社会保険適用拡大2026年|106万円の壁の撤廃(2026年10月1日)と週20時間ルールを早わかり

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社会保険適用拡大2026年|106万円の壁の撤廃(2026年10月1日)と週20時間ルールを早わかり
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最終更新日: 2026年10月

【結論】 月額8.8万円要件(106万円の壁)は2026年10月1日に撤廃された(年金制度改正法〔令和7年法律第74号〕。日本年金機構の案内と、e-Gov厚生年金保険法第12条第1項第5号の2026年10月1日時点の条文で確認)。現在の短時間労働者の加入要件は、特定適用事業所等(企業規模51人以上。2027年10月以降段階的に拡大)に勤務し、週の所定労働時間が20時間以上で、学生でないことである(2か月以内の期間を定めて使用される方等は除く)。最低賃金の減額特例許可を受けた所定内賃金月額8.8万円未満の方(特定減額特例対象者)は原則として加入対象外で、申出により加入できる。2026年9月以前の期間に遡って資格を取得する場合は、撤廃前と同じ基準(賃金要件を含む)で判定される。同日に始まった保険料調整制度(年金制度改正法附則第22条・第24条・第25条)は、事業主が申し出た場合に短時間被保険者の保険料負担を軽減する任意の特例で、適用拡大や壁の撤廃そのものではない。対象は標準報酬月額126,000円以下(厚生年金は第1級〜第6級、健康保険は第1級〜第9級)の被保険者で、事業所側にも対象要件があり、2026年10月1日時点で既に特定適用事業所(任意特定適用事業所を含む)となっている事業所は対象外。適用期間は申出月から通算36ヶ月が上限。申出書の様式は日本年金機構が公表済みで、事務センターまたは管轄の年金事務所へ郵送・窓口持参で提出する。事業主が一時的に追加負担した保険料は、機構の案内では3カ月後の保険料額から全額差し引く形で還付される。企業規模要件は2027年10月「36人以上」→2035年10月全企業適用へ段階縮小、130万円の壁は2026年4月から契約ベース判定に変更済み(根拠通知: 保保発1001第3号・年管管発1001第3号)。

2025年6月13日に成立し同年6月20日に公布された年金制度改正法(令和7年法律第74号)により、短時間労働者の社会保険適用要件が段階的に見直される。最大の変更点は、適用要件のうち「月額賃金8.8万円以上(年収約106万円)」の要件が撤廃されたことであり、この撤廃は2026年10月1日に施行された。週20時間以上の勤務要件は維持される。一方、企業規模要件は現行の「従業員51人以上」から2027年10月以降段階的に縮小され、2035年10月に撤廃される。130万円の壁についても、2026年4月から判定基準が「実際の収入」から「契約上の収入見込み」に変更されている。本記事では、改正法の全体像・賃金要件撤廃の内容・企業規模要件の段階的スケジュール・保険料調整制度の詳細・保険料負担のシミュレーション・企業が講ずべき実務対応を体系的に整理する。

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改正の全体像:何がどう変わるのか

年金制度改正法(令和7年法律第74号)の概要

2025年6月13日に成立した年金制度改正法は、短時間労働者のセーフティネット拡充と「年収の壁」問題の解消を目的とする包括的な改正である。社会保険適用拡大に関する主な改正事項は以下のとおりである。

改正事項 改正前 改正後 施行日
月額賃金要件(106万円の壁) 月額8.8万円以上 撤廃 2026年10月1日(施行済み)
企業規模要件 従業員51人以上 段階的に縮小→撤廃 2027年10月~2035年10月
週所定労働時間 20時間以上 20時間以上(変更なし) ―
学生除外 学生は適用除外 学生は適用除外(変更なし) ―
雇用期間要件 2か月超の雇用見込み 2か月超の雇用見込み(変更なし) ―
130万円の壁(判定基準) 実際の年間収入で判定 契約上の収入見込みで判定 2026年4月1日
保険料調整制度(経過措置) なし 事業主が申し出た場合、短時間被保険者(標準報酬月額126,000円以下)に係る事業主の保険料負担割合を増加(=本人負担を軽減)できる。増加幅は標準報酬月額の等級別(厚年は第1〜6級、健保は第1〜9級)。事業所側にも対象要件があり、既に適用済みの事業所の多くは対象外。適用は申出月から通算36ヶ月が上限(年金制度改正法〔令和7年法律第74号〕附則第22条・同法附則第24条・第25条) 2026年10月1日

根拠: 年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律(令和7年法律第74号)

改正の背景と立法趣旨

今回の改正は、以下の政策課題への対応として位置づけられている。

政策課題 現状の問題点 改正による対応
年収の壁による就業調整 106万円・130万円を超えないよう労働時間を抑制 106万円の壁を撤廃し就業調整のインセンティブを低減
パートタイム労働者の老後保障 国民年金のみ(月額約6.8万円)の層が多い 厚生年金への加入により将来の年金受給額を増加
人手不足への対応 壁を意識した就業調整が人手不足を助長 壁の撤廃により労働供給量の増加を促進
社会保険の制度間公平性 企業規模により適用される・されないの差が存在 企業規模要件の段階的撤廃で制度間格差を解消

なお、2026年10月1日には社会保険とは別に、パート・有期雇用労働者の雇い入れ時の労働条件明示事項に1項目が追加される改正も施行された。詳細はパート・有期雇用2026年10月ルール改正|労働条件明示1項目追加・同一労働同一賃金ガイドライン改正の実務対応を参照されたい。


