令和9年度(2027年度)薬価改定(中間年改定)の審議状況|対象範囲の論点・過去3回の比較・スケジュール

本記事は法令・通達・官公庁資料に基づき編集部が作成・検証しています。個別の法的・税務判断ではありません。最新の法令はe-Gov法令検索でご確認ください。
令和9年度(2027年度)薬価改定(中間年改定)の審議状況|対象範囲の論点・過去3回の比較・スケジュール
目次▼

本記事は2026年10月19日時点で厚生労働省が公表している中央社会保険医療協議会(中医協)薬価専門部会の資料(第247回・第248回・第249回)と、第247回・第248回の議事録をもとに作成しています。第249回(2026年10月7日)の議事録は公表されておらず、同回の委員の発言内容は確認していません。資料に書かれた「論点」は審議の途中経過であり、決定事項ではありません。最終判断は、厚生労働省が公表する告示・通知、および中医協が了承する「薬価改定の骨子」でご確認ください。

結論|令和9年度の薬価改定は「実施する」ことまでが決まっていて、対象範囲と適用ルールは未決定です

  • 令和9年度は診療報酬改定のない年で、薬価だけを見直す「中間年改定」にあたります。令和7年12月24日の大臣折衝事項(予算編成の最終段階で、厚生労働大臣と財務大臣が改定の内容を取り決める場)は、「令和9年度の薬価改定を着実に実施する」としています(第247回 薬-2 p.2)
  • 一方で、どの品目を対象にするか(対象範囲)、どの算定ルールを使うかは決まっていません。事務局(厚生労働省)の論点は「実施を前提に、改定の対象品目の範囲や適用される各種ルールの在り方についてどう考えるか」という問いの形のままです(第247回 薬-2 p.10、第249回 薬-1 p.35)
  • 2026年8月26日の業界ヒアリングでは、製薬団体は「引下げ前提でなく、物価高騰分の上乗せを」と求め、医薬品卸の団体は「中間年改定の廃止」を求めました。健保連(健康保険組合の全国組織)の委員は「対象範囲を広く」と述べています(第247回・第248回 議事録)
  • 改定率や薬価の引下げ幅の見通しは、公表されていません。薬価調査(市場での実際の取引価格を調べる統計調査)は令和8年度中に実施される予定で、結果が出るのはこれからです
  • 例年のスケジュールは、薬価調査 → 12月の大臣折衝 → 12月の中医協「骨子」の了承 → 翌年度の改定です。令和9年度の個別の日程は公表されていません

直近の調剤報酬の改定内容は2026年調剤報酬改定をわかりやすくまとめで、薬価改定と報酬改定が重なる月別の動きは薬局ダブル改正2026の月別チェックリストで整理しています。本記事は、その次の薬価改定(令和9年度)に向けた動きを追うものです。

資料の出典表記は「第247回 薬-2 p.5」のように、会議の回、資料番号、各スライドに印字されたページ番号で示します。

最新の動き(日付つき)

審議が進むたびに、この表の先頭へ行を追加して更新します。

日付 動き 出典
2026年10月7日 薬価専門部会 第249回。議題は「令和9年度薬価改定について」。新薬に関する現行ルール(加算、革新的新薬薬価維持制度、外国平均価格調整、市場拡大再算定など)の適用実績が整理され、論点は「改定の対象品目の範囲、薬価改定基準の適用ルールを検討するにあたり、創薬イノベーションの推進や国民負担の軽減等への考慮をどのように考えるか」とされた 第249回 薬-1(資料名「令和9年度薬価改定について②(新薬)」)
2026年8月26日 薬価専門部会 第248回。関係業界からの意見聴取(日本製薬団体連合会、日本製薬工業協会・米国研究製薬工業協会・欧州製薬団体連合会、日本ジェネリック製薬協会、日本医薬品卸売業連合会) 第248回 議事次第、薬-1〜薬-4、議事録
2026年7月21日 「経済財政運営と改革の基本方針2026」(骨太方針2026)が閣議決定。「2027年度薬価改定を実施する」と記載 第249回 薬-1 p.3
2026年7月8日 薬価専門部会 第247回。令和9年度薬価改定の議論が始まり、事務局が論点を提示。令和8年度医薬品価格調査(薬価調査)の方法が了承に向けて諮られた 第247回 薬-2、薬-3、議事録

