カスタマーハラスメント対策義務化2026年10月|企業が整備すべき体制と就業規則対応

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カスタマーハラスメント対策義務化2026年10月|企業が整備すべき体制と就業規則対応
目次

最終更新日: 2026年2月

2025年6月4日、改正労働施策総合推進法(令和7年法律第63号)が成立し、カスタマーハラスメント(以下「カスハラ」)対策が事業主の法的義務として位置づけられた。施行日は2026年10月1日。新設の第33条により、顧客等からの社会通念上許容される範囲を超えた言動によって労働者の就業環境が害されることを防止するため、事業主は(1)方針の明確化・周知、(2)相談体制の整備、(3)事後の適切な対応、(4)プライバシー保護・不利益取扱いの禁止の4つの措置義務を負う。違反に対する直接の罰則はないが、助言・指導・勧告・企業名公表という段階的な行政措置が定められ、安全配慮義務違反(労働契約法第5条)による民事賠償責任のリスクも高まる。本記事では、法改正の全体像から就業規則の改定例、相談窓口の設計、業種別の対応ポイント、東京都条例との関係までを体系的に解説する。


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カスタマーハラスメントとは|法的定義と該当基準

改正法における定義

改正労働施策総合推進法第33条(新設)は、カスタマーハラスメントを以下のように定義している。

要素 内容
行為主体 顧客、取引先その他の業務に関して接する者(「顧客等」)
行為の態様 顧客等としての立場を利用した言動であって、社会通念上許容される範囲を超えたもの
結果 労働者の就業環境が害されること

この定義において重要なのは、「社会通念上許容される範囲を超えた」という判断基準と、「就業環境が害される」という結果要件の2つが同時に満たされる必要がある点である。正当なクレームや苦情、合理的な要求は、たとえ厳しい口調であっても直ちにカスハラには該当しない。

「社会通念上許容される範囲を超えた」の判断基準

2025年12月10日に公表された指針案(パブリックコメント実施後、2026年2月に確定)では、以下の2つの観点から総合的に判断するものとされている。

判断要素 具体的な考慮事項
要求内容の妥当性 要求の内容に正当な根拠があるか。事業者側に過失・契約不履行があるか。商品・サービスの内容との関連性があるか
手段・態様の相当性 要求を実現するための手段・態様が社会通念に照らして相当なものであるか

カスハラに該当する行為類型

指針では、以下のような行為がカスハラに該当し得るものとして例示されている。

行為類型 具体例
暴力・傷害 殴る、蹴る、物を投げつける
脅迫・威嚇 「殺すぞ」「訴えてやる」「ネットに書くぞ」等の威圧的発言
暴言・侮辱 人格否定、差別的発言、大声での恫喝
過度な要求 土下座の要求、社会通念を超える金品要求、合理性のない特別対応の要求
長時間の拘束 不当に長時間にわたる電話、居座り、執拗な繰り返し
不当な従業員の個人攻撃 SNSでの個人名公開、容姿や属性への言及
つきまとい・監視 退勤後の待ち伏せ、自宅への接近
性的な言動 セクシュアルハラスメントに該当する言動
正当な理由のない過大な要求 契約にない対応の強要、社会通念を超える値引き・返金の要求

カスハラに該当しないケースとの線引き

区分 具体例 カスハラ該当性
正当なクレーム 商品の不具合に対する交換・返金要求 該当しない
合理的な苦情 サービスの遅延に対する改善要求 該当しない
厳しいが正当な指摘 取引先への納期遅延に対する厳格な是正要求 原則該当しない
手段の不相当 正当な苦情だが大声で怒鳴り続ける 該当し得る
要求の過大性 軽微な不備に対する過度な賠償要求 該当し得る
要求・手段の双方が不当 不備がないにもかかわらず土下座を要求 該当する


事業主の4つの措置義務|指針の具体的内容

措置義務の全体構造

改正法第33条および指針(2026年2月確定)に基づき、事業主が講じなければならない措置は以下の4つに大別される。この構造は、セクハラ・パワハラ防止措置(均等法第11条、労働施策総合推進法第30条の2)と同様のフレームワークである。

