女性活躍推進法改正2026年4月|101〜300人に追加された必須公表2項目と初回公表期限

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女性活躍推進法改正2026年4月|101〜300人に追加された必須公表2項目と初回公表期限
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2026年4月1日、改正女性活躍推進法が施行された。2025年6月11日に公布された「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第63号)により、常時雇用する労働者が101人以上300人以下の企業について、男女間賃金差異と女性管理職比率が情報公表の「必須項目」に追加された。同法の有効期限も2036年3月31日まで10年間延長されている(こちらは公布日である2025年6月11日に施行済み)。

注意すべきは、この改正が「情報公表義務をゼロから課したもの」ではないという点だ。 101人以上の企業には改正前から情報公表の義務があり、「機会提供の実績」か「両立支援の実績」のどちらか1項目を公表すればよかった。2026年4月からは、そこに男女間賃金差異と女性管理職比率が必須として乗り、合計3項目以上の公表が求められる。

なお本記事で繰り返し出てくる「一般事業主行動計画」とは、女性の活躍推進に向けて自社が取り組む内容を定めた計画のことだ。計画期間・数値目標・取組内容の3つを盛り込み、労働者に周知し、外部に公表し、都道府県労働局へ届け出る——ここまでがワンセットで義務になっている(詳細は§6)。

本記事では、101〜300人規模の企業が取るべき実務対応を、管理職の正確な数え方・計算方法・データベース登録手順・初回の公表期限とともに解説する。記載内容は厚生労働省の法令・通達・解釈事項(本記事末尾に出典を明記)で確認している。


1. 改正の全体像——新旧比較

今回の改正で変わったのは「誰が公表するか」ではなく「何を公表するか」だ。下表で改正前後を整理する。

項目 改正前(〜2026年3月) 改正後(2026年4月〜)
情報公表義務を負う企業 101人以上(100人超) 101人以上(変更なし)
101〜300人の公表項目 機会提供の実績・両立支援の実績のうちいずれか1項目 男女間賃金差異・女性管理職比率が必須+上記から1項目以上=3項目以上
301人以上の公表項目 機会提供・両立支援からそれぞれ1項目以上(賃金差異は省令で別途義務) 男女間賃金差異・女性管理職比率が必須+機会提供7項目・両立支援7項目からそれぞれ1項目以上=4項目以上
行動計画の策定・届出 101人以上(2022年4月から義務) 変更なし

改正法にはこのほか、公布日(2025年6月11日)に施行された項目がある。2026年4月施行ではない点に注意してほしい。

項目 内容 施行日
法律の有効期限 2026年3月31日まで → 2036年3月31日まで10年延長 2025年6月11日
基本原則 「女性の健康上の特性に留意して」行われるべき旨を条文に明記 2025年6月11日
えるぼしプラス認定の創設 職場の女性の健康支援に取り組む企業を認定する制度(省令による) 2026年4月1日

⚠️ 注意
「2026年4月から情報公表が義務になった」という理解は誤りだ。101〜300人規模の企業は、2022年4月から行動計画の策定・届出・公表と、情報公表(選択1項目)がすでに義務化されている。 2026年4月に変わったのは、その公表項目に男女間賃金差異と女性管理職比率が必須として加わったこと。2022年以降ずっと未対応だった企業は、今回の改正分だけでなく行動計画の届出そのものから着手する必要がある。

💡 TIPS
301人以上の企業は、2022年7月から男女間賃金差異の公表義務を負っていた(当時は省令による義務)。2026年改正でこれが法律本体の必須項目に格上げされ、あわせて女性管理職比率も必須になった。301人以上は公表項目が合計4つ以上必要になるため、こちらも確認が必要だ。


2. 対象企業の範囲——「101人以上」の正確なカウント方法

「常時雇用する労働者」が101人以上かどうかは、以下の基準で判断する。

「常時雇用する労働者」の定義

含まれる労働者
– 正社員(期間の定めなし)
– 契約社員・パート・アルバイト(雇用期間が通算1年以上、または1年以上継続雇用が見込まれる者)
– 嘱託社員

含まれない労働者
– 派遣社員(派遣元企業の労働者としてカウント)
– 雇用期間が通算1年未満の短期アルバイト

雇用形態 企業規模のカウント対象
正社員 含む
契約社員(過去1年以上継続雇用、または1年以上継続見込み) 含む
パート・アルバイト(同上) 含む
派遣社員(受け入れ先の場合) 含まない
派遣社員(派遣元の場合) 含む
短期バイト(1年未満かつ1年以上の見込みなし) 含まない
昼間学生のアルバイト 含まない(原則)
在籍出向者 主たる賃金を実際に支払っている側の企業で含む
国外の支店・現地法人で雇用される労働者 含まない(法は国内の事業所にのみ適用)

