妊娠中・産休復帰後の看護師の夜勤免除2026|労働基準法66条の使い方

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妊娠中・産休復帰後の看護師の夜勤免除2026|労働基準法66条の使い方
目次

最終更新日: 2026年8月22日

【結論】 妊娠が分かったときも、産休から復帰した直後も、看護師が夜勤を外れるために使える法律は一つではない。もっとも中心になるのが労働基準法66条3項である。この条文が保護の対象とする「妊産婦」は、64条の3第1項の定義により妊娠中の女性だけでなく、産後1年を経過しない女性も含む——つまり産休・育休から復帰したあとも、子が1歳になるまでの間、この条文は効き続ける。しかも66条3項には「ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない」という、育児・介護休業法19条にはある除外規定がない。妊産婦が請求すれば、事業主は原則としてこれを拒めない。ただし66条は「請求した場合においては」を要件としており、自分から言わなければ何も始まらない制度である。子が1歳を過ぎ、就学前までは育児・介護休業法19条に主役が切り替わり、こちらには「事業の正常な運営を妨げる場合」という除外規定がある。本記事は、この2つの法律がどの時期に切り替わるのか、どこが違うのか、請求の手続き、そして請求したことで不利益に扱われないための根拠条文を、条文原文で整理する。

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この記事の対象読者

  • 妊娠中で、夜勤を減らしたい・外れたいと考えている看護師
  • 産休・育休から復帰する予定で、復帰後の夜勤の扱いを事前に知っておきたい看護師
  • 部下やスタッフから相談を受ける立場の看護管理者・師長

本記事は「請求すれば何が起きるか」を条文から整理するものであり、特定の病院・転職支援サービスへの誘導は行わない。給与・年収の具体的な試算も扱わない。夜勤を外れた場合の収入や育児休業給付金の金額試算は、後述のとおり別記事にゆずる。


看護師の夜勤免除とは|3つの法律が別々の入口を用意している

「夜勤免除」とひとくくりに語られがちだが、根拠になる法律は妊娠・出産・育児のどの段階にいるかによって変わる。まず全体像として3つの法律の役割分担を押さえておく。

労働基準法66条3項

使用者は、妊産婦が請求した場合においては、深夜業をさせてはならない。

本記事の中心になる条文。「妊産婦」本人が請求すれば、事業主は深夜業(後述するとおり午後10時から午前5時までの労働)をさせてはならない、という本人の請求権である。

育児・介護休業法19条

事業主は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者……が当該子を養育するために請求した場合においては、午後十時から午前五時までの間……において労働させてはならない。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない。

66条の対象期間(産後1年)が終わったあと、就学前までをカバーする条文。請求権である点は66条と同じだが、「事業の正常な運営を妨げる場合」という除外規定が付いている点が異なる。

男女雇用機会均等法13条(医師等の指導があるとき)

事業主は……女性労働者が……保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするため、勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講じなければならない。

66条・19条が「本人の請求」を起点とするのに対し、均等法13条は医師または助産師の指導事項を起点とする。妊娠中の体調によっては、本人の請求とは別に、医師が「夜勤は避けるように」と指導すれば、それを事業主に伝えることで勤務時間の変更等の措置につながる。この指導事項を事業主に伝える書類が、後述する母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)である。


いつ・誰が・どれを使えるか|妊娠判明から就学前までの早見表

時期 使える主な条文 ポイント
妊娠判明〜産前休業前 均等法12条・13条(通院時間の確保・医師等の指導に基づく措置)、労基法65条3項(軽易業務転換)、64条の3(危険有害業務の就業制限) 医師の指導事項があれば母健連絡カードで伝える。軽易業務転換は本人の請求が要件
産前産後休業中 労基法65条1項(産前・本人請求)、65条2項(産後8週間は原則就業禁止) 産前は請求が要件だが、産後8週間は請求の有無にかかわらず就業禁止が原則
復帰〜産後1年 労基法66条1〜3項(変形労働時間制の制限・時間外/休日労働の制限・深夜業の制限) 66条3項が本記事の主題。産後1年までは自動的にこの条文の対象
産後1年〜就学前 育介法19条(深夜業の制限)、16条の8(所定外労働の制限)、17条(時間外労働の制限)、16条の2(子の看護等休暇) 66条から19条へ切り替わる。自動更新ではなく、改めて請求が必要

