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2026年4月1日、改正女性活躍推進法が施行される。2025年6月11日に公布された「労働施策総合推進法等を改正する法律」により、男女間賃金格差と女性管理職比率の情報公表義務が、従来の301人以上から101人以上の企業に拡大される。新たに義務対象となる101〜300人規模の中小企業は約3.5万社に上るとされており、対応が急務となっている。法令根拠は女性活躍推進法(正式名称:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)の改正条文であり、同法の有効期限は2036年3月31日まで10年間延長された。
本記事では、101〜300人規模の中小企業が2026年4月施行に向けて取るべき具体的な実務対応を、計算方法・データベース登録手順・チェックリスト付きで解説する。
1. 改正の全体像——新旧比較
今回の改正は、情報公表義務の対象拡大が最大のポイントだ。下表で改正前後の主要変更点を整理する。
| 項目 | 改正前(〜2026年3月) | 改正後(2026年4月〜) |
|---|---|---|
| 情報公表義務の対象 | 301人以上 | 101人以上 |
| 必須公表項目(追加) | 1項目以上の選択公表 | 男女間賃金差異・女性管理職比率が必須 |
| 行動計画策定・届出 | 101人以上(既存) | 変更なし |
| 法律の有効期限 | 2026年3月31日まで | 2036年3月31日まで延長 |
| 女性の健康配慮 | 規定なし | 基本原則に生理・更年期・不妊治療等への配慮を明記 |
⚠️ 注意
101〜300人規模の企業は、2022年4月から「行動計画策定・届出・公表」はすでに義務化されていた。2026年4月からはさらに「男女間賃金差異」と「女性管理職比率」の公表が必須として追加される点を混同しないよう注意が必要だ。
💡 TIPS
301人以上の企業はすでに男女間賃金差異の公表義務があるが、2026年改正により「女性管理職比率」が全ての義務対象企業(101人以上)の必須公表項目に追加される。301人以上でも改正内容を再確認しよう。
2. 対象企業の範囲——「101人以上」の正確なカウント方法
「常時雇用する労働者」が101人以上かどうかは、以下の基準で判断する。
「常時雇用する労働者」の定義
含まれる労働者
– 正社員(期間の定めなし)
– 契約社員・パート・アルバイト(雇用期間が通算1年以上、または1年以上継続雇用が見込まれる者)
– 嘱託社員
含まれない労働者
– 派遣社員(派遣元企業の労働者としてカウント)
– 雇用期間が通算1年未満の短期アルバイト
| 雇用形態 | カウント対象 |
|---|---|
| 正社員 | 含む |
| 契約社員(1年以上継続見込み) | 含む |
| パート・アルバイト(1年以上継続見込み) | 含む |
| 派遣社員(受け入れ先の場合) | 含まない |
| 派遣社員(派遣元の場合) | 含む |
| 短期バイト(1年未満) | 含まない |
💡 TIPS
判断基準となる従業員数は、法施行時点(毎年4月1日時点)の実態で確認する。期中に増減があっても、年度の開始時点で101人以上であれば対象となる。
🎯 プロの目
「100人以下で義務対象外」と思い込んでいる企業ほど注意が必要だ。パート・アルバイトを含めるとカウントが変わるケースが多い。まず自社の「常時雇用する労働者」の実数を正確に把握することが第一歩となる。正確な人数は雇用保険の適用基準とも関連するため、社会保険労務士への確認も有効だ。
3. 男女間賃金格差の計算方法
算出の基本ルール
男女の賃金差異は、「女性の平均年間賃金÷男性の平均年間賃金×100(%)」で算出する。3区分に分けて公表することが義務付けられている。
3つの区分
1. 全労働者
2. 正規雇用労働者(正社員)
3. 非正規雇用労働者(パート・有期・契約社員等)
計算式と手順
ステップ1:対象期間の確定
直近の事業年度(会計年度)を対象とする。
ステップ2:区分ごとの年間賃金総額と人員数を集計
– 各区分の年間賃金の総額(基本給・残業代・賞与等を含む全賃金)
– 各区分の在籍人員数(延べ人員数ではなく実際の人員数)
ステップ3:平均年間賃金を算出
平均年間賃金 = 年間賃金総額 ÷ 人員数
ステップ4:賃金差異の割合を算出
男女の賃金差異(%) = 女性の平均年間賃金 ÷ 男性の平均年間賃金 × 100
計算例(従業員150人の製造業)
