税制改正2026年|年収の壁178万円・基礎控除引上げと給与計算の変更点

本記事は法令・通達・官公庁資料に基づき編集部が作成・検証しています。個別の法的・税務判断ではありません。最新の法令はe-Gov法令検索でご確認ください。
税制改正2026年|年収の壁178万円・基礎控除引上げと給与計算の変更点
目次▼

最終更新日: 2026年10月5日

令和8年度税制改正の中核法案である「所得税法等の一部を改正する法律」が令和8年法律第12号として2026年3月31日に公布された。本記事の中核である基礎控除の引上げ・給与所得控除の最低保障額の引上げ・扶養親族等の所得要件の改正は、2026年12月1日に施行され、令和8年分(2026年分)以後の所得税に適用される(国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」の逐語)。同法は複数の施行日を持つ束ね法で、2026年4月1日に施行されたのは通勤手当の非課税限度額の見直しや防衛特別法人税関連の規定であり、基礎控除等はこの時点ではまだ施行されていない(同じ4月1日から適用が始まる食事補助の非課税限度額の引上げは、法律ではなく所得税基本通達36-38の2の改正によるものである)。給与所得者の課税最低限は令和7年分の160万円から178万円へ引き上げ確定(令和6年分以前は103万円)。基礎控除は本則62万円に加え、合計所得489万円以下の層に最大42万円の特例加算が設けられ、給与所得控除の最低保障額も74万円に拡充される。さらに、食事補助非課税枠の倍増(月額3,500円→7,500円)、暗号資産への申告分離課税の導入方針、超富裕層ミニマム税の税率30%への引上げ、防衛特別所得税(税額1%)の創設、自動車税環境性能割の廃止など、個人・法人双方に影響する多岐にわたる改正が盛り込まれた。本記事では、公布版の改正法・関係政省令(令和8年3月31日公布、一部は同年4月14日公布)に基づき、給与計算・年末調整の実務対応を体系的に整理する。


税制改正の全体像と主要改正項目一覧

閣議決定までの経緯

令和8年度税制改正大綱は、物価高への対応と「年収の壁」問題の解消を柱として、連立与党である自由民主党・日本維新の会の両党税制調査会での協議を経て取りまとめられた。2025年12月19日に与党大綱が公表され、同年12月26日に閣議決定された。

時期 事項 概要
2025年10月 与党協議開始 連立与党(自民・維新)による「年収の壁」引上げ協議を開始
2025年12月11日 与党合意 課税最低限178万円への引上げで合意
2025年12月19日 与党大綱公表 令和8年度税制改正大綱を正式公表
2025年12月26日 閣議決定 「令和8年度税制改正の大綱」を閣議決定
2026年2月 法案提出 「所得税法等の一部を改正する法律案」を内閣から第217回通常国会へ提出
2026年3月31日 改正法成立・公布(確定) 参議院本会議で可決・成立。同日「令和8年法律第12号」として官報公布。関係政令・省令も同日公布(一部は2026年4月14日に追加公布)
2026年4月1日 一部規定の施行 令和8年法律第12号のうち、通勤手当の非課税限度額の見直し(所得税法施行令第20条の2に駐車場代の区分が新設)、食事の現物支給の非課税限度額、防衛力強化財源確保特別措置法の改正(防衛特別法人税関連)などが施行。同日に自動車税環境性能割も廃止されるが、こちらの根拠は別法の地方税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第2号)である。基礎控除・給与所得控除・扶養親族等の所得要件はこの日には施行されていない
2026年12月1日 基礎控除等の施行 基礎控除の引上げ・給与所得控除の最低保障額の引上げ・扶養親族等の所得要件の改正が施行され、令和8年分(2026年分)以後の所得税に適用される。このため令和8年12月の年末調整から事務が変わる(11月までの源泉徴収事務に変更なし)
2026年1月~ 源泉徴収事務の先行対応 令和7年度税制改正分(基礎控除48万→58万円、給与所得控除最低保障55万→65万円、特定親族特別控除)は2026年1月支給給与から既に源泉徴収税額表に反映済み
2026年中の給与・賞与 令和8年度改正分は年末調整で精算 月次源泉徴収は令和7年度改正版の税額表を継続使用し、令和8年度改正分(基礎控除本則58→62万円、特例加算42万円、給与所得控除最低保障65→74万円)は年末調整で適用・精算
2027年1月~ 月次源泉徴収にも反映 令和9年1月支給給与から、令和8年度改正分を織り込んだ新源泉徴収税額表を適用
2027年度~ 住民税の適用開始 令和9年度分の住民税から配偶者控除・扶養控除等の所得要件引上げを適用(住民税の基礎控除額は据え置き)

根拠: 所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号、2026年3月31日公布。基礎控除等の規定は2026年12月1日施行)/令和8年度税制改正の大綱(令和7年12月26日閣議決定)/同法施行に伴う関係政令・省令(令和8年3月31日・4月14日公布)/国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」(逐語「これらの改正は、原則として、令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税について適用されます」)/所得税法第86条・第28条第3項をe-Gov法令API(340AC0000000033)で本日時点の版と--asof 2026-12-01の版で読み比べ、基礎控除58万円→62万円・給与所得控除の最低保障65万円→69万円の切替えが12月1日であることを確認

主要改正項目の全体マップ

今回の税制改正は、個人所得課税・資産課税・法人課税・国際課税の各分野にわたる包括的な改正である。主要項目を以下に整理する。

分野 改正項目 改正内容(概要) 適用時期
個人所得課税 基礎控除の引上げ 本則58万円→62万円(+4万円、令和6年分以前の48万円比では+14万円) 2026年分所得税~
個人所得課税 基礎控除の特例加算 合計所得489万円以下:最大42万円上乗せ 令和8・9年分限定
個人所得課税 給与所得控除の引上げ 最低保障額65万円→74万円(本則69万円+特例5万円は令和8年・9年分限りの時限措置。令和6年分以前の55万円比では+19万円) 2026年分所得税~
個人所得課税 課税最低限の引上げ 103万円→178万円 2026年分所得税~
個人所得課税 配偶者・扶養控除の所得要件引上げ 合計所得58万円以下→62万円以下 2026年分所得税~
個人所得課税 特定親族特別控除の所得要件調整 19~22歳の子の年収159万円まで63万円控除(令和7年度創設、令和8年度で要件調整。令和7年分は150万円) 2026年分所得税~
個人所得課税 ひとり親控除の引上げ 所得税35万円→38万円/住民税30万円→33万円 2027年分(令和9年分)所得税~・令和10年度分住民税~(住民税は1年遅い)
給与・福利厚生 食事補助非課税枠の倍増(根拠は法律ではなく所得税基本通達36-38の2の改正) 月額3,500円→7,500円 2026年4月1日以後に支給する食事等から
給与・福利厚生 通勤手当非課税限度額 片道65km以上の区分を引上げ 2026年分所得税~
資産課税 ミニマム税の強化 特別控除3.3億円→1.65億円、税率22.5%→30% 2027年分所得税~
資産課税 暗号資産の分離課税 雑所得(総合課税)→申告分離課税20% 金商法施行翌年(2028年見込み)
法人課税 生産性向上設備の即時償却 35億円以上の大規模投資に即時償却or税額控除7% 産業競争力強化法改正後
法人課税 研究開発税制(戦略技術領域型) AI・量子等の重点6分野に40~50%の税額控除 産業技術力強化法改正後
法人課税 少額減価償却資産 上限30万円→40万円に拡大 法令施行後
その他 防衛特別所得税 所得税額の1%を付加 2027年1月~
その他 物価連動見直し制度の創設 基礎控除等を消費者物価指数に連動し2年ごと見直し 2028年分所得税~