⚠️ 注意:カウント対象と集計対象は別物
上の表は「自社が義務の対象企業かどうか」を判定するためのカウント基準だ。101人以上と判定された後の状況把握・情報公表では、対象範囲が広がる。 厚生労働省の解釈事項は「『雇入れの時から1年以上引き続き雇用されると見込まれない者』や『学生アルバイト』などについても、法に基づく状況把握、情報公表の対象となる」と明記している。企業規模のカウントから外れた短期バイトや学生アルバイトも、男女間賃金差異の計算には入れる必要がある。ここを取り違えると公表数値そのものが狂う。

⚠️ 注意:年度の途中で101人を超えたとき
基準日というものはない。101人を超えた時点から義務が生じる。 厚生労働省の施行通達は「常時雇用する労働者の数が100人以下の一般事業主であっても、その後、常時雇用する労働者の数が100人を超えた場合にあっては、その時点から一般事業主行動計画を策定し、又は変更した旨を届け出る義務が課されるものであること」としている。4月1日時点の人数だけで1年間の対象・非対象が固定されるわけではない。

🎯 プロの目
「100人以下で義務対象外」と思い込んでいる企業ほど注意が必要だ。パート・アルバイトを含めるとカウントが変わるケースが多い。まず自社の「常時雇用する労働者」の実数を正確に把握することが第一歩となる。正確な人数は雇用保険の適用基準とも関連するため、社会保険労務士への確認も有効だ。


3. 男女間賃金格差の計算方法

算出の基本ルール

男女の賃金差異は、「女性の平均年間賃金÷男性の平均年間賃金×100(%)」で算出する。3区分に分けて公表することが義務付けられている。

3つの区分
1. 全労働者
2. 正規雇用労働者(正社員)
3. 非正規雇用労働者(パート・有期・契約社員等)

計算式と手順

ステップ1:対象期間の確定
直近の事業年度(会計年度)を対象とする。

ステップ2:区分ごとの年間賃金総額と人員数を集計
– 各区分の年間賃金の総額(基本給・残業代・賞与等を含む全賃金)
– 各区分の在籍人員数(延べ人員数ではなく実際の人員数)

ステップ3:平均年間賃金を算出

平均年間賃金 = 年間賃金総額 ÷ 人員数

ステップ4:賃金差異の割合を算出

男女の賃金差異(%) = 女性の平均年間賃金 ÷ 男性の平均年間賃金 × 100

計算例(従業員150人の製造業)

区分 女性平均年間賃金 男性平均年間賃金 差異(%)
全労働者 3,800,000円 5,200,000円 73.1%
正規雇用 4,500,000円 5,800,000円 77.6%
非正規雇用 2,100,000円 2,500,000円 84.0%

この場合、「女性の賃金は男性の73.1%(全労働者)」と公表することになる。

⚠️ 注意
「賃金差異100%」が目標ではなく、まず正確な数値を算出・公表することが求められる。格差が大きい場合でも、公表を拒否したり虚偽の数値を公表することは法令違反となる。格差の背景(職種・役職の違い等)を「補足情報」として添付することは認められている。

💡 TIPS:集計でつまずきやすい3点
– 休業中の人:産休・育休・病休中の人は、企業の実情に応じて賃金算定の対象から除外して差し支えない。ただし総賃金・人員数の考え方を男女で違えてはならない(FAQ Q2参照)
– パート労働者の人員数換算:正規雇用労働者の所定労働時間を参考に人員数を換算してもよいが、その場合は換算している旨を明記する必要がある
– 対象期間:「終了した直近の事業年度」が原則。事業年度の途中で賃金制度を見直して差異が縮小した場合、初回公表後に事業主の判断で最新の数値へ更新してもかまわない。その際も3区分すべてを算出し直し、更新日を公表する

