最終更新日: 2026年9月3日
2027年1月1日以後に生ずる所得から、防衛特別所得税(税率1%)の源泉徴収が始まる。根拠は防衛財確法(令和8年法律第12号による改正)で、法律の公布日(2026年3月31日)とは別の日付である。同時に復興特別所得税は2.1%から1.1%へ引き下げられ、課税期間も令和29年(2047年)12月31日まで10年延長される。合計の上乗せ率は2.1%のまま変わらないため、源泉徴収税額そのものの計算方法は変わらない。実務担当者が本当に対応すべきなのは、令和9年分から切り替わる源泉徴収税額表の新様式である。本記事は条文と国税庁Q&Aの一次ソースに基づき、給与計算・経理担当者が2027年1月までに何を確認すればよいかを整理する。
この記事の対象読者
給与計算・経理・税務を担当し、2027年1月支給分の給与から防衛特別所得税の源泉徴収に対応しなければならない方を想定している。「防衛特別所得税とは何か」という制度の概要だけでなく、「実際に源泉徴収の計算方法は変わるのか」「令和8年分と令和9年分で何が違うのか」「防衛特別法人税と混同していないか」という実務上の疑問に答える構成にした。
一方、給与や報酬を「受け取る側」の個人については、この改正のために新たに行う手続きはない。源泉徴収は支払う側(勤務先・発注者)の義務であり、合計税率2.1%が変わらない以上、手取り額も源泉徴収票・支払調書に記載される源泉徴収税額も従来どおりである。Q&A(Q16)も、給与所得の源泉徴収票や支払調書の「源泉徴収税額」欄には「所得税、防衛特別所得税及び復興特別所得税の合計額を記載してください」としており、3つの税を分けて書く欄は設けられない。確定申告の際は、これまでと同じく源泉徴収票等に記載された税額をそのまま転記すればよい。
1. 結論:変わるもの・変わらないもの
まず全体像を押さえる。今回の改正は、報道やコラム記事の見出しだけを見ると「新税創設=負担増」という印象を与えやすいが、源泉徴収の実務という観点では計算方法そのものは変わらないという点が最重要である。
| 項目 | 変わるか | 内容 |
|---|---|---|
| 防衛特別所得税の創設 | 変わる | 新税として1%が追加される |
| 復興特別所得税の税率 | 変わる | 2.1%→1.1%に引き下げ |
| 復興特別所得税の課税期間 | 変わる | 令和19年(2037年)12月31日まで→令和29年(2047年)12月31日までに10年延長 |
| 合計の上乗せ率 | 変わらない | 2.1%のまま(防衛特別所得税1%+復興特別所得税1.1%) |
| 源泉徴収税額の計算方法 | 変わらない | 合計税率が同じため、算式自体に変更はない |
| 源泉徴収税額表 | 変わる | 令和9年分から新様式に切替え |
| 納付書 | 変わらない | 引き続き1枚の所得税徴収高計算書に合計額を記載して納付 |
| 年調年税額の計算式(102.1%を乗じる) | 変わらない | 令和8年分・令和9年分とも同じ |
国税庁Q&A(後掲)は、この点をQ1でそのまま明言している。
「改正前(復興特別所得税の税率2.1%)と改正後(防衛特別所得税の税率1%及び復興特別所得税の税率1.1%)とで、合計税率(2.1%)に変更はありませんので、改正前後で、源泉徴収税額の計算方法に変更は生じません。」
つまり、復興特別所得税は廃止されない。税率を1%分削って存続し、そこへ防衛特別所得税が新設される、という関係にある。「復興特別所得税が防衛特別所得税に置き換わる」という理解は誤りである。
2. 根拠法令:防衛財確法に条文が追加された
防衛特別所得税は、新しい単独の法律として作られたのではない。我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法(令和五年法律第六十九号、通称「防衛財確法」)に、条文を追加する形で創設された。
追加した改正法は、所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)である。財務省の税制改正解説は、成立の経緯を次のように説明している。
「防衛特別所得税の創設等のための我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法(以下「防衛財確法」といいます。)の改正や復興特別所得税の改正を含む「所得税法等の一部を改正する法律」は、去る令和8年3月31日に参議院本会議で可決・成立し、同日に令和8年法律第12号として公布され、関係政省令等も公布されています。」
