社会保険適用拡大2026年|106万円の壁の撤廃時期と週20時間ルールを早わかり

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社会保険適用拡大2026年|106万円の壁の撤廃時期と週20時間ルールを早わかり
目次

最終更新日: 2026年8月

【結論】 月額8.8万円要件(106万円の壁)は年金制度改正法(令和7年法律第74号)で撤廃が決まっているが、施行日は政令未制定のため未定。法律上の期限は公布日(2025年6月20日)から3年以内で、e-Gov上の予定日は法定上限の2028年6月19日である。2026年10月1日に施行されるのは、事業主の申出により短時間被保険者の保険料負担を軽減できる経過措置(厚生年金保険法附則第22条)であり、適用拡大でも壁の撤廃でもない。週20時間要件は維持。企業規模要件は2027年10月「36人以上」→2035年10月全企業適用へ段階縮小、130万円の壁は2026年4月から契約ベース判定に変更。

【2026年8月7日 重要な訂正】 本記事は当初、「2026年10月1日に106万円の壁が撤廃される」と記載していました。e-Gov法令APIで厚生年金保険法の条文を時点別に照合したところ、月額8.8万円要件(第12条第1項第5号ロ)は2026年10月1日時点で条文上そのまま存在し、削除されるのは政令で定める日(未制定)であることが確認されたため、該当箇所をすべて訂正しました。詳細は「106万円の壁はいつ撤廃されるのか」の節をご覧ください。

2025年6月13日に成立し同年6月20日に公布された年金制度改正法(令和7年法律第74号)により、短時間労働者の社会保険適用要件が段階的に見直される。最大の変更点は、適用要件のうち「月額賃金8.8万円以上(年収約106万円)」の要件が撤廃されることであるが、この撤廃の施行日は「公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日」とされており、本記事執筆時点(2026年8月)で政令は制定されていない。週20時間以上の勤務要件は維持される。一方、企業規模要件は現行の「従業員51人以上」から2027年10月以降段階的に縮小され、2035年10月に撤廃される。130万円の壁についても、2026年4月から判定基準が「実際の収入」から「契約上の収入見込み」に変更される。本記事では、改正法の全体像・撤廃時期をめぐる現状・企業規模要件の段階的スケジュール・保険料負担のシミュレーション・企業が講ずべき実務対応を体系的に整理する。

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改正の全体像:何がどう変わるのか

年金制度改正法(令和7年法律第74号)の概要

2025年6月13日に成立した年金制度改正法は、短時間労働者のセーフティネット拡充と「年収の壁」問題の解消を目的とする包括的な改正である。社会保険適用拡大に関する主な改正事項は以下のとおりである。

改正事項 改正前(現行) 改正後 施行日
月額賃金要件(106万円の壁) 月額8.8万円以上 撤廃 政令未制定のため未定(法律上の期限は公布日から3年以内=2028年6月19日)
企業規模要件 従業員51人以上 段階的に縮小→撤廃 2027年10月~2035年10月
週所定労働時間 20時間以上 20時間以上(変更なし)
学生除外 学生は適用除外 学生は適用除外(変更なし)
雇用期間要件 2か月超の雇用見込み 2か月超の雇用見込み(変更なし)
130万円の壁(判定基準) 実際の年間収入で判定 契約上の収入見込みで判定 2026年4月1日
保険料の経過措置 なし 事業主が申し出た場合、短時間被保険者に係る事業主の保険料負担割合を増加(=本人負担を軽減)できる。増加幅は標準報酬月額の等級別(厚生年金保険法附則第22条) 2026年10月1日

根拠: 年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律(令和7年法律第74号)

改正の背景と立法趣旨

今回の改正は、以下の政策課題への対応として位置づけられている。

政策課題 現状の問題点 改正による対応
年収の壁による就業調整 106万円・130万円を超えないよう労働時間を抑制 106万円の壁を撤廃し就業調整のインセンティブを低減
パートタイム労働者の老後保障 国民年金のみ(月額約6.8万円)の層が多い 厚生年金への加入により将来の年金受給額を増加
人手不足への対応 壁を意識した就業調整が人手不足を助長 壁の撤廃により労働供給量の増加を促進
社会保険の制度間公平性 企業規模により適用される・されないの差が存在 企業規模要件の段階的撤廃で制度間格差を解消


