最終更新日: 2026-04-18
令和8年度税制改正大綱(2025年12月26日閣議決定)では、個人所得課税の「年収の壁178万円」問題が大きく注目されたが、資産課税(相続税・贈与税)でも実務に直結する重要な改正が複数盛り込まれた。なかでも影響が大きいのは、① 教育資金の一括贈与非課税措置の廃止済み(令和8年3月31日で適用終了)、② 法人版・個人版事業承継税制の特例承継計画提出期限の延長、③ 貸付用不動産の評価適正化(令和9年1月1日適用)、④ 超富裕層への最低税率(ミニマム税)の大幅強化(令和9年分から税率30%・発動ライン1.65億円超)の4点である。一方、住宅取得等資金の贈与非課税(令和8年12月31日まで)・結婚子育て資金の一括贈与非課税(令和9年3月31日まで)は令和8年度大綱での延長はなく、いずれも期限内に要注意の状態が続く。本記事は令和8年度大綱の公式資料(財務省・国税庁)に基づき、相続・贈与を控えた個人、中小企業オーナー、士業向けに資産課税の改正全体像と実務対応を体系的に整理する。
【改正の全体像】令和8年度 資産課税の主要改正点マップ
| 分野 | 改正項目 | 変更の方向性 | 適用時期 |
|---|---|---|---|
| 贈与税(非課税) | 教育資金の一括贈与非課税の廃止 | 廃止(期限延長なし) | 令和8年3月31日で終了 |
| 贈与税(非課税) | 住宅取得等資金の贈与税非課税 | 令和8年12月31日まで継続(要確認) | 令和8年12月31日 |
| 贈与税(非課税) | 結婚・子育て資金の一括贈与非課税 | 令和9年3月31日まで継続 | 令和9年3月31日 |
| 相続税・贈与税 | 貸付用不動産の評価適正化 | 課税時期前5年以内取得分は取引価額ベース | 令和9年1月1日以後適用 |
| 事業承継 | 法人版事業承継税制(特例承継計画) | 提出期限を1年6か月延長 | 令和9年9月30日まで延長 |
| 事業承継 | 個人版事業承継税制(個人事業承継計画) | 提出期限を2年6か月延長 | 令和8年9月30日まで延長 |
| 個人所得課税 | 超富裕層ミニマム税の強化 | 発動ライン引下げ・税率引上げ | 令和9年分所得税以後 |
| 相続税・贈与税 | 相続時精算課税制度 | 令和8年度改正なし(令和6年度改正済み) | (改正なし) |
| 相続税 | マンション評価(区分所有補正率) | 令和8年度改正なし(令和6年度施行済み) | (令和6年1月1日適用済み) |
根拠: 令和8年度税制改正の大綱(令和7年12月26日閣議決定)、財務省公表資料
1. 教育資金の一括贈与非課税措置——令和8年3月31日で廃止済み
改正の概要
直系尊属(父母・祖父母)から30歳未満の子・孫に対し、信託銀行等を通じて教育資金を一括贈与した場合の贈与税非課税措置は、令和8年3月31日の適用期限をもって廃止済みである(本記事公開時点の2026年4月時点で適用終了済み)。令和8年度大綱は「適用期限を延長しない」と明記しており、令和8年4月1日以降の新規契約(信託等の締結)は対象外となっている。
改正前後の比較
| 項目 | 改正前(令和8年3月31日まで) | 令和8年4月1日以降 |
|---|---|---|
| 非課税限度額 | 1,500万円(学校等以外は500万円) | 新規適用なし |
| 対象受贈者 | 30歳未満の直系卑属(子・孫等) | (新規拠出不可) |
| 拠出方法 | 教育資金管理契約に基づく信託等 | (新規契約締結不可) |
| 既拠出分の取扱い | 引き続き本措置を適用できる | 既存契約は継続適用可 |
根拠: 令和8年度税制改正の大綱 第二・一(教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置)
【注意・実務ポイント】 令和8年3月31日以前に契約を締結して金銭を拠出済みの場合は、信託期間中の教育目的支出として引き続き非課税扱いが受けられる。廃止はあくまで「新規拠出・新規契約の開始不可」。ただし、受贈者が30歳に達した時点・信託契約終了時に残額がある場合は贈与税(または相続税)が課されるため、残額の使途計画を再確認すること。令和8年4月以降は暦年贈与(年110万円)や相続時精算課税(年110万円基礎控除)に切り替えて資金移転を設計する。
2. 住宅取得等資金の贈与税非課税——令和8年12月31日が期限
現行制度の概要(令和8年4月時点)
