最終更新日: 2026年8月21日
【結論】 医療機関に勤める看護師の賃上げの原資は、主に看護職員処遇改善評価料(令和4年10月新設)とベースアップ評価料(I・II)(令和6年6月新設)という2つの診療報酬の加算でまかなわれている。令和8年度改定(2026年6月1日施行)では、ベースアップ評価料の対象職員が拡大され、看護職員を含む対象職種で3.2%、看護補助者・事務職員で5.7%の賃金総額の引き上げが令和8・9年度それぞれの目標とされた(厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定の概要 1.賃上げ・物価対応(賃上げ)」および令和8年3月5日 保医発0305第8号 別表3で確認)。ただし、この評価料は病院が算定するかどうか・どの職員にどう配分するかを含めて病院ごとの裁量部分が大きく、自分の給料が具体的にいくら上がるかは、勤務先が制度を届け出ているかどうかと、勤務先の配分方針の両方で決まる。本記事では、2つの評価料の違い、対象になる病院・職種の条件、そして自分の給与明細やボーナス通知でどこを確認すればよいかを整理する。
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この記事の対象読者
本記事は、病院・診療所・訪問看護ステーションに勤務する看護師・准看護師本人が、次のような疑問に答えることを目的としている。勤務先の施設種別によって適用される評価料の種類が変わるため、診療所勤務の方は本文の「施設・働き方による違い」の節を参照されたい。
- 「自分の勤務先は看護職員処遇改善評価料・ベースアップ評価料を算定しているのか」
- 「算定されているとして、自分の給料・ボーナスにはどう反映されるのか」
- 「2026年度の改定で、何がどう変わったのか」
病院経営者・事務長・医事課職員が施設基準の届出実務を行うための解説記事ではなく、看護師本人が自分の待遇を確認するための視点に軸足を置いている。届出実務の詳細は「令和8年度診療報酬改定の全体像と施設基準の基礎」を参照されたい。
看護職員処遇改善評価料・ベースアップ評価料とは
まず、名前が紛らわしい2つの制度を区別する。どちらも診療報酬(医療機関が保険請求できる点数)の一部を、対象職員の賃金改善に充てさせる仕組みという点は共通している。
看護職員処遇改善評価料(令和4年10月新設)
新型コロナウイルス対応など地域で一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員の収入を、月額1万2,000円相当(当時の説明で「3%程度」)引き上げることを目的に、令和4年10月に新設された評価料である。入院患者を対象に1日につき1回算定され、点数は医療機関ごとの必要額に応じて165段階(評価料1=1点〜評価料165=340点)に区分される(令和8年度の医科診療報酬点数表・区分番号O000で確認)。
対象となる医療機関は、次のいずれかに該当する届出医療機関である(令和8年3月5日 保医発0305第8号「第104 看護職員処遇改善評価料」1の(1))。
- 救急医療管理加算(A205)の届出を行っており、かつ救急搬送件数が年間200件以上
- 「救急医療対策事業実施要綱」に定める救命救急センター・高度救命救急センター・小児救命救急センターを設置している
救急搬送件数は、賃金改善を実施する年度の前々年度1年間の実績で判定される。すでに算定している医療機関が前々年度に200件を下回った場合でも、前年度の連続する6か月間で100件以上あれば要件を満たしたものとみなす例外がある(同通知1の(2))。
賃金改善の対象者は保健師・助産師・看護師・准看護師が中心だが、医療機関の判断で看護補助者やリハビリ職などのコメディカルにも対象を広げられる(薬剤師は対象外)。
ベースアップ評価料(I・II)(令和6年6月新設)
看護職員処遇改善評価料の対象にならない、より幅広い医療機関・職種を対象に、令和6年(2024年)の診療報酬改定で新設された評価料である。外来・在宅ベースアップ評価料(I・II)と入院ベースアップ評価料があり、無床診療所・有床診療所・病院それぞれで算定できる区分が異なる。訪問看護ステーション向けの訪問看護ベースアップ評価料(I・II)、保険薬局向けの調剤ベースアップ評価料も同じ枠組みの制度として設けられている。
