「親が亡くなった後、相続税がいくらかかるのか見当もつかない」という方は多い。概算だけでも分かれば、税理士への相談前に家族で話し合うことができる。
このページでは、遺産総額と相続人の構成を入力するだけで、相続税の総額(概算)を計算できるシミュレーターを提供している。計算は相続税法第15条(基礎控除)・第16条(相続税の総額)および国税庁タックスアンサー No.4152・No.4155に準拠している。
相続税 概算シミュレーター
相続税 概算シミュレーター
遺産総額と家族構成を入力するだけで、相続税の総額(概算)を自動計算します
1遺産の総額(課税価格の合計額)
2配偶者の有無
3その他の相続人の構成
本シミュレーターは相続税法第15条(基礎控除)・第16条(相続税の総額)・国税庁タックスアンサー No.4152/No.4155 に基づく概算です。配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例・生命保険金非課税枠・債務控除・相次相続控除等は計算に含まれていません。実際の申告・納税は税理士にご相談ください。
シミュレーターの使い方(3ステップ)
ステップ1:遺産の総額を入力する
「課税価格の合計額」を万円単位で入力する。具体的には、次の金額を合算したものが遺産総額の目安となる。
- 不動産(土地・建物の相続税評価額)
- 預貯金・現金
- 有価証券・投資信託
- 生命保険金のうち非課税枠(500万円×法定相続人数)を超えた部分
- 退職手当金のうち非課税枠を超えた部分
借入金・葬儀費用等の債務は差し引いた後の金額を入力すること。不動産の評価額は路線価方式または倍率方式で計算した「相続税評価額」が基準となり、市場価格とは異なる。
ステップ2:配偶者の有無を選択する
被相続人(亡くなった方)の配偶者が存命かどうかを選択する。内縁関係や事実婚は民法上の配偶者には該当しないため「なし」を選ぶ。
ステップ3:その他の相続人の人数を入力する
子・直系尊属(父母・祖父母)・兄弟姉妹の各人数を入力する。優先順位のルールに注意が必要だ。
- 子がいる場合:直系尊属・兄弟姉妹は相続人にならない
- 子がおらず直系尊属がいる場合:兄弟姉妹は相続人にならない
- 子も直系尊属もいない場合:兄弟姉妹が相続人となる
なお、相続を放棄した人がいても、基礎控除の計算では「放棄がなかった場合の人数」を使う(相続税法第15条第2項)。
計算の仕組み
1. 基礎控除の計算(相続税法第15条)
すべての遺産に相続税がかかるわけではない。まず「基礎控除」を差し引く。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
たとえば、配偶者と子2人(法定相続人3人)の場合:
3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円
遺産総額が4,800万円以下であれば、課税遺産総額はゼロとなり、相続税は0円・申告も原則不要となる(ただし配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用して0円になる場合は申告が必須。詳細は後述のFAQ Q3を参照)。
2. 法定相続分による按分
課税遺産総額を各相続人が民法の定める法定相続分で取得したと仮定して按分する。実際の遺産分割とは関係なく、この「仮の取得金額」で計算するのが相続税の総額算定のルールである。
法定相続分の早見表(民法第900条)
| 相続人の構成 | 配偶者 | 子(全員合計) | 直系尊属(全員合計) | 兄弟姉妹(全員合計) |
|---|---|---|---|---|
| 配偶者+子 | 1/2 | 1/2 | — | — |
| 配偶者+直系尊属 | 2/3 | — | 1/3 | — |
| 配偶者+兄弟姉妹 | 3/4 | — | — | 1/4 |
| 配偶者のみ | 全部 | — | — | — |
| 子のみ | — | 全部 | — | — |
| 直系尊属のみ | — | — | 全部 | — |
| 兄弟姉妹のみ | — | — | — | 全部 |
子が複数いる場合は、子の取得分(例:1/2)を子の人数で均等に割る。
3. 速算表の適用(相続税法第16条)
按分後の各人の取得金額に、次の速算表を当てはめて税額を計算する。各人の税額を合計したものが「相続税の総額」となる(国税庁タックスアンサー No.4155)。
相続税の速算表
| 法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | 0円 |
| 1,000万円超〜3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 3,000万円超〜5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 1億円超〜2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 2億円超〜3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 3億円超〜6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
出典: 国税庁タックスアンサー No.4155 相続税の税率
計算例(遺産1億円・配偶者+子2人)
- 法定相続人数:3人
- 基礎控除:3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円
- 課税遺産総額:1億円 − 4,800万円 = 5,200万円
- 按分(配偶者1/2・子各1/4):
- 配偶者:5,200万円 × 1/2 = 2,600万円
- 子1人:5,200万円 × 1/4 = 1,300万円
- 速算表適用:
- 配偶者:2,600万円 × 15% − 50万円 = 340万円
- 子1人:1,300万円 × 15% − 50万円 = 145万円
- 相続税の総額:340万円 + 145万円 × 2 = 630万円
結果の読み方と注意点
配偶者の税額軽減で実際の納税額は大きく下がる
シミュレーターは「相続税の総額(法定相続分按分ベース)」を算出する。しかし実際には、配偶者が取得した財産が1億6,000万円以下または法定相続分相当額以下であれば、配偶者の相続税は0円となる(相続税法第19条の2)。
先ほどの例(遺産1億円・配偶者+子2人)では、概算の相続税総額は630万円だったが、配偶者分の340万円は軽減で消え、実際に納める税額は子2人分の290万円になりうる。
ただし、この軽減の適用には相続税の申告が必要である。さらに、原則として申告期限までに遺産分割が完了していることも条件となる(未分割の場合は「申告期限後3年以内の分割見込書」の提出により、分割後に適用を受けられる)。「どうせゼロになるから申告しない」というのは誤りなので注意が必要だ。
小規模宅地等の特例で宅地の評価額が最大80%減になる場合がある
被相続人の自宅に同居していた配偶者や子などが宅地を相続する場合、小規模宅地等の特例により評価額を最大80%減額できる制度がある(租税特別措置法第69条の4)。330㎡まで適用可能で、相続税を大幅に圧縮できる。シミュレーターにはこの特例が含まれていないため、自宅の土地がある場合は実際の税額がさらに低くなる可能性が高い。
生命保険金・退職手当金には非課税枠がある
生命保険金と退職手当金には、それぞれ500万円×法定相続人の数の非課税枠が設けられている(相続税法第12条)。シミュレーターで入力する遺産総額は、この非課税枠を控除した後の金額を使うのが正しい入力方法だ。
そのほか反映していない加算・控除
相続開始前の生前贈与の加算(暦年課税分の持ち戻し)や贈与税額控除、未成年者控除・障害者控除・相次相続控除なども、本シミュレーターには反映していない。生前贈与を受けていた場合や該当する控除がある場合は、実際の税額が計算結果と大きく異なる可能性があるため、税理士に確認してほしい。
申告期限は「知った日の翌日から10か月以内」
相続税の申告・納付の期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内(相続税法第27条)。期限を過ぎると延滞税・加算税が課される。相続人が複数いる場合は遺産分割協議の完了も必要となるため、早めに動き出すことが重要だ。
相続税申告の全体像と手続きの詳細は、相続税の基礎控除・税率表・計算4ステップの完全ガイドで解説している。
よくある質問(FAQ)
Q1. 相続を放棄した兄弟がいます。基礎控除の人数はどう数えますか?
相続税法第15条第2項により、「相続の放棄があった場合においても、その放棄がなかったものとした場合における相続人の数」で基礎控除を計算する。つまり、相続を放棄した人も法定相続人の人数に含めて計算する。例えば、子2人のうち1人が放棄しても、基礎控除の計算上は「子2人」として扱う。
Q2. 養子は相続人の人数に含めますか?
基礎控除の計算に含められる養子の人数は制限がある。被相続人に実子がいる場合は養子1人まで、実子がいない場合は養子2人まで法定相続人の数に加算できる(相続税法第15条第2項ただし書き)。養子が多いほど基礎控除が増えるため、過度な節税目的の養子縁組を防ぐルールとなっている。
Q3. 遺産総額が基礎控除以下でも、相続税の申告が必要になるケースはありますか?
原則として申告不要だが、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用することで税額が0円になる場合は、特例適用前の税額がプラスになるため、申告が必要である。特例を使った結果0円になるのであって、申告をしないと特例の適用自体が受けられない点に注意が必要だ。
Q4. 遺産の中に不動産があります。いくらで計算すればいいですか?
不動産は「相続税評価額」(路線価方式または倍率方式で計算した額)を使う。市場での売却価格や固定資産税評価額とは異なる。路線価は国税庁の「財産評価基準書」で確認できる。自宅の土地には小規模宅地等の特例が使えると評価額が大幅に下がることがある。
Q5. 相続の手続きで他に何が必要ですか?
相続が発生したら、相続税の申告と並行して、相続登記(不動産がある場合は2024年4月から義務化)も必要になる。相続登記の義務化と手続きガイドで手順を解説している。また、相続放棄を検討する場合は「知った日から3か月以内」が期限となる。相続放棄の手続きと注意点も併せて確認してほしい。
まとめ
相続税には基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)があり、多くのケースで相続税はゼロになる。一方、不動産を含む遺産が多い場合や、相続人が少ない場合は申告・納税が必要となる。
本シミュレーターはあくまで「概算」であり、配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例・生命保険非課税枠・生前贈与の加算・贈与税額控除などを反映していない。実際の申告では各種特例の適用によって税額が大幅に変わるため、相続が発生したら早めに税理士に相談することを強く勧める。
相続税の制度全体・申告手続き・節税の考え方については、相続税の完全ガイドで詳しく解説している。相続登記、3,000万円特別控除(不動産の売却時)については以下の記事も参照してほしい。
免責事項:本記事の情報は2026年7月時点の相続税法・国税庁通達に基づく。税制は改正されることがあるため、申告前に最新情報を国税庁または税理士に確認すること。本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務アドバイスではない。



