内」という明文の猶予があります。金融庁のパブリックコメント回答(2026年3月30日公表)により、施行日(2026年6月1日)時点で既に基準を満たしていた代理店は施行日が起算日となるため、設置期限は2026年12月1日です。未設置の代理店は、Stepの順序にかかわらず直ちに対応状況を確認してください。
アクションチェックリスト
【Step 1:対象確認】(3月中)
– [ ] 直前事業年度の損害保険手数料総額を集計する
– [ ] 生損兼営の場合は生保・損保別の手数料を区分集計する
– [ ] 施行規則第227条の16の対象基準(20億円等)に照らして再確認する
【Step 2:責任者の選任】(4月中)
– [ ] 統括責任者の候補者を選定する(保険募集に現に従事しておらず、管理的又は監督的地位にある者。法令等遵守責任者との兼任は不可)
– [ ] 全営業所・事務所の法令等遵守責任者候補者をリストアップする
– [ ] 専任・兼任の可否と要件を確認する(施行規則第227条の17第4号・第227条の18第3号を参照)
【Step 3:規程・マニュアル整備】(4月〜5月)
– [ ] 「法令等遵守管理規程」を策定または改訂する
– [ ] 各営業所の法令等遵守責任者の職務内容・権限を文書化する
– [ ] 兼業代理店の場合は「利益相反管理規程」を整備する
【Step 4:研修・教育】(5月)
– [ ] 統括責任者・法令等遵守責任者向けの就任前研修を実施する
【Step 5:確認・施行】(5月末〜6月1日)
– [ ] 全営業所・事務所への法令等遵守責任者の設置が完了していることを確認する
– [ ] 施行後1か月以内に金融庁への届出が必要な場合は手続きを確認する
2028年3月1日に向けた準備(「ハ方式」廃止)
「ハ方式」の廃止は2028年3月1日からの適用のため、上記のチェックリストとは別のスケジュールで準備を進めます。
- [ ] 自社が「ハ方式」で比較推奨販売を行っているかを確認する
- [ ] 顧客の意向把握プロセスを整備する(ヒアリングシートや意向確認記録の整備)
- [ ] 比較可能な商品の選別根拠を明文化する
- [ ] 全営業担当者向けのロ方式移行研修を実施する
- [ ] 意向把握・比較推奨の新プロセスのロールプレイング研修を行う
- [ ] 2028年3月1日の適用開始までに、ハ方式による募集を停止する
9. 関連記事
金融規制・コンプライアンス対応については、以下の実務ガイドも参考にしてください。
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前払式支払手段規制ガイド|資金移動業・収納代行との違いも解説
キャッシュレス決済に関わる金融規制の全体像を解説。保険料の収納代行を行う代理店にも関連します。 -
改正下請法2026年|手形支払禁止・価格協議義務化の実務対応ガイド
保険代理店が委託先・下請先を持つ場合のコンプライアンス対応にも役立つ内容です。
10. よくある質問(FAQ)
Q1. 「特定大規模乗合損害保険代理店」に該当するかどうかの判断時期はいつですか?
A. 保険業法施行規則第227条の16では「直前事業年度」の手数料等の実績で判断します。2026年6月1日の施行時点では、直前の決算期(多くの場合2025年度)の手数料実績が基準となります。自社の事業年度との関係は、同条の定義に照らして確認してください。
Q2. 法令等遵守責任者は社内の誰でも就任できますか?資格要件はありますか?
A. 改正保険業法および監督指針では、具体的な資格要件(例:保険募集人資格の保有など)は現時点で明示されていません。ただし、「保険募集の業務を行う役員または使用人」の中から選任し、当該営業所で実質的な指揮監督が行える者であることが求められます。単なる名目的な就任は「実態なし」として問題視されるリスクがあります。
Q3. 「ハ方式」を廃止すると、既存の推奨商品ラインナップはどうすればいいですか?
A. 「ハ方式」の廃止は2028年3月1日の適用開始です。既存の「推奨商品」の設定自体を廃止する必要はありませんが、ロ方式へ切り替える際は、顧客の意向に沿った比較可能な同種の保険契約の概要を新たに開示する必要があります(施行規則第227条の2第3項第4号ロ)。現在の推奨商品選定プロセスを見直し、顧客の意向把握と商品比較のプロセスをロ方式の要件に合わせて再設計してください。
Q4. 小規模な乗合代理店(手数料20億円未満)は今回の改正の対象外ですか?
