キャリアアップ助成金 申請フロー実務ガイド|正社員化コースの様式・差戻し回避まで

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キャリアアップ助成金 申請フロー実務ガイド|正社員化コースの様式・差戻し回避まで
目次

キャリアアップ助成金の正社員化コースは、有期・無期の非正規雇用労働者を正社員へ転換した中小企業に1人あたり最大80万円(重点支援対象者・有期→正規)を助成する制度です。ただし「キャリアアップ計画の事前提出」「就業規則への転換制度の規定」「転換後6か月の賃金3%以上増額」など順序と期限を1つでも外すと不支給になります。本記事は令和8年度(2026年度)版パンフレット・支給要領(厚生労働省、令和8年4月8日改定)を一次ソースとして、社労士に依頼せず自前で申請したい事業主向けに、申請フローを様式番号・提出期限つきでステップ解説し、差戻し・不支給になりやすいポイントと回避策までまとめます。

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免責事項
本記事は2026年7月23日時点で公開されている厚生労働省のキャリアアップ助成金パンフレット(令和8年度版)・支給要領(令和8年4月8日付)・Q&Aに基づく一般的な解説です。助成金の要件・支給額・様式は年度途中でも変更される場合があり、個別の支給可否は事業所を管轄する都道府県労働局・ハローワークの判断によります。実際の申請にあたっては必ず最新のパンフレット・支給要領を確認し、判断に迷う場合は管轄労働局または社会保険労務士にご相談ください。本記事の内容に基づく申請結果について、当サイトは責任を負いません。


この記事でわかること

  • キャリアアップ助成金の全体像と、正社員化コースの支給額・区分(重点支援対象者かどうかで4区分)
  • キャリアアップ計画書提出から支給申請までの申請フロー(各ステップの期限・必要書類・様式番号)
  • 差戻し・不支給になりやすい「順序ミス」「賃金3%未達」「就業規則不備」とその回避策
  • 令和8年度(2026年度)の変更点(情報公表加算の新設、社会保険適用時処遇改善コースの扱いなど)
  • 中小企業・大企業別の支給額シミュレーション(加算込みの計算例)

キャリアアップ助成金とは(コース全体像)

キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者・短時間労働者・派遣労働者といった非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップ(正社員化・処遇改善)を促進した事業主に対して助成する、厚生労働省の雇用関係助成金です。財源は全額事業主負担の雇用保険二事業でまかなわれており、管轄は厚生労働省 → 都道府県労働局 → ハローワークという系統になります。

コースは大きく「正社員化支援」と「処遇改善支援」の2系統に分かれます。令和8年度版パンフレットに掲載されている主なコースは次のとおりです。

系統 コース 概要
正社員化支援 正社員化コース 有期・無期雇用労働者を正社員転換
正社員化支援 障害者正社員化コース 障害のある有期・無期雇用労働者を正社員転換(別パンフレット)
処遇改善支援 賃金規定等改定コース 基本給の賃金規定等を3%以上増額改定
処遇改善支援 賃金規定等共通化コース 正社員と共通の賃金規定等を新設・適用
処遇改善支援 賞与・退職金制度導入コース 賞与・退職金制度を新設
処遇改善支援 短時間労働者労働時間延長支援コース 社会保険加入+労働時間延長(当分の間の暫定措置)

本記事では、最も利用が多く問い合わせも多い正社員化コースを中心に、申請実務を解説します。同じ「補助金・助成金」でも、経済産業省系のデジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)の申請方法小規模事業者持続化補助金とは所管・財源・審査の考え方が大きく異なる点に注意してください。キャリアアップ助成金は「採択(競争)」ではなく「要件を満たせば支給される」タイプですが、その分、要件充足の証拠づくり(書類・順序)がすべてです。


正社員化コースの支給額と区分

先に確認:対象外となる主なケース
次のいずれかに該当する場合は、そもそも正社員化コースの対象になりません。支給額を見る前に確認してください(詳細は後述の「落とし穴4」を参照)。
– 正社員として雇用することを前提に雇い入れた有期雇用労働者
– 事業主・取締役の3親等以内の親族
– 転換日から定年までの期間が1年未満
新規学卒者で、雇入れ日から起算して雇用期間が1年未満の者(リーフレット逐語:「新規学卒者で雇入れ日から起算して雇用期間が1年未満の者については支給対象外となります」)

