住宅取得等資金の贈与税非課税2026|省エネ住宅1,000万円・令和8年12月31日が期限

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住宅取得等資金の贈与税非課税2026|省エネ住宅1,000万円・令和8年12月31日が期限
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最終更新日: 2026-09-07

親や祖父母から住宅購入資金を援助してもらう場合、一定の要件を満たせば最大1,000万円まで贈与税がかかりません。この「住宅取得等資金の贈与税非課税措置」(租税特別措置法第70条の2)は、2026年(令和8年)12月31日までに贈与を受けることが適用の条件です。

この非課税措置には、限度額や期限だけでなく、「過去に一度でも使ったことがないこと」「贈与を受けた本人が住宅を所有すること」「特別な関係がある人からの取得ではないこと」といった、見落とすと適用そのものが否認される要件が複数あります。国土交通省は2026年8月28日公表の令和9年度税制改正要望に本措置を盛り込みましたが、要望の文言は「所要の措置を講じる」であり、延長を明示したものではありません。2026年12月31日で終わる前提で、資金の贈与・住宅の取得・申告の準備を進めてください。

免責事項: 本記事は一般的な制度解説であり、個別案件の税務判断を提供するものではありません。税額・適用要件は個人の状況によって異なります。最新情報は国税庁タックスアンサーまたは税理士にご確認ください。


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【早わかり】非課税限度額と期限

住宅の区分 非課税限度額 適用期限
省エネ等住宅 1,000万円 2026年12月31日
その他の住宅 500万円 2026年12月31日

根拠: 国税庁タックスアンサー No.4508「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」(参照日: 2026-09-07)

Point: 2026年12月31日までに「贈与を受けること」が必須です。住宅が完成していなくても、その年中に資金の贈与を受けていれば対象になります。贈与・取得・居住・申告のそれぞれで期限が異なるため、「5. 期限のすべて」の一覧表もあわせて確認してください。


1. 制度の正式名称と根拠

この制度の正式名称は「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」です(租税特別措置法第70条の2)。

親や祖父母など「直系尊属」から住宅取得資金の贈与を受けた際に、一定額まで贈与税が非課税となる措置で、2024年(令和6年)1月1日から2026年(令和8年)12月31日までの贈与が対象です。

令和6年度税制改正により、3年間(令和6年〜令和8年)の延長が決定した経緯があります。2026年9月7日時点で施行されている条文(租税特別措置法第70条の2第1項)でも、対象期間は「令和六年一月一日から令和八年十二月三十一日までの間」のままで、期限は動いていません。

1-1. 令和9年度税制改正要望の状況(2026年8月28日公表)

国土交通省は2026年8月28日公表の「令和9年度国土交通省税制改正要望事項」で、本措置を主要項目の一つとして掲げました。要望内容は次のとおりです。

住宅取得環境が悪化する中、高齢者からの資産の早期移転によって、住宅取得に係る負担を軽減し、住宅需要を喚起・創出するとともに、良質な住宅ストックの形成を図るため、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置等について、必要な検討を行い、所要の措置を講じる。

要望の背景として、次の3点が挙げられています。

  • 住宅価格の上昇により、住宅取得環境は厳しくなっている
  • 2050年カーボンニュートラル実現のため、住宅における省エネ対策の強化は不可欠
  • 資産は高齢者にとどまっており、支出ニーズが高い者への移転が進んでいない

(国土交通省の要望資料には、内閣府「令和6年度年次経済財政報告」を出典とする図として、世帯主の年齢階級別資産保有割合が示されています。40歳未満6.2%・40〜54歳20.7%・55〜69歳36.0%・70歳以上37.0%です。)

注意すべきは、要望の文言が「延長」ではなく「所要の措置を講じる」となっている点です。 同じ資料の他の項目、たとえば「空き家の発生を抑制するための特例措置の拡充・延長」「津波避難施設に係る特例措置の延長」では「延長」と明記されているのに対し、本措置だけは「所要の措置」という表現にとどまっています。この資料だけからは、延長されるかどうかは読み取れません。

