最終更新日: 2026年9月8日
2027年1月1日、労働安全衛生規則の改正により「個人事業者等死傷病報告」という新しい報告制度が始まる。一人親方など労働者を使わずに働く個人事業者が業務中に死亡・休業したとき、労働基準監督署へ報告する制度である。ここで最も誤解されやすいのが、報告する義務を負うのは一人親方本人ではなく、仕事を発注した側(特定注文者)や現場を管理する事業者だという点である。しかも、この報告義務には罰則が無い。本記事は厚生労働省の通達(基発0624第5号)と労働安全衛生規則の条文を一次ソースとして、誰が・何を・いつまでに報告するのかを整理する。
この記事の対象読者
建設業で働く一人親方(個人事業主)本人、一人親方に仕事を発注する元請・注文者、そして建設業や製造業の労務管理を扱う社会保険労務士・行政書士を想定している。ただし後述のとおり、この制度は建設業に限定されない。労働者を使わずに事業を行う個人事業者に仕事を発注する立場であれば、業種を問わず関係する制度である。
何が変わるのか(3行で)
- 2027年1月1日から、労働者と同じ現場で働く一人親方等が業務中に死亡・休業4日以上の被災をした場合、発注者側または現場管理者側が労働基準監督署へ報告する義務を負う(安衛則第98条の2)
- 一人親方本人には、労基署への直接報告義務は無い。 本人が負うのは、発注者側へ状況を伝える一次報告の義務だけである(安衛則第98条の3)
- この報告義務、および報告を理由とする不利益取扱いの禁止には、いずれも罰則が無い。既存の労働者死傷病報告(安衛則第97条)には50万円以下の罰金があるため、混同しないよう注意が必要である
報告するのは誰か(最大の誤解ポイント)
新制度の名前だけを見ると「個人事業者本人が労基署に報告する制度」だと思われがちだが、条文の作りはそうなっていない。誰が・誰に報告するのかを整理すると次のようになる。
| 立場 | 報告先 | 根拠条文 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 特定注文者(一人親方に仕事を発注し、同じ場所で自らも仕事をする注文者) | 所轄労働基準監督署長 | 安衛則第98条の2第1項 | 労働者と同一の場所で働く一人親方が死亡・休業4日以上になったことを把握したとき |
| 災害発生場所管理事業者等(特定注文者がいない場合に現場を管理する事業者) | 所轄労働基準監督署長 | 安衛則第98条の2第2項 | 自らが管理する場所で一人親方が死亡・休業したことを把握したとき(特定注文者がいる場所は対象外) |
| 一人親方本人 | 特定注文者(労基署ではない) | 安衛則第98条の3第1項 | 自分が死亡・休業したことを、報告困難な場合を除き特定注文者に伝える |
| 一人親方本人 | 災害発生場所管理事業者等(特定注文者がいない場合) | 安衛則第98条の4第1項 | 同上。現場に特定注文者がいるときは、この義務は生じない |
| 中小規模事業者(常時300人以下の労働者を使用する事業主。金融業・保険業・不動産業・小売業は50人以下、卸売業・サービス業は100人以下) | 所轄労働基準監督署長 | 安衛則第98条の6第1項 | 自社の代表者・役員本人が被災した場合、自ら報告する(後述) |
つまり労基署への報告ルートは2つだけで、どちらも一人親方本人ではなく第三者(発注者側・現場管理側)が担う。一人親方本人がやるのは、その第三者に事情を伝える一次報告にとどまる。
なお、一人親方本人の一次報告の相手は現場の状況によって変わる。特定注文者がいる現場では特定注文者へ(第98条の3第1項)、特定注文者がいない現場では現場を管理する災害発生場所管理事業者等へ(第98条の4第1項)報告する。特定注文者がいないからといって一次報告先が無くなるわけではない点に注意したい。
安衛則第98条の2第1項の原文は次のとおりである。
