セルフメディケーション税制2026|令和8年分と令和9年分以後の違い・医療費控除との選び方

本記事は法令・通達・官公庁資料に基づき編集部が作成・検証しています。個別の法的・税務判断ではありません。最新の法令はe-Gov法令検索でご確認ください。
セルフメディケーション税制2026|令和8年分と令和9年分以後の違い・医療費控除との選び方

本記事は2026年10月22日時点で厚生労働省が公表している「セルフメディケーション税制」のページ・Q&A(令和8年8月7日現在)・対象品目一覧(令和8年10月1日時点)、財務省「令和8年度税制改正の大綱」、厚労省が掲載する租税特別措置法第41条の17の条文抜粋をもとに作成しています。適用の可否は所得や家族構成、購入した医薬品によって変わります。最終判断は所轄税務署または税理士にご確認ください。

結論|令和8年分は「今の範囲」、広がるのは令和9年分から

セルフメディケーション税制とは、健診や予防接種などの「一定の取組」を行った人が、対象の市販薬を買った費用について、年1万2千円を超えた部分(上限8万8千円)を所得から差し引ける制度です(所得控除。税金を計算する前の所得を減らす仕組み)。通常の医療費控除とは選択適用(どちらか一方だけ)で、両方は受けられません(厚労省Q&A Q4)。いったん選んだ後に、更正の請求や修正申告でもう一方へ切り替えることもできません(国税庁 タックスアンサー No.1129)。

使えるかの判断は、次の3点です。

  1. その年に、自分自身が健診・予防接種などを受けたか(家族が受けただけでは足りません。後述)
  2. 対象医薬品の購入額(本人と、生計を一にする家族の分の合計)が1万2千円を超えたか
  3. 「対象医薬品」と分かるレシートが残っているか

令和8年分(2026年1〜12月の購入分、申告は2027年2〜3月)の対象範囲は、現行のままです。対象が広がるのは令和9年分以後(2027年1月1日以降の購入分)です。令和8年度税制改正で、期限の延長と対象医薬品の拡大が決まっています(財務省「令和8年度税制改正の大綱」27ページ)。

なお、この特例は確定申告で受けます。会社員の年末調整の対象や書類は令和8年分 年末調整の変更点で整理していますが、市販薬の購入費は年末調整の書類とは別に、確定申告書と専用の明細書で申告します。

令和8年分と令和9年分以後の違い(改正前後の比較)

項目 令和8年分(現行) 令和9年分以後(改正後)
適用期限 令和8年12月31日まで スイッチOTC(医療用から市販薬に転用された薬)は期限なし。それ以外は令和13年12月31日まで
控除額の計算 購入額が1万2千円を超えた部分、上限8万8千円 変更なし
対象医薬品 現行の範囲(次章) 胃腸薬・整腸薬・痔の薬・生薬の鎮咳去痰薬、一部の検査薬、薬局製造販売医薬品を追加
除外されるもの 令和8年1月1日から、一部の成分のスイッチOTCが対象外 痩身・美容目的の可能性がある医薬品を除外(防風通聖散は令和13年1月1日以降対象外)
住民税への反映 令和9年度分の住民税 対象拡大の適用は令和10年度分以後の住民税

出典は、租税特別措置法第41条の17の令和9年1月1日施行時点の条文(第1項第1号は「平成二十九年一月一日以後の期間」、第2号は「令和十三年十二月三十一日までの期間」)、大綱27〜28ページ、厚労省Q&A Q5・Q6です。

控除額の計算式(1万2千円・8万8千円)は条文上の数字が変わっていないため、令和9年分以後も同じです。

対象になる医薬品|令和8年分の範囲

対象は「医療用医薬品との代替性が高い」とされる市販薬で、次の2種類です(厚労省Q&A Q5)。

1. スイッチOTC医薬品
医師が処方する薬から、薬局やドラッグストアで買える薬に転用されたものです。かぜ薬、解熱鎮痛薬、胃腸薬、水虫薬、口内炎用薬、禁煙補助薬などが含まれます。

ただし次のものは対象外です。
– L-アスパラギン酸カルシウム、フッ化ナトリウム、メコバラミン、ユビデカレノンを有効成分とするもの(令和8年1月1日以降は対象外。令和7年中の購入分はまだ対象でした)
– 緊急避妊薬、ED治療薬

2. スイッチOTC以外の市販薬(非スイッチOTC)の一部
令和8年分では、次の効能・効果を持つものに限られます。
– 外用鎮痛消炎薬、解熱鎮痛薬、鎮咳去痰薬、かぜ薬
– 鼻炎用点鼻薬、鼻炎用内服薬
– 抗ヒスタミン薬、その他のアレルギー用薬

