自立支援医療の負担上限額の特例は令和9年3月末まで|延長案(令和12年3月末)と、特例が切れた場合の自己負担

本記事は法令・通達・官公庁資料に基づき編集部が作成・検証しています。個別の法的・税務判断ではありません。最新の法令はe-Gov法令検索でご確認ください。
自立支援医療の負担上限額の特例は令和9年3月末まで|延長案(令和12年3月末)と、特例が切れた場合の自己負担

本記事は2026年10月20日時点で厚生労働省が公表している社会保障審議会障害者部会 第160回(2026年10月20日)資料3と、e-Gov法令検索で取得した障害者総合支援法・同法施行令の条文をもとに作成しています。延長は事務局が示した「案」であり、決定ではありません。負担上限額は世帯の所得区分や認定の内容で変わるため、ご自身の区分はお住まいの市区町村(精神通院医療は都道府県・指定都市)の窓口でご確認ください。

結論|特例の「現行の期限」は令和9年3月31日のまま。延長は案の段階です

自立支援医療には、負担上限額を低く抑える「経過的特例措置」があります。対象は次の2つのグループです。

  • 育成医療(18歳未満の子どもの手術等の医療)を受ける、中間所得層の世帯
  • 「重度かつ継続」(高額な治療を長く続ける必要があると認定された人)のうち、市町村民税の所得割が年23.5万円以上の一定所得以上の人

この特例の期限は令和9年(2027年)3月31日です。2026年10月20日の障害者部会 第160回で、厚生労働省は「令和12年(2030年)3月末まで延長することとしてはどうか」という対応案を示しました(資料3 p.5。現行の期限は p.4)。

項目 現在の状況
現行の特例の期限 令和9年3月31日(政令の附則で定められている)
延長 令和12年3月末までとする案が示された段階。決定ではない
延長の方法 資料には記載なし。期限は政令の附則に書かれているため、延長するなら政令の改正が要ると考えられる(筆者の推測)
今すぐ利用者がすること 特にありません。現在の受給者証のとおりに利用できます

低所得・生活保護の方や、重度かつ継続でない中間所得層(更生医療・精神通院医療)の方は、今回の特例と関係がなく、上限額は変わりません。

この記事では、まず区分ごとの負担上限額を整理し、そのうえで「特例が延長されなかった場合」に負担がどう変わるかを条文に沿って示します。障害福祉サービスの報酬改定の動きは令和9年度障害福祉サービス等報酬改定の審議状況で整理しています。自立支援医療以外の受給者証については障害福祉サービス受給者証2026の申請手順・利用料ガイドをご覧ください。

自立支援医療とは|3種類の医療と、窓口の違い

自立支援医療は、障害のある人が、障害の状態を軽くするために必要な医療(保険診療に限る)の自己負担を軽くする公費負担医療制度です。根拠は障害者総合支援法で、月ごとの自己負担の上限額が所得に応じて決まっています(資料3 p.2)。

種類 対象 申請先・実施主体
育成医療 18歳未満で、手術等により確実な治療効果が期待できる障害児(例: 口蓋裂の形成術、先天性の心臓・内臓の障害) 市町村
更生医療 18歳以上の身体障害者で、手術等により確実な効果が期待できる人(例: 人工関節、人工透析、ペースメーカー埋込) 市町村
精神通院医療 精神疾患(てんかんを含む)があり、通院による精神医療を継続的に必要とする人 都道府県・指定都市

令和6年度の支給決定件数は、更生医療が294,191件、育成医療が10,884件、精神通院医療が2,666,159件です(資料3 p.2)。

公費で軽くなるしくみは「保険優先」です。まず医療保険(通常は7割)が支払い、本人の自己負担分(通常3割)と上限額の差額を自立支援医療費として支給します。結果として、窓口で払うのは「医療費の1割」か「月の負担上限額」のどちらか低い方になります(資料3 p.2、障害者総合支援法第58条第3項第1号)。入院中の食費は、この上限額とは別の扱いです(資料3 p.6)。