産後1年を境に、66条から19条へ切り替わるという構造を押さえておくと、自分がいまどの条文の対象かが分かる。


労働基準法66条の使い方|請求すれば、病院は断れない

「請求した場合においては」=自分から言わないと始まらない

66条1〜3項は、いずれも「妊産婦が請求した場合においては」という文言で始まる。これは、妊娠・出産・産後1年以内という事実だけで自動的に深夜業が免除されるわけではないということを意味する。請求して初めて、事業主に「深夜業をさせてはならない」という義務が発生する。

請求の方式そのものは条文に定めがない。口頭でも法的には請求として成立しうるが、いつ・誰に・どのような内容を請求したかが後で問題になった場合に備え、書面やメール等、記録が残る形で行うことが実務上は望ましい。

ただし書きがない、という意味

66条3項をもう一度見ると、「ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない」といった除外規定が存在しない。これは後述する育児・介護休業法19条との最大の違いである。19条には「事業の正常な運営を妨げる場合」という事業主側の拒否要件があるのに対し、66条3項には条文上そのような要件がない。産後1年以内の期間については、人員配置が厳しいことを理由に事業主が拒む法的な根拠を、66条3項自体は用意していない。

66条1項は二交代16時間夜勤にも効く(変形労働時間制との関係)

66条1項は次のように定めている。

使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第三十二条の二第一項、第三十二条の四第一項及び第三十二条の五第一項の規定にかかわらず、一週間について第三十二条第一項の労働時間、一日について同条第二項の労働時間を超えて労働させてはならない。

ここで名指しされている3つの条文は、いずれも法定労働時間(1日8時間・週40時間)の例外を認める変形労働時間制である。32条の2は1か月以内の期間を平均して労働時間を定める制度(通称「1か月単位」)、32条の4は1か月を超え1年以内の期間で定める制度(通称「1年単位」)、32条の5は1日について10時間まで認める制度(通称「1週間単位の非定型的変形労働時間制」)にあたる。これらの通称は条文の見出しではなく、規定されている期間の長さから一般に使われているものである。

看護現場に引きつけると、二交代制で1回の勤務が16時間を超えるような夜勤は、この変形労働時間制の届出を前提に成り立っている。日本看護協会「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」(2013年公表)も、1回の勤務拘束で実労働時間が8時間を超える2交代制・変則3交代制について、就業規則への定めまたは労使協定の締結と所轄労働基準監督署への届出(労基法32条の2)が必要であり、これを行わずに16時間夜勤を運用する例は「誤解に基づく法令違反」だと指摘している。66条1項は、この変形労働時間制が適用されている病棟であっても、妊産婦本人が請求すれば法定労働時間を超えて働かせてはならない、という制限をかける条文である。二交代の長時間夜勤に入っている、あるいは入る可能性がある妊産婦にとって、66条3項(深夜業そのものの制限)とあわせて押さえておく価値がある規定である。

違反した場合の罰則

労働基準法119条は、64条の3から67条まで(66条を含む)の規定に違反した者について、6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処するとしている。66条3項の請求を無視して深夜業をさせ続けた場合、事業主はこの罰則の直接の対象になりうる。

後述する育児・介護休業法19条には、これと同じ形の直罰規定はない。19条は違反があった場合、まず厚生労働大臣が事業主に報告を求め、助言・指導・勧告を行う(育介法56条)という行政指導の枠組みで担保されており、勧告に従わなかったときに初めて、その旨を公表できる(育介法56条の2)という段階を踏む。「罰則がない」ことは「守らなくてよい」ことを意味しない——勧告不服従の公表は事業主にとって軽くない社会的な制裁であり、また19条が請求権として持つ効力自体は罰則の有無とは別に存在する。この違いの詳細は次章で扱う。