税制改正は、8月末の各省庁からの要望 → 例年12月の与党税制改正大綱 → 翌年3月末の改正法成立、という順で進みます。12月の大綱が公表されるまで、延長の有無は確定しません。 2026年12月31日で終わる前提で、資金の移動や住宅の契約を進めておくことをおすすめします。延長が決まった場合でも公表は早くて12月になるため、そこから間に合わせるのは難しいためです。


2. 非課税限度額の詳細

非課税となる上限金額(非課税限度額)は、取得する住宅の種類によって異なります。

2-1. 省エネ等住宅:1,000万円

「省エネ等住宅」に認定されるには、住宅の区分に応じて次表のいずれかの基準を満たし、住宅性能証明書など一定の書類を贈与税の申告書に添付して証明する必要があります。

家屋の区分 省エネルギー性能 耐震性能 バリアフリー性能
① 新築をした住宅用の家屋 断熱等性能等級5以上(※1)かつ一次エネルギー消費量等級6以上 耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上、または免震建築物 高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上
② 建築後使用されたことのない住宅用の家屋 断熱等性能等級5以上(※1)かつ一次エネルギー消費量等級6以上 耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上、または免震建築物 高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上
③ 建築後使用されたことのある住宅用の家屋 断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上 耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上、または免震建築物 高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上
④ 増改築等をした住宅用の家屋 断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上 耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上、または免震建築物 高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上

※1 断熱等性能等級の評価基準のうち、結露の発生を防止する対策に関する基準を除きます。

経過措置: 令和5年12月31日までに建築確認を受けた住宅、または令和6年6月30日までに建築された住宅は、断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上のいずれかを満たせば省エネ等住宅とみなされます。ただし、令和5年12月31日までに建築確認を受けた住宅(令和6年6月30日までに建築されたものを除く)は、住宅性能証明書に加えて確認済証または検査済証の写しの添付が必要です。2026年9月時点で新たにこの経過措置に該当するケースは限られますが、該当する場合は添付書類の不足に注意してください。

2-2. その他の住宅:500万円

省エネ等住宅の要件を満たさない一般的な住宅には500万円の非課税限度額が適用されます。新築・中古・増改築いずれも対象ですが、住宅自体の要件(4章で後述)は満たす必要があります。


3. 受贈者の要件チェックリスト

以下のすべてを満たす必要があります。一つでも欠けると非課税適用はできません。

  • [ ] 贈与者は直系尊属(父母・祖父母・曽祖父母など)から受けた贈与である
  • [ ] 贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上である
  • [ ] 合計所得金額が2,000万円以下(ただし取得する住宅の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は1,000万円以下)
  • [ ] 贈与を受けた時点で日本国内に住所を有している(一定の例外あり)
  • [ ] 平成21年分〜令和5年分の贈与税申告でこの非課税措置を使ったことがない(一定の場合を除く。詳しくは3-1)
  • [ ] 自分(受贈者)の配偶者・親族など、一定の特別の関係がある人から住宅を取得していない。これらの人との請負契約等で新築・増改築した場合も対象外

年齢に注意: 「18歳以上」の判定は「贈与を受けた年の1月1日」時点です。たとえば2026年2月1日に贈与を受けた場合、2026年1月1日時点で18歳以上であることが必要です。

「特別の関係がある人」とは、次の4類型に当てはまる人です(租税特別措置法施行令第40条の4の2第7項)。

  1. 受贈者本人の配偶者および直系血族
  2. 受贈者本人と生計を一にしている親族(1を除く)
  3. 婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある人、およびその親族で生計を一にしている人
  4. 1〜3以外で、受贈者本人から受ける金銭その他の財産によって生計を維持している人、およびその親族で生計を一にしている人

