最終更新日: 2026年10月5日
2026年6月1日施行の介護報酬改定は、3年周期の本改定ではなく賃上げ対応のための期中改定です。改定率は+2.03%(処遇改善分+1.95%、食費の基準費用額分+0.09%)。ポイントは3つ:①身体介護387単位・生活援助220単位といった基本単位数は全サービスで据え置きで、変わったのは処遇改善加算の率だけ、②処遇改善加算は4区分から6区分(Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳ)に再編され、最上位のⅠロ(訪問介護28.7%)はケアプランデータ連携・生産性向上推進体制加算・社会福祉連携推進法人所属のいずれか1つの充足が条件(ただし選択肢はサービス別に限定され、訪問介護・通所介護は生産性向上推進体制加算を選べません)、③これまで対象外だった訪問看護1.8%・訪問リハ1.5%・居宅介護支援2.1%に加算が新設(区分判定はないが要件はある)。届出の期日は居宅系サービスが算定開始月の前月15日、施設系サービスが当月1日で、処遇改善計画書はその前々月末日。年度途中でも区分は変更できます。
本記事では2026年6月施行の介護報酬改定における主要変更点(処遇改善加算統合後の最新体系、訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援への処遇改善加算の新設、食費の基準費用額の見直し)を解説する。診療報酬改定との同時施行による医療・介護連携への影響は診療報酬改定2026年6月の解説も参照されたい。
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⚠️ 本記事の単位数・加算率はすべて令和8年厚生労働省告示第87号(令和8年3月13日公布)および厚生労働省「介護報酬の算定構造【令和8年6月改定箇所】」で確認した確定値です。 令和8年度改定は3年周期の本改定ではなく賃上げ対応を目的とした期中改定であり、改定率は+2.03%(処遇改善分+1.95%、基準費用額(食費)分+0.09%)。処遇改善加算の再編・対象拡大と食費の基準費用額の見直し以外に、報酬本体の改定はありません。
2026年6月1日施行の介護報酬改定の本体は、処遇改善加算の区分再編と加算率の引上げである。上位区分「Ⅰロ」を取得できるかどうかで加算率が変わり(訪問介護で1.7ポイント、特養で1.3ポイント、通所介護で0.9ポイントとサービス種別によって差がある)、訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援では加算そのものが新設されたため、届出をしない事業所は本来受け取れる賃上げ原資を丸ごと失う。
① 処遇改善加算が再編される。2026年6月施行で旧4区分が6区分(Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳ)に拡充され、上位区分の「ロ」では生産性向上・協働化(ケアプランデータ連携・生産性向上推進体制加算・社会福祉連携推進法人所属のいずれか)が追加要件となる。経過措置の加算Ⅴは2025年4月以降すでに算定不可(今回の改定で廃止されたのではない)。
② LIFEデータ未提出はLIFE関連加算が算定不可になる。科学的介護推進体制加算・個別機能訓練加算II・自立支援促進加算・栄養ケア・マネジメント加算等のLIFE関連加算は、提出を怠った月は利用者全員分について加算を算定できない(やむを得ない事情を除く)。基本報酬への減算ではなく「加算ロス」として収益影響を試算する必要がある。
③ 訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援は今回が初めての対象。これまで処遇改善加算の対象外だった3サービスに、それぞれ1.8%・1.5%・2.1%の単一率で新設された。Ⅰ〜Ⅳの区分判定はないが、**要件が無いわけではない**。「令和8年度特例要件」または「処遇改善加算Ⅳの取得に準ずる要件(キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ及び職場環境等要件のすべて)」の**いずれか**を満たす必要がある。
2026年介護報酬改定の全体像
2026年介護報酬改定の本体改定率は+2.03%で、内訳は処遇改善対応分+1.95%・食費基準額等+0.09%。施行は2026年6月1日(処遇改善等の主要改定)と2026年8月1日(食費基準額等)の2段階です。2024年度改定(+1.59%)を上回る改定水準となります。(根拠:令和8年度介護報酬改定に関する大臣折衝事項・令和7年12月24日)
改定率と基本方針
2026年介護報酬改定は診療報酬改定と同時施行(2026年6月1日)となる。改定率は+2.03%(介護報酬本体)であり、2024年度改定(+1.59%)を上回る水準となった。この改定率は「令和8年度介護報酬改定に関する『大臣折衝事項』」(令和7年12月24日)で決まり、厚生労働省「令和8年度介護報酬改定の概要」に抄録されている。
| 改定区分 | 改定率 | 内容 |
|---|---|---|
| 介護報酬本体 | +2.03% | 処遇改善加算の拡充(+1.95%)+食費の基準費用額の引上げ(+0.09%) |
| うち処遇改善対応分 | +1.95% | 介護職員処遇改善加算の充実分 |
| うち食費基準額等 | +0.09% | 施設入所者の食費基準額の見直し等 |
注: 上記改定率のうち「+0.09%(食費基準額等)」の施行時期は2026年8月1日である(処遇改善等の主要改定は6月1日施行、食費基準額等は2026年8月1日に施行済み。基準費用額は日額1,445円→1,545円。令和8年厚生労働省告示第88号)。
なお本記事は報酬改定(事業者向けの単位数・加算)を中心に扱います。要介護認定の仕組み・利用者の自己負担割合・区分支給限度額といった制度そのものの全体像は、介護保険制度2026の仕組みと自己負担を制度全体から解説で整理していますので、あわせてご覧ください。改定後のサービス別単位数の代表値早見表も合わせて参照すると、加算計算の実務に役立ちます。
+2.03%
加算算定不可
28.7%
8〜12万円
2026年改定の3つの重点項目
- 処遇改善加算の区分再編と加算率引上げ — 加算I〜IVの各区分に「イ」「ロ」の枝分かれを設け、加算率を全区分で引き上げた(訪問介護の加算Iで24.5%→27.0%)
- 処遇改善加算の対象サービス拡大 — これまで対象外だった訪問看護(1.8%)・訪問リハビリテーション(1.5%)・居宅介護支援(2.1%)等に新設
