犯罪収益移転防止法2026|士業・不動産業の本人確認(eKYC)実務ガイド

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犯罪収益移転防止法2026|士業・不動産業の本人確認(eKYC)実務ガイド
目次

免責事項: 本記事は2026年7月28日時点の法令・公表情報に基づく実務解説です。法令改正・施行日・罰則額・保存年数の最終確認は、e-Gov法令検索・警察庁JAFIC公表資料・各所管官庁の最新通達を必ずご参照ください。個別案件に関する法的判断は弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。


結論ボックス|誰が・何を・いつまでに

項目 内容
対象者 特定事業者(士業・宅建業者・金融機関・貴金属商・ファイナンスリース業者等)
主な義務 取引時確認(本人確認)・記録作成・保存・疑わしい取引の届出
記録保存期間 取引完了日または取引関係終了日から7年間
eKYC 法令上認められている(オンライン完結可)。改正は2段階で実施済み:第1段階(令和7年6月24日公布・施行)、第2段階(令和8年3月6日公布・令和9年4月1日施行
違反時の主な罰則 是正命令違反(第33条)= 2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金。取引時確認義務違反(第4条)そのものに直接罰則なし(間接罰方式)
届出先 疑わしい取引の届出→各業種の所管行政庁(金融機関=金融庁、宅建業者=国土交通大臣/都道府県知事、士業=法務大臣等)。JAFICは収集・分析機関であり直接の届出先ではない

1. 犯収法とは——特定事業者が知るべき基本

犯罪収益移転防止法(平成19年法律第22号。以下「犯収法」)は、マネーロンダリング(資金洗浄)とテロ資金供与を防止するため、特定事業者に対して本人確認・記録保存・届出の三大義務を課す法律です。

1-1. 犯収法の目的と主管官庁

犯収法は金融庁・国家公安委員会・法務省・財務省・経済産業省・国土交通省など複数官庁が共管しています。日常の執行・ガイダンスは警察庁のJAFIC(犯罪収益移転防止対策室)が中心的役割を担い、各業態の監督官庁が特定事業者の監督を行います。

国際的にはFATF(Financial Action Task Force、金融活動作業部会)の勧告に基づく制度設計であり、FATFの相互審査が制度強化の背景にあります。2026年時点では、FATF勧告40項目への適合水準向上が日本全体の課題とされています。

1-2. 2026年の制度状況

犯収法は2019年、2021年、2022年と段階的に改正されてきました。直近では令和8年法律第34号(2026年6月10日公布)により、口座売買等の罰則が2026年7月10日付で引き上げられています(詳細は口座売買・犯収法改正の罰則解説記事を参照)。

本記事で解説する「特定事業者の取引時確認義務」については、施行規則・本人確認告示等の細則が随時更新されており、とくにeKYC(電子的本人確認)の要件が段階的に整備されています。改正は2段階で実施され、第1段階は令和7年(2025年)6月24日公布・施行第2段階は令和8年(2026年)3月6日公布・令和9年(2027年)4月1日施行です。


2. 特定事業者とは——対象業種の一覧

犯収法第2条2項は、取引時確認義務を負う「特定事業者」を列挙しています。主な業種は以下の通りです。

2-1. 対象業種一覧

業種区分 代表的な事業者 監督官庁
金融機関等 銀行、信用金庫、証券会社、保険会社、両替商 金融庁
宅地建物取引業者 不動産仲介・売買業者(宅建業免許保有者) 国土交通省
司法書士・司法書士法人 不動産登記、会社設立等を行う士業 法務省
行政書士・行政書士法人 許認可申請・法人設立等を行う士業 都道府県知事
公認会計士・監査法人 監査・財務諸表作成等 金融庁
税理士・税理士法人 税務申告・税務相談等 国税庁
弁護士・弁護士法人 法的サービス全般 法務省
貴金属等取扱事業者 宝石・貴金属の売買・質屋 経済産業省
ファイナンスリース業者 リース取引の提供者 経済産業省
クレジットカード業者 カード発行・管理業務 経済産業省