「個人事業者(事業を行う者で、労働者を使用しないものをいう。以下同じ。)に仕事を請け負わせた注文者((中略)以下この条から第九十八条の四までにおいて「特定注文者」という。)は、当該個人事業者(法人である場合には、その代表者又は役員)である作業従事者が、労働者((中略))と同一の場所において、特定注文者から請け負つた仕事の作業を行う場合において、業務に起因する負傷又は疾病により死亡し、又は休業(四日以上のものに限る。(中略))したことを把握したとき((中略))は、遅滞なく、電子情報処理組織を使用して、次に掲げる事項を、当該場所を所轄する労働基準監督署長に報告しなければならない。」
「個人事業者」の定義自体も条文上に置かれており、「事業を行う者で、労働者を使用しないもの」とされる。一人親方に限らず、業種を問わずこの定義に当てはまる者が対象になる。
なお、注文者と個人事業者が同じ現場で作業していない場合(発注者が現場に来ない場合)は、特定注文者にも災害発生場所管理事業者等にも該当せず、報告義務自体が生じないケースがある。 通達(基発0624第5号)は、個人宅から荷の運搬を請け負った個人事業者が別業者の労働者と混在して被災した例で、荷主である個人がその場で仕事をしていないため特定注文者にあたらず、報告義務が生じないことを明示している。
何が起きたら報告するのか
報告対象になるのは死亡、または休業4日以上の場合である。休業4日未満の軽微な災害は、この制度の報告対象に含まれない。
安衛則第98条の2第1項は、対象からの除外規定も置いている。
「(当該業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは当該業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳血管疾患、心臓疾患若しくは精神障害による休業である場合を除く。(中略))」
つまり、過重労働による脳・心臓疾患や、強い心理的負荷による精神障害・それを原因とする自殺は、この義務的報告の対象から除かれる。 これらについては、一人親方本人が労基署へ任意で報告できる別枠が用意されている(安衛則第98条の5)。義務ではなく、本人が希望すれば報告できるという扱いである。
| 災害の種類 | 扱い | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 業務起因の負傷・疾病による死亡、または休業4日以上 | 特定注文者等が労基署へ義務的に報告 | 安衛則第98条の2 |
| 休業4日未満の負傷・疾病 | 報告対象外(この制度には猶予規定も無い) | — |
| 過重負荷による脳血管疾患・心臓疾患、強い心理的負荷による精神障害・それによる自殺 | 個人事業者本人が労基署へ任意で報告できる | 安衛則第98条の5 |
どこへ、いつまでに
報告先は当該場所を所轄する労働基準監督署長である。都道府県労働局や厚生労働本省への提出ではない。
報告期限は「遅滞なく」とされ、具体的な日数の指定は無い。安衛則第98条の2・第98条の3・第98条の4・第98条の6のいずれも同じ「遅滞なく」の文言を使っている。
注意したいのは、既存の労働者死傷病報告(安衛則第97条)にある「休業4日未満は四半期ごとにまとめて報告する」という猶予規定が、この新制度には存在しないことである。 これは規定が漏れているのではなく、そもそも新制度の報告対象が死亡・休業4日以上に限定されているため、4日未満の扱いを定める必要が無いからである。
報告方法は電子情報処理組織を使用すること(電子申請)が原則とされている。通達(基発0624第5号)は次のように述べている。
「安衛則第98条の2、第98条の5及び第98条の6の規定による個人事業者等死傷病報告については、電子情報処理組織を使用して行うことを原則としていること。(中略)なお、当分の間、経過措置として書面による報告を行うことができることとしているが、この場合には、追って示す留意事項を参考に報告すること。」
つまり当分の間は書面でも報告できる。電子申請の受け皿として、厚労省は「報告支援システム」(https://www.chohyo-shien.mhlw.go.jp/)を整備する予定であることも通達に記載されている。
何を報告するのか(報告事項10項目)
様式そのものは未確定だが、報告する中身は条文が10項目に特定している(安衛則第98条の2第1項第1号〜第10号)。社内フローを設計する際は、この10項目を集められる体制になっているかを確認しておきたい。