- 基準費用額(食費)の見直し — 施設サービスの食費の基準費用額を令和8年8月から引き上げ
この3点以外に報酬本体の改定はない。 令和8年度改定は3年周期の本改定ではなく、賃上げ対応を目的とした期中改定であり、基本単位数・既存加算は全サービスで据え置かれている。
サービス種別ごとの主要変更
訪問介護
令和8年6月改定で訪問介護費に加えられた改正は、介護職員等処遇改善加算の区分再編と加算率の引上げのみである。 身体介護・生活援助・通院等乗降介助の基本単位数、夜間・早朝加算、特定事業所加算はいずれも改定されていない。告示(令和8年厚生労働省告示第87号)の新旧対照表は訪問介護費について「イ~ト(略)」=基本単位数は改正対象外と示し、改正したのは「チ 介護職員等処遇改善加算」だけである。
| 項目 | 令和8年6月時点の単位数 | 改定の有無 |
|---|---|---|
| 身体介護(20分未満) | 163単位 | 改定なし |
| 身体介護(30分以上1時間未満) | 387単位 | 改定なし |
| 生活援助(45分以上) | 220単位 | 改定なし |
| 通院等乗降介助(1回につき) | 97単位 | 改定なし |
| 夜間・早朝加算 | +25/100 | 改定なし |
| 特定事業所加算(Ⅰ) | +20/100 | 改定なし |
| 介護職員等処遇改善加算(Ⅰ)イ | +270/1000(27.0%) | 引上げ(改定前245/1000) |
| 介護職員等処遇改善加算(Ⅰ)ロ | +287/1000(28.7%) | 新設 |
注: 特定事業所加算は定額の単位数ではなく、所定単位数に対する割合加算(加算(Ⅰ)なら20%)である。基本単位数の全区分一覧は介護保険の単位数一覧2026年版を参照。
訪問看護
訪問看護は医療保険・介護保険の両制度にまたがるサービスである。令和8年6月改定における介護保険側の変更は、これまで対象外だった訪問看護に介護職員等処遇改善加算が新設された1点のみで、基本単位数と既存加算はすべて据え置かれた。告示の新旧対照表も訪問看護費について「イ~リ(略)」=既存部分は改正対象外とし、「ヌ 介護職員等処遇改善加算(新設)」だけを追加している。
| 項目 | 令和8年6月時点の単位数 | 改定の有無 |
|---|---|---|
| 訪問看護費Ⅰ(20分未満) | 314単位 | 改定なし |
| 訪問看護費Ⅰ(30分未満) | 471単位 | 改定なし |
| 訪問看護費Ⅰ(30分以上1時間未満) | 823単位 | 改定なし |
| 訪問看護費Ⅰ(1時間以上1時間30分未満) | 1,128単位 | 改定なし |
| 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による訪問 | 294単位 | 改定なし |
| 看護体制強化加算(Ⅰ) | 550単位/月 | 改定なし |
| 看護体制強化加算(Ⅱ) | 200単位/月 | 改定なし |
| ターミナルケア加算 | 2,500単位 | 改定なし |
| 専門管理加算 | 250単位/月(月1回を限度) | 改定なし |
| 遠隔死亡診断補助加算 | 150単位 | 改定なし |
| 介護職員等処遇改善加算 | +18/1000(1.8%) | 新設 |
注: 上記は介護保険の指定訪問看護ステーションの区分である。同じ名称でも医療保険の訪問看護療養費とは算定構造・単位が異なるため、取り違えないこと。遠隔死亡診断補助加算(150単位)は介護保険の訪問看護費にも設けられており算定できる。 専門管理加算(250単位/月)は、緩和ケア・褥瘡ケア・人工肛門ケア及び人工膀胱ケアに係る専門の研修を受けた看護師が計画的な管理を行った場合、または特定行為研修を修了した看護師が計画的な管理を行った場合に算定する。
LIFE関連の取り扱い
訪問看護は令和8年6月時点でもLIFE関連加算(科学的介護推進体制加算等)の対象ではない。 令和8年6月改定でLIFE提出を要件とする加算が訪問看護に新設された事実はない。LIFEの提出義務が関わるのは、後述の施設系・通所系サービスで算定するLIFE関連加算である。
通所介護(デイサービス)
基本単位数・個別機能訓練加算・入浴介助加算・科学的介護推進体制加算・認知症加算は、いずれも令和8年6月改定の対象外である。変わったのは処遇改善加算だけで、加算(Ⅰ)は9.2%から11.1%へ引き上げられ、上位区分の加算(Ⅰ)ロ 12.0%が新設された。
なお、地域密着型通所介護は加算率が別で、加算(Ⅰ)イ11.7%・(Ⅰ)ロ12.7%と通所介護より高い。告示では隣接した条文に並んでいるため、自事業所の指定区分を取り違えないこと。
居宅介護支援(ケアマネジメント)
居宅介護支援費の基本単位数、逓減制、特定事業所加算、退院・退所加算の要件は改定されていない。令和8年6月改定の変更点は、居宅介護支援に処遇改善加算(2.1%)が初めて新設されたことである。 従来ケアマネ事業所は処遇改善加算の対象外だったため、これは新規の収入増となる。届出先は都道府県ではなく市町村長である点に注意(告示の新旧対照表に明記されている)。
施設系サービス(特別養護老人ホーム・老人保健施設)
施設サービス費の基本単位数、在宅復帰・在宅療養支援機能加算、看取り介護加算はいずれも改定されていない。令和8年6月改定での変更は次の2点である。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 処遇改善加算の引上げ・区分新設 | 介護老人福祉施設(特養)で加算(Ⅰ)イ 14.0%→16.3%、上位区分の(Ⅰ)ロ 17.6%を新設 |
| 食費の基準費用額の引上げ | 令和8年8月から1日あたり100円引上げ(1,445円→1,545円)。負担限度額は利用者負担第3段階①が30円/日、第3段階②が60円/日の引上げ |
LIFEデータ提出の取扱い自体は改定されていないが、未提出時の影響は引き続き大きいため次項に整理する(未提出月はLIFE関連加算が利用者全員分について算定不可。基本報酬への%減算ではない)。
処遇改善加算の新体系(令和8年6月施行・告示確定値)