注意: 犯収法第2条第2項の士業規定(第45〜49号)が定める特定事業者は、弁護士・司法書士・行政書士・公認会計士・税理士の5種のみです。社会保険労務士(社労士)は犯収法の特定事業者に含まれません(別途士業関連法による対応が求められる場合はありますが、犯収法上の義務外)。

2-2. 士業が対象になる「特定業務」の範囲

士業が全ての業務で取引時確認を要するわけではありません。犯収法は「特定業務」に該当する場合に限り義務を課しています。

行政書士・司法書士・弁護士等が対象となる主な特定業務:
– 法人の設立・合併・組織変更に関する手続き
– 不動産の売買・贈与・交換の代理・補助
– 宅地または建物の売買・交換の代理・補助
– 顧客の財産の管理・処分の代理・補助(一定額以上)

実務ポイント: 相談・一般的な書類作成のみであれば特定業務に該当しないケースがある一方、資産移転を伴う取引の代理・補助は原則として特定業務となります。業種ごとの詳細は所管官庁のガイドラインを参照してください。


3. 取引時確認の実務

3-1. 確認すべき4項目

犯収法第4条に基づき、特定事業者は取引開始時(または一定金額以上の取引時)に以下4項目を確認しなければなりません。

確認項目 自然人(個人)の場合 法人の場合
① 氏名/名称 氏名 法人名(名称)
② 住居/所在地 住所 本店又は主たる事務所の所在地
③ 生年月日 生年月日 ―(法定確認項目ではない)
④ 取引目的・職業/事業内容 取引目的・職業 取引目的・事業内容

注記(法人の本人特定事項): 犯収法が法定する法人の「本人特定事項」は「名称」と「本店又は主たる事務所の所在地」の2項目のみです(第4条1項)。「設立年月日」は法定の本人特定事項ではなく、取引目的・事業内容と合わせて確認する付加的情報です。実務上は登記事項証明書で設立年月日を確認することが多いですが、法定義務の範囲と区別して理解してください。

法人の場合は、上記に加え実質的支配者の確認が必要です(後述3-3)。

3-2. 本人確認書類

本人確認書類は、犯収法施行規則が定める書類を使用します。主なものは以下の通りです。

顔写真付き書類(1点で可):
– 運転免許証
– マイナンバーカード(個人番号カード)
– パスポート
– 在留カード
– 特別永住者証明書

顔写真なし書類(原則2点以上の組み合わせ、または補完確認が必要):
– 健康保険証
– 住民票の写し
– 住民票記載事項証明書
– 印鑑登録証明書(住所・氏名記載のもの)

注意: 健康保険証のみで本人確認を完結できるかは取引形態・業種によって異なります。施行規則の確認書類リストおよびJAFICのFAQで最新要件を確認してください。

3-3. 実質的支配者の確認

法人との取引では「実質的支配者(Beneficial Owner)」の確認が必須です。

実質的支配者とは、法人の議決権・利益受領権等を通じて事実上支配する自然人を指します。犯収法施行規則では、大まかに以下の基準で判定します。

  • 株式会社等:議決権の25%超を直接・間接に保有する自然人
  • 上記が存在しない場合:事業を支配する自然人(代表者・業務執行役等が最終的な支配者とみなされることが多い)
  • 上場会社・子会社・国・地方公共団体等は確認対象外(例外あり)

確認方法: 法人登記簿謄本と顧客からの申告書の組み合わせが一般的です。令和3年(2021年)法務省告示第187号に基づく制度として、令和4年(2022年)1月31日から運用開始された実質的支配者リスト(登記所保管)の活用も可能になりました(申告書の代替ではなく補助的な確認手段)。

3-4. eKYC(オンライン本人確認)の可否

犯収法はeKYCを認めています。 対面確認が困難な場合や非対面取引(不動産のオンライン契約等)でも、所定の方法に従えば法的要件を満たすことができます。

認められているeKYC方式(主なもの):