追加された主な条文は防衛財確法第5条の4(納税義務)、第5条の26〜29(源泉徴収・年末調整関係)、第5条の31(所得税法の適用の特例等。租税条約・外国居住者等所得相互免除法の適用関係を含む)である。関係政省令として、防衛特別所得税に関する政令(令和8年3月31日政令第106号)、防衛特別所得税に関する省令(令和8年3月31日財務省令第27号)、給与源泉徴収税額表を定める財務大臣告示(令和8年4月30日財務省告示第127号・第128号)も公布されている。
3. 税率のしくみ:基準所得税額に対する1%
納税義務と課税標準は、防衛財確法第五条の四第一項に定められている。
「所得税法第五条の規定その他の所得税に関する法令の規定により所得税を納める義務がある居住者、非居住者、内国法人又は外国法人は、基準所得税額につき、この法律により、防衛特別所得税を納める義務がある。」
源泉徴収の場面での税率は、防衛財確法第五条の二十六第二項に定められている。
「前項の規定により徴収すべき防衛特別所得税の額は、(中略)徴収して納付すべき所得税の額(中略)に百分の一の税率を乗じて計算した金額とする。」
つまり、防衛特別所得税は所得税額そのものへの付加税であり、独自の基礎控除や非課税枠は設けられていない。復興特別所得税と同じ構造である。
給与など源泉徴収の実務で使う合計税率の算式は、国税庁Q&A Q5のとおりである。
合計税率(%)= 所得税率(%)× 102.1%
例えば所得税率10%であれば、合計税率は10.21%になる。端数計算の実例(Q6)も示されている。
講演料222,222円・所得税率10%の場合「222,222円 × 10.21% = 22,688.8662 ⇒ 22,688円」
102.1%という乗率自体は、令和8年分・令和9年分を通じて変わらない。 変わるのは、この乗率を反映した源泉徴収税額表の様式である(後述)。
4. 施行日と適用開始日は別物
ここが最も誤解されやすい。法律の公布日と、源泉徴収が実際に始まる日は異なる。
| 日付 | 何が起きるか | 根拠 |
|---|---|---|
| 2026年3月31日 | 令和8年法律第12号として成立・公布(防衛財確法の改正) | 財務省税制改正解説 |
| 2027年1月1日 | 防衛特別所得税の源泉徴収が始まる(適用開始) | 防衛財確法第五条の二十六第一項 |
源泉徴収の開始時期は、防衛財確法第五条の二十六第一項に明記されている。
「(前略)所得税を徴収して納付すべき者は、その徴収(令和九年一月一日以後に行うべきものに限る。)の際、防衛特別所得税を併せて徴収し、(中略)国に納付しなければならない。」
国税庁Q&Aも同旨で、「これらの改正は、令和9年1月1日以後に生ずる所得に対する所得税について適用されます」としている。公布から施行まで約9か月の期間があり、その間の2026年分の給与・賞与には一切影響しない。「2026年3月31日に成立したのだから2026年中の給与から天引きが増える」という誤解は、この2つの日付を混同したものである。
5. 対象となる支払いの一覧
防衛特別所得税は、所得税の源泉徴収が行われる支払いのほぼすべてに及ぶ。国税庁Q&A(Q3)は次のように整理している。
| 区分 | 対象となる支払いの例 |
|---|---|
| 利子・配当 | 預貯金の利子等、上場株式配当、投資信託の収益分配等(所得税法第4編第1章「利子所得及び配当所得に係る源泉徴収」・租税特別措置法) |
| 給与・賞与 | 給与所得の源泉徴収(同第4編第2章) |
| 退職所得 | 退職手当等の源泉徴収(同第4編第3章) |
| 報酬・料金等 | 弁護士・税理士報酬、原稿料、講演料等(同第4編第4章) |
| 非居住者等所得 | 非居住者・外国法人への国内源泉所得の支払い(同第4編第5章「非居住者又は法人の所得に係る源泉徴収」) |
| 特定口座内保管上場株式等の譲渡 | 租税特別措置法の源泉徴収選択口座 |
| NISA・懸賞金付預貯金・割引債差益等 | 租税特別措置法の個別列挙条項 |
給与・賞与だけでなく、退職所得、士業への報酬、利子・配当、非居住者への支払いまで、所得税の源泉徴収がかかる場面はすべて防衛特別所得税の対象になる。 経理担当者が「自社は給与の源泉徴収さえ対応すればよい」と考えていると、報酬・料金等の支払調書や非居住者向けの支払いで対応漏れが起きうる。退職所得の源泉徴収税額そのものの計算手順は退職金の税額計算ガイドで扱っている。