106万円の壁はいつ撤廃されるのか

撤廃は決まっているが、施行日は未定

結論から述べる。月額8.8万円要件(106万円の壁)の撤廃は法律で決まっているが、その施行日は本記事執筆時点(2026年8月)で確定していない。

年金制度改正法(令和7年法律第74号、正式名称「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」)の附則第1条は、施行期日をこう定めている。

この法律は、公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

公布日は2025年6月20日であるため、法律上の期限は2028年6月19日である。e-Gov法令検索が表示する「施行予定日 2028-06-19」は、政令で確定した日ではなくこの法定上限を機械的に置いたものであり、法令データ上の施行日(amendment_enforcement_date)は空欄のままである。

政令で定める日をいつにするかの判断基準は、法文上は明示されていない。報道等では最低賃金の水準を見極めたうえで判断するとの見方が示されているが、本記事更新時点で判断基準を示す一次資料(政令・告示・厚生労働省の公表資料)は確認できていない。したがって、撤廃時期を確定的に述べる情報には注意が必要である。最新の状況は厚生労働省・日本年金機構の公表を直接確認されたい。

2026年10月1日に施行されるもの

では2026年10月1日には何が起きるのか。e-Gov法令APIで厚生年金保険法の条文を2026年9月30日時点と10月1日時点で全件比較したところ、新設される条は1つだけであった。

施行日 新設・改正される条 内容
2026年10月1日 厚生年金保険法附則第22条(新設)
短時間被保険者に係る厚生年金保険料に関する経過措置
事業主が実施機関に申し出た場合、短時間被保険者に係る事業主の保険料負担割合を増加させることができる(=本人負担が軽減される)。増加幅は標準報酬月額の等級別に定められ、申出は基準日から2年以内

適用要件の変更ではなく、保険料の負担割合に関する事業主の選択肢である。しかも申出は事業主の任意であり、申し出なければ何も変わらない。

なお、月額8.8万円要件が置かれている厚生年金保険法第12条第1項第5号ロは、2026年10月1日時点でも、2028年6月18日時点でも条文上そのまま存在している。

現行の短時間労働者の適用要件と改正後の比較

現行制度では、短時間労働者が社会保険(厚生年金保険・健康保険)に加入するためには、以下の5要件をすべて満たす必要がある。改正後の変更点を対比する。

要件 現行(2024年10月~) 改正後 施行日
1. 週所定労働時間 20時間以上 20時間以上(変更なし)
2. 月額賃金 8.8万円以上(年収約106万円) 要件撤廃 政令未制定のため未定(期限2028年6月19日)
3. 雇用期間見込み 2か月超 2か月超(変更なし)
4. 学生除外 学生は適用除外 学生は適用除外(変更なし)
5. 企業規模 従業員51人以上 段階的に縮小 2027年10月~2035年10月

撤廃される「月額8.8万円」要件の意味

月額賃金8.8万円(年収換算で約106万円)の要件は、2016年10月の適用拡大時に設けられたものである。この要件により、週20時間以上勤務していても月額賃金が8.8万円未満であれば社会保険への加入義務が生じなかった。

改正のポイント 内容
撤廃される基準 月額賃金8.8万円以上(年収約106万円)
撤廃後の判定 賃金額にかかわらず、週20時間以上勤務であれば適用対象
影響を受ける層 週20時間以上勤務かつ月額8.8万円未満の短時間労働者
影響人数(推計) 段階的拡大の全過程で累計約200万人が新たに適用対象(賃金要件の撤廃時期が政令未定のため、この人数が現実化する時期も未定

週20時間の判定基準

月額賃金要件が撤廃されることで、「週所定労働時間20時間以上」の判定がこれまで以上に重要になる。

判定項目 基準
判定の対象 雇用契約書に記載された「所定労働時間」
残業時間の扱い 所定外労働時間(残業)は含まない
シフト制の場合 月ごとのシフトで判定せず、契約上の所定労働時間で判定
繁忙期の取扱い 繁忙期のみ20時間超でも、契約上20時間未満なら適用外
実態との乖離 2か月連続で実労働が週20時間以上 → 3か月目から適用の可能性

企業規模要件の段階的縮小スケジュール

企業規模要件の推移(2016年~2035年)

短時間労働者への社会保険適用における企業規模要件は、2016年の導入以来、段階的に縮小されてきた。今回の改正法により、最終的に2035年10月にすべての企業規模で適用される。

