最終更新日: 2026年3月
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マイホーム(居住用財産)を売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を差し引くことができる「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」(租税特別措置法第35条第1項)がある。譲渡所得が3,000万円以下であれば課税額がゼロとなり、所得税・住民税が一切かからない。所有期間の長短を問わず適用でき、マイホーム売却で最も利用頻度が高い特例である。本記事では、適用要件・適用除外・確定申告手続き・相続空き家との違いを体系的に整理する。
【まとめ表】3,000万円特別控除の全体像
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠法令 | 租税特別措置法第35条第1項 |
| 控除額 | 譲渡所得から最大3,000万円 |
| 所有期間要件 | なし(短期・長期を問わない) |
| 居住期間要件 | なし(実際に居住していれば短期間でも可) |
| 適用期限 | 恒久措置(期限の定めなし) |
| 確定申告 | 必須(譲渡益がゼロでも申告が必要) |
| 併用可能な特例 | 10年超所有軽減税率の特例(措法31条の3) |
| 併用不可の特例 | 住宅ローン控除・買換え特例・損益通算特例 |
出典: 国税庁タックスアンサーNo.3302「マイホームを売ったときの特例」
3,000万円特別控除の仕組み
譲渡所得の計算式
マイホームを売却したときの税額は、以下の計算で求めます。
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)
課税譲渡所得 = 譲渡所得 − 3,000万円(特別控除)
税額 = 課税譲渡所得 × 税率
| 所有期間 | 所得税 | 住民税 | 復興特別所得税含む合計 |
|---|---|---|---|
| 5年超(長期) | 15% | 5% | 20.315% |
| 5年以下(短期) | 30% | 9% | 39.63% |
たとえば、取得費2,000万円・譲渡費用200万円のマイホームを5,000万円で売却した場合、譲渡所得は2,800万円となります。3,000万円特別控除を適用すれば課税譲渡所得はゼロとなり、税額は発生しません。
適用要件|6つの条件を確認
3,000万円特別控除を受けるには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
要件1:居住用財産であること
売却する物件が、自らの「マイホーム」であることが大前提です。別荘・セカンドハウス・投資用賃貸物件は対象外です。
要件2:現に住んでいるか、住まなくなってから3年以内
以下のいずれかに該当する必要があります。
- 現在住んでいる自宅を売却する場合 — そのまま適用可能
- 転居済みの場合 — 住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
たとえば、2024年7月に転居した場合、2027年12月31日までに売却すれば適用対象となります。
要件3:家屋を取り壊した場合の追加要件
家屋を取り壊して敷地のみを売却する場合は、以下をすべて満たす必要があります。
- 取り壊した日から1年以内に譲渡契約を締結すること
- 住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
- 取り壊し後、売却契約日まで貸駐車場等の用途に供していないこと
要件4:売却相手が特別関係者でないこと
配偶者・直系血族(親・子・祖父母・孫)・生計を一にする親族など「特別の関係がある者」への売却では適用できません。売却後にその物件で同居する親族も特別関係者に含まれます。
要件5:前年・前々年に同特例の適用を受けていないこと
売却した年の前年および前々年に、以下の特例の適用を受けていないことが条件です。
- 居住用財産の3,000万円特別控除(本特例)
- 居住用財産の買換え特例(措法36条の2)
- 居住用財産の交換特例(措法36条の5)
つまり、3年に1回しか適用できません。
要件6:特例適用のための一時的な居住でないこと
控除を受ける目的で一時的に入居した場合は対象外です。国税庁は、短期間の入居や仮装的な居住について厳格に判断しています。
適用除外ケース|こんな場合は使えない
| ケース | 適用可否 | 備考 |
|---|---|---|
| 別荘・セカンドハウスの売却 | 不可 | 居住用財産に該当しない |
| 投資用ワンルームマンションの売却 | 不可 | 自己の居住用でない |
| 配偶者への売却 | 不可 | 特別関係者に該当 |
| 親族が経営する法人への売却 | 不可 | 特別関係者に該当 |
| 前年に3,000万円控除を適用済み | 不可 | 3年に1回の制限 |
| 住むためでなく転売目的で購入した物件 | 不可 | 一時的居住と判断 |
| 住まなくなって4年経過後に売却 | 不可 | 3年以内要件を充足しない |
| 取り壊し後に貸駐車場として利用 | 不可 | 取り壊し後の用途制限 |
相続空き家の3,000万円控除との違い
親が住んでいた実家を相続し、誰も住まないまま売却するケースでは、通常の3,000万円控除は適用できません。しかし、一定の要件を満たせば「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」(措法35条3項)を利用できます。
2つの制度の比較