支給額(1人あたり)

正社員化コースの支給額は、対象労働者が「重点支援対象者」に該当するかどうかと、転換前の雇用形態(有期/無期)、企業規模(中小/大企業)で決まります。

対象者・企業規模 有期雇用労働者→正規 無期雇用労働者→正規
重点支援対象者・中小企業 80万円(40万円×2期) 40万円(20万円×2期)
重点支援対象者・大企業 60万円(30万円×2期) 30万円(15万円×2期)
上記以外・中小企業 40万円(40万円×1期) 20万円(20万円×1期)
上記以外・大企業 30万円(30万円×1期) 15万円(15万円×1期)

(出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金パンフレット」令和8年度版)

ポイントは、重点支援対象者は「2期制」で申請できることです。転換後6か月で第1期、さらに6か月継続雇用して第2期を申請することで、合計最大額を受けられます。重点支援対象者以外は1期のみです。

なお、支給申請の上限人数は1年度1事業所あたり20名(同一対象者の2回目=第2期申請を除く)です。

加算(3種)

基本額には、要件を満たせば次の加算が上乗せされます。いずれも「1事業所当たり」の加算であり、転換した人数分もらえるわけではありません(③情報公表加算は1事業所当たり1回のみ)。

加算 中小企業 大企業 主な条件(リーフレット逐語)
①正社員転換等制度を新たに規定 20万円 15万円 「正社員転換等制度を新たに規定し、当該区分に転換等した場合に加算」(1事業所当たり)
②多様な正社員制度を新たに規定 40万円 30万円 「多様な正社員制度(注)を新たに規定し、当該区分に転換等した場合に加算(注:勤務地限定・職務限定・短時間正社員いずれか1つ以上)」(1事業所当たり)
③情報公表加算 20万円 15万円 「正規雇用労働者への転換等に係る所定の情報を自ら管理するウェブサイトまたは職場情報総合サイト(しょくばらぼ)に公表した場合に加算」(1事業所当たり1回のみ)

(出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内」令和8年4月8日リーフレット)

①と②は同時には受けられません。多様な正社員制度を新たに規定して転換した場合は、①に代えて②が加算対象になります(どちらか一方)。③情報公表加算の公表要件の詳細は、後述の「令和8年度の主な変更点」を参照してください。

重点支援対象者とは

重点支援対象者は、次のa〜cのいずれかに該当する労働者です。

  • a:雇入れから3年以上の有期雇用労働者
  • b:雇入れから3年未満で、①雇入れ日の前日から過去5年間に正規雇用労働者だった期間が合計1年以下、かつ②雇入れ日の前日から過去1年間に正規雇用労働者として雇用されていない、の両方に該当する有期雇用労働者
  • c:派遣労働者(派遣先で正社員として直接雇用する場合)、母子家庭の母等または父子家庭の父、人材開発支援助成金の特定の訓練修了者

重点支援対象者bに該当する場合は、対象労働者本人が記入する「キャリアアップ助成金対象者確認票」(様式第3号 別添様式1-5)の添付が必要です。雇用された期間が通算5年を超える有期雇用労働者は無期雇用労働者とみなされるため、aには該当しない点に注意してください。

この「無期雇用労働者とみなす」扱いは、あくまでキャリアアップ助成金上のものです。労働契約法18条が定める無期転換ルール(有期労働契約の通算期間が5年を超えると労働者に無期転換の申込権が発生し、労働者が申込みをして初めて無期契約に切り替わる制度)とは別の話であり、労働者本人が無期転換の申込みをしていなくても、助成金の判定上は無期雇用労働者として扱われます。

ただし、この労働者が重点支援対象者cの定義(派遣労働者、母子家庭の母等、人材開発支援助成金の特定の訓練修了者)に該当する場合は、無期雇用労働者でありながら重点支援対象者に該当し得ます。この場合の支給額は「無期雇用労働者→正規」の重点支援対象者欄(中小40万円・大企業30万円)を参照してください。

また、正社員転換日の前日から過去3年以内に、当該事業主の事業所において無期雇用労働者として6か月以上雇用されたことがある場合(雇入れ当初は無期で、その後有期に切り替わったケースなど)も、対象労働者は有期雇用労働者ではなく無期雇用労働者として取り扱われます。支給額が半分になる分岐なので、有期・無期のどちらで申請するかは事前に必ず確認してください。