措置義務 概要 セクハラ・パワハラとの対比
(1) 方針の明確化・周知啓発 カスハラを許容しない方針の策定と従業員への周知 同様の構造
(2) 相談体制の整備 相談窓口の設置、相談対応者の選任・教育 同様の構造
(3) 事後の迅速かつ適切な対応 事実確認、被害者への配慮措置、再発防止策の実施 同様の構造(ただし加害者が社外のため対応が異なる)
(4) プライバシー保護・不利益取扱いの禁止 相談者・協力者のプライバシー保護、相談等を理由とする不利益取扱いの禁止 同様の構造

措置(1):方針の明確化と周知啓発

具体的な措置内容 実施のポイント
カスハラに対する事業主の方針を明確化する トップメッセージとして「カスハラを許容しない」旨を表明
就業規則等にカスハラ対応方針を規定する 定義・禁止事項・対応手順・相談窓口を明記
従業員に対して周知・啓発する 研修の実施、社内報・イントラネットでの掲載
顧客等に対しても方針を周知する 店頭掲示、Webサイト掲載、契約書・約款への記載

措置(2):相談体制の整備

具体的な措置内容 実施のポイント
相談窓口を設置する 社内窓口(人事部等)+外部窓口(EAP等)
相談対応者を選任し教育する カスハラ対応に関する研修の実施
相談しやすい環境を整備する 匿名相談の受付、複数のアクセス手段(対面・電話・メール)
セクハラ・パワハラの相談窓口と一体的に運用する 既存のハラスメント相談窓口にカスハラを追加

措置(3):事後の迅速かつ適切な対応

対応ステップ 具体的な措置内容
事実確認 相談者・目撃者・記録(防犯カメラ・通話録音等)から事実を確認
被害者への配慮 配置転換、担当者変更、メンタルヘルスケアの実施、休暇の付与
顧客等への対応 対応の中止・拒否、出入り禁止、警告書の送付、警察への通報
再発防止策 対応マニュアルの見直し、事例共有、研修内容の更新

措置(4):プライバシー保護と不利益取扱いの禁止

具体的な措置内容 違反した場合のリスク
相談者・協力者のプライバシーを保護する 相談が抑制され、問題が潜在化する
相談・協力を理由とする不利益取扱いを禁止する 配置転換・降格・解雇等が不利益取扱いに該当し得る
不利益取扱い禁止の方針を就業規則等に明記し、従業員に周知する 知らなかったでは済まされない


就業規則の改定|規定例と記載ポイント

カスハラ対策と就業規則の改定を行う際は、同時期に施行される女性活躍推進法の情報公表義務拡大(2026年4月)への対応とまとめて進めることで、就業規則改定の作業を一本化できる。

就業規則に盛り込むべき事項

改正法および指針に基づき、就業規則(またはハラスメント防止規程)に盛り込むべき事項は以下のとおりである。

項目 記載内容
カスハラの定義 法律上の定義に基づく、自社としての定義を明記
事業主の方針 カスハラを許容しないこと、従業員を守る姿勢を明記
カスハラに該当する行為の例示 暴力、脅迫、暴言、過度な要求、長時間拘束等の具体例
相談窓口 窓口の名称、連絡先、受付時間、対応者
相談から解決までのフロー 相談受付→事実確認→対応決定→フォローアップの手順
秘密保持 相談内容の守秘義務、個人情報の適切な管理
不利益取扱いの禁止 相談・申告を理由とする解雇・配置転換等の禁止
顧客等への対応方針 対応中止・出入り禁止・法的措置を含む対応方針
従業員の責務 カスハラを受けた場合の報告義務、単独対応の禁止

就業規則の規定例

以下は、カスハラ対応に関する就業規則の規定例である。

第○条(カスタマーハラスメントの定義)

内容
第1項 カスタマーハラスメントとは、顧客、取引先その他業務に関して接する者(以下「顧客等」という。)からの、社会通念上許容される範囲を超えた言動であって、当該言動により従業員の就業環境が害されるものをいう
第2項 前項の「社会通念上許容される範囲を超えた言動」には、暴力・傷害、脅迫・威嚇、暴言・侮辱、不当な要求、長時間の拘束、つきまとい、性的言動その他これに類する行為を含むものとする