区分別の負担上限額|特例がある今の金額(月額)

負担上限額は、世帯(医療保険の世帯単位)の市町村民税の所得割の額で区分されます。次の表は、資料3 p.3 の表を全行そのまま写したものです。金額は1か月あたりで、「-」は該当なしを意味します。

所得区分 市町村民税の条件 育成医療(一般) 更生医療・精神通院医療(一般) 重度かつ継続
一定所得以上 所得割23.5万円以上(年収約833万円以上) 対象外 対象外 2万円(特例)
中間所得2 所得割3.3万円以上23.5万円未満(年収約400〜833万円未満) 1万円(特例) 医療費の1割または高額療養費の自己負担限度額 1万円
中間所得1 所得割3.3万円未満(年収約290〜400万円未満) 5千円(特例) 医療費の1割または高額療養費の自己負担限度額 5千円
低所得2 市町村民税非課税(低所得1を除く) 5千円 5千円 5千円
低所得1 市町村民税非課税で、本人(障害児の場合は保護者)の年収82.65万円以下(資料3 p.3 時点の目安) 2,500円 2,500円 2,500円
生活保護 生活保護世帯 0円 0円 0円

年収は、夫婦と障害者である子の3人世帯での粗い試算です(資料3 p.3)。目安であり、実際の区分は所得割の額で決まります。

特例措置にあたる部分は2か所だけ

上の表で「特例」にあたるのは次の2か所です(資料3 p.3 の赤枠部分、施行令附則第13条)。

  1. 育成医療の中間所得1・2(重度かつ継続でない場合)の上限額: 中間所得2が1万円、中間所得1が5千円
  2. 「重度かつ継続」の一定所得以上の上限額: 2万円

低所得の区分や、更生医療・精神通院医療の中間所得層(重度かつ継続でない場合)は特例の対象ではありません。もともと特例の期限と関係なく、現行どおりです。

「重度かつ継続」に当たる人

「重度かつ継続」は、費用が高額な治療を長く続けなければならない人として認定された人です。資料3 p.3 は範囲を次のように示しています。

  • 更生・育成: 腎臓・小腸・免疫・心臓(心臓移植後の抗免疫療法に限る)・肝臓(肝臓移植後の抗免疫療法に限る)の機能障害の人
  • 精神通院: 統合失調症、躁うつ病・うつ病、てんかん、認知症等の脳機能障害、薬物関連障害(依存症等)の人、または精神医療に一定以上の経験がある医師が判断した人
  • 更生・育成・精神通院に共通: 医療保険の多数回該当(高額療養費が繰り返し支給されている)の人

認定は市区町村等が行います(施行令第35条第1号)。ご自身が該当するかは、主治医と窓口にご相談ください。

特例措置の経緯|平成18年から続く「激変緩和」

特例は、平成18年(2006年)4月に制度が始まったとき、負担が急に増える人への激変緩和として設けられました。資料3 p.4 の経過は次のとおりです。

時期 内容
平成18年4月〜 特例を設定。育成医療の中間所得2は4万200円、中間所得1は1万円。重度かつ継続の一定所得以上は、制度の対象外だったところを2万円に
平成21年4月〜 育成医療の中間所得層を見直し。中間所得2を4万200円から1万円へ、中間所得1を1万円から5千円へ引き下げ
平成24年4月〜 以後、特例を5回延長。現在の期限は令和9年3月31日

延長案の中身|何を理由に「延長してはどうか」としているか

資料3 p.5 が挙げる理由は、次の2つのグループごとに整理されています。いずれも令和6年度福祉行政報告例などの数字です。

育成医療
– 育成医療の受給者のうち、中間所得層の割合は83.1%で、平成18年度の84.6%と同じく依然として8割を超えている
– 育成医療(入院)の1人あたり月額総医療費は、平成18年度の932,376円から令和6年度の1,345,763円へ、40万円程度増えている
– 小児慢性特定疾病の医療費助成制度では、この特例と同額の自己負担上限月額を本則(もともとの基本ルール)で定めている

