最終更新日: 2026年3月
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不動産を売買する際に発生する仲介手数料は、宅地建物取引業法(宅建業法)第46条により上限が定められている。「物件価格×3%+6万円」という速算式は広く知られているが、この計算が適用されるのは400万円超の物件に限られる。さらに、2024年7月の改正で800万円以下の低廉な物件には上限30万円(税抜)の特例が新設された。本記事では、仲介手数料の法的根拠・計算方法・両手仲介の仕組み・値引き交渉の可否まで、不動産取引の実務に必要な知識を網羅的に解説する。
【まとめ表】仲介手数料の計算方法一覧
| 売買価格 | 速算式(税抜) | 税込上限額(10%) |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 売買価格 × 5% | 売買価格 × 5.5% |
| 200万円超〜400万円以下 | 売買価格 × 4% + 2万円 | (売買価格 × 4% + 2万円)× 1.1 |
| 400万円超 | 売買価格 × 3% + 6万円 | (売買価格 × 3% + 6万円)× 1.1 |
| 800万円以下(低廉空き家特例) | 上限30万円 | 33万円 |
宅建業法第46条の報酬規定|仲介手数料の法的根拠
仲介手数料の上限は法律で決まっている
仲介手数料の上限額は、宅建業法第46条に基づき、国土交通大臣が告示で定めている。具体的な報酬率は昭和45年建設省告示第1552号(最終改正:令和6年国土交通省告示第839号)に規定されており、宅建業者はこの上限を超えて報酬を受領することが禁止されている。
違反した場合は、宅建業法第65条に基づく業務停止処分や、第82条に基づく罰金(100万円以下)の対象となる。
速算式と段階計算|仲介手数料の具体的な計算方法
段階計算(本則)
告示に定められた報酬率は、売買価格を3つの区分に分割して計算する「段階計算」が原則である。
| 価格帯 | 報酬率(税抜) |
|---|---|
| 200万円以下の部分 | 5% |
| 200万円超〜400万円以下の部分 | 4% |
| 400万円超の部分 | 3% |
計算例:売買価格2,000万円の場合
| 価格帯 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 200万円 × 5% | 10万円 |
| 200万円超〜400万円 | 200万円 × 4% | 8万円 |
| 400万円超〜2,000万円 | 1,600万円 × 3% | 48万円 |
| 合計(税抜) | 66万円 | |
| 合計(税込10%) | 72万6,000円 |
速算式(400万円超の物件)
400万円を超える物件では、段階計算を簡略化した速算式が使える。
仲介手数料(税抜)= 売買価格 × 3% + 6万円
「+6万円」の正体は、200万円以下の部分で5%と3%の差額(2%×200万円=4万円)と、200万円超〜400万円以下の部分で4%と3%の差額(1%×200万円=2万円)の合計である。速算式は段階計算と完全に同じ結果になる。
売買価格別・仲介手数料早見表
以下は、片手仲介(売主または買主の一方が負担する上限額)の早見表である。
| 売買価格 | 手数料(税抜) | 手数料(税込10%) |
|---|---|---|
| 200万円 | 10万円 | 11万円 |
| 400万円 | 18万円 | 19万8,000円 |
| 500万円 | 21万円 | 23万1,000円 |
| 1,000万円 | 36万円 | 39万6,000円 |
| 2,000万円 | 66万円 | 72万6,000円 |
| 3,000万円 | 96万円 | 105万6,000円 |
| 4,000万円 | 126万円 | 138万6,000円 |
| 5,000万円 | 156万円 | 171万6,000円 |
| 7,000万円 | 216万円 | 237万6,000円 |
| 1億円 | 306万円 | 336万6,000円 |
2024年7月改正|800万円以下の物件に30万円特例
改正の概要