2024年6月改定で旧3加算が「介護職員等処遇改善加算」に一本化されて以降、2026年6月の期中改定でⅠロ・Ⅱロの2区分を新設し計6区分(Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳ)に再編された。「ロ」は生産性向上・協働化に取り組む事業者への上乗せ区分である。なお、2024年改定で経過措置として設けられた加算Ⅴ(⑴〜⒁)は「令和7年3月31日までの間」に限られた区分であり、2025年4月以降は算定できない。令和8年厚生労働省告示第87号は、この期限切れの規定を条文から「(削る)」として削除したにとどまる。2026年6月改定で新たに廃止されたわけではないため、加算Ⅴを算定していた事業所は既に2025年4月の時点で他区分への移行を終えているはずである。
加算率はサービス類型ごとに大きく異なるため、自事業所のサービス区分で確認すること。
主要サービスのサービス類型別加算率(令和8年6月以降・別紙1表1-2準拠)
| サービス区分 | Ⅰイ | Ⅰロ | Ⅱイ | Ⅱロ | Ⅲ | Ⅳ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 訪問介護(最高率) | 27.0% | 28.7% | 24.9% | 26.6% | 20.7% | 17.0% |
| 介護老人福祉施設(特養) | 16.3% | 17.6% | 15.9% | 17.2% | 13.6% | 11.3% |
| 通所介護(デイ) | 11.1% | 12.0% | 10.9% | 11.8% | 9.9% | 8.3% |
2026年6月から新たに加算対象となったサービス(単一加算率)
| サービス区分 | 加算率 |
|---|---|
| 訪問看護(介護予防含む) | 1.8% |
| 訪問リハビリテーション(介護予防含む) | 1.5% |
| 居宅介護支援・介護予防支援 | 2.1% |
重要: 訪問看護・訪問リハ・居宅介護支援等は2024年改定までは処遇改善加算の対象外だった。2026年6月施行で新規対象となり、ケアマネ事業所等でも算定可能となった。
新設3サービスの算定要件(区分判定はないが、要件はある)
加算率が単一であることと、要件が無いことは別である。Ⅰ〜Ⅳの区分判定がないだけで、実体的な要件は存在する。 老発0313第6号 別紙1 表2-3 は、次のいずれかを満たすことを求めている。
| 選択肢 | 内容 |
|---|---|
| ① 令和8年度特例要件 | 生産性向上や協働化に係る取組として、(ア)ケアプランデータ連携システムを利用している/(イ)所属法人が社会福祉連携推進法人に所属しているのいずれか。この3サービスでは「生産性向上推進体制加算Ⅰ・Ⅱの算定」は選択肢に入らない(同加算は表1-3・表1-4のサービス向けの選択肢であり、表1-5には適用されない) |
| ② 処遇改善加算Ⅳの取得に準ずる要件 | (ⅰ)キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系の整備等)/(ⅱ)キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施等)/(ⅲ)職場環境等要件(5区分ごとに1以上の取組+生産性向上2以上)のすべてを満たすこと |
②の(ⅲ)については、1法人あたり1事業所のみを運営するような小規模事業者は、㉔(各種委員会の共同設置、各種指針・計画の共同策定、物品の共同購入等)を実施していれば生産性向上の要件を満たすものとされる。
令和8年度に限り、②の各要件は「令和9年3月末までに整備する」旨を処遇改善計画書で誓約すれば、申請時点から充足しているものとして扱われる。 ただし誓約した以上は令和9年3月末までに実際に整備し、実績報告書で報告しなければならない。届出だけで算定を始めて要件を放置すると、実地指導で過誤調整・返還の対象になる。
加算Ⅰロの追加要件(令和8年度特例要件)
加算Ⅰロ・Ⅱロを算定するには、Ⅰイ・Ⅱイの全要件に加え、以下のいずれかを満たす必要がある(生産性向上・協働化に係る取組)。ただし選択肢ごとに使えるサービスが決まっているため、自事業所がどの表に載るかを先に確認すること。
| 選択肢 | 使えるサービス | 誓約の可否 |
|---|---|---|
| (ア) ケアプランデータ連携システムの利用 | 表1-2(訪問介護・夜間対応型訪問介護・定期巡回・訪問入浴・通所介護・地域密着型通所介護・通所リハ・認知症対応型通所介護)および表1-3 | 申請時点で未利用でも、加入・利用を誓約すれば充足扱い。令和9年3月末までに利用し実績報告書で報告 |
| (イ) 生産性向上推進体制加算Ⅰ又はⅡの算定 | 表1-3(小規模多機能・看護小規模多機能・短期入所生活介護・短期入所療養介護)および表1-4(特定施設・認知症対応型共同生活介護・特養・老健・介護医療院) | 申請時点で未算定でも、算定を誓約すれば充足扱い |
| (ウ) 社会福祉連携推進法人への所属(社会福祉法第128条第1号イ) | 制限なし | — |
通所介護・訪問介護(表1-2)は(イ)を選べず、特養・老健(表1-4)は(ア)を選べない。 両方を選べるのは表1-3の小規模多機能・看護小規模多機能・短期入所系だけである。(ウ)はどのサービスでも使える。
詳細記事
– 処遇改善加算2026年6月改定|新区分Ⅰロ・Ⅱロの要件と加算率一覧 — 6区分の要件体系・全15サービスの加算率・移行パターン・届出スケジュール
– 処遇改善加算の計画書作成・届出ガイド — 計画書の書き方・記入例・差戻し事例・実績報告の実務
令和9年3月末までの誓約特例(経過措置)
令和8年度に限り、Ⅰロ・Ⅱロの上位区分を「誓約」により取得できる経過措置が設けられている(厚労省 老発0313第6号 通知)。
| 区分 | 通常の要件 | 令和8年度の誓約特例 |
|---|---|---|
| 令和8年度特例要件 | ケアプランデータ連携利用/生産性向上推進体制加算Ⅰ又はⅡの算定/社会福祉連携推進法人所属のいずれか | 令和9年3月末までに上記いずれかに着手する旨を計画書に記載・誓約 |
| キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組みの整備等) | 昇給の仕組みを整備し就業規則等に明記 | 令和8年度特例要件の充足を前提に、令和9年3月末までに整備する旨を計画書で誓約すれば申請時点から充足扱い |
| キャリアパス要件Ⅳ(改善後の年額賃金要件・440万円1人以上) | 経験・技能のある介護職員のうち1人以上の賃金改善後の年額が440万円以上 | 同上。令和9年3月末までに賃金改善を行う旨を誓約すれば申請時点から充足扱い |
| 職場環境等要件 | 加算Ⅰ・Ⅱ系は5区分ごとに2以上+生産性向上3以上(うち⑰又は⑱必須)/加算Ⅲ・Ⅳは区分ごと1以上+生産性向上2以上 | 令和9年3月末までに取組を行う旨の誓約 |