次の動きとして、薬価専門部会の第250回以降の開催日は、厚生労働省の薬価専門部会のページに掲載されていません(2026年10月19日時点)。第249回の議事録の公表日も、確認できる公表情報がありません。

中間年改定とは|診療報酬改定のない年に、薬価だけを見直す仕組み

薬価(国が決める薬の公定価格)は、もともと2年に1回、診療報酬改定と同時に見直されてきました。これを、改定のない中間の年にも行う仕組みが「中間年改定」です。

出発点は、平成28年12月20日に内閣官房長官・経済財政政策担当大臣・財務大臣・厚生労働大臣が決定した「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」(いわゆる4大臣合意)です。この方針は、市場実勢価格(実際の取引価格)を適時に薬価へ反映して国民負担を抑えるため、従来の2年に1回の薬価調査に加え、その間の年にも大手事業者等を対象に調査を行い、「価格乖離の大きな品目について薬価改定を行う」と定めました(第247回 薬-3 p.2)。

ここで出てくる「乖離率」は、薬価と実際の取引価格の差の割合です。取引価格が薬価より低いほど乖離率は大きくなります。「平均乖離率」は全品目の乖離率の平均で、中間年改定では、この平均乖離率を基準に「どこまでの乖離を改定対象にするか」を決めてきました。

令和9年度の位置づけについて、第247回の資料は次のように整理しています。

  • 令和7年12月24日の大臣折衝事項は、令和8年度の薬価制度改革の内容を示したうえで、「令和9年度の薬価改定を着実に実施する。その際の対象品目の範囲や適用される各種ルールの在り方については、創薬イノベーションの推進、医薬品の安定供給の確保、現役世代の保険料負担を含む国民負担の軽減といった要請についてバランス良く対応するとの基本的な考え方を踏まえて検討する」と書いています(第247回 薬-2 p.2)
  • 令和7年12月26日に中医協が了解した「令和8年度薬価制度改革の骨子」にも、同じ内容が「診療報酬改定がない年の薬価改定」として記載されています(第247回 薬-2 p.3)
  • 令和8年7月21日の骨太方針2026は、「経済・物価動向等の影響を受ける市場実勢価格を薬価調査等により的確に把握した上で、創薬イノベーション、医薬品の安定供給と国民負担の軽減の観点から、2027年度薬価改定を実施する」と記載しています(第249回 薬-1 p.3)

つまり、実施の可否は政府方針としてすでに決まっており、中医協で議論しているのは「どの範囲に、どのルールを使うか」です。

これまでの中間年改定|令和3・5・7年度の対象範囲を比べる

令和9年度の議論の土台になるのが、過去3回(令和3年度、令和5年度、令和7年度)の中間年改定です。第247回 薬-2 p.5 は、各回の「薬価改定の骨子」から対象範囲の部分を並べています。

対象範囲の基準

改定年度 平均乖離率(基準値) 改定対象の範囲 備考
令和3年度 8.0% 平均乖離率の0.625倍(乖離率5.0%)を超える品目 新型コロナウイルス感染症の影響を勘案し、薬価の削減幅を0.8%分緩和(「新型コロナウイルス感染症特例」)
令和5年度 7.0% 平均乖離率の0.625倍(乖離率4.375%)を超える品目 不採算品再算定を臨時・特例的に全品を対象に適用(第247回 薬-2 p.15)
令和7年度 5.2% 品目の種類ごとに倍率を変えて設定(次の表) 追加承認品目等への加算を臨時的に実施、安定供給が特に求められる医薬品への臨時的な不採算品再算定、最低薬価の引上げ、新薬創出等加算の累積額の控除を実施(第247回 薬-2 p.4)

令和3年度と令和5年度は、品目の種類に関係なく一律の倍率でした。令和7年度は、品目の性格に応じて倍率を分けた点が大きく違います。

令和7年度改定の品目別の範囲

令和7年度の基準は平均乖離率5.2%です。第247回 薬-2 p.5 の記載は次のとおりです。

品目の区分 倍率 改定対象になる乖離率
新薬のうち新薬創出等加算の対象品目 1.0倍 5.2%を超える品目
新薬のうち新薬創出等加算の対象外品目 0.75倍 3.9%を超える品目
長期収載品(特許が切れ、後発品が出た後も売られている先発品) 0.5倍 2.6%を超える品目
後発品(ジェネリック) 1.0倍 5.2%を超える品目
その他(昭和42年以前に収載された医薬品) 1.0倍 5.2%を超える品目