| # | 報告事項 |
|---|---|
| 1 | 報告者の労働保険番号(報告者が個人事業者で特別加入の承認がある場合はその番号) |
| 2 | 報告者の事業の種類、事業場(個人事業者の場合は主として事業を行う場所)の名称・所在地・電話番号 |
| 3 | 建設工事の作業中の被災であれば、その工事の名称 |
| 4 | 事業場の構内での請負作業中の被災であれば、その事業場の名称 |
| 5 | 建設工事の請負作業中の被災であれば、元方事業者の事業場の名称と労働保険番号 |
| 6 | 被災者の氏名・生年月日・年齢・性別・職種・その職種での経験期間・傷病の名称と部位・労災保険の特別加入の承認の有無 |
| 7 | 休業見込期間、または死亡日時 |
| 8 | 被災者が外国人の場合、国籍または地域の名称と在留資格の区分 |
| 9 | 負傷・疾病の発生日時、発生場所の所在地、発生状況とその略図、原因 |
| 10 | 報告年月日と報告者の職氏名 |
第9号の「略図」まで求められる点は、既存の労働者死傷病報告と同じ作りである。被災の直後に現場の状況を記録しておかないと、後から作成するのは難しい。
なお、報告に使う様式の名称・番号は、通達の時点(令和8年6月24日)でも確定していない。 通達は書面報告について「追って示す留意事項を参考に報告すること」としており、詳細様式は今後公表される予定である。現時点で様式番号を断定した情報を見かけても、それは一次ソースに基づくものではない可能性がある。
罰則はあるのか(無い。既存制度との違いに注意)
結論から言えば、個人事業者等死傷病報告の義務、および報告を理由とする不利益取扱いの禁止のいずれにも罰則は無い。 通達がそのことを明記している。
「このような趣旨から、個人事業者等死傷病報告に係る報告義務については、罰則を伴わない義務規定としているものであること。」
「なお、本条に基づく報告主体による不利益取扱いの禁止について、罰則はないこと。」
これは、法令上の根拠条文からも裏付けられる。罰則条項である労働安全衛生法第120条は、報告義務違反に罰金を科す対象となる条文を号ごとに列挙しているが、新設された第100条の2(個人事業者等の災害調査・報告の根拠条文)はこの列挙に含まれていない。既存の労働者死傷病報告の根拠である第100条第1項は列挙されており、こちらには50万円以下の罰金が定められている(安衛法第120条第5号)。
新旧2つの報告制度は名称が似ているため混同しやすい。違いを表にまとめる。
| 項目 | 労働者死傷病報告(安衛則第97条・既存) | 個人事業者等死傷病報告(安衛則第98条の2等・新設) |
|---|---|---|
| 報告義務者 | 事業者(雇用主)が自社の労働者分を報告 | 発注者側(特定注文者・災害発生場所管理事業者等)が、同一場所で働く個人事業者分を報告 |
| 法的根拠 | 安衛法第100条第1項 | 安衛法第100条の2(新設) |
| 罰則 | あり(安衛法第120条第5号、50万円以下の罰金) | 無い(通達で明記) |
| 休業4日未満の扱い | 四半期ごとにまとめて報告する規定あり | 該当規定なし(対象が死亡・休業4日以上のみのため) |
「罰則が無い=守らなくてよい」ではない。 義務規定である以上、労基署の行政指導の対象にはなり得る。ただし、既存の労働者死傷病報告と同列に「罰則あり」と書くのは誤りであり、この点が二次情報でしばしば混同されている。
報告したことを理由とする不利益取扱いの禁止
一人親方が発注者に被災を報告したことで、契約を打ち切られたり現場から締め出されたりしては制度が機能しない。そのため、安衛則第98条の3第2項・第98条の4第2項は、報告を理由とする不利益取扱いを禁止している。
通達は「不利益な取扱い」の具体例として、次のような行為を挙げている。
- 報告を行った個人事業者との契約を、合理的な理由なく解除・更新拒否・条件の不利変更をすること
- 自らが管理する作業場所への立入りを不当に制限し、または作業の機会を与えないこと