2024年(令和6年)7月1日施行の改正により、売買価格800万円以下の物件については、仲介手数料の上限が30万円(税抜)=33万円(税込)に引き上げられた。
| 項目 | 改正前(2018年〜) | 改正後(2024年7月〜) |
|---|---|---|
| 対象価格帯 | 400万円以下 | 800万円以下 |
| 上限額(税抜) | 18万円 | 30万円 |
| 対象 | 売主からのみ | 売主・買主の双方 |
| 物件要件 | 空き家等に限定 | 建物の使用状況・築年数不問、更地も可 |
改正の背景
総務省「住宅・土地統計調査」(2023年)によると、全国の空き家数は約900万戸、空き家率は13.8%に達している。低価格帯の物件は仲介手数料が少額になるため、不動産会社が積極的に取り扱わない「流通の空白地帯」が生まれていた。上限引き上げにより、仲介業者が低廉物件を取り扱うインセンティブを高め、空き家の流通促進を図る狙いがある。
適用条件
- 媒介契約締結時に、あらかじめ報酬額について依頼者に説明し合意する必要がある(国土交通省通達)
- 上限30万円には、通常の仲介業務に加えて「現地調査等の費用」を含むことができる
両手仲介と片手仲介の違い
片手仲介(分かれ)
片手仲介とは、売主側と買主側にそれぞれ別の不動産会社がつく取引形態である。各社はそれぞれの依頼者からのみ手数料を受け取る。
両手仲介
両手仲介とは、1つの不動産会社が売主・買主の双方を仲介し、双方から手数料を受け取る取引形態である。
| 項目 | 片手仲介 | 両手仲介 |
|---|---|---|
| 仲介業者数 | 売主側・買主側で各1社 | 1社が双方を担当 |
| 業者の報酬 | 片方から上限額 | 双方から上限額(2倍) |
| 依頼者の負担 | 変わらない | 変わらない |
| 利益相反リスク | 低い | 構造的に高い |
計算例:売買価格3,000万円の場合
- 片手仲介の業者報酬: 96万円 × 1.1 = 105万6,000円(一方のみ)
- 両手仲介の業者報酬: 105万6,000円 × 2 = 211万2,000円
両手仲介の問題点|囲い込みリスク
両手仲介自体は違法ではない。しかし、報酬が2倍になるインセンティブから、売却物件を他社に紹介しない「囲い込み」が問題視されている。
囲い込みが行われると、本来もっと高値で売れた可能性のある物件が、不当に安い価格で成約するリスクがある。2025年1月施行の改正により、レインズへの物件情報登録を怠る囲い込み行為は指示処分の対象であることが明確化された。
仲介手数料の値引き交渉は可能か
法律上は可能
仲介手数料は「上限」であり、値引き交渉は法的にまったく問題ない。宅建業法が規制しているのは上限を超える請求のみであり、下限の定めはない。
値引きが実現しやすいケース
| ケース | 理由 |
|---|---|
| 高額物件(3,000万円超) | 手数料額が大きく、値引き余地がある |
| 買主側が値引き交渉する場合 | 業者にとって買主の仲介は広告費が不要 |
| 売主が買い替え先も同じ業者に依頼 | 売却+購入の2回分の報酬が見込める |
| 仲介手数料無料・半額を謳う業者 | ビジネスモデルとして割引を組み込んでいる |
値引きのデメリット
手数料を値引くと、広告費や営業活動費が削減され、売却活動の質が低下する可能性がある。特に売主の場合、手数料値引きより高値での売却を優先するべきケースが多い。
仲介手数料が不要なケース
以下のケースでは、仲介手数料が発生しない。
| ケース | 説明 |
|---|---|
| 不動産会社による直接買取 | 業者が自ら買主となるため仲介が不要 |
| 売主が不動産会社の物件(新築含む) | 売主直販の場合、仲介手数料は不要 |
| 個人間売買 | 仲介業者を介さない直接取引 |
売却業者選びの実践情報
仲介手数料の法的ルールを押さえたら、実際の業者選びに進みましょう。
- 不動産会社の選び方|失敗しない7つのチェックポイント(売れる家ナビ) — 信頼できる仲介会社の見極め方
- 不動産を早く売る方法|買取vs仲介を徹底比較(売れる家ナビ) — 仲介が合わないケースの判断基準
FAQ
Q: 仲介手数料に消費税はかかりますか?
