遺言制度改正2026|押印廃止・保管証書遺言の新設はいつから?今書くなら現行ルールを解説

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遺言制度改正2026|押印廃止・保管証書遺言の新設はいつから?今書くなら現行ルールを解説
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最終更新日: 2026-09-07

遺言の書き方を変える「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)が2026年6月17日に成立、同月24日に公布されました。ポイントは3つ。①自筆証書遺言などの「押印の任意化」(押しても押さなくてもよくなる)、②パソコン等で作成でき法務局が保管する「保管証書遺言」の新設、③特別方式の遺言に録音・録画の方式を追加、です。ただし施行日は政令で決まるため、2026年9月時点ではまだ現行ルール(押印が必要)のままです。「今すぐ書くなら押印が必要、遅くとも2027年6月23日までに押印が任意になり、遅くとも2029年6月23日までに法務局で保管する新しい方式ができる」という時間軸で整理します。

免責事項: 本記事は一般的な制度解説であり、個別案件の法的判断を提供するものではありません。遺言の作成・有効性の判断については、弁護士・司法書士・公証人にご相談ください。


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【早わかり表】遺言制度の主な変更点と施行時期

変更点 現行ルール(2026年9月時点) 改正後 施行時期の上限
押印 自筆証書遺言・秘密証書遺言・特別方式で押印が必要 押印要件を廃止し、押印は任意になる(署名=自書は引き続き必要) 2027年6月23日まで
秘密証書遺言の封印 証書に用いた印章で封印することが必要 「封をする」だけでよくなる 2027年6月23日まで
証人・立会人 受遺者本人などが欠格 受遺者の被用者、受遺者が法人の場合はその被用者・役員も欠格に加わる 2027年6月23日まで
特別方式遺言 死亡危急時は証人3人以上。船舶遭難時は証人2人以上 録音・録画をすれば証人1人以上でよくなる方式を追加。船舶遭難時は証人なしで作れる方式も追加 2027年6月23日まで
保管証書遺言 制度なし パソコン等で作成した遺言を法務局に保管して成立させる新方式 2029年6月23日まで
保管の申請 自筆証書遺言書保管制度は法務局への出頭が必要 オンラインで申請でき、ウェブ会議も使える 2029年6月23日まで

根拠: 民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)、2026年6月17日成立・同月24日公布。成立した法律の条文と、法務省が公表している改正法の概要に基づきます。上限日が実際の応当日(2027年6月24日・2029年6月24日)より1日早いのは、改正法の附則が「公布の日から起算して」施行までの期間を定めており、公布日(2026年6月24日)を1日目として数えるためです。施行日そのものは政令で確定するため、これより早い日になる可能性もあります。


1. 何が変わるのか|遺言制度改正の全体像

今回の改正は、遺言を「もっと書きやすく」「もっと守られるように」する方向の見直しです。押印という形式のハードルを下げ、法務局で確実に保管される新しい方式を用意し、緊急時の遺言に録音・録画という現代的な手段を認めます。

1-1. 改正法の位置づけ

2026年6月17日に成立、同月24日に公布された「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)は、遺言制度だけでなく成年後見制度の抜本改正も同じ法律に含む複合的な改正です。同じ日には、成年後見制度の見直しに伴う関係法律を整備する「民法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(令和8年法律第46号)も成立・公布されています。

この法律は、施行日が3つの区分に分かれています。押印の任意化・特別方式の遺言の見直し・証人等の欠格事由の拡張は「公布から1年以内」の区分(上限2027年6月23日)、保管証書遺言の創設・遺言書保管法の改正は「公布から3年以内」の区分(上限2029年6月23日)で施行されます。もう一つ、成年後見制度の見直しは「公布から2年6月以内」の区分(上限2028年12月23日)で施行され、こちらが改正法全体の原則的な施行日にあたります。本記事は、このうち遺言に関する部分(1年区分・3年区分)に絞って解説します。

