最終更新日: 2026年2月
2025年11月の閣議決定「強い経済を実現する総合経済対策」を受け、2026年6月1日施行の介護報酬臨時改定が決定した。改定率は+2.03%(うち処遇改善分+1.95%)。従来4区分であった介護職員等処遇改善加算は、生産性向上・協働化に取り組む事業所を上乗せ評価するIロ・IIロの2区分を新設し、計6区分体制に拡充される。さらに、訪問看護・居宅介護支援等への対象拡大や、介護従事者全体への月額1.0万円の賃上げが盛り込まれた。本記事では、新区分の要件体系・全サービスの加算率一覧・届出スケジュール・移行パターンを体系的に整理する。
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2026年臨時改定の経緯と全体像
改定に至る政策プロセス
2026年6月施行の介護報酬臨時改定は、介護人材の確保・処遇改善を目的とした緊急的な措置として実施されるものである。閣議決定から施行までの政策プロセスは以下のとおりである。
| 時期 | 事項 | 概要 |
|---|---|---|
| 2025年11月21日 | 閣議決定 | 「強い経済を実現する総合経済対策」において、介護職員の処遇改善を含む介護報酬の臨時改定を決定 |
| 2025年12月23日 | 審議報告とりまとめ | 社会保障審議会介護給付費分科会にて審議報告を取りまとめ |
| 2026年1月16日 | 諮問書・報酬改正案提示 | 第253回介護給付費分科会において諮問書及び具体的な報酬改正案を提示 |
| 2026年2月10日 | 介護保険最新情報Vol.1469 | 計画書提出期限の特例変更に関する通知を発出 |
| 2026年3月頃 | 告示・通知公布見込み | 関係告示・通知の公布が予定されている |
| 2026年6月1日 | 施行日 | 新加算体系による介護報酬の算定開始 |
根拠: 「令和7年度補正予算に関する閣議決定」(2025年11月21日)、社会保障審議会介護給付費分科会「令和8年度介護報酬臨時改定に係る審議報告」(2025年12月23日)
改定率の内訳
今回の臨時改定における改定率の構成は以下のとおりである。
| 項目 | 改定率 |
|---|---|
| 改定率(全体) | +2.03% |
| うち処遇改善分 | +1.95% |
| うち食費基準費用額引上げ分 | +0.09% |
処遇改善分の+1.95%は、2024年度改定における+0.98%を大幅に上回る水準であり、介護従事者の賃金引上げに対する政策的な重点配分が示されている。なお、食費基準費用額の見直しについては2026年8月施行の予定である。
賃上げ目標と期待される効果
本改定における賃上げ目標は、介護従事者全体の底上げに加え、生産性向上に取り組む事業所の介護職員に対する上乗せを組み合わせた構造となっている。
| 項目 | 月額 | 賃上げ率 |
|---|---|---|
| 介護従事者全体の賃上げ | 月額1.0万円 | 3.3% |
| 生産性向上上乗せ分(介護職員) | 月額0.7万円 | 2.4% |
| 定期昇給分 | 月額0.2万円 | — |
| 合計最大(介護職員) | 月額1.9万円 | 6.3% |
注目点: 生産性向上・協働化の取組を行う事業所の介護職員は、基礎的な賃上げ(月額1.0万円)に加えて上乗せ分(月額0.7万円)を受けられるため、最大で月額1.9万円(年間約22.8万円)の処遇改善が見込まれる。これは、新設のIロ・IIロ区分の取得を通じて実現される仕組みである。
新しい6区分体系の全容
従来4区分から6区分への拡充
2024年度改定で一本化されたI~IV の4区分体制に、生産性向上・協働化の取組を上乗せ評価するIロ(最上位)およびIIロの2区分を新設し、計6区分に拡充される。従来のI~IVはそれぞれIイ・IIイ・III・IVとして継続する。
| 新区分 | 位置づけ | 従来区分との関係 |
|---|---|---|