令和8年度改定(2026年6月1日施行)では、このベースアップ評価料(I・II)の対象職員が拡大された。従来の対象は「主として医療に従事する職員(医師、歯科医師、専ら事務作業を行う事務職員等を除く)」だったが、改定後は「当該保険医療機関に勤務する職員(40歳以上の医師・歯科医師・薬局薬剤師、業務委託により勤務する者を除く。経営者・法人役員を含まない)」へと広がり、事務職員と40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師が新たに対象へ加わった(厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定の概要 1.賃上げ・物価対応(賃上げ)」の新旧対比)。あわせて、保険薬局も対象施設に加わった。
2つの制度は令和8年度改定でも別個の評価料として存続しており、一つに統合されたわけではない。 令和8年3月5日 保医発0305第8号は「第104 看護職員処遇改善評価料」と「第107 入院ベースアップ評価料」を別々の節として定めており、令和8年度の医科診療報酬点数表でも区分番号O000(看護職員処遇改善評価料)とベースアップ評価料は別の区分として置かれている。「制度が統合され点数区分が拡大した」という趣旨の解説を見かけることがあるが、一次資料上は統合されていない。
対象になるには|どの職種・どの施設が対象か
自分が対象になるかどうかは、勤務先の医療機関が届け出ているかと、自分の職種が対象に含まれているかの2段階で決まる。
施設の条件
| 評価料 | 対象になりやすい施設像 |
|---|---|
| 看護職員処遇改善評価料 | 年間救急搬送200件以上の届出病院、救命救急センター等の設置病院(急性期・救急医療の比重が大きい病院) |
| ベースアップ評価料(入院) | 上記に該当しない病院を含む、入院基本料等を算定するほぼすべての病院 |
| ベースアップ評価料(外来・在宅) | 診療所(無床・有床) |
| 訪問看護ベースアップ評価料 | 訪問看護ステーション |
自分の勤務先がどちらか(あるいは両方)を届け出ているかは、求人票や病院のウェブサイトだけでは分からないことが多い。 最も確実な方法は、勤務先の人事・給与担当、または労働組合があれば組合窓口に確認することである。地方厚生局が施設基準の届出受理状況を公表している場合もあるが、公表の有無・様式は厚生局ごとに異なるため、確実な一次情報とは言い切れない。
職種の条件
看護職員処遇改善評価料は保健師・助産師・看護師・准看護師を中心に、医療機関の判断で看護補助者等のコメディカルへ対象を広げられる制度である。ベースアップ評価料(I・II)は令和8年度改定でさらに幅広い職種(事務職員、40歳未満の医師・歯科医師等)を対象に含められるようになった。いずれも「対象に含めるかどうか」には医療機関の判断が入る余地があり、看護師だからといって自動的に賃上げの対象になるとは限らない。
制度の仕組み|点数がどう自分の給与に変わるか
診療報酬の加算がどのようにして給与明細の金額に変わるのか、流れを整理する。
- 医療機関が地方厚生局へ施設基準を届け出て受理される
- 医療機関が入院患者・外来患者の診療報酬として、評価料の点数分を保険者(健康保険組合等)・患者から受け取る
- 受け取った収入を、届け出た計画に沿って対象職員の基本給または毎月決まって支払われる手当の引き上げに充てる。看護職員処遇改善評価料については、賃金改善の合計額の3分の2以上を基本給等(基本給または決まって毎月支払われる手当)の引き上げに充てることが施設基準で求められている(保医発0305第8号「第104 看護職員処遇改善評価料」1の(5))。残りは賞与等に充てることが可能である
- 医療機関は届出後も、毎年の「賃金改善計画書」「賃金改善実績報告書」等の提出により、実際に賃金改善へ充てられたことを地方厚生局へ報告する義務を負う
令和8年度改定で新たに加わった点として、夜勤手当の扱いがある。 夜勤職員の確保という観点から、看護職員処遇改善評価料およびベースアップ評価料による収入を夜勤手当の増額に充てることが可能になった。恒常的に夜間を含む交替勤務制をとっている職場の職員に支払われる夜勤手当は、毎月支払われる手当に準じて「基本給等」に含めてよいとされている(保医発0305第8号「第104 看護職員処遇改善評価料」1の(5))。夜勤の多い病棟看護師にとっては、賃上げの反映先が基本給だけでなく夜勤手当にも及びうるという意味を持つ。
ポイントは、点数(診療報酬)がそのまま個人の給料になるわけではなく、いったん医療機関の収入になったうえで、医療機関の配分方針に従って個々の職員へ配られる、という点である。 同じ病院に勤めていても、常勤か非常勤か、対象職種に含まれているかどうかで、実際に反映される金額は変わる。
施設・働き方による違い|病院・訪問看護・診療所でどう変わるか