親から資金の贈与を受け、その親が経営する工務店に新築を請け負わせる場合や、配偶者名義の中古住宅を買い取る場合は、いずれも非課税の対象外になります。

3-1. 「一生に一度」の非課税措置です

この非課税措置には、対象期間が異なる2つの制限があります。順に確認してください。

① 平成21年分〜令和5年分の適用歴 — 過去に一度でも適用を受けたことがある人は、原則として再び使うことができません。国税庁の要件には次のように定められています。

平成21年分から令和5年分までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」の適用を受けたことがないこと(一定の場合を除きます。)。

② 令和6年〜令和8年の枠の使い切り — ①に該当せず今回が初めての適用であっても、令和6年〜令和8年の期間内で限度額を使い切っていれば、残りしか使えません。租税特別措置法第70条の2第1項は、非課税となる金額を「住宅資金非課税限度額(既にこの項の規定の適用を受けて贈与税の課税価格に算入しなかった金額がある場合には、当該算入しなかった金額を控除した残額)」と定めています。つまり令和6年に500万円分の非課税を使っていれば、令和8年に使えるのは残りの500万円までです。

「(一定の場合を除きます)」の具体的な内容は国税庁の公開情報に明示されていません。過去にこの非課税措置を使ったことがある方は、申告前に所轄税務署に確認することをおすすめします。


4. 住宅の要件チェックリスト

取得する住宅についても、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • [ ] 登記簿上の床面積が40平方メートル以上240平方メートル以下
  • [ ] 床面積の2分の1以上が受贈者の居住用である
  • [ ] 取得した住宅が4つの類型(4-1)のいずれかに該当する
  • [ ] 贈与を受けた本人が住宅を所有する(共有持分があればよい。持分ゼロでは適用不可)
  • [ ] 贈与を受けた年の翌年3月15日までに取得して居住の用に供すること(翌年3月15日以後に遅滞なく居住することが確実と見込まれる場合を含む。最終期限は5章を参照)

住宅の名義に注意: 夫の親から資金の贈与を受けても、家を妻の単独名義で登記した場合、資金を受けた本人(夫)の持分がゼロであれば非課税は使えません。共有持分があれば足ります。

4-1. 取得する住宅の要件(4つの類型)

取得した住宅は、次の4類型のいずれかに該当する必要があります(国税庁 No.4508「新築または取得の場合の要件」ロ)。①は新築・未使用の住宅が対象で、②〜④は中古住宅(建築後使用されたことのある住宅)が対象です。

類型 内容
① 建築後使用されたことのない住宅用の家屋
② 建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、昭和57年1月1日以後に建築されたもの
③ 建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、耐震基準に適合することが一定の書類により証明されたもの
④ ②・③のいずれにも該当しない中古住宅で、耐震改修を行うことで基準に適合させるもの

④に該当させるには、次の順序を守る必要があります。順番を間違えると救済されません。

  1. 住宅の取得日までに、耐震改修を行うことについて都道府県知事等へ申請する(取得後の申請では間に合いません)
  2. 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、耐震改修によって耐震基準に適合したことを一定の証明書等により証明する

昭和57年1月1日という基準は、租税特別措置法施行令第40条の4の2第3項が、建築基準法施行令に定める耐震基準、または「昭和五十七年一月一日以後に建築されたもの」を安全性の基準として定めていることによります。

4-2. 増改築等の要件

増改築(リフォーム)で非課税措置を使う場合、次の要件があります(国税庁 No.4508「増改築等の場合の要件」)。

要件 内容
床面積 増改築後の登記簿上の床面積が40㎡以上240㎡以下、かつ2分の1以上が受贈者の居住用
対象の家屋 自己が所有し、かつ居住している家屋に対する工事であること
工事費用 工事費用が100万円以上であること。かつ、費用の2分の1以上が居住用部分の工事に充てられていること

工事の内容は「確認済証の写し」「検査済証の写し」または「増改築等工事証明書」などの書類で証明します。

4-3. 土地の先行取得も対象です

注文住宅で、建物より先に土地だけを購入するケースはよくありますが、これも対象に含まれます。国税庁は「住宅用の家屋の新築」について、新築とともに取得する敷地の土地等に加え、新築に先行して取得する敷地の土地等の取得も含むとしています。なお、対象となる住宅用の家屋は日本国内にあるものに限られます。