直系尊属(父母・祖父母)から住宅取得等資金の贈与を受け、省エネ住宅や一般住宅の新築・取得・増改築に充てた場合、一定額までの贈与税が非課税となる制度。令和8年12月31日までの適用が定められている。
非課税限度額(令和8年度現在)
| 住宅の種類 | 非課税限度額 |
|---|---|
| 省エネ等住宅(一定の省エネ基準を満たす住宅) | 1,000万円 |
| 上記以外の一般住宅 | 500万円 |
※ 省エネ等住宅とは、下記いずれかの基準を満たし、住宅性能証明書等で証明されたもの。新築住宅は「断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上」、耐震等級2以上または免震建築物、高齢者等配慮対策等級3以上のいずれか。既存(中古)住宅および増改築は「断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上」、耐震等級2以上または免震、高齢者等配慮等級3以上のいずれか(国税庁タックスアンサー No.4508)。
根拠: 租税特別措置法第70条の2(令和8年4月1日現在)
主な適用要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 贈与者 | 父母・祖父母など直系尊属(年齢制限なし) |
| 受贈者 | 贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上、合計所得金額2,000万円以下 |
| 住宅要件 | 登記上の床面積40㎡以上240㎡以下、床面積の1/2以上が居住用 |
| 取得期限 | 贈与の翌年3月15日までに住宅取得・居住(見込み含む) |
| 適用期限 | 令和8年12月31日までの贈与 |
【注意・実務ポイント】 令和8年度税制改正大綱(財務省 令和7年12月26日閣議決定)を参照した時点では、住宅取得等資金非課税措置の延長は明記されていない。現行制度上の期限は令和8年12月31日までであり、それ以降の取扱いは今後の税制改正大綱・関連法令で決まる可能性がある(要最新情報確認)。住宅取得を計画中の方は年内の贈与・住宅取得の両要件を満たせるよう逆算してスケジュールを組むのが安全である。なお相続時精算課税と住宅取得等資金非課税の重複適用は認められており、組み合わせで贈与税負担ゼロで最大の資金移転が可能。
最新の延長有無や個別要件の適用可否は、所轄の税務署または国税庁 税務相談チャットボット・電話相談センター、あるいは顧問税理士に確認のうえ進めること。
3. 結婚・子育て資金の一括贈与非課税——令和9年3月31日まで
現行制度の概要(令和8年4月時点)
直系尊属(父母・祖父母)から18歳以上50歳未満の子・孫に対し、金融機関等との結婚・子育て資金管理契約に基づいて一括贈与した場合に、一定額まで贈与税が非課税となる制度。適用期限は平成27年4月1日から令和9年3月31日まで。
制度の主な内容
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 非課税限度額 | 1,000万円(うち結婚関係費用は300万円が上限) |
| 受贈者の要件 | 18歳以上50歳未満。前年の合計所得金額が1,000万円以下 |
| 対象となる費用 | 結婚式費用・婚姻関係費用・妊娠・出産・育児・保育料等 |
| 適用期限 | 令和9年3月31日まで(新規契約の締結期限) |
根拠: 租税特別措置法第70条の2の3(令和8年4月1日現在)
【注意・実務ポイント】 「令和8年3月31日で廃止されるのは教育資金、結婚・子育て資金は令和9年3月31日まで継続」と混同しないこと。令和8年度大綱での延長記述はなく、令和9年3月31日が最終期限となる可能性が高い。適用期限内に金融機関で管理契約を締結するだけで非課税枠を確保できる。受贈者が50歳到達時に残額がある場合は贈与税の対象となるため、使途・時期の見通しを確認した上で活用すること。
4. 事業承継税制——特例承継計画の提出期限が延長
令和8年度改正の内容
令和8年度税制改正により、法人版・個人版の事業承継税制における「特例承継計画」「個人事業承継計画」の提出期限が延長された。
| 種別 | 改正前の提出期限 | 改正後の提出期限 | 延長幅 |
|---|---|---|---|
| 法人版(特例承継計画) | 令和8年3月31日 | 令和9年9月30日 | 1年6か月延長 |
| 個人版(個人事業承継計画) | 令和6年3月31日 | 令和8年9月30日 | 2年6か月延長 |
