最終更新日: 2026年9月23日
年末調整(勤務先が1年間の所得税の払いすぎ・不足を12月の給与でまとめて精算する手続き)が必要かどうかは、年収がいくら以上かでは決まりません。「給与所得者の扶養控除等申告書」という書類を勤務先に提出しているかどうかで決まります(所得税法第194条・第190条)。年収100万円のパートでも対象になりますし、年収2,000万円を超える人は年収に関わらず対象から外れます。本記事は、対象になる人・ならない人の条件、パート・掛け持ちのときの扱い、年末調整だけでは終わらず確定申告が必要になるケース、2026年分(令和8年分)で変わった控除額までを、国税庁タックスアンサーと所得税法の条文に基づいて整理します。
この記事の対象読者
会社員・パート・アルバイトとして給与を受け取っている読者本人を主な対象としています。「自分は年末調整の対象になるのか」「掛け持ちしているとどうなるのか」「年末調整をすれば確定申告はしなくていいのか」といった疑問に答える構成です。あわせて、中小企業で年末調整の事務を担当する給与担当者にも実務の要点として参考にしていただけます。
なお、給与を受け取っていない個人事業主・フリーランスは、そもそも年末調整の対象外です。年末調整は勤務先が給与から天引きした所得税を精算する手続きなので、給与がなければ行われません。所得税は確定申告で自分で精算します。年の途中で会社を辞めて開業した方は、退職までの給与について年末調整が行われないケースが多く、その分もあわせて確定申告することになります(詳しくは後述の「年の途中で退職した場合」)。
年末調整とは
年末調整とは、毎月の給与から天引き(源泉徴収)されてきた所得税の合計額と、本来1年間で納めるべき所得税額との差額を、勤務先が12月の給与でまとめて精算する手続きです(所得税法第190条)。毎月の源泉徴収は概算での天引きにすぎないため、年末に扶養親族の人数や保険料の支払額などを反映して正しい税額を計算し直し、払いすぎていれば還付、不足していれば追加徴収します。
結論:「いくらから」ではなく「申告書を出したか」で決まる
年末調整の対象になる人は、「給与所得者の扶養控除等申告書」を年末調整を行う日までに勤務先へ提出している人です(国税庁タックスアンサーNo.2665「年末調整の対象となる人」)。この申告書は、パート・アルバイトを含め、勤務先から給与を受け取り始める最初の給与支払日の前日までに提出するのが原則で(所得税法第194条第1項)、多くの人は入社時や年始に記入して提出しています。
つまり、年収がいくらであっても、この申告書を出していれば年末調整の対象になります。年収90万円のパートでも、年収500万円の正社員でも扱いは同じです。「103万円を超えたら」「130万円を超えたら」といった金額を年末調整の要否の基準だと思っている方が多いのですが、それらは社会保険の扶養や配偶者控除など別の制度の基準額であり、年末調整そのものの対象条件ではありません。
年末調整の対象にならない人
申告書を提出していても、次に当てはまる場合は12月に行う年末調整の対象から除かれます(No.2665)。
| 除外される条件 | 内容 |
|---|---|
| 年収2,000万円超 | その年に支払うべきことが確定した給与の総額が2,000万円を超える人 |
| 災害減免法の適用者 | 災害減免法の規定により、その年の給与に対する所得税の源泉徴収の徴収猶予や還付を受けた人 |
年収2,000万円を超える人は、勤務先で年末調整をしてもらえないため、自分で確定申告をする必要があります。
また、年の途中で退職した人は取り扱いが分かれます。次の5つのいずれかに当てはまる場合は、退職時に年末調整(年の中途の年末調整)が行われます(No.2665)。
- 海外転勤などで非居住者となった人
- 死亡によって退職した人
- 著しい心身の障害のために退職した人(退職後に再就職して給与を受け取る見込みがある人は除く)
- 12月分の給与を受け取った後に退職した人
