高額療養費制度 2026年8月改正|年収別の自己負担上限はいくら増える?シミュレーション

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高額療養費制度 2026年8月改正|年収別の自己負担上限はいくら増える?シミュレーション
目次▼

最終更新日: 2026年9月1日(区分エの年間上限53万円を追加、法律と政令の関係を整理、時点表記を更新)

【結論】 2026年8月1日から、70歳未満を対象に高額療養費制度の月額自己負担上限が引き上げられている。年収約370〜770万円(区分ウ)の場合、月額上限は80,100円から85,800円へ+5,700円。同時に、長期療養者を守る年間上限(区分ウ53万円)が新設された。多数回該当(4回目以降の軽減)は全区分で据え置き。本記事は厚生労働省・全国健康保険協会の一次ソース(社会保障審議会医療保険部会資料・令和8年法律第31号・協会けんぽ「高額療養費」)をもとに執筆している。2027年8月からの第2段階(所得区分の細分化)の数値は政令で確定予定であり「〜予定」と明記している。


この記事でわかること

  • 2026年8月1日から何がいくら変わるか(月額上限・年間上限・多数回該当)
  • 年収別シミュレーション(年収370万・770万・1,160万円のケース)
  • 2027年8月の第2段階(所得区分の細分化)の方向性
  • 限度額適用認定証・マイナ保険証での手続き方法
  • FAQ:よくある疑問6問

制度の基本的な仕組みと所得区分ごとの計算方法は高額療養費制度2026|自己負担の上限額を所得別に計算する方法で先にまとめているので、あわせて参照してほしい。


§1 改正の全体像|2段階施行のスケジュール

1-1 なぜ今、改正するのか

高額療養費制度は1973年に創設され、一月の医療費自己負担に上限を設けることで家計を守る役割を担ってきた。しかし近年、高額薬剤の普及や高齢化により医療費総額が年々増加し、その財源は現役世代の保険料に大きくのしかかっている。

制度の持続可能性を確保する観点から検討が重ねられ、2025年12月16日の「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」の基本的な考え方を踏まえて、2026年5月29日に「健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号)」が成立、同年6月5日に公布された。

この法律で明確化されたのは、「高額療養費の支給要件等を定める際には、特に長期療養者の家計への影響が適切に考慮されるようにする」という考慮事項であり、この部分の施行日が2026年8月1日である。一方、270,300円などの具体的な限度額の金額そのものは健康保険法施行令(政令)で定められるもので、法律の成立が金額を直接決めたわけではない。2026年8月1日から新しい限度額が実際に適用されていることは、全国健康保険協会が「令和8年8月〜令和9年7月」を対象期間とする現行の表としてこの額を掲載していることから確認できる。

出典: 厚生労働省「第221回国会提出法律案」(https://www.mhlw.go.jp/stf/topics/bukyoku/soumu/houritu/221.html)、内閣法制局公布法律(https://www.clb.go.jp/recent-laws/promulgation_law/id=5122)、厚生労働省「健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号)の成立について」(第212回社会保障審議会医療保険部会 資料1・令和8年6月18日)

1-2 2段階の施行スケジュール

改正は2段階で実施される。

施行日 内容
2026年8月1日(第1段階) 月額上限引き上げ・年間上限新設・多数回該当は据え置き
2027年8月(第2段階) 所得区分を現行5区分から13区分へ細分化・年収200万円未満の多数回該当を引き下げ

2段階に分けた理由は、急激な負担増を避けながら段階的に応能負担の精度を高めるためだ。低所得者(住民税非課税世帯)の引き上げ幅を最小限に抑える配慮も盛り込まれている。


§2 現行制度と改正後の比較表(70歳未満)

2-1 月額自己負担上限の変化(第1段階:2026年8月〜)

70歳未満の所得区分は現行の5区分が維持され、各区分の月額上限が引き上げられる。

所得区分 年収目安 改正前(〜2026年7月) 改正後(2026年8月〜) 増額
区分ア 約1,160万円以上 252,600円+(医療費−842,000円)×1% 270,300円+(医療費−901,000円)×1% +17,700円
区分イ 約770〜1,160万円 167,400円+(医療費−558,000円)×1% 179,100円+(医療費−597,000円)×1% +11,700円
区分ウ 約370〜770万円 80,100円+(医療費−267,000円)×1% 85,800円+(医療費−286,000円)×1% +5,700円
区分エ 約370万円未満 57,600円 61,500円 +3,900円
区分オ 住民税非課税 35,400円 36,900円 +1,500円