施行時期 企業規模要件(従業員数) 根拠法令 新規適用対象(推計)
2016年10月 501人以上 年金機能強化法(平成24年法律第62号) 約25万人
2022年10月 101人以上 年金制度改正法(令和2年法律第40号) 約45万人
2024年10月 51人以上 同上 約65万人
2027年10月 36人以上 年金制度改正法(令和7年法律第74号)
2029年10月 21人以上 同上
2032年10月 11人以上 同上
2035年10月 要件撤廃(全企業) 同上

従業員数のカウント方法

企業規模要件における「従業員数」は、厚生年金保険の被保険者数をもとにカウントする。

カウント対象 含む/含まない
フルタイムの正社員 含む
週所定労働時間がフルタイムの3/4以上のパート 含む
短時間労働者(週20時間以上、かつ適用要件を満たす者) 含まない
役員 含まない(ただし使用関係がある場合は含む)
派遣労働者 含まない(派遣元でカウント)
判定方法 内容
判定時点 直近12か月のうち6か月以上で基準を満たすかで判定
法人単位/事業所単位 法人単位で判定(同一法人内の全事業所を合算)
グループ会社 グループ会社間では合算しない(法人ごとに判定)


130万円の壁:判定基準の変更

130万円の壁とは

130万円の壁は、健康保険の被扶養者認定基準であり、被保険者(配偶者等)の扶養に入るための年収要件である。130万円を超えると被扶養者資格を喪失し、自ら国民健康保険・国民年金に加入するか、勤務先の社会保険に加入する必要がある。

項目 内容
基準額 年間収入130万円未満(月額換算:108,333円)
60歳以上・障害者 年間収入180万円未満(月額換算:150,000円)
対象収入 給与収入のほか、通勤手当・各種手当を含む総収入
判定主体 被保険者の加入する健康保険の保険者(協会けんぽ・健保組合)

2026年4月からの判定基準変更

130万円の壁自体は撤廃されないが、2026年4月から判定の基準が変更される。

判定基準 現行 2026年4月以降
判定の考え方 過去の実際の収入で判定 雇用契約に基づく収入見込みで判定
繁忙期の残業 残業で一時的に130万円超 → 扶養を喪失する可能性 契約上の所定内賃金が130万円未満なら扶養を継続
判定のタイミング 年間収入の実績を事後的に確認 契約締結時・更新時に収入見込みを確認
保険者への届出 実績ベースで被扶養者異動届を提出 契約変更時に届出
具体例 現行の判定 改正後の判定
契約上は月額10万円(年収120万円)だが、残業で年間135万円になった 扶養喪失の可能性あり 扶養継続(契約ベースで120万円<130万円)
契約上は月額11万円(年収132万円)だが、欠勤で年間125万円に収まった 扶養継続の余地あり 扶養喪失(契約ベースで132万円≧130万円)

保険料負担のシミュレーション

社会保険料の基本構造

社会保険に加入した場合、労使折半で保険料を負担する。主な保険料率は以下のとおりである(2026年度の見込み値)。

保険種別 保険料率(合計) 本人負担 事業主負担
厚生年金保険 18.300% 9.150% 9.150%
健康保険(協会けんぽ全国平均) 約10.00% 約5.00% 約5.00%
介護保険(40歳以上) 約1.60% 約0.80% 約0.80%
合計(40歳未満) 約28.30% 約14.15% 約14.15%
合計(40歳以上) 約29.90% 約14.95% 約14.95%

月額報酬別の保険料負担シミュレーション

月額8.8万円要件の撤廃後(施行日は政令未定)に新たに社会保険に加入する主な層の保険料負担を試算する(40歳未満、協会けんぽ全国平均の場合)。

月額報酬 年収(概算) 標準報酬月額 本人負担(月額) 本人負担(年額) 事業主負担(年額)
6.8万円 約82万円 68,000円 約9,600円 約11.5万円 約11.5万円
7.8万円 約94万円 78,000円 約11,000円 約13.2万円 約13.2万円
8.0万円 約96万円 80,000円 約11,300円 約13.6万円 約13.6万円
8.8万円 約106万円 88,000円 約12,500円 約15.0万円 約15.0万円
10.0万円 約120万円 98,000円 約13,900円 約16.7万円 約16.7万円
12.0万円 約144万円 118,000円 約16,700円 約20.0万円 約20.0万円