成年後見制度の改正については、成年後見制度の抜本改正2026で詳しく解説しています。

1-2. なぜ遺言制度が見直されるのか

法務省は、今回の改正の背景として次の点を挙げています。

  • 高齢化の進展や単独世帯の増加など家族の在り方が変化し、遺言制度へのニーズが増加・多様化していること
  • デジタル技術の進展・普及に対応した遺言制度が必要になっていること
  • 自筆証書遺言は本文を本人が手書きする必要があり、負担が大きいこと
  • 自筆証書遺言書保管制度を利用するには、本人が法務局に出頭して対面で手続する必要があること
  • 所有者不明土地問題等の社会課題の解決という観点からも、遺言の重要性が高まっていること

押印については、行政手続や民間の商慣行における押印の見直しが進み、押印に関する慣行や法意識に変容が生じつつあるとの指摘があります。公正証書遺言では、遺言者等の押印要件が令和5年の公証人法改正で既に廃止されています。

こうした背景から、今回の改正では①形式要件の緩和(押印の任意化)、②保管の確実化(保管証書遺言の新設)、③緊急時への対応(特別方式への録音・録画方式の追加)という3つの方向で見直しが行われます。


2. 押印の任意化|署名は引き続き必要

改正後は、自筆証書遺言・秘密証書遺言・特別方式の遺言における遺言者・証人・立会人の押印要件が廃止され、押しても押さなくてもよい「任意」になります。押さなければならない義務がなくなるだけで、署名(自書)は引き続き必要です。自筆証書遺言の全文を自書する要件も変わりません。

2-1. 「廃止」=押してはいけなくなるのではなく、任意になる

法務省は、今回の改正について「押印要件を廃止し、押印を任意とする」と説明しています。押印が禁止されるのではなく、押しても押さなくても遺言の効力に影響しなくなる、という意味です。

変わるのは押印だけで、署名(自書)は引き続き必要です。自筆証書遺言について全文を自分の手で書く要件も変わりません。

要件 現行 改正後
全文の自書(自筆証書遺言) 必要 必要(変更なし)
日付・氏名の自書 必要 必要(変更なし)
署名 必要 必要(変更なし)
押印 必要 任意(押しても押さなくてもよい)

押印が廃止されるのは、遺言を新たに書くときだけではありません。現行の民法968条3項は、遺言書の内容を書き加えたり削ったりして変更するときについて、変更の場所に署名し「かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない」と定めています。改正後はこの押印も廃止され、「特にこれに署名しなければ」その効力を生じない、という規定になります。

秘密証書遺言(遺言の内容を他人に見せないまま、その遺言書が自分のものであることだけを公証人1人と証人2人以上の前で申述して確認してもらう方式)の「封印」も廃止されます。現行の民法970条1項2号は「遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること」を求めていますが、改正後は「遺言者が、その証書に封をすること」に変わります。証書に用いた印章による封印は不要になり、封をするだけでよくなります。

一方で、公証人の押印は残ります。 改正後の民法970条1項4号は、秘密証書遺言について「公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、これに印を押し、遺言者及び証人とともにこれに署名すること」と定めています。廃止されるのは遺言者・証人・立会人の押印であって、公証人の押印ではありません。

2-2. 証人・立会人の欠格事由が広がる

法務省は、単身高齢者が増加し、入所している高齢者施設等への遺贈が行われる例があるものの、受遺者の従業員等は現行では証人の欠格事由になっていない点を課題として挙げています。

改正後は、受遺者だけでなく、その被用者(受遺者が法人である場合には、その被用者及び役員)も証人・立会人になれなくなります。改正後の民法974条は4号構成になり、受遺者に関する号が独立して新設される形になります。

注意: 押印の任意化は改正法で定められましたが、施行日は「公布から1年を超えない範囲内において政令で定める日」(上限2027年6月23日)です。2026年9月時点ではまだ施行されていないため、今、自筆証書遺言を書くなら押印が必要です。