5. 期限のすべて

この制度には期限が複数あり、本文の各所に分散すると見落としやすいため、ここに一覧します。2026年(令和8年)に贈与を受けた場合の日付です。

何を いつまで 根拠
資金の贈与を受ける 2026年12月31日 措法70条の2第1項
資金の全額を住宅の取得等に充てる 2027年3月15日 同第1項各号
実際に居住する(原則) 2027年3月15日 同第1項各号
贈与税の申告書を提出する 2027年2月1日〜3月15日 同第14項
実際に居住する(最終期限) 2027年12月31日 同第4項

5-1. 最終期限(翌年12月31日)を過ぎたらどうなるか

翌年3月15日時点で「遅滞なく居住することが確実と見込まれる」として非課税の適用を受けていても、翌年12月31日までに実際に居住しなければ、原則としてこの特例は使えなくなります。 その場合、該当することとなった日から2か月以内に贈与税の修正申告書を提出し、同じ期限内に納税しなければなりません(租税特別措置法第70条の2第4項)。

なお、災害によって住宅に被害を受けた場合の取扱いは、国税庁コード8007「災害により被害を受けたときの贈与税の取扱い」に別途定められています。


6. 暦年課税・相続時精算課税との組み合わせ

6-1. 暦年課税の基礎控除(110万円)との組み合わせ

非課税特例を適用した後の残額については、暦年課税の基礎控除110万円をさらに控除することができます。つまり同じ年に非課税限度額を超える金額を贈与された場合でも、110万円の枠を活用できます。

計算例(省エネ等住宅に1,200万円の贈与を受けた場合)

贈与額        : 1,200万円
非課税限度額  : △1,000万円(省エネ等住宅)
基礎控除      : △  110万円(暦年課税)
課税対象      :     90万円
贈与税        :     90万円 × 10% = 9万円

省エネ等住宅であれば、1,110万円(1,000万円 + 110万円)まで実質的にゼロ負担で贈与を受けられる計算になります。

計算例(その他住宅に700万円の贈与を受けた場合)

贈与額        :  700万円
非課税限度額  : △500万円(その他の住宅)
基礎控除      : △110万円(暦年課税)
課税対象      :   90万円
贈与税        :   90万円 × 10% = 9万円

その他の住宅では610万円(500万円 + 110万円)まで税負担ゼロで受け取れます。

6-2. 相続時精算課税との組み合わせ

住宅取得等資金の非課税特例と相続時精算課税の併用が可能です。ただし要件がいくつか異なり、その違いが実務上の分かれ道になります。

併用には条件があります。 非課税特例を適用した後の住宅取得等資金について、なお贈与税の課税価格に算入される金額がある場合に限り、相続時精算課税の特例を選択できます(国税庁 No.4503)。非課税限度額に収まりきる贈与額であれば、精算課税の特例(後述)を選ぶ必要はありません。

相続時精算課税の特例(措法70条の3)は、次の点で非課税特例と要件が異なります。

項目 非課税特例(措法70条の2) 精算課税の特例(措法70条の3)
所得制限 合計所得金額2,000万円以下 なし
床面積の上限 240㎡以下 上限なし(40㎡以上のみ)
受贈者の範囲 直系尊属からの贈与であればよい 贈与者の直系卑属である推定相続人(孫を含む)
適用期限 令和8年12月31日まで 令和8年12月31日まで(贈与者が贈与年の1月1日時点で60歳未満)

用語の補足: 「直系卑属」は子・孫・ひ孫など、自分より下の世代の直系の血族を指します。「推定相続人」は、いま相続が発生したとすれば相続人になる人のことです。

所得が2,000万円を超えて非課税特例を使えない場合でも、相続時精算課税の特例には所得制限がないため、選択肢として残ります。同様に、240㎡を超える広い住宅を取得する場合も、非課税特例は使えませんが精算課税の特例は使えます。