出典: 厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」(第209回社会保障審議会医療保険部会資料 https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001621844.pdf)、同参考資料( https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001621877.pdf)、全国健康保険協会「高額療養費」(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/high_cost_medical_expenses/002/)

ポイント: 引き上げ率は区分ア〜エがいずれも約7%(6.8〜7.1%)でほぼ揃えられている一方、住民税非課税世帯(区分オ)だけは約4.2%に抑えられており、低所得世帯への急激な負担増を避ける配慮がある。

2-2 多数回該当(4回目以降の軽減)は全区分で据え置き

「多数回該当」とは、直近12か月に同一被保険者・同一保険者で高額療養費の支給を3回受けた翌月(4回目)以降、限度額がさらに低く設定される制度だ(月数のカウントは世帯単位ではない)。長期療養者の継続的な負担を軽減する、セーフティネットとしての重要な役割を担っている。

今回の改正では、2026年8月時点での多数回該当の上限額は全区分で据え置きとなった。急激な負担増から長期療養者を守るための配慮だ。

所得区分 多数回該当の上限(据え置き)
区分ア(約1,160万円以上) 140,100円
区分イ(約770〜1,160万円) 93,000円
区分ウ(約370〜770万円) 44,400円
区分エ(約370万円未満) 44,400円
区分オ(住民税非課税) 24,600円

ただし、年収約200万円未満(標準報酬月額15万円以下)の課税世帯については2027年8月(第2段階)から多数回該当の上限を44,400円から34,500円へ引き下げ(約22%の引き下げ)する方向が示されている(詳細は政令で確定予定)。低所得者の長期療養負担を軽減する逆の配慮だ。

出典: 厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」(第209回社会保障審議会医療保険部会 https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001621844.pdf)

2-3 年間上限額の新設(2026年8月1日〜)

従来の制度には月単位の上限はあるが、年間の上限は存在しなかった。年間上限がないと、月ごとには上限に達しないが12か月累積すると多大な負担になるケースが生じていた(例:抗がん剤の外来治療が毎月続く場合など)。今回の改正で年間上限額が新設された。

年間とは2026年8月〜2027年7月を1年とカウントする(以降は8月〜翌7月の12か月)。

所得区分(年収目安) 年間上限(2026年8月〜)
区分ア(約1,160万円以上) 約168万円
区分イ(約770〜1,160万円) 約111万円
区分ウ(約370〜770万円) 約53万円
区分エ(標準報酬月額26万円以下=年収約370万円未満) 53万円
区分オ(住民税非課税) 29万円

注: 「標準報酬月額」は、健康保険料・厚生年金保険料を計算するために毎月の給与を段階(等級)で区切った金額のこと。「約」は「+医療費の1%」部分が実際の医療費によって変動するため(区分エ・オは定額のため「約」は付かない)。出典: 全国健康保険協会「高額療養費」(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/high_cost_medical_expenses/002/)、厚生労働省資料(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001621844.pdf)

※ 区分エのうち、標準報酬月額が15万円以下であることが確認できた方は、2026年8月〜2027年7月の年間上限が41万円(53万円ではなく)となる。この41万円分の払い戻し(償還払い=いったん窓口で支払い、後日返金される方式)は2027年8月以降に行われる。原文: 「標準報酬月額が15万円以下であることが確認できた方は、年間上限41万円を適用し、令和9年8月以降に償還払いします」(全国健康保険協会)。

年間上限を超えた分は後日払い戻しが受けられる(払い戻し申請方法は§5で解説)。長期入院や複数回の手術が重なる高額医療ケースで特に恩恵が大きい。


§3 年収別シミュレーション|自己負担はいくら増える?