3. 保管証書遺言の新設|法務局で口述して残す新しい方式

改正で新設される「保管証書遺言」は、パソコン等で作成した証書に遺言者が署名し、遺言書保管官の前で遺言の全文を口述するなどして、法務局で保管しなければ効力が生じない、新しい方式の遺言です。自筆証書遺言と違って全文を手書きする必要がなく、作成から保管までを法務局が関与する点が特徴です。

3-1. 保管証書遺言とは

改正後の民法968条の2は、保管証書遺言の方式を次のように定めています。

  • 遺言の全文が記載され、又は記録された証書について、遺言者が署名または署名に代わる措置を講じること(電磁的記録の場合は、遺言の全文に加えて氏名も記録されていることが必要)
  • 遺言者が、遺言書保管官(遺言書保管所である法務局に勤務する法務事務官のうちから、法務局または地方法務局の長が指定する職員)の前で、その証書に記載され、又は記録された遺言の全文を口述すること
  • 法務局における遺言書の保管等に関する法律(遺言書保管法)の定めるところにより証書を保管しなければ、その効力を生じないこと

あわせて、改正後の民法967条では、遺言の方式が「自筆証書、保管証書、公正証書又は秘密証書」の4つになります。

口がきけない方については、遺言書保管官の前で通訳人の通訳により申述するか、自書することで口述に代えることができます(改正後の民法968条の3第1項)。財産目録については口述が不要で、遺言書保管官が財産目録を遺言者に閲覧させるなどの措置を講ずるときは、その目録の口述は求められません(同条2項)。

3-2. パソコン等で作成できる遺言

保管証書遺言は、パソコン等で作成できます。 法務省は改正法の概要で、保管証書遺言について「パソコン等を用いた作成が可能」と明記しています。自筆証書遺言と異なり、全文を手書きする必要はありません。

署名についても「署名又はこれに代わる措置」でよいとされており、法務省はこの「代わる措置」として電子署名を想定していると説明しています。

改正後の遺言書保管法は、保管証書遺言書を、書面で作成した「書面保管証書遺言書」と、電磁的記録で作成した「電子保管証書遺言書」の2種類に分けて定義しています。法務省は、データのまま保管を申請することも、それをプリントアウトしたものの保管を申請することもできると説明しています。

保管の申請はオンラインでもでき、遺言書保管官がウェブ会議の利用を相当と認めるときは、ウェブ会議を利用した手続もできます(改正後の遺言書保管法7条)。

ただし、署名に代わる措置の具体的な内容は法務省令に委ねられており、省令はまだ定められていません。手数料の額も政令・省令で決まります。この2点は今後の確認が必要です。

3-3. 現行の「自筆証書遺言書保管制度」との違い

すでに法務局には、自筆証書遺言を預かる「自筆証書遺言書保管制度」(2020年7月開始)があります。新設される保管証書遺言とは別の制度です。

項目 現行の自筆証書遺言書保管制度 新設の保管証書遺言
本文の作り方 全文を自分の手で書く(財産目録を除く) パソコン等で作成できる
法務局での手続 形式が民法の要件に合うかの外形的なチェック 遺言書保管官の前で遺言の全文を口述する
保管との関係 保管は任意(保管しなくても遺言は有効) 保管しなければ効力を生じない
保管の申請の撤回 遺言書が返還されるだけで、遺言そのものは有効なまま 遺言を撤回したものとみなされる
家庭裁判所の検認 不要 不要

表の最後にある「検認」とは、相続人に対し遺言の存在と内容を知らせるとともに、遺言書の形状・加除訂正の状態・日付・署名などを明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための家庭裁判所の手続です。裁判所が説明しているとおり、遺言が有効か無効かを判断する手続ではありません。法務局に保管されている遺言書については、この検認が不要になります。

最大の違いは「保管そのものが効力の要件かどうか」です。 現行制度は、すでに有効な自筆証書遺言を、任意で法務局に預けておく仕組みです。これに対して保管証書遺言は、法務局での保管が有効要件になっています。

保管の申請を撤回したときの効果も正反対です。自筆証書遺言は返してもらうだけで遺言は生き続けますが、保管証書遺言は撤回すると遺言を撤回したものとみなされます(改正後の遺言書保管法14条)。