106万円の壁はいつ撤廃されたのか

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2026年10月1日に撤廃された

結論から述べる。月額8.8万円要件(106万円の壁)は2026年10月1日に撤廃された。日本年金機構は、短時間労働者が社会保険に加入するための要件のうち「所定内賃金が月額8.8万円以上」について「2026年10月1日に撤廃」と案内している(チラシ「2026年10月1日から短時間労働者に係る賃金要件の撤廃と最低賃金の減額特例の対象者に関する制度が始まります!」)。

e-Gov法令検索で厚生年金保険法第12条第1項第5号を比較すると、2026年9月30日時点は「イ 一週間の所定労働時間が二十時間未満/ロ 報酬が八万八千円未満/ハ 学生等」の3要件、2026年10月1日時点は「イ 二十時間未満/ロ 学生等」の2要件で、報酬8.8万円の要件が削除されている。

機構のQ&Aは、撤廃の理由を「最低賃金の上昇により週の所定労働時間が20時間以上であれば賃金要件を満たすことになり、要件としての必要性がなくなった」旨で説明している。2026年9月以前の期間について遡って資格を取得する場合は、撤廃前と同じ基準(賃金要件を含む)で判定される。

特定減額特例対象者: 最低賃金の減額特例許可を受けていて所定内賃金が月額8.8万円未満の方は、原則として加入対象外である。ただし申出により任意に加入できる。

2026年10月1日に施行されたもの

では2026年10月1日には何が起きたのか。(1) 厚生年金保険法第12条第1項第5号から報酬8.8万円未満の要件(旧ロ)が削除され、賃金要件が撤廃された。(2) 年金制度改正法〔令和7年法律第74号〕附則第22条〜第25条(保険料調整制度)が施行された。後者は厚生年金保険法本体の改正ではなく、改正法自体の附則である。日本年金機構はこの制度を「保険料調整制度」と呼んでいる。同種の規定は健康保険法についても、同じ改正法の附則に新設されている。

施行日 新設・改正される条 内容
2026年10月1日 厚生年金保険法第12条第1項第5号(賃金要件の削除) 「報酬が八万八千円未満であること」の要件を削除(短時間労働者の賃金要件の撤廃)
2026年10月1日 年金制度改正法(令和7年法律第74号)附則第22条(新設)
短時間被保険者に係る厚生年金保険料に関する経過措置
事業主が実施機関に申し出た場合、短時間被保険者に係る事業主の保険料負担割合を増加させることができる(=本人負担が軽減される)。増加幅は標準報酬月額の等級別に定められ、申出は基準日から2年以内
2026年10月1日 同法附則第24条・第25条(新設)
短時間被保険者に係る健康保険料に関する経過措置
同法附則第22条と同種の制度。ただし対象等級は第1級〜第9級と、厚生年金保険(第1級〜第6級)より範囲が広い

保険料調整制度は、適用要件の変更ではなく、保険料の負担割合に関する事業主の選択肢である。しかも申出は事業主の任意であり、申し出なければ何も変わらない。厚生年金保険と健康保険で対象等級の範囲がずれるため、実務上は両保険を別個に確認する必要がある。

なお、月額8.8万円要件が置かれていた厚生年金保険法第12条第1項第5号ロ(報酬が八万八千円未満であること)は、2026年10月1日施行の版で削除されている。

保険料調整制度は事業所側にも対象要件があり、既に適用済みの事業所の多くは対象外である。対象事業所の要件・被保険者の対象等級・負担割合表・お金の流れ・届出様式は、「保険料調整制度(2026年10月1日施行)── 事業主の申出制」の章で詳しく解説する。

現行の短時間労働者の適用要件と改正後の比較

2026年9月までは、短時間労働者が社会保険(厚生年金保険・健康保険)に加入するためには、以下の5要件をすべて満たす必要があった。2026年10月1日以降は、月額賃金要件を除く4要件が判定の基準となる。改正前後を対比する。

要件 2024年10月~2026年9月 2026年10月1日以降 施行日
1. 週所定労働時間 20時間以上 20時間以上(変更なし) ―
2. 月額賃金 8.8万円以上(年収約106万円) 要件撤廃 2026年10月1日(施行済み)
3. 雇用期間見込み 2か月超 2か月超(変更なし) ―
4. 学生除外 学生は適用除外 学生は適用除外(変更なし) ―
5. 企業規模 従業員51人以上 段階的に縮小 2027年10月~2035年10月

撤廃された「月額8.8万円」要件の意味

月額賃金8.8万円(年収換算で約106万円)の要件は、2016年10月の適用拡大時に設けられたものである。この要件により、週20時間以上勤務していても月額賃金が8.8万円未満であれば社会保険への加入義務が生じなかった。

改正のポイント 内容
撤廃された基準 月額賃金8.8万円以上(年収約106万円)
撤廃後の判定 賃金額にかかわらず、週20時間以上勤務で学生でなければ、企業規模要件を満たす事業所で適用対象(最低賃金減額特例許可を受けた所定内賃金月額8.8万円未満の方は原則対象外)
影響を受ける層 週20時間以上勤務かつ月額8.8万円未満の短時間労働者
影響人数(推計) 段階的拡大の全過程で累計約200万人が新たに適用対象(賃金要件の撤廃は2026年10月1日に施行済み。この人数が現実化する時期は、企業規模要件の縮小時期にも依存する)

週20時間の判定基準

月額賃金要件が撤廃されたことで、「週所定労働時間20時間以上」の判定がこれまで以上に重要になる。

判定項目 基準
判定の対象 雇用契約書に記載された「所定労働時間」
残業時間の扱い 所定外労働時間(残業)は含まない
シフト制の場合 月ごとのシフトで判定せず、契約上の所定労働時間で判定
繁忙期の取扱い 繁忙期のみ20時間超でも、契約上20時間未満なら適用外
実態との乖離 2か月連続で実労働が週20時間以上 → 3か月目から適用の可能性