| Iロ(新設・最上位) | 従来Iの全要件 + 生産性向上・協働化の取組 | 従来Iの上位区分として新設 |
| Iイ | 従来のIに相当 | 名称変更(要件は同一) |
| IIロ(新設) | 従来IIの全要件 + 生産性向上・協働化の取組 | 従来IIの上位区分として新設 |
| IIイ | 従来のIIに相当 | 名称変更(要件は同一) |
| III | 従来のIIIに相当 | 変更なし |
| IV | 従来のIVに相当 | 変更なし |
ポイント: Iロ・IIロの「ロ」は、生産性向上・協働化要件の充足を示す上乗せ区分である。既に従来のI又はIIを取得している事業所は、追加の生産性向上要件を満たすことで、自動的にIロ又はIIロへの移行が可能となる。
Iロ・IIロの生産性向上・協働化要件(特例要件ア~ウ)
新区分Iロ・IIロの取得にあたっては、従来のI又はIIの要件に加え、以下の特例要件(ア~ウ)のいずれかを充足する必要がある。
| 特例要件 | 内容 | 対象サービス |
|---|---|---|
| ア | ケアプランデータ連携システムへの加入 + 実績報告 | 訪問系・通所系サービス |
| イ | 生産性向上推進体制加算(I又はII)の取得 + 実績報告 | 施設系・居住系サービス |
| ウ | 社会福祉連携推進法人への所属 | 全サービス共通 |
各特例要件の詳細は以下のとおりである。
特例要件ア:ケアプランデータ連携システムの活用
訪問系・通所系サービスにおいては、ケアプランデータ連携システム(国民健康保険中央会が運営)に加入し、居宅介護支援事業所等との間でケアプランデータの電子的な連携を実施していることが要件となる。加入に加え、実績報告(データ連携の実施状況等)の提出が求められる。
特例要件イ:生産性向上推進体制加算の取得
施設系・居住系サービスにおいては、生産性向上推進体制加算I又はIIを取得していることが要件となる。同加算は、介護ロボット・ICTの活用やタスクシェアリング等による業務効率化の取組を評価するものであり、取得に加えて実績報告の提出が必要である。
特例要件ウ:社会福祉連携推進法人への所属
全サービスに共通する要件として、社会福祉連携推進法人(2022年の社会福祉法改正により創設された法人間の連携制度)に所属していることが要件となる。人材確保・育成や物資の共同調達等、法人間の協働による効率化を評価するものである。
令和8年度の経過措置(誓約書による取得)
令和8年度(2026年度)中に限り、特例要件ア~ウの充足が間に合わない場合でも、年度内に要件を充足する旨の誓約書を提出することでIロ・IIロの算定が認められる。これは、システム導入や法人間連携の準備に一定の期間を要することを考慮した経過措置である。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象期間 | 令和8年度中(2026年4月~2027年3月) |
| 提出書類 | 誓約書(年度内に特例要件を充足する旨) |
| 注意点 | 誓約に反して年度末までに要件を充足できなかった場合、加算の返還が生じうる |
加算率一覧(全サービス・6区分対応)
主要サービスの加算率比較表
以下は、2026年6月サービス提供分からの主要サービスにおける加算率一覧である。Iロ・IIロは、それぞれIイ・IIイに対して生産性向上の上乗せ分が加算された率となっている。
出典: 第253回社会保障審議会介護給付費分科会(2026年1月16日)諮問書別添
| サービス | Iイ | Iロ | IIイ | IIロ | III | IV |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 訪問介護 | 27.0% | 28.7% | 24.9% | 26.6% | 20.7% | 17.0% |
| 通所介護 | 11.1% | 12.0% | 10.9% | 11.8% | 9.9% | 8.3% |
| 介護老人福祉施設(特養) | 16.3% | 17.6% | 15.9% | 17.2% | 13.6% | 11.3% |