🎯 プロの目
非正規雇用の賃金差異が小さく見えるのは、男女ともに賃金水準が低いためで、必ずしも平等を示すわけではない。採用・昇格・配置転換の機会均等を示す数値と組み合わせて開示することで、投資家・求職者からの信頼性が高まる。ESG投資の文脈でも賃金格差データは重要視されている。


4. 女性管理職比率の定義と計算方法

「管理職」の定義

女性活躍推進法における「管理職」は、「課長級」と「課長級より上位の役職(役員を除く)」にある労働者の合計を指す(労働基準法の管理監督者とは別の概念)。

ここでいう「課長級」は、役職名だけで決まるわけではない。厚生労働省の解釈事項は次の2つのいずれかに該当する者としている。

  1. 事業所で通常「課長」と呼ばれている者であって、その組織が2係以上からなる、もしくはその構成員が10人以上(課長を含む)であるものの長
  2. 同一事業所において、課長のほかに、呼称・構成員に関係なく、その職務の内容および責任の程度が「課長級」に相当する者(ただし、一番下の職階ではないこと)

⚠️ 注意:課長代理・課長補佐は「課長級」に該当しない
厚生労働省の解釈事項は「一般的に『課長代理』や『課長補佐』については、『課長級』に該当しません」と明記している。役職名に「課長」が入っていても、代理・補佐は原則として管理職に数えない。ここを含めて集計すると、女性管理職比率が実態より大きくずれる。
また「役員」は管理職に含めない。ここでいう役員とは会社法上の取締役・会計参与・監査役と、職務内容と責任の程度がそれに相当する者を指し、執行役員・理事など呼称は問わない。

判定の順序

まず①の形式要件(2係以上、または構成員10人以上)に当てはまるかを見る。当てはまらない場合に、②の実質判断(職務の内容と責任の程度が課長級に相当するか)を事業主が実態に即して行う。この順序で判断してよいとされている。

  • 部下が10人未満の課長でも、その組織が2係以上からなれば「課長級」に該当する
  • 部下がいない専門職でも、職務内容と責任の程度が課長級に相当すれば「課長級」に該当しうる(ただし一番下の職階でないこと)
  • 係長・チームリーダーは、上記①②のいずれにも当たらなければ含まない

計算式

女性管理職比率(%)= 女性管理職数 ÷ 管理職総数 × 100

例:管理職50人のうち女性が8人の場合

8 ÷ 50 × 100 = 16.0%

💡 TIPS
②の実質判断は事業主に委ねられている部分であるため、計算前に「どの役職を課長級とみなしたか」を書き残し、毎年同じ基準で計算することが重要だ。基準を途中で変更すると経年比較ができなくなる。ただし、①②の枠組みそのものは厚生労働省が定めたものであり、各社が自由に決められるわけではない。


5. 「女性の活躍推進企業データベース」への登録手順

厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース(positive-ryouritsu.mhlw.go.jp)」への登録が義務付けられる。

登録の流れ(4ステップ)

STEP 1:状況把握と課題分析
以下の基礎5項目(省令で「必ず把握する項目」とされているもの)をすべて把握する。
1. 採用した労働者に占める女性の割合
2. 男女の平均継続勤務年数の差異
3. 労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間の状況
4. 管理職に占める女性の割合(=女性管理職比率)
5. 男女の賃金の差異

⚠️ 注意
「基礎4項目」と書かれた解説を見かけるが、男女の賃金の差異を加えた5項目が正しい。公表の場面だけでなく、行動計画をつくる前の状況把握の段階から賃金差異の集計が必要になる。なお賃金差異の把握で求められる「全ての雇用管理区分」とは「全労働者・正規雇用労働者・パート有期雇用労働者」の3つを指し、それ以外の区分まで分ける必要はない。

STEP 2:一般事業主行動計画の策定・社内周知
– 計画期間(2〜5年が一般的)
– 数値目標(例:「2028年までに女性管理職比率を20%以上にする」)
– 具体的な取組内容と実施時期
– 全労働者への周知(掲示・社内メール・イントラネット等)