A: かかります。仲介手数料は不動産会社が提供するサービスへの対価であり、消費税(10%)の課税対象です。たとえば売買価格3,000万円の場合、手数料は96万円(税抜)+9万6,000円(消費税)=105万6,000円(税込)となります。なお、土地の売買価格自体には消費税はかかりませんが、仲介手数料には土地取引でも消費税が発生します。
Q: 仲介手数料はいつ支払うのですか?
A: 一般的には、売買契約締結時に半額、物件引き渡し(決済)時に残りの半額を支払います。ただし、引き渡し時に全額一括で支払う場合もあります。支払時期は媒介契約書に記載されるため、契約前に確認してください。法律上、仲介手数料は成功報酬であり、売買契約が成立して初めて支払い義務が発生します。
Q: 売買契約が解除された場合、仲介手数料は返金されますか?
A: 契約解除の原因によります。手付解除や違約解除の場合、仲介業務自体は完了しているため、原則として仲介手数料の返還義務はないとされています。一方、ローン特約による白紙解除の場合は、契約が最初からなかったことになるため、仲介手数料は返還されるのが通常です。媒介契約書の返還条項を事前に確認しておくことが重要です。
Q: 800万円以下の物件は必ず33万円請求されるのですか?
A: いいえ。2024年7月改正で設定されたのは「上限」の引き上げであり、必ず33万円になるわけではありません。不動産会社は媒介契約締結時に報酬額を説明し、依頼者の合意を得る義務があります。従来の速算式で計算した金額(たとえば300万円の物件なら15万4,000円)のままとする業者も存在します。複数社に見積もりを取り、比較検討することをお勧めします。
Q: 賃貸の仲介手数料の上限はいくらですか?
A: 賃貸の場合、仲介手数料の上限は賃料の1か月分+消費税です(宅建業法第46条・告示第4)。原則は、貸主・借主からそれぞれ賃料の0.5か月分ずつですが、依頼者の承諾があれば一方から1か月分を受領することも認められています。実務上は借主が1か月分を負担するケースが大半です。なお、2024年7月の低廉空き家特例は売買のみに適用され、賃貸には影響しません。
Q: 両手仲介だと手数料が2倍になりますか?
A: 依頼者の負担は変わりません。両手仲介で2倍になるのは「不動産会社の報酬」です。売主・買主がそれぞれ支払う手数料の上限額は片手仲介と同じです。ただし、両手仲介では1社が双方の代理人的な立場になるため、囲い込みや利益相反のリスクがある点に注意が必要です。
今すぐやること|アクションチェックリスト
- [ ] 媒介契約書の手数料欄を確認する — 上限額が記載されているか、値引きの余地はないか
- [ ] 速算式で自分でも計算する — 不動産会社の提示額が法定上限の範囲内か検証
- [ ] 取引形態を確認する — 仲介なのか売主直販(買取)なのかで手数料の有無が変わる
- [ ] 複数の不動産会社に見積もりを取る — 手数料率は業者によって異なる
- [ ] 両手仲介かどうか確認する — レインズの登録状況や内覧件数をモニタリング
- [ ] 800万円以下の物件は特例を認識する — 旧来の計算式より高い手数料が提示される可能性がある
- [ ] 手数料の支払時期を事前に把握する — 契約時半金・決済時半金が一般的だが、媒介契約書で確認
根拠法令・出典:
– 宅地建物取引業法 第46条(報酬)
– 昭和45年建設省告示第1552号(最終改正:令和6年国土交通省告示第839号)
– 国土交通省「低廉な空家等の売買取引における媒介報酬額の特例の拡充」(令和6年6月)
– 総務省「住宅・土地統計調査」(2023年)