| 介護老人保健施設(老健) | 9.0% | 9.7% | 8.6% | 9.3% | 6.9% | 5.9% |
| 認知症対応型共同生活介護(グループホーム) | 21.0% | 22.8% | 20.2% | 22.0% | 17.9% | 14.9% |
| 認知症対応型通所介護 | 21.6% | 23.6% | 20.9% | 22.9% | 18.5% | 15.7% |
| 小規模多機能型居宅介護 | 17.1% | 18.6% | 16.8% | 18.3% | 15.6% | 12.8% |
| 看護小規模多機能型居宅介護 | 16.8% | 17.7% | 16.5% | 17.4% | 15.3% | 12.5% |
| 特定施設入居者生活介護 | 14.8% | 15.9% | 14.2% | 15.3% | 13.0% | 10.8% |
| 訪問入浴介護 | 12.2% | 13.3% | 11.6% | 12.7% | 10.1% | 8.5% |
| 通所リハビリテーション | 10.3% | 11.1% | 10.0% | 10.8% | 8.3% | 7.0% |
| 介護医療院 | 6.2% | 6.6% | 5.8% | 6.2% | 4.7% | 4.0% |
| 定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 26.7% | 27.8% | 24.6% | 25.7% | 20.4% | 16.7% |
| 夜間対応型訪問介護 | 26.7% | 27.8% | 24.6% | 25.7% | 20.4% | 16.7% |
| 地域密着型通所介護 | 11.7% | 12.7% | 11.5% | 12.5% | 10.5% | 8.9% |
注: 介護予防サービスについても上表に準じた加算率が設定される見込みである。詳細は告示公布後に確認されたい。
Iイ→Iロの上乗せ幅分析
Iイに対するIロの上乗せ幅をサービス別に確認すると、以下のとおりとなる。
| サービス | Iイ | Iロ | 上乗せ幅 |
|---|---|---|---|
| 訪問介護 | 27.0% | 28.7% | +1.7pt |
| 通所介護 | 11.1% | 12.0% | +0.9pt |
| 特養 | 16.3% | 17.6% | +1.3pt |
| 老健 | 9.0% | 9.7% | +0.7pt |
| グループホーム | 21.0% | 22.8% | +1.8pt |
| 認知症対応型通所 | 21.6% | 23.6% | +2.0pt |
| 小規模多機能 | 17.1% | 18.6% | +1.5pt |
実務上の示唆: 上乗せ幅は認知症対応型通所介護の+2.0ポイントが最大であり、訪問介護(+1.7pt)やグループホーム(+1.8pt)など人件費比率の高いサービスほど上乗せ幅が大きい傾向にある。年間介護報酬総額が5,000万円の通所介護事業所の場合、Iイ→Iロへの移行により年間約45万円の加算増が見込まれる計算である。
新規加算対象サービスの加算率
本改定では、従来は処遇改善加算の対象外であった以下のサービスが新たに加算対象に追加された。
| サービス | 加算率 | 備考 |
|---|---|---|
| 訪問看護 | 1.8% | 従来の処遇改善加算対象外から新規追加 |
| 訪問リハビリテーション | 1.5% | 同上 |
| 居宅介護支援・介護予防支援 | 2.1% | 同上(ケアマネジメントが対象に) |
重要な変更点: 居宅介護支援(ケアマネジメント)への処遇改善加算の適用は、介護支援専門員(ケアマネジャー)の処遇改善を求める声に応えた画期的な措置である。2024年度改定時に「居宅療養管理指導、居宅介護支援、介護予防支援は加算算定の対象外」とされていた点が明確に変更された。なお、2026年6月改定では診療報酬・介護報酬と同時に調剤報酬も改定される。在宅患者への訪問服薬指導や薬局との連携に影響する変更点は調剤報酬改定2026年 わかりやすくまとめで詳しく解説している。