STEP 3:都道府県労働局への届出

届け出るのは行動計画そのものではなく、「一般事業主行動計画策定・変更届」(施行通達が参考様式 様式第1号として示しているもの)だ。計画を変更したときも同じ届出が必要になる。次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画と一体で定める場合は、両法の届出を一体で行うことができ、この場合は様式第2号を用いる(ただし両法の要件を満たし、計画期間が同一であることが条件)。

届出方法は3種類。
– 電子申請(e-Gov=国の行政手続きをオンラインで行える総合窓口)← 最も効率的
– 郵送
– 持参

STEP 4:データベースへの情報公表
データベースのウェブサイトにログインし、以下の情報を入力・公表する。
– 一般事業主行動計画
– 男女間賃金差異(3区分)
– 女性管理職比率
– その他選択した公表項目

⚠️ 注意:初回の公表期限は「2026年中」ではない
情報公表は「おおむね年1回以上」、公表日を明らかにして行う。期限の考え方は、終了した事業年度の実績を、次の事業年度が開始してからおおむね3か月以内に公表するというものだ。
ここで間違えやすいのが初回の期限である。厚生労働省の解釈事項は、「改正法の施行後に最初に終了する事業年度」の実績が対象だとしたうえで、具体例を挙げている。

事業年度の終了月 初回公表の期限(おおむね)
2026年4月末 2026年7月末
2026年12月末 2027年3月末
2027年3月末(3月決算) 2027年6月末

3月決算の会社の場合、2026年3月31日に終わる事業年度は施行日(2026年4月1日)より前に終わっているため対象外だ。施行後に最初に終了するのは2027年3月末に終わる事業年度であり、初回の公表期限は2027年6月末ごろになる。「2026年6月末まで」「2026年7月末まで」としている解説は1年早い。
ただし期限が1年先だからといって着手を遅らせる理由にはならない。集計対象は2026年4月からの1年間であり、賃金データの持ち方を決めるのは今である。

💡 TIPS
「女性の活躍推進企業データベース」への登録と、自社ホームページでの公表を並行して行うことが推奨される。自社サイトに掲載することで、採用活動における訴求力にもつながる。


6. 一般事業主行動計画の策定・届出

101〜300人企業の義務内容(改正後)

義務 内容 いつから
状況把握・課題分析 基礎5項目の把握(必須) 2022年4月〜(賃金差異の追加は2026年4月〜)
行動計画の策定 計画期間・数値目標・取組内容を盛り込む 2022年4月〜
社内周知 全労働者への周知(掲示・配布等) 2022年4月〜
行動計画の公表 外部に向けて公表 2022年4月〜
届出 都道府県労働局へ(電子申請推奨) 2022年4月〜
情報公表(必須2項目) 男女間賃金差異・女性管理職比率 2026年4月〜(今回の追加分)
情報公表(追加1項目以上) 機会提供の実績7項目・両立支援の実績7項目の計14項目から選択 2022年4月〜

数値目標は、採用に占める女性割合・男女の継続勤務年数の差異の縮小割合・労働時間・管理職に占める女性割合などの数値を用いて、定量的に定めなければならない(法第8条第3項)。「女性が働きやすい職場を目指す」といった定性的な記述だけでは要件を満たさない。

行動計画の記載例(101〜300人規模中小企業向け)

計画期間:2026年4月1日〜2028年3月31日(2年間)

【数値目標】
・女性管理職比率を2026年時点の10%から、2028年3月末までに15%以上にする

【取組内容】
1. 女性リーダー育成研修の実施(年2回、2026年6月〜)
2. 育児休業取得率の向上(男性育休推進)
3. 時短勤務制度の拡充(対象年齢の引き上げ)

🎯 プロの目
数値目標は「現状から+5%以上」など、達成可能かつ意欲的な設定が求められる。目標が低すぎると行政から指導を受ける可能性がある一方、非現実的な数値は計画倒れになる。社内のロールモデルとなる女性管理職候補者の数を確認した上で、根拠のある目標値を設定することが重要だ。


7. 違反した場合のリスク——行政措置の流れ

義務を果たさなかった場合に刑事罰が科されることはないが、以下の行政的な措置が設けられている。措置の内容は違反した義務の種類によって異なる。

措置の根拠と対象

違反行為 措置 根拠
情報公表の不実施・虚偽の公表 報告徴収・助言・指導・勧告 → 勧告に従わなければ企業名を公表できる 法第30条・第31条
行動計画の未策定・未届出・未周知 報告徴収・助言・指導・勧告(企業名公表の規定はない) 法第30条
労働局への報告をしない/虚偽の報告をする 20万円以下の過料 法第39条