勤務先の施設種別によって、算定できる評価料の種類と原資の規模が異なる。
- 急性期病院: 救急搬送実績等の要件を満たせば看護職員処遇改善評価料とベースアップ評価料の両方の対象になり得る。入院患者数が多いほど原資も大きくなりやすい(急性期病院一般入院料の施設基準のように、病棟の機能によって算定できる入院料自体も異なる点には注意)
- 中小病院・慢性期病院: 救急搬送要件を満たさない場合は看護職員処遇改善評価料の対象外だが、入院ベースアップ評価料は算定できる
- 診療所(外来): 外来・在宅ベースアップ評価料(I・II)が対象。有床診療所は入院ベースアップ評価料と外来・在宅ベースアップ評価料(II)のいずれか一方を選択する仕組みになっている
- 訪問看護ステーション: 訪問看護ベースアップ評価料(I・II)が対象。病院の入院ベースアップ評価料とは別の様式・算定ルールが適用される
「制度が同じでも、勤務先の施設類型によって適用される評価料の種類が違う」という点は、転職や異動を検討する際に見落としやすいポイントである。
自分の給料はいくら上がるか|試算の考え方
正確な金額は勤務先の配分方針次第だが、目標とされている数値から大まかな目安を考えることはできる。
令和8年度・令和9年度のそれぞれの年度で、看護職員等については賃金総額の3.2%、看護補助者・事務職員については5.7%相当の引き上げが目標とされている。2年間の累積は単純合算で6.4%・11.4%である。これは推計ではなく、保医発0305第8号 別表3「賃金改善算定基礎額の算出に用いる数」が、算定期間ごとに次の率を定めていることによる。
| 職種ごとの基礎額 | 令和8年6月〜令和9年5月 | 令和9年6月〜 |
|---|---|---|
| 対象職員(医師・歯科医師・看護補助者・事務職員を除く)の月額賃金総額 | 1.29 × 3.2% | 1.29 × 6.4% |
| 看護補助者・事務職員の月額賃金総額 | 1.29 × 5.7% | 1.29 × 11.4% |
つまり令和9年6月以降は初年度の2倍の率が適用される設計であり、2年目に上乗せが入ることが制度に組み込まれている。
この表の「1.29」を自分の給料に掛けてはいけない。 1.29は、事業主が負担する法定福利費(会社側が代わりに納める社会保険料)や、賃上げに伴って増える賞与の分まで病院が原資として確保しておくための係数である。上の式が求めているのは「賃金改善算定基礎額」=病院が受け取るべき収入であって、個人の賃上げ額ではない。個人の目安はあくまで 3.2%・5.7% のほうである。
試算例(常勤職員を前提とした仮の計算であり、実際の反映額を保証するものではない。非常勤・パートの場合は勤務時間に応じて配分が変わりうるため、下記の金額をそのまま当てはめることはできない)
- 基本給25万円の看護師で、目標どおり3.2%相当が基本給・手当の引き上げに充てられた場合:25万円 × 3.2% = 月額約8,000円の目安
- 基本給20万円の看護補助者で、目標どおり5.7%相当が充てられた場合:20万円 × 5.7% = 月額約11,400円の目安
この試算は、あくまで「制度が目標どおりに機能した場合の目安」であり、次の理由から実際の金額とは異なりうる。
- 勤務先がそもそも評価料を届け出ていない、あるいは対象職種に自分が含まれていない可能性がある
- 目標の3.2%・5.7%を達成できなくても、評価料自体は算定できる。厚生労働省の疑義解釈資料(その2)問7が「ベースアップ評価料を算定しても3.2%及び5.7%のベースアップを達成できない場合であっても、ベースアップ評価料は算定できるのか」という問いに「可能」と回答している。そのため、実際の引き上げ幅が目標を下回る医療機関もありうる
- 常勤・非常勤の別、勤続年数、役職などにより医療機関内での配分に差が出る場合がある
自分の実際の引き上げ額を知りたい場合は、試算に頼らず、勤務先の給与規程・賃金改善計画の説明、または人事・給与担当への確認が最も確実である。
給与明細・賞与通知でどこを確認するか
評価料が自分の給与にどう現れるかは、次の3通りのいずれか(またはその組み合わせ)である。
- 基本給そのものの増額 — 明細上は独立した項目にならないため、前年度の明細と基本給の額を見比べる必要がある
- 手当としての支給 — 「処遇改善手当」「ベースアップ手当」といった名称で立つことが多いが、名称は医療機関が決めるもので統一されていない。項目名だけで判断せず、給与規程の改定内容と突き合わせる
- 夜勤手当の増額 — 令和8年度改定から認められた形。夜勤の多い病棟では、基本給ではなく夜勤手当が増えている場合がある