誓約した場合は、令和9年3月末までに実際に整備・実施し、実績報告書でその旨を報告することが義務づけられている。
注: 「キャリアパス要件」はⅠ〜Ⅴの5つである。Ⅰ=任用要件・賃金体系の整備等、Ⅱ=研修の実施等、Ⅲ=昇給の仕組みの整備等、Ⅳ=改善後の年額賃金要件(440万円1人以上)、Ⅴ=介護福祉士等の配置要件(老発0313第6号 別紙1 表2-2)。「Ⅰ〜Ⅲの3要件」と説明する解説記事があるが、通知はⅣ・Ⅴも「キャリアパス要件」と明記している。加算Ⅰイ・Ⅰロを算定するにはⅠ〜Ⅴのすべてが必要である。
【実務ポイント】 誓約特例はあくまで令和8年度に限る経過措置で、令和9年4月以降は実際に要件を満たしていない場合は区分を下げる必要がある。誓約だけして放置すると過誤調整・返還の対象となるため、計画書作成と同時に「いつ・誰が・どの要件を満たすか」のロードマップを社内文書化すること。
訪問介護事業所の算定例(加算Ⅰロ+特定事業所加算Ⅰ)
処遇改善加算は他の加算を含めた所定単位数合計に対して加算率を乗じる仕組みである。特定事業所加算など上位加算を取得している事業所ほど処遇改善加算額も連動して増える「複利効果」が働く。
前提: 訪問介護、月間基本報酬 100,000単位、特定事業所加算Ⅰ(20%)算定、加算Ⅰロ(28.7%)の場合
| 項目 | 計算 | 単位数 |
|---|---|---|
| ① 基本報酬 | — | 100,000単位 |
| ② 特定事業所加算Ⅰ | 100,000 × 20% | 20,000単位 |
| ③ 処遇改善加算の計算基礎(①+②) | — | 120,000単位 |
| ④ 処遇改善加算Ⅰロ | 120,000 × 28.7% | 34,440単位 |
| 合計(①+②+④) | — | 154,440単位(約154.4万円) |
基本報酬のみで見ると100万円の事業所でも、特定事業所加算と処遇改善加算Ⅰロの組み合わせで約1.5倍の収入となる。逆に言えば、特定事業所加算を取得していない事業所は処遇改善加算の効果も小さくなるため、上位加算とのセット取得が経営上重要である。
カスタマーハラスメント対策(2026年10月1日施行・法的義務)
【重要】 2026年10月1日から、カスタマーハラスメント防止措置はすべての事業主の法的義務になった(令和7年法律第63号による改正労働施策総合推進法)。介護報酬の加算要件ではないが、処遇改善加算とは別に、すでに義務化されている別の義務であり、利用者・家族から職員への行為が典型例として想定される介護分野では影響が大きい。なお、処遇改善加算の職場環境等要件(老発0313第6号 別紙1 表4の①〜㉘)にハラスメントを名指しした項目はなく、加算の要件ではない。
「カスタマーハラスメント」の定義(厚生労働省の逐語)
職場において行われる次の①〜③すべてを満たすものをいう。
- 顧客等の言動であって、
- その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、
- 労働者の就業環境が害されるもの
「顧客等」には施設(病院、学校、福祉施設、公共施設等)の利用者が含まれる。電話やSNS等のインターネット上で行われるものも対象である。介護分野では利用者本人だけでなくその家族からの言動もここに入る。
事業主が必ず講じなければならない10の措置
厚生労働省の指針は、次の10項目を「必ず講じなければならない」と定めている。
| 区分 | 措置 |
|---|---|
| 方針等の明確化・周知啓発 | ① カスハラには毅然とした態度で対応し労働者を保護する旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発する ② カスハラの内容とあらかじめ定めた対処の内容を労働者に周知する |
| 相談体制の整備 | ③ 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する ④ 相談窓口担当者が適切に対応できるようにする |
| 事後の迅速かつ適切な対応 | ⑤ 事実関係を迅速かつ正確に確認する ⑥ 被害者に対する配慮のための措置を行う ⑦ 再発防止に向けた措置を講ずる |
| 抑止のための措置 | ⑧ 特に悪質と考えられるカスハラへの対処の方針をあらかじめ定め、労働者に周知し、当該対処を行うことができる体制を整備する |
| 併せて講ずべき措置 | ⑨ 相談者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者に周知する ⑩ 相談したこと等を理由として不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発する |
②の「あらかじめ定めた対処の内容」として厚生労働省が例示しているのは、管理監督者にその場の対応方針の指示を仰ぐこと、可能な限り労働者を一人で対応させないこと、犯罪に該当し得る言動は警察へ通報すること、本社・本部等へ情報共有を行い指示を仰ぐこと、である。訪問系サービスは職員が単独で利用者宅にいる時間が長く、この「一人で対応させない」の設計が最も難しい。
措置を講じる際は、消費者の権利や、障害者差別解消法における障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止・合理的配慮の提供義務に留意する必要がある。
既存のハラスメント関係の義務(従前から)
- 労働施策総合推進法 第30条の2(パワーハラスメント防止の措置義務)— 2020年6月施行、中小企業は2022年4月1日適用
- 男女雇用機会均等法 第11条・第11条の3(セクハラ・マタハラ防止)
整備項目チェックリスト
| 整備項目 | 区分 | 内容 |
|---|---|---|
| カスハラ対応方針の明確化・周知 | 2026年10月1日から義務 | 毅然と対応し職員を保護する旨を文書化し全職員に周知 |
| 相談窓口の設置・周知 | 2026年10月1日から義務 | 窓口をあらかじめ定め、担当者が適切に対応できる体制を整える |
| 悪質事案への対処方針の事前策定 | 2026年10月1日から義務 | 対処方針を定め職員に周知し、実行できる体制を整備 |
| プライバシー保護・不利益取扱いの禁止の明文化 | 2026年10月1日から義務 | 相談したことを理由とする不利益取扱いをしない旨を定め周知 |
| ハラスメント防止規定の策定 | 必須 | 就業規則に組み込み、または別規程として整備 |
| 全職員研修の実施 | 必須 | 年1回以上、参加記録・資料保存 |