根拠: 令和8年度税制改正の大綱 第二・二・2(租税特別措置等)。大綱本文では「個人版事業承継計画の提出期限を2年6月延長する」と明記されており、旧期限(令和6年3月31日)から2年6月延長した結果が令和8年9月30日となる。具体的な日付の最終確認は中小企業庁 個人版事業承継税制ページおよび国税庁タックスアンサー No.4150で最新情報を参照のこと。
贈与・相続の適用期限は延長なし
重要: 特例承継計画の提出期限は延長されたが、贈与・相続による株式承継の実行期限は延長されていない。
| 種別 | 適用期限(実行期限) | 備考 |
|---|---|---|
| 法人版(贈与・相続の実行) | 令和9年12月31日(変更なし) | 令和6年度大綱「今後とも延長しない」と明記 |
| 個人版(贈与・相続の実行) | 令和8年12月31日(変更なし) | 個人版は法人版より1年早い期限 |
【注意・実務ポイント】 「計画提出だけ延長された」と安心するのは危険。実際の承継実行期限は延長されていない。個人版は令和8年12月31日(今年末)、法人版は令和9年12月31日。事業承継の実行には通常1〜2年の準備期間が必要のため、今すぐ顧問税理士と承継シナリオを策定すること。また、非上場株式の評価ルールは2027年度改正で見直しが検討されている(非上場株式の相続税評価見直し2027年度改正参照)。評価方法の変更が実施される前に承継を完了させる意義がある。
5. 貸付用不動産の評価適正化——令和9年1月1日から適用
改正の概要
令和8年度税制改正大綱で、相続税・贈与税の計算における貸付用不動産の評価方法が見直された。課税時期(相続開始日・贈与日)前5年以内に対価を伴う取引によって取得または新築した一定の貸付用不動産については、相続税評価額(路線価等)ではなく、課税時期における通常の取引価額(時価)に相当する金額で評価することとされた。
この改正は令和9年1月1日以後の相続・遺贈・贈与から適用される。
改正前後の比較
| 項目 | 改正前 | 改正後(令和9年1月1日以後) |
|---|---|---|
| 評価の基本ルール | 相続税評価額(路線価・倍率方式等) | 同左(原則) |
| 取得後5年以内の貸付用不動産 | 相続税評価額(路線価等)で評価 | 通常の取引価額(時価)で評価 |
| 対象資産 | — | 課税時期前5年以内に取得・新築した貸付用不動産、不動産小口化商品等 |
| 影響の方向性 | 時価の60〜70%程度の評価額となるケースが多かった | 評価乖離が是正され、評価額が上昇するケースがある |
根拠: 令和8年度税制改正の大綱 第二・二・2(貸付用不動産の評価に関する措置)
適用除外と評価方法の特例
大綱には、実務上影響の大きい3つの重要ルールが織り込まれている。
① 既存所有地に新築した家屋は適用除外(①類型のみ)
大綱の注書きで、「通達に定める日までに、被相続人等がその所有する土地(同日の5年前から所有しているものに限る。)に新築をした家屋(同日において建築中のものを含む。)には適用しない」と明記されている。つまり、5年超前から保有してきた自己所有地にアパート・賃貸マンションを新築するパターンは、今回の時価評価の対象外。地主が遊休地を活用して賃貸住宅を建てる従来型の相続対策は引き続き相続税評価額ベースで評価可能。ただし、この適用除外は「取得後5年以内」型(①類型)に限られ、後述の不動産特定共同事業契約・信託受益権(②類型)には及ばない。
② 取得価額×80%の簡便評価(①類型)
取得後5年以内の貸付用不動産(①類型)について、「通常の取引価額に相当する金額」の算定は、課税上の弊害がない限り、取得価額を基に地価の変動等を考慮して計算した価額の100分の80に相当する金額で可能。時価(現時点の売買相場)の把握が難しいケースに向けた実務上の便宜特例。
③ 不動産特定共同事業契約・信託受益権(②類型)は事業者価格参酌が原則
不動産特定共同事業契約または信託受益権に係る金融商品取引契約のうち一定のものに基づく権利の目的となっている貸付用不動産については、取得の時期にかかわらず時価評価の対象となる(5年縛りなし)。ただし評価方法は①と異なり、事業者等が示した適正な処分価格・買取価格、売買実例価額、定期報告書記載の価格等を参酌した金額で評価するのが原則。これらに該当する価格がないと認められる場合に限り、①に準じた取得価額×80%評価に戻る設計。
| 類型 | 対象資産 | 評価方法の原則 | 簡便評価 | 適用除外 |