シミュレーションは70歳未満の被用者(会社員・公務員等)を前提とする。実際の負担額は、医療費の総額・保険の種類(健保・国保)・世帯の状況によって異なる。計算式で総医療費から差し引く控除額(901,000円・597,000円・286,000円等。総医療費からこの額を差し引いた残りの1%が月額上限に上乗せされる)は全国健康保険協会「高額療養費」(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/high_cost_medical_expenses/002/)に掲載されている数値にもとづく。所得税の「基礎控除」とは別の制度上の金額である。

シミュレーション①:年収約600万円(区分ウ:年収約370〜770万円)で月100万円の医療費が発生した場合

月100万円(総医療費)の治療を受けた場合、3割負担なら自己負担額は30万円だが、高額療養費制度が適用される。

計算式(区分ウ): 月額上限 = 上限定額 +(総医療費 − 控除額)× 1%

時期 計算 月額自己負担
改正前(〜2026年7月) 80,100円+(1,000,000円−267,000円)×1% = 80,100円+7,330円 87,430円
改正後(2026年8月〜) 85,800円+(1,000,000円−286,000円)×1% = 85,800円+7,140円 92,940円
増加額 — +5,510円

※ 総医療費が変わると「+1%」部分も変わるため、定額増加分(+5,700円)と実際の差額は若干異なる。

年間上限(区分ウ:53万円)との関係:

年間上限とは、患者本人が実際に支払った自己負担額(高額療養費として払い戻しを受けた後の自己負担分)の年間累計が上限に達した場合に、超過分を後日払い戻す仕組みだ。月額上限を毎月超えるほどの高額治療が12か月にわたって続いた場合、自己負担額の年間累計が53万円を超えたところで年間上限が発動し、超過分が払い戻される。

年間上限の新設によって、12か月単位で高額治療が続く長期療養者は、改正後も年間の自己負担が53万円以内に抑えられる恩恵がある。

シミュレーション②:年収約370万円(区分エ)で月30万円の医療費が発生した場合

区分エは定額制(医療費の1%加算なし)。

時期 月額自己負担
改正前(〜2026年7月) 57,600円
改正後(2026年8月〜) 61,500円
増加額 +3,900円

月3,900円の増加は、年間では約4.7万円の負担増となる。一方で区分エには年間上限53万円(標準報酬月額15万円以下の場合は41万円)が新設されているため、長期療養の場合は年間の自己負担が一定額で頭打ちになる恩恵がある。

シミュレーション③:年収約1,160万円以上(区分ア)で月300万円の医療費が発生した場合

高額の治療(がんの免疫チェックポイント阻害薬等)が必要になったケース。

時期 計算 月額自己負担
改正前(〜2026年7月) 252,600円+(3,000,000円−842,000円)×1% = 252,600円+21,580円 274,180円
改正後(2026年8月〜) 270,300円+(3,000,000円−901,000円)×1% = 270,300円+20,990円 291,290円
増加額 — +17,110円

年収1,160万円以上の高所得層は月額負担増が最も大きく、年間では約20.5万円の増加となる。ただし、同区分の年間上限(約168万円)も適用されるため、年間を通じて非常に高額の医療を受け続けた場合には年間上限で救済される。

シミュレーション④:多数回該当が適用される場合(区分ウ)

同一被保険者・同一保険者で12か月以内に4回目以降の高額療養費支給が発生した場合、多数回該当の限度額(44,400円)が適用される(保険者が変わった場合や、被保険者から被扶養者に変わった場合は月数が通算されない)。

時期 4回目以降の月額上限
現行 44,400円
改正後(2026年8月〜) 44,400円(据え置き)

長期にわたって治療が続く患者にとって、多数回該当の据え置きは重要な保護措置だ。たとえば月100万円の治療が12か月続いた場合、4か月目以降は月44,400円の上限が適用されるため、12か月の累積負担は大幅に抑えられる。

自己負担額を単純に積み上げた場合で見ると、1〜3か月目は区分ウの通常月額上限92,940円(改正後)が続くため3か月で278,820円、4か月目以降は多数回該当の44,400円が加わっていく。この積み上げでは、年間上限53万円(530,000円)に12か月を待たずおよそ9か月目には達する計算になる。年間上限は、こうした長期療養者の負担が際限なく積み上がらないよう歯止めをかける役割を担っている。