賞与への反映は、看護職員処遇改善評価料では多くても3分の1までである(3分の2以上は基本給等に充てる義務があるため)。賞与だけが増えて基本給が据え置きなら、制度の趣旨に沿った配分になっていない可能性がある。
明細を見ても分からない場合は、勤務先に照会してよい。 施設基準は、対象職員から賃金改善に関する照会を受けた医療機関に対し、その職員についての賃金改善の内容を書面を用いて説明する等により分かりやすく回答することを求めている(保医発0305第8号「第104 看護職員処遇改善評価料」1の(10))。あわせて医療機関には、賃金改善を実施する方法や就業規則等の内容を、届出・区分変更に合わせて対象職員へ周知する義務もある。「聞いてもいいのか」ではなく、答える側に義務があるという点は知っておいてよい。
メリット・デメリット
メリット
- 診療報酬という公的な原資に裏付けられた賃上げである: 病院の経営判断だけに委ねられた昇給ではなく、国が定めた評価料の算定を前提としているため、対象になれば一定の水準の賃上げが期待できる
- 基本給・手当への反映が前提とされている: 少なくともベースアップ評価料については、収入を一時的な賞与ではなく基本給・毎月決まって支払われる手当の引き上げに充てることが求められており、月々の手取りに反映されやすい設計になっている
- 賃上げを行わない医療機関には入院料減算という不利益がある: 令和8年度改定で入院基本料等に減算規定が新設された。次の3つのいずれも満たさない医療機関が減算の対象になる(減算点数は入院料の種類ごとに異なり、厚生労働省の資料では急性期一般入院料1の例として1日あたり121点が示されている)。①令和8年3月31日時点で入院ベースアップ評価料の届出を行っている、②令和6年3月と比較して継続的に賃上げを行っている、③令和8年6月1日以降に新規開設した——のいずれか。「届出をしていない=即減算」ではなく、継続的な賃上げの実績があれば減算を回避できる設計である(厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定の概要 1.賃上げ・物価対応(賃上げ)」)
デメリット・注意点
- 対象になるかは医療機関次第: 施設基準を満たさない、あるいは満たしていても届出を行っていない医療機関では、看護師本人がどれだけ制度を理解していても恩恵を受けられない
- 目標未達でも算定は可能: 3.2%・5.7%という数値はあくまで目標であり、達成できなくても評価料自体は算定できる(疑義解釈資料 その2・問7)。「制度があるから必ずこの水準まで上がる」とは限らない
- 配分は医療機関の裁量が大きい: 対象職種の範囲、常勤・非常勤の扱いなど、実際の配分ルールの細部は医療機関ごとに異なる
求人票・自院の届出状況の確認方法
転職を検討する場合、求人票やホームページだけで「看護職員処遇改善評価料」「ベースアップ評価料」の算定状況が明記されていることは少ない。次の観点で確認すると、勤務先選びの判断材料になる。
- 配置基準の記載: 求人票にある入院基本料の区分(例:急性期一般入院料1等)や看護配置基準の記載から、施設の規模・機能を推測できる。救急搬送実績が多い急性期病院ほど、看護職員処遇改善評価料の対象になっている可能性が高い。配置基準の数字が実際に何を意味するのか(「7対1」は1人が7人を受け持つ意味ではない)は「看護配置基準(7対1・10対1)の見方2026」で詳しく扱っている
- 面接・説明会での確認: 「ベースアップ評価料は届け出ていますか」「対象職員に看護師は含まれていますか」を直接質問することができる。制度名を挙げて質問すること自体が、給与体系への関心の高さを示すことにもなる
- 既存職員への確認: 可能であれば、実際に勤務している職員に、賃上げの実感や給与明細上の反映のされ方を聞くことも有効である
本記事では特定の転職支援サービスへの誘導は行わない。 制度の理解を深めたうえで、自分に合った情報収集の方法を選んでほしい。
よくある誤解と注意点
| 誤解 | 正しい理解 |
|---|---|
| 看護職員処遇改善評価料とベースアップ評価料は同じ制度 | 導入時期(令和4年10月/令和6年6月)も対象施設の条件も異なる別個の評価料。令和8年度改定でも別個の評価料として存続している |
| ベースアップ評価料があれば看護師の給料が必ず3.2%上がる | 3.2%はあくまで目標であり、未達成でも評価料自体は算定できる。また対象職種に含まれるかどうかは医療機関の判断による |