対象者の拡大:介護職員から介護従事者全般へ
配分対象の範囲変更
本改定では、加算の原資による賃金改善の対象範囲が明確に拡大された。
| 項目 | 従来(2024年度改定) | 2026年6月改定後 |
|---|---|---|
| 主たる対象 | 介護職員(他職種への配分も可能だが介護職員が基本) | 介護従事者全般 |
| 含まれる職種 | 介護職員を基本とし、事業所判断で看護師・事務職員等にも配分可 | 看護職員、リハビリテーション専門職、介護支援専門員(ケアマネジャー)、その他の介護従事者を明示的に対象化 |
| 賃上げ目標の名義 | 「介護職員」 | 「介護従事者全体」 |
対象拡大の実務的影響
対象拡大により、事業所における賃金改善計画の策定方法にも変更が生じる。
| 影響を受ける場面 | 変更内容 |
|---|---|
| 計画書の記載 | 賃金改善の対象職員に看護職員・ケアマネ等を明示的に含める記載が可能 |
| 配分計画 | 介護職員以外の職種への配分比率を高めることが容易に |
| 実績報告 | 対象職種全体での賃金改善実績を報告する形式に |
| 居宅介護支援事業所 | 新たに加算対象となったため、ケアマネジャーへの直接的な処遇改善が可能 |
注意: 対象範囲の拡大は「介護従事者全般」への配分を認めるものであるが、加算の本来の趣旨が介護人材の確保・処遇改善にあることは変わらない。職務内容や勤務実態に見合わない著しく偏った配分は、従来どおり認められない点に留意が必要である。配分ルールの詳細(基本給等への2/3充当義務等)については、処遇改善加算の計画書作成ガイドで現行制度の要件を体系的に解説している。
現行区分からの移行パターン
移行パターン一覧
現在の取得区分に応じた移行パターンは以下のとおりである。
| 現在の区分 | 自動移行先 | 上位移行先 | 追加で必要な対応 |
|---|---|---|---|
| I | Iイ(自動) | Iロ | 特例要件ア~ウのいずれかを充足 |
| II | IIイ(自動) | IIロ | 特例要件ア~ウのいずれかを充足 |
| III | III(継続) | IIロ(一気跳躍可) | 従来IIの要件充足 + 特例要件。誓約書での取得も可 |
| IV | IV(継続) | IIロ(一気跳躍可) | 従来IIの要件充足 + 特例要件。誓約書での取得も可 |
| 未算定 | — | 新規取得 | 誓約書提出により新規取得が可能 |
移行パターン別の実務対応
パターン1:現在I → Iイ(自動移行)→ Iロ(上位移行)
現在Iを取得している事業所は、特段の届出なくIイに自動移行する。さらにIロへの上位移行を希望する場合は、特例要件ア~ウのいずれかを充足したうえで変更届を提出する。
| ステップ | 対応内容 | 期限目安 |
|---|---|---|
| 1. 自動移行 | I → Iイへの移行は届出不要 | 2026年6月1日(自動) |
| 2. 特例要件の確認 | ア(データ連携)、イ(生産性向上加算)、ウ(連携法人)のいずれかを確認 | 2026年4月15日まで |
| 3. 変更届の提出 | Iロへの変更届を指定権者に提出 | 届出期限に準拠 |
パターン2:現在III/IV → IIロへの一気跳躍
現在IIIまたはIVを取得している事業所が、従来IIの要件と特例要件の双方を充足すれば、中間区分を経ずにIIロへの移行が可能である。特に、令和8年度中は誓約書での取得も認められるため、要件整備と並行して上位区分を算定できる。
| 現在の区分 | 追加で必要な要件 | 誓約書での対応 |
|---|---|---|
| III → IIロ | キャリアパス要件IVの充足 + 特例要件 | 可能(令和8年度中) |
| IV → IIロ | キャリアパス要件III・IVの充足 + 特例要件 | 可能(令和8年度中) |