| 項目 | 居住用財産の3,000万円控除(1項) | 相続空き家の3,000万円控除(3項) |
|---|---|---|
| 対象者 | 自分が住んでいた物件を売却する本人 | 被相続人の自宅を相続した相続人 |
| 適用期限 | 恒久措置 | 令和9年(2027年)12月31日まで |
| 建物要件 | 特になし | 昭和56年5月31日以前の旧耐震建物 |
| 売却価格 | 制限なし | 1億円以下 |
| 控除上限 | 3,000万円 | 3,000万円(相続人3人以上は2,000万円) |
| 耐震改修等 | 不要 | 耐震改修済みまたは取り壊し後の敷地売却が原則(※) |
| 売却期限 | 転居後3年目の年末まで | 相続開始後3年を経過する年の12月31日まで |
※ 令和6年1月1日以降の譲渡では、買主が譲渡の翌年2月15日までに耐震改修・取り壊しを行う場合も適用可能(令和5年度税制改正による緩和)。
住宅ローン控除との併用不可ルール
3,000万円特別控除と住宅ローン控除は併用できません。具体的には、以下の期間に3,000万円控除を受けた場合、新居で住宅ローン控除は適用不可となります。
併用制限の期間
新居に入居した年の前2年+入居年+入居後3年=合計6年間
この6年間に旧自宅で3,000万円控除を適用していると、新居の住宅ローン控除は受けられません。
具体例
| ケース | 旧自宅売却(3,000万円控除適用) | 新居入居 | 住宅ローン控除 |
|---|---|---|---|
| A | 2025年 | 2026年 | 不可(入居年の前年に適用) |
| B | 2023年 | 2026年 | 可能(6年間に該当しない) |
| C | 2026年 | 2026年 | 不可(入居年に適用) |
| D | 2026年 | 2029年 | 不可(入居前2年に該当) |
10年超所有の軽減税率特例との併用
3,000万円控除は「10年超所有軽減税率の特例」(措法31条の3)と併用可能です。所有期間が10年を超えるマイホームを売却する場合、3,000万円控除後の課税譲渡所得に対して軽減税率が適用されます。
| 課税譲渡所得 | 税率(所得税+住民税+復興特別所得税) |
|---|---|
| 6,000万円以下の部分 | 14.21%(通常20.315%から軽減) |
| 6,000万円超の部分 | 20.315% |
併用した場合の具体例
所有期間12年のマイホームを8,000万円で売却(取得費1,000万円、譲渡費用200万円)した場合:
| ステップ | 計算 |
|---|---|
| 譲渡所得 | 8,000万円 − 1,200万円 = 6,800万円 |
| 3,000万円控除後 | 6,800万円 − 3,000万円 = 3,800万円 |
| 税額 | 3,800万円 × 14.21% = 約540万円 |
| (控除なしの場合) | 6,800万円 × 20.315% = 約1,381万円 |
3,000万円控除+軽減税率の併用で、約841万円の節税となります。
確定申告の手続き・必要書類
申告時期
売却した翌年の2月16日〜3月15日(土日の場合は翌営業日)に確定申告を行います。
必要書類一覧
| 書類 | 入手先 |
|---|---|
| 確定申告書(第一表・第三表) | 国税庁HP・税務署 |
| 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】 | 国税庁HP・税務署 |
| 売買契約書の写し(売却時) | 手持ち |
| 売買契約書の写し(取得時、あれば) | 手持ち |
| 譲渡費用の領収書(仲介手数料等) | 手持ち |
| 登記事項証明書(全部事項証明書) | 法務局(オンラインで取得可能) |
| 戸籍の附票の写し | 市区町村役場 |
| 本人確認書類(マイナンバーカード等) | 手持ち |
申告方法
- 税務署への持参
- 郵送
- e-Tax(電子申告) — 国税庁「確定申告書等作成コーナー」から作成・送信が可能
具体的な適用例・非適用例
適用例1:一般的なマイホーム売却
状況: 15年間住んだ自宅マンションを4,500万円で売却。取得費2,500万円、譲渡費用150万円。
- 譲渡所得:4,500万円 − 2,650万円 = 1,850万円
- 3,000万円控除適用:1,850万円 − 3,000万円 = 0円(課税なし)
- 確定申告は必須
適用例2:転居後の売却
状況: 2024年3月に転勤で転居。2026年10月に旧自宅を売却。
- 住まなくなった日(2024年3月)から3年を経過する日の属する年の12月31日 = 2027年12月31日
- 2026年10月の売却は期限内 → 適用可能
適用例3:夫婦共有名義
状況: 夫婦共有(持分各1/2)の自宅を7,000万円で売却。取得費3,000万円、譲渡費用200万円。
- 譲渡所得:7,000万円 − 3,200万円 = 3,800万円
- 夫の持分:1,900万円 → 3,000万円控除で課税ゼロ
- 妻の持分:1,900万円 → 3,000万円控除で課税ゼロ
非適用例1:親族への売却
状況: 自宅を息子に売却。
- 直系血族は特別関係者 → 適用不可
非適用例2:期限切れ
状況: 2022年1月に転居。2026年5月に売却。
- 3年を経過する日の属する年の12月31日 = 2025年12月31日
- 2026年5月の売却は期限後 → 適用不可
非適用例3:取り壊し後に貸駐車場
状況: 2024年に自宅を取り壊し、2025年から月極駐車場として貸し出し。2026年に土地を売却。
- 取り壊し後に事業用途に供している → 適用不可
よくある質問(FAQ)
Q: 3,000万円控除を適用すると税金がゼロになりますが、確定申告は必要ですか?