令和6年1月1日以降の相続時精算課税では、受贈者1人につき年間110万円の基礎控除が設けられています(租税特別措置法第70条の3の2)。複数の贈与者から贈与を受けた場合、110万円は贈与者ごとに追加されるのではなく、贈与額の割合であん分します(租税特別措置法施行令第40条の5の2)。

たとえば父から300万円・祖父から100万円(合計400万円)の贈与を受けた場合、控除額は次のように配分されます。

父からの分  : 110万円 × 300万円 ÷ 400万円 = 82万5,000円
祖父からの分: 110万円 × 100万円 ÷ 400万円 = 27万5,000円
合計        : 110万円(父・祖父それぞれに110万円ずつではない)

この基礎控除110万円は、相続時に相続財産へ加算する際も控除後の残額だけが加算対象になります(相続税法第21条の15第1項)。基礎控除110万円の部分は、相続財産に戻りません。

相続時精算課税の特別控除額は累計2,500万円です。この特別控除は、期限内申告書に控除を受ける金額の記載がある場合に限り適用されます(相続税法第21条の12第2項)。申告期限(贈与を受けた年の翌年3月15日)を過ぎると、控除自体が使えなくなる点に注意してください。

なお、この相続時精算課税の基礎控除110万円は、6-1で説明した暦年課税の基礎控除110万円とは別の制度です。ある贈与者について相続時精算課税を選択した場合、その贈与者からの贈与には暦年課税の基礎控除は適用されません。同じ「110万円」でも二重に使えるわけではない点に注意してください。

また、通常は贈与者が「贈与年の1月1日において60歳以上」でないと相続時精算課税を選択できませんが、住宅取得等資金の贈与については、贈与者が60歳未満であっても令和8年12月31日までの贈与に限り相続時精算課税を選択できる特例があります(租税特別措置法第70条の3)。

住宅ローンを利用する場合は、住宅ローン控除2026年版ガイド との関係も確認しておくとよいでしょう。贈与資金を頭金に充てると住宅ローンの借入額(年末残高)が減りますが、住宅ローン控除への影響は借入額が控除の借入限度額を下回っているかどうかで変わります。詳しい計算例は同ガイドを参照してください。

判断のポイント: 相続時精算課税を選択すると、同一の贈与者からの贈与は以後すべて相続時精算課税に統一されます(暦年課税に戻せません)。長期的な相続対策の観点から、税理士への相談をお勧めします。


7. 相続財産に加算されない、この制度の隠れたメリット

この非課税措置を使うメリットは、贈与税がかからないことだけではありません。贈与者が亡くなったときの相続税計算でも、非課税の適用を受けた金額は足し戻されません。

国税庁のQ&Aには、次のように明記されています。

Q5 住宅取得等資金の贈与者が亡くなった場合、贈与者に係る相続税を計算する際に、非課税の特例の適用を受けた住宅取得等資金は相続税の課税価格に加算するのですか。
A5 非課税の特例の適用を受けて、贈与税の課税価格に算入されなかった金額は、相続税の課税価格に加算する必要はありません。(相法19、措法70の2)

通常の暦年贈与は、贈与者が亡くなると相続開始前7年以内の贈与分が相続財産に足し戻されます(生前贈与加算。令和6年1月1日以後の贈与から、加算期間が3年から7年へ段階的に延長されています)。これに対して、この非課税措置の適用を受けた金額は、その足し戻しの対象外です。贈与の翌年に贈与者が亡くなったとしても、非課税の適用を受けた分(最大1,000万円)はそのまま相続財産の外に出ます。

生前贈与加算の7年ルールの詳細は、相続・贈与税の改正2026年版ガイド で解説しています。


8. 申告の手続き

8-1. 非課税でも申告は必須

非課税措置の適用を受けるには、贈与税がゼロになる場合でも必ず贈与税の申告書を提出しなければなりません。申告をしなければ、非課税の適用は受けられません。

8-2. 申告期間と提出先

項目 内容
申告期間 贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日
提出先 受贈者の納税地の所轄税務署