- 合理的な理由のない作業からの排除、過度な監視、嫌がらせ、威迫的な言動等により事実上作業の継続を困難にすること
- 合理的な理由なく契約解除を示唆し、または将来の取引継続に不安を与える言動を行うこと
一方で、報告とは無関係な客観的理由に基づく契約条件の見直しや業務内容の変更は、不利益取扱いには該当しない。行為が報告を理由とするものかどうかは、時期・内容・経緯を踏まえて個別に判断される。
繰り返しになるが、この不利益取扱いの禁止にも罰則は無い。 罰則の有無を根拠に軽視してよい規定ではないが、罰則があるという誤情報は正しておく必要がある。
中小規模事業者が自社の代表者・役員分を報告する場合
労働者を使用する通常の事業者であっても、その代表者や役員自身が「作業従事事業者」として労働者と同じ場所で作業し、被災した場合には別の報告経路が用意されている。対象は労働者災害補償保険法施行規則第46条の16に定める数以下の労働者を使用する事業者(中小規模事業者)に限られる。同条は労災保険の特別加入(中小事業主等)の範囲を定める規定で、具体的には次の人数である。
| 主たる事業 | 常時使用する労働者数 |
|---|---|
| 金融業・保険業・不動産業・小売業 | 50人以下 |
| 卸売業・サービス業 | 100人以下 |
| 上記以外(建設業・製造業など) | 300人以下 |
安衛則第98条の6第1項は次のとおりである。
「事業者(労働者災害補償保険法施行規則第四十六条の十六において定める数以下の労働者を使用するものに限る。次項において同じ。)は、当該事業者(法人である場合には、その代表者又は役員)である作業従事者((中略)「作業従事事業者」という。)が、労働者((中略))と同一の場所において仕事の作業を行う場合において、業務に起因する負傷又は疾病により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、電子情報処理組織を使用して、次に掲げる事項を、所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。」
この経路では、事業者自身(=中小規模事業者の代表者・役員)が自ら労基署へ報告する点が、特定注文者や災害発生場所管理事業者等が第三者として報告する上記のルートとは異なる。従業員数が少ない工務店・零細事業者で、代表者自身が現場作業を兼ねているケースが該当しうる。
引用した第98条の6第1項の条文には「休業(四日以上のものに限る)」という限定句が見当たらないが、この経路でも4日以上の要件は同じように適用される。 4日以上という限定は第98条の2第1項が「休業(四日以上のものに限る。以下この項から第九十八条の六までにおいて同じ。)」と定義しており、その定義が第98条の6第1項まで及ぶ構造になっているためである。条文だけを個別に読むと閾値が違うように見えるので注意したい。
なお、この経路にも脳血管疾患・心臓疾患・精神障害についての任意報告枠が置かれている(安衛則第98条の6第2項)。個人事業者本人に用意された第98条の5と対になる規定で、義務ではなく「報告することができる」という扱いである点も同じである。
一人親方本人が今からやっておくこと
一人親方本人には労基署への直接報告義務が無いとはいえ、何もしなくてよいわけではない。
- 発注者(特定注文者)への一次報告義務があることを認識する。 業務に起因する負傷・疾病で死亡・休業したときは、遅滞なく発注者へ状況を伝える必要がある(安衛則第98条の3第1項)。ただし負傷・疾病その他の状況により報告が困難な場合は免除される
- 元請・発注者との業務委託契約の内容を確認する。 現場での被災時の連絡フローが契約書や現場ルールに明記されているかを事前に確認しておくと、発注者側の報告義務の履行にもつながる。契約書に定めるべき必須項目は業務委託契約書の必須項目と書き方で扱っている
- 労災保険の特別加入を検討する。 個人事業者等死傷病報告は労基署への統計・実態把握の制度であり、被災時の補償そのものとは別枠である。一人親方自身の補償を確保するには労災保険の特別加入制度が別途必要になる。労災保険料の基本的な仕組みは労災保険料は給与からいくら引かれる?答えは0円で解説している