不動産の譲渡所得についても、復興特別所得税・防衛特別所得税は源泉徴収ではなく申告時の付加税として関わってくる。不動産譲渡所得税ガイドでは、この税率の変遷を含めて整理している。
6. 実務で本当に変わること:令和9年分源泉徴収税額表の切替え
合計税率が変わらない以上、実務で切り替えるべきものは限られる。国税庁Q&A(Q7)は次のように注意を促している。
「なお、各年分の給与等について源泉徴収する際には、必ずその年分の源泉徴収税額表を使用するようご注意ください(令和9年分以後の「源泉徴収税額表」は、防衛特別所得税及び復興特別所得税を含んだ税額表となります。また、令和9年分の「源泉徴収税額表」は、令和8年8月頃に国税庁ホームページに掲載する予定です。)。」
令和9年分源泉徴収税額表は、既に国税庁ホームページに公表されている(国税庁「令和9年分 源泉徴収税額表」、https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/zeigakuhyo2027/01.htm。2026年9月3日時点で掲載を確認)。Q&A(Q7)の「令和8年8月頃に掲載予定」という予告に対し、2026年9月3日時点では掲載済みである(掲載が始まった正確な日付は国税庁ページに記載がなく、確認していない)。給与計算ソフト・アウトソーサーが取り込み作業を進める段階に入っている。
整理すると次のようになる。
| 年分 | 使用する源泉徴収税額表 | 防衛特別所得税・復興特別所得税の反映 |
|---|---|---|
| 令和8年分(2026年中の給与) | 令和8年分源泉徴収税額表 | 反映なし(従来どおり復興特別所得税2.1%のみ) |
| 令和9年分(2027年1月支給分〜) | 令和9年分源泉徴収税額表(新様式・公表済み) | 反映あり(防衛特別所得税1%+復興特別所得税1.1%を織り込み済み) |
担当者が実際に行うべき作業は「新しい税額表を給与計算システムに反映させる」ことであって、税額の計算ロジックを自社で組み替えることではない。 給与計算ソフトを自社開発している企業を除けば、多くの場合はベンダー側のアップデート適用で完了する。
7. 年末調整・退職所得への影響
年末調整の税額計算式も、乗率自体は変わらない。国税庁Q&A(Q8)は次のとおりである。
「年調年税額((中略)防衛特別所得税及び復興特別所得税を含みます。)は、算出所得税額から住宅借入金等特別控除額を控除した後の税額(源泉徴収簿の「年調所得税額」欄の額)に102.1%を乗じた金額(100円未満切捨て)となります(防衛財確法5の28①)。(注)令和8年分と令和9年分とで、年調年税額の求め方(年調所得税額に乗じる率)に変更はありません。」
住宅借入金等特別控除の対象者が多い企業では、年末調整の実務手順そのものは住宅ローン控除の年末調整ガイドを合わせて確認するとよい。控除額を差し引いた後の税額に102.1%を乗じる、という順序自体は今回の改正でも変わらない。
退職所得についても同様で、Q&A(Q9)は「退職所得の源泉徴収税額の速算表(令和8年分・令和9年分)」につき「令和8年分と令和9年分とで(中略)変更はありません」としている。
納付についても変更はない。所得税・防衛特別所得税・復興特別所得税は、1枚の所得税徴収高計算書(納付書)に合計額を記載して納付する(Q4)。3つの税金を別々の欄に分けて記載する必要はない。
ただし、非居住者等への支払いがある場合には例外がある。租税条約に基づく限度税率を適用した分(防衛特別所得税・復興特別所得税が含まれない)と、国内法上の税率を適用した分(含まれる)とを同時に納付するときは、1枚にまとめられない。Q&A(Q14)は「その納付税額に、防衛特別所得税及び復興特別所得税が含まれた税額と、租税条約に基づく限度税率を適用したことなどにより防衛特別所得税及び復興特別所得税が含まれない税額(Q13参照)とがある場合には、それぞれ別葉の所得税徴収高計算書(納付書)により納付してください」としている。海外への支払いがある企業は、この点だけ納付事務の手順を分けておく必要がある。
| 手続 | 令和8年分 | 令和9年分 | 変更点 |
|---|---|---|---|
| 年調年税額の算式(乗率102.1%) | 適用 | 適用 | なし |
| 退職所得の速算表 | 従来どおり | 従来どおり | なし |
| 納付書の様式 | 1枚に合計額 | 1枚に合計額(非居住者等で限度税率適用分がある場合は別葉) | なし |
