はじめに―この補助金の位置づけ
「デジタル化・AI導入補助金2026」は、中小企業・小規模事業者等の労働生産性(働く時間あたりに生み出す付加価値)を上げるため、AIを含むITツール(ソフトウェア、サービス等)の導入費用を支援する補助金です。中小企業庁の概要資料(令和8年4月)によれば、令和7年度補正予算事業から、名称が「IT導入補助金」から「デジタル化・AI導入補助金」に変わりました。交付申請の受付は2026年3月30日に始まっています(公募要領・通常枠)。
この記事は2026年10月3日時点の公式資料に基づき、次の順で整理します。
- 5つの申請枠の補助率と補助上限額
- 通常枠の申請要件(賃上げ要件を含む)
- 加点・減点の項目と審査
- 申請から実績報告・効果報告までの流れ
- 現在の締切と、申請前の注意点
補助額・対象ツールの一覧から探したい場合はデジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)|申請方法・補助額・対象ツール解説を、AI・DX関連の補助金を横断して比べたい場合はAI・DX導入補助金2026まとめ|中小企業が使える補助金・助成金一覧を先に見ると全体像がつかめます。
第1章:5つの申請枠と補助率・補助上限額
2026年度は次の5つの枠があります(中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金2026の概要」令和8年4月、p.1、p.4〜8)。
| 枠 | 補助額(上限) | 補助率 | 主な対象 |
|---|---|---|---|
| 通常枠 | プロセス数1〜3つ:5万円〜150万円未満。4つ以上:150万円〜450万円以下 | 1/2以内(最低賃金近傍の事業者は2/3以内) | ITツールを導入して業務効率化やDXを進める |
| 複数者連携デジタル化・AI導入枠 | 基盤導入経費と消費動向等分析経費をあわせて3,000万円(消費動向等分析経費は50万円×グループ構成員数が上限)。事務費・専門家費は、(基盤導入経費+消費動向等分析経費)×10%に補助率2/3を乗じた額か200万円のいずれか低い額 | 基盤導入経費1/2〜3/4・4/5、消費動向等分析経費2/3以内、事務費・専門家費2/3以内 | 商店街など10者以上の中小・小規模事業者等が連携して導入 |
| インボイス枠(インボイス対応類型) | ITツールは1機能で50万円まで、2機能以上で350万円まで。PC・タブレット等10万円、レジ・券売機等20万円 | ITツール50万円以下の部分は3/4(小規模事業者は4/5)、50万円超〜350万円の部分は2/3。ハードウェアは1/2 | 会計・受発注・決済のITツールでインボイス制度に対応 |
| インボイス枠(電子取引類型) | 350万円以下 | 中小企業・小規模事業者等2/3以内、大企業1/2以内 | 発注者が受発注ソフトを導入し、取引先の受注者に無償でアカウントを渡す |
| セキュリティ対策推進枠 | 5万円〜150万円以下 | 中小企業1/2以内、小規模事業者2/3以内 | サイバーセキュリティお助け隊サービスの利用料(最大2年分) |
プロセスとは、ソフトウェアが持つ機能のうち、特定の業務の効率化に役立つ単位のことです(顧客対応・販売支援、会計・財務・経営など。公募要領 別紙2)。通常枠で補助額が150万円以上になるのは、プロセスを4つ以上含むITツールを選んだ場合です(公募要領 2-2(3)、2-3)。
実務ポイント
以前から「AI活用枠」「サプライチェーン連携枠」「小規模事業者特別枠」といった名前の枠が紹介されることがありますが、公式の概要資料と公募要領にこれらの枠はありません。AIを含むITツールは、通常枠などの既存の枠の中で補助対象になります。枠の名前は、必ず事務局ポータルサイト(https://it-shien.smrj.go.jp/)で確認してください。
通常枠の補助対象経費
通常枠で補助の対象になるのは、IT導入支援事業者が提供し、あらかじめ事務局に登録されたITツールの導入費用です(公募要領 2-2(1))。
- ソフトウェア:ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)
- オプション:機能拡張、データ連携ツール、セキュリティ対策に係る費用
- 役務:導入・活用コンサルティング、導入設定・マニュアル作成・導入研修、保守サポート。役務の補助対象経費は1交付申請あたり200万円が上限で、保守サポートはソフトウェアの利用範囲内で最大2年分です