産後1年を過ぎたら|育児・介護休業法19条へ引き継ぐ

産後1年を経過すると、66条の「妊産婦」の定義から外れる。ここから就学前までの期間は、育児・介護休業法19条が受け皿になる。19条が対象とする子は「小学校就学の始期に達するまでの子」である。

66条とどこが違うか

条文を並べると、違いは次のように整理できる。

労基法66条3項 育児・介護休業法19条
対象 妊産婦=妊娠中+産後1年以内(64条の3第1項) 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者
事業主の拒否 条文にただし書きがない 「事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない」
勤続年数の要件 条文にない 継続雇用1年未満は原則除外(19条1項1号)
家族要件 条文にない 深夜に子を保育できる同居家族等がいれば原則除外(同項2号)
請求の期限 条文にない 制限開始予定日の1月前まで(19条2項)
1回の期間 条文にない 1月以上6月以内(19条2項)
罰則 6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金(119条1号)=直罰 直接の罰則はない。 厚生労働大臣の勧告(56条)に従わない場合、その旨を公表されうる(56条の2)

66条は要件が薄く事業主が拒みにくい制度、19条は手続き要件が明確な分だけ拒否の余地も条文上ある制度という対比になる。

請求は1月前まで・1回あたり1月以上6月以内

19条2項は、請求の手続きについて「厚生労働省令で定めるところにより、その期間中は深夜において労働させてはならないこととなる一の期間(一月以上六月以内の期間に限る。)について、その初日及び末日とする日を明らかにして、制限開始予定日の一月前まで」にしなければならないと定めている。66条のように「請求すればいつでも即座に」というわけではなく、開始予定日の1か月前までに、期間(1〜6か月)を区切って請求するという手続きが必要になる。請求の際に本人が明らかにした「初日」がそのまま制限開始予定日であり、深夜業の免除はこの本人が指定した日から始まる。期間が切れる前に再度請求すれば、就学前まで更新を続けることができる。なお66条3項には、請求してから深夜業が免除されるまでの期間について、条文上の定めがない。

断られることがある「事業の正常な運営を妨げる場合」とは

19条1項ただし書きの「事業の正常な運営を妨げる場合」は、条文上の要件として存在するが、具体的にどのような状況がこれに該当するかについて、本記事が確認した条文の範囲では明確な基準は示されていない。実務上は個別の事情(代替要員の確保可能性など)に応じて判断されるものであり、「人手が足りないから」という理由だけで一律に拒否できるかどうかは、本記事の一次ソースだけでは確定できない。少なくとも条文の作りとして、66条3項にはこの拒否要件そのものが存在しないという違いは押さえておきたい。


請求のしかた|誰に、いつ、何を出すか

66条・19条とも、請求先は勤務先(事業主)であり、実務上は看護部長・師長など直属の管理者を通じて人事・総務部門に伝わる流れになることが多い。

  • 66条(妊娠中〜産後1年): 労働基準法本体にも同法施行規則にも、厚生労働省のパンフレットにも請求の方式・期限についての定めは見当たらない。体調やシフトの都合を踏まえ、できるだけ早めに、書面や記録が残る形で請求するのが望ましい
  • 19条(産後1年〜就学前): 制限開始予定日の1か月前までに、期間(1〜6か月)を明らかにして請求する。方式は厚生労働省令に定めがあるため、勤務先の様式(申出書等)を確認する

母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)の使い方

医師や助産師から「夜勤を控えるように」といった指導を受けた場合、その内容を事業主に正確に伝えるための書類が母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)である。これは均等法13条2項に基づく指針に様式が定められているもので、最新の様式は令和3年7月1日改定版として厚生労働省の関連サイトで公開されている。