ミニマムタックス強化の詳しい計算例はミニマムタックス2027年強化で手取りはどう変わる?創業者・IPO予定者が知るべき税制改正の全容で解説している。


所得税:基礎控除・給与所得控除の引上げ

基礎控除の本則引上げ

所得税法第86条に規定する基礎控除について、合計所得金額2,350万円以下の個人に適用される控除額が、令和7年分の58万円から62万円に4万円引き上げられる(令和6年分以前の48万円からは14万円の引上げ)。この引上げは、直近2年間の消費者物価指数(総合)の上昇率6.0%を反映した物価スライド調整として行われるものである。

合計所得金額 ~令和6年分 令和7年分 令和8年分~(本則) 令和6年分比の増減
2,350万円以下 48万円 58万円 62万円 +14万円
2,350万円超2,400万円以下 48万円※ 48万円 48万円 —
2,400万円超2,450万円以下 32万円 32万円 32万円 —
2,450万円超2,500万円以下 16万円 16万円 16万円 —
2,500万円超 0円 0円 0円 —

※令和6年分以前は「2,400万円以下」の区分で48万円。令和7年分以降、2,350万円で区分が分かれた。

根拠: 所得税法第86条(改正後)、令和8年度税制改正の大綱 第一・一・1(1)

基礎控除の特例加算(令和8年・9年分限定)

物価高の影響が特に大きい中低所得層への配慮として、合計所得金額489万円以下(給与収入665.6万円以下相当)の個人に対し、基礎控除に最大42万円の特例加算が設けられる。ただし「42万円がまるごと2年で消える」わけではない。大綱は令和10年分以後についても加算額37万円を定めており、変わるのは対象となる合計所得の上限である。

年分 対象となる合計所得 加算額
令和8年分・令和9年分 489万円以下 42万円
同上 489万円超655万円以下 5万円
令和10年分以後 132万円以下 37万円

根拠: 財務省「令和8年度税制改正の大綱」(令和7年12月26日閣議決定)3ページ「(4)令和7年分以後の各年分の基礎控除等の特例」。逐語「居住者のその年分の合計所得金額が 655 万円(令和 10 年分以後の各年分にあっては、132 万円)以下である場合の基礎控除の控除額の加算額を…イ 令和8年分及び令和9年分…(イ)…489 万円以下である場合 42 万円 (ロ)…489 万円を超える場合 5万円 ロ 令和 10 年分以後の各年分 37 万円」。

つまり令和10年分から加算がゼロになるのは合計所得132万円を超える層であり、132万円以下の層には37万円が残る。

合計所得金額 給与収入換算(目安) 本則控除額 特例加算額 合計控除額 令和6年分比の差額
132万円以下 206万円以下 62万円 42万円 104万円 +56万円
132万円超336万円以下 206万円超475万円以下 62万円 42万円 104万円 +56万円
336万円超489万円以下 475万円超665.6万円以下 62万円 42万円 104万円 +56万円
489万円超655万円以下 665.6万円超850万円以下 62万円 5万円 67万円 +19万円
655万円超2,350万円以下 850万円超 62万円 0円 62万円 +14万円
2,350万円超 — 0円 0円 0円 0円

実務上の注意: 令和7年分(2025年分)では、合計所得132万円以下で特例加算37万円(合計95万円)であったところ、令和8年分では同区分で特例加算42万円(合計104万円)に引き上げられた。さらに、特例加算の対象が給与収入200万円相当までから665.6万円相当まで大幅に拡大された点が最大の変更点である。

給与所得控除の引上げ

所得税法第28条に規定する給与所得控除について、最低保障額が以下のとおり引き上げられる。

項目 改正前(~令和6年分) 令和7年分 令和8年・9年分
本則・最低保障額 55万円 65万円 69万円
特例上乗せ — — +5万円(令和8年・9年分限り)
合計・最低保障額 55万円 65万円 74万円

この5万円は基礎控除の特例加算と同じ2年限りの時限措置である。 大綱の逐語は「(5)給与所得控除の最低保障額の特例の創設 ①令和8年及び令和9年における給与所得控除の最低保障額を5万円引き上げる特例を創設する」(財務省「令和8年度税制改正の大綱」3〜4ページ)。令和10年分以降は本則の69万円に戻る。

最低保障額は、給与収入が一定額以下(令和8年分では220万円以下)の給与所得者に適用される。給与収入220万円超の場合は、従来どおり収入金額に応じた算式により給与所得控除額を計算する。

根拠: 所得税法第28条(改正後)、令和8年度税制改正の大綱 第一・一・1(2)

課税最低限178万円の構造

基礎控除と給与所得控除の引上げにより、給与所得者の所得税における課税最低限は以下のとおり178万円となる。

構成要素 改正前(~令和6年分) 令和7年分 令和8年分
基礎控除(本則) 48万円 58万円 62万円
基礎控除(特例加算) — 37万円 42万円
給与所得控除(最低保障額) 55万円 65万円 74万円
課税最低限 103万円 160万円 178万円

この178万円は令和8年分・令和9年分の姿である。 基礎控除の特例加算42万円と給与所得控除の特例5万円がいずれも2年限りの時限措置であるため、令和10年分以降は合計所得132万円以下の層で168万円、それを超える層で131万円まで下がる(詳細はFAQ Q2)。

ポイント: 課税最低限178万円とは、給与収入が178万円以下であれば所得税が課されない水準を意味する。ただし、住民税の非課税限度額は自治体により異なり(概ね100万円前後)、社会保険の扶養基準(130万円)とは別の基準である点に留意が必要である。

物価連動見直し制度の創設

令和10年分以降の所得税について、基礎控除額及び給与所得控除の最低保障額を消費者物価指数(総合)の動向に連動して2年ごとに自動的に見直す仕組みが創設される。見直し前の控除額に直近2年間の消費者物価指数の上昇率を乗じて調整する方式であり、国会審議を経ずに控除額が改定される点が制度上の大きな特徴である。

項目 内容
対象控除 基礎控除、給与所得控除の最低保障額
見直し頻度 2年ごと
見直し基準 直近2年間の消費者物価指数(総合)の上昇率
適用開始 令和10年分所得税以降
調整方式 見直し前の控除額 × 物価上昇率

根拠: 令和8年度税制改正の大綱 第一・一・1(4)


年収別の減税効果シミュレーション

年収別の所得税・住民税減税額

令和8年分の所得税における減税額を、単身世帯(配偶者控除なし)の給与所得者について年収別に試算する。比較対象は令和6年分(改正前)とする。

前提条件(単身世帯・給与所得者): 社会保険料控除は「給与収入×14.15%」(協会けんぽ全国平均の労使折半)を控除して算定。住民税は令和8年度改正・令和7年度改正とも基礎控除43万円据え置きのため、単身世帯では住民税の減税なし(0円)。配偶者・扶養親族あり世帯は別途試算が必要。

年収 改正前の所得税額(概算) 改正後の所得税額(概算) 所得税減税額 住民税減税額 合計減税額
150万円 約1.3万円 0円 約1.3万円 0円(単身) 約1.3万円
200万円 約2.8万円 0円 約2.8万円 0円(単身) 約2.8万円
250万円 約4.2万円 約1.4万円 約2.8万円 0円(単身) 約2.8万円
300万円 約5.6万円 約2.8万円 約2.8万円 0円(単身) 約2.8万円
400万円 約8.6万円 約5.8万円 約2.8万円 0円(単身) 約2.8万円
500万円 約14.0万円 約9.1万円 約4.9万円 0円(単身) 約4.9万円
600万円 約20.6万円 約15.0万円 約5.6万円 0円(単身) 約5.6万円
700万円 約31.8万円 約28.0万円 約3.8万円 0円(単身) 約3.8万円
800万円 約47.0万円 約43.2万円 約3.8万円 0円(単身) 約3.8万円