「重度かつ継続」の一定所得以上
– 支給決定件数は令和6年度で132,392件で、平成18年度の78,813件より増えている(内訳は精神通院医療120,541件、更生医療11,818件、育成医療33件)
– 難病の医療費助成制度では、更生医療・精神通院医療の特例と同額の自己負担上限月額を本則で定めている

つまり国は、受給者の構成が制度開始時から変わっておらず、医療費はむしろ増えていること、他の医療費助成制度と金額がそろっていることを根拠に、期限の延長を案として示しています。これらは資料の記載であり、筆者が評価を加えたものではありません。

「決まったこと」と「未定のこと」

区分 内容
決まっていること 現行の特例は令和9年3月31日まで有効(施行令附則第13条)。それまでは今の上限額のまま
案として示されたこと 令和12年3月末まで延長する(資料3 p.5)
未定のこと 延長が正式に決まるか。決まる時期。政令改正の内容。延長後の金額が変わるか(資料は金額変更に触れていない)

資料3は障害者部会の第160回で提出された資料で、部会としての結論や、その後の政令の改正日程は資料に書かれていません。最新の状況は、厚生労働省の障害者部会のページと、官報・e-Govの法令の更新で確認してください。

特例が切れた場合の自己負担|条文ベースの試算

特例が延長されなかった場合、期限後は施行令附則第13条の特例がなくなり、本則(第29条・第35条)だけが残ります。現行の条文を読むと、次のようになります。これは「延長されなかった場合」の整理であり、実際にそうなると決まったわけではありません。

育成医療の中間所得層(重度かつ継続でない場合)

附則第13条第2項は、所得割が23.5万円未満で、高額治療継続者(重度かつ継続の認定を受けた人)以外の育成医療について、中間所得2(3.3万円以上23.5万円未満)を1万円、中間所得1(3.3万円未満)を5千円とします。この規定は令和9年3月31日までの間に限られます。

期限後の上限額について、資料3 p.2〜3 は育成医療の原則を「総医療費の1割、または高額療養費(医療保険)の自己負担限度額」としています。つまり、次のようになります。

特例あり(令和9年3月31日まで) 特例なし(期限後・延長されない場合)
育成医療・中間所得2 月1万円 総医療費の1割、または加入する医療保険の高額療養費の自己負担限度額(低い方と考えられる)
育成医療・中間所得1 月5千円 同上

高額療養費の自己負担限度額は、加入する医療保険の所得区分で決まり、1万円や5千円を上回る見込みです。入院で医療費が高額になるほど、特例の有無による差は大きくなります。高額療養費の金額は2026年8月から見直されています。詳しくは高額療養費制度2026の所得別上限額と健康保険法等改正2026の解説をご覧ください。

たとえば、育成医療(入院)の1人あたり月額総医療費の平均は令和6年度で1,345,763円です(資料3 p.5)。この場合、1割は約13万4千円です。特例があれば中間所得2は1万円で済みますが、特例がなければ1万円を大きく超える額が上限になると見込まれます。この計算は平均値を使った一例で、実際の負担は医療費の額と加入保険の区分で変わります。

「重度かつ継続」の一定所得以上

施行令第29条は、自立支援医療の支給認定の基準を、世帯の市町村民税の所得割が23.5万円未満であることとしています。一定所得以上(23.5万円以上)の人は、本則では対象外です。

附則第12条が、令和9年3月31日までの間に限り、所得割23.5万円以上でも高額治療継続者であれば支給認定の対象に加え、附則第13条が上限額を2万円と定めています。特例が終われば、この人たちは本則上は自立支援医療の対象から外れることになります。対象外になれば、通常の医療保険の自己負担(3割等)に戻り、必要に応じて高額療養費を使う形になります。