「薬局で買った」だけでは対象になりません。同じ成分を含む薬でも、効能が「かゆみ・湿疹」だけなど、アレルギーと特定されない外用薬は対象外です(Q8)。また、ジフェンヒドラミンを含む睡眠改善薬(ドリエルなど)は、効能が催眠鎮静のため対象外です(Q9)。

迷ったときの確認方法は2つです。
– 厚労省ページの「対象品目一覧」(令和8年10月1日時点。原則として毎月1日に更新)で商品名を探す
– 包装の共通識別マークと、レシートの対象品目の表示を見る

購入時点でレシートに対象の表示がない商品は、あとから申告に含められません(Q33)。マークだけで判断せず、レシートの表示を必ず確認してください。

令和9年分以後に広がる対象

令和9年1月1日以降に支払った分から、次が加わります(厚労省Q&A Q5。大綱27ページ)。

  • 胃腸薬(胃腸鎮痛鎮けい薬、健胃薬、止瀉薬、制酸薬、整腸薬など)、浣腸薬、瀉下薬、外用・内用の痔疾用薬
  • 生薬を有効成分とする鎮咳去痰薬
  • 検査キット: 排卵日予測検査薬、新型コロナ抗原検査キット、コロナ・インフルエンザ同時抗原検査キット(妊娠検査薬・尿糖検査薬・尿タンパク検査薬は対象外)
  • 薬局製造販売医薬品(薬局が自ら製造して売る薬)のうち、対象の市販薬と同じ有効成分のもの

一方、痩身・美容目的で使われる可能性があるものは除かれます。新しく加わる胃腸薬などの区分のうち、大柴胡湯に基づく医薬品とニコチンを含有する医薬品は最初から除かれ(Q5)、防風通聖散を含む医薬品は令和13年1月1日以降は対象外です。防風通聖散を含む医薬品のうち、令和9年1月1日以降に新しく発売される製品は最初から対象外で、令和8年12月31日以前に発売された製品は令和12年12月31日まで対象です(Q39)。

注意したいのは、追加された品目の「リスト掲載前の購入分」です。 対象リストは原則として毎月1日に更新され、薬局はそのリストに基づいてレシートに対象の表示を付けます。令和9年1月1日以降の購入でも、リストに載る前に買った商品は対象を証明するレシートがなく、申告に含められません(Q33)。令和9年の年明けに胃腸薬などを買う場合は、レシートに対象の表示が付いているかを確認する習慣をつけておくと安心です。

「一定の取組」とは|自分で受けた健診・予防接種が条件

この特例は、申告する本人が、その年のうちに次のいずれかを行っていることが条件です(告示[平成28年厚生労働省告示第181号]、厚労省Q&A Q2)。全部ではなく、1つで足ります。

取組 例 注意
予防接種 定期接種、インフルエンザなどの予防接種 任意接種は領収書を保管
勤務先の定期健康診断 事業主検診(採用時健診も含む) 結果通知表に「定期健康診断」や勤務先名が必要
特定健康診査・特定保健指導 いわゆるメタボ健診 特定保健指導は中断すると対象外(健診を受けていれば可)
保険者・市区町村の健康診査 人間ドック(保険者の事業)、歯周疾患検診など 全額自己負担の任意受診は対象外。ただし結果を勤務先や保険者に提出し、定期健康診断・特定健康診査の結果とみなされる場合は対象(Q20)
市町村のがん検診 胃・子宮頸・肺・乳・大腸の5項目 自治体が独自に広げた項目は対象外

押さえておきたい点は次のとおりです。

  • 子どもの予防接種は、親の「取組」にはなりません。 親が申告するなら、親自身が受けた健診や接種が必要です(Q16)。ただし、対象医薬品の購入費のほうは、生計を一にする配偶者や子の分を合算できます。
  • 健診にかかった費用は控除の対象になりません。 控除されるのは対象医薬品の購入費だけです(Q15)。
  • 要再検査・要精密検査と判定されて受けた検査は含まれません(Q27)。
  • 「一定の取組」の内容を変える記述は、令和8年度税制改正の大綱(27〜28ページ)にも、厚労省の資料にも見当たりません。令和9年分以後も同じ考え方で準備して問題ないと考えられます。

通常の医療費控除とどちらが得か|数値例で比較

2つの制度の違いは、足切り(控除が始まるライン)と上限です。条文(租税特別措置法第41条の17第1項)の読み替えから整理します。

通常の医療費控除 セルフメディケーション税制
対象 治療などにかかった医療費 対象の市販薬の購入費のみ
足切り 総所得金額等の5%(10万円を超える場合は10万円) 1万2千円
上限 200万円 8万8千円
「一定の取組」 不要 必要