注1: 上記は概算値であり、社会保険料控除等の個別事情により変動する。所得税は超過累進税率(5%~45%)を速算表で適用して試算し、復興特別所得税・防衛特別所得税(合計2.1%)は含めていない(改正前後で率が変わらないため減税額に影響しない)。9行すべてを同一の計算式で通し、行間で方法が食い違わないようにしている。住民税の基礎控除は令和7年度改正・令和8年度改正ともに43万円据え置きであり、単身世帯(配偶者・扶養親族なし)では住民税の減税は生じない。配偶者や扶養親族を有する世帯では、配偶者控除・扶養控除の所得要件引上げに連動して令和9年度分住民税から一定の影響が生じる場合がある。

注2: 年収500万~600万円の層が最も恩恵を受ける構造となっている。これは、基礎控除の特例加算(42万円)が合計所得489万円以下(給与収入665.6万円以下)に適用され、かつ適用税率が20%の区分にあるためである。

注3: 年収800万円の場合、給与所得控除は190万円(800万円×10%+110万円。195万円の上限が適用されるのは850万円超)、給与所得610万円、合計所得610万円(489万円超655万円以下)のため特例加算5万円が適用され、令和8年分基礎控除は67万円。令和6年分比の基礎控除差19万円(67万円-48万円)×税率20%≒約3.8万円の減税となる。

年収帯別の適用控除構造

年収帯ごとに適用される基礎控除と給与所得控除の構造を整理する。

年収帯 給与所得控除額 給与所得金額 基礎控除(本則+特例) 課税所得の有無
178万円以下 74万円 104万円以下 104万円 非課税(所得税なし)
178万円超~200万円 74万円 104万円超~126万円 104万円 課税(税率5%)
200万円超~300万円 74万円~収入×30%+8万円 126万円超~202万円 104万円 課税(税率5~10%)
300万円超~500万円 収入×30%+8万円/収入×20%+44万円 202万円超~356万円 104万円 課税(税率10~20%)
500万円超~665.6万円 収入×20%+44万円 356万円超~489万円 104万円 課税(税率20%)
665.6万円超~850万円 収入×10%+110万円 489万円超~655万円 67万円 課税(税率20~23%)
850万円超 195万円(上限) 655万円超 62万円 課税(税率23%~)

給与所得控除額の算式(令和8年分・所得税法第28条第3項)

給与収入 給与所得控除額
360万円以下 収入×30% + 8万円(69万円に満たない場合は69万円。令和8・9年分はこれに特例5万円を加えた74万円が最低保障)
360万円超 660万円以下 116万円 +(収入 − 360万円)×20% = 収入×20% + 44万円
660万円超 850万円以下 176万円 +(収入 − 660万円)×10% = 収入×10% + 110万円
850万円超 195万円(上限)

根拠: 所得税法第28条第3項(e-Gov 340AC0000000033・--asof 2026-12-01 の版で確認)。原文「三百六十万円を超え六百六十万円以下である場合百十六万円と当該収入金額から三百六十万円を控除した金額の百分の二十に相当する金額との合計額」「六百六十万円を超え八百五十万円以下である場合百七十六万円と当該収入金額から六百六十万円を控除した金額の百分の十に相当する金額との合計額」。国税庁タックスアンサーNo.1410の速算表「6,600,000円以上 8,500,000円未満 収入金額×90%−1,100,000円」とも一致する(控除額に直すと 収入×10%+110万円)。


配偶者控除・扶養控除への影響

配偶者控除・配偶者特別控除の所得要件引上げ

基礎控除の本則引上げに伴い、配偶者控除及び扶養控除の適用における合計所得金額要件が引き上げられる。

控除の種類 ~令和6年分 令和7年分 令和8年分~ 給与収入換算(令和8年分)
配偶者控除 合計所得48万円以下 合計所得58万円以下 合計所得62万円以下 給与収入136万円以下
扶養控除 合計所得48万円以下 合計所得58万円以下 合計所得62万円以下 給与収入136万円以下
配偶者特別控除(満額38万円) 合計所得48万円超95万円以下 合計所得58万円超95万円以下 合計所得62万円超95万円以下 給与収入136万円超169万円以下
配偶者特別控除(逓減) 合計所得95万円超133万円以下 合計所得95万円超133万円以下 合計所得95万円超133万円以下 給与収入169万円超207万円以下

根拠: 所得税法第83条(配偶者控除)、第83条の2(配偶者特別控除)、第84条(扶養控除)。第83条の2の原文(e-Gov 340AC0000000033・--asof 2026-12-01)は「合計所得金額が百三十三万円以下であるものに限る」「イ 合計所得金額が九十五万円以下である配偶者三十八万円」であり、逓減の刻み(95万円/133万円)は令和8年度改正で変わっていない。改正されたのは配偶者控除・扶養控除の側の所得要件(58万円→62万円)である。

特定親族特別控除の新設

大学生世代(19歳以上23歳未満)の子の就労を阻害しないよう、令和7年度税制改正で「特定親族特別控除」が創設された。令和8年度改正では、扶養控除の合計所得要件が58万円→62万円に引き上げられたことに伴い、特定親族特別控除の適用範囲も調整されている。従来(令和6年分以前)は、特定扶養親族(19歳以上23歳未満)の合計所得が48万円(給与収入103万円)を超えると、親の扶養控除63万円が全額適用されなくなっていた。令和8年分では、子の給与収入が159万円まで満額63万円が控除され、159万円超197万円以下でも段階的に控除が適用される。

根拠: 所得税法第84条の2(e-Gov 340AC0000000033・--asof 2026-12-01)。原文「一 合計所得金額が八十五万円以下である特定親族六十三万円」「(…合計所得金額が百二十三万円以下であるものに限る。)」。給与収入への換算は令和8年分の給与所得控除の最低保障74万円を加算し、85万円+74万円=159万円、123万円+74万円=197万円となる。

子の給与収入(令和8年分) 子の合計所得金額 ~令和6年分の控除額 令和8年分の控除額 増減
103万円以下 48万円以下(令和6年分基準) 63万円(扶養控除) 63万円(扶養控除) 変更なし
103万円超~136万円以下 — 0円 63万円(扶養控除) +63万円
136万円超~159万円以下 62万円超~85万円以下 0円 63万円(特定親族特別控除) +63万円
159万円超~197万円以下 85万円超~123万円以下 0円 段階的に逓減(63万円→3万円) 段階的増
197万円超 123万円超 0円 0円 変更なし

根拠: 所得税法第84条の2「特定親族特別控除」(e-Gov 340AC0000000033)。--asof 2026-12-01 の版の原文は「一 合計所得金額が八十五万円以下である特定親族六十三万円」「(…合計所得金額が百二十三万円以下であるものに限る。)」。令和7年度税制改正で創設され、令和8年度税制改正の大綱 第一・一・1(3) で所得要件が調整された

注目点: 大学生のアルバイト収入が159万円まで親の控除に影響しなくなるため、「103万円の壁を意識した就業調整」が不要になる。ただし、社会保険の扶養基準(130万円)は別制度であるため、健康保険の被扶養者要件との整合性を確認する必要がある。令和8年分の控除額は令和8年法律第12号(2026年3月31日公布)で確定済みである。

ひとり親控除の引上げ

項目 改正前(~令和8年分) 改正後 増減額 適用開始
ひとり親控除(所得税) 35万円 38万円 +3万円 令和9年分(2027年分)所得税から
ひとり親控除(住民税) 30万円 33万円 +3万円 令和10年度分住民税から(所得税より1年遅い)
寡婦控除(所得税) 27万円 27万円 据置き —
寡婦控除(住民税) 26万円 26万円 据置き —

重要: 引き上げられるのはひとり親控除だけである。寡婦控除は27万円のまま据え置かれる(所得税法第80条を e-Gov で --asof 2027-01-01 を指定して読んでも「二十七万円」のまま。同第81条のひとり親控除だけが「三十五万円」→「三十八万円」に変わる)。二次情報には「寡婦控除も30万円へ」とするものがあるが、条文上の裏付けがない。