第○条(事業主の方針)

内容
第1項 会社は、カスタマーハラスメントを許容せず、従業員が安全かつ安心して就業できる環境の確保に努める
第2項 会社は、カスタマーハラスメントが確認された場合、顧客等に対し対応の中止、来店・架電の拒否、取引の停止その他必要な措置を講ずることがある

第○条(相談窓口と秘密保持)

内容
第1項 会社は、カスタマーハラスメントに関する相談窓口を設置し、従業員に周知する
第2項 相談窓口に寄せられた相談の内容および相談者・関係者に関する情報は、秘密として取り扱い、正当な理由なく第三者に開示してはならない
第3項 従業員が相談窓口に相談したこと、または事実確認に協力したことを理由として、解雇、配置転換、降格その他の不利益な取扱いを行ってはならない

相談窓口の設計と運用

相談窓口の設置パターン

パターン 設置方法 メリット デメリット
社内窓口(単独) 人事部・コンプライアンス部門に設置 コスト低、情報集約しやすい 相談者が特定されやすく利用されにくい
外部窓口(単独) 外部EAP・弁護士事務所に委託 匿名性が高い、専門的対応 コスト高、社内連携に時間がかかる
社内+外部(併設) 社内窓口と外部窓口を併設 選択肢が広い、相談率が向上 窓口間の情報共有ルールが必要
統合窓口 セクハラ・パワハラ・カスハラの相談を一本化 効率的、ワンストップ対応 対応者のスキルの幅が求められる

相談対応フロー

ステップ 対応内容 担当者 目標期間
1. 受付 相談内容の傾聴・記録、緊急性の判断 相談窓口担当者 当日
2. 一次対応 緊急度に応じた被害者の安全確保(担当変更・離席指示等) 管理者・現場責任者 当日〜翌日
3. 事実確認 相談者・目撃者・記録(録音・録画等)による事実の確認 相談窓口担当者・管理者 1週間以内
4. 対応方針決定 カスハラ該当性の判定、顧客等への対応方針の決定 ハラスメント対策委員会 2週間以内
5. 措置実施 顧客等への対応(警告・取引停止等)、被害者へのケア 管理者・法務部門 速やかに
6. フォローアップ 被害者の状況確認、再発防止策の検討・実施 相談窓口担当者 1〜3か月後

相談記録の管理

管理項目 内容
記録すべき事項 相談日時、相談者氏名、事案の概要、対応経過、結果
保存期間 最低3年(労働関係法令の消滅時効を考慮して5年を推奨)
アクセス制限 相談窓口担当者および管理者に限定し、パスワード保護等を実施
統計化 個人が特定されない形で件数・類型を集計し、傾向分析に活用

行政措置と法的リスク

段階的な行政措置

改正法に基づく行政措置は、以下の4段階で行われる。直接の罰則(罰金・懲役)は設けられていないが、企業名公表は実質的に大きな制裁となる。

段階 措置内容 根拠条文
第1段階 助言 改正法第33条の2
第2段階 指導 改正法第33条の2
第3段階 勧告 改正法第33条の3
第4段階 企業名の公表 改正法第33条の4

民事上の法的リスク

行政措置とは別に、カスハラ対策を怠った場合の民事上の法的リスクは以下のとおりである。

リスク類型 法的根拠 賠償額の目安
安全配慮義務違反 労働契約法第5条 数百万円〜数千万円(精神的損害・逸失利益)
使用者責任 民法第715条 被害者がカスハラにより第三者に加害した場合
不法行為責任 民法第709条 カスハラを放置し従業員が精神疾患を発症した場合

労災認定との関係

カスタマーハラスメントは、2023年9月の精神障害の労災認定基準の改正により、心理的負荷評価表の具体的出来事に追加されている。

心理的負荷の強度 カスハラの態様
「強」(労災認定される水準) 暴行を受けた、人格を否定するような言動を繰り返し受けた、会社に相談したが適切な対応がなかった
「中」 威圧的な言動を受けた、長時間拘束された
「弱」 一過性の暴言を受けた