補助対象外になるもの(公募要領 2-2(4))
– 補助金申請・報告に係る申請代行費
– 公租公課(消費税)
– 交通費、宿泊費
– リース・レンタル契約のITツール(サイバーセキュリティお助け隊サービスを除く)
– 中古品
– 対外的に無償で提供されているもの
– 交付申請時に利用金額が定められないもの
– 交付決定前に購入したITツール
チェックリスト:補助対象経費の確認
– [ ] 導入するITツールは、IT導入支援事業者が事務局に事前登録したものか
– [ ] 補助額150万円以上を狙う場合、プロセスを4つ以上含むツールか
– [ ] 見積に消費税や申請代行費が補助対象として入っていないか
– [ ] 導入するツールに比べて役務費が著しく高額になっていないか(公募要領の申請要件(タ))
第2章:通常枠の申請要件
申請できる事業者
通常枠の対象は中小企業・小規模事業者等です。主な業種ごとの中小企業の範囲は次のとおりです(公募要領 2-1-1(1))。資本金と従業員数は「どちらか一方を満たせばよい」という定義です。
| 業種 | 資本金・出資総額 | または | 常時使用する従業員数 |
|---|---|---|---|
| 製造業・建設業・運輸業 | 3億円以下 | または | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | または | 100人以下 |
| サービス業(ソフトウェア業等・旅館業を除く) | 5千万円以下 | または | 100人以下 |
| 小売業 | 5千万円以下 | または | 50人以下 |
このほか、医療法人・社会福祉法人・学校法人(従業員300人以下)、特定非営利活動法人なども対象に含まれます。全業種の一覧は公募要領 2-1-1(1)を確認してください。
小規模事業者の定義(インボイス枠の4/5、セキュリティ対策推進枠の2/3などで使われます。公募要領 2-1-1(1))
- 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く):常時使用する従業員が5人以下
- 宿泊業・娯楽業、製造業その他:常時使用する従業員が20人以下
- 医療法人、社会福祉法人、学校法人、NPO法人など業種分類⑨〜⑮の組織は、小規模事業者に該当しません
- 会社役員と個人事業主は「常時使用する従業員」に含まれません
申請要件(主なもの)
申請者は次の要件をすべて満たす必要があります(公募要領 2-1-1(2))。
- 日本国内で法人登記され、日本国内に本社と補助事業の実施場所がある法人、または日本国内に補助事業の実施場所がある個人であること
- 交付申請の直近月に、事業場内の最低賃金が地域別最低賃金以上であること
- gBizIDプライム(行政サービス共通のログインID)を取得していること。発行までおおむね2週間かかるため、早めの手続きが必要です(公募要領 別紙4①)
- IPAの「SECURITY ACTION」(情報セキュリティ対策の自己宣言制度)で「一つ星」または「二つ星」を宣言していること
- 交付申請時点の翌事業年度以降3年間の事業計画を立て、1年後に労働生産性を3パーセント以上、事業計画期間の年平均で3パーセント以上向上させること(IT導入補助金2023の通常枠(A・B類型)・デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)、またはIT導入補助金2024・2025の通常枠・複数社連携IT導入枠で交付決定を受けた事業者は、4パーセント以上)。労働生産性は「(営業利益+人件費+減価償却費)÷年間の事業者あたり総労働時間」で計算します
- 国や中小機構などの他の補助金等と重複する事業を、補助事業に含めないこと
- 訴訟や法令遵守の面で、補助事業の遂行に支障を与える問題を抱えていないこと
2025年の交付決定者への制限:IT導入補助金2025の通常枠・複数社連携IT導入枠で交付決定を受けた事業者(グループ構成員を含む)は、交付決定日から12カ月以内は、2026年の通常枠に申請できません(公募要領 3-2(4)(ア)の※)。
賃上げ要件
補助額によって、賃上げが「必須の要件」になる場合と「加点項目」にとどまる場合があります(公募要領 2-1-1(2)(テ)(ト)(ナ)、2-3【補足2】)。