このように、長期収載品の範囲を最も広く(倍率を小さく)し、後発品と新薬創出等加算の対象品目は平均乖離率そのものを基準にしました。令和7年度の資料は、国民負担の軽減だけでなく、創薬イノベーションの推進や医薬品の安定供給の確保にきめ細かく対応するため、と説明しています(第247回 薬-2 p.4)。

改定対象の品目数と影響額

各回の資料にある「改定対象品目数」と「影響額」(薬価改定による医療費への影響の見込み)は次のとおりです。品目数はいずれも概数で、影響額は各年度の予算ベースです。

改定年度 改定対象品目数 全品目に占める割合 影響額
令和3年度 12,180品目 69% ▲4,300億円
令和5年度 13,400品目 69% ▲3,100億円
令和7年度 9,320品目 53% ▲2,466億円

出典は第247回 薬-2 の p.14(令和3年度)、p.15(令和5年度)、p.4(令和7年度)です。令和3年度は、薬価の削減幅を0.8%分緩和しない場合に全品を改定したと仮定した影響額が▲4,900億円と、同じ資料に注記されています。

平均乖離率の推移について、第247回の事務局説明は「年々平均乖離率は低下している状況であり、直近の令和7年度の値は4.8%」と述べています(第247回 議事録)。基準値が8.0%、7.0%、5.2%と下がってきたことと符合しますが、令和9年度の基準値は、令和8年度に実施する薬価調査の結果で決まります。

どの算定ルールを使ったか

対象範囲とは別に、「既収載品目の算定ルール」(すでに薬価がついている品目に適用するルール)の使い方も論点です。第247回 薬-2 p.6 は、過去3回の適用状況を次のように整理しています。表の注記によれば、令和8年度薬価制度改革を踏まえた整理であり、当時のルールと一部異なります。

ルール 令和3年度 令和5年度 令和7年度
最低薬価の維持(下限を設けて下げ止める) 適用 適用 適用(最低薬価を引上げ)
基礎的医薬品の薬価維持 適用 適用 適用
革新的新薬薬価維持制度 適用 適用 適用
後発品の価格帯集約 適用 適用 適用
追加承認品目等の加算 非適用 非適用 臨時で適用
革新的新薬薬価維持制度の累積額控除 非適用 非適用 適用
不採算品再算定 非適用 臨時・特例で適用 臨時・特例で適用
市場拡大再算定・持続可能性特例価格調整 非適用 非適用 非適用
効能変化再算定 非適用 非適用 非適用
用法用量変化再算定 非適用 非適用 非適用
長期収載品の薬価改定 非適用 非適用 非適用
収載後の外国平均価格調整 非適用 適用 適用
革新的新薬薬価維持制度対象品目を比較薬にした品目の控除 非適用 非適用 適用

表の上4行は、実勢価(市場での実際の取引価格)に連動して価格が補正されるルールです。下の行は、実勢価と連動せず、該当すれば価格が上がる、または下がるルールです(第247回 薬-2 p.6)。

読み取れる点は2つです。

  • 過去3回とも、再算定(販売額が大きく伸びた品目などの薬価を下げるルール)と長期収載品の薬価改定は適用されていません
  • 不採算品再算定(製造コストが高く、薬価が低すぎて供給が続かない品目の薬価を引き上げるルール)は、令和5年度と令和7年度に臨時・特例で適用されています

令和9年度の論点|実施は前提、範囲とルールが焦点

事務局が示した論点

第247回(2026年7月8日)に事務局が示した論点は2つです(第247回 薬-2 p.10)。

  1. 令和9年度薬価改定について、実施を前提に、改定の対象品目の範囲や適用される各種ルールの在り方についてどう考えるか
  2. 今後の検討にあたっては、これまでの薬価改定の影響も含め、関係業界からの意見聴取も行いつつ、議論を深めることとしてはどうか