企業規模要件の段階的縮小スケジュール

企業規模要件の推移(2016年~2035年)

短時間労働者への社会保険適用における企業規模要件は、2016年の導入以来、段階的に縮小されてきた。今回の改正法により、最終的に2035年10月にすべての企業規模で適用される。

施行時期 企業規模要件(従業員数) 根拠法令 新規適用対象(推計)
2016年10月 501人以上 年金機能強化法(平成24年法律第62号) 約25万人
2022年10月 101人以上 年金制度改正法(令和2年法律第40号) 約45万人
2024年10月 51人以上 同上 約65万人
2027年10月 36人以上 年金制度改正法(令和7年法律第74号) ―
2029年10月 21人以上 同上 ―
2032年10月 11人以上 同上 ―
2035年10月 要件撤廃(全企業) 同上 ―

従業員数のカウント方法

企業規模要件における「従業員数」は、厚生年金保険の被保険者数をもとにカウントする。

カウント対象 含む/含まない
フルタイムの正社員 含む
週所定労働時間がフルタイムの3/4以上のパート 含む
短時間労働者(週20時間以上、かつ適用要件を満たす者) 含まない
役員 含まない(ただし使用関係がある場合は含む)
派遣労働者 含まない(派遣元でカウント)
判定方法 内容
判定時点 直近12か月のうち6か月以上で基準を満たすかで判定
法人単位/事業所単位 法人単位で判定(同一法人内の全事業所を合算)
グループ会社 グループ会社間では合算しない(法人ごとに判定)


130万円の壁:判定基準の変更

130万円の壁とは

130万円の壁は、健康保険の被扶養者認定基準であり、被保険者(配偶者等)の扶養に入るための年収要件である。130万円を超えると被扶養者資格を喪失し、自ら国民健康保険・国民年金に加入するか、勤務先の社会保険に加入する必要がある。

項目 内容
基準額 年間収入130万円未満(月額換算:108,333円)
60歳以上・障害者 年間収入180万円未満(月額換算:150,000円)
対象収入 給与収入のほか、通勤手当・各種手当を含む総収入
判定主体 被保険者の加入する健康保険の保険者(協会けんぽ・健保組合)

2026年4月からの判定基準変更

130万円の壁自体は撤廃されていないが、2026年4月から判定の基準が変更された。

判定基準 現行 2026年4月以降
判定の考え方 過去の実際の収入で判定 雇用契約に基づく収入見込みで判定
繁忙期の残業 残業で一時的に130万円超 → 扶養を喪失する可能性 契約上の所定内賃金が130万円未満なら扶養を継続
判定のタイミング 年間収入の実績を事後的に確認 契約締結時・更新時に収入見込みを確認
保険者への届出 実績ベースで被扶養者異動届を提出 契約変更時に届出
具体例 現行の判定 改正後の判定
契約上は月額10万円(年収120万円)だが、残業で年間135万円になった 扶養喪失の可能性あり 扶養継続(契約ベースで120万円<130万円)
契約上は月額11万円(年収132万円)だが、欠勤で年間125万円に収まった 扶養継続の余地あり 扶養喪失(契約ベースで132万円≧130万円)

施行後の実務対応(2026年4月1日以降)

判定基準の変更は、根拠通知「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて」(令和7年10月1日付 保保発1001第3号・年管管発1001第3号、厚生労働省保険局保険課長・年金局事業管理課長から全国健康保険協会理事長・健康保険組合理事長・日本年金機構理事長あて)に基づき、令和8年4月1日から適用されている。日本年金機構は施行後の実務案内(更新日2026年5月1日)を公表しており、必要書類と判定できないケースが具体的に示されている。

契約ベースで判定するために必要な書類(2点)

書類 内容
① 労働契約内容がわかる書類 労働条件通知書、雇用契約書、または労働条件が記載されている事業主証明(任意様式)
② 申立書 扶養認定を受ける方からの「給与収入のみである」旨の申立書

契約ベースで判定できない3類型(この場合は従来どおり実績で判定する)

類型 内容
ア 被扶養者(異動)届の「被扶養者になった日」から起算して、通知書等上の契約期間が1年未満の場合
イ 「シフト制による」といった労働時間の記載が不明確な場合
ウ 「通勤手当有」等となっており、手当の金額が不明確な場合

臨時収入の扱い: 当初想定されなかった臨時収入により、結果的に年間収入が130万円以上となった場合であっても、当該臨時収入が社会通念上妥当な範囲に留まるときは、被扶養者としての取扱いを変更する必要はないとされている(通知の要旨)。

出典: 日本年金機構「労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いについて」(更新日2026年5月1日)https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/jigyosho/2026/202605/0501.html


保険料負担のシミュレーション

社会保険料の基本構造

社会保険に加入した場合、労使折半で保険料を負担する。主な保険料率は以下のとおりである(令和8年度の確定値)。

保険種別 保険料率(合計) 本人負担 事業主負担
厚生年金保険 18.300% 9.150% 9.150%
健康保険(協会けんぽ全国平均) 9.90% 4.95% 4.95%
子ども・子育て支援金(全国一律、健康保険料に上乗せ) 0.23% 0.115% 0.115%
介護保険(40歳以上) 1.62% 0.81% 0.81%
合計(40歳未満) 28.43% 14.215% 14.215%
合計(40歳以上) 30.05% 15.025% 15.025%