パターン3:未算定 → 新規取得
これまで処遇改善加算を算定していなかった事業所も、誓約書の提出により新規に加算を取得することが可能である。新規取得の場合、まずIV又はIIIから段階的に取得し、要件整備を進めながら上位区分を目指す方法が現実的である。
届出スケジュールと実務対応
2026年度の届出スケジュール
本改定に係る届出から施行までのスケジュールは以下のとおりである。
| 時期 | 事項 | 対応内容 |
|---|---|---|
| 2026年2月下旬 | 新計画書様式の案提示予定 | 厚生労働省から新様式の案が提示される見込み。事前準備として現行の計画書データを整理しておく |
| 2026年3月頃 | 告示・通知公布見込み | 新加算の根拠となる告示・通知が正式に公布される見込み |
| 2026年4月15日 | 届出期限(第1回) | 4月・5月分から新区分で算定する場合の届出期限。体制届・計画書を指定権者に提出 |
| 2026年6月1日 | 施行日 | 新6区分体制による加算の算定開始 |
| 2026年6月15日 | 届出期限(第2回) | 6月分から新区分で算定する場合の届出期限 |
| 2026年8月 | 食費基準費用額見直し施行 | 改定率+0.09%分に相当する食費基準費用額の引上げが施行 |
注意: 介護保険最新情報Vol.1469(2026年2月10日発出)により、計画書提出期限に関する特例変更が通知されている。従来のスケジュールから変更がある場合があるため、必ず所管の指定権者からの案内を確認されたい。
【注意】 届出期限の特例活用には注意が必要。2026年6月改定の届出について届出期限の特例が案内されているが、特例はあくまで「届出書類の提出期限の延長」であり算定開始日を遅らせてよいという意味ではない。特例期限ギリギリに届出→書類不備で差戻し→算定開始遅延で月額数十万円の機会損失になるリスクあり。特例締切の2週間前を自主締切として設定し余裕を持った届出を。
(参考:介護保険最新情報Vol.1469)
届出の準備チェックリスト
2026年4月15日の届出期限に向けて、以下の項目を確認・準備する必要がある。
| No. | 確認事項 | 対応状況 |
|---|---|---|
| 1 | 現在の加算区分と新区分への自動移行先を確認したか | □ |
| 2 | Iロ・IIロへの上位移行を検討する場合、特例要件ア~ウのいずれを充足するか決定したか | □ |
| 3 | ケアプランデータ連携システムへの加入手続きを開始したか(特例要件アの場合) | □ |
| 4 | 生産性向上推進体制加算の取得状況を確認したか(特例要件イの場合) | □ |
| 5 | 社会福祉連携推進法人への加入状況を確認したか(特例要件ウの場合) | □ |
| 6 | 新様式の計画書(2026年2月下旬提示予定)のダウンロード準備ができているか | □ |
| 7 | 賃金改善額の試算(新加算率に基づく)を実施したか | □ |
| 8 | 基本給等への充当割合(2/3以上)を満たす配分計画を策定したか | □ |
| 9 | 対象職員の範囲(介護従事者全般への拡大を踏まえた配分方針)を決定したか | □ |
| 10 | 誓約書による取得を予定する場合、年度内の要件充足スケジュールを策定したか | □ |
届出にあたっての留意事項
| 留意事項 | 詳細 |
|---|---|
| 届出先 | 事業所の指定権者(都道府県知事、政令指定都市の長、中核市の長) |
| 届出方法 | 郵送・窓口持参・電子申請(自治体により異なる) |
| 届出の効力発生 | 届出が受理された月の翌月1日から算定開始(原則) |
| 複数事業所の一括届出 | 同一法人が運営する複数事業所について、法人単位での一括届出が可能 |
| 変更届 | 年度途中の区分変更は変更届の提出により対応可能 |
2024年度改定との比較:何が変わったのか
加算率の変動比較
2024年度改定(一本化時)と2026年6月改定後の加算率を比較すると、全サービスにおいて引上げが実施されている。以下は主要サービスの最上位区分の比較である。