⚠️ 注意:企業名の公表は「情報公表義務違反」に限られる
法第31条は、第20条第1項・第2項の情報公表をしなかった、または虚偽の公表をした事業主に勧告をして、それに従わなかった場合に企業名を公表できると定めている。行動計画を届け出ていないだけでは、この条文の対象にならない。「未届出でも企業名を公表される」としている解説があるが、条文上の根拠はない。
ただし届出をしていない場合も第30条による勧告の対象であり、放置してよいという意味ではない。

⚠️ 注意:過料が科されるのは「報告」に対して
20万円以下の過料(法第39条)は、厚生労働大臣が法第30条に基づいて求めた報告をしなかった場合、または虚偽の報告をした場合に科される。公表した数値が間違っていたこと自体に過料が科されるわけではない。とはいえ虚偽の公表は第31条の企業名公表の対象であり、労働局から報告を求められる契機にもなる。

🎯 プロの目
「罰則がないから放置でいい」は危険な考え方だ。企業名の公表は採用力・取引先との関係・投資家評価に直接影響する。とくに従業員数101〜300人規模の中小企業では、採用競争力への打撃が事業継続に影響しうる。

🎯 プロの目
2026年4月以降、「女性活躍企業データベース」はESG投資家の調査対象となる見込みが高い。機関投資家がサプライチェーン全体のダイバーシティ情報を収集する流れの中で、中小企業の情報公表は「取引先からの要請」にもなりうる。対応は法令遵守だけでなく、ビジネス上のリスク管理でもある。


8. 関連法改正との連動

女性活躍推進法改正は、同時期に施行される他の労務関連法改正と一体的に対応することが効率的だ。

とくに押さえておきたいのは、カスタマーハラスメント対策と求職者等セクシュアルハラスメント対策が、女性活躍推進法の改正と同じ「令和7年法律第63号」に含まれている点だ。 同じ法律による改正でありながら施行日が分かれており、こちらは2026年10月1日の施行になる。就業規則やハラスメント防止規程の見直しは、まとめて行うほうが効率がよい。


9. 101〜300人規模の企業の対応手順

【本節の位置づけ】 改正女性活躍推進法は2026年4月1日に施行済みです。以下は3月決算(4月〜3月を事業年度とする)の企業を想定した進め方です。決算月が異なる場合は、§5の初回公表期限の表に合わせて読み替えてください。

アクションチェックリスト

【フェーズ0:積み残しの確認】直ちに

2022年4月から義務化されている内容に未対応がないかを先に確認する。ここが抜けたまま2026年の追加分だけ対応しても、義務は果たせていない。

  • [ ] 一般事業主行動計画を策定し、都道府県労働局へ届け出ているか
  • [ ] 行動計画を全労働者に周知しているか
  • [ ] 行動計画を外部に公表しているか
  • [ ] 情報公表(機会提供または両立支援から1項目以上)を行っているか

【フェーズ1:現状把握】2026年中に
– [ ] 自社の「常時雇用する労働者」数を正確にカウントし、101人以上かを確認する
– [ ] 基礎5項目(採用女性割合/継続勤務年数の差異/労働時間/女性管理職比率/男女賃金差異)を把握する
– [ ] 管理職(課長級以上・役員を除く)の人員を男女別にリストアップする。課長代理・課長補佐は原則として含めない
– [ ] 給与計算システムから、賃金差異の集計に必要な項目(賞与・手当を含む年間賃金総額)を出力できるか確認する
– [ ] 短期バイト・学生アルバイトを含めた集計対象の範囲を確定する

【フェーズ2:計画の改定・届出】2026年度内に
– [ ] 既存の一般事業主行動計画を改定する(未策定の企業は新規に策定する)
– [ ] 数値目標が定量的な形になっているか確認する
– [ ] 改定した行動計画を全労働者に周知し、外部に公表する
– [ ] 都道府県労働局へ届け出る(e-Gov電子申請)
– [ ] 「女性の活躍推進企業データベース」にアカウントを作成する