業種別の対応ポイント

業種別のカスハラリスク分析

カスハラのリスクは業種によって大きく異なる。厚生労働省の「職場のハラスメントに関する実態調査」および各業界団体の調査に基づく、業種別のリスク特性は以下のとおりである。

業種 カスハラ経験率 主な行為類型 高リスク場面
医療・福祉 約46% 暴力、暴言、セクハラ、長時間拘束 夜間対応、認知症ケア、救急外来
小売業 約38% 暴言、過度な返品要求、長時間クレーム レジ対応、接客カウンター
宿泊・飲食業 約36% 暴言、過度なサービス要求、SNS攻撃 チェックイン、苦情対応
介護 約42% 暴力、暴言、セクハラ、介護拒否 入浴介助、訪問介護
運輸・配送 約30% 暴言、不当な時間指定、置き配トラブル 再配達対応、時間指定配送
コールセンター 約50%以上 暴言、長時間拘束、脅迫 クレーム対応、解約受付
公務(窓口) 約35% 暴言、長時間拘束、制度への不満の投影 住民窓口、税務相談

業種別の重点対応事項

業種 重点対応事項
医療・福祉 対応困難患者への複数名対応ルール、院内暴力対策マニュアル、診療拒否の法的整理(応招義務との関係)
小売業 店頭掲示によるカスハラ方針の周知、防犯カメラの活用、クレーム対応の録音体制
宿泊・飲食業 宿泊約款・利用規約へのカスハラ条項追加、SNS上の誹謗中傷への法的対応
介護 利用者・家族からのハラスメントに関する重要事項説明書への記載、契約解除条項の整備
運輸・配送 再配達時の対応ルール、通話録音、危険を感じた場合の即時撤退ルール
コールセンター 通話録音と告知、対応時間の上限設定、自動応答への切替基準、オペレーターのケア体制

東京都カスタマー・ハラスメント防止条例との関係

東京都条例の概要

東京都は、国に先行して2025年4月1日に「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」(令和6年東京都条例第135号)を施行している。

項目 内容
施行日 2025年4月1日
対象 東京都内における顧客等と就業者の関係
罰則 なし(理念条例)
顧客等の責務 カスハラに係る行為をしてはならない旨の努力義務
事業者の責務 カスハラ防止に必要な体制の整備、従業員への教育の努力義務
就業者の責務 顧客等に対してカスハラに係る行為をしてはならない旨の努力義務
東京都の責務 施策の推進、ガイドラインの策定、相談体制の整備

改正法(国法)と東京都条例の比較

比較項目 改正労働施策総合推進法(国法) 東京都条例
施行日 2026年10月1日 2025年4月1日(先行)
義務の性質 措置義務(法的義務) 努力義務
適用範囲 全国の事業主 東京都内の事業者・顧客等・就業者
行政措置 助言・指導・勧告・企業名公表 なし(理念条例)
顧客等への義務 なし(事業主への措置義務のみ) 顧客等にもカスハラ禁止の努力義務
罰則 なし(行政措置のみ) なし

東京都に事業所がある企業の対応

東京都に事業所がある企業は、2025年4月1日から東京都条例に基づく努力義務を負い、2026年10月1日からはさらに国法に基づく措置義務を負うことになる。

時期 適用法令 義務の程度
2025年4月1日〜 東京都条例 努力義務
2026年10月1日〜 東京都条例+改正労働施策総合推進法 努力義務+措置義務

顧客等への対応方針と法的措置

段階的対応フレームワーク

カスハラが発生した場合の顧客等への対応は、行為の重大性に応じて段階的に実施する。

段階 対応内容 適用場面
Level 1:注意喚起 丁寧にお断りする、行為の中止を口頭で求める 一過性の暴言、軽度の不当要求
Level 2:対応中止 電話を切る、来店対応を打ち切る、複数名で対応する 暴言の繰り返し、長時間拘束
Level 3:警告 書面による警告、来店・架電禁止の通知、弁護士名による内容証明送付 繰り返しのカスハラ、脅迫的言動
Level 4:法的措置 警察への通報・被害届提出、接近禁止の仮処分、損害賠償請求 暴力、傷害、ストーカー行為、業務妨害
Level 5:取引・契約の終了 サービス提供の拒否、契約の解除 改善が見込めない重大なカスハラ