企業規模(中小企業)の判定

中小企業かどうかは、資本金または常時雇用する労働者数で判定します(いずれも支給申請時点)。

業種 資本金・出資総額 または 常時雇用する労働者数
小売業(飲食店を含む) 5,000万円以下 または 50人以下
サービス業 5,000万円以下 または 100人以下
卸売業 1億円以下 または 100人以下
その他の業種 3億円以下 または 300人以下

資本金と労働者数のいずれか一方を満たせば中小企業事業主として扱われます。


【本記事の核心】申請フロー ステップ・バイ・ステップ

正社員化コースの申請は、次の流れで進みます。この順序を1つでも入れ替えると不支給になるのが最大の落とし穴です。特に「キャリアアップ計画の提出は取組(転換)の前日まで」と「就業規則への転換制度の規定は転換より前」は、事後にやり直しがきかない期限です。

全体像

① キャリアアップ計画書を作成・提出(取組=転換の前日まで)
        ↓ 労働局が計画を受理
② 就業規則等に正社員転換制度を規定・労基署へ届出(転換より前)
        ↓
③ 有期・無期雇用労働者として6か月以上雇用(転換前の実績づくり)
        ↓
④ 就業規則の転換制度に基づいて正社員へ転換
        ↓
⑤ 転換後6か月分の賃金を支払う(転換前6か月比で3%以上増額)
        ↓
⑥ 支給申請(第1期)=6か月分賃金の支払日翌日から2か月以内
        ↓(重点支援対象者のみ)
⑦ さらに6か月継続雇用・賃金支払い後、支給申請(第2期)

ステップ① キャリアアップ計画書の提出(取組の前日まで)

まず、雇用保険適用事業所ごとに「キャリアアップ計画書(様式第1号)」を作成し、管轄の都道府県労働局長に提出します。

  • 提出期限:各コースの実施日(=正社員転換日)の前日まで。これが最重要期限です。計画未提出のまま転換してしまうと、その転換分は原則対象外になります。
  • 記載事項:キャリアアップ管理者の選任(必要な知識及び経験を有している者を充てる必要があり、複数の事業所および労働者代表との兼任はできません)、対象労働者、取り組むコース、計画期間(3年以上5年以内)など。
  • 意見聴取:有期雇用労働者等を含む事業所の「全ての労働者の代表」から意見を聴く必要があります。
  • 提出方法:窓口持参・郵送・電子申請(雇用関係助成金ポータル)のいずれか。

電子申請を選ぶ場合の注意:電子申請の入口は「雇用関係助成金ポータル」(https://www.esop.mhlw.go.jp/)です。ログインにはGビズID(1つのID・パスワードで様々な行政サービスにログインできる仕組み)が必要で、ポータルのトップページ「電子申請の流れ」→「GビズIDの取得はこちら」から申請・取得します。電子申請で支給申請まで行うには、キャリアアップ計画の届出をあらかじめ電子申請で行っている必要があり、その届出は正社員転換等の取組日の前日以前でなければなりません。紙で計画を届け出済みの場合でも、電子で新たに計画書を届け出ることは可能ですが、新しい計画期間は過去に遡及せず提出日の翌日以降が始期になります(この場合、新計画期間開始日以降の取組はそのコースの支給申請が原則電子になります。それより前の取組や、電子の計画を届け出ていないコースの取組は引き続き紙で支給申請できます)。また、支給申請を行うまでの間に、ポータルの「助成金を探す」ページから「支払方法・受取人住所届」を検索して入力・提出しておく必要があります。

計画書の内容は後から「キャリアアップ計画書(変更届)」で変更できますが、計画そのものを転換後に遡って提出することはできません

ステップ② 就業規則等への転換制度の規定・労基署届出

正社員転換制度が就業規則または労働協約に規定されていることが支給要件です。

  • 転換の手続き・要件(勤続年数・人事評価・所属長推薦など客観的に確認可能な基準)・実施時期を明示・周知する必要があります。
  • 常時10人以上の労働者を使用する事業場は、改定した就業規則を労働基準監督署へ届け出て受理印を受ける必要があります(10人未満の場合は労働者代表と事業主の氏名等を記載した申立書を添付)。
  • 就業規則は従業員に周知した日付で効力を持つため、原則として発効日と施行日は同日とします。監督署への届出は、遅くとも支給申請までに済ませてください(届出義務のある変更があるのに申請日までに届出がないと原則不支給)。