手取り額への影響

社会保険に新規加入した場合の手取り額の変化を、代表的な年収帯で示す。

【関連記事】 社会保険加入による保険料負担は、同時期に施行される2026年税制改正(基礎控除引上げ・給与所得控除拡充)との組み合わせで世帯手取りが決まります。記事15の「社会保険料を加味した世帯手取りシミュレーション」と併せてご確認ください。

年収 改正前の手取り(概算) 改正後の手取り(概算) 手取り減少額(年額) 将来の年金増加額(年額・概算)
82万円 約82万円 約70.5万円 約11.5万円 約2.4万円/年(加入1年あたり)
96万円 約96万円 約82.4万円 約13.6万円 約2.8万円/年
106万円 約91万円※1 約91万円※2 ±0円 約3.1万円/年
120万円 約103.3万円 約103.3万円 ±0円 約3.5万円/年

※1 現行制度で106万円超・社会保険加入の場合
※2 改正後も同額の場合

保険料の経過措置(2026年10月1日施行)── 事業主の申出制

2026年10月1日に施行されるのは、この経過措置である。厚生年金保険法附則第22条として新設される。

項目 内容
制度の性質 事業主が実施機関(厚生労働大臣・日本私立学校振興・共済事業団)に申し出た場合に適用される任意の特例。申し出なければ適用されない
効果 短時間被保険者に係る事業主の保険料負担割合を増加させることができる。増加した分、本人負担が軽減される
増加幅 標準報酬月額の等級別に定められる(附則別表第二)。第一級は100分の25に2分の1を乗じた割合、第二級は100分の20に2分の1、第三級は100分の14に2分の1、というように低い等級ほど大きい
申出の期限 基準日から起算して2年を経過した日が属する月の前月まで
基準日 2026年10月1日以後に申出をした事業主の適用事業所は当該申出が受理された日。特定労働者10人以下の事業所は2035年10月1日、など事業所規模により異なる

キャリアアップ助成金の活用

社会保険適用時処遇改善コース

社会保険適用拡大に伴い、キャリアアップ助成金に「社会保険適用時処遇改善コース」が設けられている。2025年7月以降、新コースの申請が可能となっている。

項目 内容
対象事業主 短時間労働者を新たに社会保険に加入させた事業主
対象労働者 新たに社会保険の被保険者となった短時間労働者
支給額 1人あたり最大50万円(中小企業の場合)
申請期限 対象労働者の社会保険加入後6か月経過後に申請
要件 処遇改善(賃金の引上げ等)を行った上で社会保険に加入させること

助成金の活用パターン

パターン 処遇改善の内容 助成額(中小企業)
手当等の支給 社会保険適用促進手当の支給(本人負担分相当額) 最大20万円/人
賃上げ 基本給の引上げ(3%以上等) 最大30万円/人
労働時間延長 週所定労働時間を延長し処遇改善 最大30万円/人
併用 上記を組み合わせて実施 最大50万円/人

企業が講ずべき実務対応

対応スケジュール

注意:撤廃日が政令未定である以上、「2026年10月に一斉加入が発生する」前提のスケジュールは組めない。直近で確実に判断が必要なのは、2026年10月1日施行の保険料経過措置(事業主申出制)に申し出るかどうかである。

時期 対応事項 担当部門
2026年4月(実施済み) 130万円の壁判定基準変更への対応(雇用契約書の確認・整備) 人事・総務
2026年9月まで 保険料経過措置に申し出るかの判断。申し出た場合の自社負担増を試算し、人材確保上のメリットと比較する 経理・人事
2026年10月 経過措置の申出(申し出る場合)。増加負担割合の等級区分を給与計算システムに反映 経理・人事
随時 週20時間以上・月額8.8万円未満のパート従業員のリスト整備。撤廃の政令が公布されてから着手したのでは間に合わない 人事・総務
政令公布後 対象者への説明会、キャリアアップ助成金の計画書提出(加入の提出が必須)、資格取得届の準備 人事
2027年10月 企業規模要件が「36人以上」に縮小(施行日確定)。36〜50人規模の事業所は新たに適用対象となる 人事・総務
2029年10月/2032年10月/2035年10月 企業規模要件が21人以上/11人以上/全企業へ順次縮小 人事・総務