- 補助額150万円以上を申請する場合:賃上げは必須要件です。事業計画期間で、1人あたり給与支給総額(非常勤を含む全従業員)の年平均成長率を3パーセント以上にし、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上にします。IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けた事業者は、給与支給総額の年平均成長率が3.5パーセント以上です。この賃上げ計画は、交付申請時点で従業員に表明しておく必要があります。
- 補助額150万円未満の場合:IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けていない事業者は、賃上げ計画が加点項目です。2022〜2025で交付決定を受けた事業者は、150万円未満でも賃上げが必須要件になり、給与支給総額の年平均成長率は3.5パーセント以上です。
- 150万円以上の要件を満たす場合でも、申請額を自主的に5万円以上150万円未満にすることはできます(公募要領 2-3 の注)。
- 未達の場合の返還(公募要領 2-1-1【補足1】、3-5):
- 事業場内最低賃金の目標が未達なら、補助金額を3で割り、未達となった年度以降の年数を掛けた額の返還を求められます(1年度目で未達なら全額、2年度目なら2/3、3年度目なら1/3)。
- 給与支給総額の目標が事業計画終了時点で未達なら、全部の返還を求められる場合があります。
- 返還が免除される条件は、2つの目標で異なります。事業場内最低賃金の目標が未達の場合は、付加価値額の増加率が年平均1.5パーセントに達しないときや、天災など責めに帰さない理由があるときは返還を求められません。給与支給総額の目標が未達の場合は、付加価値額が増えておらず、かつ3年の事業計画期間の過半数が営業利益赤字のときや、天災など責めに帰さない理由があるときに返還を求められません。返還額は交付額が上限で、加算金・延滞金は含みません。
- 賃上げ目標が必須の申請では、効果報告が期間内に出なかった場合も返還の対象です。
保険医療機関・保険薬局、介護サービス事業者、社会福祉法に基づく第一種・第二種社会福祉事業等を行う事業者、学校教育法に基づく学校などは、この賃上げ要件の適用外です((ニ))。2026年3月30日の改訂で、適用外の列挙から小規模事業者が削除されています。小規模事業者であることを理由に賃上げ要件を免れることはできません。
申請の対象外になる事業者
次のような事業者は申請できません(公募要領 2-1-2)。
- 大企業が株式の2分の1以上を所有する中小企業、3分の2以上を所有する中小企業など、いわゆる「みなし大企業」
- 直近3年分の課税所得の年平均額が15億円を超える事業者
- 親子会社や同一の代表者・住所の法人など「みなし同一法人」(1社のみ申請可)
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条各項に規定する営業を営む事業者
- 過去1年以内に労働関係法令違反で送検処分を受けた事業者
- 反社会的勢力に関係する事業者、宗教法人、法人格のない任意団体
- IT導入支援事業者として登録されている(登録しようとする)事業者
第3章:審査・加点・減点
交付申請は、事務局が審査したうえで、学識有識者を含む外部審査委員会の意見を聴いて採択が決まります(公募要領 3-3)。公募要領が示す主な審査項目は次の3つで、配点は公開されていません。
- 事業面:自社の経営課題を理解しているか、導入するITツールの機能が課題に合っているか、セキュリティ対策を進めているか
- 計画目標値:労働生産性の向上率
- 政策面:生産性向上・働き方改革に関する国の事業への取り組み、国が推進するセキュリティサービスの選定、賃金引上げへの取り組み
加点項目(主なもの)
公募要領 3-3(2)①には15項目が並びます。主なものは次のとおりです。
- クラウド製品、インボイス制度対応製品、「サイバーセキュリティお助け隊サービス」を選んでいる
- 賃上げ計画を立てて実行する(補助額・過去の交付決定の有無によって要件が異なる)
- 「IT戦略ナビwith」または中小機構「IT経営サポートセンター」の利用(IT経営サポートセンターは第6回公募回から加点。2026年8月1日以降に利用申込をし、交付申請日以前かつ各公募回の交付申請締切日の前月末日までに利用が確認できた場合が対象)