方式 概要 注意点
方式1: 書類+顔写真+容貌照合 運転免許証・マイナンバーカード等の画像と、撮影した容貌(顔写真)を提出させてAI等で照合 画像の真正性確認要件あり
方式2: マイナンバーカードIC読取 NFC(スマートフォンのICチップ読取)でマイナンバーカードの電子証明書を確認 最も信頼性が高いとされる方式
方式3: 公的個人認証(電子署名) マイナンバーカードの署名用電子証明書を用いた電子署名を確認 PKI基盤を利用
方式4: 銀行口座(既存確認済み口座)振込 既に本人確認済みの口座への少額振込で同一性確認 業種・取引内容により不可の場合あり

2026年の現状では、方式1(容貌照合)と方式2(ICチップ読取)が非対面取引の主流となっています。なお、eKYC要件の省令改正は2段階で実施されており、令和7年(2025年)6月24日施行の第1段階はすでに効力を有し、令和8年(2026年)3月6日公布の第2段階は令和9年(2027年)4月1日施行です。

実務ポイント(不動産業者): 宅地建物の売買・賃貸取引にeKYCを導入する場合、国土交通省のガイドラインと犯収法施行規則の双方に準拠する必要があります。宅建業者向けの本人確認義務は国土交通省が所管するため、同省の最新通知を必ず確認してください。


4. 疑わしい取引の届出・記録の作成保存

4-1. 疑わしい取引の届出義務

犯収法第8条は、取引の相手方が犯罪収益の移転に関与していると疑われる場合、または疑われる合理的な根拠がある場合に、疑わしい取引の届出を義務付けています。

届出の主な判断基準(例示):
– 取引金額・方法が合理的な経済目的と不相応
– 本人確認に際して疑わしい言動・偽造書類の疑い
– 過去の届出案件と類似したパターン
– 顧客の本人確認情報が不明瞭・矛盾している

届出方法: 疑わしい取引の届出先は業種ごとの所管行政庁です(金融機関=金融庁、宅建業者=国土交通大臣/都道府県知事、士業=法務大臣等)。警察署や都道府県警察は直接の届出先ではありません。JAFICは各所管行政庁から受け取った情報を集約・分析する機関です。2021年以降は電子届出システム(JAFIC-FIU)も整備されており、所管行政庁経由でのオンライン届出が可能です。

注意: 疑わしい取引の届出を行った事実を顧客や取引の相手方に漏らすことは法律上禁止されています(犯収法第8条4項)。

4-2. 取引記録の作成・保存

犯収法第7条・第8条に基づき、特定事業者は取引記録を作成し、一定期間保存する義務を負います。

記録の種類 保存期間 起算点
取引時確認記録(本人確認の記録) 7年間 取引に係る契約の終了日等
取引記録(取引内容の記録) 7年間 取引完了日

4-3. 記録保存期間と「時効」の考え方

よくある疑問: 「犯収法の時効は何年か?」

犯収法における「時効」は、刑事罰の公訴時効行政処分の除斥期間の2つに区分して考える必要があります。

① 刑事罰(犯収法違反)の公訴時効:

犯収法の罰則体系は「間接罰方式」のため、直接問われる刑事罰は是正命令違反(第33条・第34条)等が中心です。刑事訴訟法上の公訴時効は法定刑の重さで定まります。

刑訴法250条では、法定刑の重さに応じて公訴時効が定まります。犯収法の主な罰則(第33条:2年以下の拘禁刑、第34条:1年以下の拘禁刑、第25条・第26条:3年以下の拘禁刑)に当てはめると、おおむね長期5年未満の拘禁刑に当たる犯罪は公訴時効3年です。なお、刑法改正(2022年公布)により「懲役」は「拘禁刑」に統一されています。

② 行政処分(業務改善命令・業務停止命令等)の除斥期間:

行政処分については、行政法上の除斥期間や時効の概念が適用される場合がありますが、犯収法自体に明示的な除斥期間規定はなく、「相当の期間」の経過が処分の裁量判断に影響する程度と解されています。

③ 記録保存期間(7年)との関係:

記録保存義務の7年は、行政調査・犯罪捜査で取引記録を提出できる期間の下限を定めるものです。7年を超えた時点で即座に刑事責任が時効になるわけではなく、別途、刑事訴訟法上の時効計算が必要です。

実務上のポイント: 取引記録は法定7年を超えても、内部監査・トラブル対応の観点から10年程度の保存を実務上採用する事業者も多くあります。


5. 2026年の動向・最近の改正

5-1. 令和8年法律第34号(2026年6月公布・7月施行)

2026年7月10日施行の犯収法改正(令和8年法律第34号)では、主に口座の不正売買・送金バイト行為の罰則引き上げ・新設が行われました。詳細は口座を売ると逮捕される?罰則3年・500万円の改正内容を参照してください。

本記事が扱う「特定事業者の取引時確認義務」については、今回の法改正での直接的な義務拡大はありませんが、周辺法制の整備が実務に影響しています。

5-2. eKYC要件の整備——2段階改正

eKYC(犯収法施行規則)の改正は以下の2段階で実施されています。

段階 公布日 施行日 主な内容
第1段階 令和7年(2025年)6月24日 同日施行 マイナンバーカードICチップ読取の推奨強化等
第2段階 令和8年(2026年)3月6日 令和9年(2027年)4月1日 AI照合精度基準・ライブネス検知要件化等

第2段階の施行(2027年4月1日)までに体制整備が必要な事業者は、2026〜2027年にかけての準備期間を活用してください。なお「2026年4月施行のeKYC厳格化」という情報は誤りです。正確なスケジュールは上記の通りです。

5-3. 携帯電話不正利用防止法との関係

犯収法と並んで、携帯電話不正利用防止法(平成17年法律第31号)が本人確認関連法として実務に影響します。同法は携帯電話の契約時の本人確認を義務付けており、eKYCの整備はこの分野でも進んでいます。犯収法とは別体系ですが、同一事業者がeKYCシステムを導入する際に両法への対応を一体的に設計するケースが増えています。

5-4. FATF相互審査(第5次)への対応

日本のFATF第5次相互審査は、金融庁が2026年に公表したスケジュールによると、書類審査(書面評価)が2027年、オンサイト審査が2028年8月頃の予定です。特定事業者に対する監督・執行の強化が見込まれ、士業(弁護士・司法書士・税理士等)に対する取引時確認義務の実効的な執行が監督官庁にとっての重点課題となっています。

また、資金決済法・前払式支払手段の規制(前払式支払手段の届出と供託実務の解説記事も参照)と犯収法上の本人確認義務は、フィンテック事業者にとって一体的な対応が求められます。さらに暗号資産分野では、金融商品取引法への移管(令和8年法律第64号)に伴い証券会社水準の本人確認・疑わしい取引の届出が求められる見込みです(暗号資産の金商法移管と実務対応)。


6. 違反時の罰則・行政処分

6-1. 刑事罰——「間接罰方式」の正確な理解

犯収法は「間接罰方式」を採用しています。 取引時確認義務(第4条)・記録作成保存義務(第6条・第7条)・疑わしい取引の届出義務(第8条)に違反しても、義務違反それ自体に直接の罰則はありません。罰則が科されるのは、行政庁の是正命令(第18条)に違反した場合です。

罰則の二段階構造:

義務違反(第4条・第6条・第7条・第8条)
    ↓
行政庁の是正命令(第18条)← 行政処分(罰則ではない)
    ↓
是正命令違反で初めて刑事罰(第33条)

犯収法の主な刑事罰規定:

条文 対象行為 罰則
第33条 第18条の是正命令違反(取引時確認・記録保存・届出義務違反への是正命令を無視した場合) 2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(併科可)
第34条 報告・資料提出の拒否、立入検査の拒否等 1年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(併科可)
第25条 本人特定事項を隠蔽する目的での第4条6項違反(架空名義・借名口座等) 3年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(併科可)
第26条 他人になりすまして預貯金通帳・キャッシュカード等を不正取得 3年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金