【フェーズ3:初回の情報公表】2027年6月末まで(3月決算の場合)

対象となる実績は2026年4月〜2027年3月の事業年度分。

  • [ ] データベースに男女間賃金差異(全労働者・正規・非正規の3区分)を入力・公表する
  • [ ] データベースに女性管理職比率を入力・公表する
  • [ ] 追加公表項目(機会提供7項目・両立支援7項目から1項目以上)を選択・公表する
  • [ ] 格差の背景を説明する必要があれば「補足情報」欄に記載する
  • [ ] 公表日を明示する
  • [ ] 自社ホームページにも同データを掲載する(任意だが推奨)

【継続的対応】
– [ ] おおむね年1回以上、最新実績をデータベースに更新する
– [ ] 数値目標の達成状況を定期的にモニタリングする
– [ ] 女性管理職候補者のキャリア開発プランを整備する

💡 TIPS
データ集計は給与計算システム(弥生給与・freee人事労務・SmartHR等)から出力できる場合が多い。各ソフトウェアのサポートページで「女性活躍推進法対応」の手順を確認しよう。2026年施行に合わせてシステムがアップデートされているケースが多い。


FAQ

Q1. 2026年4月1日時点で従業員が98人だったが、5月に採用して105人になった。いつから義務対象になるのか?

A1. その時点で義務が生じる。厚生労働省の施行通達は「常時雇用する労働者の数が100人以下の一般事業主であっても、その後、常時雇用する労働者の数が100人を超えた場合にあっては、その時点から一般事業主行動計画を策定し、又は変更した旨を届け出る義務が課されるものであること」と明記している。4月1日という基準日があって1年間固定されるわけではない。5月に105人になったのであれば、その時点から行動計画の策定・届出・周知・公表の義務を負う。速やかに着手してほしい。

Q2. 育児休業中の女性社員は賃金差異の計算に含めるのか?

A2. 厚生労働省の解釈事項は、産休・育休・病休など休業中の者について「企業の実情に応じて判断すれば良く、賃金算定の対象労働者から除外して差し支えない」としている。除外するのは「期間」ではなく「その人」であり、除外するかどうかは企業の判断に委ねられている。

ただし条件がひとつある。「総賃金、人員数の考え方について、男女で異なるものとしてはならない」。育休中の女性だけを除外して男性の育休取得者は残す、といった扱いは認められない。

なお、育児・介護のために短時間勤務や所定外労働の制限を受けている人は、休業中ではないため除外の対象にならない。労働時間が短い分だけ賃金が少なくなり、それが女性に偏っていれば賃金差異は大きく出る。これは制度の趣旨どおりの結果であり、その背景を「補足情報」として説明するのが実務的な対応になる。自社の計算方法と除外の有無も、あわせて明記するとよい。

Q3. 男女間賃金差異が50%台だった場合、公表を拒否できるか?

A3. 拒否できない。数値の大小にかかわらず公表義務は課せられる。ただし、格差の背景(職種構成の違い、管理職比率の差異、非正規比率の違い等)を「補足情報」として添付することは可能であり、むしろ推奨されている。格差の原因を分析し、改善計画を合わせて公表することで、ステークホルダーへの説明責任を果たすことができる。

Q4. 「えるぼし認定」は今回の改正で変わるのか?

A4. 「えるぼしプラス」は2026年4月1日にすでにスタートしている(検討中ではない)。ただし、その中身はよく誤解されている。

まず前提として「えるぼし」は、女性活躍推進の取組が優良な企業を厚生労働大臣が認定する制度で、認定マークを商品や求人票に使える。基準の達成状況に応じて1〜3段階があり、さらに上位に「プラチナえるぼし」がある。

えるぼしプラスは、この段階のさらに上位ではない。 既存のえるぼし認定・プラチナえるぼし認定に、職場における女性の健康支援に関する基準を追加する制度だ。したがって「えるぼしプラス」にも1〜3段階があり、「プラチナえるぼしプラス」も存在する。女性活躍推進の取組についての基準を満たしたうえで、健康支援の基準も満たす必要がある。