| 区分 | 女性平均年間賃金 | 男性平均年間賃金 | 差異(%) |
|---|---|---|---|
| 全労働者 | 3,800,000円 | 5,200,000円 | 73.1% |
| 正規雇用 | 4,500,000円 | 5,800,000円 | 77.6% |
| 非正規雇用 | 2,100,000円 | 2,500,000円 | 84.0% |
この場合、「女性の賃金は男性の73.1%(全労働者)」と公表することになる。
⚠️ 注意
「賃金差異100%」が目標ではなく、まず正確な数値を算出・公表することが求められる。格差が大きい場合でも、公表を拒否したり虚偽の数値を公表することは法令違反となる。格差の背景(職種・役職の違い等)を「補足情報」として添付することは認められている。
🎯 プロの目
非正規雇用の賃金差異が小さく見えるのは、男女ともに賃金水準が低いためで、必ずしも平等を示すわけではない。採用・昇格・配置転換の機会均等を示す数値と組み合わせて開示することで、投資家・求職者からの信頼性が高まる。ESG投資の文脈でも賃金格差データは重要視されている。
4. 女性管理職比率の定義と計算方法
「管理職」の定義
女性活躍推進法における「管理職」は、課長級以上の役職者を指す(管理監督者と異なる点に注意)。具体的には、各社の就業規則・給与規程等における役職名で判断する。
一般的な目安
– 課長・課長代理・課長補佐以上
– 係長・チームリーダーは通常含まない(ただし企業の等級制度により異なる)
計算式
女性管理職比率(%)= 女性管理職数 ÷ 管理職総数 × 100
例:管理職50人のうち女性が8人の場合
8 ÷ 50 × 100 = 16.0%
💡 TIPS
「管理職」の範囲は各社で定義が異なる。計算前に「どの役職を管理職とカウントするか」を就業規則等で明確化し、毎年同じ基準で計算することが重要。基準を途中変更すると経年比較ができなくなる。
5. 「女性の活躍推進企業データベース」への登録手順
厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース(positive-ryouritsu.mhlw.go.jp)」への登録が義務付けられる。
登録の流れ(4ステップ)
STEP 1:状況把握と課題分析
以下の基礎4項目を必ず把握する。
1. 採用した労働者に占める女性の割合
2. 男女の平均継続勤務年数の差異
3. 労働者の各月の平均残業時間数
4. 管理職に占める女性の割合(=女性管理職比率)
STEP 2:一般事業主行動計画の策定・社内周知
– 計画期間(2〜5年が一般的)
– 数値目標(例:「2028年までに女性管理職比率を20%以上にする」)
– 具体的な取組内容と実施時期
– 全労働者への周知(掲示・社内メール・イントラネット等)
STEP 3:都道府県労働局への届出
届出方法は3種類:
– 電子申請(e-Gov)← 最も効率的
– 郵送
– 持参
STEP 4:データベースへの情報公表
データベースのウェブサイトにログインし、以下の情報を入力・公表する。
– 一般事業主行動計画
– 男女間賃金差異(3区分)
– 女性管理職比率
– その他選択した公表項目
⚠️ 注意
公表期限は「当該事業年度の実績を翌事業年度開始後おおむね3カ月以内」が目安とされている。例えば3月決算の会社であれば、4月〜6月末までに前事業年度の実績を公表する必要がある。
💡 TIPS
「女性の活躍推進企業データベース」への登録と、自社ホームページでの公表を並行して行うことが推奨される。自社サイトに掲載することで、採用活動における訴求力にもつながる。
6. 一般事業主行動計画の策定・届出
101〜300人企業の義務内容(改正後)
| 義務 | 内容 |
|---|---|
| 状況把握・課題分析 | 基礎4項目の把握(必須) |
| 行動計画の策定 | 計画期間・数値目標・取組内容を盛り込む |
| 社内周知 | 全労働者への周知(掲示・配布等) |
| 届出 | 都道府県労働局へ(電子申請推奨) |
| 情報公表(必須2項目) | 男女間賃金差異・女性管理職比率 |
| 情報公表(追加1項目以上) | 機会提供または両立支援に関する実績から選択 |
行動計画の記載例(101〜300人規模中小企業向け)
計画期間:2026年4月1日〜2028年3月31日(2年間)
【数値目標】
・女性管理職比率を2026年時点の10%から、2028年3月末までに15%以上にする
【取組内容】
1. 女性リーダー育成研修の実施(年2回、2026年6月〜)
2. 育児休業取得率の向上(男性育休推進)