ひとり親控除の引上げは、所得税は令和9年分(2027年分)以後、住民税は令和10年度分(2028年度分)以後と、1年ずれる。大綱の逐語は所得税側が「上記の改正は、令和9年分以後の所得税について適用する」、住民税側が「上記の改正は、令和 10 年度分以後の個人住民税について適用する」(財務省「令和8年度税制改正の大綱」)。

したがって令和9年度分(2027年度分)の住民税はまだ30万円のままである。令和8年分(2026年分)の所得税・令和8年度分住民税も改正前の金額(所得税35万円・住民税30万円)。令和8年分の確定申告・年末調整では旧額35万円を使用する。


社会保険料を加味した「世帯手取り」シミュレーション

前章までの減税シミュレーションは所得税・住民税のみの試算であるが、パート配偶者の「働き損」を正確に判定するには、社会保険料(健康保険料+厚生年金保険料)の負担を加味した世帯手取りベースでの比較が不可欠である。以下では、配偶者が第3号被保険者(扶養内)から第2号被保険者(自ら社会保険加入)に移行する場合の手取り変動を年収帯別に整理する。

世帯手取り額の年収別比較表

配偶者(パート勤務)の年収別に、税金・社会保険料を差し引いた手取り額を試算する。主たる生計者の年収は500万円と仮定し、配偶者控除・配偶者特別控除の世帯への影響も加味する。

前提条件:
– 健康保険料率:約10%(協会けんぽ全国平均、労使折半で本人負担約5%)
– 厚生年金保険料率:18.3%(労使折半で本人負担9.15%)
– 配偶者本人の社会保険料負担率:合計約14.15%(本人負担分)
– 130万円未満かつ勤務先が従業員50人以下の場合:被扶養者(社会保険料0円)
– 住民税均等割・所得割は概算値を使用

配偶者の年収 所得税・住民税(概算) 社会保険料(本人負担) 手取り額(従業員50人以下の企業)※1 手取り額(従業員51人以上の企業・週20時間以上)※2
100万円 約0円 0円(被扶養者) 約100万円 約100万円(変更なし)
110万円 約0.5万円 0円(被扶養者)※1 約109.5万円 約94.4万円※2
120万円 約1.0万円 0円(被扶養者)※1 約119.0万円 約102.0万円※2
130万円 約1.5万円 0円→約18.4万円※3 約128.5万円→約110.1万円 約110.1万円
140万円 約1.8万円 約19.8万円 約118.4万円 約118.4万円
150万円 約2.3万円 約21.2万円 約126.5万円 約126.5万円
160万円 約2.8万円 約22.6万円 約134.6万円 約134.6万円
170万円 約3.3万円 約24.1万円 約142.6万円 約142.6万円
180万円 約3.8万円 約25.5万円 約150.7万円 約150.7万円
190万円 約4.4万円 約26.9万円 約158.7万円 約158.7万円
200万円 約5.0万円 約28.3万円 約166.7万円 約166.7万円

※1 従業員50人以下の企業で勤務する場合。この規模の企業では、年収130万円未満であれば被扶養者のままで社保料は0円となる。
※2 従業員51人以上の企業で、週の所定労働時間が20時間以上・学生でない場合の現行の姿。106万円の賃金要件(月額8.8万円)は2026年10月1日に撤廃されたため、賃金額にかかわらず社会保険加入対象となり、社会保険料(本人負担約14.15%)が発生して手取りが減少する。撤廃は年金制度改正法(正式名称「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」・令和7年法律第74号、2025年6月20日公布)による。
※3 130万円を超えると被扶養者資格を喪失し、勤務先の社会保険に加入(または国民健康保険+国民年金に加入)。社会保険料負担が一気に発生する。

根拠: 健康保険法第3条(被保険者の定義)、厚生年金保険法第12条(適用除外)、年金制度改正法(令和7年法律第74号)

「手取り逆転ゾーン」の仕組み

手取りが逆転する原因は、社会保険料の発生が「段階的」ではなく「一括的」であることにある。所得税は超過累進税率により収入増に応じて緩やかに増加するが、社会保険料は被扶養者要件を超えた瞬間に全額発生する。

年収帯 社会保険の状況 手取りへの影響
~106万円 被扶養者(社保料0円)※従業員51人以上の企業では、2026年10月1日の賃金要件(月額8.8万円)の撤廃により、週20時間以上働く学生以外の人は年収にかかわらず社保加入 年収≒手取り(税金は僅少)。51人以上の企業で週20時間以上働く場合は社保料が発生
106万円超~130万円 大企業(51人以上):社保加入(週20時間以上・学生以外) / 中小企業(50人以下):被扶養者(2027年10月に36人以上へ規模要件縮小) 大企業勤務者は社保料発生、中小企業勤務者は引き続き0円
130万円超~約153万円 全員が社保加入(被扶養者資格喪失) 手取り逆転ゾーン:130万円以下で働いた場合より手取りが少なくなる
約153万円超~ 社保加入(社保料は増加するが手取りも増加) 税・社保だけで見れば130万円以下の手取りを回復。ただし配偶者手当の喪失分も取り戻すなら170万円前後が目安

手取りが逆転する具体的なメカニズムは以下のとおりである。

  1. 年収129万円の場合: 被扶養者のため社保料0円。所得税・住民税約1.4万円。手取り約127.6万円
  2. 年収131万円の場合: 被扶養者資格喪失。社保料約18.5万円+税金約1.5万円。手取り約111.0万円
  3. 差額: 年収が2万円増えたにもかかわらず、手取りは約16.6万円減少

この構造的な問題が「130万円の壁」と呼ばれる就業調整の最大の原因であり、106万円の壁が撤廃された後も130万円の壁は残存するため、引き続き注意が必要である。

配偶者の「最適年収」早見表

配偶者の勤務先規模と時期別に、世帯手取りが最大化される年収帯を整理する。

現行制度(2026年10月1日以降・106万円の壁の撤廃後)

配偶者の勤務先規模 社保加入基準 最適年収の目安 判断のポイント
従業員51人以上 週20時間以上で賃金額にかかわらず社保加入(学生を除く。月額8.8万円の賃金要件は2026年10月1日に撤廃) ①週20時間未満に抑える または ②170万円以上を目指す 106万円の壁がなくなり、週20時間以上であれば自動的に社保加入。年収額での調整が困難に
従業員50人以下 年収130万円以上で被扶養者資格喪失(判定基準は「契約上の収入見込み」に変更) ①130万円以下 または ②170万円以上 130万円の壁は残存。ただし2027年10月から段階的に企業規模要件が縮小

関連記事: 社会保険適用拡大の詳細(106万円の壁撤廃の具体的な要件・経過措置・企業の対応)については、社会保険適用拡大2026年改正をわかりやすく解説|106万円の壁撤廃と企業の対応を参照。社会保険加入後に「4〜6月の残業で社保料が上がる」仕組みは4〜6月の残業×社保料|年収別シミュレーションで年収300〜1000万円の損得判定まで解説している。また、「給付付き税額控除」については2026年8月5日に制度導入の基本方針が閣議決定され、令和11年度(2029年度)の本格導入と、そこに至るつなぎとしての食料品消費税1%引き下げが政府方針として確定した。詳細は給付付き税額控除とは?2026年8月5日に基本方針を閣議決定で閣議決定本文をもとに確定・未定を整理している。


食事補助の非課税枠拡大

42年ぶりの引上げ

従業員に対する食事の供与に係る非課税枠が、1984年(昭和59年)以来42年ぶりに引き上げられる。月額3,500円から7,500円への倍増であり、物価上昇への対応措置として「第3の賃上げ」と位置づけられている。

