最終更新日: 2026年10月4日
関連記事
– 不動産売却の譲渡所得税 — 計算方法・税率・長期短期の違い
– 3,000万円特別控除の適用要件 — 居住用財産の譲渡所得から最大3,000万円を控除
– 非上場株式の相続税評価 2027年度改正の論点 — 自社株を含む相続では評価ルール改正議論の影響を要チェック
– 類似業種比準方式 改定シナリオ2027|株価への影響試算 — 斟酌率引上げで自社株評価額がどう変わるか会社規模別に試算
– 令和8年度税制改正|相続税・贈与税はどう変わる? — 登記義務化と並行して動く相続税の最新改正点(事業承継・貸付用不動産評価・ミニマム税)
– 相続放棄2026年完全ガイド|3か月の期限・借金や負動産の判断基準 — 登記前に相続放棄を検討する場合の手続きと期限
– 小規模宅地等の特例 完全実務ガイド|自宅敷地を最大80%減額 — 相続登記完了後に活用すべき相続税の最重要特例
2024年4月1日に施行された改正不動産登記法により、相続によって不動産を取得した人は、取得を知った日から3年以内に相続登記を申請しなければならない。正当な理由なく期限を過ぎると10万円以下の過料の対象となる。施行前に発生した相続で登記が済んでいない不動産も対象で、多くの場合2027年3月31日が期限になる。2026年10月時点で残りは約6か月である。何十年も前の相続では戸籍の収集だけで数か月かかることがあるため、間に合わない場合は相続人申告登記で義務を果たす方法も押さえておきたい。本記事では、義務化の全体像、期限の数え方、過料の流れ、相続人申告登記の使い方、必要書類と費用を法務省の資料に沿って整理する。
【まとめ表】相続登記義務化の要点
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施行日 | 2024年4月1日 |
| 申請期限 | 相続の開始および不動産取得を知った日から3年以内 |
| 過料 | 正当な理由なく期限超過の場合、10万円以下 |
| 過去の相続 | 取得を知った日か2024年4月1日の遅い方から3年(多くは2027年3月31日) |
| 簡易手続き | 相続人申告登記(登録免許税不要) |
| 登録免許税 | 固定資産税評価額の0.4%(免税措置あり) |
相続登記義務化の概要|なぜ義務化されたのか
背景:所有者不明土地問題
相続が発生しても登記が行われず、世代を重ねるごとに相続人が増えて、不動産の利活用や公共事業が難しくなるケースが全国で生じていました。法務省は「全国のうち所有者不明土地が占める割合は九州の大きさに匹敵するともいわれており」と説明しています。
この問題を解消するため、「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)により不動産登記法が改正され、2024年4月1日から相続登記の申請が義務化されました。
義務の内容
相続(遺言を含む)により不動産の所有権を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記の申請をしなければなりません(不動産登記法第76条の2第1項)。
法定相続分で相続登記をした後に遺産分割が成立し、法定相続分を超えて取得した人は、遺産分割の日から3年以内に、その内容を反映した登記を申請する義務があります(同条第2項)。
相続登記の前提として、不動産に対して相続税がかかるかどうかも確認しておくことが重要です。基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超える遺産がある場合、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に申告・納税が必要です。相続税の基礎控除・税率・申告期限と計算の全体像で相続税の課税要件を事前に把握しておくとよいでしょう。
3年以内の期限と遡及適用|過去の相続はいつまで?