|---|---|---|---|---|
| ① 取得5年以内 | 課税時期前5年以内に取得・新築した貸付用不動産 | 通常の取引価額(時価) | 取得価額ベース×80% | 5年超前所有土地への新築家屋(建築中含む) |
| ② 金融商品化不動産 | 不動産特定共同事業契約・信託受益権に基づく貸付用不動産(取得時期問わず) | 事業者価格等を参酌した金額 | 価格不明時のみ①の80%評価に準じる | — |
背景:タワーマンション節税への対抗措置との連続性
この改正は、令和6年1月1日から適用されているマンション(居住用区分所有財産)の評価適正化(区分所有補正率の導入)の流れを汲むものである。マンション評価の適正化では「評価乖離率が1.67以上の場合に区分所有補正率を乗じて評価額を引き上げる」という仕組みが導入されたが、今回の貸付用不動産の見直しはさらに踏み込んで、短期間に取得した貸付用不動産については取得価額に近い「時価」で評価することを求めるものである。
【実務ポイント・専門家の視点】 令和8年12月31日以前に取得済みの貸付用不動産は改正の対象外。令和9年1月1日以後に新たに取得する貸付用不動産については、取得後5年以内に相続・贈与が発生した場合に時価評価が適用される。「借入金で不動産を購入して相続税評価を圧縮する」従来スキームが機能しにくくなるため、今後の相続対策設計を見直す必要がある。国税庁は令和4年に財産評価基本通達6項活用の最高裁勝訴から通達改正での対抗強化を進めており、この改正はその集大成。税理士に個別相談の上、慎重に検討すること。
6. 相続時精算課税・マンション評価——令和6年度改正の確認事項
相続時精算課税制度(令和8年度は変更なし)
令和6年1月1日以後の贈与から「相続時精算課税に係る基礎控除額110万円」が新設された(令和6年度税制改正)。令和8年度の改正はない。
| 項目 | 令和5年以前 | 令和6年1月1日以降(現行) |
|---|---|---|
| 基礎控除 | なし | 年間110万円(特定贈与者ごと) |
| 特別控除 | 2,500万円(累積) | 2,500万円(変更なし) |
| 税率 | 一律20%(特別控除超過分) | 同左 |
| 相続財産への加算 | 贈与額の全額 | 基礎控除後の残額(110万円超のみ) |
| 申告義務 | 全額申告必要 | 110万円以下なら申告不要 |
根拠: 相続税法第21条の9〜第21条の18
マンション評価(区分所有補正率)(令和8年度は変更なし)
令和5年10月の財産評価基本通達改正により、令和6年1月1日以後の相続・贈与で取得した居住用区分所有財産(分譲マンション)には区分所有補正率が適用されている。令和8年度改正での変更はない。
評価乖離率(築年数・総階数・所在階・敷地面積の4要素で算定)が1.67以上のマンションに補正が発動し、評価額が市場価格の60%程度に収束する仕組み。都市部の高層マンションを相続対策として購入する場合、従来のように路線価評価額を大幅に圧縮する効果が限定される。
根拠: 財産評価基本通達(令和5年10月6日課評2-74改正)
7. 超富裕層へのミニマム税強化——令和9年分から税率30%に引上げ
改正の概要
令和6年分から適用が開始されている「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」(ミニマム税・グローバル富裕層ミニマム課税)が、令和9年分所得税から大幅に強化される。
| 項目 | 現行(令和6〜8年分) | 改正後(令和9年分以後) |
|---|---|---|
| 特別控除額(発動ライン) | 3.3億円 | 1.65億円 |
| 上乗せ税率 | 22.5% | 30% |
| 基準所得金額の算定 | 申告所得+申告不要を選択した所得 | 同左(変更なし) |
| 適用開始 | 令和6年分所得税から | 令和9年分所得税から |
根拠: 所得税法第165条の2(改正後)、令和8年度税制改正の大綱 第一・一・4
算定ロジック:「1.65億円」と「約3.4億円」の関係
改正後のミニマム税は、(A)「基準所得金額」から(B)「特別控除額1.65億円」を差し引いた残額に上乗せ税率30%を乗じて算出する「上乗せ所得税額」が、通常の所得税額を超える場合にその差額が追加課税される仕組みである。
- 特別控除額(1.65億円):ミニマム税の計算上「差し引く」金額。基準所得金額がこのラインを超えて初めて上乗せ税額の計算対象となる