項目 改正前 改正後 増減
非課税限度額(月額) 3,500円 7,500円 +4,000円
年間非課税枠 42,000円 90,000円 +48,000円
非課税の条件(従業員負担割合) 食事代の50%以上 食事代の50%以上 変更なし

根拠: 所得税基本通達36-38の2(改正後)

非課税要件の確認

食事補助が非課税扱いとなるためには、以下の2要件を同時に満たす必要がある。

要件 内容 判定基準
要件1:事業主負担額 事業主が負担する食事代が月額7,500円以下 月額7,500円超の場合、全額が給与課税
要件2:従業員負担割合 従業員が食事代の50%以上を負担 50%未満の場合、事業主負担額の全額が給与課税

食事補助の設計例と課税判定

パターン 食事代総額(月額) 従業員負担額 事業主負担額 従業員負担割合 課税判定
パターンA 10,000円 5,000円 5,000円 50% 非課税(要件1・2充足)
パターンB 15,000円 7,500円 7,500円 50% 非課税(限度額ちょうど)
パターンC 20,000円 10,000円 10,000円 50% 全額課税(要件1不充足)
パターンD 12,000円 5,000円 7,000円 41.7% 全額課税(要件2不充足)
パターンE 14,000円 7,000円 7,000円 50% 非課税(両要件充足)

実務上の留意点: 改正前の非課税枠(月額3,500円)で運用していた企業は、食事補助の増額を検討する余地がある。たとえば、社食の利用補助やチケットレストラン型の食事補助サービスの導入・拡充が有効な選択肢となる。年間最大48,000円の非課税枠拡大は、社会保険料の負担なく従業員の実質手取りを増加させる効果がある。


法人税:生産性向上設備の即時償却・研究開発税制

特定生産性向上設備等投資促進税制の創設

全業種を対象として、産業競争力強化法の確認手続きを経た大規模設備投資について、即時償却又は税額控除の選択適用を認める新税制が創設される。

項目 内容
対象事業者 全業種(産業競争力強化法の計画確認を受けた法人)
投資規模要件 35億円以上(中小企業は5億円以上)
利益率要件 投資計画における年平均の投資利益率が15%以上であること(大綱の逐語「年平均の投資利益率が 15%以上となることが見込まれるものであること」。ちょうど15.0%も対象に含まれる)
対象資産 機械装置、工具、器具備品、建物、建物付属設備、構築物、ソフトウエア
即時償却 取得価額の100%を初年度に償却可能
税額控除(機械装置等) 取得価額の7%
税額控除(建物等) 取得価額の4%
適用期限 産業競争力強化法改正後3年間(予定)

根拠: 租税特別措置法(新設)、令和8年度税制改正の大綱 第一・三・4

研究開発税制の強化:戦略技術領域型の創設

従来の総額型・中小企業技術基盤強化税制に加え、国が定める重点産業技術分野の研究開発費に対して高率の税額控除を認める「戦略技術領域型」が新設される。

項目 内容
対象技術分野 AI・先端ロボット、量子、半導体・通信、バイオ・ヘルスケア、フュージョンエネルギー、宇宙
税額控除率(自社研究) 試験研究費の40%
税額控除率(共同・委託研究) 試験研究費の50%(認定研究開発機関との共同・委託が条件)
控除上限 法人税額の一定割合(詳細は政令で規定予定)
適用要件 産業技術力強化法に基づく「重点産業技術」の認定を受けた研究開発計画

根拠: 租税特別措置法第42条の4関連(改正後)、令和8年度税制改正の大綱 第一・三・3

少額減価償却資産の即時償却

項目 改正前 改正後
対象取得価額 30万円未満 40万円未満
年間合計上限 300万円 300万円(変更なし)
対象法人の従業員数要件 500人以下 400人以下

注意: 対象取得価額の上限が引き上げられる一方、従業員数要件が厳格化されている。従業員数が400人超500人以下の中堅企業は、本特例の適用対象外となるため注意が必要である。


暗号資産の分離課税への道筋

総合課税から申告分離課税へ

暗号資産(仮想通貨)の売却益に対する課税方式について、現行の総合課税(雑所得、最大税率55%)から、申告分離課税(税率20%)への転換が税制改正大綱に明記された。

項目 現行制度 改正後(予定)
所得区分 雑所得(総合課税) 申告分離課税
税率 住民税込み最大55%(所得税45%+住民税10%) 20%(所得税15%+住民税5%)
損益通算 他の所得との損益通算不可 上場株式等との損益通算が可能(予定)
損失繰越 不可 3年間の繰越控除を創設
確定申告 必要 必要(特定口座制度の導入は検討中)

根拠: 令和8年度税制改正の大綱 第一・一・6

適用時期と前提条件

暗号資産の分離課税は、金融商品取引法(金商法)の改正を前提とする。暗号資産を現行の資金決済法の規制対象から金商法の規制対象に移行し、投資家保護のための説明義務・開示規制等を整備した上で税制改正が適用される。

マイルストーン 時期 内容
金商法改正法案提出 2026年通常国会(済) 暗号資産を金融商品として位置づける法改正
金商法改正法の成立・公布 2026年7月23日公布(済) 「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律」=令和8年法律第64号
金商法改正法の施行 段階的(一部は2026年8月12日に施行済み、以降 2027年3月31日/4月1日/7月22日/10月1日、2028年1月1日、2028年6月13日) 暗号資産交換業者の登録・開示規制等の適用開始
分離課税の適用開始 2028年1月1日以降(見込み) 金商法の該当規定の施行を受けた譲渡等が対象

根拠: e-Gov 法令改正履歴 curl -s https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_revisions/323AC0000000025 — 「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律」(令和八年法律第六十四号)が 2026-07-23 公布として登録され、施行日が 2026-07-23/2026-08-12/2027-03-31/2027-04-01/2027-07-22/2027-10-01/2028-01-01/2028-06-13 の8段階で並んでいることを確認(2026年9月4日取得)

留意事項: 分離課税の対象は「特定暗号資産」(金商法上の規制対象となる銘柄)に限定される見込みである。全ての暗号資産が一律に分離課税の対象となるわけではない点に注意が必要である。租税特別措置法第38条の2は、この「特定暗号資産」を金商法第2条第49項の暗号資産のうち金融商品取引業者登録簿に登録されているものと定義しており、登録業者への売委託または登録業者に対する譲渡であることも要件としている。海外業者やDEXでの取引は対象外である。

移管後の登録手続・経過措置(6か月・2年・2週間の届出)・インサイダー取引規制の詳細は、暗号資産の金商法移管と交換業者の実務対応で条文に沿って解説している。

実務への影響

対象者 影響事項 対応
個人投資家 税負担の大幅軽減(最大55%→20%) 2028年以降の売却を検討する余地あり
暗号資産交換業者 金商法への登録・開示義務の対応 法改正に向けた体制整備が必要
税理士・会計事務所 確定申告の計算方法の変更 分離課税の申告様式・損失繰越の処理方法を習得
法人(暗号資産保有) 時価評価課税の見直しは別途検討中 法人税法上の評価方法の動向を注視

超富裕層ミニマム税の強化

「1億円の壁」是正措置の拡充

2025年分から適用されているミニマム税(極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置)について、特別控除額の引下げと税率の引上げが行われる。

項目 現行(2025年分~) 改正後(2027年分~)
特別控除額 3.3億円 1.65億円
上乗せ税率 22.5% 30%
基準所得金額の算定 申告所得+申告不要を選択した所得 同左(変更なし)
申告不要制度との関係 配当・譲渡益等を含めて判定 同左(変更なし)