3. 時短勤務制度の拡充(対象年齢の引き上げ)
🎯 プロの目
数値目標は「現状から+5%以上」など、達成可能かつ意欲的な設定が求められる。目標が低すぎると行政から指導を受ける可能性がある一方、非現実的な数値は計画倒れになる。社内のロールモデルとなる女性管理職候補者の数を確認した上で、根拠のある目標値を設定することが重要だ。
7. 違反した場合のリスク——行政措置の流れ
女性活躍推進法には直接の罰則規定はないが、以下の行政的サンクションが設けられている。
行政措置の段階
義務不履行
↓
【助言】都道府県労働局からの行政指導
↓
【指導】より強い行政指導
↓
【勧告】正式な勧告(従わない場合、次のステップへ)
↓
【公表】企業名の公表(レピュテーションリスク)
ペナルティの実態
| 違反行為 | 措置 |
|---|---|
| 情報公表の不実施 | 助言→指導→勧告→企業名公表 |
| 虚偽の公表 | 20万円以下の過料(労働局への報告義務違反の場合) |
| 行動計画の未届出 | 助言→指導→勧告→企業名公表 |
⚠️ 注意
「罰則がないから放置でいい」は危険な考え方だ。企業名の公表は採用力・取引先との関係・投資家評価に直接影響する。とくに従業員数101〜300人規模の中小企業では、採用競争力への打撃が事業継続に影響しうる。
🎯 プロの目
2026年4月以降、「女性活躍企業データベース」はESG投資家の調査対象となる見込みが高い。機関投資家がサプライチェーン全体のダイバーシティ情報を収集する流れの中で、中小企業の情報公表は「取引先からの要請」にもなりうる。対応は法令遵守だけでなく、ビジネス上のリスク管理でもある。
8. 関連法改正との連動
女性活躍推進法改正は、同時期に施行される他の労務関連法改正と一体的に対応することが効率的だ。
- カスタマーハラスメント対策義務化2026年10月ガイド — 2026年12月までに施行予定のカスハラ対策も同じく「労働施策総合推進法等を改正する法律」に含まれる。ハラスメント防止規程の見直しと合わせて対応したい。また、障害者雇用率引上げも同時期の施行であり、労務コンプライアンス対応を一括して進めることでコスト削減が図れる。
- ストレスチェック50人未満義務化2026年ガイド — 従業員のメンタルヘルス対策も義務化される。女性特有の健康課題(生理・更年期等)への配慮が今改正で基本原則に追加されたことと連動する。
- 障害者法定雇用率2.7%引上げ2026年ガイド — 女性活躍・障害者雇用・外国人雇用など、ダイバーシティ施策を統合的に管理する体制を構築することで、対応コストを削減できる。
- 社会保険適用拡大2026年ガイド — パート社員の社会保険加入拡大と賃金水準への影響は、男女間賃金差異の計算にも影響する。非正規雇用者の処遇見直しと一体的に対応することが重要だ。
- ストレスチェック50人未満義務化2026年ガイド — 2026年に義務化されるストレスチェック制度の拡大も、女性活躍推進法が基本原則に加えた「女性の健康配慮」と連動して整備することが効率的だ。法改正対応のタイミングを合わせ、従業員のメンタルヘルス・健康管理施策を一体的に推進したい。
9. 101〜300人規模の中小企業が今すぐやること
アクションチェックリスト(Layer 3)
【フェーズ1:現状把握】2026年3月末まで
– [ ] 自社の「常時雇用する労働者」数を正確にカウントし、101人以上かを確認する
– [ ] 直近事業年度の男女別・区分別の年間賃金総額と人員数を給与データから抽出する
– [ ] 現時点の管理職(課長級以上)の人員を男女別にリストアップする
– [ ] 女性管理職比率を計算する(女性管理職数÷管理職総数×100)
– [ ] 男女間賃金差異を3区分(全・正規・非正規)で計算する
【フェーズ2:計画策定・届出】2026年4月〜6月
– [ ] 一般事業主行動計画を策定する(未策定の場合)または改定する
– [ ] 行動計画を全労働者に周知する
– [ ] 都道府県労働局へ行動計画を届出する(e-Gov電子申請推奨)
– [ ] 「女性の活躍推進企業データベース」にアカウントを作成する
【フェーズ3:情報公表】2026年7月末まで(3月決算の場合)
– [ ] データベースに男女間賃金差異(3区分)を入力・公表する
– [ ] データベースに女性管理職比率を入力・公表する
– [ ] 追加公表項目(機会提供または両立支援から1項目以上)を選択・公表する
– [ ] 自社ホームページにも同データを掲載する
【継続的対応】
– [ ] 毎事業年度終了後、遅滞なく最新実績をデータベースに更新する