均等法12条は、妊娠中・出産後の女性労働者が保健指導・健康診査を受けるための時間を確保することを事業主に義務づけており、その頻度の目安は、妊娠23週までは4週間に1回、24週から35週までは2週間に1回、36週以降出産までは1週間に1回、産後は経過が正常な場合で産後4週前後に1回とされている。この通院のたびに、医師等から夜勤や時間外労働に関する指導があれば、母健連絡カードに記載してもらい、勤務先に提出するという流れになる。66条3項の請求とは別のルートであり、体調面から「夜勤を減らしたほうがよい」という医学的な裏付けを勤務先に示したい場合に使える。


免除を請求したことで不利益に扱われないか

夜勤免除を請求した、あるいは実際に夜勤をしなかったことを理由に、配置転換や昇給・賞与での不利益な扱い、ましてや解雇を受けるのではないかという不安は大きい。この点についての根拠条文は66条自体にはなく、別の法律にある。

男女雇用機会均等法9条3項は、女性労働者が妊娠・出産したこと、あるいは「厚生労働省令で定めるもの」を理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならないと定めている。この「厚生労働省令で定めるもの」の中身が、均等法施行規則2条の2である。その第7号には、「労働基準法第六十六条第三項の規定による請求をし、若しくは同項の規定により深夜業をしなかつたこと」が名指しで挙げられている。つまり、66条3項に基づいて夜勤免除を請求したこと、実際に夜勤をしなかったことを理由とする不利益取扱いは、均等法違反として明確に禁止されている。

さらに均等法9条4項は、妊娠中および産後1年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は無効と定めている(事業主が妊娠・出産等を理由とする解雇でないことを証明した場合を除く)。夜勤免除の請求と時期が重なる解雇は、この規定によって強い保護がかかる。

なお、均等法施行規則2条の3(マタニティハラスメント防止のための事業主の措置義務の対象事由を定める規定)にも66条の請求に関する同様の項目があるが、条文の文言を比べると、2条の2(不利益取扱いの禁止)が「請求をし」という表現なのに対し、2条の3は「請求をしようとし」という表現も含んでいる。文言だけを見れば、請求する前の段階の言動もハラスメント防止措置の対象に含まれる読み方ができるが、この読み方について行政解釈による裏付けは本記事では確認していない。断定的な運用として受け取らず、条文の文言の違いとして留めておく。

育児・介護休業法19条のルートについても、同様の禁止規定が置かれている。育介法20条の2は、労働者が19条1項の規定による請求をしたこと、または深夜において労働しなかったことを理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁じている。所定外労働の制限(16条の8)には16条の10、時間外労働の制限(17条)には18条の2という、それぞれ同じ構造の不利益取扱い禁止規定が対応している。


働く場所によって何が変わるか|病院・訪問看護・クリニック・介護施設

66条3項自体は「深夜業」の時間帯を条文上定義していない。ただし、労働基準法37条4項が深夜の割増賃金の対象として定める時間帯は「午後十時から午前五時まで」であり(厚生労働大臣が必要と認めて地域又は期間を指定した場合に限り「午後十一時から午前六時まで」に変わることがあるが、これは限定的な例外であって通常はあてはまらない)、育介法19条1項も同じ「午後十時から午前五時まで」を「深夜」と定義している。実務上はこの時間帯が深夜業の基準として扱われている。事業主がこの時間帯に労働させることを禁じられる、という条文の効力自体は勤務先の業態によって変わらないが、実際の働き方への現れ方は職場によって異なる。

  • 病院(病棟勤務): 二交代・三交代の夜勤シフトに直接組み込まれている。66条3項の請求によって夜勤シフトから外れることになる。夜勤の人員配置や、月平均夜勤時間数72時間ルール(同一の入院基本料を算定する病棟全体で、看護職員1人あたりの月平均夜勤時間を72時間以内に収めるという診療報酬上の施設基準)との関係は「看護配置基準(7対1・10対1)の見方2026」で扱っている
  • 訪問看護: オンコール(緊急時の呼び出し待機)が深夜帯に及ぶ場合がある。オンコールの待機時間そのものが労基法上の「深夜業」に該当するかどうかは、待機の拘束性など個別の事情によって判断が分かれうる論点であり、本記事が確認した一次ソースの範囲では明確な基準を確認できていない
  • クリニック: 外来のみの施設では、そもそも深夜業自体が発生しない勤務形態が多い。当直・オンコールを置く施設では病院と同様の論点になる
  • 介護施設: 夜勤帯の職員配置がある施設(特別養護老人ホーム等)では、病院の夜勤と同じ構造で66条3項・19条が適用されうる