- パートタイマーなどが退職した場合で、その年に受け取った給与の総額が136万円以下の人(退職後その年のうちに他の勤務先から給与を受け取る見込みがある人は除く)
これら5つのいずれにも当てはまらない、単なる年の中途退職者は年末調整が行われないため、退職後に自分で確定申告をして精算する必要があります。
パートの「税金がかからないライン」と「年末調整で還付が出るライン」は別物
よく混同されるのが、この2つです。
- 所得税がかからないライン(課税最低限): 2026年分(令和8年分)は年収178万円(基礎控除104万円+給与所得控除の最低保障74万円)。これを超えなければ、そもそも1年間の所得税額はゼロになります(詳しい内訳は後述)。
- 年末調整で還付が出るかどうか: 毎月の給与からは「源泉徴収税額表」(国税庁が定める、給与額と扶養人数から毎月の天引き額を引くための早見表)に基づいて概算の所得税が天引きされます。年収が178万円以下で最終的な税額がゼロになる人でも、月々の天引き額がゼロとは限らないため、年末調整でその天引き分が還付されることがあります。逆に、賞与の額や扶養親族の増減によっては、年末調整で追加徴収になることもあります。
つまり、「178万円を超えるかどうか」は最終的な税額がゼロかどうかの基準であって、「年末調整で還付が出るかどうか」「年末調整の対象になるかどうか」とは別の話です。年収が178万円以下でも、年末調整という精算の手続き自体は(申告書を出していれば)行われます。
掛け持ち(2か所以上)で働いている人の年末調整
「給与所得者の扶養控除等申告書」は、2か所以上から給与を受け取っている場合、主たる給与の支払者1社にのみ提出します(所得税法第194条第1項)。この申告書を提出した勤務先(甲欄が適用される勤務先)でのみ年末調整が行われ、そこで扶養控除・基礎控除・生命保険料控除などがまとめて精算されます。「甲欄」「乙欄」は源泉徴収税額表の列の名前で、申告書を出した勤務先には税額の低い甲欄、出していない勤務先には高い乙欄を使う、という区分です。
一方、申告書を提出していない他の勤務先(乙欄が適用される勤務先)では、年末調整は行われず、毎月の給与から比較的高めの税率で源泉徴収されたままになります。この「年末調整されなかった給与」の収入金額と、給与・退職所得以外の各種所得の合計額が20万円を超える場合は、確定申告が必要です(国税庁タックスアンサーNo.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」)。逆に、給与の収入金額から一定の所得控除を差し引いた額が150万円以下で、かつその他の所得が20万円以下なら申告不要という例外もあります(No.1900の注)。
掛け持ちで働く場合の確定申告の要否判定・経費の扱いなどは、副業の確定申告2026完全ガイドで20万円ルールの正確な範囲まで詳しく解説しています。
年末調整をしても確定申告が必要/した方が得なケース
年末調整は所得税の精算手続きですが、すべての所得控除・税額控除に対応しているわけではありません。年末調整で処理できる控除は、扶養控除等申告書・基礎控除申告書・配偶者控除等申告書・特定親族特別控除申告書・保険料控除申告書に記載された事項に限られます(所得税法第190条第2号イ〜ヘ)。次の控除は年末調整の対象外で、別途確定申告が必要です。
| 控除・状況 | 年末調整で対応できるか |
|---|---|
| 医療費控除 | 不可。確定申告が必要 |
| 寄附金控除(ふるさと納税含む) | 不可。ただし寄附先が5団体以内で、寄附のたびに各自治体へ申請していれば「ワンストップ特例」により確定申告なしで控除を受けられる(総務省「税金の控除について」) |
| 雑損控除(災害・盗難等の損害) | 不可。確定申告が必要 |
| 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除) | 1年目は不可(確定申告が必要)。2年目以降は年末調整で対応可能(所得税法第190条・租税特別措置法第41条の2の2) |
| 2か所以上の給与で乙欄適用分がある場合 | 前述のとおり、20万円を超えると確定申告が必要 |