| 月次源泉徴収の税額表 | 令和8年分税額表 | 令和9年分税額表(新様式) | あり |
8. 租税条約が適用される場合は課されない
非居住者・外国法人への支払いで租税条約の限度税率や免除規定が適用される場合、防衛特別所得税も復興特別所得税も課されない。国税庁Q&A(Q13)は次のとおりである。
「租税条約の規定により、所得税法及び租税特別措置法に規定する税率以下の限度税率が適用される場合又は所得税が免除される場合には、防衛特別所得税及び復興特別所得税は課されません」
ただし「租税条約が結ばれていれば一律に免除される」わけではない。 適用されるのは、租税条約の限度税率のほうが国内法の税率より低い(以下である)場合に限られる。逆に国内法の税率のほうが低ければ国内法の税率で源泉徴収することになり、そのときは防衛特別所得税・復興特別所得税も上乗せされる。Q&A(Q13)は同じ箇所に次の注を置いている。
「(注)国内法(所得税法及び租税特別措置法)の税率の方が租税条約上の限度税率よりも低いため、国内法(所得税法及び租税特別措置法)の税率を適用するものについては、防衛特別所得税及び復興特別所得税を併せて源泉徴収する必要があります。」
「租税条約の届出書を受け取っているから2.1%は不要」と機械的に判断すると源泉徴収不足になりうる。支払ごとに、実際に適用している税率が条約側か国内法側かを確認する必要がある。
外国居住者等所得相互免除法(正式名称は「外国居住者等の所得に対する相互主義による所得税等の非課税等に関する法律」、昭和37年法律第144号)が適用される場合も同様である。Q&A Q13 は「外国居住者等所得相互免除法の規定の適用により、所得税法及び租税特別措置法に規定する税率が軽減される場合又は所得税が非課税とされる場合には、防衛特別所得税及び復興特別所得税は課されません(防衛財確法5の31④、復興財確法33④)」としている。非居住者役員・海外子会社との取引がある企業は、租税条約届出書の対象範囲を防衛特別所得税についても引き続き確認しておく必要がある。
9. 「防衛特別法人税」と混同しない
読者が最も混同しやすいのが、防衛特別法人税という別制度である。名称が似ているが、根拠法・対象・税率・施行時期のすべてが異なる。
| 項目 | 防衛特別所得税 | 防衛特別法人税 |
|---|---|---|
| 対象 | 個人・法人の所得税(源泉徴収を含む) | 法人税額に対する付加税 |
| 根拠法 | 防衛財確法(令和8年法律第12号による改正) | 防衛財確法(令和7年法律第13号による改正) |
| 公布日 | 2026年3月31日 | 2025年3月31日 |
| 適用開始 | 2027年1月1日以後に生ずる所得 | 2026年4月1日以後に開始する事業年度 |
| 税率 | 基準所得税額の1% | 法人税額の4% |
| 控除 | なし | 課税標準となる法人税額から500万円を控除 |
財務省の税制改正解説は、防衛特別法人税について次のように説明している。
「防衛特別法人税の創設等のための我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法の改正を含む「所得税法等の一部を改正する法律」は、去る3月31日に参議院本会議で可決・成立し、同日に令和7年法律第13号として公布され(中略)」
防衛特別法人税は1年前の税制改正(令和7年法律第13号)で先に導入され、すでに2026年4月1日以後開始事業年度から適用が始まっている。 一方、本記事の主題である防衛特別所得税は、その1年後の令和8年法律第12号で導入され、2027年1月1日から源泉徴収が始まる。「防衛」という名称と「1%」「4%」という税率の近さから同じ制度と誤認されやすいが、根拠法も適用開始年度も1年ずれた別制度である。経理部門と法人税申告担当部門で情報が分断されている企業では、この違いを社内資料に明記しておくことを勧める。
なお、2027年分の所得税では防衛特別所得税の創設と並行して、超富裕層向けミニマムタックスの強化も予定されている。対象者は限定的だが、同じ2027年という適用年で複数の改正が重なる点は2027年ミニマムタックス強化ガイドで扱っている。
10. 準備の逆算スケジュール
2027年1月支給分の給与から新税額表を確実に適用するために、いつ何をするかを逆算した。
| 時期 | やること | 担当 |
|---|---|---|
| 済(2026年9月3日時点で確認) | 国税庁が令和9年分源泉徴収税額表を公表済み | — |