いずれの業態でも、66条3項・19条の適用そのものは雇用形態(正職員・パート・派遣等)を問わない労働基準法・育児介護休業法の一般則にしたがう。ただし、シフトの組み方や代替要員の確保のしやすさは職場の規模・体制によって大きく異なる。


お金はどうなるか|夜勤手当が減る分をどう見るか

夜勤を外れれば、多くの病院で夜勤手当分の収入は減る。この減少幅は病院ごとの給与規程・夜勤手当の単価によって異なるため、本記事では具体的な金額の試算は行わない。

収入面で押さえておきたいのは、夜勤免除と育児休業・産休は別の制度だという点である。産休・育休期間そのものの収入については、育児休業給付金(休業開始から180日目まで賃金の67%、181日目以降50%)などの制度があり、「育児休業給付金シミュレーション2026」で金額の試算を扱っている。復帰後の夜勤免除期間は育児休業給付金の対象外(就労している期間であるため)であり、収入は勤務先の給与規程に基づく通常の給与体系(夜勤手当を除く)になる。

また、夜勤手当とは別の軸として、看護職員処遇改善評価料・ベースアップ評価料による賃上げの原資がある。これは配置基準や夜勤の有無とは別に、病院が届け出ている制度によって決まるものであり、「看護職員処遇改善評価料・ベースアップ評価料2026年度改定」で扱っている。


メリット・デメリット

66条3項ルート(妊娠中〜産後1年)

メリット
– 事業主に対する拒否の除外規定(ただし書き)が条文上ない
– 請求の期限や勤続年数の要件が条文にない

デメリット・注意点
– 「請求した場合においては」が要件であるため、自分から申し出なければ発生しない
– 産後1年を過ぎると自動的には続かず、続けたい場合は19条に基づく別の請求が必要

19条ルート(産後1年〜就学前)

メリット
– 対象期間が長い(就学前まで)
– 1〜6か月単位で区切って請求でき、状況に応じて更新できる

デメリット・注意点
– 「事業の正常な運営を妨げる場合」という事業主側の拒否規定が条文上ある
– 継続雇用1年未満の者、深夜に保育できる同居家族等がいる者は原則として対象から除外される
– 制限開始予定日の1か月前までに請求する必要があり、66条のような即時性はない


病院に渋られたときの相談先

条文上の権利であっても、現場での運用が滞ることはありうる。相談先としては、労働基準法66条・119条に関わる事項は所轄の労働基準監督署、育児・介護休業法や男女雇用機会均等法に関わる事項(19条、9条の不利益取扱い禁止、ハラスメント防止措置など)は都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)が、それぞれ一般的な相談窓口として機能している。院内に相談窓口(人事・労働組合等)があれば、まずそこに相談したうえで、解決しない場合に外部の窓口を検討するという順番が現実的である。


よくある誤解

誤解 正しい理解
妊娠が分かれば自動的に夜勤がなくなる 66条3項は「妊産婦が請求した場合においては」が要件。本人が請求して初めて事業主の義務が発生する
産後1年を過ぎても66条でずっと夜勤を断れる 66条の「妊産婦」は産後1年を経過しない女性まで。それ以降は育児・介護休業法19条に基づき、改めて請求する必要がある
夜勤免除を申し出たら解雇されても仕方ない 均等法9条4項により産後1年以内の解雇は原則無効。66条3項の請求・不実施を理由とする不利益取扱いは均等法施行規則2条の2第7号で明示的に禁止されている
パート・派遣の看護師は対象外 66条3項・19条とも雇用形態を問わない一般則であり、要件(妊産婦であること、19条は継続雇用1年以上であること等)を満たせば対象になりうる
月平均夜勤時間数72時間ルールがあるから、個人の夜勤免除の余地はない 72時間ルールは病棟全体の平均に関する診療報酬上の基準であり、個人が66条3項に基づいて夜勤を外れることを妨げるものではない。詳しくは「看護配置基準(7対1・10対1)の見方2026」を参照