- 建設業で元請から仕事を請け負う場合、元請側が保有すべき許可の種類(一般・特定の違い)を知っておくと、発注者側の責任範囲を理解しやすくなる。建設業許可2026年|29業種一覧・一般特定の違いを参照されたい
発注者・元請が今からやっておくこと
新制度で実際に報告義務を負うのは発注者側であるため、対応の主体はこちらになる。
- 自社が「特定注文者」に該当する現場を洗い出す。 一人親方に仕事を発注し、かつ同じ場所で自らも仕事をする場合に特定注文者となる。逆に、発注するだけで現場に立ち会わない場合は特定注文者に該当しないことがある(本記事「報告するのは誰か」の運搬業務の例を参照)
- 一人親方から被災の連絡を受けたときの社内フローを整備する。 「遅滞なく」報告する義務がある以上、把握から報告までの社内手順(誰が把握し、誰が電子申請するか)を事前に決めておく必要がある
- 2027年1月1日の施行に向けて電子申請の環境を確認する。 原則は電子申請(報告支援システム
https://www.chohyo-shien.mhlw.go.jp/を厚労省が整備予定)だが、当分の間は書面での報告も可能とされている - 下請・一人親方との取引条件を見直す際は、報告を理由とする不利益取扱いにあたらないよう注意する。 契約解除や取引条件の変更が、被災報告を理由にしたものと受け取られないよう、客観的な理由を記録しておくことが望ましい。下請取引に関する規制強化の動きは改正下請法2026年|手形支払禁止・価格協議義務化も合わせて確認しておきたい
- 死亡・休業に至った場合の一人親方側の補償(労災保険の年金給付等)についても発注者として把握しておくと、現場対応がスムーズになる。給付の種類は労災の年金系給付3種で整理している
よくある誤解
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| 「一人親方本人が労基署に報告する制度である」 | 労基署への報告義務者は特定注文者または災害発生場所管理事業者等。一人親方本人が負うのは発注者への一次報告のみ(安衛則第98条の3) |
| 「報告を怠ると罰金がある」 | 罰則は無い(通達に明記。安衛法第120条の列挙に第100条の2は含まれない) |
| 「建設業だけの制度である」 | 条文上「個人事業者(事業を行う者で、労働者を使用しないもの)」に業種の限定は無い。通達には大規模商業施設のバックヤード等、建設業以外の例も挙げられている |
| 「休業4日未満はまとめて四半期報告すればよい」 | 新制度に四半期報告の規定は無い。対象自体が死亡・休業4日以上に限定されている |
| 「様式は労働者死傷病報告と同じ様式第23号を使う」 | 専用の様式名称・番号は令和8年6月24日時点の通達でも未確定。「今後公表予定」の段階である |
| 「過労死・精神障害も義務的報告の対象」 | 過重負荷による脳血管疾患・心臓疾患、強い心理的負荷による精神障害・自殺は義務の対象外で、本人による任意報告の枠組み(安衛則第98条の5)になる |
FAQ
原則としてそうではない。労基署への報告義務を負うのは、仕事を発注した特定注文者、または現場を管理する災害発生場所管理事業者等である(安衛則第98条の2)。一人親方本人が負うのは、被災の状況を発注者側に伝える一次報告の義務にとどまる(安衛則第98条の3第1項)。
無い。厚生労働省の通達(基発0624第5号)が「罰則を伴わない義務規定としているものであること」と明記している。既存の労働者死傷病報告(安衛則第97条)には50万円以下の罰金があるが、新設の個人事業者等死傷病報告には罰則規定が置かれていない。
対象は業務に起因する死亡、または休業4日以上の場合に限られる。休業4日未満は対象外である。また、過重負荷による脳血管疾患・心臓疾患や、強い心理的負荷による精神障害・それを原因とする自殺は義務的報告の対象から除外され、本人が任意で報告できる別枠(安衛則第98条の5)になる。
関係する。条文上の「個人事業者」の定義は「事業を行う者で、労働者を使用しないもの」であり、業種の限定は付されていない。厚労省の通達には、大規模商業施設のバックヤードの管理を委託している物流事業者が災害発生場所管理事業者等に該当する例が挙げられており、建設業以外の現場も対象になりうる。