| ハラスメント発生時の対応マニュアル | 必須 | 事実確認→被害者保護→加害者対応→再発防止の手順を文書化 |
| 利用者・家族への周知文書 | 推奨 | 重要事項説明書または別添資料に「ハラスメントへの対応方針」を明記 |
| 契約解除条項の整備 | 推奨 | 重大なハラスメント発生時のサービス契約解除事由を契約書に明記 |
| 警察・行政との連携手順 | 推奨 | 暴力・刑事事案発生時の通報フロー |
就業規則記載例(雛形)
第○条(職場におけるハラスメントの禁止)
1. すべての職員は、職務遂行にあたり、相互に人格と人権を尊重し、
パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメント
その他あらゆるハラスメント行為を行ってはならない。
2. 利用者およびその家族からのハラスメント(カスタマーハラスメント)
についても、当法人は職員を保護する責務を負い、適切な対応を行う。
第○条(相談窓口)
1. ハラスメントに関する相談および苦情を受け付ける窓口を、
内部に管理者および外部に○○(社労士事務所等)に設置する。
2. 相談者および事実確認に協力した者は、相談・協力を理由として
不利益な取扱いを受けない。
第○条(カスタマーハラスメントへの対応)
1. 当法人は、利用者または家族から職員に対して暴言・暴力・性的言動
その他社会通念上不相当な要求があった場合、職員の安全を最優先に
対応する。
2. 重大かつ継続的なハラスメント行為があった場合、契約解除を含む
毅然とした対応を行う。
対応マニュアル骨子(A4 1〜2ページで作成)
- 早期発見: 申告フォーマット・チェックリストを職員休憩室に常設
- 事実確認: 被害職員ヒアリング → 関係者・記録確認(24時間以内)
- 被害者保護: 担当変更・配置転換・産業医面談の手配
- 加害者対応: 利用者の場合は契約見直し協議、職員の場合は懲戒処分検討
- 再発防止: 全体研修への反映・規定改訂
- 記録保管: 5年間以上保存(個人情報配慮)
LIFE(科学的介護情報システム)活用加算の拡充
LIFEとは
LIFE(Long-term care Information system For Evidence)は、厚生労働省が運営する科学的介護のためのデータ収集システムである。利用者の状態(認知機能・ADL・栄養状態等)のデータを定期的に提出することで加算が算定でき、フィードバックデータをケアの質改善に活用することが求められる。
2026年の拡充ポイント
令和8年6月改定では、LIFE関連加算の対象範囲・提出頻度・算定要件のいずれも変更されていない。 令和6年度改定で定まった枠組みがそのまま続く。以下は、2026年6月時点で事業所が押さえておくべき現行の取扱いである。
| 項目 | 現行の取扱い |
|---|---|
| 対象加算 | 科学的介護推進体制加算、自立支援促進加算、個別機能訓練加算II、栄養ケア・マネジメント加算、褥瘡マネジメント加算、排せつ支援加算など |
| 未提出時の取扱い | 当該LIFE関連加算は未提出月に算定不可(利用者全員分。やむを得ない事情を除く。基本報酬への%減算は規定なし) |
| 令和8年6月改定の影響 | LIFE関連加算そのものに改定はないが、LIFE関連加算を含む所定単位数の合計に処遇改善加算が乗るため、LIFE未提出で加算を落とすと処遇改善加算の原資も同時に目減りする |
LIFE未対応の事業所が着手するときの工程
LIFEは令和8年6月改定の対象ではないが、LIFE関連加算を落とすと処遇改善加算の原資も同時に目減りするため、未対応であれば着手する価値は改定前より大きくなっている。以下は着手から本番運用までの標準的な工程である。
※本工程は中規模以上の事業所(通所15名以上・訪問介護10名以上等)を想定しています。超小規模事業所はLIFE導入を見送る選択肢もあります(後述「加算優先度診断フロー」参照)。
| フェーズ | 必須アクション | 必要な準備物・時間目安 | つまずきポイント |
|---|---|---|---|
| 1. 体制構築(1〜2か月) | ① LIFE主担当・副担当の指名(看護職または相談員) / ② 厚生労働省「LIFEログイン申請」を電子申請届出システム経由で実施 / ③ 介護ソフトのLIFE連携機能(CSV出力/API連携)の有無を確認 | LIFE主担当の業務時間捻出(週3〜5時間) / 介護ソフトベンダーへの問い合わせ1〜2週間 | 介護ソフトがLIFE連携未対応の場合、CSV手入力となり工数が3倍に増える。早期にベンダー確認を |
| 2. マスタ整備(約1か月) | ① 利用者基本情報(介護度・主病名・ADL区分)のシステム登録 / ② 提出対象加算ごとの記録様式(栄養スクリーニング・口腔機能・認知機能評価等)の整備 / ③ 厚労省マニュアル・操作説明動画を全職員で視聴 | 利用者1人あたり登録30分(30名規模で15時間) / 様式テンプレート作成2〜3日 | 主病名・介護度の登録ミスが多い。ケアマネ作成のケアプランと突合せて整合確認すること |
| 3. リハーサル(2〜4週間) | ① テスト用に1〜2名分のデータをLIFEへ試行提出 / ② エラーメッセージ対応マニュアル化 / ③ フィードバックレポートの読み解き研修 / ④ バックアップ担当への引継ぎ研修 | テスト提出1人あたり1〜2時間 / 研修会2時間×2回 | テスト提出時のエラー(年齢不整合・コード未登録等)の対処に1週間以上かかる事例あり |
| 4. 本番運用 | ① 加算算定を始める月のサービス提供分から正式提出 / ② 月次提出スケジュール(毎月10日まで等)を定例化 / ③ 提出結果のスクリーンショット保存 | 月次提出作業3〜5時間 | 「提出した」と思っていたら未送信ステータスのまま、というケースが頻発。送信完了通知の確認を必須化 |
| 5. 改善サイクル | ① フィードバックレポートをケアカンファレンスで共有 / ② ケア改善の記録(PDCA)を整備 / ③ 全国平均との比較で自施設の強み/弱みを把握 | 月1回30分のカンファレンス時間 | 「提出するだけ」で終わらせない。フィードバック活用の記録は次回実地指導で確認される |
加算優先度診断フロー(規模×サービス別)
「加算は何から取るべきか」は、事業所の規模・サービス種別・現在の体制によって異なる。以下は最初に取るべき加算を1つに絞り込むための診断フローである。すべての加算を同時に狙うとコストが先行して赤字化するため、優先順位を明確化することが重要となる。