業種別の影響度

パートタイム労働者の比率が高い業種ほど、今回の改正による影響が大きい。

業種 パート比率 影響度 主な対応課題
小売業・スーパー 極めて高い 極めて高い 多数のパート従業員の一斉加入対応、保険料コスト増
飲食業 極めて高い 極めて高い シフト管理の見直し、短時間勤務者の契約再設計
介護・福祉 高い 高い 処遇改善加算との連動、人材確保策としての活用
物流・倉庫 高い 高い 繁忙期の実労働時間管理、就業調整への対応
製造業(工場ライン) 中程度 中程度 ライン作業の短時間パートの扱い
事務・オフィスワーク 中程度 中程度 契約社員・派遣との整合性確認

今すぐやること:社会保険適用拡大 対応チェックリスト

賃金要件の撤廃時期が政令未定である以上、期日を切ったスケジュールは組めない。以下は「政令公布を待たずに今できること」と「政令公布後にただちに着手すること」に分けて整理する。

政令公布を待たずに、いま進めておくこと

  • 適用対象者の洗い出しを行う(人事・総務):週所定労働時間20時間以上のパート・アルバイト従業員を全事業所から抽出し、一覧表を作成する。月額賃金8.8万円未満で現在は対象外の層を特に確認。この作業は政令公布後に始めたのでは間に合わない
  • 企業規模要件の該当確認を行う(人事・総務):法人全体のフルタイム相当従業員数をカウントし、現行の「51人以上」を満たすか、また2027年10月の「36人以上」基準(施行日確定済み)に該当する見込みかを確認
  • 保険料コストの年間試算を実施する(経理):新規加入対象者の標準報酬月額を算定し、厚生年金保険料・健康保険料の企業負担額を年間ベースで算出。経営層に報告し予算措置を協議
  • 2026年10月施行の保険料経過措置に申し出るか判断する(経理・人事):申し出れば自社の保険料負担は増えるが、パート従業員の手取り減少を緩和できる。申出期限は基準日から2年

政令公布後、ただちに着手すること

  • キャリアアップ助成金のキャリアアップ計画書を提出する(人事):社会保険適用時処遇改善コースの活用を検討し、管轄の労働局に計画書を提出。加入前に提出しなければ受給不可のため、公布後の最優先事項
  • パート従業員への説明会を実施する(人事):社会保険加入のメリット(傷病手当金・出産手当金・老齢厚生年金の上乗せ)と保険料負担を個別にシミュレーションした資料を配布
  • 雇用契約書を確認・更新する(人事・法務):週所定労働時間・月額賃金の記載を正確にし、130万円判定基準変更に対応した契約内容に整備
  • 給与計算システムの社会保険設定を準備する(経理):新規被保険者の資格取得届作成・保険料控除開始の設定を確認

中期:2027年以降

  • 企業規模要件の段階的縮小に備える(経営企画・人事):2027年10月「36人以上」、2029年10月「21人以上」に向けた準備を計画的に進める。特に従業員数がボーダーライン上の企業は毎月の従業員数を記録
  • パート従業員の処遇体系を見直す(人事):社会保険加入を前提とした賃金設計・労働時間設計に移行し、「壁」を意識しない働き方を推進
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FAQ:社会保険適用拡大でよくある質問

A

全員ではない。撤廃されるのは「月額賃金8.8万円以上」の要件のみであり、「週所定労働時間20時間以上」「2か月超の雇用見込み」「学生でないこと」「企業規模要件を満たす事業所に勤務」の要件は維持される。これらすべてを満たす場合に社会保険の加入義務が生じる。逆に言えば、週所定労働時間が20時間未満のパート従業員は、改正後も社会保険の適用対象外である。

A

社会保険(厚生年金保険・健康保険)の適用基準は「週20時間以上」のまま変更されない。「10時間以上」に拡大されるのは雇用保険の適用要件であり、2028年10月施行予定の別の制度改正である。社会保険と雇用保険は制度が異なるため、混同しないよう注意されたい。

A

130万円の壁(健康保険の被扶養者認定基準)は撤廃されない。ただし、2026年4月から判定基準が「実際の年間収入」から「雇用契約に基づく収入見込み」に変更される。これにより、繁忙期の残業で一時的に130万円を超えた場合でも、契約上の収入見込みが130万円未満であれば扶養を継続できるようになる。逆に、契約上の収入見込みが130万円以上であれば、実際の収入が130万円未満であっても扶養に入れなくなる点に注意が必要である。