法的措置の選択肢

措置 法的根拠 適用場面
警察への通報 刑法(暴行・傷害・脅迫・強要・威力業務妨害等) 犯罪行為に該当する場合
内容証明郵便 行為の中止を書面で正式に要求する場合
接近禁止の仮処分 民事保全法 つきまとい・反復的な来店がある場合
損害賠償請求 民法第709条(不法行為) 業務妨害による損害が発生した場合
診療拒否(医療機関) 医師法第19条(応招義務)との関係整理が必要 暴力・脅迫等により診療が困難な場合
契約解除 民法・各種約款 約款の解除条項に基づく場合

研修プログラムの設計

階層別研修の全体像

対象 研修内容 頻度 実施方法
全従業員 カスハラの定義と判断基準、相談窓口の利用方法、自分を守るための初動対応 年1回以上 eラーニング+集合研修
管理者 エスカレーション対応、被害従業員へのケア方法、記録の取り方、法的リスク 年1回以上 集合研修+ケーススタディ
相談窓口担当者 傾聴技法、事実確認の方法、カスハラ該当性の判定、メンタルヘルスの基礎知識 年2回以上 専門研修
現場リーダー 現場での初動対応、Level判定、管理者への報告方法 年1回以上 ロールプレイング研修

研修で扱うべきケーススタディ

ケース 状況 期待される対応
Case 1 レジで「お前の名前を教えろ。ネットに書くぞ」と繰り返す Level 2:複数名対応に切替、管理者へ報告、名札の個人名記載を検討
Case 2 電話で2時間以上同じ苦情を繰り返す Level 2:対応時間の上限を告知し、対応中止。再発時はLevel 3
Case 3 取引先の担当者が打合せで机を叩いて怒鳴る Level 2:複数名同席に切替、議事録を作成、上長から取引先上長に申し入れ
Case 4 患者が看護師を殴った Level 4:警察通報、被害届提出、診療継続の可否を判断

今すぐやること:カスハラ対策 対応チェックリスト

最優先:2026年6月まで(施行4か月前)

  • カスハラに対する経営トップの方針を策定・公表する(経営層):社内向けメッセージと対外向け方針の双方を用意
  • 就業規則(またはハラスメント防止規程)を改定する(人事・法務部門):カスハラの定義、対応方針、相談窓口、不利益取扱い禁止を明記
  • 相談窓口をカスハラに対応させる(人事・コンプライアンス部門):既存のハラスメント相談窓口にカスハラを追加、外部窓口の契約見直し
  • カスハラ該当性の判定基準(マトリクス)を策定する(人事・法務部門)

重要:2026年8月まで(施行2か月前)

  • 対応マニュアル(段階的対応フレームワーク)を策定する(人事・現場管理者):Level 1〜5の判断基準と対応手順を明文化
  • 管理者・相談窓口担当者向けの先行研修を実施する(人事部門)
  • 就業規則の改定を労働基準監督署に届出する(人事・総務部門):従業員代表への意見聴取を含む
  • 顧客向けの掲示物・Webサイト上の告知を準備する(広報・マーケティング部門)

中期:2026年10月の施行後も継続

  • 全従業員向け研修を施行日までに完了する
  • 相談件数・対応状況を月次で集計し、傾向を分析する(人事部門)
  • カスハラ事例を蓄積し、判定基準と対応マニュアルを年1回見直す
  • 業界団体のガイドライン・好事例を継続的に収集する

業種別の最優先事項

  • 医療機関 → 応招義務との関係を整理した上での対応方針策定が最優先
  • 小売・飲食業 → 店頭掲示と現場対応マニュアルが最優先
  • 介護事業者 → 利用者・家族向け重要事項説明書の改定が最優先
  • コールセンター → 通話録音の告知・対応時間上限の設定が最優先
  • 運輸・配送 → 即時撤退ルールの策定が最優先