雇用契約書・労働条件通知書の整備も同時に必要です。記載すべき項目は雇用契約書の必須項目と実務ガイドを参照し、転換前後で雇用区分・労働条件が明確に分かる書類を残してください。

ステップ③ 転換前の6か月以上の雇用

対象労働者を、正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等の適用を受ける形で、転換日の6か月以上前から雇用している実績が必要です(転換前の雇用期間が6か月以上)。この期間の賃金台帳・出勤簿が後の3%増額判定の「前」側の基礎になります。

ステップ④ 正社員への転換

就業規則に規定した転換制度に基づいて、対象労働者を正規雇用労働者(または勤務地限定・職務限定・短時間正社員などの多様な正社員)へ転換します。転換日がキャリアアップ計画期間内にあることが必須です。試用期間を適用する場合は、原則として試用期間終了日の翌日を転換日とみなします。

ステップ⑤ 転換後6か月分の賃金支払い(3%以上増額)

転換後6か月間、継続して雇用し、賃金を支払います。転換後6か月間の賃金を、転換前6か月間の賃金より3%以上増額させていることが要件です。

  • 比較対象は「基本給+定額で支給される諸手当」の総額。
  • 原則は所定労働時間1時間あたりの賃金で比較しますが、転換前後で所定労働時間が変わらず支給形態がいずれも月給の場合は6か月間の賃金総額で比較します。
  • 実費弁償的な手当や毎月変動する手当は比較に含められません。
  • 増額率は小数点以下切捨てで3%以上が必要です(例:転換前120万円→転換後126万円で5%増=要件充足)。

ステップ⑥ 支給申請(第1期)

  • 申請期限:転換後6か月分の賃金を支払った日の翌日から起算して2か月以内
  • 提出先:事業所の所在地を管轄する都道府県労働局(ハローワーク経由で提出できる場合あり)。郵送の場合は到着日が申請期間内である必要があります。
  • 提出方法:窓口持参・郵送・電子申請(雇用関係助成金ポータル、GビズID必要)。

ステップ⑦ 支給申請(第2期・重点支援対象者のみ)

重点支援対象者は、転換後12か月以上継続雇用し、第1期の次の6か月分の賃金を支払った日の翌日から2か月以内に第2期を申請できます。第2期では、第1期と比較して合理的な理由なく賃金を引き下げていないことが要件です。

支給申請に必要な書類(第1期・主なもの)

書類 様式
キャリアアップ助成金支給申請書 様式第3号
正社員化コース内訳 様式第3号・別添様式1-1
正社員化コース対象労働者詳細 様式第3号・別添様式1-2
支給要件確認申立書 共通要領様式第1号
支払方法・受取人住所届(未登録・口座変更時)
受理されたキャリアアップ計画書(写) 様式第1号
正社員転換前後の就業規則または労働協約等(写)
対象労働者の転換前後の雇用契約書・労働条件通知書等(写)
転換前後の賃金台帳等(写)・3%増額計算書 賃金上昇要件確認ツール等
中小企業であることの確認書類 事業所確認票(様式第4号)

情報公表加算を受ける場合は「情報公表加算詳細」(様式第3号・別添様式1-6)を、重点支援対象者bの場合は「対象者確認票」(様式第3号・別添様式1-5)を追加で添付します。

様式の年度分岐に注意:令和8年4月8日以降の取組にはR8.4版の新様式を使います。パンフレット・支給要領には「キャリアアップ計画書(正社員化コース)R8.4版」「支給申請書(正社員化コース)R8.4版」の記入例が掲載されています。取組日によって使う様式が異なるため、必ず取組日に対応した最新様式をダウンロードしてください。


差戻し・不支給になりやすいポイントと回避策

要件を満たせば支給されるタイプの助成金だからこそ、「順序」と「証拠書類」の些細な不備が命取りになります。実務でつまずきやすい代表的な落とし穴と回避策を整理します。

落とし穴1:キャリアアップ計画を転換後に提出してしまう

最も多い失敗です。キャリアアップ計画書は転換日の前日までに労働局へ提出し、受理されている必要があります。「先に転換してしまい、後から計画を出そうとした」ケースは、その転換分が対象外になります。