| サービス | 2024年度改定(I) | 2026年改定(Iイ) | 2026年改定(Iロ) | 2024→Iロの上昇幅 |
|---|---|---|---|---|
| 訪問介護 | 24.5% | 27.0% | 28.7% | +4.2pt |
| 通所介護 | 9.2% | 11.1% | 12.0% | +2.8pt |
| 特養 | 14.0% | 16.3% | 17.6% | +3.6pt |
| 老健 | 8.6% | 9.0% | 9.7% | +1.1pt |
| グループホーム | 18.6% | 21.0% | 22.8% | +4.2pt |
制度変更のポイント比較
| 比較項目 | 2024年度改定 | 2026年6月改定 |
|---|---|---|
| 加算区分数 | 4区分(I~IV)+ 経過措置V | 6区分(Iロ・Iイ・IIロ・IIイ・III・IV) |
| 生産性向上の評価 | 職場環境等要件の一項目として評価 | 独立した上乗せ区分(ロ区分)として評価 |
| 対象サービス | 訪問看護・居宅介護支援は対象外 | 訪問看護・訪問リハ・居宅介護支援が新規対象 |
| 配分対象 | 介護職員が基本(他職種にも配分可) | 介護従事者全般を明示的に対象化 |
| 改定率(処遇改善分) | +0.98% | +1.95% |
| 経過措置 | 加算V(14パターン、2025年3月末終了) | 誓約書による特例要件充足(令和8年度中) |
今すぐやること:2026年6月改定対応チェックリスト
最優先:すぐに対応
- 現在の加算区分と新区分への移行先を確認(管理者・事務担当):I→Iイ、II→IIイへの自動移行を確認し、Iロ・IIロへの上位移行を目指すかどうかの方針を経営層で決定する
- 新計画書様式の案を入手(事務担当):2026年2月下旬に厚生労働省から提示予定の新様式を入手し、記載項目の変更点を把握する
重要:2026年4月15日までに
- 特例要件ア〜ウの充足方針を決定し着手(管理者):訪問系・通所系は特例要件ア(ケアプランデータ連携システム加入)、施設系・居住系は特例要件イ(生産性向上推進体制加算)の取得に着手する
- 賃金改善計画の素案を策定(経理・人事):新加算率に基づく加算見込額を試算し、対象職種・配分方針(基本給vs手当)を決定する。基本給等への充当割合2/3以上の要件を満たす設計とする
- 届出書類を作成し指定権者に提出(事務担当):特例期限ギリギリではなく、2週間前を自主締切として設定する
重要:2026年6月15日までに
- 新規対象サービス(訪問看護・居宅介護支援)の計画書作成(該当事業所):処遇改善計画書の作成経験がない事業所は、既存の計画書様式を参照して対象職員範囲の特定・現行賃金水準の整理を先行して進める
中期:2026年度内
- 誓約書で取得した場合の要件充足(管理者):誓約書でIロ・IIロを取得した場合は、年度末(2027年3月)までに特例要件を確実に充足する。月次で進捗を管理し、未充足のリスクがあれば早期にIイ・IIイへの変更届を検討する
FAQ:改定対応でよくある質問
いいえ。現在のIは自動的にIイに移行する。Iロへの移行には、特例要件ア~ウのいずれかを追加で充足する必要がある。特例要件の充足が間に合わない場合でも、令和8年度中は誓約書の提出により Iロの算定が可能である。
事業所の種別・規模によって異なる。訪問系・通所系サービスでは特例要件ア(ケアプランデータ連携システムへの加入)が比較的取り組みやすい。施設系・居住系サービスでは、既に介護ロボット・ICTを導入している場合は特例要件イ(生産性向上推進体制加算の取得)が現実的である。社会福祉法人で既に連携推進法人に参加している場合は特例要件ウが最も容易である。
そのとおりである。本改定により、訪問看護は新たに処遇改善加算の対象サービスに追加され、加算率1.8%が設定される。訪問リハビリテーション(1.5%)、居宅介護支援・介護予防支援(2.1%)も同様に新規対象となる。届出方法は他のサービスと同様であり、計画書の提出が必要である。