根拠: 租税特別措置法第41条の19「特定の基準所得金額の課税の特例」(e-Gov 332AC0000000026)。--asof 2027-01-01 の版の原文は「個人でその者のその年分の基準所得金額が一億六千五百万円を超えるもの…については、当該超える部分の金額の百分の三十に相当する金額からその年分の基準所得税額を控除した金額に相当する所得税を課する」。現行版は「三億三千万円」「百分の二十二・五」。

ミニマム税の発動ライン

この制度でよく誤解されるのは、「(基準所得金額 − 特別控除額)× 税率」がそのまま追加で取られると思われている点である。 条文は「…に相当する金額からその年分の基準所得税額を控除した金額に相当する所得税を課する」となっており、通常どおり納める所得税額を差し引いた残りだけが上乗せされる。

追加税負担 =(基準所得金額 − 1.65億円)× 30% − 基準所得税額
(マイナスになる場合は追加負担なし)

したがって、上場株式等の譲渡益だけの場合(税率15.315%=所得税15%+復興特別所得税0.315%)、実際に追加負担が生じ始めるのは次の境界を超えてからとなる。

(X − 1.65億円)× 30% = X × 15.315%
X = 約3億3,708万円(約3.4億円)
シナリオ 株式譲渡所得 ミニマム税の対象か 基準所得税額 追加税負担(概算)
ケースA 1億円 対象外(特別控除1.65億円以下) 1,532万円 0円
ケースB 2億円 対象だが、控除後は追加負担なし 3,063万円 0円
ケースC 5億円 対象・追加負担あり 7,658万円 約2,393万円
ケースD 10億円 対象・追加負担あり 1億5,315万円 約9,735万円

実務上の影響: 改正前は基準所得金額3.3億円超が対象であったが、改正後は1.65億円超に引き下げられる。M&Aによる株式売却やIPO時のキャピタルゲインが大きい経営者・創業者は、2027年分以降の税負担が増加する可能性がある。ただし上表のとおり、株式譲渡益のみであれば実際に追加負担が生じるのは3.4億円前後からであり、「1.65億円を超えたら即座に3割課税」ではない。

創業者・経営者向け詳説: IPO/M&Aを控える創業者は、ミニマムタックス強化と国外転出時課税の「二重包囲」に直面する。2026年中の駆け込み売却シミュレーション・海外移住の実務リスク・税制適格ストックオプションへの影響まで含めた詳細は 創業者課税2027年強化|ミニマムタックス・国外転出時課税の二重包囲を徹底解説 を参照。VC業界調査では97%が反対・8割が海外移住を検討するという結果も公表されている。


公布後の実装状況(2026年5月時点の調査)

令和8年法律第12号(所得税法等の一部を改正する法律)の公布(2026年3月31日)から約1ヶ月半が経過した2026年5月時点で調査した、給与計算・年末調整実務・給与計算ソフトの対応状況と、企業現場で生じている論点を整理する。

【この節の時点について】 基礎控除等の施行日は2026年12月1日であり、本節が扱う2026年5月時点ではまだ施行前である(公布によって内容は確定しており、実務の準備がこの期間に進んでいた)。以下のベンダー対応状況は2026年5月時点の調査であり、それ以降は再調査していない。 導入判断の際は各ベンダーの最新アナウンスを直接確認すること。

公布後の実務動向(2026年4月1日〜5月13日)

項目 2026年5月時点の状況 実務上の留意点
改正法の確定 2026年3月31日公布(令和8年法律第12号)。大綱どおりの数値(基礎控除本則62万円・特例加算42万円・給与所得控除最低保障74万円・課税最低限178万円)で確定。基礎控除等の施行は2026年12月1日 国会審議で大綱からの主要な数値変更はなし。法案要綱どおりに成立
関係政省令 2026年3月31日に関係政令・省令が同時公布。さらに4月14日付で省令の追加公布あり 詳細な計算ルール・申告様式の細目は政省令で確認が必要
源泉徴収税額表 2026年1月支給給与から既に令和7年度改正版(基礎控除58万円・給与所得控除最低保障65万円)を適用中。令和8年度改正分は年末調整で精算する運用 月次の源泉徴収額は原則として2026年中に変更なし。給与計算ソフトの再アップデートは2026年秋〜冬の年末調整対応版で予定
年末調整様式 国税庁から令和8年分の「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の様式案が示される見込み(5月時点では令和7年分様式が現行版) 様式は7〜9月頃に確定版が公表される見込み。人事部門は最新様式の入手準備を
特定親族特別控除 2025年12月から年末調整で先行運用、2026年1月以降の月次源泉徴収にも反映済み(令和7年分は給与収入150万円まで満額63万円控除の19〜22歳の子が対象。令和8年分は159万円) 申告書様式が刷新。子の年収見込みを正確に把握する仕組みを社内に整備すること
食事補助非課税枠 月額3,500円→7,500円への引上げは所得税基本通達36-38の2の改正により実施。2026年4月1日以後に支給する食事等から適用(国税庁令和8年4月源泉所得税の改正のあらましで確認済み) 通達改正は2026年4月1日施行で確定。企業は就業規則・福利厚生規程の改訂を進めること
自動車税環境性能割 2026年4月1日付で廃止(同日以降の取得から非課税)。根拠は地方税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第2号)による地方税法改正。e-Gov で地方税法第145条を読み比べると、--asof 2026-03-31 の版には「一 環境性能割 自動車のエネルギー消費効率の…」という定義があり、--asof 2026-04-01 の版では消えている 2026年4月以降の自動車取得・買換えに影響。法人の社用車取得計画も再検討の余地あり。詳細は地方税法等改正2026ガイド参照
暗号資産分離課税 改正法では制度の方向性は示されたが、適用開始は金商法改正の翌年(2028年見込み)。2026年・2027年分は引き続き総合課税(雑所得) 個人投資家は2026年中の売却益は従来どおり最大55%の総合課税である点を再確認
防衛特別所得税 創設は法律で確定。所得税額の1%付加方式で2027年1月から適用 2026年中の源泉徴収・年末調整には影響なし。2027年分から適用

給与計算ソフトの対応状況

主要ベンダーの2026年5月時点の対応状況を整理する(出典:各社公式アナウンス、社労士・税理士法人公開記事を集約)。

ベンダー 2026年5月時点の対応 次回アップデート予定
弥生(弥生給与・弥生給与Next) 令和7年度改正分(基礎控除58万円・給与所得控除最低保障65万円・特定親族特別控除)に対応済み 令和8年分年末調整版を2026年10〜11月にリリース予定
ソリマチ(給料王) 2026年1月の源泉徴収税額表に対応した版を提供済み。「2025年分の税額表は一切使えない」旨を明示 年末調整シーズン前にアップデート予定
応研(給与大臣) ver4.82(通勤手当非課税限度額改正・eLTAX電子申告対応版)を公開。2026年1月以降の源泉徴収・電子申告に対応 令和8年度改正対応版を年末調整前に提供予定
OBC(給与奉行)/PCA(給与)/freee人事労務/マネーフォワードクラウド給与 各社とも2026年1月の税額表改正に対応済み。令和8年度改正分は年末調整版で対応予定 2026年秋〜冬の年末調整対応版で順次反映