2026年(令和8年)中に贈与を受けた場合の申告期限は、2027年(令和9年)3月15日です。

8-3. 主な添付書類

申告書は、次の様式を使用します(国税庁「令和7年分贈与税の申告書等の様式一覧」による様式名。様式は年分ごとに更新されるため、実際に提出する年分のものを国税庁サイトで確認してください)。

  • 申告書第1表(兼贈与税の額の計算明細書)
  • 申告書第1表の2 — 住宅取得等資金の非課税の適用を受ける場合の計算に使用
  • 相続時精算課税の特例(6-2参照)もあわせて選ぶ場合は、加えて相続時精算課税選択届出書

以下の書類を申告書に添付して提出します。

書類 備考
戸籍の謄本 贈与者と受贈者の関係を証明するもの
新築・取得の契約書の写し 請負契約書・売買契約書など
省エネ等住宅の証明書 住宅性能証明書など(省エネ等住宅に該当する場合のみ)
土地・建物の登記事項証明書 申告書に不動産番号を記載することで添付省略可

申告の流れ: 贈与を受けたあと、住宅の取得・居住と、贈与税申告書の提出(翌年2月1日〜3月15日)が必要です。居住の最終期限(翌年12月31日)を含めた正確な日付は「5. 期限のすべて」の一覧表で確認してください。


9. 注意点と実務の落とし穴

落とし穴①:贈与の「タイミング」は年内に

非課税措置の対象は「令和8年(2026年)12月31日までに贈与を受けた資金」です。住宅の引き渡しが2027年以降であっても、資金の贈与は2026年12月31日までに行う必要があります。

住宅が年末ギリギリに完成する場合でも、資金の移動(金融機関での振込履歴等)が2026年内であることを明確にしておきましょう。

落とし穴②:居住期限の管理

贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住の用に供することが原則です。住宅の引き渡し遅延や引越しの遅れで、居住が3月15日以降になるケースがあります。「確実と見込まれる場合」には例外が認められますが、その場合の最終期限は翌年12月31日です(5章参照)。それまでに居住しなければ非課税が取り消され、該当することとなった日から2か月以内に修正申告と納税が必要になります。

落とし穴③:申告の失念

「非課税なのだから申告しなくていい」という誤解は禁物です。贈与税の申告書を提出しなければ、非課税措置そのものが適用されません。贈与額が非課税限度額以内であっても、翌年2月1日〜3月15日の申告期間中に必ず申告してください。

落とし穴④:床面積の確認ミス

40㎡未満の住宅は対象外です。また、40㎡以上50㎡未満の場合は受贈者の合計所得金額が1,000万円以下(通常の2,000万円より厳しい条件)に限られます。マンション購入の際は登記簿上の専有床面積を必ず確認してください。

落とし穴⑤:過去に使っていないか確認せずに進める

この非課税措置は「一生に一度」です。過去に平成21年分〜令和5年分の贈与税申告で同じ非課税措置を使ったことがある場合、原則として今回は使えません(3-1参照)。過去の贈与税申告書を確認せずに手続きを進めると、後になって否認されるおそれがあります。

落とし穴⑥:住宅の名義を確認しない

資金を出す人(贈与者)と、住宅の名義人(所有者)を混同しないよう注意してください。資金の贈与を受けた本人が住宅の共有持分を一切持たない場合、非課税措置は使えません(4章参照)。特に夫婦で資金を出し合う場合、贈与を受けた側の持分が登記簿にきちんと反映されているか確認しましょう。


10. FAQ

Q1. 非課税措置なのに贈与税の申告が必要なのはなぜですか?

租税特別措置法上、この非課税は「申告を要件として認められる措置」です。税務署への申告書提出により初めて適用が確定します。申告不要の暦年課税基礎控除110万円以内の贈与とは異なり、本措置は必ず申告書を提出しなければなりません。原則として、申告期限(翌年3月15日)を過ぎると適用を受けられません。条文上は、記載や書類の添付がなかったことについて税務署長が「やむを得ない事情」を認めた場合の救済規定がありますが(措法70条の2第15項)、認められる保証はありません。期限内申告を前提に準備してください。

Q2. 2026年中に贈与を受けて、住宅が2027年3月15日までに完成しない場合はどうなりますか?