第249回(2026年10月7日)の論点は、骨太方針2026の記載を踏まえ、「令和9年度薬価改定における改定の対象品目の範囲、薬価改定基準の適用ルールを検討するにあたり、創薬イノベーションの推進や国民負担の軽減等への考慮をどのように考えるか」です(第249回 薬-1 p.35)。同回の資料は、新薬に関する現行ルールの適用実績を整理した内容でした。たとえば市場拡大再算定の実績(第249回 薬-1 p.33)や、令和8年度薬価制度改革で類似品の薬価引下げ(いわゆる共連れ)が廃止されたこと(同 p.32)が示されています。

令和7年12月までの薬価専門部会での主な意見

第247回 薬-2 の参考部分には、令和7年12月3日の薬価専門部会で、それまでの意見をまとめた「論点」が収録されています。令和9年度の議論でも前提になる項目として、次の3点が挙がっていました(第247回 薬-2 p.16)。

  • 長期収載品の薬価改定を、中間年改定でも適用するかどうか
  • 市場拡大再算定・持続可能性特例価格調整を、中間年改定でも適用するかどうか(効能追加等で市場が大きく拡大した品目は四半期ごとの再算定で対応していることを踏まえて)
  • 令和7年度に適用したルール(追加承認品目等への臨時的な加算、臨時的な不採算品再算定、最低薬価の引上げ、新薬創出等加算の累積額の控除など)を、そのまま適用するかどうか

同じ資料に載る委員の意見には、「そもそも中間年改定をこのまま続けるのかを検討すべき」というものと、「4大臣合意の趣旨を踏まえ、基本的には全てのルールを適用し、毎年粛々と薬価改定を実施することが望ましい」というものの両方があります。

第247回(2026年7月8日)の委員の発言

議事録から、立場ごとの主な発言を整理します。発言は個々の委員の意見であり、部会の結論ではありません。

立場 主な発言の内容
健保連(1号側) 対象範囲を狭くする、あるいは一律の対応にすると、イノベーションの推進や安定供給に充てる財源が限られるおそれがある。対象品目を広くし、適用されるルールは全て議論の対象にして、メリハリのある対応をすべき
連合 中間年改定の在り方は引き続き検討が必要。物価高騰や人件費の上昇が供給や流通に与える影響を十分に把握したうえで検討すべき
診療側(2号側) 中間年改定は、4大臣合意に基づき価格乖離の大きな品目を調整するのが基本的な役割。対象範囲は、その時々の経済状況や医療機関・薬局の経営状況を勘案して幅広い視点で対応すべき。品目ごとの供給状況を勘案するかどうかも検討が必要。薬価改定で得られた財源の一部を、診療報酬との関係で質の向上につなげる前提の議論が必要
薬剤師会 現場では安定供給が改善されていない。対象品目は乖離の大きな品目のみとし、基本的には実勢価改定と連動しないルールは中間年改定の対象にすべきでない。毎年の改定で卸との妥結(価格交渉の合意)が半年ほどかかり、4月に妥結率がリセットされる負担も大きい
歯科 日常的に使う薬剤の供給不足が続いており、安定供給の解決につながる議論を重ねてほしい

別の委員は、実施を前提に議論を進めるべきとし、実勢価改定と連動しないルールも実施すべきで、少なくとも令和7年度に適用したルールは今回も適用されると考えている、と述べました。対象範囲を限定する場合も、令和7年度のカテゴリー別の設定には一定の合理性があるという意見でした。