ただし、これは自己負担額を単純に積み上げた場合の目安であり、月額上限と年間上限を組み合わせる際の実際の適用順序は一次ソースで確認できていない(下記【注意】参照)。「およそ何か月目」の断定ではなく、12か月より早く年間上限に達しうるという方向性として理解してほしい。


§4 第2段階:2027年8月の所得区分細分化

4-1 細分化の背景

現行の区分ウ(年収約370〜770万円)には、年収370万円の人と年収770万円の人が同じ区分に入っている。所得が1段階変わるだけで限度額が2倍程度に跳ね上がる「崖」が問題とされてきた。

2027年8月からは現行の5区分を13区分に細分化し、所得に応じたよりきめ細かい負担設計にする。

4-2 第2段階の主な方向性

13区分の具体的な金額は政令で確定予定だ(2026年9月時点)。厚生労働省比較表(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001661792.pdf)のR9.8〜列に記載されている数値を以下に示す(現行5区分を統合せず、13区分すべてをそのまま掲載する)。

所得区分(R9.8〜参考) 標準報酬月額 月額上限(厚労省比較表・政令確定前)
約1,650万円〜(最高区分) 127万円〜 342,000円+医療費の1%
約1,410〜約1,650万円 103〜121万円 303,000円+医療費の1%
約1,160〜約1,410万円 83〜98万円 270,300円+医療費の1%
約1,040〜約1,160万円 71〜79万円 209,400円+医療費の1%
約950〜約1,040万円 62〜68万円 194,400円+医療費の1%
約770〜約950万円 53〜59万円 179,100円+医療費の1%
約650〜約770万円 44〜50万円 110,400円+医療費の1%
約510〜約650万円 36〜41万円 98,100円+医療費の1%
約370〜約510万円 28〜34万円 85,800円+医療費の1%
約260〜約370万円 20〜26万円 69,600円
約200〜約260万円 16〜19万円 65,400円
〜約200万円 〜15万円 61,500円
住民税非課税【70歳未満】 — 36,900円

13区分に細分化されることで、現行の区分ウ(年収約370〜770万円、標準報酬月額28〜50万円)が3つの区分(約370〜約510万円/約510〜約650万円/約650〜約770万円)に分かれるなど、所得の「崖」が緩和される。区分ア・イ・エも同様にそれぞれ3区分へ分かれ、住民税非課税の1区分と合わせて13区分になる。

【重要】 上記は厚労省比較表の審議会資料段階の数値であり、正式な政令・告示での確定が必要。施行前(2027年8月)に厚生労働省の最新資料で確認すること。

出典: 厚生労働省「高額療養費制度について(参考資料)」比較表(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001661792.pdf)

4-3 年収200万円未満の多数回該当引き下げ(2027年8月〜)

現行および2026年8月時点では44,400円の多数回該当上限を、年収約200万円未満(標準報酬月額15万円以下)の課税世帯については2027年8月から34,500円(約22%の引き下げ)へ引き下げる方向が示されている。低所得者の長期療養負担をさらに軽減する措置だ(詳細は政令確定予定)。


§5 申請・手続き|改正後の窓口対応

5-1 現物給付の2つの方法

高額療養費は原則として「いったん自己負担分を全額支払い、後日払い戻しを受ける」方式だが、あらかじめ準備することで窓口での支払いを限度額以内に抑える(現物給付)ことができる。

方法①:マイナ保険証を使う(事前申請不要)

オンライン資格確認を導入している医療機関では、マイナ保険証を提示し「限度額情報の提供」に同意するだけで自動的に限度額が適用される。限度額適用認定証の申請は不要だ。

  • 対応医療機関: オンライン資格確認を導入済みの病院・診療所・薬局(2023年以降急速に普及)
  • 手続き: カード提示+同意のみ
  • 注意点: 医療機関がオンライン資格確認未導入の場合は方法②が必要

方法②:限度額適用認定証を取得・提示する

オンライン資格確認に対応していない医療機関では、限度額適用認定証を事前に取得して窓口に提出する。申請先は加入保険によって異なる(協会けんぽ・健保組合・市区町村)。