A. 「特定大規模乗合損害保険代理店」への上乗せ義務(法令等遵守責任者・統括責任者の設置)は対象外です。ただし、「ハ方式」の廃止は、2028年3月1日の適用開始をもって全ての乗合代理店に適用されます。また、一般的な体制整備義務(顧客情報管理・苦情処理等)も規模に応じた対応が求められます。
Q5. 保険会社から「体制整備の確認」を求められた場合、どのように対応すればいいですか?
A. 改正法では保険会社が代理店の体制整備状況をモニタリングする義務を負います。保険会社からのヒアリングや書類提出要求には誠実に対応してください。特に、法令等遵守責任者・統括責任者の選任記録、職務内容の規程、研修実施記録などを整備しておくことが重要です。これらが整っていない場合、委託契約の見直しや解除の対象となりかねません。
Q6. 施行日の2026年6月1日以降、移行期間はありますか?
A. 保険業法施行規則第227条の17第1号・第227条の18第1号により、「新たに特定大規模乗合損害保険代理店に該当することとなった日から起算して六月以内」に法令等遵守責任者・統括責任者を設置すればよいという明文の猶予があります。金融庁のパブリックコメント回答(2026年3月30日公表)によれば、施行日(2026年6月1日)時点で既に基準を満たしていた代理店は施行日が起算日となるため、設置期限は2026年12月1日です。施行日以後に新たに基準を満たすことになった代理店は、該当する事業年度の初日が起算日となります。それ以外の経過措置の有無については、保険業法施行規則の附則を確認してください。
まとめ
2026年6月1日施行の保険業法改正は、大規模乗合代理店のコンプライアンス体制を根本から変える重大な改正です。
2026年6月1日施行分
| 改正項目 | 対象 | 施行日 |
|---|---|---|
| 法令等遵守責任者・統括責任者の設置義務 | 特定大規模乗合損害保険代理店 | 2026年6月1日 |
| 兼業代理店の業務管理体制強化 | 兼業を行う全代理店(規模要件あり) | 2026年6月1日 |
| 保険会社の代理店モニタリング義務 | 全保険会社 | 2026年6月1日 |
2028年3月1日適用分
| 改正項目 | 対象 | 適用日 |
|---|---|---|
| ハ方式の廃止 | 全ての乗合代理店 | 2028年3月1日 |
施行から3か月が経過しています。法令等遵守責任者・統括責任者の設置には施行規則上「新たに該当することとなった日から起算して六月以内」という明文の猶予がありますが、施行日時点で既に基準を満たしていた代理店は施行日が起算日となるため、設置期限は2026年12月1日です。まず自社が「特定大規模乗合損害保険代理店」に該当するかを確認し、該当する場合は12月1日までに責任者選任と規程整備を終えられるよう早急に進めてください。
参考法令・資料
– 保険業法(平成七年法律第百五号)
– 保険業法の一部を改正する法律(令和七年法律第五十四号、2025年6月6日公布・2026年6月1日施行)
– 保険業法施行規則(平成八年大蔵省令第五号)第227条の16、第215条の3
– 金融庁「令和7年保険業法改正に係る内閣府令等及び『保険会社向けの総合的な監督指針』等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等の公表について」(2026年8月28日)
– 金融庁「保険業法施行規則等の一部を改正する内閣府令(案)等に対するパブリックコメントの結果等について」(2026年3月30日公表)
– 衆議院 議案審議経過情報「保険業法の一部を改正する法律案」(第217回国会・閣法第37号)
免責事項: 本記事は2026年9月時点の法令・制度に基づき、一般的な情報提供を目的として作成したものである。個別の代理店における法令等遵守責任者・統括責任者の設置義務や行政処分の該当性の判断については、必ず所属保険会社及び金融庁の最新のガイドライン・監督指針を確認されたい。本記事の内容に基づく判断・行動により生じたいかなる損害についても、筆者は責任を負わない。具体的な法的判断が必要な場合は、金融規制に精通した弁護士又は所属保険会社・金融庁への相談を推奨する。