可能である。現在IIIの事業所が従来IIの要件(キャリアパス要件IVの充足等)と特例要件を満たせば、中間区分を経ずにIIロへ移行できる。令和8年度中は誓約書での取得も認められるため、要件整備と並行しての算定が可能である。ただし、誓約に反して年度末までに要件を充足できなかった場合は加算の返還が生じうるため、計画的な対応が必要である。
届出期限は2段階で設定されている。第1回(2026年4月15日)は4月・5月分からの算定に対応し、第2回(2026年6月15日)は6月分(施行日)からの算定に対応する。施行日である6月1日からの算定を目指す場合は、第2回の6月15日までに届出を行えばよい。ただし、4月・5月分から算定したい場合は第1回の4月15日までに届け出る必要がある。
新様式は2026年2月下旬に案が提示される予定である。それまでの間に以下の準備を進めておくことが望ましい。(1) 現在の加算区分と新区分への移行先の確認、(2) 特例要件ア~ウのいずれを充足するかの検討・決定、(3) 年間介護報酬総額の見込額と新加算率に基づく加算見込額の試算、(4) 賃金改善計画の素案策定(対象職種・配分方針の決定)、(5) キャリアパス要件・職場環境等要件の充足状況の再確認。
改定率+2.03%のうち+0.09%に相当する部分であり、施設入所者の食費に係る基準費用額の引上げを行うものである。施行時期は2026年8月であり、処遇改善加算の施行(6月)とは異なる。食費基準費用額の具体的な引上げ額については、告示公布時に確認されたい。
免責事項
本記事は、2026年2月時点で公開されている法令・通知・公表資料及び社会保障審議会介護給付費分科会の審議報告・諮問書に基づき作成した一般的な解説記事である。本改定は2026年3月頃の告示・通知公布を予定しており、最終的な制度内容は告示・通知の正式公布をもって確定する。加算の届出・算定にあたっては、必ず最新の法令・通知及び所管の指定権者(都道府県・市町村等)の案内を確認されたい。本記事の内容に基づく届出・運用により生じた損害について、筆者及び運営者は一切の責任を負わない。個別の事案については、社会保険労務士や行政書士等の専門家に相談されることを推奨する。
参考資料・一次情報
本記事の作成にあたり、以下の公的資料を参照しています。最新の情報は各機関の公式サイトでご確認ください。
- 「強い経済を実現する総合経済対策」(2025年11月21日閣議決定)
- 社会保障審議会介護給付費分科会「令和8年度介護報酬臨時改定に係る審議報告」(2025年12月23日) — 厚生労働省
- 第253回社会保障審議会介護給付費分科会 諮問書・報酬改正案(2026年1月16日)
- 介護保険最新情報Vol.1469「処遇改善計画書提出期限の特例変更について」(2026年2月10日) — 厚生労働省
- 介護保険最新情報Vol.1474(2026年3月4日) — 厚生労働省(令和8年度介護報酬改定に関する通知)
- 介護職員の処遇改善:TOP・制度概要 — 厚生労働省
- 介護職員の処遇改善:加算の申請方法・申請様式 — 厚生労働省
- 介護職員の処遇改善:移行ガイド — 厚生労働省(旧加算からの移行手順)
- 社会保障審議会(介護給付費分科会) — 厚生労働省(審議報告・諮問書等の資料を掲載)
- 老発0405第6号「介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(令和6年4月5日、2024年度改定時の基本通知)
- 厚生労働省告示第86号「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示」(令和6年、2024年度改定時の告示)
- 令和6年度介護報酬改定について — 厚生労働省
- 令和8年度介護報酬改定 介護報酬の見直し案(別紙1) — 厚生労働省(令和8年6月施行の報酬改定内容)