健康支援に関する認定基準は、えるぼしプラス(1・2・3段階)とプラチナえるぼしプラスで共通の4つ。

  1. 女性の健康上の特性に配慮した休暇制度(年次有給休暇を除く)と、配慮のために利用できる制度(半日・時間単位の有給休暇、所定外労働の制限、時差出勤、フレックスタイム制、短時間勤務、在宅勤務のいずれか)を設けていること
  2. 女性の健康上の特性への配慮に関する方針を示し、1の制度の内容とともに労働者に周知する措置を講じていること
  3. 女性の健康上の特性への配慮に関する研修など、労働者の理解を促進する取組を実施していること
  4. 女性の健康上の特性への配慮に関する業務の担当者を選任し、労働者からの相談に応じさせる措置を講じたうえで、担当者を労働者に周知する措置を講じていること

えるぼし認定を受けた企業は、各府省等の総合評価落札方式・企画競争による公共調達で加点評価される。また日本政策金融公庫の「働き方改革推進支援資金」を通常より低金利で利用できる。

Q5. グループ会社がある場合、101人のカウントは各法人単位か?グループ全体か?

A5. 各法人(事業主)単位でカウントする。厚生労働省の施行通達は「一般事業主とは、国及び地方公共団体以外の労働者を雇用して事業を行う全ての事業主を指し、個人事業主にあってはその事業主個人、会社その他の法人組織の場合はその法人そのものを指す」としている。親会社・子会社・関連会社が別法人であれば、それぞれの法人ごとに「常時雇用する労働者数」を確認する。

一方、同一事業主が複数の事業場を運営している場合(例:同一会社の本社・支社・工場)は、全事業場の合計で判断する。なお在籍出向者については、主たる賃金を実際に支払っている側の企業の「常時雇用する労働者」として扱う。出向先が「負担金」の名目で出向元へ支払っている場合も、現に賃金として支払っている事業主の側で数える。

Q6. 今回の改正で「女性の健康への配慮」が追加されたとのことだが、具体的に何をする必要があるのか?

A6. まず時期を正しておきたい。この改正は2026年4月ではなく、公布日である2025年6月11日に施行済みである。基本原則を定める法第2条第1項に「併せて、女性の健康上の特性に留意して」という文言が加わった。

条文に書かれているのはこの一句だけで、「生理」「更年期」「不妊治療」といった個別の課題名は法律には出てこない。基本原則であるため、これを守らなかったことに対する罰則や行政措置も定められていない。

実務上の意味は2つある。1つは、一般事業主行動計画を策定するにあたって、女性の健康上の特性に係る取組を盛り込むことが望ましいとされた点。もう1つは、この基本原則を受けてえるぼしプラス認定(Q4参照)が創設され、健康支援に取り組む企業が認定というかたちで評価される道ができた点だ。

厚生労働省が挙げる取組例には、女性の健康上の特性に関する研修の開催、婦人科検診の重要性を含む啓発、生理休暇を取得しやすい環境の整備、不調時の休養・治療・通院・検診など多様な目的で使える休暇制度の整備、所定外労働の制限やフレックスタイム制などの柔軟な働き方、産業医やカウンセラーによる相談体制の構築などがある。健康に関する情報はプライバシー保護がとくに求められる点にも留意したい。

Q7. 従業員の立場で、勤務先の男女間賃金差異や女性管理職比率を見たい。どこで確認できるのか?

A7. 「女性の活躍推進企業データベース」(positive-ryouritsu.mhlw.go.jp)で企業名から検索できる。情報公表は求職者や労働者に向けて行うものなので、公表された数値は誰でも閲覧できる。自社のホームページで公表している企業もある。

勤務先が101人以上なのにデータベースに情報が見当たらない場合、公表期限がまだ来ていない可能性がある。初回の公表期限は決算月によって異なり、3月決算なら2027年6月末ごろだ(§5参照)。期限を過ぎても公表がない場合の相談先は、勤務先の所在地を管轄する都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)になる。

なお、有価証券報告書にだけ記載していても女性活躍推進法上の義務を果たしたことにはならない、と厚生労働省は明示している。求職者から見て数値の所在が分かるように公表する必要があり、データベースへの掲載が最も適切な方法とされている。

Q8. パートタイマーが80人、正社員が25人の合計105人の会社は対象か?