重要: 犯収法には「過料」規定は存在しません。かつての解説で見られた「○○万円の過料」という記述は誤りです。また、義務違反の段階では直接の刑事罰はなく、あくまで是正命令違反に至って初めて第33条の刑事罰が問題となります。

第18条(是正命令)は行政処分規定であり、それ自体は罰則ではありません。 第33条の刑事罰は是正命令違反という独立した行為を構成要件としています。

6-2. 行政処分

各業態の監督官庁は、特定事業者に対して以下の行政処分を行う権限を持ちます。

処分の種類 内容
指導・注意 義務の履行を求める行政指導
業務改善命令 体制整備・手続き見直しを命令
業務停止命令 一定期間の営業停止を命令
許可・登録の取消し 最も重い処分。宅建業免許・士業資格の取消し

近年、FATF審査を背景に士業に対する処分件数が増加傾向にあります。取引時確認の体制整備は、単なる手続き問題でなく、業務継続上のリスク管理と位置付けることが重要です。


7. 実務チェックリスト

以下のチェックリストを用いて、現在の体制を確認してください。

チェックリストA:体制整備

  • [ ] 自社が特定事業者に該当するか確認している
  • [ ] 特定業務の範囲を業種ガイドラインに基づいて特定している
  • [ ] 取引時確認の手順書(社内マニュアル)が整備されている
  • [ ] eKYCを導入している場合、使用する方式が施行規則に適合している
  • [ ] 疑わしい取引の届出フローが明文化されており、担当者が把握している

チェックリストB:個別取引の本人確認

  • [ ] 自然人:氏名・住所・生年月日・取引目的・職業を確認している
  • [ ] 法人:名称・所在地・事業内容・設立年月日・実質的支配者を確認している
  • [ ] 顔写真付き書類(1点)または顔写真なし書類(2点以上)を取得している
  • [ ] 書類のコピーまたは電磁的記録を保存している(保存期間7年)
  • [ ] 非対面取引の場合、eKYC方式が施行規則に列挙された方式に該当している

チェックリストC:記録保存

  • [ ] 本人確認記録と取引記録を分けて管理している
  • [ ] 保存期間(7年)の起算点を正しく把握している(取引関係終了日等)
  • [ ] 電子保存の場合、改ざん防止措置が取られている
  • [ ] 行政調査・警察捜査への提出を想定したアクセス管理ができている

チェックリストD:届出・更新

  • [ ] 疑わしい取引の届出を行った場合の記録が残っている
  • [ ] 顧客情報に変更があった場合の再確認手順がある
  • [ ] 所管官庁の通達・ガイドライン改訂を定期的にチェックする体制がある
  • [ ] 担当者の研修・教育を年1回以上実施している

8. FAQ

Q1. 士業が全ての業務で本人確認を行う必要がありますか?

犯収法が適用される「特定業務」に限られます。税理士であれば税務申告の代理一般が特定業務に含まれ、行政書士・司法書士・弁護士等は法人設立・不動産売買補助・財産管理などが対象です。一般的な相談や書類作成のみで資産移転を伴わない業務については対象外のケースもありますが、業種ごとに所管官庁のガイドラインが異なるため、必ずJAFICまたは所管官庁の最新資料で確認してください。

Q2. eKYC(オンライン本人確認)は法律上認められていますか?

はい、犯収法施行規則は複数のeKYC方式を明示的に認めています。マイナンバーカードのICチップ読取(NFC)方式、顔写真+容貌照合方式、電子署名方式などが代表的です。ただし、どの方式でも対面確認と同等の本人確認が実現できることが前提です。eKYC省令改正は2段階で実施されており、第1段階は令和7年(2025年)6月24日施行済み、第2段階は令和9年(2027年)4月1日施行です。導入前に最新施行規則を確認することを強く推奨します。

Q3. 記録保存期間の7年は、いつから数えますか?

本人確認記録は「取引に係る契約の終了日その他これに相当する日から起算して7年間」、取引記録は「取引の完了日から7年間」が原則です(犯収法施行規則上の規定)。継続的な顧客関係がある場合は最後の取引終了日が起算点となるため、個別取引ごとではなく、取引関係全体の管理が必要です。

Q4. 犯収法違反の時効は何年ですか?