  • 回避策:転換予定が固まった時点で、まず計画書を提出する。転換スケジュールから逆算し、計画受理→就業規則改定→転換の順を厳守。日程が動いたら変更届で調整する。

落とし穴2:就業規則の転換制度・労基署届出の不備

転換制度が就業規則に規定されていない、あるいは規定していても労基署への届出(10人以上事業場は受理印)が申請日までに間に合っていないと、原則不支給になります。転換の要件(勤続年数・評価基準・実施時期)が客観的に確認できる形で明示されていないケースも差戻し対象です。

  • 回避策:転換より前に就業規則へ転換制度を規定し、発効=施行を同日にして周知。改定就業規則は速やかに労基署へ届け出て受理印を受ける。10人未満の事業場は労働者代表と事業主氏名を記載した申立書を添付する。

落とし穴3:賃金3%増額が「わずかに」届かない

賃金増額は小数点以下切捨てで3%以上が必要です。「昇給したつもりが、比較に含められない手当で嵩上げしていて実質3%未満だった」「固定残業代の時間・総額を減らしていて、含める/含めないのどちらで比較しても3%を満たさなかった」といった失敗が起こります。

  • 回避策:比較に含められるのは基本給と就業規則等に決定・計算方法が記載された定額手当のみ。増額設計の段階で厚労省の「賃金上昇要件確認ツール」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000118801_00013.html)で試算し、余裕を持って3%を超える設計にする。固定残業代を減らす場合は含む・含まないの両方で3%以上を確認する。

落とし穴4:転換前の雇用区分・雇用期間の要件漏れ

転換前に「正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を6か月以上受けていること、転換前の雇用期間が6か月以上あることが要件です。「正社員として雇用することを前提に雇い入れた有期雇用労働者」や「事業主・取締役の3親等以内の親族」は対象外です。また、転換日から定年までの期間が1年以上ある必要があります。新規学卒者で、雇入れ日から起算して雇用期間が1年未満の者も支給対象外です。

  • 回避策:雇用契約書・労働条件通知書で転換前が非正規区分だったことを明確に残す。親族・正社員前提採用でないことを申立書等で確認。定年規定と転換日の関係を事前チェック。新規学卒者を対象にする場合は雇入れから1年経過しているか確認する。

落とし穴5:解雇・雇止め・処遇低下による支給要件喪失

正社員転換日の前日から起算して6か月前〜転換後1年を経過する日までの間に、雇用保険被保険者を事業主都合で解雇等により離職させていると不支給になります。非正規雇用労働者の処遇を低下させている場合も、制度趣旨に反するとして不支給の対象です。

  • 回避策:申請予定期間中の人員整理・雇止めのタイミングに細心の注意を払う。処遇改善が実態として認められる運用を維持する。

落とし穴6:申請期限(2か月以内)の失念

支給申請は6か月分の賃金支払日の翌日から2か月以内という短い窓しかありません。郵送の場合は到着日が期間内である必要があります。

  • 回避策:転換日から逆算して「6か月目の賃金支払日」「その翌日から2か月後」をカレンダーに登録。書類収集は転換直後から着手する。

令和8年度(2026年度)の主な変更点

令和8年4月8日付で支給要領・様式が改定されました。正社員化コース関連の主な変更点は次のとおりです。

変更点1:情報公表加算の新設(最大20万円)

令和8年4月8日以降に対象労働者を転換等する場合、正社員転換に関する所定の情報を「自ら管理するウェブサイト」(編集・公開・削除等の管理権限を事業主が有し、一般公開されているウェブサイト)または厚生労働省が運営する職場情報総合サイト「しょくばらぼ」に公表すると、1事業所あたり20万円(大企業15万円)が加算されます(1事業所1回のみ)。

公表が必要な情報は次の3点です。

  1. 正規雇用労働者への転換制度の概要。次の3点をあわせて公表する必要があります。
  2. 手続き(面接試験・筆記試験等)
  3. 転換の要件(勤続年数、人事評価結果、所属長の推薦等の客観的に確認可能な要件・基準等)
  4. 実施時期(転換または採用時期の明示。例「毎年4月・10月」「随時(評価結果による)」など)
  5. 直近3事業年度の転換等の実績。転換・直接雇用制度ごとに、当該申請事業所での転換人数を公表します。各年度ごとの記載でも3事業年度まとめての記載でも差し支えありません(新設企業等で実績がない場合は「0人(実績なし)」等と記載)。
  6. 転換等までに要した平均期間・最短の期間。平均期間=直近3事業年度で転換・直接雇用した者の、雇入日から転換・直接雇用の日の前日までの平均期間。最短の期間=そのうち日数が最も早かった労働者に係る日数。