令和8年6月24日時点の通達では確定していない。通達は書面報告について「追って示す留意事項を参考に報告すること」としており、詳細な様式は今後公表される見込みである。施行日(2027年1月1日)が近づくにつれて公表される可能性が高いため、続報を確認する必要がある。
できる。原則は電子情報処理組織を使用した電子申請だが、通達は「当分の間、経過措置として書面による報告を行うことができる」としている。電子申請については、厚労省が報告支援システム(https://www.chohyo-shien.mhlw.go.jp/)を整備する予定である。
まとめ
2027年1月1日に施行される個人事業者等死傷病報告(安衛則第98条の2等)は、一人親方等が業務中に死亡・休業4日以上の被災をした場合に、労基署への報告を義務づける新制度である。要点は3つに集約できる。
- 報告義務者は一人親方本人ではない。 労基署への報告は特定注文者または災害発生場所管理事業者等が行う。一人親方本人が負うのは、発注者側への一次報告義務にとどまる
- この報告義務、および不利益取扱い禁止のいずれにも罰則は無い。 既存の労働者死傷病報告(50万円以下の罰金あり)と混同しないよう注意する
- 建設業に限定されない。 「労働者を使用しない事業を行う者」に発注する立場であれば、業種を問わず関係しうる
一方で、報告用の様式は令和8年6月24日時点でも未確定であり、続報を待つ必要がある。発注者側は、自社が特定注文者に該当する現場の洗い出しと、被災連絡を受けたときの社内フローの整備を、施行日までに進めておくことが望ましい。個別の該当可否や実務対応に迷う場合は、所轄労働基準監督署または社会保険労務士に確認しながら進めることを推奨する。
免責事項
本記事は2026年9月時点で公表されている一次情報(労働安全衛生規則、労働安全衛生法、厚生労働省通達 基発0624第5号)に基づいて作成した一般的な情報提供を目的とするものです。個別案件への該当可否・具体的な報告手続きについては、必ず所轄労働基準監督署または社会保険労務士等の専門家にご確認ください。本記事の内容に基づく判断・行動により生じた損害について、筆者および運営者は一切の責任を負いません。
参考法令・一次ソース
| 資料 | 備考 |
|---|---|
| 労働安全衛生規則(e-Gov 法令ID 347M50002000032) | 第98条の2〜第98条の6・第97条を、2027年1月1日施行版で確認(egov_article.py --asof 2027-01-01 347M50002000032 98の2 98の3 98の4 98の5 98の6 97) |
| 労働安全衛生法(e-Gov 法令ID 347AC0000000057) | 第100条・第100条の2・第120条を、2027年1月1日施行版で確認(egov_article.py --asof 2027-01-01 347AC0000000057 100 100の2 120) |
| 労働者災害補償保険法施行規則(e-Gov 法令ID 330M50002000022) | 第46条の16(中小事業主等の特別加入の範囲=本記事の「中小規模事業者」の人数基準) |
| 厚生労働省 基発0624第5号(令和8年6月24日) | 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律・関係省令の施行に伴う留意事項通達。https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001713372.pdf |
| 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号) | 令和7年5月14日公布、令和9年1月1日一部施行 |
| 労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(令和7年厚生労働省令第120号) | 令和7年12月9日公布、令和9年1月1日施行 |