| 診療報酬の点数がそのまま自分の給料になる | 点数はいったん医療機関の収入になり、医療機関の配分方針に従って個々の職員へ配られる。同じ病院でも常勤・非常勤等で反映額は変わりうる |
| すべての病院がどちらかの評価料を算定している | 施設基準を満たさない、あるいは満たしていても未届出の医療機関もある |
| 届出をしていない病院は必ず入院料が減算される | 減算を免れる条件は3つあり、令和6年3月と比較して継続的に賃上げを行っていれば、届出がなくても減算の対象にはならない |
FAQ|看護職員処遇改善評価料・ベースアップ評価料に関するよくある質問
最も確実なのは勤務先の人事・給与担当への確認である。地方厚生局が施設基準の届出受理状況を公表している場合もあるが、公表の形式・範囲は厚生局ごとに異なるため確実な一次情報とは言い切れない。給与明細の加算項目名や、賃上げに関する社内説明資料に記載がある場合もある。
制度上、非常勤職員が一律に対象外というわけではないが、対象職員の範囲は医療機関の判断・雇用形態によって異なりうる。自分の雇用形態が対象に含まれるかは、勤務先に個別に確認する必要がある。
ベースアップ評価料(I・II)の対象職員が拡大され、事務職員や40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師が対象へ加わった点である。賃上げ目標も看護職員等で3.2%、看護補助者・事務職員で5.7%(令和8・9年度それぞれ)に引き上げられた。看護師本人に直接関わる変更としては、評価料による収入を夜勤手当の増額に充てられるようになった点も大きい。なお、2つの評価料は令和8年度改定後も別々の評価料として存続している。
算定できる。厚生労働省の疑義解釈資料(その2)(令和8年4月1日 保険局医療課事務連絡)の問7が、まさにこの問いに対して「可能」と明確に回答している。ただし同じ回答の中で、「当該評価料により得られる収入は、全て、対象職員の基本給又は決まって毎月支払われる手当の引上げ及びそれに伴う賞与、時間外手当、法定福利費等の増加分に用いること」という条件が付されている。つまり目標未達は許容されるが、評価料の収入を賃金改善以外に使うことは認められない。
看護職員処遇改善評価料では、賃金改善の合計額の3分の2以上を基本給等(基本給または決まって毎月支払われる手当)の引き上げに充てることが施設基準で求められている(保医発0305第8号 第104 の1の(5))。裏を返せば、残る3分の1までは賞与等に充てることができる。また令和8年度改定により、恒常的に夜間を含む交替勤務制の職場で支払われる夜勤手当は「基本給等」に含めてよいことになった。実際に自分の賞与へどれだけ反映されるかは勤務先の配分方針次第であるため、給与担当への確認が必要である。
まとめ
- 看護師の賃上げを支える診療報酬の加算には、看護職員処遇改善評価料(令和4年10月新設・救急搬送実績等が要件)とベースアップ評価料(I・II)(令和6年6月新設・より幅広い施設が対象)の2種類があり、令和8年度改定でも別個の制度として存続している
- 令和8年度改定でベースアップ評価料の対象職員が拡大され、事務職員・40歳未満の医師等が対象に加わった。賃上げ目標は看護職員等で3.2%、看護補助者・事務職員で5.7%(令和8・9年度それぞれ/2年間の累積で6.4%・11.4%)で、この率は保医発0305第8号 別表3に明記されている
- 評価料による収入を夜勤手当の増額に充てることが令和8年度改定で可能になった。夜勤の多い病棟看護師には反映先が広がる変更である
- 診療報酬の点数は、いったん医療機関の収入になり、医療機関の配分方針に従って対象職員へ配られる。自分の給料が実際にいくら上がるかは、勤務先が制度を届け出ているか、自分の職種が対象に含まれているか、勤務先の配分方針の3点で決まる
- 正確な金額を知りたい場合は、本記事の試算例をそのまま当てはめるのではなく、勤務先の給与規程や人事・給与担当への確認を優先してほしい。照会を受けた医療機関には、書面を用いて説明する等により分かりやすく回答する義務が施設基準で課されている
参考:関連する条文・告示
- 令和8年厚生労働省告示第70号(基本診療料の施設基準等)・第71号(特掲診療料の施設基準等)が、施設基準の根拠となる告示である(2026年3月5日公布)
- 令和8年3月5日 保医発0305第8号(特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて)が、本記事で扱う評価料の施設基準を定める通知である。「第104 看護職員処遇改善評価料」に施設基準(救急医療管理加算の届出+救急搬送年間200件以上、または救命救急センター等の設置)と使途の3分の2ルール・夜勤手当の取扱いが、「第107 入院ベースアップ評価料」に入院ベースアップ評価料の基準が置かれている。賃上げ目標率3.2%・5.7%(令和9年6月以降は6.4%・11.4%)は同通知の別表3にある
