2025年4月施行の改正育児介護休業法により、育児・介護と仕事の両立支援のルールが大きく変わった。特に3歳〜就学前の子を養育する労働者への対応として、時短勤務だけでなくテレワーク等を含む複数の柔軟な働き方措置を用意する義務が事業主に課された。制度を正しく運用できていない企業は、行政指導や紛争のリスクがある。本記事では、制度の概要・申請手続き・会社の対応義務を人事担当者と申請する従業員の両方の視点で解説する。
2026年現在の時短勤務制度の概要
育児のための時短勤務
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 3歳未満の子を養育する労働者(雇用形態を問わない) |
| 内容 | 1日の所定労働時間を原則6時間に短縮 |
| 賃金 | 法律上の規定なし(実労働時間に応じた減額が一般的) |
2025年4月施行の主な変更点(改正育児介護休業法):
– 3歳〜小学校就学前の子を養育する労働者への柔軟な働き方確保措置が義務化
– 時短勤務が「3歳未満から就学前に延長された」のではなく、テレワーク・始業終業時刻変更など複数の措置の中から事業主が2つ以上を用意し、労働者が1つを選べる新制度が追加
– 3歳未満の時短勤務義務(従来制度)はそのまま継続
介護のための時短勤務
要介護状態の家族を介護する労働者は、次のいずれかを選択できる:
1. 所定労働時間の短縮(時短勤務)
2. フレックスタイム制
3. 始業または終業時刻の繰り上げ・繰り下げ
4. 介護サービス費の助成その他これに準ずる制度
対象期間:介護が必要な状態が続く限り(93日を超えて適用可能)
申請する側(従業員)の手続き
育児時短勤務の申請フロー
① 申請書の提出(開始予定日の1ヶ月前まで)
↓
② 会社の承諾確認(原則として拒否不可)
↓
③ 時短開始
↓
④ 期間終了または終了申出
申請書に記載すべき事項:
– 氏名・部署
– 申請の事由(子の氏名・生年月日)
– 時短勤務の開始日・終了予定日
– 希望する勤務時間(例:8:30〜15:30)
申請書の書式は法律で定められていないため、会社所定の様式を使う。書式がない場合は自作で構わないが、上記事項を網羅すること。
申請のタイミングと注意点
- 1ヶ月前までに申請が原則(就業規則で期限を定めている場合はそれに従う)
- 緊急の場合(早産など)は事後申請も認められる可能性があるが、事前に会社へ相談する
- 申請回数の制限:法律上、申請回数の上限は定められていない。期間終了前に延長・変更する場合は改めて申請する
会社(人事担当者)の対応義務
原則として拒否できないケース
3歳未満の子を養育する労働者からの時短勤務申請は、以下の場合を除き拒否できない。
拒否できる例外(要件を全て満たす場合のみ):
1. 雇用期間が1年未満の労働者
2. 週の所定労働日数が2日以下の労働者
3. 業務の性質または業務の実施体制に照らして、時短措置の適用が困難な業務に従事する労働者(※就業規則に定めが必要)
3の「困難な業務」の除外は就業規則への規定と労使協定が必要。現場判断だけで拒否することは許されない。
拒否した場合のリスク
- 都道府県労働局への申告・あっせん申請:労働者は行政機関に申告できる
- 是正指導・公表:一定規模以上の企業は社名公表の対象になりうる
- 民事訴訟:損害賠償請求のリスク(慰謝料・差額賃金等)
企業が整備すべき書類・規程
- [ ] 就業規則(育児・介護時短勤務規定を明記)
- [ ] 労使協定(除外対象業務を設定する場合)
- [ ] 申請書様式の整備・配布
- [ ] 時短勤務者の賃金・評価の取扱いルール
3歳〜就学前の「柔軟な働き方」措置(2025年施行)
2025年4月から、3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者に対して、企業は以下のうち少なくとも2つを措置として選択肢に用意する義務がある(そのうち1つを労働者が選べる):
- 始業時刻等の変更
- テレワーク等(月10日以上)
- 保育施設の設置運営等
- 就業しつつ育児を行う労働者を支援するための新たな休暇の付与(子の行事参加等)
- 所定労働時間の短縮措置(3歳未満に引き続き実施)
実務上のポイント:
– 2つ以上の選択肢を「制度として整備・周知」していることが必要
– 労働者は提示された選択肢の中から1つを選ぶ権利がある
– 利用を申し出た場合、会社は理由なく拒否できない
介護時短勤務の注意点
育児との違い
| 項目 | 育児 | 介護 |
|---|---|---|
| 開始1ヶ月前申請 | 必要 | 必要 |
| 1つの事由当たりの利用回数 | 法定の回数制限なし(期間終了まで継続利用可) | 利用回数制限なし |
| 期間 | 子の年齢まで | 介護が必要な間(制限なし) |
| 措置の種類 | 主に時短 | 時短・フレックス・時差出勤等から選択 |
介護休業との関係
介護休業(93日・3回分割可)とは別に、介護時短勤務は長期にわたって利用できる。介護休業が「職場に復帰するまでの短期集中対応」とするなら、介護時短勤務は「仕事と介護を両立させる継続制度」という位置づけだ。
よくある疑問
Q:時短勤務中に残業を命じることはできる?
A:原則としてできない。ただし、労使協定で「業務上やむを得ない場合に限り」残業を認める旨を定めることはできる。その場合でも、所定労働時間を超えた部分には割増賃金が必要。
Q:時短勤務中のボーナス・評価はどうなる?
A:法律上の規定はないが、「時短勤務を理由とした不利益な評価・処遇」は育児介護休業法違反になる可能性がある。実働時間に比例した評価基準は合理的とされるが、取扱いを就業規則・評価規程に明記することが望ましい。
Q:パート・有期雇用労働者も申請できる?
A:雇用形態を問わず申請できるが、会社が就業規則で除外を定めている場合は適用外になることがある。ただし、その場合は「育児介護休業等に関する労使協定」が必要。
まとめ
2025年改正育児介護休業法の施行で、時短勤務を中心とした育児・介護両立支援の枠組みが大幅に広がった。企業は就業規則の整備と周知が急務であり、従業員は制度の内容を正確に理解した上で適切なタイミングで申請することが重要だ。
申請・対応に迷った場合は、都道府県労働局の「雇用環境・均等部門」に無料相談窓口がある。
本記事は2026年4月時点の情報に基づいています。法改正の内容や手続きの詳細は変更される場合があります。個別の労務問題については社会保険労務士または都道府県労働局へご相談ください。