これが影響するのは、令和6年度で132,392件にのぼります(資料3 p.5)。ただし内訳の91.0%は精神通院医療です(資料3 p.7)。

利用者・家族が今できること

  • いま受給者証をお持ちの方は、そのまま利用できます。令和9年3月31日までは現行の上限額が適用されます
  • 中間所得層の育成医療や、一定所得以上で「重度かつ継続」の方は、ご自身が特例の対象かを、受給者証の「負担上限月額」の記載と窓口で確認しておくと安心です
  • 延長の正式な決定は、厚生労働省の発表や、お住まいの自治体の周知で確認してください。案の段階の情報で、手続きや治療の計画を変える必要はありません
  • 令和9年4月以降に手術や入院を予定している方は、特例の延長が決まるまでの間、費用の見通しを主治医・医療機関の窓口に相談しておくと、備えやすくなります

よくある質問

A

決まっていません。第160回障害者部会の資料3で、事務局が「令和12年3月末まで延長することとしてはどうか」という案を示した段階です。現行の期限は令和9年3月31日のままです。決定されるまでは、案として受け止めてください。

A

延長されなかった場合の話として、条文上は次のようになります。育成医療の中間所得層(重度かつ継続でない場合)は、1万円・5千円の特例がなくなり、1割または高額療養費の限度額になります。重度かつ継続の一定所得以上の方は、本則では対象外です。ただし延長案が実現すれば、現行のままです。また、低所得の区分や、更生医療・精神通院医療の中間所得層の上限額は、特例とは関係がありません。

A

特例の影響が出るのは、精神通院医療では「重度かつ継続」の一定所得以上(所得割23.5万円以上、年収約833万円以上の目安)の方です。それ以外の方の上限額は、特例の期限と関係なく現行どおりです。重度かつ継続の一定所得以上の方の91.0%は精神通院医療(令和6年度)という数字が資料にあります。

A

本則では、所得割23.5万円以上は自立支援医療の対象外です(施行令第29条)。一方、重度かつ継続の方は、高額な治療が長く続き家計への影響が大きいことを考慮して、平成18年から特例で対象に加えられ、上限額が2万円とされています(資料3 p.4、施行令附則第12条・第13条)。

A

資料には、延長後の手続きの記載はありません。延長されなかった場合の受給者証の扱いも未公表です。正式に決まった際に、お住まいの自治体や厚生労働省から案内があると思われますが、確認できていません。受給者証の更新時期や必要書類は、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。

まとめ|期限は令和9年3月31日。延長は案として示された段階です

  • 自立支援医療の経過的特例措置の現行期限は令和9年3月31日で、令和12年3月末までの延長案が第160回障害者部会(2026年10月20日)で示されました
  • 特例の対象は、育成医療の中間所得層(重度かつ継続でない場合)の上限額1万円・5千円と、重度かつ継続の一定所得以上の上限額2万円です
  • 延長されなかった場合、前者は1割または高額療養費の限度額に、後者は本則上は対象外になります
  • 延長は決定ではありません。正式な決定は、厚生労働省の発表と自治体の案内で確認してください

障害福祉の制度の動きは、今後も本記事と関連記事で更新します。

参考:根拠法令・資料

  • 社会保障審議会障害者部会 第160回(令和8年10月20日)資料3「自立支援医療の経過的特例措置について」
  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第58条
  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行令(平成18年政令第10号)第29条・第35条・附則第12条・附則第13条(令和8年10月20日時点で施行中の条文)

出典: 厚生労働省 障害者部会 第160回 開催ページ https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76820.html

JG

実務ガイド編集部

AI執筆 + 編集部レビュー済み

本記事はAIが初稿を作成し、編集部が法令原文・官公庁通知・審議会資料等の一次情報と照合のうえ、内容を確認・編集しています。行政手続き・法改正・制度改正の実務情報を専門に扱う編集チームが、企業実務担当者・士業専門家向けに正確性の高いコンテンツを提供します。