現行の自筆証書遺言書保管制度は2020年7月に始まり、令和8年7月時点で累計127,253件の申請があり、うち126,976件が保管されています。手数料は、保管の申請が1件(遺言書1通)につき3,900円、遺言書情報証明書の交付請求が1通につき1,400円などとなっています。保管申請の撤回や住所等の変更の届出は無料です。納付は収入印紙によります。

法務局は遺言の内容について相談に応じることはできず、保管された遺言書の有効性を保証するものでもありません。法務局のチェックは、あくまで形式が民法の要件に合うかという外形的なものにとどまります。

3-4. 自筆証書遺言書保管制度もデジタル化される

現行制度では、保管の申請をするときに遺言者本人が遺言書保管所(法務局)に出頭する必要があります。改正後はこの出頭を義務づける規定がなくなり、オンラインでの保管申請や証明書の交付請求などができるようになります。ウェブ会議を利用した手続もできるようになります。

ただし、本人確認は残ります。改正後の遺言書保管法8条は、遺言書保管官が本人確認のために出頭を求めると定めており、ウェブ会議で代えられるのは「申請人から申出があり、遺言書保管官がその申出を相当と認めるとき」に限られます。出頭が完全に不要になるわけではありません。

遺言者が指定した人への通知の仕組みも新しく設けられます。遺言者は、自分の死亡後に、指定した人へ「遺言書を保管している」旨を遺言書保管官が通知することを申し出ておくことができます(改正後の遺言書保管法19条)。法務省は、これによって相続登記をはじめとする遺言の執行が円滑になるとしています。

手数料についても、法務省令で定める方法による場合は、現金で納めることができるようになります。

注意: 保管証書遺言と遺言書保管法の改正は「公布から3年を超えない範囲内において政令で定める日」(上限2029年6月23日)に施行されます。2026年9月時点ではまだ利用できません。


4. 特別方式の遺言|緊急時に録音・録画で残せるように

病気で死期が迫った場合や、天災その他の事変で危難を避けることが困難な場合などの「特別方式の遺言」に、遺言をする状況を録音・録画で同時に記録する方式が追加されます。集められる証人の数が減り、船舶遭難者等の遺言では証人なしで作れる方式も加わります。書面に書き残す余裕がない緊急時でも遺言を残せるようにする見直しです。

4-1. 死亡危急時の遺言

現行の民法976条は、証人3人以上の立会いのもと、そのうち1人に遺言の趣旨を口授する方式です。死期が迫った状況で証人を3人集める負担が大きいことが課題でした。

改正で新設される民法976条の2は、遺言を作る状況を録音と録画を同時に行う方法で記録すれば、証人1人以上の立会いで遺言ができる方式です。手順は次のとおりです。

  1. 証人の1人に遺言の趣旨を口授する
  2. 口授を受けた証人が、遺言の趣旨と自分の氏名を書面に記載するか、電磁的記録に記録する
  3. その内容を遺言者に読み聞かせるか閲覧させ、遺言者が正確であることを承認する

証人はウェブ会議で立ち会うこともできます。遺言者と証人が映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話できる方法で立ち会わせることができます(同条2項)。

法務省は、この方式についてパソコン等で作成したデータを遺言とすることが可能になると説明しています。

4-2. 船舶遭難者等の遺言

適用場面が広がります。改正後の民法979条1項は、船舶が遭難した場合に加えて、「天災その他避けることのできない事変が発生した場合において、当該天災又は当該事変から生じた重大かつ急迫の危難を避けることが困難な場所に在って死亡の危急に迫った者」にも同じ方式を認めます。法務省は「大規模地震等」を例に挙げています。条文の見出しも「船舶遭難者の遺言」から「船舶遭難者等の遺言」に変わります。現行の民法979条1項は証人2人以上の立会いが必要です。