犯収法違反の刑事罰については、刑事訴訟法250条が定める公訴時効が適用されます。犯収法は「間接罰方式」であるため、直接問題となるのは「是正命令違反(第33条・2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金)」等の条文です。法定刑の重さによって時効期間が異なります(例:長期5年未満の拘禁刑に当たる罪は3年、長期10年未満は5年)。行政処分については、犯収法上に明示的な除斥期間の規定はなく、行政機関の裁量判断の範囲内で処理されます。なお、記録保存義務の7年間は「時効」とは別概念であり、時効期間中であっても行政調査・捜査への協力義務が生じることがあります。具体的な状況については弁護士に相談してください。

Q5. 疑わしい取引の届出を行うと、顧客に知らせなければなりませんか?

逆です。届出を行った事実を顧客・取引相手方に漏らすことは、犯収法第8条4項で禁止されています(告知禁止)。届出を行った後も、通常通り業務を継続することが原則です。ただし、個別の事案によっては取引継続の可否を内部で判断する必要があります。

Q6. 不動産売買で買主のみ確認すればよいですか?

いいえ。宅建業者として不動産売買を媒介・代理する場合、原則として売主・買主の双方について取引時確認を行う必要があります。また法人との取引では実質的支配者の確認も必要です。一方で、宅建業者同士の取引(業者間売買)については省略できる場合もあります。詳細は国土交通省が公表する「宅地建物取引業者における犯罪収益移転防止のためのガイドライン」を参照してください。

Q7. 本人確認書類の「コピー」で保存は認められますか?

書類のコピー(複写物)または電子的に保存したデータのいずれも認められています。ただし電子保存の場合は、施行規則が定める要件(原本性の確保、改ざん防止等)を満たす必要があります。クラウドストレージへのスキャン保存など、現代的な手法でも要件を満たすことは可能ですが、セキュリティ管理・アクセスログ等の整備が必要です。


まとめ

犯収法が特定事業者(士業・宅建業者・貴金属商等)に課す義務は、大きく3つです。

  1. 取引時確認(本人確認): 自然人4項目・法人+実質的支配者の確認
  2. 記録の作成・保存: 本人確認記録・取引記録を7年間保存
  3. 疑わしい取引の届出: 合理的な根拠があれば届出(届出事実の秘匿義務あり)

2026年の制度環境では、FATFの相互審査を背景とした監督強化とeKYCの整備が同時に進んでいます。オンライン取引の増加により非対面本人確認の需要は高まる一方、方式の選択を誤ると義務不履行になるリスクがあります。

最も重要なのは「今の要件で正しく対応しているか」を定期的に確認する習慣づけです。各業種の所管行政庁(金融庁・国土交通省・法務省等)および警察庁JAFICの最新ガイドラインを年1回以上チェックし、担当者研修と社内マニュアルの更新を継続してください。


参考一次ソース

機関 資料 URL
警察庁JAFIC 犯罪収益移転防止法の概要・ガイドライン https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/
e-Gov 犯罪収益移転防止法(条文) https://elaws.e-gov.go.jp/
金融庁 マネーロンダリング・テロ資金供与対策 https://www.fsa.go.jp/
法務省 実質的支配者リスト制度 https://www.moj.go.jp/
国土交通省 宅建業者向け犯収法ガイドライン https://www.mlit.go.jp/
デジタル庁 eKYC・マイナンバーカード関連施策 https://www.digital.go.jp/

本記事は2026年7月28日に公開しました。法令改正に応じて随時更新します。

JG

実務ガイド編集部

AI執筆 + 編集部レビュー済み

本記事はAIが初稿を作成し、編集部が法令原文・官公庁通知・審議会資料等の一次情報と照合のうえ、内容を確認・編集しています。行政手続き・法改正・制度改正の実務情報を専門に扱う編集チームが、企業実務担当者・士業専門家向けに正確性の高いコンテンツを提供します。