– [ ] 数値目標の達成状況を定期的にモニタリングする
– [ ] 女性管理職候補者のキャリア開発プランを整備する
💡 TIPS
データ集計は給与計算システム(弥生給与・freee人事労務・SmartHR等)から出力できる場合が多い。各ソフトウェアのサポートページで「女性活躍推進法対応」の手順を確認しよう。2026年施行に合わせてシステムがアップデートされているケースが多い。
FAQ
A1. 女性活躍推進法の適用基準は「各時点での常時雇用する労働者数」で判断される。2026年4月1日時点で100人以下であれば、その時点では義務対象外だ。しかし、その後に101人以上になった時点から義務が生じる。年度の途中で101人以上になった場合は、行動計画の策定・届出・情報公表をその事業年度末(翌年3月末等)を目安に速やかに行う必要がある。
A2. 育児休業中の社員は「常時雇用する労働者」に含まれるが、育児休業中は賃金支給がゼロまたは減額されるため、そのまま計算に含めると差異が大きく歪む可能性がある。厚生労働省のガイドラインでは、育児休業等で賃金支払がなかった期間を除外した実績をもとに計算する方法も認められている。自社の計算方法と除外の有無を「補足情報」として明記することが推奨される。
A3. 拒否できない。数値の大小にかかわらず公表義務は課せられる。ただし、格差の背景(職種構成の違い、管理職比率の差異、非正規比率の違い等)を「補足情報」として添付することは可能であり、むしろ推奨されている。格差の原因を分析し、改善計画を合わせて公表することで、ステークホルダーへの説明責任を果たすことができる。
A4. 2026年改正では「えるぼしプラス」という新たな認定制度が創設される予定とされている(詳細は厚生労働省の省令・告示で確定)。現行の「えるぼし」(1〜3段階)に加え、より高い基準を達成した企業が「えるぼしプラス」を取得できる仕組みが検討されている。認定を受けた企業は公共調達での加点等の優遇措置を受けられる可能性があり、中小企業にとってもインセンティブとなる。
A5. 原則として各法人(事業主)単位でカウントする。親会社・子会社・関連会社が別法人であれば、それぞれの法人ごとに「常時雇用する労働者数」を確認する。ただし、同一事業主が複数の事業場を運営している場合(例:同一会社の本社・支社・工場)は、全事業場の合計で判断する。
A6. 2026年4月施行の改正では、女性の健康課題(生理、更年期、不妊治療等)への配慮促進が法律の基本原則に追加された。現時点では「配慮に努める」という理念的な規定であり、具体的な措置の義務化(実施しなければペナルティが課せられる等)は定められていない。ただし、一般事業主行動計画の中で健康配慮に関する取組を盛り込むことが推奨されており、フレックスタイム制の整備・生理休暇の取得促進・更年期サポート施策等が参考例として挙げられている。
A7. 対象となる可能性が高い。パートタイマーが「常時雇用する労働者」の要件(雇用期間1年以上または1年以上継続雇用見込み)を満たしている場合は、カウントに含める。仮に80人全員が要件を満たすなら合計105人となり、義務対象だ。一方、短期バイトや1年未満の有期雇用は除外されるため、各人の雇用実態を確認することが重要となる。
まとめ
2026年4月施行の改正女性活躍推進法は、101〜300人規模の中小企業にとって実務負荷が大きい改正だ。「男女間賃金差異」と「女性管理職比率」という具体的な数値の公表は、企業の実態を社外に可視化させる。
まず自社の従業員数と対象要件を確認し、賃金データと管理職名簿の整理から着手することが現実的な第一歩となる。公表を通じて自社の課題が明確になり、改善に向けた行動計画の策定につながるという前向きな活用を意識したい。
法令遵守にとどまらず、採用力・ESG対応・取引先からの信頼向上といったビジネス上のメリットを意識することで、女性活躍推進への取り組みが経営戦略に組み込まれていく。
参考法令・情報源
– 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)
– 労働施策総合推進法等を改正する法律(2025年6月11日公布)
– 厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ」
– 厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」(positive-ryouritsu.mhlw.go.jp)
– 内閣府男女共同参画局「女性活躍推進法に基づく男女の給与の差異の公表」