原則として、翌年3月15日までに居住することが要件です。ただし「その後遅滞なく居住することが確実と見込まれる場合」には、翌年3月15日時点で未居住でも適用が認められます。この場合、申告書提出時に「居住見込み」を示す書類(工事請負契約書・工程表等)を添付するのが実務上の対応です。ただし最終的な期限は翌年12月31日で(5章参照)、それまでに実際に居住しなかった場合は非課税が取り消され、該当することとなった日から2か月以内の修正申告と納税が必要になります。

Q3. 合計所得金額2,000万円を超えてしまった年は適用できませんか?

所得の判定は「贈与を受けた年」の合計所得金額です。その年の合計所得金額が2,000万円を超えた場合(床面積40〜50㎡未満では1,000万円超)、この非課税特例は適用できません。なお、翌年以降の所得については影響しません。

ただし、相続時精算課税の特例(6-2参照)には合計所得金額の要件がありません。 贈与者・受贈者の要件を満たせば、所得が2,000万円を超えていても選択できます。相続時精算課税は一度選ぶと同じ贈与者からの贈与について暦年課税へ戻れないため、所得超過だからといって安易に選ぶものではありません。税理士に相談のうえ判断してください。

Q4. 父母から1,000万円、祖父母から500万円の合計1,500万円を同じ年に受け取ることはできますか?

この非課税措置の限度額は「受贈者1人あたり・その年の合計」で判断します。父母・祖父母など複数の直系尊属から贈与を受けても、省エネ等住宅であれば非課税枠は合計1,000万円(その他住宅は500万円)です。1,500万円の贈与を受けた場合、1,000万円を超える500万円分(さらに暦年基礎控除110万円を控除した390万円)が課税対象となります。

Q5. 相続時精算課税を選んでいる父から住宅取得資金の贈与を受ける場合、何が有利ですか?

相続時精算課税では、贈与時に精算課税の特別控除額(累計2,500万円)を超えた部分に20%の贈与税が発生しますが、後の相続時に精算されます。住宅取得等資金の非課税措置と相続時精算課税を組み合わせた場合、例えば省エネ等住宅向けに1,500万円の贈与を受けると、非課税1,000万円 + 相続時精算課税の基礎控除110万円で1,110万円が実質非課税、残り390万円が精算課税の特別控除の対象(過去の使用枠次第)となります。なお相続時精算課税を一度選択すると、同じ贈与者からの贈与は将来も精算課税に統一されます。選択は慎重に行い、税理士への相談をお勧めします。

Q6. 2026年12月31日の期限後、この制度はなくなるのですか?

2026年9月7日時点で施行されている条文でも、対象期間は「令和六年一月一日から令和八年十二月三十一日までの間」のままで、期限は動いていません。国土交通省は2026年8月28日公表の令和9年度税制改正要望で本措置に「必要な検討を行い、所要の措置を講じる」としていますが、これは延長を明示した表現ではありません(1-1参照)。税制改正は例年12月の与党税制改正大綱で方向性が固まるため、令和9年以降の扱いは2026年12月まで確定しません。「2026年12月31日まで」という前提で計画を立て、延長が決まれば改めて確認することをお勧めします。

Q7. 妻の親(配偶者の親)からの贈与は対象になりますか?

対象になりません。国税庁のQ&Aは次のとおりです。

自己の直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合には非課税の特例の適用を受けられますが、配偶者の親は直系尊属には含まれませんので、質問の場合には非課税の特例の適用を受けることはできません。ただし、配偶者の親と養子縁組をしている場合は直系尊属に該当しますので、このような場合は他の要件を満たせば非課税の特例の適用を受けることができます。(措法70の2、措通70の2-1)

配偶者の親と養子縁組をしている場合は、直系尊属として扱われます。

Q8. 住宅ローンの返済に充てる資金として贈与を受けた場合は対象になりますか?