- 約3.4億円:実際に「追加税負担」が発生し始める目安の基準所得金額。通常の所得税額(累進課税による税額)と上乗せ税額(基準所得金額 − 1.65億円)×30%)が逆転する水準がおおむね3.4億円前後となる
つまり、基準所得金額が1.65億円超〜約3.4億円までの帯域では「上乗せ税額」自体は計算されるものの、通常の所得税額のほうが大きいため追加納税は発生しない。基準所得金額が約3.4億円を超えてから両者の差額が追加税負担として顕在化する(下表はその目安)。
ミニマム税の発動イメージ(令和9年分以後)
改正後は、基準所得金額(株式譲渡所得等を含む)が約3.4億円を超える水準から実際の追加税負担が生じる構造となる。
| 基準所得金額(株式譲渡所得等) | 追加税負担の発生 | 概算の追加税負担 |
|---|---|---|
| 1億円 | なし(1.65億円以下) | 0円 |
| 2億円 | (上乗せ計算は作動するが通常所得税額が上回り追加負担は限定的) | ごく軽微 |
| 5億円 | 発生 | 約1億50万円 |
| 10億円 | 発生 | 約2億5,050万円 |
※上表は概算。実際には基準所得金額の内訳(給与・配当・譲渡所得等の構成)や適用控除により変動する。約3.4億円を超えると上乗せ税額が通常の所得税額を明確に超え始め、差額が追加課税されるイメージ。
【注意・実務ポイント】 令和8年(2026年)分所得税では旧基準(3.3億円・22.5%)が適用され、新基準(1.65億円・30%)は令和9年分から。これは所得税の追加課税であり相続税・贈与税とは別だが、M&Aによる非上場株式売却や大型キャピタルゲインを予定しているオーナー経営者は、「税負担の軽い2026年中に完了させるか2027年以降か」の実行タイミングを顧問税理士と早急にシミュレーションすること。
実務上の注意点・対策
対象者別の緊急対応チェックリスト
| 対象者 | 期限 | 対応事項 |
|---|---|---|
| 教育資金既存契約者 | 受贈者30歳まで | 残額の使途計画を再確認。30歳到達時の残額は贈与税対象 |
| 住宅購入予定者 | 令和8年12月31日 | 親・祖父母からの資金贈与を年内に完了。省エネ住宅なら最大1,000万円非課税 |
| 結婚・育児予定者 | 令和9年3月31日 | 金融機関で管理契約を締結(1,000万円非課税枠を確保) |
| 個人事業者(承継) | 令和8年9月30日(計画提出)/ 令和8年12月31日(実行) | 個人版事業承継税制。計画提出期限は2年6か月延長されたが実行期限は変更なし。今すぐ税理士と相談 |
| 中小企業オーナー(法人版) | 令和9年9月30日(計画提出)/ 令和9年12月31日(実行) | 特例承継計画を都道府県に提出。非上場株式評価見直し(2027年度改正予定)前に承継シナリオを設計する |
| 不動産活用で相続対策中 | 令和9年1月1日〜 | 令和9年以降に取得する貸付用不動産は取得後5年以内に時価評価。新規購入前に効果を再試算 |
| 株式等多額保有者 | 令和9年分所得税〜 | ミニマム税強化(1.65億円超・30%)。大型売却・承継の実行年度を再考 |
暦年贈与の加算期間延長に要注意(令和6年度改正・既施行の参考情報)
【本項の位置づけ】 以下は令和6年度税制改正(令和5年12月成立、既施行)の内容であり、令和8年度改正で新設・変更されたものではない。ただし令和8年度の資産課税対応を設計するうえで併せて把握しておくべき重要ルールのため、関連参考情報として掲載する。
令和6年度税制改正(令和5年12月成立)により、相続前の暦年贈与が相続財産に加算される期間が、従来の3年から段階的に7年に延長されている。
| 相続開始時期 | 加算対象期間 |
|---|---|
| 令和8年12月31日以前の相続 | 相続前3年分 |
| 令和9年1月1日〜令和12年12月31日 | 段階的に延長(3年超〜7年分) |
| 令和13年1月1日以後の相続 | 相続前7年分 |
FAQ
令和8年3月31日以前に教育資金管理契約を締結し金銭等を拠出済みの場合は、信託期間中の教育関連支出として引き続き非課税扱いが受けられます。廃止は「令和8年4月1日以降の新規拠出・新規契約」への措置です。受贈者が30歳到達時(要件を満たす場合は40歳)または贈与者死亡時に残額がある場合は贈与税または相続税が課されます。残額と使途計画を再確認の上、必要に応じて税理士に相談してください。
根拠: 令和8年度税制改正の大綱 第二・一および租税特別措置法第70条の2の2