さらに民法979条の2が新設され、次の2つの方式が加わります。

  • 証人1人以上の立会いのもとで、口頭で遺言をする状況を録音と録画を同時に行う方法で記録する方式(証人はウェブ会議で立ち会うこともできる)
  • 口頭で遺言をする状況を録音と録画を同時に行う方法で記録し、使用する電子計算機を用いてその記録を特定の者に送信する方式(法務省は「メール等で送信する」と説明。この方式では証人の立会いが不要)

4-3. 家庭裁判所の手続は引き続き必要

録音・録画で作った遺言も、そのままでは効力が生じません。家庭裁判所の「確認」が必要です。

  • 死亡危急時の遺言(民法976条の2)は、遺言の日から20日以内に、証人の1人または利害関係人から家庭裁判所に請求して確認を得なければなりません
  • 船舶遭難者等の遺言(民法979条の2)は、証人の1人、記録の送信を受けた者、または利害関係人から遅滞なく家庭裁判所に請求して確認を得なければなりません

家庭裁判所は、遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければ確認できません。

相続が始まった後の「検認」も必要になります。改正後の民法1004条1項は、検認の対象を「遺言書」に加えて「民法979条の2第1項各号に規定する方法により記録された電磁的記録」まで広げ、あわせて「遺言書等」と呼びます。これを家庭裁判所に提出せず検認を経ないで遺言を執行した者は、5万円以下の過料に処せられます(民法1005条)。

録音・録画のデータを不正に作ったり、壊したり、隠したりした人は相続人になれません。改正後の民法891条5号は、相続人の欠格事由に、民法976条の2第1項や979条の2第1項各号の方法で記録された電磁的記録を不正に作り、破棄し、隠匿した者を加えています。

これらは、極限状況で「書いて署名する」ことが難しい場面を想定した現代的な手段の追加です。特別方式は、あくまで普通の方式(自筆証書・保管証書・公正証書等)で遺言できない緊急時に限られる例外的な方式である点は、現行と同じ考え方です。


5. いつから変わるのか|施行時期の3区分

施行日は改正内容ごとに異なり、政令で定められます。2026年9月時点では「まだ何も施行されていない(=現行ルール)」段階です。改正法の施行日は3つの区分に分かれており、それぞれの上限日を押さえておきましょう。

5-1. 施行時期のタイムライン

時期 内容
2026年4月3日 内閣が「民法等の一部を改正する法律案」を国会提出(第221回国会・閣法第43号)
2026年5月26日 衆議院本会議で可決
2026年6月17日 参議院本会議で可決・成立(令和8年法律第45号)
2026年6月24日 公布
2027年6月23日まで(見込み) 押印の任意化・特別方式の見直し・証人等の欠格事由の拡張が施行(公布から1年以内の政令確定後)
2028年12月23日まで(見込み) 成年後見制度の見直しが施行(公布から2年6月以内の政令確定後。改正法全体の原則施行日)
2029年6月23日まで(見込み) 保管証書遺言の新設・遺言書保管法改正が施行(公布から3年以内の政令確定後)

注意: 上記の日付は「公布から1年/2年6月/3年」の計算上の上限日です。政令でこれより早い日が定められる可能性があります。確定した施行日は政令公布後に法務省サイト等で確認してください。

5-2. なぜ施行日がまだ決まっていないのか

改正法には「公布の日から○年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」という形の規定が置かれています。実際の施行日は、システム整備や運用準備の進み具合を見ながら、後日出される政令で確定します。そのため、本記事の時点(2026年9月)では具体的な施行日はまだ決まっていません。

なお、改正法の附則第十条には施行後の状況を踏まえた検討条項が置かれていますが、対象は成年後見制度の改正部分であり、遺言制度の改正(押印の任意化・保管証書遺言の新設など)は対象から除かれています。


6. 今書くべきか、待つべきか|判断フロー

「押印が不要になるなら待ったほうがいいのか」と迷う方もいるでしょう。結論から言えば、遺言の必要性が今あるなら待たずに書くべきです。改正はまだ施行されておらず、いつ施行されるか(政令)も確定していないためです。