子ども・子育て支援金は、被保険者が実際に納める保険料としては健康保険料率と合算されて1つの額になる。健康保険法第156条第1項第1号は、標準報酬月額等に乗じる率を「一般保険料率…と子ども・子育て支援金率とを合算した率」と定めており、法的には健康保険料の一部として徴収される仕組みである。労使折半である点は健康保険料と同じ。本表で行を分けているのは、協会けんぽの令和8年度保険料率のお知らせが「本計算では健康保険料のみを計算しており、子ども・子育て支援金率(0.23%)及び介護保険料率(1.62%)は考慮しておりません」として率を別掲しているという、計算実務上の表示に合わせたものである。

月額報酬別の保険料負担シミュレーション

月額8.8万円要件の撤廃(2026年10月1日施行)により新たに社会保険に加入する主な層の保険料負担を試算する(企業規模要件を満たす事業所に勤務する場合。40歳未満、協会けんぽ全国平均)。厚生年金保険と健康保険で標準報酬月額の等級表が異なるため、両保険を別列で示す。

月額報酬 年収(概算) 健保:標準報酬月額 厚年:標準報酬月額 本人負担(月額) 本人負担(年額) 事業主負担(年額)
6.8万円 約82万円 68,000円 88,000円 約11,500円 約13.8万円 約13.8万円
7.8万円 約94万円 78,000円 88,000円 約12,000円 約14.4万円 約14.4万円
8.0万円 約96万円 78,000円 88,000円 約12,000円 約14.4万円 約14.4万円
8.8万円 約106万円 88,000円 88,000円 約12,500円 約15.0万円 約15.0万円
10.0万円 約120万円 98,000円 98,000円 約13,900円 約16.7万円 約16.7万円
12.0万円 約144万円 118,000円 118,000円 約16,800円 約20.1万円 約20.1万円

7.8万円行と8.0万円行の保険料が同額になっているのは誤記ではない。厚生年金保険は報酬月額93,000円未満をすべて第1級(標準報酬月額88,000円)とする1つの区分に収め、健康保険も両者とも「73,000円以上83,000円未満」という同じ等級区分に入るため、標準報酬月額が一致し、結果として保険料も完全に一致する。標準報酬月額は「実際の報酬額」ではなく「報酬月額を一定の幅で区切った等級」で決まる点に注意されたい。

手取り額への影響

社会保険に新規加入した場合の手取り額の変化を、代表的な年収帯で示す。

【関連記事】 社会保険加入による保険料負担は、同時期に施行される2026年税制改正(基礎控除引上げ・給与所得控除拡充)との組み合わせで世帯手取りが決まります。記事15の「社会保険料を加味した世帯手取りシミュレーション」と併せてご確認ください。

年収 改正前の手取り(概算) 改正後の手取り(概算) 手取り減少額(年額) 将来の年金増加額(年額・概算)
82万円 約82万円 約68.2万円 約13.8万円 約5,800円/年(加入1年あたり)
96万円 約96万円 約81.6万円 約14.4万円 約5,800円/年
106万円 約91万円※1 約91万円※2 ±0円 約5,800円/年
120万円 約103.3万円 約103.3万円 ±0円 約6,400円/年

※1 現行制度で106万円超・社会保険加入の場合
※2 改正後も同額の場合

将来の年金増加額は、日本年金機構の計算式「平均標準報酬月額×(5.481÷1000)×平成15年4月以降の加入期間の月数」に基づく(賞与はゼロと仮定した単純化推計。賞与がある場合はこれより大きくなる)。この増加額は、老齢厚生年金の受給が始まった後、生涯にわたって毎年上乗せされ続けるものである。単年の手取り減少額と単年の年金増加額だけを比べると見劣りするが、受給開始後10年・20年と積算すれば、上乗せの総額は手取り減少額を上回っていく性質のものである点に注意されたい。


保険料調整制度(2026年10月1日施行)── 事業主の申出制

2026年10月1日に始まったのは、賃金要件の撤廃と並んで、この経過措置である。日本年金機構は「保険料調整制度」と呼んでいる。厚生年金保険法や健康保険法そのものの改正ではなく、年金制度改正法(令和7年法律第74号)附則第22条・同法附則第24条・第25条として新設された。本記事の他の箇所で単に「経過措置」と呼んでいる箇所も、同じこの制度を指す。

対象となる事業所── 既に適用済みの事業所の多くは対象外

この制度は、被保険者の等級要件に加えて、事業所側にも対象要件がある。これから新たに短時間労働者の社会保険適用対象になる事業所のための制度であり、既に適用済みの事業所の多くは対象外である。

日本年金機構「保険料調整制度」の事業所向けページ(更新日2026年9月11日)は、次のように説明している。

「2026(令和8)年10月1日~2035(令和17)年9月30日までに任意特定適用事業所となった事業所は、保険料調整制度の対象です。」

「2026(令和8)年10月1日時点ですでに、特定適用事業所(任意特定適用事業所を含む)となっている事業所」は対象外である。

条文(年金制度改正法附則第22条第1項各号)も、対象事業所を基準日ごとに4類型で列挙しており、いずれも「これから」適用対象になる事業所である。

号 対象事業所 基準日
第一号 令和8年10月1日以後に平成24年機能強化法附則17条5項の申出をした事業主の適用事業所 当該申出が受理された日
第二号 特定労働者数が常時10人以下の適用事業所(第一号・第三号を除く) 令和17年(2035年)10月1日
第三号 特定労働者数が常時50人以下で令和9年(2027年)10月以後に特定適用事業所となった適用事業所(第一号を除く) 当該特定適用事業所となった日
第四号 その他政令で定める適用事業所(令和8年政令第272号・令和8年厚生労働省令第137号で定義) 政令・省令で定める日