2026年8月の改正後も申請窓口・手順に変更はないが、2026年8月以降に交付される認定証の有効期限は最長2027年7月31日までに短縮される点に注意したい(2027年8月の所得区分細分化に伴う措置。Q3参照)。改正後は月額上限が引き上げられるため、認定証を使って現物給付を受ける重要性は変わらない。認定証の申請手順・有効期間・更新方法については、高額療養費制度の基本と申請手続きで詳しく解説している。

出典: 全国健康保険協会「限度額適用認定証」(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/high_cost_medical_expenses/001/index.html)

5-2 後日払い戻しを受ける場合

限度額適用認定証の申請が間に合わなかった場合や、申請しなかった場合は、自己負担限度額を超えた分を後日申請で払い戻せる。

項目 内容
申請先 加入している健康保険(協会けんぽ・健保組合・市区町村)
申請期限 診療月の翌月1日から2年以内
必要書類 診療を受けた月の医療費領収書(保険者によって異なる)
支払い時期 申請から約3か月後(保険者によって異なる)

5-3 年間上限の払い戻し手続き(2026年8月〜)

年間上限を超えた場合の払い戻し手続きについて、全国健康保険協会は「年間の高額療養費支給申請書兼自己負担額証明書交付申請書」による申請を案内しており、申請の受付は2027年8月から開始する(全国健康保険協会「高額療養費」https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/high_cost_medical_expenses/002/)。詳細な運用は加入している健康保険(協会けんぽ・健保組合・市区町村等)によって異なる場合があるため、確認してほしい。

なお、年間上限の計算期間は「8月〜翌年7月」の12か月間が基本とされている。


§6 FAQ|よくある疑問

Q1. 2026年8月の改正は自動的に適用されますか?

A. 月額上限の変更は自動的に適用される。ただし、マイナ保険証か限度額適用認定証を使って現物給付(窓口での支払い上限を限度額内に抑える)を受けたい場合は、事前の手続きが必要だ(§5参照)。後日払い戻しの場合も申請が必要で、自動的に振り込まれるわけではない。

Q2. 70歳以上の方の上限額はどう変わりますか?

A. 70歳以上(一般・現役並み所得区分)についても、本記事と同じ2026年8月・2027年8月の2段階で見直しが行われている。ただし70歳以上は「個人ごと(通院)」「世帯ごと(入院を含む)」という70歳未満にはない区分立てがあり、本記事が対象とする70歳未満とは構造が異なるため、本記事では扱っていない。70歳以上の方の限度額は、全国健康保険協会「高額療養費」(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/high_cost_medical_expenses/002/)の「70歳以上の方の区分」に掲載されているので、そちらを確認してほしい。

Q3. 限度額適用認定証はいつまで使えますか?

A. 有効期間は申請月の初日から最長1年間。ただし2026年8月以降に交付される分は、最長でも2027年7月31日までに短縮される。2027年8月に所得区分が13区分へ細分化されるためで、その後も必要な場合は2027年8月以降に改めて申請することになる。低所得者(住民税非課税世帯等)向けの「限度額適用・標準負担額減額認定証」も同様に、申請月の初日から最初の7月末日が有効期限だ。マイナ保険証を使えば認定証そのものが不要になるため、更新忘れを防ぐ意味でもマイナ保険証の活用が推奨されている。

原文: 「令和9年8月には高額療養費の制度改正に伴う被保険者の所得区分の見直しが予定されているため、令和8年8月より交付される限度額適用認定証の有効期限は、最長で令和9年7月31日までとなります。その後も必要な場合は、令和9年8月以降に新たにご申請いただきますようお願いいたします」(全国健康保険協会「限度額適用認定証」)

Q4. 多数回該当は何回目から適用されますか?

A. 直近12か月以内に高額療養費が支給された月が3か月以上あれば、4か月目以降に多数回該当の低い上限額が適用される。「直近12か月」は申請月から遡った12か月間で、同一被保険者・同一保険者単位でカウントされる(世帯合算とは別の仕組み。世帯合算は同じ月の自己負担額を家族分まとめて限度額判定する制度で、多数回該当の月数カウントには使わない)。転職・退職で保険者が変わったときや、被保険者から被扶養者に変わったときは月数が通算されないため、長期療養中に加入先が変わる場合は要注意だ。2026年8月以降も多数回該当の上限額は据え置き(区分ウ:44,400円など)のため、長期療養者は引き続き活用できる。

出典: 全国健康保険協会「高額療養費」(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/high_cost_medical_expenses/002/)

Q5. 年間上限はいつから計算が始まりますか?