| 2026年9月〜10月 | 給与計算システム・アウトソーサーに「令和9年分税額表への対応時期」を確認する | 経理・情報システム |
| 2026年11月〜12月 | 年末調整業務と並行し、システムの令和9年分税額表への切替え設定・テスト計算を行う | 経理 |
| 2026年12月 | 士業報酬・非居住者への支払い等、給与以外の源泉徴収先について令和9年分の税率反映を確認する | 経理・税務 |
| 2027年1月 | 令和9年1月支給分の給与から新税額表を適用し、源泉徴収を開始する | 経理 |
| 2027年1月以降 | 納付書(所得税徴収高計算書)の記載額に防衛特別所得税分が含まれていることを確認する | 経理 |
税額の計算方法自体は変わらないため、担当者が新たに算式を覚え直す必要はない。 確認すべきは「給与計算システムが令和9年分の税額表を正しく取り込んでいるか」の1点に集約される。
よくある誤解
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| 「復興特別所得税が防衛特別所得税に置き換わる」 | 置き換わらない。復興特別所得税は1.1%に引き下げられて存続し、防衛特別所得税1%が新設される |
| 「2026年3月31日の公布から源泉徴収が増える」 | 源泉徴収の適用開始は2027年1月1日。公布日と適用開始日は別 |
| 「合計の上乗せ率が2.1%から3.1%に増える」 | 増えない。防衛特別所得税1%+復興特別所得税1.1%=合計2.1%で変わらない |
| 「源泉徴収税額の計算方法を組み替える必要がある」 | 合計税率が同じため計算方法自体の変更はない。変わるのは税額表の様式 |
| 「防衛特別法人税と同じ制度・同じ時期の話」 | 別制度。防衛特別法人税は令和7年法律第13号・2026年4月1日以後開始事業年度、防衛特別所得税は令和8年法律第12号・2027年1月1日から |
| 「給与以外は関係ない」 | 退職所得・報酬料金・利子配当・非居住者への支払い等、所得税の源泉徴収がかかる支払いはすべて対象 |
FAQ
Q1. 防衛特別所得税は何のために作られた税ですか。
防衛力の抜本的な強化に必要な財源を確保するための特別措置法(防衛財確法)に基づく付加税である。基準所得税額に対して1%の税率で課され、源泉徴収の場面では源泉徴収すべき所得税額に1%を乗じて計算する(防衛財確法第五条の四第一項・第五条の二十六第二項)。
Q2. 2026年中に支払う給与や賞与にも影響しますか。
影響しない。防衛特別所得税の源泉徴収が始まるのは2027年1月1日以後に生ずる所得からである(防衛財確法第五条の二十六第一項)。2026年分の給与・賞与・報酬は、従来どおり復興特別所得税2.1%のみが上乗せされる。
Q3. 源泉徴収税額の計算方法は変わりますか。
変わらない。防衛特別所得税1%と引き下げ後の復興特別所得税1.1%を合計すると2.1%になり、改正前の復興特別所得税2.1%と同じである。国税庁Q&Aも「源泉徴収税額の計算方法に変更は生じません」と明言している。実務上変えるべきなのは、令和9年分から新様式になる源泉徴収税額表そのものである。
Q4. 令和9年分の源泉徴収税額表はもう公表されていますか。
公表されている。国税庁の「令和9年分 源泉徴収税額表」のページを2026年9月3日時点で確認した(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/zeigakuhyo2027/01.htm)。Q&A(Q7)の予告は「令和8年8月頃に掲載予定」だったが、掲載が始まった正確な日付はページに記載がない。令和8年分以前の給与等には使用できない別様式である点に注意する。
Q5. 防衛特別法人税と防衛特別所得税は同じものですか。
別の制度である。防衛特別法人税は法人税額に対する4%の付加税で、令和7年法律第13号(2025年3月31日公布)により2026年4月1日以後開始事業年度から適用されている。防衛特別所得税は所得税に対する1%の付加税で、令和8年法律第12号(2026年3月31日公布)により2027年1月1日以後に生ずる所得から適用される。根拠法・適用開始年度がともに1年ずれている。
Q6. 給与以外にも防衛特別所得税がかかりますか。
かかる。所得税の源泉徴収が行われる支払いはほぼすべて対象で、給与・賞与のほか、退職所得、弁護士・税理士報酬等の報酬・料金、利子、配当、非居住者・外国法人への国内源泉所得の支払い等が含まれる(国税庁Q&A Q3)。