Step 1: 現在の処遇改善加算取得状況を確認
※この表は訪問介護(別紙1表1-2)の加算率で示しています。 加算率はサービス種別ごとに異なるため(同じⅠイでも特養16.3%・通所介護11.1%)、自事業所の数値は本記事「主要サービスのサービス類型別加算率」で確認してください。訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援にはそもそもⅠ〜Ⅳの区分がなく、この表は適用されません(単一率1.8%/1.5%/2.1%。要件は前述の2択)。
| 現状 | 最優先アクション(訪問介護の場合) |
|---|---|
| 未取得 | まず加算Ⅳ(訪問介護17.0%)を届出。キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱと職場環境等要件で足り、要件が最も軽い |
| Ⅲ取得済 | キャリアパス要件Ⅳ(改善後の年額賃金要件・440万円1人以上)を満たし、職場環境等要件を「区分ごとに2以上(生産性向上は3以上・うち⑰又は⑱必須)」へ引き上げ、取組内容をHP等で見える化して加算Ⅱイ(24.9%)へ。加算Ⅲとの差は4.2ポイント |
| Ⅱイ取得済 | キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置要件)を満たして加算Ⅰイ(27.0%)へ。差は2.1ポイント |
| Ⅰイ取得済 | 新設のⅠロ(28.7%)を目指す。令和8年度特例要件を1つ満たせばよい。訪問介護が選べるのはケアプランデータ連携システムの利用か社会福祉連携推進法人への所属(生産性向上推進体制加算は表1-3・1-4向けで訪問介護では選べない) |
Step 2: サービス種別×規模別の「2つ目に取るべき加算」
| サービス種別 | 規模 | 推奨される次の加算 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 訪問介護 | 利用者10名以下 | 特定事業所加算III(10%) | 看護師配置等の重い要件不要。初任者研修修了者比率の管理のみで取得可能 |
| 訪問介護 | 利用者11〜30名 | 特定事業所加算II(10%)+緊急時訪問加算 | 重度者対応で単価UP。サ責配置がカギ |
| 訪問介護 | 利用者31名以上 | 特定事業所加算I(20%) | 全要件クリアで20%上乗せ。年間500〜800万円規模の収益増 |
| 通所介護 | 1日10名以下 | 入浴介助加算I(40単位/日) | 個別浴槽あれば算定可。ハードル低 |
| 通所介護 | 1日11〜20名 | 個別機能訓練加算II+LIFE加算 | 機能訓練指導員配置が必要だが収益効果高 |
| 通所介護 | 1日21名以上 | LIFE関連加算をフル算定 | 規模メリットで提出工数を吸収。月10〜15万円増 |
| 訪問看護 | 看護師2〜3名 | 24時間対応体制加算 | 当番制の構築が必要だが算定効果が大 |
| 訪問看護 | 看護師4名以上 | 看護体制強化加算II → I | 重症者・ターミナル受け入れ実績の積み上げ |
| 施設系(特養) | 全規模 | LIFE関連加算(科学的介護推進体制加算) | 未提出月は加算自体が利用者全員分について算定不可。取らない選択肢なし |
| 居宅介護支援 | ケアマネ2名以下 | 特定事業所加算Ⅲ(323単位/月)または A(114単位/月) | 主任ケアマネ配置・研修参加で達成可 |
| 居宅介護支援 | ケアマネ3名以上 | 特定事業所加算Ⅱ(421単位/月)→ Ⅰ(519単位/月) | 24時間連絡体制と医療連携実績がカギ |
Step 3: 「取ってはいけない加算」の判断軸
加算取得には人員配置・研修・記録整備のコストが伴う。次の条件に該当する加算は算定単価よりコストが上回るリスクがあるため、慎重な判断が必要となる。
- 取得要件の研修費・人件費が年間加算収益の30%超となる場合
- 算定対象利用者が全体の20%未満で、記録工数が割に合わない場合
- 監査リスクが高く、実地指導での減算返還リスクが大きい場合(居宅療養管理指導等)
届出の期日と、いまからできること
届出の期日は「前月15日」が基本である。「前月末日」ではない。 改定の施行日(2026年6月1日)は過ぎているが、処遇改善加算の区分は年度途中でも変更できるため、いまからⅠロへ上げることは可能である。
提出する書類は2種類。期日が別々である
| 書類 | 期日 | 提出先 |
|---|---|---|
| 体制届出(介護給付費算定に係る体制等状況一覧表等) | 居宅系サービス(居宅介護支援・介護予防支援を含む)は算定を開始する月の前月15日/施設系サービス(短期入所生活介護、短期入所療養介護、(地域密着型)特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護、地域密着型介護老人福祉施設を含む)は算定を開始する月の1日 | 都道府県知事等(指定権者が市町村長の場合は市町村長) |
| 介護職員等処遇改善計画書(別紙様式2-1〜2-3) | 当該事業年度において初めて処遇改善加算を算定する月の前々月の末日まで | 同上。根拠資料とあわせて2年間保存 |
出典は「介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(令和8年3月13日老発0313第6号)第4である。
令和8年度に限って設けられた期日(いずれも経過済み)
| 対象 | 体制届出 | 処遇改善計画書 |
|---|---|---|
| 令和8年4月から新規に算定・区分変更する事業者 | 令和8年4月1日(都道府県知事等の判断で4月15日まで可) | 令和8年4月15日 |
| 加算新設事業所(訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援・介護予防支援等)のみが所属し、4月・5月分は算定しない事業者 | 居宅系は令和8年5月15日/施設系は令和8年6月1日(同6月15日まで可) | 令和8年6月15日 |
通知は「令和8年4月15日までの間に届け出た算定区分の変更等を受け付ける等、柔軟な取扱いとすること」と都道府県知事等に求めており、加算新設事業所についても同様の柔軟な取扱いを指示している。
いま(2026年10月時点)取るべき行動
- [ ] 区分を上げるなら、算定開始月の前月15日(施設系は当月1日)までに体制届出を出す。 年度途中の区分変更は可能で、改定施行日を過ぎたことは障害にならない