簡単な判断の目安は次のとおりです。総所得金額等が200万円以上なら足切りは10万円になり、通常の医療費控除は「医療費の合計−10万円」、セルフメディケーション税制は「対象薬の購入額−1万2千円」です。セルフメディケーション税制の控除は最大8万8千円なので、対象薬以外の医療費(病院・歯科・入院など)が18万8千円を超えるなら、市販薬をいくら買っていても通常の医療費控除のほうが有利です(10万円+8万8千円=18万8千円)。それより少ない場合は、両方の控除額を計算して大きいほうを選びます(この目安は、通常側に市販薬を含めない前提の計算です)。

親や家族の介護費用がある年は、訪問介護やおむつ代なども通常の医療費控除の対象になる場合があります。対象サービスの一覧は介護費用の医療費控除2026|対象になるサービス一覧・おむつ代の書類・領収書の見方で確認できます。

数値例

前提は次のとおりです。
– 総所得金額等は500万円(足切りは10万円)、課税所得400万円で所得税率20%、住民税率10%
– 対象の市販薬の購入額は本人と家族の合計で5万円(すべて対象医薬品でレシートあり)
– 復興特別所得税(所得税に上乗せされる税)は計算に含めない
– 通常の医療費控除側には、市販薬の購入費を含めない(含められる場合は通常側がさらに有利になります)

例A: 病院・歯科の医療費なし 例B: 病院・歯科の医療費が23万円
セルフメディケーション税制の控除額 5万円−1万2千円=3万8千円 3万8千円(同じ)
通常の医療費控除の控除額 0円(足切り未満) 23万円−10万円=13万円
軽減額(セルフ) 所得税7,600円+住民税3,800円=11,400円 11,400円
軽減額(通常) 0円 所得税26,000円+住民税13,000円=39,000円
有利なほう セルフメディケーション税制 通常の医療費控除

計算は、所得税が「控除額×20%」、住民税が「控除額×10%」です(厚労省の制度概要の計算例と同じ考え方)。たとえば例Aは3万8千円×20%=7,600円、3万8千円×10%=3,800円です。

実際の税率は課税所得で変わります。ご自身の数字で比べる場合は、「通常の控除額」と「セルフの控除額」を出し、控除額が大きいほうを選ぶのが基本です(税率が同じなら、控除額が大きいほうが有利です)。

同じ世帯でも、家族ごとに別の制度を選べます(Q13)。ただし同じ支出を二重に控除することはできません。

申告の手順|何を残し、何を出すか

1. レシートを残す

対象医薬品の購入では、レシートや領収書に次の5つが必要です(厚労省Q&A Q41)。

  1. 商品名
  2. 金額
  3. セルフメディケーション税制の対象医薬品である旨(商品名の前に「★」など、または対象品目だけの合計の表示)
  4. 販売店名
  5. 購入日

  6. 控除されるのは実際に支払った税込みの金額で、セールの値引き後の金額です(Q30・Q31)。

  7. 通信販売で、自宅のプリンタで出力した領収書は証明書類として使えません。販売会社に発行を依頼します(Q34)。
  8. レシートをなくした場合は、購入した店に再発行を相談できます(Q32)。

2. 「一定の取組」の記録を残す

健診の結果通知表や領収書、予防接種済証を保管します。必要な記載は、氏名、取組を行った年、実施した保険者・事業者・市町村、または医療機関の名称か医師の氏名です(Q22、国税庁 No.1129)。確定申告のときに添付する必要はありませんが、申告期限から5年間は保管し、税務署に求められたら出します(厚労省Q&A Q12・Q21)。

領収書や結果通知表に「定期健康診断」「特定健康診査」や勤務先・保険者の名称がない場合は、勤務先や保険者に証明を依頼します(Q22・Q23。厚労省ページに証明依頼書の様式があります)。予防接種済証と領収書は、求められたら原本で、結果通知表は写しで足ります(Q25)。

3. 確定申告書と明細書を作る

必要なのは、①セルフメディケーション税制を適用して計算した確定申告書、②「セルフメディケーション税制の明細書」の2つです(Q12)。領収書の添付は不要で、明細書に購入した薬の情報を記入します。国税庁の確定申告書等作成コーナーから申告書を作成でき、e-Tax(国税の電子申告)でも提出できます(厚労省の制度案内)。

申告期間は例年2月中旬から3月中旬です。確定申告が不要な人は、翌年1月1日から5年間、還付申告ができます(Q11)。令和8年分なら、2027年1月1日から受け付けられます。