A: 必要です。3,000万円特別控除は確定申告で適用を申請する制度であり、申告しなければ控除は適用されません。譲渡所得がゼロになる場合でも、売却した翌年の確定申告期間(2月16日〜3月15日)に必ず申告を行ってください。無申告の場合、後日税務署から通知が届き、無申告加算税や延滞税が課される可能性があります。
Q: 相続した親の自宅を売却する場合、3,000万円控除は使えますか?
A: 相続人が被相続人と同居しており、相続後もその物件に住んでいた(または住まなくなって3年以内に売却する)場合は、通常の3,000万円控除(措法35条1項)を適用できます。一方、別居していた親の実家を相続した場合は適用できません。ただし、昭和56年5月31日以前の建物で売却価格1億円以下等の要件を満たせば、「相続空き家の3,000万円控除」(措法35条3項、令和9年12月31日まで)を利用できる可能性があります。
Q: 住宅ローン控除と3,000万円控除、どちらを選ぶべきですか?
A: 住み替え時には両方の特例を比較検討する必要があります。一般的な判断基準は以下のとおりです。
– 譲渡益が大きい(1,000万円超)場合 → 3,000万円控除が有利な傾向
– 譲渡益が小さく、住宅ローン残高が大きい場合 → 住宅ローン控除が有利な傾向
– 併用不可期間は「新居入居年の前2年+入居年+入居後3年=6年間」
– 一度確定申告で適用すると変更不可のため、税理士に相談した上で慎重に判断してください。
Q: 離婚に伴い元配偶者に自宅を売却した場合、3,000万円控除は適用できますか?
A: 離婚後(婚姻関係解消後)に元配偶者に売却する場合は、「特別の関係がある者」に該当しないため、原則として適用可能です。ただし、離婚前(婚姻中)に売却する場合は配偶者への売却となり適用不可です。財産分与として渡す場合は「譲渡」に該当するかどうかが論点となるため、必ず税理士に確認してください。
Q: 3,000万円控除は何回でも使えますか?
A: 回数制限はありませんが、売却した年の前年・前々年に同特例を適用していないことが条件です。つまり、最短でも3年に1回しか適用できません。たとえば、2024年に適用した場合、次に適用できるのは2027年以降の売却です。
Q: 敷地と建物の名義が違う場合はどうなりますか?
A: 以下の要件をすべて満たせば、敷地の所有者も3,000万円控除の適用を受けられます。(1)家屋と敷地を同時に売却すること、(2)家屋の所有者と敷地の所有者が親族関係にあり生計を一にしていること、(3)敷地の所有者がその家屋に一緒に住んでいること。たとえば、建物が妻名義・土地が夫名義の場合、同居している夫婦であれば双方が控除を受けられます(国税庁タックスアンサーNo.3311)。
今すぐやること|アクションチェックリスト
- [ ] 売却物件の「居住用財産」該当性を確認 — 住民票の異動履歴・公共料金の名義等で居住実態を証明できるか
- [ ] 転居済みの場合、期限を計算 — 住まなくなった日から3年を経過する年の12月31日が売却期限
- [ ] 売却先が特別関係者でないか確認 — 配偶者・親・子・生計同一親族等への売却は適用不可
- [ ] 前年・前々年の特例適用歴を確認 — 過去2年間に3,000万円控除・買換え特例を使っていないか
- [ ] 住宅ローン控除との有利不利を比較 — 住み替えの場合は必ず税理士にシミュレーション依頼
- [ ] 取得時の売買契約書を探す — 取得費を証明する書類があれば節税効果が大幅アップ
- [ ] 確定申告の必要書類を早めに準備 — 戸籍の附票・登記事項証明書は取得に時間がかかる場合あり
出典・参考文献
– 国税庁タックスアンサー No.3302「マイホームを売ったときの特例」
– 国税庁タックスアンサー No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
– 国税庁タックスアンサー No.3311「家屋と敷地の所有者が異なるとき」
– 国税庁タックスアンサー No.3305「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
– 国土交通省「居住用財産の譲渡に関する特例措置」
– 国土交通省「空き家の発生を抑制するための特例措置」
– 租税特別措置法第35条、第31条の3