FAQ(よくある質問)

A

改正労働施策総合推進法(令和7年法律第63号)は2025年6月4日に成立し、カスハラ対策の義務化に関する規定は2026年10月1日に施行される。施行日以降、すべての事業主は4つの措置義務(方針の明確化・相談体制の整備・事後対応・プライバシー保護等)を履行する必要がある。なお、東京都では2025年4月1日に先行して「カスタマー・ハラスメント防止条例」が施行されているが、こちらは努力義務にとどまる。

A

改正法には直接の罰則(罰金・懲役)は設けられていない。ただし、厚生労働大臣による助言・指導・勧告、および勧告に従わない場合の企業名公表が定められている。加えて、カスハラ対策を怠った結果として従業員が精神疾患等を発症した場合、安全配慮義務違反(労働契約法第5条)に基づく損害賠償責任を問われるリスクがある。労災認定基準にカスハラが明記されているため(2023年9月改正)、労災認定のリスクも高まっている。

A

カスハラの判断は「要求内容の妥当性」と「手段・態様の相当性」の2軸で行う。商品の不具合に対する交換・返金要求など、要求内容に正当な根拠があり、手段も社会通念の範囲内であれば正当なクレームであり、カスハラには該当しない。一方、正当な苦情であっても、大声での恫喝、長時間の拘束、人格を否定する暴言を伴う場合は、手段・態様が社会通念を超えるものとしてカスハラに該当し得る。指針では具体的な行為類型が例示されているため、自社の判定基準策定の参考にすることが推奨される。

A

措置義務は事業主の規模を問わず、すべての事業主に適用される。従業員が1人でもいれば義務が生じる。ただし、措置の具体的な内容は事業規模に応じた合理的な範囲で判断される。小規模事業者であれば、(1)カスハラ対応方針を書面で作成して従業員に配布する、(2)経営者自身が相談窓口となる、(3)対応マニュアルを簡易な形で作成する、など実態に即した対応で足りる場合がある。

A

改正法の定義では「顧客、取引先その他の業務に関して接する者」が行為主体とされており、取引先からの不当な言動もカスハラに該当し得る。たとえば、発注元の担当者が受注側の従業員に対して、繰り返し人格を否定する発言を行う、不当な要求に応じるよう威圧するなどの行為は、カスハラとして対策の対象となる。BtoB事業者であっても措置義務の対象であることに変わりはない。

A

正当な理由に基づくサービス提供の拒否は、法的に認められる場合がある。改正法の指針でも、事業主がカスハラを行った顧客等に対して対応の中止や取引の停止を行うことは、措置義務の一環として想定されている。ただし、医療機関の応招義務(医師法第19条)や、電気・ガス等の供給義務など、個別法令による供給義務がある業種については、拒否の要件を慎重に検討する必要がある。契約書・約款にカスハラを理由とする解除条項を事前に定めておくことが推奨される。

A

東京都条例は努力義務にとどまるのに対し、改正労働施策総合推進法は法的な措置義務を課すものであり、義務の程度が異なる。東京都条例への対応として体制を整備していれば、国法の施行時に必要な追加対応は最小限で済む可能性が高いが、以下の点は確認が必要である。(1)就業規則に国法の定義に即したカスハラの規定があるか、(2)相談窓口が措置義務の水準を満たしているか、(3)事後対応のフローが整備されているか。東京都条例は「顧客等にも努力義務を課している」点で国法にはない特徴があるため、東京都で事業を行う企業は両方の法令に対応する必要がある。


免責事項

本記事は、2026年2月時点の公開情報に基づいて作成したものである。改正労働施策総合推進法(令和7年法律第63号)は2025年6月4日に成立し、カスハラ対策義務化に関する規定は2026年10月1日施行予定であるが、指針の最終版の内容や施行規則の詳細については、今後変更される可能性がある。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言を構成するものではない。自社の具体的な対応については、弁護士・社会保険労務士等の専門家にご相談いただきたい。


参考文献・法令等

法令・公式資料

解説記事・専門家論考

JG

実務ガイド編集部

AI執筆 + 編集部レビュー済み

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