- デジタル化セカンドオピニオンの実施(第3回公募回から加点。確認者との面談を終えてから交付申請を出す)
- 令和7年度に「健康経営優良法人2026」に認定されている
- えるぼし・くるみん等の認定を受けている
- 令和6年10月〜令和7年9月に、地域別最低賃金以上〜令和7年度改定の地域別最低賃金未満で雇用する従業員が全従業員の30パーセント以上いる月が3か月以上ある(補助率2/3の適用条件と同じ)
- 事業場内最低賃金を令和7年7月の水準+63円以上にしている
加点を受けたのに要件を達成できなかった場合、効果報告で未達が報告されてから18カ月間、中小企業庁所管の補助金への申請で大幅に減点されます(公募要領【補足4】)。
減点措置
IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けた事業者や、同じ2026年度でインボイス枠に申請している事業者などは、審査上の減点があります。IT導入補助金2024・2025で交付決定を受けたソフトウェアとプロセスが完全に一致する場合は不採択です(公募要領 3-3(2)②)。
実務ポイント
加点・減点の項目は公募回によって追加・改訂されています。公募要領には2026年5月15日、8月28日の改訂履歴があります。申請する回の公募要領の最新版で、自分が該当する項目を確認してください。
第4章:申請から実績報告までの流れ
交付申請の進め方
申請者はIT導入支援事業者のサポートを受けて申請します(公募要領 3-2(1))。
- 事務局ポータルサイトや公募要領を読み、IT導入支援事業者とITツールを選ぶ(この段階では契約しない)
- gBizIDプライムを取得する
- IT導入支援事業者から申請マイページへの招待を受け、マイページを開設して申請者情報を入力する
- IT導入支援事業者が「IT事業者ポータル」で事業計画とITツール情報を入力する
- 申請者がマイページでITツール情報と事業計画を確認し、宣誓したうえで、事務局へ交付申請を提出する
申請は電子上のマイページで行います。1法人・1個人事業主につき、通常枠の申請は1回のみで、同時に複数は申請できません。不採択になった場合や、交付決定後に実績報告を経て補助金を受け取るまでの間に取り下げた場合は、次回以降の締切回に申請できます(公募要領 3-2(4))。インボイス枠とセキュリティ対策推進枠は、通常枠と同時に申請できます。
交付申請に必要な書類
提出書類は、法人は3種類、個人事業主は4種類です。代替書類は認められません(公募要領 3-2(2))。
| 用途 | 法人 | 個人事業主 |
|---|---|---|
| 実在の証明 | 履歴事項全部証明書(発行から3カ月以内) | 運転免許証等、または住民票(発行から3カ月以内) |
| 事業実態の確認 | 直近分の法人税の納税証明書(その1またはその2) | 直近分の所得税の納税証明書、直近分の確定申告書の控え |
| 財務状況の確認 | 直近分の貸借対照表及び損益計算書 | 所得税の青色申告決算書または収支内訳書 |
補助率2/3の適用や一部の加点を受ける場合は、賃金状況報告シートなどの追加書類が必要です。
採択後:事業の実施と実績報告
- 交付決定前にITツールを契約・発注すると、補助対象になりません。 交付決定後に契約・発注し、納品・導入と請求・支払いを行います(公募要領 3-4(1))。
- 支払いは原則として銀行振込とクレジットカード1回払いだけです。現金払いは認められません(3-4(2))。
- 実績報告では、請求書・請求明細書、補助事業者名義の口座からの支払いの証憑などを出します。確定検査を経て補助金の額が確定し、事務局から補助事業者へ直接交付されます(3-1、2-3)。ITツールの代金はいったん自社で支払うため、資金繰りの計画が必要です。
- 実施期間は、公募要領では「交付決定日から6ヶ月間程度」です(3-4)。
効果報告
補助金の交付後は、生産性向上の数値目標などを事務局に報告します。公募要領 3-5 の効果報告期間は次のとおりです。
| 区分 | 効果報告期間 |
|---|---|
| 事業計画期間前 | 2027年3月〜(ITツールを継続的に活用していることの報告) |
| 1年度目 | 2028年4月〜2029年1月 |
| 2年度目 | 2029年4月〜2030年1月 |
| 3年度目 | 2030年4月〜2031年1月 |