住宅ローン控除の年数ごとの扱い・借入限度額・2026年度改正の詳細は、住宅ローン控除2026年(令和8年)完全ガイドで解説しています。
2026年分(令和8年分)で変わった点
令和8年度税制改正(令和8年法律第12号)により、基礎控除・給与所得控除が引き上げられ、2026年12月1日に施行、令和8年分(2026年分)の所得税から適用されます(国税庁タックスアンサーNo.1199「基礎控除」、No.1410「給与所得控除」)。
基礎控除は、その人の合計所得金額(給与だけの人なら、年収から給与所得控除を引いた後の金額)がいくらかで変わります。令和8年分の区分は次の3つです。
| 合計所得金額 | 基礎控除額(令和8年分) |
|---|---|
| 489万円以下 | 104万円 |
| 489万円超 655万円以下 | 67万円 |
| 655万円超 2,350万円以下 | 62万円 |
※ 合計所得2,350万円を超えると48万円・32万円・16万円と段階的に減り、2,500万円超はゼロになります。
※ この3区分は令和8年分・令和9年分のものです。令和10年分(2028年分)以後は区分が変わります(後述)。
| その他の項目 | 令和8年分の金額 |
|---|---|
| 給与所得控除の最低保障額 | 74万円 |
| 課税最低限(所得税がかからない給与収入) | 178万円 |
104万円という額は、本則の62万円に特例の加算42万円(租税特別措置法第41条の16の2)を足したものです。489万円超655万円以下の67万円も、同じ特例の加算5万円によるものです。
この特例の加算額は令和8年分・令和9年分限りで、令和10年分(2028年分)以後は内容が変わります。加算そのものが無くなるわけではなく、対象が合計所得132万円以下に狭まり、加算額は37万円になります(同条第1項第2号)。つまり2028年分以後は、合計所得132万円以下なら62万円+37万円=99万円、132万円を超えると本則の62万円です。給与所得控除は収入額に応じた算式で計算されます。改正の全体像・年収別の減税シミュレーション・配偶者控除や扶養控除への影響は、税制改正2026年|年収の壁178万円・基礎控除引上げと給与計算の変更点で詳しく解説しています。
なお、2027年1月1日からは防衛特別所得税(税率1%)の源泉徴収が始まりますが、同時に復興特別所得税が2.1%から1.1%に引き下げられるため、合計の上乗せ率は2.1%のまま変わりません。2026年分の年末調整の計算方法そのものへの影響はありませんが、令和9年分から源泉徴収税額表の様式が切り替わる点は、防衛特別所得税の源泉徴収2027で解説しています。
いつまでに何を出す?年末調整のスケジュールと書類
年末調整に必要な主な申告書と、所得税法が定める提出期限(法定期限)は次のとおりです。
| 書類名 | 法定の提出期限 | 何を決めるか |
|---|---|---|
| 給与所得者の扶養控除等申告書 | その年最初に給与の支払を受ける日の前日まで(所得税法第194条第1項) | 扶養親族・障害者控除・寡婦控除等の有無。年末調整の対象になるかどうかもこの提出で決まる |
| 給与所得者の基礎控除申告書 | その年最後に給与の支払を受ける日の前日まで(同法第195条の4) | 基礎控除の金額(合計所得の見積額に応じて変動) |
| 給与所得者の配偶者控除等申告書 | 同上(同法第195条の2) | 配偶者控除・配偶者特別控除の金額 |
| 給与所得者の特定親族特別控除申告書 | 同上(同法第195条の3) | 19〜22歳の親族に関する特定親族特別控除の金額 |
| 給与所得者の保険料控除申告書 | 同上(同法第196条) | 生命保険料・地震保険料・社会保険料(給与天引き分を除く)等の控除額 |
法定期限は「その年最後に給与の支払を受ける日の前日まで」ですが、多くの勤務先は年末調整の事務作業に時間がかかるため、11月頃を社内の提出締切として案内しています。これは法律上の期限ではなく各社の内部運用であり、締切は勤務先ごとに異なるため、案内された期限を確認してください。