企業現場で発生している論点

公布後約1ヶ月半の現場で繰り返し質問・確認が行われている論点を整理する。

  1. 「2026年1月から手取りが増える」期待とのギャップ:従業員側は「178万円の壁」報道で「2026年1月から月給の手取りが大幅に増える」と期待するケースが多いが、実際には令和8年度改正分は年末調整で精算される運用のため、月次手取りは2026年中はほぼ変化しない。年末調整時に還付額が増える形で恩恵が表れる点を、人事部門が事前にアナウンスする必要がある。
  2. 「136万円の壁」と「130万円の壁」の混在:配偶者控除の所得要件は給与収入136万円以下(合計所得62万円以下)に拡大されたが、社会保険の被扶養者基準(年収130万円)は据え置き。パート配偶者からの問い合わせが急増しており、「税の壁」と「社保の壁」を明確に区別した社内説明資料の整備が急務。
  3. 特定親族特別控除の申告漏れリスク:19〜22歳の子のアルバイト年収が103万円超〜159万円のゾーンで「親の控除がゼロになる」と誤解しているケースが多い。実際には特定親族特別控除(最大63万円)で従来同等の控除が継続するため、扶養控除等申告書の記載漏れ防止が重要。
  4. 食事補助の通達改正タイミング:月額7,500円への倍増は所得税基本通達の改正で実施されるため、法律施行日と通達改正日が必ずしも一致しない。導入を急ぐ企業は国税庁通達の最新版を必ず確認すること。
  5. 自動車関係税の駆け込み・買い控え:環境性能割の2026年3月31日廃止により、3月の駆け込み登録と4月以降の通常需要への移行が観察されている。社用車計画は4月以降にずれ込ませた方が有利なケースあり。


給与計算・年末調整の実務対応ポイント

2026年の実務スケジュール

基礎控除・給与所得控除の引上げに伴い、給与計算担当者は以下のスケジュールで実務対応を進める必要がある。なお、従業員から寄せられる「自分は年末調整の対象になるのか」という問い合わせへの回答基準は、年末調整はいくらから必要?2026年分の対象・対象外に、扶養控除等申告書の提出有無による判定(所得税法194条・190条)と掛け持ち勤務時の扱いをまとめている。

時期 対応事項 詳細
2026年1月~(実施済み) 令和7年度改正版 源泉徴収税額表の適用 基礎控除58万円・給与所得控除最低保障65万円・特定親族特別控除を反映した税額表で源泉徴収を実施中
2026年3月31日(公布済み) 令和8年法律第12号の公布 令和8年度改正法が成立・公布
2026年4月1日(施行済み) 一部規定の施行 自動車税環境性能割の廃止・軽油引取税当分の間税率の廃止(根拠:地方税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第2号)。所得税法等改正法=第12号とは別の法律)、防衛特別法人税関連規定の施行など。詳細は地方税法等改正2026ガイド参照
2026年12月1日 基礎控除等の施行 基礎控除の引上げ・給与所得控除の最低保障額の引上げ・扶養親族等の所得要件の改正が施行され、令和8年分以後の所得税に適用。11月までの源泉徴収事務に変更はない
2026年4月〜(進行中) 食事補助制度の見直し検討 非課税枠拡大(月額7,500円)を踏まえた就業規則・福利厚生規程の改訂検討。国税庁通達の最新版確認が前提
2026年7月〜9月(予定) 年末調整様式の公表 国税庁から令和8年分の年末調整申告書様式(特定親族特別控除申告書統合版)が公表される見込み
2026年10月 年末調整の準備開始 新様式の「給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書」を確認・準備
2026年10月〜11月 給与計算ソフトの年末調整版アップデート 令和8年度改正分(基礎控除本則62万円・特例加算42万円・給与所得控除最低保障74万円)を年末調整計算に反映
2026年11月 従業員への案内・説明 配偶者控除・扶養控除の所得要件変更(給与収入136万円以下)、特例加算が2年限定であることを周知
2026年11月~12月 年末調整の実施 基礎控除(本則+特例)の適用判定、特定親族特別控除の適用確認、令和8年度改正分の還付精算
2027年1月 月次源泉徴収にも令和8年度改正分を反映 令和9年1月支給給与から、令和8年度改正分(基礎控除特例加算等)を織り込んだ新源泉徴収税額表を適用開始
2027年1月 源泉徴収票の作成・交付 令和8年分の源泉徴収票に新控除額を反映
2027年1月 法定調書の提出 税務署への提出(1月31日期限)
2027年1月 防衛特別所得税の適用開始 所得税額の1%付加が源泉徴収・年末調整に反映。同時に復興特別所得税が2.1%→1.1%へ下がるため合計の上乗せ率2.1%は変わらず、計算方法も変わらない。実務で変わるのは令和9年分の税額表の様式。→防衛特別所得税の源泉徴収2027

年末調整における主要チェックポイント

チェック項目 確認内容 留意点
基礎控除の特例加算 合計所得金額に応じた特例加算額の判定 合計所得489万円以下か否かで控除額が大きく異なる
配偶者の所得確認 配偶者の合計所得が62万円以下か 給与収入136万円が新基準(令和7年分は123万円、令和6年分以前は103万円)
特定親族特別控除 19~22歳の扶養親族の所得確認 令和8年分は給与収入159万円まで63万円控除(令和7年分の150万円から変更)
給与所得控除の計算 最低保障額74万円の適用確認 給与収入220万円以下の場合に適用
ひとり親控除の額 令和8年分は改正前の35万円を適用 改正後38万円の適用は令和9年分(2027年分)から。令和8年分の年末調整は35万円

確定申告における留意事項

対象者 確認事項 対応
給与所得者(年末調整済み) 特例加算の過不足精算 年末調整で精算されるため原則不要
個人事業主 基礎控除額の変更 合計所得489万円以下で最大104万円控除。なお、インボイス制度の経過措置縮小(2026年10月〜控除率70%)も同時期に影響するため併せて確認
2か所以上の給与所得者 合計所得金額の正確な把握 特例加算の判定に合計所得が必要
暗号資産取引者 2026年分は従来どおり総合課税 分離課税は2028年以降(見込み)
高所得者 ミニマム税の適用確認 2027年分から新基準(1.65億円超)

今すぐやること:税制改正2026年 対応スケジュール

2026年度の税制改正に向けて、対象者別に対応すべき事項を整理する。

給与計算担当者向け

  • 2026年分の源泉徴収税額表を入手し、給与計算システムに反映する(〜2025年12月):国税庁サイトからダウンロードし、給与計算ソフトに適用。Excelの場合は手動差替え
  • 扶養控除等(異動)申告書の新様式を準備・配布する(〜2026年1月):配偶者控除の所得要件変更(62万円以下→給与収入136万円以下)を反映
  • 配偶者控除の所得要件変更を全従業員に周知する:「103万円の壁」が「136万円の壁」に移行した旨を説明
  • 特例加算(2年限定)の社内周知資料を準備する:「恒久減税ではない」旨を明記し、令和10年分以降の手取り減少を予告

経営者・人事向け

  • 食事補助の非課税枠拡大(7,500円/月)を活用した福利厚生制度の導入・拡充を検討する:チケットレストラン型サービス、社食補助の増額など
  • パート・アルバイト従業員に「年収の壁」の変更点を説明する資料を作成する:所得税の壁(178万円)と社会保険の壁(130万円)を明確に区別して説明
  • 非上場株式オーナーは2027年度改正の見直し議論を注視する:財産評価基本通達に基づく評価ルール(類似業種比準・純資産価額・配当還元)の見直しが2027年度税制改正で議論されている。事業承継計画への影響が大きいため、最新の議論状況を確認のうえ、顧問税理士と評価シミュレーションを早めに実施すること

個人向け

  • 暗号資産の含み益がある場合、2028年の分離課税適用までの売買戦略を検討する:2026〜2027年に売却すると最大55%の総合課税。2028年以降は20%の申告分離課税(見込み)
  • 19〜22歳の子がいる場合、バイト収入の年間159万円ラインを共有する(令和8年分。令和7年分の150万円から変更):159万円超で親の控除が段階的に減少
  • 配偶者の働き方について、社保の壁(130万円)を考慮した世帯シミュレーションを行う

FAQ

Q1. 「年収の壁178万円」とは何を意味するのか。

年収の壁178万円とは、給与所得者の所得税における課税最低限を指す。給与収入が178万円以下であれば、基礎控除(本則62万円+特例加算42万円=104万円)と給与所得控除(最低保障額74万円)の合計178万円を差し引いた後の課税所得が0円以下となるため、所得税が課されない。ただし、住民税の非課税限度額(概ね100万円前後、自治体により異なる)や社会保険の扶養基準(130万円)とは異なる基準であり、「178万円まで稼いでも一切の負担が生じない」ことを意味するわけではない点に留意が必要である。