新規相続の場合
2024年4月1日以降に発生した相続については、相続の開始および不動産取得を知った日から3年以内が申請期限です。
過去の相続の場合(遡及適用)
施行日より前に発生した相続で、まだ相続登記をしていない場合も義務化の対象です。期限は「不動産の取得を知った日」と「施行日(2024年4月1日)」のいずれか遅い日から3年です(令和3年法律第24号附則第5条第6項)。
| 条件 | 期限 |
|---|---|
| 施行日より前に取得を知っていた | 2027年3月31日 |
| 施行日以後に取得を知った | 知った日から3年 |
多くのケースでは2027年3月31日が実質的な期限となります。
10万円以下の過料|適用条件と手続きの流れ
過料が科される条件
正当な理由がないにもかかわらず、期限内に相続登記の申請を怠った場合、10万円以下の過料の対象となります(不動産登記法第164条第1項)。過料の額は、10万円以下の範囲内で裁判所が決めます。
過料までの流れ
過料は即座に科されるわけではなく、以下のプロセスを経ます。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1 | 法務局の登記官が義務違反を把握 |
| 2 | 相続人に対し、相当期間を定めて催告 |
| 3 | 催告期間内に申請がなければ、管轄地方裁判所に通知 |
| 4 | 裁判所が過料の要否と金額を決定 |
「正当な理由」として認められる5類型
法務省通達(令和5年9月12日付法務省民二第927号)では、以下の事情がある場合は「正当な理由」と認められるとしています。
| # | 正当な理由の類型 |
|---|---|
| 1 | 相続人が極めて多数で、戸籍収集・相続人把握に多くの時間を要する |
| 2 | 遺言の有効性や遺産の範囲が争われており、帰属が確定しない |
| 3 | 義務者自身に重病その他これに準ずる事情がある |
| 4 | DV被害等により避難中で、生命・心身に危害のおそれがある |
| 5 | 経済的に困窮しており、申請費用の負担能力がない |
これら5類型に該当しない場合でも、個別の事情に応じて正当な理由が認められることがあります。催告を受けた場合は、催告書への回答で事情を申告します。
相続人申告登記|遺産分割前でも義務を果たせる簡易手続き
制度の概要
遺産分割協議がまとまらない場合や、相続人が多く書類収集に時間がかかる場合に活用できるのが相続人申告登記です。3年の期限内に、自分が登記記録上の所有者の相続人であることを法務局に申し出ると、相続登記の申請義務を履行したものとみなされます(不動産登記法第76条の3第2項)。
注意点が2つあります。
- 義務を果たしたとみなされるのは、申出をした相続人本人だけです。 相続人全員が義務を果たすには、全員がそれぞれ申出をする必要があります(連名の申出書でまとめて申し出ることもできます)
- 申出の前に遺産分割が成立していた場合は使えません。 その場合は、遺産分割の内容に基づく相続登記を申請します
通常の相続登記との比較
| 項目 | 相続登記 | 相続人申告登記 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 固定資産税評価額の0.4% | 不要(0円) |
| 必要な戸籍 | 被相続人の出生〜死亡+相続人全員分 | 申出人が相続人であることが分かる分(子・配偶者なら少なく済む。親・兄弟姉妹が申し出る場合は被相続人の出生〜死亡の戸籍も必要) |
| 法定相続分の確定 | 必要 | 不要 |
| 他の相続人の協力 | 必要な場合あり | 単独で申出可能 |
| 不動産の処分(売却等) | 可能 | 不可(別途相続登記が必要) |
| 申出方法 | 窓口・郵送・オンライン | 窓口・郵送・オンライン |
必要書類
相続人申告登記の申出に必要な書類は、通常の相続登記よりも大幅に少なくなっています。
- 申出書(法務省ホームページに様式あり。「かんたん登記・供託申請」でWebブラウザ上から作成・送信も可能)
- 申出人が登記記録上の所有者の相続人であることが分かる戸籍の証明書(戸籍電子証明書提供用識別符号で代替可能)
- 申出人の住所を証する書面(住民票の写し等。ただし、申出書にふりがな・生年月日を記載した場合は省略可能)
- 委任状(代理人が手続きする場合のみ)
相続登記の必要書類一覧と手続きの流れ
必要書類
通常の相続登記(遺産分割協議に基づく場合)に必要な書類は以下のとおりです。手数料は市区町村により異なるため、目安として参考にしてください。
| # | 書類 | 取得先 | 費用目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 登記申請書 | 自身で作成(法務局HPに様式あり) | 0円 |
| 2 | 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等 | 本籍地の市区町村(広域交付も可) | 1通450〜750円 |
| 3 | 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票) | 最終住所地の市区町村 | 1通200〜400円 |
| 4 | 相続人全員の現在の戸籍謄本 | 本籍地の市区町村 | 1通450円 |
| 5 | 遺産分割協議書 | 自身で作成 | 0円 |
| 6 | 相続人全員の印鑑証明書 | 住所地の市区町村 | 1通200〜400円 |