公表日はキャリアアップ計画期間中かつ支給申請日までであること、支給申請日から少なくとも支給申請事業年度の終了までは公表を継続することが要件です。社内ポータルや会員登録が必要なサイト、求人サイトの企業ページ(管理権限が事業主にないもの)は公表場所として認められません。しょくばらぼへの掲載には「企業利用者申請」「企業独自情報入力」の審査に数営業日かかるため、時間に余裕を持って手続きしてください。

変更点2:社会保険適用時処遇改善コースの扱い

いわゆる「年収の壁」対策として設けられていた社会保険適用時処遇改善コースは、令和8年3月31日をもって廃止されました。令和8年4月1日以降に社会保険適用を行った場合は、同コースの対象外です。今後、短時間労働者の社会保険加入とあわせた処遇改善に取り組む場合は、短時間労働者労働時間延長支援コース(当分の間の暫定措置)が受け皿となります。すでに社会保険適用時処遇改善コースの計画届を提出済みの事業主は、経過的な取扱い・切替えの可否・申請区分を管轄労働局に確認してください。

変更点3:障害者正社員化コースの対象追加(別パンフレット)

障害者正社員化コースは正社員化コースとは別パンフレットで案内されており、本パンフレットには掲載されていません。令和8年度から、対象となる高次脳機能障害者の範囲が高次脳機能障害者支援法(令和7年法律第96号)第2条第2項に基づく法的定義へと整理されました(新規追加ではなく根拠の明確化)。詳細は障害者正社員化コース専用パンフレットで確認してください。

令和7年度以前との違い(要点)

項目 従来 令和8年度
情報公表加算 なし 新設(20万円/大企業15万円)
社会保険適用時処遇改善コース 暫定コースとして受付 経過措置・短時間延長コースへの切替え規定
様式 従前様式 R8.4版(4/8以降の取組)

支給額シミュレーション(加算込み)

前提を明示したうえで、代表的なケースの支給額を計算します。いずれも要件をすべて満たした場合の理論値であり、実際の支給を保証するものではありません。

ケースA:中小企業・重点支援対象者・有期→正規

  • 基本額:80万円(40万円×2期)
  • 転換制度を新たに規定:+20万円
  • 情報公表加算(しょくばらぼ等に公表):+20万円
  • 合計:120万円

(前提:雇入れ3年以上の有期雇用労働者を、新設した転換制度で正社員化し、転換後6か月・12か月とも賃金3%以上を維持、情報公表要件を充足した中小企業のケース)

ケースB:中小企業・重点支援対象者以外・有期→正規

  • 基本額:40万円(40万円×1期)
  • 情報公表加算:+20万円
  • 合計:60万円

(前提:既存の正社員転換制度が整備済みの場合。新規に転換制度を規定した場合はさらに+20万円で合計80万円)

ケースC:大企業・重点支援対象者・有期→正規

  • 基本額:60万円(30万円×2期)
  • 転換制度を新たに規定:+15万円
  • 情報公表加算:+15万円
  • 合計:90万円

多様な正社員(勤務地限定・職務限定・短時間正社員)制度を新たに規定して転換した場合は、①転換制度新設20万円(大企業15万円)に代えて、②多様な正社員制度新設40万円(大企業30万円)の加算対象となります(それぞれ1事業所1回のみ)。同一の助成対象行為について複数の助成金が申請された場合、併給調整で一方しか支給されないことがある点にも注意してください。

補助金・助成金の全体像や他制度との使い分けは、AI・DX導入で使える補助金・助成金一覧中小企業省力化投資補助金の実務ガイドもあわせて確認すると、雇用(厚労省系)と設備投資(経産省系)を横断した資金計画が立てやすくなります。


よくある質問(FAQ)

A

原則としてできません。キャリアアップ計画書は正社員転換日の前日までに労働局へ提出し、受理されている必要があります。すでに転換した労働者については、その転換分は対象外となる可能性が高いです。ただし、今後別の労働者を転換する予定があれば、その転換前に計画書を提出することで新たに対象にできます。個別の可否は管轄労働局にご確認ください。