業界ヒアリング(2026年8月26日)の主張

第248回は、薬価専門部会が関係業界から意見を聴いた回です。各団体の主張は、業界の立場からの意見であり、国の方針ではありません。

団体 令和9年度薬価改定への主な主張
日本製薬団体連合会(製薬業界の連合体) 薬価の引下げを前提とせず、まず全ての薬価基準収載医薬品に物価高騰・製造原価上昇分を上乗せ(ベースアップ)すべき。特許期間中の新薬は、再算定や費用対効果評価による引下げルールの適用を凍結すべき。基礎的医薬品や後発品はベースアップのうえ、なお不採算なら不採算品再算定を確実に実施し、基礎的医薬品のルールも確実に適用すべき
日本製薬工業協会・米国研究製薬工業協会・欧州製薬団体連合会 特許期間中の製品に対する薬価引下げや、市場実勢価と連動しない薬価引下げルールは実施すべきでない。米国の最恵国待遇(MFN)価格政策への対応として、新薬収載時の評価や外国価格調整ルールの見直しの検討を求める
日本ジェネリック製薬協会 会員企業が供給する4,939品目のうち約4割が不採算。令和8年度改定で不採算品再算定が適用されたのは158品目で、うち約6割(96品目)がなお不採算のまま。最新の物価上昇率や労務費率を機動的に上乗せ補正するルールが必要
日本医薬品卸売業連合会 中間年改定の廃止を求める。実施するなら、①安定供給に必要な流通コストを賄える改定にする、②平成28年の4大臣合意に立ち返り、改定対象を価格乖離の大きな品目に限定する、③重要供給確保医薬品・不採算品再算定品・薬価20円未満の品目の薬価を引き上げる、の3点を要望。仕切価(メーカーから卸への販売価格)が薬価を上回る品目の割合は3年続けて上昇し、直近で6.9%

数字はいずれも団体が提出した資料または発言のもので、第248回 薬-1〜薬-4 と議事録によります。この回の質疑で、健保連の委員は「提示された内容は薬価を引き上げる改定だけを求めるものと理解した」としたうえで、実勢価格の改定の範囲を広くし、引上げと引下げの両方のルールを幅広く適用してメリハリをつける必要性を述べました。薬剤師会の委員は、卸の逆ざや(仕入れ価格が販売価格を上回る状態)や配送の縮小、妥結のサイクルの短さが現場の負担になっていると質問しています。

決まったこと・議論中・未定の整理

区分 内容
決まったこと 令和9年度の薬価改定を実施する方針(令和7年12月24日の大臣折衝事項、令和7年12月26日の骨子、令和8年7月21日の骨太方針2026)
議論中 改定の対象品目の範囲、適用する算定ルール(再算定、長期収載品の薬価改定、不採算品再算定、最低薬価など)、業界ヒアリングで出た要望の扱い
未定 改定の基準となる平均乖離率(薬価調査の結果で決まる)、対象範囲の倍率、改定率・影響額、骨子の内容、大臣折衝の日付、適用日、第250回以降の部会の日程

スケジュール|薬価調査 → 12月の大臣折衝 → 骨子 → 改定

薬価調査

令和8年度の薬価調査について、第247回(2026年7月8日)の薬-3は、令和2年度・4年度・6年度の薬価調査(いずれも中間年改定に向けた調査)と同じ方法で実施する案を示しています(第247回 薬-3 p.2)。

項目 内容(第247回 薬-3 p.3)
調査期間 令和8年度中の1か月間の取引分
販売サイド調査 保険医療機関・保険薬局に医薬品を販売する卸の営業所等の全数から、3分の2の抽出率で抽出。約4,300客体
購入サイド調査 病院は40分の1(約200客体)、診療所は400分の1(約300客体)、保険薬局は120分の1(約500客体)
調査事項 品目ごとの販売価格・販売数量(販売サイド)、購入価格・購入数量・購入先の卸の情報(購入サイド)。価格は調査時点で妥結しているもの
調査手法 厚生労働省から直接、調査票を配布・回収

参考として、令和6年度の薬価調査は「9月分」の取引が対象でした(第247回 薬-3 p.4)。令和8年度は「令和8年度中の1か月間」とだけ書かれ、対象月は資料に明記されていません。薬価調査の対象に選ばれた保険薬局には、厚生労働省から直接、調査票が届きます。

第247回の議事録では、診療側の委員が薬価調査自体に異論はないとしたうえで、1社流通などの課題を挙げて、適切な価格交渉ができる環境の確保を求めています。

過去の中間年改定の日程

過去3回は、いずれも12月に政府側の合意と中医協の骨子の了承が行われました。令和9年度も同様の順序になるかは、現時点で公表されていません。

改定年度 政府側の合意 中医協の骨子(了解日)
令和3年度 令和2年12月17日(内閣官房長官、財務大臣、厚生労働大臣合意) 令和2年12月18日
令和5年度 令和4年12月16日(同上) 令和4年12月21日
令和7年度 令和6年12月20日(同上) 令和6年12月25日

出典は第247回 薬-2 の p.14(令和3年度)、p.15(令和5年度)、p.4・p.5(令和7年度)です。

令和9年度の改定の適用日は公表されていません。過去の薬価改定は当該年度の4月に適用されてきたため、令和9年度も同様の見通しですが、これは過去の例からの推測で、公表された日程ではありません。