賃上げ目標が必須の申請で効果報告が期間内に出なかった場合や、賃上げ目標の要件を満たさないと確認された場合は、補助金の全部または一部の返還を求められます(3-5(2))。導入したITツールを解約・利用停止した場合は辞退の手続きが必要で、返還と加算金が生じることがあります(3-5(1))。補助対象事業の書類は、事業完了の日の属する年度の終了後5年間保管します(公募要領 4(カ))。
第5章:締切と過去の実績
現在の締切(2026年10月3日時点)
事務局の事業スケジュールページ(https://it-shien.smrj.go.jp/schedule/)では、次のように掲載されています。
| 枠 | 締切日 | 交付決定日 | 事業実施期間・実績報告期限 |
|---|---|---|---|
| 通常枠 | 2026年10月30日(金)17:00 | 2026年12月10日(木)(予定) | 交付決定〜2027年5月31日(月)17:00(予定) |
| インボイス枠(インボイス対応類型) | 同上 | 同上 | 同上 |
| インボイス枠(電子取引類型) | 同上 | 同上 | 同上 |
| セキュリティ対策推進枠 | 同上 | 同上 | 同上 |
| 複数者連携デジタル化・AI導入枠 | 同上 | 同上 | 同上 |
全枠とも、2026年10月30日(金)17:00が、現在受付中の最終締切として掲載されています。
- 事務局ページには「次締切分」の見出しが並びますが、現在の締切が何次にあたるかは、表示中のタブから読み取れるだけで、本記事では回の番号を断定しません。
- 過去の締切回の日付は、ページ上に表示されていません。
- 通常枠・インボイス枠・セキュリティ対策推進枠には、さらに後ろの回の項目も並んでいますが、日付は公開されていません。事務局ページには「確定している募集回のスケジュールのみ公表しております。以降のスケジュールは随時更新いたします」とあります。
- 締切日は17:00に事務局への申請・提出ができなくなります。締切直前は接続が混み合うため、余裕をもって提出してください。
- 公募要領には「制度内容・スケジュール等は変更する場合がある」との注記があります。
実務ポイント
gBizIDプライムの発行には、おおむね2週間かかります。10月30日の締切に間に合わせるには、未取得の場合は早めに手続きを始める必要があります。IT導入支援事業者による申請マイページへの招待や、事業計画の入力にも日数がかかります。
過去の申請・採択件数
概要資料(p.9)には、前身のIT導入補助金の実績が載っています。2026年度の予算総額や採択件数の見込みは、今回確認した公式資料には載っていませんでした。
| 年度 | 全体の申請件数 | 全体の採択件数 | 通常枠の申請件数 | 通常枠の採択件数 |
|---|---|---|---|---|
| IT導入補助金2024 | 71,767件 | 50,175件 | 25,140件 | 16,540件 |
| IT導入補助金2025 | 80,439件 | 35,202件 | 23,672件 | 8,936件 |
通常枠の採択件数を申請件数で割ると、2024年度が約65.8パーセント、2025年度が約37.7パーセントです(申請・採択の件数は概要資料p.9の数字から計算)。年度によって採択の水準が変わるため、「出せば通る」とは考えないほうが安全です。
第6章:申請前の注意点
よくあるミスと対処法
ミス1:交付決定前に発注・契約してしまう
公募要領が明記する要件です。交付決定前に契約・発注したITツールは補助対象になりません。交付決定の通知を受けるまで、発注・契約をしないでください。
ミス2:支払い方法の誤り
支払いは銀行振込かクレジットカード1回払いに限られます。現金払いや分割払いは補助金の交付が受けられません。
ミス3:賃上げ計画を従業員に表明していない
交付申請時に表明したと申告しながら、交付決定後に表明していないことが発覚した場合、交付決定が取り消されます(公募要領 2-1-1(2)(ニ)の直後の※)。
ミス4:効果報告の未提出
効果報告を期間内に出さなかった場合、賃上げ目標が必須の申請では補助金の返還を求められます。社内の担当者を決めておきましょう。
チェックリスト:申請前の最終確認
– [ ] gBizIDプライムでログインできるか
– [ ] SECURITY ACTIONで「一つ星」または「二つ星」を宣言したか
– [ ] 履歴事項全部証明書(3カ月以内)・納税証明書・貸借対照表・損益計算書がそろっているか
– [ ] 補助額150万円以上の場合、賃上げ計画を従業員に表明したか