Q2. 基礎控除の特例加算(最大42万円)は恒久措置か。「178万円の壁」は令和10年分以降も続くのか。

「42万円」という水準が適用されるのは令和8年分及び令和9年分の所得税である。令和10年分以後は、大綱により加算額37万円・対象は合計所得132万円以下へと変わる(財務省「令和8年度税制改正の大綱」3ページ)。したがって合計所得132万円を超える層は令和10年分から加算がなくなるが、132万円以下の層には37万円が残る。

時限措置は基礎控除だけではない。給与所得控除の最低保障額74万円のうち5万円も同じ2年限りである。 大綱の逐語は「(5)給与所得控除の最低保障額の特例の創設 ①令和8年及び令和9年における給与所得控除の最低保障額を5万円引き上げる特例を創設する」(同3〜4ページ)。本則は69万円なので、令和10年分以降は69万円に戻る。

そのため「課税最低限178万円」も令和8年分・令和9年分の姿である。令和10年分以降の試算は次のとおり。

年分 基礎控除 給与所得控除の最低保障 課税最低限
令和8年分・令和9年分 62万円+42万円=104万円 74万円 178万円
令和10年分以後(合計所得132万円以下) 62万円+37万円=99万円 69万円 168万円
令和10年分以後(合計所得132万円超) 62万円 69万円 131万円

あわせて令和10年分以降は物価連動見直し制度に移行し、消費者物価指数の動向に応じて基礎控除額が2年ごとに自動調整される仕組みとなるため、上表の数値がそのまま固定されるとは限らない。

Q3. パートの配偶者は何万円まで働けるようになるのか。

配偶者控除の適用を受けるための配偶者の給与収入上限は、令和8年分では136万円に引き上げられる(合計所得62万円以下=給与収入136万円-給与所得控除74万円)。令和6年分以前は103万円、令和7年分は123万円であった。ただし、社会保険の扶養基準(被扶養者認定基準:年間130万円)は税制とは別の制度であり、この基準は今回の改正で変更されていない。したがって、健康保険の被扶養者資格を維持しつつ配偶者控除の適用を受ける場合、実質的には130万円が上限となる点に注意が必要である。なお、社会保険の適用拡大(106万円の壁の撤廃)は2026年10月1日に施行された。

Q4. 大学生の子のアルバイト収入はいくらまで親の控除に影響しないのか。

19歳以上23歳未満の子(特定扶養親族に相当)について、令和7年度税制改正で創設された「特定親族特別控除」により、令和8年分は給与収入159万円までは親の控除額63万円が満額適用される。159万円超197万円以下の場合は段階的に控除が逓減するが、即座に0円にはならない。令和6年分以前は給与収入103万円超で控除が全額消滅していたため、大幅な緩和措置と言える。なお、令和8年分では扶養控除の合計所得要件が62万円以下に引き上げられたため、給与収入136万円以下であれば通常の扶養控除(63万円)の対象となり、136万円超159万円以下の部分が特定親族特別控除の満額適用範囲となる。令和7年分の基準(150万円/188万円)を載せたままの解説が多いので注意(給与所得控除の最低保障が65万円→74万円に上がった分、境界が9万円ずつ後ろにずれた)。

Q5. 食事補助の非課税枠7,500円はいつから適用されるのか。

食事補助の非課税限度額の月額7,500円への引上げは、所得税基本通達36-38の2の改正により実施され、2026年4月1日以後に支給する食事等から適用される(根拠: 国税庁「令和8年4月源泉所得税の改正のあらまし」)。これは法律の改正ではなく通達(所得税基本通達)の改正によるものであり、令和8年法律第12号のうち基礎控除等の規定(2026年12月1日施行)とは適用開始時期が異なる。企業は就業規則・福利厚生規程の改訂、給与計算システムの設定変更等を進めることができる。

Q6. 暗号資産の分離課税はすぐに適用されるのか。

暗号資産の分離課税は、金融商品取引法の改正を前提とする方針であり、2026年分の所得税にはまだ適用されない。前提となる金商法改正法(令和8年法律第64号)は2026年7月23日に公布済みで、施行は2026年8月12日から2028年6月13日まで段階的に行われる。分離課税の適用は早くとも2028年1月1日以降の譲渡等が対象となる見込みである。2026年分及び2027年分の暗号資産取引については、従来どおり雑所得(総合課税、最大税率55%)として確定申告を行う必要がある。令和8年法律第12号には暗号資産課税の方向性は示されたが、施行日は金商法改正の動向次第である。

Q7. 防衛特別所得税の導入で実質的な増税となるのか。

防衛特別所得税は2027年1月から所得税額の1%が付加される形で導入される。今回の基礎控除引上げ等による減税効果と相殺関係にあるが、多くの給与所得者にとっては基礎控除引上げによる減税額の方が大きく、実質的には手取り増となる。ただし、合計所得2,350万円超の高所得者は基礎控除の引上げ恩恵がなく、防衛特別所得税の負担のみが生じるため、実質増税となるケースがある。

Q8. 令和8年度改正で、2026年中に給与の手取りはすぐに増えるのか。

増えない。令和8年法律第12号は2026年3月31日に公布され、基礎控除等の規定は2026年12月1日に施行されるが、令和8年度改正分(基礎控除特例加算42万円・給与所得控除最低保障74万円)は2026年中の月次源泉徴収には反映されず、2026年末の年末調整で精算する運用となる。2026年1月から月次の手取りに既に反映されているのは令和7年度改正分(基礎控除48万→58万円、給与所得控除最低保障55万→65万円、特定親族特別控除の創設)であり、これは2026年1月支給給与から源泉徴収税額表に織り込み済みである。令和8年度改正分が月次源泉徴収にも反映されるのは2027年1月支給給与からとなる。従業員に「4月以降に手取りが増える」と誤った期待を持たせず、「2026年末の年末調整で還付額が例年より増える」と説明するのが正確である。


免責事項

本記事は、「所得税法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第12号、2026年3月31日公布。基礎控除等の規定は2026年12月1日施行・令和8年分以後の所得税に適用)、同法施行に伴う関係政令・省令(2026年3月31日・4月14日公布)、令和8年度税制改正の大綱(令和7年12月26日閣議決定)、国税庁・財務省の公表資料及びその他の公開情報に基づき作成し、2026年9月3日に条文・数値を再確認したものである(社会保険の短時間労働者の要件に関する記述は2026年10月5日に更新。ベンダー対応状況の節のみ2026年5月13日時点の調査)。記事中の数値・控除額は概算値を含み、個別の税務判断の根拠とすることを目的としていない。

改正法の施行に伴う細則(所得税基本通達の改正、年末調整様式の確定版など)は今後順次公表される予定であり、最新の情報は国税庁・財務省の公式サイトで確認されたい。本記事における減税額シミュレーションは一定の前提条件に基づく試算であり、社会保険料控除・生命保険料控除その他の所得控除の状況により実際の税額は異なる。

具体的な税務判断・申告実務については、所轄の税務署または税理士に相談されたい。


参考資料・一次情報

本記事の作成にあたり、以下の公的資料を参照しています。最新の情報は各機関の公式サイトでご確認ください。

JG

実務ガイド編集部

AI執筆 + 編集部レビュー済み

本記事はAIが初稿を作成し、編集部が法令原文・官公庁通知・審議会資料等の一次情報と照合のうえ、内容を確認・編集しています。行政手続き・法改正・制度改正の実務情報を専門に扱う編集チームが、企業実務担当者・士業専門家向けに正確性の高いコンテンツを提供します。