Q7. 海外の取引先への支払いで租税条約を適用している場合はどうなりますか。
租税条約の規定により所得税法・租税特別措置法所定の税率以下の限度税率が適用される場合、または所得税が免除される場合には、防衛特別所得税・復興特別所得税のいずれも課されない(国税庁Q&A Q13)。ただし国内法の税率のほうが低く、国内法の税率で源泉徴収する場合は、防衛特別所得税・復興特別所得税を併せて源泉徴収する(同Q13の注)。租税条約届出書があるというだけで一律に非課税とはならない点に注意する。
まとめ
2027年1月1日、防衛財確法(令和8年法律第12号による改正)に基づき防衛特別所得税(税率1%)の源泉徴収が始まる。要点は3つに集約できる。
- 復興特別所得税は廃止されない。 税率が2.1%から1.1%に下がり、課税期間が令和29年(2047年)12月31日まで10年延長されたうえで存続する。そこへ防衛特別所得税1%が新設される
- 合計の上乗せ率は2.1%のまま変わらないため、源泉徴収税額の計算方法自体に変更はない。 実務で対応すべきなのは、令和9年分から新様式に切り替わる源泉徴収税額表(既に公表済み)を給与計算システムへ反映させることに尽きる
- 防衛特別法人税とは別制度である。 防衛特別法人税は令和7年法律第13号・2026年4月1日以後開始事業年度から適用済みの法人税付加税(税率4%・500万円控除)であり、根拠法・適用時期とも防衛特別所得税とは1年ずれている
給与計算・経理の実務としては、税制改正2026年ガイドで解説した基礎控除引上げ等と合わせて、2026年内に給与計算システムの令和9年分税額表対応を確認しておくことが最優先事項になる。個別の適用可否や自社の対応状況に迷う場合は、所轄税務署または税理士に確認しながら進めることを推奨する。
免責事項
本記事は2026年9月時点で公表されている一次情報(防衛財確法・所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)・国税庁Q&A・財務省税制改正の解説、e-Gov法令検索)に基づいて作成した一般的な情報提供を目的とするものです。個別案件への適用可否・具体的な源泉徴収実務の対応方法については、必ず所轄税務署または税理士等の専門家にご確認ください。本記事の内容に基づく判断・行動により生じた損害について、筆者および運営者は一切の責任を負いません。
参考法令・一次ソース
| 資料 | 備考 |
|---|---|
| 我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法(防衛財確法、令和五年法律第六十九号) | 法令ID 505AC0000000069。第5条の4・第5条の26〜29・第5条の31を、2027年1月1日施行版で確認(egov_article.py --asof 2027-01-01 505AC0000000069 5_4 5_26 5_27 5_28 5_29 5_31) |
| 所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号) | 2026年3月31日成立・公布。防衛財確法・復興特別所得税に関する条文を追加する改正法 |
| 国税庁「防衛特別所得税及び復興特別所得税(源泉徴収関係)Q&A」(令和8年5月) | https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0026005-024_03.pdf |
| 国税庁「令和9年分 源泉徴収税額表」 | https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/zeigakuhyo2027/01.htm(2026年9月3日にcurlで直接取得・タイトル一致を確認) |
| 財務省 令和8年度税制改正の解説(防衛特別所得税・復興特別所得税関係) | https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/explanation/PDF/p0141-0209.pdf |
| 財務省 令和7年度税制改正の解説(防衛特別法人税の創設) | https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2025/explanation/PDF/p0350-0424.pdf |