– [ ] 導入するITツールは登録済みで、交付決定前に契約していないか
– [ ] 申請する締切回と、事務局ページに載っている日付が一致しているか
よくある質問(FAQ)
補助額150万円以上を申請するなら必要です。150万円未満でも、IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けた事業者は必須です。2026年3月30日の公募要領改訂で、賃上げ要件の適用外の列挙から小規模事業者が削除されました。ただし、保険医療機関・保険薬局、介護サービス事業者などは、適用外のままです(公募要領 2-1-1(2)(ニ))。
通常枠の公募要領の申請要件(2-1-1(2))に、経営力向上計画の認定は含まれていません。経営力向上計画は中小企業等経営強化法第17条(経営力向上計画の認定)に基づく別の制度です。公募要領で経営力向上計画の申請が出てくるのは、別紙3(中小企業庁関連事業データ利活用ポリシー)が「行政手続」の例として挙げる箇所のみです。
国や中小機構その他の独立行政法人の他の補助金等と重複する事業を、補助事業に含めることはできません(公募要領 2-1-1(2)(キ))。通常枠とインボイス枠・セキュリティ対策推進枠は同時に申請できますが、オプション・役務は二重計上になりやすく、不適切な行為があれば交付決定の取消しや全額返還もあり得ます(3-2【補足3】)。ほかの制度との比較は、省力化・自動化の設備投資なら中小企業省力化投資補助金でAI・自動化を導入する完全ガイド、販路開拓や小規模な設備更新なら小規模事業者持続化補助金2026、自治体独自の制度は【2026年度版】地方自治体の主要補助金制度と申請のポイント完全ガイドを参照してください。
事務局に登録されたIT導入支援事業者から、申請者が選びます。補助金の申請・報告に係る申請代行費は補助対象外です。また、導入するITツールに比べて役務費用が著しく高額でないことが申請要件に入っています(公募要領 2-2(4)(ウ)、2-1-1(2)(タ))。
各締切回で不採択となった場合は、次回以降の締切までに交付申請ができます(公募要領 3-2(4)(イ))。不採択の理由は、事務局から通知する事項以外は開示されません(3-2(5))。
まとめ
2026年度のデジタル化・AI導入補助金は、通常枠で補助額5万円〜450万円(補助率1/2以内)を軸に、インボイス枠・セキュリティ対策推進枠・複数者連携枠が並ぶ5枠の構成です。補助額が150万円以上になると、賃上げ計画の表明と実行が必須になります(2022〜2025年の交付決定者は150万円未満でも必須)。
2026年10月3日時点で、事務局ページが現在受付中の締切として掲載しているのは、全枠とも2026年10月30日(金)17:00です。次の優先事項を整理してください。
- gBizIDプライムの取得(発行までおおむね2週間)
- SECURITY ACTIONの宣言(一つ星または二つ星)
- IT導入支援事業者の選定とITツールの相談(契約は交付決定後)
- 賃上げ計画の検討(補助額150万円以上は必須。2022〜2025年の交付決定者は150万円未満でも必須)
- 公募要領の最新版の確認(加点・減点項目は回ごとに変わる)
税務上の取り扱いや資金繰りは、顧問税理士や取引金融機関にご相談ください。
参照した公式資料
- 中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金2026の概要」(令和8年4月):https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r8/digital_ai_summary.pdf
- デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠):https://it-shien.smrj.go.jp/pdf/it2026_koubo_tsujyo.pdf
- 事務局ポータルサイト 事業スケジュール:https://it-shien.smrj.go.jp/schedule/
- 中小企業等経営強化法第17条(e-Gov法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000018
本記事は2026年10月3日時点の公式資料に基づいて作成しています。制度の詳細・締切・最新情報は、必ず事務局ポータルサイトと公募要領でご確認ください。