最大の違いは「相続財産への加算の有無」です。暦年課税は相続前7年分が加算されますが、相続時精算課税の基礎控除内(110万円以内)の贈与は加算されません。長期にわたって少額贈与を続ける場合は相続時精算課税の基礎控除が有利になりやすい傾向があります。ただし一度相続時精算課税を選択すると暦年課税への変更は不可のため、贈与者の年齢・健康状態・資産規模を踏まえて税理士と個別シミュレーションを行った上で選択してください。
対象は、課税時期(相続開始日または贈与日)前5年以内に対価を伴う取引により取得または新築した「一定の貸付用不動産」です。賃貸アパート・賃貸マンション・貸しオフィスビル・不動産小口化商品(GK-TKスキーム等で組成された不動産を含む)などが対象となります。評価方法は相続税評価額(路線価等)ではなく「通常の取引価額(市場取引価格)に相当する金額」です。逆に、令和9年1月1日前(令和8年12月31日まで)に取得した不動産や、取得後5年を超えて保有している不動産については従来の評価方法(路線価・倍率方式等)が引き続き適用されます。
根拠: 令和8年度税制改正の大綱 第二・二・2(資産課税関連措置)
延長されていません。令和8年度改正で延長されたのは「特例承継計画の提出期限」のみ(令和9年9月30日まで)です。実際に贈与・相続により株式の承継を実行する期限は令和9年12月31日のままです。令和6年度大綱でも「今後とも延長を行わない」と明記されており、延長の見込みはないとみるべきです。個人版事業承継税制の実行期限は令和8年12月31日(今年末)のため、個人事業主の方は早急に確認が必要です。詳細は税制改正2026年の全体像とあわせて確認してください。
令和6年1月1日以後の相続等から「区分所有補正率」が適用されます。①築年数、②総階数指数、③所在階、④敷地利用権面積の4要素から「評価乖離率」を算定し、1.67以上の場合に区分所有補正率を乗じて評価額を引き上げます(市場価格の60%程度に収束)。地方都市の低層マンションでは乖離率が1.67未満のケースも多く、その場合は従来どおりの評価方法が適用されます。令和8年度大綱ではマンション評価の追加変更はありません。
まとめ
令和8年度の資産課税改正は「課税の適正化」と「事業承継支援の延長」の両立が基本方針である。
今すぐ対応が必要な最重要事項:
- 教育資金の一括贈与は令和8年3月31日で廃止済み——今後は暦年贈与か相続時精算課税に切り替える
- 個人版事業承継税制の実行期限は令和8年12月31日——今年末に迫っている。個人事業主は今すぐ税理士に相談
- 貸付用不動産の評価適正化は令和9年1月1日適用——不動産活用の相続対策設計を再検討する
法人版事業承継税制(令和9年12月31日期限)・住宅取得等資金贈与(令和8年12月31日期限)・超富裕層ミニマム税強化(令和9年分・30%)も近づいており、資産移転スケジュールの早期設計が重要である。
不動産相続の登記手続きは相続登記義務化ガイド、不動産売却時の税務は不動産譲渡所得税ガイド、3,000万円特別控除は特別控除ガイドも参照されたい。
【免責事項】 本記事は令和8年度税制改正の大綱(令和7年12月26日閣議決定)および関連する公開情報に基づき情報提供を目的として作成した。数値・期限は概要であり、個別の税務判断の根拠とすることを目的としていない。具体的な税務判断・申告実務については、所轄の税務署または税理士に相談されたい。
参考資料・一次情報
- 令和8年度税制改正の大綱(全文) — 財務省(令和7年12月26日閣議決定)
- 令和8年度税制改正の大綱の概要 — 財務省
- 令和8年度税制改正(財務省総合ページ) — 財務省
- No.4103 相続時精算課税の選択 — 国税庁タックスアンサー
- No.4511 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税 — 国税庁タックスアンサー
- No.4503 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税(相続時精算課税選択特例) — 国税庁タックスアンサー
- No.4148 非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制) — 国税庁タックスアンサー
- 居住用の区分所有財産(マンション)の評価方法の見直し — 国税庁(令和6年1月1日適用)
- 相続税法 — e-Gov法令検索
- 租税特別措置法 — e-Gov法令検索