A

月額報酬や年齢(40歳以上は介護保険料が加算)により異なるが、概ね報酬の約14~15%が本人負担の保険料として給与から控除される。例えば、月額報酬8万円の場合は月額約1.1万円(年額約13.6万円)、月額報酬10万円の場合は月額約1.4万円(年額約16.7万円)が手取りから減少する。なお、2026年10月1日施行の経過措置(厚生年金保険法附則第22条)により、事業主が申し出た場合に限り、事業主が保険料負担割合を増やして本人負担を軽減することができる。自動的に適用されるものではなく、勤務先が申し出ているかを確認する必要がある。また、社会保険加入により将来の老齢厚生年金が増額される(加入1年あたり年額約2~4万円の上乗せ)ほか、傷病手当金・出産手当金の受給権が発生する。

A

2026年10月時点の企業規模要件は「従業員51人以上」であるため、従業員40人の企業は2026年10月の段階では対象外である。ただし、2027年10月には企業規模要件が「36人以上」に引き下げられるため、従業員40人の企業は2027年10月から適用対象となる。なお、従業員数のカウントはフルタイム相当の被保険者数で判定するため、パートタイマーの多い企業では実際のカウント数が異なる場合がある。

A

適用要件を満たす従業員を社会保険に加入させることは事業主の法的義務であり、本人の同意・希望は要件ではない。加入を希望しないことを理由に未加入のまま放置した場合、年金事務所の調査により遡及加入(最大2年分の保険料遡及徴収)を命じられ、延滞金が発生するリスクがある。厚生年金保険法第27条に基づく届出義務違反として、6か月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金が科される可能性もある。従業員には社会保険加入のメリットを丁寧に説明した上で、法的義務である旨を伝えることが適切な対応である。

A

キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」を利用する場合、対象労働者の社会保険加入前にキャリアアップ計画書を管轄の労働局に提出する必要がある。計画書の提出なしに社会保険に加入させた場合、事後的な助成金申請は認められない。撤廃の政令公布後に慌てないよう、対象者が見込まれる事業所は先行して計画書を提出しておくことが望ましい。助成金の支給申請は、対象労働者の社会保険加入後6か月経過後に行う。支給額は処遇改善の内容に応じて1人あたり最大50万円(中小企業の場合)であり、複数の対象者がいる場合は人数分の申請が可能である。


免責事項

本記事は、2026年8月7日時点で公表されている年金制度改正法(令和7年法律第74号)、厚生労働省公表資料、e-Gov法令検索の条文及び関連する省令・通達等に基づき作成した一般的な解説記事である。月額8.8万円要件(106万円の壁)の撤廃時期は本記事更新時点で政令が未制定であり、確定していない。制度の詳細は今後公布される政省令・通達により確定するため、最終的な運用は所管官庁(厚生労働省・日本年金機構)の案内を確認されたい。保険料率・助成金の支給額等は年度により変動する。個別の適用判断や届出手続きについては、管轄の年金事務所又は社会保険労務士に相談されることを推奨する。本記事の内容に基づく判断・手続きにより生じた損害について、筆者及び運営者は一切の責任を負わない。


参考文献・法令等

法令

  • 年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律(令和7年法律第74号)(2025年6月13日成立)
  • 厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)第9条、第12条、第27条
  • 健康保険法(大正11年法律第70号)第3条第7項(被扶養者の定義)
  • 国民年金法(昭和34年法律第141号)第7条第1項第2号

厚生労働省資料

  • 厚生労働省「年金制度改正法(令和7年法律第74号)の概要」
  • 厚生労働省年金局「社会保険適用拡大に関する今後のスケジュールについて」
  • 厚生労働省「キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)のご案内」
  • 厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト」
    https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/

日本年金機構

  • 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大について」
    https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/tanjikan.html
  • 日本年金機構「適用事業所と被保険者」
    https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150518.html

その他

  • 社会保障審議会年金部会「年金制度改正に関する議論の整理」(2024年12月25日)
  • 全国社会保険労務士会連合会「社会保険適用拡大への実務対応ガイド」
JG

実務ガイド編集部

AI執筆 + 編集部レビュー済み

本記事はAIが初稿を作成し、編集部が法令原文・官公庁通知・審議会資料等の一次情報と照合のうえ、内容を確認・編集しています。行政手続き・法改正・制度改正の実務情報を専門に扱う編集チームが、企業実務担当者・士業専門家向けに正確性の高いコンテンツを提供します。