つまり、既に「51人以上」等の企業規模要件で適用済みの事業所(本記事の主要読者を含む)は、2026年10月時点ではこの制度の対象外である。対象になるのは、今後の企業規模要件の段階的縮小(2027年10月「36人以上」以降)によって新たに適用対象となる事業所、または特定労働者10人以下・50人以下の小規模事業所に限られる。

根拠: 日本年金機構「保険料調整制度」事業所向けページ、年金制度改正法(令和7年法律第74号)附則第22条第1項各号

対象者と等級

制度の対象は、短時間労働者として社会保険に加入し、標準報酬月額126,000円以下の被保険者に限られる。厚生年金保険と健康保険で対象等級の範囲が異なる点に注意が必要である。

保険種別 対象等級 根拠
厚生年金保険 第1級〜第6級 年金制度改正法附則第22条第12項・同法附則別表第二
健康保険 第1級〜第9級 同法附則第24条・第25条・同法附則別表第三

健康保険の方が対象範囲が広い。厚生年金保険では対象外でも健康保険では対象になる等級帯があるため、給与計算システムでは両保険を別個に判定する必要がある。

等級別の事業主負担増加割合

事業主の保険料負担割合を、通常の労使折半(50%)からこの表の割合だけ増加させることができる。増加した分、本人負担は軽減される。適用は制度利用1〜2年目とその後(3年目)で異なり、3年目は増加幅が半分になる。

標準報酬月額等級(厚生年金保険) 1〜2年目の増加負担割合 3年目(1/2)
第1級 25% 12.5%
第2級 20% 10%
第3級 14% 7%
第4級 9% 4.5%
第5級 5% 2.5%
第6級 2% 1%

健康保険側の等級はこれとは別建てで、第1〜4級=25%/第5級=20%/第6級=14%/第7級=9%/第8級=5%/第9級=2%(1〜2年目、3年目は同様に半減)である。

厚生年金保険と健康保険の申出は同時に行わなければならない。年金制度改正法附則第22条第3項は、健康保険側の申出(同法附則第24条第1項)ができる事業主については、厚生年金保険側の申出をこれと同時に行う義務を定めている。片方だけを申し出ることはできない。

根拠: 年金制度改正法(令和7年法律第74号)附則第22条第1項・同法附則別表第二(増加負担割合の定義)、同条第3項(健康保険との同時申出義務)、同法附則第24条・第25条・同法附則別表第三

適用期間・申出期限

項目 内容
制度の性質 事業主が実施機関(厚生労働大臣・日本私立学校振興・共済事業団)に申し出た場合に適用される任意の特例。申し出なければ適用されない
適用期間の上限 申出があった月から通算36ヶ月(3年間)が上限(年金制度改正法附則第22条第7項)
申出の期限 基準日から起算して2年を経過した日が属する月の前月まで
基準日 事業所の類型により4パターン(政令委任の第四号を含む)。詳細は前掲の「対象となる事業所」参照

お金の流れ── 一時的に増えるが、後で還付される

事業主は保険料軽減割合分を一時的に追加負担して保険料を納付し、その追加負担分は3カ月後の保険料額から全額差し引かれる(還付)。日本年金機構は「追加負担額が還付されることで、事業主が最終的に納付する保険料額は増えず、被保険者の保険料負担を軽減できる」と説明している。還付時には「保険料調整通知書」が送付される。

月々の実支払いは、還付されるまで増える。また、保険料を納付期限(翌月末)までに納付せず、督促状の指定期限までにも納付しなかった場合、その月の追加負担分は還付されない(「保険料調整不該当通知書」が送付される)。賞与にかかる保険料・介護保険料・子ども・子育て支援金は制度の対象外とされている。

出典: 日本年金機構「保険料調整制度のご案内」https://www.nenkin.go.jp/tokusetsu/hokenryochosei.html(更新日2026年9月11日。開始申出の手続き・計算方法のページは2026年10月1日更新)

手続── 申出書の提出

申出に使う様式は日本年金機構が公表している。開始の申出は、事業主が申出期限内に「健康保険・厚生年金保険 保険料調整(開始/停止解除)申出書」(エクセル)を提出して行う。提出先は事務センターまたは管轄の年金事務所、提出方法は郵送または窓口持参で、添付書類は不要。制度の利用開始月は申出書が受付された日が属する月で、期間をさかのぼって利用することはできない。(出典: 日本年金機構「保険料調整制度の開始申出の手続き」更新日2026年10月1日)


キャリアアップ助成金の活用

短時間労働者労働時間延長支援コース(現行)

社会保険適用拡大に伴うキャリアアップ助成金は、2026年4月1日以降に新たに取組を行う事業主については「短時間労働者労働時間延長支援コース」が対象になる(令和7年7月1日新設)。労働者を新たに社会保険に加入させるとともに、収入増加の取組を行った事業主に助成する制度である。

対象労働者(以下の①・②の両方を満たすこと)

要件 内容
① 社会保険加入日の6か月前の日以前から継続して雇用されている
② 社会保険加入日から過去2年以内に同事業所で社会保険に加入していなかった

対象となる取組(①・②のいずれか)

取組 内容
① 社会保険加入日前1か月以内に、週所定労働時間を一定時間延長し、新たに社会保険に加入させる
② 社会保険加入日から2か月以内に、週所定労働時間を一定時間延長する