よくある誤解
「年収103万円(または178万円)以下なら年末調整はしなくていい」という理解は誤りです。年末調整の対象かどうかは年収の金額ではなく、扶養控除等申告書を提出しているかどうかで決まります。金額の基準は、あくまで「所得税がかかるかどうか」の基準です。
「掛け持ちしていれば、両方の勤務先で年末調整をしてもらえる」というのも誤解です。扶養控除等申告書は主たる勤務先1社にしか提出できず、年末調整もその1社でしか行われません。
「年末調整さえ受ければ、その年の税金の手続きはすべて終わる」というのも正確ではありません。医療費控除やふるさと納税(ワンストップ特例を使わない場合)などは、年末調整とは別に確定申告をしなければ控除が反映されません。
FAQ
扶養控除等申告書を勤務先に提出していれば、年収90万円でも年末調整の対象になります。年収178万円以下であれば最終的な所得税額はゼロになりますが、月々の源泉徴収額がゼロとは限らないため、年末調整で還付が出ることがあります。
死亡退職・海外転勤による非居住者化など特定の5つのケースに当てはまれば退職時に年末調整が行われますが、それ以外の一般的な中途退職では年末調整は行われません。その場合は、退職した年の翌年に自分で確定申告をして精算する必要があります。
完結しません。寄附金控除は年末調整の対象外のため、原則として確定申告が必要です。ただし「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を使えば、確定申告をせずに控除を受けられます。総務省は適用条件を「確定申告の不要な給与所得者等で、ふるさと納税先の自治体数が5団体以内である場合に限り、ふるさと納税を行った各自治体に申請することで確定申告が不要になる」と説明しています。寄附のたびに寄附先の自治体へ申請書を送る必要があり、送っていない寄附分は特例の対象になりません。なお、この特例を使うと所得税からの控除は行われず、その分も含めて翌年度の住民税から控除されます。
できません。扶養控除等申告書は主たる給与の支払者1社にのみ提出する決まりです(所得税法第194条第1項)。もう一方の勤務先の給与は年末調整されないため、条件に該当すれば確定申告で精算します。
勤務先の社内締切に間に合わなければ、年末調整で反映されるはずだった控除(生命保険料控除、配偶者控除など)が適用されないまま年末調整が終わってしまう場合があります。その場合は、翌年に自分で確定申告(還付申告)をすることで、適用漏れの控除を反映させることができます。
まとめ
年末調整の対象になるかどうかは、年収の金額ではなく「給与所得者の扶養控除等申告書」を勤務先に提出しているかどうかで決まります。パート・アルバイト・年の途中入社でも、この申告書を提出していれば年収に関わらず対象です。ただし、年収2,000万円を超える人や、一定の中途退職者は対象外になります。掛け持ちで働く場合は主たる勤務先1社でしか年末調整が行われないため、もう一方の給与について確定申告が必要になることがあります。また、医療費控除やふるさと納税(ワンストップ特例を使わない場合)、住宅ローン控除の1年目など、年末調整だけでは完結せず確定申告が必要な控除もあります。2026年分(令和8年分)は基礎控除・給与所得控除の引き上げにより課税最低限が178万円に変わるため、あわせて税制改正2026年ガイドで最新の控除額を確認しておくことをおすすめします。
免責事項
本記事の内容は2026年9月23日時点の一次資料(国税庁タックスアンサー、e-Gov法令API所得税法)に基づいています。法令・通達は改正される可能性があるため、実際の申告・控除の適用にあたっては、必ず最新の国税庁の案内および所轄税務署・勤務先の指示をご確認ください。本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の税務相談への回答ではありません。本記事の情報に基づく判断によって生じたいかなる損害についても、筆者は責任を負いかねます。