A8. 対象となる可能性が高い。パートタイマーが「常時雇用する労働者」の要件(過去1年以上引き続き雇用されている、または雇入れの時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる)を満たしている場合は、カウントに含める。仮に80人全員が要件を満たすなら合計105人となり、義務対象だ。一方、短期バイトや1年未満の有期雇用、昼間学生のアルバイトは企業規模のカウントからは除外されるため、各人の雇用実態を確認することが重要となる。

ただし§2で述べたとおり、101人以上と判定された後の賃金差異の集計では、これらの人も対象に入る。 カウントと集計で範囲が違う点に注意してほしい。


誤解されやすい5つのポイント

改稿にあたって一次ソースを確認したところ、解説記事のあいだで広く食い違っていた点がある。実務に直接響くものを挙げておく。

誤解1:2026年4月から情報公表が義務になった
→ 101人以上の企業には改正前から情報公表の義務があった(選択1項目)。今回追加されたのは必須項目であって、義務そのものではない。2022年4月以降ずっと未対応の企業は、行動計画の届出から着手が必要。

誤解2:管理職には課長代理・課長補佐も含む
→ 厚生労働省の解釈事項は「一般的に『課長代理』や『課長補佐』については、『課長級』に該当しません」としている。含めて数えると女性管理職比率がずれる。

誤解3:3月決算なら2026年6月末までに公表しなければならない
→ 初回の対象は「施行後に最初に終了する事業年度」。3月決算なら2027年3月末に終わる年度であり、公表期限は2027年6月末ごろ。

誤解4:4月1日時点の人数で1年間の対象・非対象が決まる
→ 基準日はない。100人を超えた時点から義務が生じる(施行通達)。

誤解5:えるぼしプラスはえるぼしの上位段階
→ 段階の上位ではなく、既存のえるぼし・プラチナえるぼしに女性の健康支援の基準を追加する制度。えるぼしプラスにも1〜3段階があり、プラチナえるぼしプラスもある。


まとめ

2026年4月施行の改正女性活躍推進法で、101〜300人規模の企業の情報公表に「男女間賃金差異」と「女性管理職比率」が必須項目として加わった。公表項目は合計3項目以上になる。

やるべきことは3つある。 ひとつめは、2022年4月から義務化されている行動計画の策定・届出・周知・公表に積み残しがないかの確認。ふたつめは、基礎5項目の把握——とくに管理職の数え方を厚生労働省の定義に合わせること。みっつめは、初回公表の期限を自社の決算月から逆算すること。3月決算なら2027年6月末ごろであり、集計対象は2026年4月からの1年間になる。

期限までまだ時間がある企業が多いはずだが、集計対象期間はすでに始まっている。賃金データの持ち方と管理職名簿の基準を決めるのは今である。

公表を通じて自社の課題が明確になり、改善に向けた行動計画の策定につながるという前向きな活用も意識したい。法令遵守にとどまらず、採用力・取引先からの信頼向上といったビジネス上の意味もある。


参考法令・情報源

本記事の記述は、以下の一次資料で確認しています。

  • 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成27年法律第64号)第2条・第8条・第20条・第30条・第31条・第39条 — e-Gov法令検索
  • 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律(令和7年法律第63号、2025年6月11日公布)
  • 厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ」
  • 厚生労働省「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の施行について」(令和8年4月1日適用)
  • 厚生労働省「状況把握、情報公表、認定基準等における解釈事項について」(令和8年4月1日適用)
  • 厚生労働省「女性活躍推進法に基づく『男女の賃金の額の差異』及び『管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合』の公表等における解釈事項について」(法第20条・省令第19条等関係)
  • 厚生労働省「職場における女性の健康支援に取り組む企業を認定する新しい制度『えるぼしプラス』認定・『プラチナえるぼしプラス』認定」(令和8年3月作成)
  • 厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」(positive-ryouritsu.mhlw.go.jp)

免責事項

本記事は2026年9月12日時点の法令・通達・解釈事項に基づく一般的な情報提供です。個別の企業における義務の有無、管理職の範囲の判断、賃金差異の算出方法については、自社の実情に応じた判断が必要になります。確定的な取扱いは、所轄の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)または社会保険労務士等の専門家にご確認ください。本記事の情報に基づく判断により生じた損害について、当サイトは責任を負いかねます。

JG

実務ガイド編集部

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