1年目の助成額(週所定労働時間の延長幅と賃金の増額幅の組み合わせに応じる。いずれか1つを満たせばよい)

週所定労働時間の延長幅 賃金の増額要件 小規模企業(30人以下) 中小企業 大企業
5時間以上 要件なし 50万円 40万円 30万円
4時間以上5時間未満 5%以上 50万円 40万円 30万円
3時間以上4時間未満 10%以上 50万円 40万円 30万円
2時間以上3時間未満 15%以上 50万円 40万円 30万円

2年目の助成額(1年目の取組実施後、さらに労働時間を2時間以上延長、または基本給を5%以上増額もしくは昇給・賞与・退職金制度を適用した場合)

小規模企業(30人以下) 中小企業 大企業
25万円 20万円 15万円

1年目・2年目をあわせると、労働者1人あたり最大75万円(小規模企業の場合。中小企業は最大60万円、大企業は最大45万円)となる。複数年かけて週所定労働時間の延長等に取り組み、社会保険に加入する場合も対象になる。

手続き

項目 内容
キャリアアップ計画書の提出時期 コース実施の前日まで(本コースの場合、社会保険加入日の前日まで。例: 2027年10月1日加入なら同年9月30日まで)
旧コースの計画届提出済みの場合 旧「社会保険適用時処遇改善コース」の計画届を提出している場合は、本コースの計画届・変更届の提出は不要
支給申請 取組を6か月間継続した後、2か月以内に支給申請(2年目も同様のサイクル)
旧コースからの切替 社会保険適用時処遇改善コース(併用メニュー等)の取組を進めていても、本コースの要件を満たす場合は切り替えての申請が可能

出典: 厚生労働省「キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長支援コース)のご案内」(リーフレット、令和8年4月版)

社会保険適用時処遇改善コース(新規の対象期間は終了)

旧「社会保険適用時処遇改善コース」は、令和8年3月末までに取組を行った事業主が対象であり、新規の対象期間は終了している。厚生労働省は「令和8年4月1日以降に、労働者を新たに社会保険に加入させるとともに収入増加の取組を行うことを予定している場合は」上記の短時間労働者労働時間延長支援コースの活用を案内している。以下は同コースの制度概要(既に取組を行った事業主の参考情報)である。

項目 内容
対象事業主 令和8年3月末までに、短時間労働者を新たに社会保険に加入させる取組を行った事業主
対象労働者 新たに社会保険の被保険者となった短時間労働者
支給額 1人あたり最大50万円(中小企業の場合)
要件 処遇改善(賃金の引上げ等)を行った上で社会保険に加入させること
パターン 処遇改善の内容 助成額(中小企業)
手当等の支給 社会保険適用促進手当の支給(本人負担分相当額) 最大20万円/人
賃上げ 基本給の引上げ(3%以上等) 最大30万円/人
労働時間延長 週所定労働時間を延長し処遇改善 最大30万円/人
併用 上記を組み合わせて実施 最大50万円/人

企業が講ずべき実務対応

対応スケジュール

注意:賃金要件は2026年10月1日に撤廃済みで、企業規模要件を満たす事業所では、週20時間以上・学生でない従業員が賃金額にかかわらず加入対象となっている。まず、週20時間以上・月額8.8万円未満だった従業員の適用状況(被保険者資格取得届の提出要否)を確認する。あわせて、自社が保険料調整制度の対象事業所に該当するかを確認する。既に企業規模要件等で適用済みの事業所の多くは対象外であり、対象になるのは今後新たに適用対象となる事業所等に限られる。対象に該当する場合のみ申出を判断することになる。申出書の様式は公表済みで、申出期限内に提出できる。

時期 対応事項 担当部門
2026年4月(実施済み) 130万円の壁判定基準変更への対応(雇用契約書の確認・整備) 人事・総務
2026年10月以降(申出期限内) 自社が保険料調整制度の対象事業所に該当するか確認したうえで、申し出るかを判断する。既に適用済みの事業所の多くは対象外(詳細は「対象となる事業所」参照)。該当する場合は申し出た場合の自社負担増を試算し、人材確保上のメリットと比較する 経理・人事
2026年10月 保険料調整制度の申出(対象事業所に該当し、申し出る場合。申出書の様式は公表済み)。増加負担割合の等級区分を給与計算システムに反映 経理・人事
2026年10月〜 週20時間以上・月額8.8万円未満のパート従業員のうち、加入対象(特定減額特例対象者を除く)の資格取得届の提出状況を確認 人事・総務
撤廃施行後(2026年10月〜) 対象者への説明会、キャリアアップ助成金の計画書提出(加入前の提出が必須)、資格取得届の準備 人事
2027年10月 企業規模要件が「36人以上」に縮小(施行日確定)。36〜50人規模の事業所は新たに適用対象となる 人事・総務
2029年10月/2032年10月/2035年10月 企業規模要件が21人以上/11人以上/全企業へ順次縮小 人事・総務

業種別の影響度

パートタイム労働者の比率が高い業種ほど、今回の改正による影響が大きい。

業種 パート比率 影響度 主な対応課題
小売業・スーパー 極めて高い 極めて高い 多数のパート従業員の一斉加入対応、保険料コスト増
飲食業 極めて高い 極めて高い シフト管理の見直し、短時間勤務者の契約再設計
介護・福祉 高い 高い 処遇改善加算との連動、人材確保策としての活用
物流・倉庫 高い 高い 繁忙期の実労働時間管理、就業調整への対応
製造業(工場ライン) 中程度 中程度 ライン作業の短時間パートの扱い
事務・オフィスワーク 中程度 中程度 契約社員・派遣との整合性確認