| 7 | 不動産を取得する人の住民票の写し | 住所地の市区町村 | 1通200〜400円 |
| 8 | 固定資産評価証明書(または課税明細書) | 不動産所在地の市区町村 | 1通200〜400円 |
| 9 | 収入印紙(登録免許税分) | 法務局・郵便局 | 評価額の0.4% |
手続きの流れ
相続登記の一般的な手続きの流れは、以下の6ステップです。所要期間は案件によって大きく異なります。
| ステップ | 内容 | 所要期間目安 |
|---|---|---|
| 1 | 相続人の確定(戸籍収集) | 2週間〜2か月 |
| 2 | 相続財産の調査(不動産の特定) | 1〜2週間 |
| 3 | 遺産分割協議の実施・協議書の作成(協議書の書き方と10年ルールはこちら) | 数週間〜数か月 |
| 4 | 必要書類の収集・登記申請書の作成 | 1〜2週間 |
| 5 | 法務局への申請 | 1日 |
| 6 | 登記完了(法務局での処理) | 1〜2週間 |
申請方法
法務局への申請は、以下の3つの方法があります。
| 方法 | 特徴 |
|---|---|
| 窓口申請 | 不動産所在地を管轄する法務局に直接持参 |
| 郵送申請 | 管轄法務局宛に書留郵便で送付。返送用封筒(切手付き)を同封する |
| オンライン申請 | 「申請用総合ソフト」を使用。電子署名が必要 |
相続登記を済ませた後の不動産売却手順については、相続した不動産の売却方法(売れる家ナビ)で税金・手続きを含めて解説されています。
費用の目安|登録免許税と免税措置
登録免許税の計算方法
相続登記の登録免許税は、固定資産税評価額 × 0.4%(1000分の4)で計算します。
計算例: 固定資産税評価額2,000万円の土地の場合
– 2,000万円 × 0.4% = 8万円
免税措置(2027年3月31日まで)
以下の場合、登録免許税が免除されます。
| 免税措置 | 条件 | 期限 |
|---|---|---|
| 数次相続の中間登記 | 土地を相続した人が相続登記をする前に死亡した場合の、その人を名義人とする登記 | 2027年3月31日まで |
| 100万円以下の土地 | 不動産の価額が100万円以下の土地の相続登記 | 2027年3月31日まで |
免税措置を受けるには、登記申請書に根拠条項を書く必要があります。法務局の案内では、数次相続の中間登記は「租税特別措置法第84条の2の2第1項により非課税」、100万円以下の土地は「租税特別措置法第84条の2の2第2項により非課税」と記載します。記載がない場合は免税を受けられません。 古い記載例にある「第84条の2の3」は、2026年4月1日施行の改正で条番号が変わる前のものです。
費用の全体像
| 費目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 登録免許税 | 固定資産税評価額の0.4% |
| 戸籍謄本等の取得費用 | 数千円〜1万円程度(相続人数・転籍回数による) |
| 司法書士報酬(依頼する場合) | 事務所・案件により異なるため見積もりで確認 |
| 合計(自分で行う場合) | 登録免許税+戸籍等の実費 |
期限までに間に合わせる動き方
2027年3月31日までの残り期間で手続きを終えるための考え方です。
- まず不動産を洗い出す:所有不動産記録証明制度や固定資産税の課税明細書で、被相続人名義の不動産を確認する
- 戸籍の収集を始める:転籍が多い被相続人の場合、出生から死亡までの戸籍を揃えるだけで時間がかかる。広域交付を使えば窓口でまとめて請求できる
- 遺産分割がまとまるか見極める:まとまりそうにない、または期限までに書類が揃わない場合は、先に相続人申告登記をしておく
- 免税措置の対象か確認する:100万円以下の土地や数次相続の中間登記なら、申請書に条項を書けば登録免許税がかからない
- 遺産分割が成立したら3年以内に登記する:相続人申告登記をした場合も、法定相続分で登記した場合も、2回目の期限がある
2026年に始まった関連制度
相続登記義務化と合わせて、以下の新制度も押さえておきましょう。
| 制度 | 施行日 | 内容 |
|---|---|---|
| 所有不動産記録証明制度 | 2026年2月2日 | 登記名義人本人やその相続人などが、名義人の不動産を一覧にした証明書を請求できる。手数料は検索条件1件・1通につき書面請求1,600円、オンライン請求1,500円(郵送交付)・1,470円(窓口交付) |
| 住所・氏名変更登記の義務化 | 2026年4月1日 | 住所・氏名変更から2年以内に変更登記が必要(5万円以下の過料) |
| スマート変更登記 | 2026年4月1日 | 事前に検索用情報を申し出ておくと、住所等の変更を法務局が確認し、本人の了解を得たうえで職権で変更登記をする。海外居住者は対象外。令和8年度の対象者には2026年12月中旬以降、順次、意思確認の通知が届く |
相続不動産の売却ガイド
相続登記の完了後、売却を検討する方へ。
- 相続した不動産を売る全手順ガイド2026|総コスト・税金・落とし穴まで一本で解説 — 登記完了後の売却フロー全体と税金・費用の総まとめ
- 相続した不動産の売却方法|手続きの流れと税金を完全解説(売れる家ナビ) — 登記後の売却ステップと税金の全体像
- 空き家を売る方法|放置のリスクと売却のベストタイミング(売れる家ナビ) — 相続した空き家の活用・売却判断
よくある質問(FAQ)
Q: 相続登記の義務化はいつから始まりましたか?