薬局経営への影響の考え方|数値の推計はせず、見るべき点を整理する

令和9年度の薬価改定がどの程度の影響を薬局に及ぼすかは、対象範囲と薬価調査の結果が出ていない現時点では、推計できません。本記事も数値の試算はしません。代わりに、資料から読み取れる、薬局が見ておくべき点を整理します。

1. ルールごとに、薬価が上がるのか下がるのか

第247回 薬-2 p.7 は、各算定ルールが薬価を引き上げる方向か引き下げる方向か、どの種類の品目に関係するかを整理しています。

ルール 方向 主な対象
最低薬価の維持 引上げ(下げ止め) 主に後発品、その他品目
基礎的医薬品の薬価維持 引上げ(改定前薬価を維持) 主に後発品、その他品目
不採算品再算定 引上げ 主に後発品、その他品目
後発品の価格帯集約 引下げ 後発品
長期収載品の薬価改定 引下げ 長期収載品
市場拡大再算定・持続可能性特例価格調整 引下げ 新薬
効能変化再算定、用法用量変化再算定 引下げ 新薬
追加承認品目等の加算 引上げ 新薬
革新的新薬薬価維持制度 引上げ(改定前薬価を維持) 新薬

後発品や安定供給に関わる低薬価品を多く扱う薬局は引上げ方向のルールの適用、新薬や長期収載品の比率が高い薬局は引下げ方向のルールの適用が、それぞれ関心事になります。ただし、どのルールを適用するかは未定です。

2. 薬価差と在庫

薬価が下がると、改定前に仕入れた在庫の評価額が下がります。逆に、実際の取引価格が薬価を下回っているほど、改定の対象になりやすくなります。自局の仕入れ価格と薬価の差を品目別に把握しておくと、どの区分の品目が影響を受けやすいかの目安になります。

この点は、薬局の経理が把握する一般的な実務上の整理であり、資料に書かれた内容ではありません。

3. 卸との妥結と仕切価

薬剤師会の委員は、毎年の薬価改定により、卸との妥結が半年ほどかかり、4月にリセットされて再び交渉に入る負担を指摘しています(第247回 議事録、第248回 議事録)。

医薬品の流通ルールにも動きがあります。令和8年3月4日に改訂・適用された「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」には、メーカーが最終原価を設定する際に、人件費や流通コスト等の実情も考慮することが明記されました。単品単価交渉(品目ごとに価格を決める交渉)の対象も、革新的新薬薬価維持制度の対象品や、不採算品再算定の適用後2年を経過した品目等に引き続き及ぶとされています(第247回 薬-2 p.20)。

4. 調剤報酬との関係

令和8年度診療報酬改定では、後発医薬品調剤体制加算が削除され、後発品の使用割合は「地域支援・医薬品供給対応体制加算」の基礎要件になりました。同加算の1は27点で、算定要件には、医薬品の安定供給に向けた計画的な調達や在庫管理、他の保険薬局への医薬品の分譲実績、原則として単品単価交渉の実施などが含まれています(第247回 薬-2 p.21)。

令和9年度の薬価改定の内容によって、この加算の要件が直ちに変わるわけではありません。ただし、供給の安定を重視する流れは、薬価改定の議論と報酬の側面の両方に現れています。

5. 薬局として準備しておくこと

  • 薬価調査の客体(調査の対象)に選ばれた場合の対応窓口と、購入価格の記録の取り出し方を確認しておく
  • 12月の骨子(たたき台)が出る時期に、自局の主要品目がどの区分に当たるかを確認できるよう、品目別の仕入れ価格と薬価の差を整理しておく
  • 卸との価格交渉の時期(改定後の妥結)に備え、単品単価交渉の進め方を社内で共有しておく
  • レセコンの薬価マスタ更新の時期は、改定の適用日が公表されてから確認する(本記事の更新対象)

医薬品卸・病院薬剤部の読者へ

医薬品卸は、第248回で中間年改定の廃止を求めました。要望の根拠は、流通コストの上昇と、薬価と仕入れ原価の差の縮小です。仕切価が薬価を上回る品目の割合は直近で6.9%、不採算品再算定品のうち薬価20円未満の品目では26.5%が逆ざやとされています(第248回 議事録)。これらは卸連合会が提出した調査結果で、国の統計ではありません。