- [ ] 処遇改善計画書は前々月の末日が期日。体制届出より先に来るため、こちらから逆算する
- [ ] Ⅰロを狙うなら、令和8年度特例要件(ケアプランデータ連携システムの利用/生産性向上推進体制加算Ⅰ・Ⅱの算定/社会福祉連携推進法人への所属)のいずれか1つの充足状況を確認する。令和8年度に限り「誓約」による取得も可能(本記事「令和9年3月末までの誓約特例」参照)
- [ ] 訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援でまだ届け出ていないなら、要件の充足状況を確認したうえで届け出る。加算率は単一(1.8%/1.5%/2.1%)でⅠ〜Ⅳの区分判定はないが、要件は別にある(下記)
- [ ] 令和8年度の実績報告書の提出期日は令和9年7月31日。 令和9年3月分の加算の支払が令和9年5月であり、「最終の加算の支払があった月の翌々月の末日」がこの日にあたる
経営シミュレーション
以下は通所介護事業所を想定した月次収支変化の試算例である。
通所介護(規模別5パターン・週5日営業の場合)
通所介護を超小規模(1〜3名)から大規模(50名超)まで5段階で見たとき、処遇改善加算の区分別加算率の差が収益に与える影響は次のとおりである。基本単位数は据え置きのため、収益の増減は処遇改善加算の取得区分(Ⅰイ11.1%・Ⅰロ12.0%等)とLIFE関連加算の取得有無だけで決まる。
処遇改善加算は月間の所定単位数合計に加算率を乗じる仕組みであるため、規模が大きい(=月間所定単位数合計が大きい)事業所ほど、同じ加算率差でも増分額は大きくなる。超小規模事業所は所定単位数合計が小さく、上位区分(Ⅰロ)取得に必要な要件整備(生産性向上推進体制加算の算定等)の事務コストが増分額に見合わないケースがあるため、まず要件が軽い区分(III・IV等)の確実な取得を優先し、上位区分への移行は自事業所の所定単位数合計をもとに費用対効果を試算してから判断するのが実務的である。自事業所の増分額は「月間所定単位数合計 × 加算率の差」で概算できる。
超小規模(1〜3名/日)の戦略指針
- 無理な加算取得は不要: 加算研修・記録整備の工数が収益を上回るリスクが高い
- 重視すべきは「稼働率」: 定員充足が最大の収益改善要因
- 処遇改善加算IIIは要件が軽く取得推奨(年収益+12〜15万円)
- LIFE加算は工数対効果で見送り、必須化されたタイミングで対応開始
- 地域包括支援センターとの連携で利用者確保を優先
大規模(50名超/日)の戦略指針
- 所定単位数の合計が大きいほど処遇改善加算の増分も比例して大きくなるため、既存加算の算定漏れをなくすこと自体が賃上げ原資の確保になる
- 処遇改善加算Iロ(新設)を狙い、令和8年度特例要件(ケアプランデータ連携システムの利用/生産性向上推進体制加算I・IIの算定/社会福祉連携推進法人への所属)のいずれか1つを確実に満たす
- LIFE専任担当者の配置(パート可)で他事業所と差別化
- 規模メリットを活かして実地指導対応も組織的に体制化
注: 上記はあくまで概算試算。実際の影響は介護度構成・加算の取得状況・地域単価(地域区分)により大きく異なる。必ず自事業所の実績をもとに試算すること。
処遇改善加算Ⅰイ(11.1%)からⅠロ(12.0%)へ移行した場合
処遇改善加算・LIFE関連加算をいずれも取得しない場合
※処遇改善加算の区分別加算率の差(本記事「主要サービスのサービス類型別加算率」参照)とLIFE関連加算の取得有無による概算。基本単位数は据え置きのため試算に含まない。実際の増分額は自事業所の月間所定単位数合計により異なる。
加算取得の有無による月収差(10名/日規模)
| パターン | 令和8年6月改定による増分 |
|---|---|
| 処遇改善加算(Ⅰ)イを取得 | 所定単位数合計 × 1.9ポイント分(通所介護 9.2%→11.1%) |
| 処遇改善加算(Ⅰ)ロまで取得 | 所定単位数合計 × 2.8ポイント分(通所介護 9.2%→12.0%) |
| 処遇改善加算を届け出ない | 増分なし。改定による原資を受け取れない |
医療・介護連携と薬局・電子処方箋への影響
診療報酬と介護報酬の同時改定により、訪問診療・訪問看護・介護事業者の情報連携を評価する加算が一体的に整備される。在宅訪問を行う介護事業者は連携医療機関の電子処方箋対応状況を確認し、LIFEと医療DXのデータ連携を視野に入れた記録様式の整備を進めておくことが望ましい。詳細は電子処方箋ガイド・医療DX推進加算2026を参照。在宅利用者への医薬品供給・服薬支援と連携する薬局側では、薬機法改正2026の主要変更点と薬局・ドラッグストアへの影響も確認しておくと、法規制の全体像を整理しやすい。
よくある質問(FAQ)
Q: 2024年に処遇改善加算を統合申請済みです。2026年6月にも再申請が必要ですか?
A: 既存の届出が継続している場合、同じ区分を算定し続けるだけなら再申請は不要です。ただし加算率は区分ごとに変わっているため、自事業所が算定中の区分の新しい率を確認してください。上位区分(Ⅰロ・Ⅱロ)へ移行する場合は体制届出と処遇改善計画書の提出が必要です。なお、ハラスメント対策は処遇改善加算の要件ではありません。 職場環境等要件(老発0313第6号 別紙1表4)の28項目にハラスメントを名指しした項目はなく、近いのは「⑬業務や福利厚生制度、メンタルヘルス等の職員相談窓口の設置等相談体制の充実」「⑯事故・トラブルへの対応マニュアル等の作成等の体制の整備」です。ハラスメント対策は労働施策総合推進法等に基づく事業主の措置義務として別途必要になります(本記事「ハラスメント対策の整備」参照)。
Q: LIFEシステムにデータを提出していない加算があります。2026年6月から減算されますか?
A: 「所定単位数の○%減算」というLIFE未提出減算の規定は、厚労省告示・解釈通知・介護保険最新情報のいずれにも存在しません。LIFE提出が算定要件となっている加算は、未提出月について当該加算自体が利用者全員分について算定不可となります(やむを得ない事情を除く。介護保険最新情報Vol.1316・Vol.1225・R6.9.27事務連絡)。基本報酬への%減算ではなく、加算単位数×利用者数×単価のロスとして試算してください。現在算定中の加算のうちLIFEデータ提出が求められるものをリストアップし、4〜5月中に提出体制を整えることが急務です。
Q: 訪問看護・居宅介護支援でも処遇改善加算を算定できるようになったと聞きました。何から始めればよいですか?