今すぐやること:社会保険適用拡大 対応チェックリスト

賃金要件は2026年10月1日に撤廃済みである。以下は「すぐに確認すること」と「撤廃後の対応として進めること」に分けて整理する。

すぐに確認すること

  • 適用対象者の洗い出しを行う(人事・総務):週所定労働時間20時間以上のパート・アルバイト従業員を全事業所から抽出し、一覧表を作成する。月額賃金8.8万円未満だった層を特に確認。
  • 企業規模要件の該当確認を行う(人事・総務):法人全体のフルタイム相当従業員数をカウントし、現行の「51人以上」を満たすか、また2027年10月の「36人以上」基準(施行日確定済み)に該当する見込みかを確認
  • 保険料コストの年間試算を実施する(経理):新規加入対象者の標準報酬月額を算定し、厚生年金保険料・健康保険料の企業負担額を年間ベースで算出。経営層に報告し予算措置を協議
  • 自社が保険料調整制度の対象事業所に該当するか確認し、申し出るか判断する(経理・人事):既に企業規模要件等で適用済みの事業所の多くは対象外であり、対象になるのは今後新たに適用対象となる事業所等に限られる。該当する場合、申し出れば自社の月々の保険料負担は増えるが、パート従業員の手取り減少を緩和できる。申出期限は基準日から2年。申出書の様式は公表済みで、申出期限内に手続きできる

撤廃後の対応として進めること

  • キャリアアップ助成金のキャリアアップ計画書を提出する(人事):キャリアアップ助成金「短時間労働者労働時間延長支援コース」の活用を検討し、管轄の労働局に計画書を提出。社会保険加入日の前日までに提出しなければ受給不可のため、最優先事項(旧「社会保険適用時処遇改善コース」は新規の対象期間が終了しているため対象外)
  • パート従業員への説明会を実施する(人事):社会保険加入のメリット(傷病手当金・出産手当金・老齢厚生年金の上乗せ)と保険料負担を個別にシミュレーションした資料を配布
  • 雇用契約書を確認・更新する(人事・法務):週所定労働時間・月額賃金の記載を正確にし、130万円判定基準変更に対応した契約内容に整備
  • 給与計算システムの社会保険設定を準備する(経理):新規被保険者の資格取得届作成・保険料控除開始の設定を確認

中期:2027年以降

  • 企業規模要件の段階的縮小に備える(経営企画・人事):2027年10月「36人以上」、2029年10月「21人以上」に向けた準備を計画的に進める。特に従業員数がボーダーライン上の企業は毎月の従業員数を記録
  • パート従業員の処遇体系を見直す(人事):社会保険加入を前提とした賃金設計・労働時間設計に移行し、「壁」を意識しない働き方を推進

FAQ:社会保険適用拡大でよくある質問

Q1. 106万円の壁が撤廃されたら、パートは全員社会保険に入るのですか?

A1. 全員ではない。撤廃されたのは「月額賃金8.8万円以上」の要件のみであり、「週所定労働時間20時間以上」「2か月超の雇用見込み」「学生でないこと」「企業規模要件を満たす事業所に勤務」の要件は維持されている。これらすべてを満たす場合に社会保険の加入義務が生じる。逆に言えば、週所定労働時間が20時間未満のパート従業員は、賃金要件の撤廃後も社会保険の適用対象外である。

Q2. 週20時間の基準は「10時間以上」に引き下げられるのですか?

A2. 社会保険(厚生年金保険・健康保険)の適用基準は「週20時間以上」のまま変更されない。「10時間以上」に拡大されるのは雇用保険の適用要件であり、2028年10月施行予定の別の制度改正である。社会保険と雇用保険は制度が異なるため、混同しないよう注意されたい。

Q3. 130万円の壁はなくなるのですか?

A3. 130万円の壁(健康保険の被扶養者認定基準)は撤廃されない。ただし、2026年4月から判定基準が「実際の年間収入」から「雇用契約に基づく収入見込み」に変更された。これにより、繁忙期の残業で一時的に130万円を超えた場合でも、契約上の収入見込みが130万円未満であれば扶養を継続できるようになった。逆に、契約上の収入見込みが130万円以上であれば、実際の収入が130万円未満であっても扶養に入れなくなる点に注意が必要である。

Q4. 社会保険に加入すると手取りはどのくらい減りますか?

A4. 月額報酬や年齢(40歳以上は介護保険料が加算)により異なるが、概ね報酬の約14~15%が本人負担の保険料として給与から控除される。例えば、月額報酬8万円の場合は月額約1.2万円(年額約14.4万円)、月額報酬10万円の場合は月額約1.4万円(年額約16.7万円)が手取りから減少する。なお、2026年10月1日に始まった保険料調整制度(年金制度改正法〔令和7年法律第74号〕附則第22条・同法附則第24条)により、事業主が申し出た場合に限り、事業主が保険料負担割合を増やして本人負担を軽減することができる。自動的に適用されるものではなく、勤務先が申し出ているかを確認する必要がある。対象は標準報酬月額126,000円以下の被保険者に限られるほか、事業所側にも対象要件があり、既に適用済みの事業所の多くは対象外である。申出書の様式は日本年金機構が公表している。また、社会保険加入により将来の老齢厚生年金が増額される(本記事が扱う月額報酬6.8万〜12.0万円の範囲で加入1年あたり年額約5,800〜7,800円の上乗せ。受給開始後は生涯にわたって毎年上乗せされる)ほか、傷病手当金・出産手当金の受給権が発生する。

Q5. うちの会社は従業員40人ですが、2026年10月から対応が必要ですか?