準備を時系列にすると

時期 やること
令和8年12月まで 対象薬の購入額を集計し、年内に受けた健診・予防接種の記録を確認。足りなければ年内に予防接種などを受ける
令和9年1月〜 レシート・通知表を整理。医療費控除との比較表を作る
令和9年2〜3月 作成コーナーで申告。有利なほうを選ぶ
申告後5年間 レシート・健診の記録を保管

「一定の取組」はその年に受けたことが条件なので、年内に健診を受けていないと、令和8年分はこの税制を使えません。年末の駆け込みでも、インフルエンザなどの予防接種を年内に受ければ条件を満たせる場合があります(領収書の保管が必要です)。

注意点と落とし穴

  1. 医療費控除との併用はできません。 同じ人が同じ年に両方を受けることはできません(Q4)。
  2. 家族の健診では足りません。 申告する本人の取組が必要です(Q16・Q29)。
  3. ほかの確定申告をする人は、同じ申告書にまとめて入れられます。 副業の申告そのものは副業の確定申告2026完全ガイド、寄附金控除を併せて申告する場合はふるさと納税2026年改正をご覧ください。
  4. 薬局の「安い市販薬」が対象とは限りません。 効能・成分で決まります。
  5. 令和9年の追加分は、リストに載るまで申告できない場合があります(前述のQ33)。
  6. 所得が少ない人は、効果が小さい。 税率が低いほど軽減額も減ります。

よくある質問

Q1. 令和8年に買った胃腸薬は対象になりますか。

胃腸薬のうちスイッチOTC医薬品に該当するものは、令和8年分でも対象です。一方、スイッチOTC以外の胃腸薬が対象になるのは令和9年1月1日以降に支払った分からです(厚労省Q&A Q5)。同じ「胃腸薬」でも区分が違うため、令和8年分は対象品目一覧とレシートの表示で確認してください。

Q2. 年末調整で受けられますか。

厚労省Q&A Q12は、この特例を受ける書類として「確定申告書」と「明細書」を挙げています。会社員でも、受けるには確定申告をする前提で準備します。年末調整の書類は年末調整はいくらから必要かで確認できます。

Q3. 令和7年以前の分をさかのぼって申告できますか。

確定申告が不要な人の還付申告は、翌年1月1日から5年間できます(Q11)。過去の年は、その年に「一定の取組」を行っていて、レシートが残っていることが条件です。

Q4. 市販薬を年に1万円しか買っていません。

足切りの1万2千円を超えないため、この特例は使えません(家族の分は合算できます)。

Q5. 令和9年分からは何が変わりますか。

期限の延長(スイッチOTCは期限なし、それ以外は令和13年12月31日まで)と、対象医薬品の拡大です。控除の計算(1万2千円超・上限8万8千円)や、「一定の取組」が必要な点は、確認した範囲では変わっていません。

まとめ|令和8年分は「今の範囲」で、レシートと健診の記録を残す

  • 令和8年分は現行制度のままです。対象は、スイッチOTCと、非スイッチOTCの一部(外用鎮痛消炎薬、解熱鎮痛薬、鎮咳去痰薬、かぜ薬、鼻炎用薬、アレルギー用薬)です。
  • 控除は購入額が1万2千円を超えた部分で、上限8万8千円。本人が年内に健診・予防接種などを受けていることが条件です。
  • 通常の医療費控除とは選択適用です。病院・歯科などの医療費が大きい年は、通常の医療費控除のほうが有利になることがあります。両方の控除額を出して比べます。
  • 令和9年分以後は、期限の延長と対象の拡大があります。ただしリストに載る前の購入分は申告できないため、レシートの表示の確認が大切です。
  • 書類は、レシート(5項目)、健診・予防接種の記録(申告期限から5年間保管)、確定申告書と明細書です。

年末までにできる準備は、対象薬の購入額の集計と、その年の健診・予防接種の記録の確認です。

出典(すべて2026年10月22日時点):
– 厚生労働省「セルフメディケーション税制」ページ、同Q&A(令和8年8月7日現在)
– 財務省「令和8年度税制改正の大綱」27〜28ページ
– 租税特別措置法第41条の17(令和9年1月1日施行時点)、同施行令第26条の27の3
– 平成28年厚生労働省告示第181号(健康の保持増進及び疾病の予防への取組)

JG

実務ガイド編集部

AI執筆 + 編集部レビュー済み

本記事はAIが初稿を作成し、編集部が法令原文・官公庁通知・審議会資料等の一次情報と照合のうえ、内容を確認・編集しています。行政手続き・法改正・制度改正の実務情報を専門に扱う編集チームが、企業実務担当者・士業専門家向けに正確性の高いコンテンツを提供します。