- 看護職員処遇改善評価料の点数区分(評価料1=1点〜評価料165=340点)は、令和8年度の医科診療報酬点数表・区分番号O000に定められている
- 賃上げ目標を達成できない場合の取扱いは、疑義解釈資料の送付について(その2)(令和8年4月1日 保険局医療課事務連絡)の問7に示されている
いずれも、実際の届出・算定にあたっては最新の告示・通知を医療機関の医事課・地方厚生局で確認する必要がある。
免責事項
本記事は2026年8月21日時点で、厚生労働省の公表資料(令和8年3月5日 保医発0305第8号、令和8年度医科診療報酬点数表、厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定の概要 1.賃上げ・物価対応(賃上げ)」、令和8年4月1日付「疑義解釈資料の送付について(その2)」事務連絡、令和8年4月24日付「令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料に係る施設基準の届出について」事務連絡等)の原文で確認できた情報に基づいて作成している。実際の算定額・給与への反映額は医療機関ごとの配分方針により異なり、本記事の試算例はあくまで目安である。個別の給与・待遇に関する判断は、必ず勤務先の人事・給与担当にご確認いただきたい。本記事の内容に基づく判断・行動によって生じたいかなる損害についても、筆者は責任を負いかねます。
参考資料・一次情報
本記事の作成にあたり、以下の資料を参照した。最新の情報は各機関の公式サイトでご確認いただきたい。
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」(告示・通知一覧) — https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 厚生労働省「ベースアップ評価料に係る特設ページについて」(届出様式・説明動画) — https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00053.html
- 厚生労働省保険局医療課 事務連絡(令和8年4月24日)「令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料に係る施設基準の届出について(周知)」 — https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001695495.pdf
- 「ベースアップ評価料の届出に必要な様式 早見表<令和8年度版>」(上記事務連絡の別添) — https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001695793.pdf
- 特掲診療料の施設基準等一部改正(令和8年厚労省告示第71号) — https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001675855.pdf
- 厚生労働省保険局医療課「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和8年3月5日 保医発0305第8号)※第104・第107・別表3 — https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732104.pdf
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定に係る医科診療報酬点数表」(区分番号O000 看護職員処遇改善評価料) — https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定の概要 1.賃上げ・物価対応(賃上げ)」 — https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001701063.pdf
- 厚生労働省保険局医療課 事務連絡(令和8年4月1日)「疑義解釈資料の送付について(その2)」※問7 — https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001689076.pdf