A5. 2026年10月時点の企業規模要件は「従業員51人以上」であるため、従業員40人の企業は2026年10月の段階では対象外である。ただし、2027年10月には企業規模要件が「36人以上」に引き下げられるため、従業員40人の企業は2027年10月から適用対象となる。なお、従業員数のカウントはフルタイム相当の被保険者数で判定するため、パートタイマーの多い企業では実際のカウント数が異なる場合がある。

Q6. パート従業員が「社会保険に入りたくない」と言った場合、加入させなくてもよいですか?

A6. 適用要件を満たす従業員を社会保険に加入させることは事業主の法的義務であり、本人の同意・希望は要件ではない。加入を希望しないことを理由に未加入のまま放置した場合、年金事務所の調査により遡及加入(最大2年分の保険料遡及徴収)を命じられ、延滞金が発生するリスクがある。厚生年金保険法第27条の届出義務に違反した場合、同法第102条第1項第1号に基づき、6か月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金が科される可能性もある。従業員には社会保険加入のメリットを丁寧に説明した上で、法的義務である旨を伝えることが適切な対応である。

Q7. キャリアアップ助成金はいつまでに申請すればよいですか?

A7. 2026年10月時点で新たに取組を行う場合に対象となるのはキャリアアップ助成金「短時間労働者労働時間延長支援コース」である。旧「社会保険適用時処遇改善コース」は令和8年3月末までに取組を行った事業主が対象で、新規の対象期間は終了している。短時間労働者労働時間延長支援コースを利用する場合、キャリアアップ計画書をコース実施の前日(社会保険加入日の前日)までに管轄の労働局に提出する必要がある(旧コースの計画届を提出済みなら再提出は不要)。計画書の提出なしに社会保険に加入させた場合、事後的な助成金申請は認められない。賃金要件の撤廃は施行済みのため、新たに社会保険に加入させる従業員が見込まれる場合は、加入日の前日までに計画書を提出しておくことが望ましい。支給申請は、取組を6か月間継続した後、2か月以内に行う(2年目の取組がある場合は2年目分もさらに6か月継続後、2か月以内)。支給額は1年目・2年目の取組内容に応じて労働者1人あたり最大75万円(小規模企業の場合。中小企業は最大60万円、大企業は最大45万円)であり、複数の対象者がいる場合は人数分の申請が可能である。


免責事項

本記事は、2026年10月5日時点で公表されている年金制度改正法(令和7年法律第74号)、厚生労働省公表資料、e-Gov法令検索の条文及び関連する省令・通達等に基づき作成した一般的な解説記事である。月額8.8万円要件(106万円の壁)は2026年10月1日に撤廃された。制度の詳細は政省令・通達により定められており、今後も改正されうるため、最終的な運用は所管官庁(厚生労働省・日本年金機構)の案内を確認されたい。保険料率・助成金の支給額等は年度により変動する。個別の適用判断や届出手続きについては、管轄の年金事務所又は社会保険労務士に相談されることを推奨する。本記事の内容に基づく判断・手続きにより生じた損害について、筆者及び運営者は一切の責任を負わない。


参考文献・法令等

法令

  • 年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律(令和7年法律第74号)(2025年6月13日成立)。附則第22条・第24条・第25条・附則別表第二・第三(保険料調整制度。厚生年金保険法・健康保険法本体の改正条ではなく、本改正法自体の附則として新設)
  • 厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)第9条、第12条、第27条、第102条
  • 健康保険法(大正11年法律第70号)第3条第7項(被扶養者の定義)
  • 国民年金法(昭和34年法律第141号)第7条第1項第2号

通知

  • 「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて」(令和7年10月1日付 保保発1001第3号・年管管発1001第3号)

厚生労働省資料

  • 厚生労働省「年金制度改正法(令和7年法律第74号)の概要」
  • 厚生労働省年金局「社会保険適用拡大に関する今後のスケジュールについて」
  • 厚生労働省「キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)のご案内」(新規の対象期間は令和8年3月末で終了)
  • 厚生労働省「キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長支援コース)のご案内」(リーフレット、令和8年4月版)
  • 厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト」
    https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/

日本年金機構

  • 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大について」
    https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/tanjikan.html
  • 日本年金機構「適用事業所と被保険者」
    https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150518.html
  • 日本年金機構「保険料調整制度のご案内」(更新日2026年9月11日)
    https://www.nenkin.go.jp/tokusetsu/hokenryochosei.html
  • 日本年金機構「2026年10月1日から短時間労働者に係る賃金要件の撤廃と最低賃金の減額特例の対象者に関する制度が始まります!」(チラシ)
    https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.files/tirashi_gengaku.pdf
  • 日本年金機構 賃金要件の撤廃・最低賃金の減額特例に関するQ&A(PDF)
    https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.files/gengakutokureiQA.pdf
  • 日本年金機構「労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いについて」(更新日2026年5月1日)
    https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/jigyosho/2026/202605/0501.html

その他

  • 社会保障審議会年金部会「年金制度改正に関する議論の整理」(2024年12月25日)
  • 全国社会保険労務士会連合会「社会保険適用拡大への実務対応ガイド」
JG

実務ガイド編集部

AI執筆 + 編集部レビュー済み

本記事はAIが初稿を作成し、編集部が法令原文・官公庁通知・審議会資料等の一次情報と照合のうえ、内容を確認・編集しています。行政手続き・法改正・制度改正の実務情報を専門に扱う編集チームが、企業実務担当者・士業専門家向けに正確性の高いコンテンツを提供します。