A. 2026年8月が制度開始月であるため、最初の年間上限の計算期間は2026年8月〜2027年7月の12か月間となる。月ごとの限度額は超えない(高額療養費未支給)が、12か月の累積で年間上限を超えた場合に払い戻しが受けられる。ただし年間上限の払い戻し申請の受付は2027年8月から開始する(全国健康保険協会)。

Q6. 2027年8月の第2段階(所得区分細分化)で自分の負担はいくらになりますか?

A. 第2段階の詳細は政令で確定予定のため(2026年9月時点)、具体的な金額は断言できない。現在の区分ウ(年収約370〜770万円)に該当する方は、2027年8月以降は年収に応じてより細かい区分に振り分けられ、年収が高いほど上限額が現在より増える見込みだ。確定情報は厚労省の公式発表(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html)で確認してほしい。


§7 まとめ|改正のポイントを整理

高額療養費制度の2026年8月改正は、大きく3点に整理できる。

変わること(2026年8月〜)
1. 月額自己負担上限の引き上げ: 区分別に1,500〜17,700円増(住民税非課税→高所得者の順)
2. 年間上限の新設: 区分ウで年間53万円、区分アで年間168万円が上限に(長期療養者への恩恵)
3. 多数回該当の据え置き: 長期療養者への急激な負担増を回避

変わらないこと(2026年8月時点)
– 多数回該当の上限額(44,400円等)は据え置き
– 70歳未満の所得区分は5区分を維持(細分化は2027年8月〜)

2027年8月からの変化
– 所得区分が5→13区分に細分化
– 年収約200万円未満(標準報酬月額15万円以下)の多数回該当が44,400円→34,500円(約22%の引き下げ)へ(予定)

月額負担が増える一方で、年間上限の新設により長期・反復的な治療が必要な患者にとっては年間トータルで見ると負担が軽減されるケースもある。自分の所得区分と年間上限額を確認した上で、マイナ保険証の活用や限度額適用認定証の取得を検討してほしい。

現行制度の上限額の計算方法や使い方については、高額療養費制度2026|自己負担の上限額を所得別に計算する方法も参照してほしい。


【免責事項】 本記事は2026年9月1日時点の公表情報をもとに執筆している。高額療養費制度の改正内容は法律(令和8年法律第31号)として成立・公布済みであり、2026年8月1日からの月額上限・年間上限(区分ア〜オ)は全国健康保険協会の公表資料で確認できる。ただし、第2段階(2027年8月)の所得区分細分化の具体的な金額は政令・告示で確定予定であり、今後変更される可能性がある。本記事の内容は情報提供を目的としており、個別の医療費・保険給付に関する判断は加入している健康保険や厚生労働省の最新情報を必ず確認してほしい。健康保険の給付に関する最終的な判断は保険者(協会けんぽ・健保組合・市区町村等)が行う。


参考一次ソース
– 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html
– 厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」(第209回社会保障審議会医療保険部会 資料): https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001621844.pdf
– 厚生労働省「高額療養費制度について(参考資料)」(第209回社会保障審議会医療保険部会): https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001621877.pdf
– 厚生労働省「高額療養費制度について(参考資料)」比較表(現行・R8.8・R9.8): https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001661792.pdf
– 厚生労働省「健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号)の成立について」(第212回社会保障審議会医療保険部会 資料1・令和8年6月18日)
– 厚生労働省「第221回国会提出法律案」: https://www.mhlw.go.jp/stf/topics/bukyoku/soumu/houritu/221.html
– 内閣法制局「公布法律 id=5122」: https://www.clb.go.jp/recent-laws/promulgation_law/id=5122
– 全国健康保険協会「限度額適用認定証」: https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/high_cost_medical_expenses/001/index.html
– 全国健康保険協会「高額療養費」: https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/high_cost_medical_expenses/002/


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JG

実務ガイド編集部

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