A

増額率は小数点以下切捨てで3%以上が必要です。計算上ぎりぎり3%に届かせる設計は、比較に含められない手当の扱いや固定残業代の増減で要件を割り込むリスクがあります。厚生労働省の「賃金上昇要件確認ツール」で試算し、余裕をもって3%を上回る設計にすることをおすすめします。

A

申請できます。ただし正社員転換制度は就業規則または労働協約その他これに準ずるものに規定されている必要があります。常時10人未満の事業場の場合は、労基署への届出に代えて、労働者代表と事業主の氏名等を記載した申立書を添付した就業規則で足ります。転換制度が明文化・周知されていることが要件です。

A

最終的には都道府県労働局が支給審査で判断します。重点支援対象者bに該当する場合は、対象労働者本人が記入する「対象者確認票(様式第3号・別添様式1-5)」を添付します。虚偽記載は支給額の変更やトラブルの原因になるため、本人に正確に記入してもらってください。

A

いいえ。自社が管理・運営する一般公開のウェブサイトへの公表でも構いません。ただし社内ポータルや会員制サイト、求人サイトの企業ページ(管理権限が事業主にないもの)は認められません。しょくばらぼを使う場合は掲載審査に数営業日かかるため、公表日が計画期間中かつ支給申請日までに間に合うよう早めに手続きしてください。

A

できます。「雇用関係助成金ポータル」(https://www.esop.mhlw.go.jp/)からGビズIDを使って電子申請が可能です。ただし電子申請で支給申請するには、キャリアアップ計画書の段階から電子申請しておく必要があります(紙で計画書を提出した取組分は、支給申請も原則として紙になります)。すでに紙で計画を届け出ている場合でも、電子で新たに計画書を届け出れば以後の取組は電子で支給申請できます。ただしその新しい計画期間は過去に遡及せず、届出日の翌日以降が始期になる点に注意してください(それより前の取組は引き続き紙での支給申請になります)。GビズIDの取得には時間がかかるため、電子申請を予定する場合は早めに取得してください。


まとめ

キャリアアップ助成金の正社員化コースは、中小企業なら重点支援対象者の有期→正規転換で基本80万円、加算を含めれば1人あたり最大120万円規模になる、雇用系では大きな助成金です。一方で「採択」ではなく「要件充足の立証」がすべてであり、次の3点を外すと不支給になります。

  1. 順序:キャリアアップ計画(転換前日まで)→就業規則改定(転換前)→転換→6か月賃金支払い→支給申請(賃金支払日翌日から2か月以内)
  2. 賃金3%以上増額:比較に含める手当を正しく判定し、余裕をもって3%超を確保する
  3. 書類:就業規則の労基署届出、雇用契約書、賃金台帳など、要件充足を証明する書類を転換前から揃える

令和8年度(2026年度)は情報公表加算(最大20万円)が新設され、要件を満たせば支給額をさらに上乗せできます。取組日によって使う様式(R8.4版)が変わる点にも注意し、必ず厚生労働省の最新パンフレット・支給要領を確認したうえで、計画的に申請を進めてください。判断に迷う点は、管轄の都道府県労働局・ハローワークまたは社会保険労務士に相談することをおすすめします。

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出典・参考(一次ソース)
– 厚生労働省「キャリアアップ助成金」(事業主向けページ):https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html
– 厚生労働省「キャリアアップ助成金パンフレット」令和8年度版(PDF):https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001687992.pdf
– 厚生労働省「キャリアアップ助成金 支給要領」令和8年4月8日付(PDF):https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001688259.pdf
– 厚生労働省「キャリアアップ助成金 Q&A」令和8年度版(PDF):https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001687991.pdf
– 職場情報総合サイト「しょくばらぼ」:https://shokuba.mhlw.go.jp/

JG

実務ガイド編集部

AI執筆 + 編集部レビュー済み

本記事はAIが初稿を作成し、編集部が法令原文・官公庁通知・審議会資料等の一次情報と照合のうえ、内容を確認・編集しています。行政手続き・法改正・制度改正の実務情報を専門に扱う編集チームが、企業実務担当者・士業専門家向けに正確性の高いコンテンツを提供します。