A: はい。令和8年6月施行の改定で、これまで処遇改善加算の対象外だった訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援が新たに対象となりました。加算率は訪問看護1.8%・訪問リハビリテーション1.5%・居宅介護支援2.1%の単一率で、訪問介護や施設サービスのようなⅠイ・Ⅰロ等の区分はありません。ただし区分判定がないだけで、要件はあります。 「令和8年度特例要件」または「処遇改善加算Ⅳの取得に準ずる要件(キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ及び職場環境等要件のすべて)」のいずれかを満たす必要があります(老発0313第6号 別紙1 表2-3)。令和8年度に限り、令和9年3月末までに整備する旨を計画書で誓約すれば申請時点から充足扱いになりますが、誓約後に放置すると過誤調整・返還の対象です。届出先は、居宅介護支援・介護予防支援は市町村長、訪問看護・訪問リハビリテーションは都道府県知事です。電子申請届出システム経由で処遇改善計画書を作成・提出します。
Q: 施行日を過ぎましたが、今から上位区分に移行できますか?
A: できます。処遇改善加算の区分は年度途中でも変更でき、施行日の2026年6月1日を過ぎたことは障害になりません。 手順は、算定を開始したい月の前々月の末日までに処遇改善計画書を提出し、居宅系サービスなら前月15日(施設系サービスなら当月1日)までに体制届出を提出する、という順序です。計画書の期日のほうが先に来るため、そこから逆算してください。キャリアパス要件(評価制度の整備等)の整備には時間がかかるため、未整備であれば、まず充足している区分(加算Ⅱ〜Ⅲ)で届け出て算定を始め、要件が整った月に上位区分へ変更するのが現実的です。
Q: LIFEを提出しなかった月の加算はどうなりますか?
A: LIFE提出が算定要件として組み込まれている加算(科学的介護推進体制加算・栄養ケア・マネジメント加算・個別機能訓練加算II・自立支援促進加算等)は、提出がなされない月について当該加算が利用者全員分について算定不可となります(やむを得ない事情を除く)。基本報酬への%減算規定はありません。影響額は「加算単位数×利用者数×単価」で計算する必要があり、例えば自立支援促進加算(280単位/月)を算定中の定員50名特養なら280×50×10円≈14万円/月のロスとなります(1単位=10円は地域区分「その他」の単価。都市部ではさらに大きくなります。複数加算併算定中ならさらに拡大)。算定できない月は1か月ごとに積み上がるため、提出体制の構築が遅れるほど機会損失が拡大します。提出の締切や再開後の取扱いは加算ごとに定めが異なるので、自事業所が算定する加算の留意事項通知と、指定権者(都道府県・市町村)の案内で確認してください。
Q: 処遇改善加算の新区分「Iロ」と従来の「I」の違いは何ですか?事業所はどちらを選ぶべきですか?
A: 新設のIロは、Iイの全要件(月額賃金改善要件、キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅴ、職場環境等要件、見える化要件)に加えて、生産性向上や協働化に係る取組(令和8年度特例要件)を1つ満たすことを求める上位区分です。要件は令和8年3月13日の告示・通知で確定しており、次のいずれか1つを満たせば足ります:(1)ケアプランデータ連携システムの利用(訪問・通所系等)、(2)生産性向上推進体制加算I又はIIの算定(施設・居住系等)、(3)社会福祉連携推進法人への所属。加算率は訪問介護でIロ28.7%・Iイ27.0%と1.7ポイントの差であり、訪問介護10名規模なら年間20〜30万円の収益増となります。なお、令和8年度に限りIロ・IIロを「誓約」により取得できる経過措置が設けられているため(本記事「令和9年3月末までの誓約特例」参照)、要件充足が年度内に間に合う見通しであれば先に上位区分を届け出る選択肢もあります。中小規模事業所はまずIイを確実に取得し、ケアプランデータ連携システムの利用など着手しやすい要件からIロへ移行するのが現実的です。
Q: 訪問介護の身体介護「20分未満」区分の単位数や算定要件はどう変わりましたか?
A: 令和8年6月改定では、単位数・算定要件のいずれも変わっていません。 訪問介護の身体介護20分未満区分(「身体0」と通称される)は163単位のままです。令和8年6月改定は処遇改善加算の再編と基準費用額(食費)の見直しに限られる期中改定であり、告示の新旧対照表でも訪問介護費の基本単位数は改正対象外(「イ~ト(略)」)と示されています。変わるのは、この163単位を含む所定単位数の合計に対して上乗せされる処遇改善加算の率(加算Iイで27.0%、Iロで28.7%)です。算定要件についても、頻回訪問加算の新設・拡充や算定上限の緩和といった改正は行われていません。なお、20分未満区分は「身体介護を中心とした20分未満の訪問」であることが算定要件であり、生活援助のみの訪問は対象外です。実地指導での確認頻度が高い区分のため、訪問記録に身体介護の具体的内容を必ず記載してください。
参考資料
| 資料名 | 参照先 |
|---|---|
| 令和8年度介護報酬改定について(告示・通知・様式の一覧) | 厚生労働省 |
| 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示(令和8年厚生労働省告示第87号) | 厚生労働省(PDF) |
| 介護報酬の算定構造【令和8年6月改定箇所】 | 厚生労働省(PDF) |
| 令和8年度介護報酬改定の概要 | 厚生労働省(PDF) |
| 介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年3月13日老発0313第6号) | 厚生労働省(PDF) |
| 令和8年度介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版) | 厚生労働省(PDF) |
| 令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!(カスタマーハラスメント対策の義務化) | 厚生労働省(PDF) |
| LIFE(科学的介護情報システム) | 厚生労働省 |
免責事項: 本記事は令和8年厚生労働省告示第87号(令和8年3月13日公布)および厚生労働省「介護報酬の算定構造【令和8年6月改定箇所】」に基づき、一般的な情報提供を目的として作成したものである。自事業所の指定区分・サービス種別によって加算率は異なるため、届出前に厚生労働省および指定権者(都道府県・市町村)の最新通知を必ず確認すること。本記事の内容に基づく判断・行動により生じたいかなる損害についても、筆者は責任を負わない。