A: 2024年(令和6年)4月1日から施行されています。改正不動産登記法に基づき、相続により不動産を取得した相続人は、取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があります。
Q: 過去に相続した不動産も対象ですか?期限はいつですか?
A: はい、施行前に発生した相続も対象です。期限は、不動産の取得を知った日と2024年4月1日のいずれか遅い日から3年です。施行前から取得を知っていた場合は2027年3月31日が期限になります。何十年前の相続であっても、登記が未了であれば義務化の対象です。
Q: 遺産分割協議がまとまらない場合はどうすればよいですか?
A: 相続人申告登記を活用してください。期限内に自分が相続人であることを法務局に申し出ると、申請義務を履行したものとみなされます。登録免許税は不要で、単独で手続きできます。ただし、義務を果たしたとみなされるのは申出をした本人だけです。遺産分割が成立したら、その日から3年以内に相続登記が必要です。
Q: 相続登記をしないとどうなりますか?
A: 正当な理由なく期限を過ぎると、法務局から催告を受け、それでも対応しなければ10万円以下の過料の対象となります。過料の額は裁判所が決めます。過料のほかにも、相続登記をしないままでは不動産を売却したり担保に入れたりできず、相続が重なるほど相続人が増えて手続きが複雑になります。
Q: 相続登記は自分でできますか?費用はどのくらいですか?
A: 自分で申請することは可能です。費用は、登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)+戸籍等の取得実費です。司法書士に依頼する場合は別途報酬がかかるため、事前に見積もりを取ってください。
Q: 所有不動産記録証明制度とは何ですか?
A: 2026年2月2日に始まった制度で、登記名義人本人やその相続人などが法務局に請求すると、名義人が所有する不動産を一覧にした証明書を取得できます。手数料は検索条件1件・1通につき、書面請求で1,600円、オンライン請求で1,500円(郵送交付)または1,470円(窓口交付)です。被相続人がどこに不動産を持っているかわからない場合に、相続登記の漏れ防止に役立ちます。
Q: 相続人申告登記をした後、遺産分割が成立したらどうすればよいですか?
A: 遺産分割の日から3年以内に、遺産分割の内容を反映した相続登記を申請する必要があります(不動産登記法第76条の3第4項)。相続人申告登記はあくまで暫定的な措置です。
今すぐやることチェックリスト
- [ ] 相続登記が未了の不動産がないか確認する(所有不動産記録証明制度を活用)
- [ ] 期限を確認する(過去の相続は多くが2027年3月31日、新規相続は取得を知った日から3年以内)
- [ ] 戸籍謄本等の収集を開始する(広域交付は本人・配偶者・直系の分のみ。兄弟姉妹の分は本籍地へ請求)
- [ ] 遺産分割協議が未了の場合は相続人申告登記を検討する(申出をした本人の分だけ義務を果たしたことになる)
- [ ] 固定資産評価証明書を取得し、登録免許税を試算する(100万円以下の土地は免税措置あり。申請書に第84条の2の2第2項を記載)
- [ ] 法務局の手続案内を予約する(予約制の法務局が多いため事前確認を推奨)
- [ ] 遺産分割成立後は3年以内に相続登記を完了する(相続人申告登記で終わりにしない)
出典・参考資料:
- 法務省「相続登記の申請義務化について」
- 法務省「相続人申告登記について」
- 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」
- 法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」
- 法務省「所有不動産記録証明制度について」
- 法務省「スマート変更登記」
- 法務省「戸籍証明書等の広域交付について」
- 法務局「相続登記・遺贈の登記の申請をされる相続人の方へ(登記手続ハンドブック)」
- 不動産登記法第76条の2・第76条の3・第164条、民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)附則第5条、租税特別措置法第84条の2の2