対象になりません。国税庁は「非課税の特例は居住の用に供する家屋の新築もしくは取得または増改築等の対価に充てるための金銭の贈与を受けた場合に限られていますので、住宅ローンを返済するための金銭の贈与を受けた場合には非課税の特例の対象となりません」としています(措法70の2)。新築・取得・増改築の対価そのものに充てる資金である必要があります。

Q9. 現金ではなく、住宅そのものを贈与された場合は対象になりますか?

対象になりません。この非課税措置は「金銭の贈与」を受けた場合に限られており、不動産そのものの贈与は対象外です(措法70の2)。

Q10. 非課税の適用を受けた資金は、贈与者が亡くなったときに相続財産に足し戻されますか?

足し戻されません。詳しくは7章で解説していますが、非課税の特例の適用を受けて贈与税の課税価格に算入されなかった金額は、相続税の課税価格に加算する必要がないと国税庁のQ&Aに明記されています(相法19、措法70の2)。


まとめ

住宅取得等資金の贈与税非課税措置(租税特別措置法第70条の2)の要点を整理します。

  1. 期限: 2026年(令和8年)12月31日までに贈与を受けること。2026年9月7日時点で条文上の期限は動いていない
  2. 非課税限度額: 省エネ等住宅1,000万円・その他の住宅500万円(暦年基礎控除110万円と併用可)
  3. 受贈者要件: 直系尊属から・18歳以上・合計所得2,000万円以下(床面積40〜50㎡未満は1,000万円以下)・過去にこの非課税措置を使ったことがない
  4. 住宅要件: 床面積40〜240㎡(うち2分の1以上が受贈者の居住用)・受贈者本人が持分を持つこと・翌年3月15日までの居住(見込み含む)、最終期限は翌年12月31日
  5. 申告は必須: 非課税額内でも翌年2月1日〜3月15日に贈与税申告書を提出
  6. 相続財産に加算されない: 非課税の適用を受けた金額は、贈与者が亡くなっても相続財産に足し戻されない
  7. 令和9年度税制改正要望: 国土交通省が2026年8月28日公表の要望に本措置を盛り込んだが、文言は「所要の措置」であり延長は確定していない

2026年中に住宅取得を予定されている方は、資金の贈与が12月31日までであること、申告が翌年3月15日までであることに加え、過去の適用歴や住宅の名義(持分)といった見落としやすい要件も確認し、早めに準備を進めてください。贈与の最適な組み合わせ(暦年課税か相続時精算課税か)は個人の状況によって大きく異なりますので、具体的な税額計算は税理士にご相談することをお勧めします。


出典
– 国税庁タックスアンサー No.4508「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508.htm(参照日: 2026-09-07)
– 国税庁タックスアンサー No.4508 Q&A https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508_qa.htm(参照日: 2026-09-07)
– 国税庁タックスアンサー No.4503「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税選択の特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4503.htm(参照日: 2026-09-07)
– 国土交通省「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000018.html(参照日: 2026-09-07)
– 国土交通省「令和9年度国土交通省税制改正要望事項」(令和8年8月28日公表)https://www.mlit.go.jp/page/content/002018722.pdf(参照日: 2026-09-07)
– e-Gov法令検索 租税特別措置法 第70条の2・第70条の3・第70条の3の2 https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026(参照日: 2026-09-07)
– e-Gov法令検索 租税特別措置法施行令 第40条の4の2 https://laws.e-gov.go.jp/law/332CO0000000043(参照日: 2026-09-07)

免責事項: 本記事は2026年9月7日時点の情報に基づく一般的な制度解説です。税額・適用可否は個人の状況により異なります。最終判断は国税庁の公式情報の確認、または税理士・公認税理士にご相談ください。本記事の情報に基づいて行動した結果生じた損害については、当サイトは責任を負いません。


JG

実務ガイド編集部

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