FAQ|よくある質問

A

66条については、労働基準法本体にも同法施行規則にも、厚生労働省のパンフレットにも請求の方式・期限についての定めは見当たらない(19条の請求手続きは育介法自体に省令の定めがあるため、勤務先の様式を確認する)。66条について方式の定めがないことは、「口頭でよい」と断定できることを意味しない。口頭でも請求として成立しうるが、いつ・どのような内容を請求したかを後から確認できるよう、書面や記録が残る形で行うことが実務上は望ましい。

A

自動的に切り替わるわけではない。66条による深夜業免除は産後1年で対象から外れるため、産後1年を過ぎても夜勤を外れた状態を続けたい場合は、19条に基づいて改めて請求する必要がある。

A

一般に、夜勤をしない分だけ夜勤手当は減る可能性が高い。ただし具体的な計算方法は病院ごとの給与規程によるため、本記事では一律の金額を示さない。

A

条文上「事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない」という除外規定があるため、一律に保証されるわけではない。また継続雇用1年未満の者、深夜に子を保育できる同居家族等がいる者は原則として対象から除外される。この点が、除外規定を持たない66条3項との大きな違いである。

A

66条3項の請求・不実施を理由とする不利益取扱いは、均等法施行規則2条の2第7号によって明示的に禁止されている。19条の請求についても育介法20条の2が同様の禁止規定を置いている。実際にそうした扱いを受けたと感じる場合は、院内の相談窓口、または都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できる。

A

直接の罰則はない。労働基準法66条には119条による罰則(6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金)が明記されているが、育児・介護休業法19条にはこれと同じ形の罰則規定がない。代わりに、19条違反があれば厚生労働大臣が事業主に報告を求め、助言・指導・勧告を行うことができ(育介法56条)、事業主がその勧告に従わなかった場合には、その旨を公表できる(育介法56条の2)という行政指導の仕組みで担保されている。罰則がないからといって法的な効力がないわけではなく、19条に基づく請求権そのものは有効である。


まとめ

  • 産後1年までは労働基準法66条3項が使える。 「妊産婦」の定義(64条の3第1項)に産後1年を経過しない女性が含まれるため、産休・育休から復帰したあとも対象は続く
  • 66条3項にはただし書きがない。 育児・介護休業法19条にある「事業の正常な運営を妨げる場合」という事業主の拒否規定が、66条3項には存在しない
  • ただし「請求した場合においては」が要件。 自動発生ではなく、本人からの請求が起点になる
  • 66条1項は二交代の長時間夜勤にも効く。 変形労働時間制(32条の2・32条の4・32条の5)が適用されていても、妊産婦が請求すれば法定労働時間を超えさせてはならない
  • 産後1年を過ぎたら育児・介護休業法19条に引き継ぐ。 対象は就学前までの子。継続雇用1年未満や同居家族の保育可否による除外があり、請求は制限開始予定日の1月前まで、1回あたり1月以上6月以内という手続き要件がある
  • 請求したことによる不利益取扱いは禁止されている。 均等法9条3項・施行規則2条の2第7号、均等法9条4項の解雇無効、育介法20条の2がそれぞれの根拠になる
  • 医師の指導があれば、母健連絡カードという別ルートもある。 均等法13条2項の指針に基づく制度で、本人の請求とは別に、医学的な理由から勤務時間の変更等につなげられる
  • 夜勤手当の減少や育児休業給付金の金額は本記事では試算しない。 収入面の詳細は関連記事を参照されたい