病院薬剤部は、薬価調査の購入サイド調査の対象になりえます(病院は40分の1の抽出率、約200客体)。改定後の薬価に対応する院内の採用医薬品の見直しや、卸との価格交渉の時期は、適用日と対象範囲が決まってから計画する形になります。

よくある質問

A

実施する方針は決まっています。令和7年12月24日の大臣折衝事項に「令和9年度の薬価改定を着実に実施する」と書かれ、令和8年7月21日の骨太方針2026にも「2027年度薬価改定を実施する」と記載されています(第247回 薬-2 p.2、第249回 薬-1 p.3)。ただし、具体的な対象範囲や適用ルールは審議中です。

A

そうとは限りません。中間年改定は、過去3回とも、全品ではなく平均乖離率を基準に改定対象を絞ってきました。令和7年度の改定対象は約9,320品目で、全品目の53%でした(第247回 薬-2 p.4)。令和9年度の対象範囲は未定です。また、最低薬価の引上げや不採算品再算定のように、薬価が上がる方向のルールもあります。

A

公表されていません。令和7年度の薬価調査による平均乖離率は4.8%と事務局が説明していますが(第247回 議事録)、令和9年度の改定の基準になるのは、令和8年度に実施する薬価調査の結果です(第247回 薬-3 p.1)。

A

改定率・影響額は公表されていません。過去の3回は、影響額が12月の政府側の合意の資料で示されてきました(第247回 薬-2 p.4・p.14・p.15)。令和9年度の影響額は、薬価調査の結果と対象範囲の決定を待つ必要があります。

A

未定です。これらのルールは過去3回の中間年改定では適用されていません(第247回 薬-2 p.6)。令和7年12月の部会では、これらを中間年改定で適用するかどうかが論点として挙がっていました(第247回 薬-2 p.16)。令和9年度についても、議論が続いています。

A

現時点で確定した対応事項はありません。薬価調査の客体に選ばれた場合の対応、品目別の仕入れ価格と薬価の差の把握、卸との価格交渉の進め方の共有が、準備として考えられます。適用日と骨子が出た段階で、具体的な作業が決まります。

まとめ

令和9年度の薬価改定は、実施する方針が大臣折衝事項と骨太方針2026で示されており、中医協の薬価専門部会は、その前提で対象範囲と適用ルールを議論しています。2026年10月7日の第249回までに、事務局の論点、新薬に関する現行ルールの整理、7月と8月の委員の意見と業界の主張が出そろいました。

一方で、対象範囲の基準、改定率、骨子、大臣折衝の日付、適用日は、いずれも未公表で、決まっていません。例年の流れでは、薬価調査の結果を踏まえて12月に骨子がまとまります。

次の動き(部会の議論、骨子のたたき台、大臣折衝)が出た時点で、本記事の「最新の動き」を更新します。論点や委員の発言を確定事項と取り違えないよう、必ず厚生労働省の原典で確認してください。同じ令和9年度に予定されている介護側の改定は令和9年度介護報酬改定の審議状況で、診療報酬の直近の改定は2026年6月の診療報酬改定の解説で整理しています。

根拠・参考

  • 厚生労働省「中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」開催一覧
    https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-chuo_128157.html
  • 第247回(2026年7月8日)薬-2「令和9年度薬価改定について」
    https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001719827.pdf
  • 第247回 薬-3「令和8年度医薬品価格調査(薬価調査)について」
    https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001719829.pdf
  • 第247回 資料一覧
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74386.html
  • 第248回(2026年8月26日)議事録
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76572.html
  • 第248回 資料一覧(薬-1〜薬-4)
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75790.html
  • 第249回(2026年10月7日)薬-1「令和9年度薬価改定について②(新薬)」
    https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001756847.pdf
  • 第249回 資料一覧
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76601.html

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の薬局・法人に対する経営上または法律上の助言ではありません。審議中の論点・委員の発言・業界団体の主張は、変更・撤回されることがあり、薬価改定の内容は、厚生労働省が公表する告示・通知によって確定します。実際の対応は、最新の公表資料と、取引先の卸・所轄の厚生局の案内でご確認ください。

JG

実務ガイド編集部

AI執筆 + 編集部レビュー済み

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