参考:関連する条文

  • 労働基準法(昭和22年法律第49号)第64条の3 — 妊産婦の定義(妊娠中の女性及び産後一年を経過しない女性)を含む危険有害業務の就業制限
  • 労働基準法第65条 — 産前産後の休業(産前は本人請求、産後8週間は原則就業禁止、軽易業務転換は本人請求)
  • 労働基準法第66条 — 1項:変形労働時間制の適用制限、2項:時間外労働・休日労働の制限、3項:深夜業の制限(本記事の主題)。いずれも妊産婦の請求が要件
  • 労働基準法第67条 — 育児時間(生後満1年に達しない生児を育てる女性が1日2回各30分以上請求できる)
  • 労働基準法第119条 — 66条を含む規定違反への罰則(6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金)
  • 育児・介護休業法(平成3年法律第76号)第19条 — 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者の深夜業の制限。除外要件(継続雇用1年未満・同居家族の保育可否等)、手続き(制限開始予定日の1月前まで、1月以上6月以内)を定める
  • 育児・介護休業法第16条の8・第17条 — 所定外労働の制限・時間外労働の制限(いずれも就学前の子が対象、事業の正常な運営を妨げる場合の除外あり)
  • 育児・介護休業法第16条の2 — 子の看護等休暇(小学校3年生修了前の子が対象)
  • 育児・介護休業法第20条の2・第16条の10・第18条の2 — 深夜業の制限・所定外労働の制限・時間外労働の制限それぞれについての不利益取扱いの禁止
  • 育児・介護休業法第56条・第56条の2 — 厚生労働大臣による報告徴収・助言・指導・勧告(56条)、19条1項を含む規定に違反し勧告に従わない事業主の公表(56条の2)。19条には直罰規定がなく、この行政指導の枠組みが実効性を担保している
  • 育児・介護休業法附則第1条 — 令和7年4月1日を原則の施行日とする施行期日
  • 男女雇用機会均等法(昭和47年法律第113号)第9条3項・4項 — 妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止(3項)、産後1年以内の解雇の原則無効(4項)
  • 男女雇用機会均等法第12条・第13条 — 妊娠中・出産後の健康管理に関する措置(通院時間の確保、医師等の指導事項を守るための措置)
  • 男女雇用機会均等法施行規則第2条の2第7号 — 均等法9条3項の「厚生労働省令で定める事由」として、労基法66条1〜3項の請求・不実施を明記

免責事項

本記事は2026年8月22日時点で、e-Gov法令検索が提供する法令API(労働基準法・育児介護休業法・男女雇用機会均等法・同施行規則の原文)、厚生労働省「母性健康管理サイト」、日本看護協会「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」(2013年公表)の内容に基づいて作成している。個別の職場における制度の運用・請求手続きの詳細は勤務先の就業規則や人事・労務担当部署、または所轄の労働基準監督署・都道府県労働局にご確認いただきたい。本記事の内容は法的助言ではなく、本記事の内容に基づく判断・行動によって生じたいかなる損害についても、筆者は責任を負いかねます。


参考資料・一次情報

本記事の作成にあたり、以下の資料を参照した。最新の情報は各機関の公式サイトでご確認いただきたい。

  • e-Gov法令検索「労働基準法」 — https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
  • e-Gov法令検索「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」 — https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000076
  • e-Gov法令検索「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」 — https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000113
  • 厚生労働省 母性健康管理サイト(母性健康管理指導事項連絡カード) — https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/renraku_card/
  • 公益社団法人日本看護協会「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」(2013年2月28日発行) — https://www.nurse.or.jp/nursing/home/publication/pdf/guideline/yakin_guideline.pdf
  • 厚生労働省保険局医療課「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和8年3月5日 保医発0305第7号) — https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732097.pdf
JG

実務ガイド編集部

AI執筆 + 編集部レビュー済み

本記事はAIが初稿を作成し、編集部が法令原文・官公庁通知・審議会資料等の一次情報と照合のうえ、内容を確認・編集しています。行政手続き・法改正・制度改正の実務情報を専門に扱う編集チームが、企業実務担当者・士業専門家向けに正確性の高いコンテンツを提供します。