6-1. 判断の考え方

遺言は「書いておくべき事情が今あるかどうか」で判断するものであり、制度改正のタイミングに合わせるものではありません。以下の流れで考えてみてください。

ステップ1: 今すぐ遺言が必要な事情があるか
– 相続で揉めそうな事情がある(相続人が多い、疎遠な相続人がいる等)
– 特定の人に確実に財産を残したい
– 健康状態に不安がある

→ 必要があるなら、今の現行ルール(押印が必要)で書く。 施行日が未確定な改正を待って遺言を先送りするのはリスクがあります。

ステップ2: 急ぎではないが、いずれ書きたい
– 押印の任意化(2027年6月23日までに施行見込み)や保管証書遺言(2029年6月23日までに施行見込み)を待つ選択肢もありますが、施行日は政令次第です。まずは下書き・財産の棚卸しを始めておくとよいでしょう。

ステップ3: 確実性を重視したい
– 形式不備のリスクを避けたいなら、現行制度でも公正証書遺言という選択肢があります。公証人が関与するため、押印の任意化を待たなくても方式不備の心配が小さい方式です。令和7年(2025年)に全国で作成された遺言公正証書は123,891件です。手数料は目的の価額に応じた段階制で、例えば目的の価額が500万円を超え1,000万円以下のときは20,000円、財産の総額が1億円以下のときはこれに遺言加算13,000円が加算されます(このほか正本・謄本に相当するものの交付手数料が別途必要です)。

6-2. 今、自筆証書遺言を書くときの現行ルール

改正が施行されるまでは、自筆証書遺言は現行の要件で作成します。

  1. 全文を自書する(パソコン作成は不可。ただし財産目録は自書以外も可)
  2. 日付を自書する(「〇年〇月吉日」のような特定できない日付は不可)
  3. 氏名を自書する
  4. 押印する(改正で任意になるが、施行前は必要)

作成した自筆証書遺言は、法務局の自筆証書遺言書保管制度を使えば紛失・改ざんのリスクを下げられます。相続税がかかりそうな規模かどうかは、相続税シミュレーター2026で概算を把握しておくと、遺し方の検討に役立ちます。


7. 経過措置|施行前に書いた遺言はどうなるか

施行前に作成した遺言の扱いは、改正法の附則第五条に定められており、すでに確定しています。 押印の任意化などが施行される日(1年区分の施行日)より前にされた遺言については、改正後の規定にかかわらず「なお従前の例による」とされ、対象は民法968条・970条1項・973条・974条・976条1項・979条1項及び3項・980条から982条まで・984条です。

つまり、施行前に現行ルール(押印あり)で有効に作った遺言は、押印が任意化された後もそのときのルールで有効性が判断され、押印廃止によって無効になることはありません。逆に、施行日より前に作った遺言に、押印を省略できる新しいルールが適用されることもありません。施行前に書くなら押印が必要です。


8. よくある質問(FAQ)

A

押印の任意化は「公布(2026年6月24日)から1年を超えない範囲内において政令で定める日」(上限2027年6月23日)に施行されます。2026年9月時点ではまだ施行されておらず、今、自筆証書遺言を書くなら押印は必要です。施行日の確定は政令公布後になります。

A

自筆証書遺言は変わりません。押印が任意になるだけで、全文・日付・氏名を自書する要件は残ります。

一方、新設される保管証書遺言はパソコン等で作成できます。 法務省が「パソコン等を用いた作成が可能」と明記しており、全文を手書きする必要はありません。ただし、署名または署名に代わる措置(法務省は電子署名を想定と説明)が必要で、遺言書保管官の前で遺言の全文を口述し、法務局に保管して初めて効力が生じます。保管証書遺言が使えるようになるのは、上限2029年6月23日までに政令で定める日からです。

A

別の制度です。現行の「自筆証書遺言書保管制度」(2020年7月開始)は、自書で作った自筆証書遺言を任意で法務局に預ける仕組みで、預けなくても遺言自体は有効です。新設の「保管証書遺言」は、法務局での保管そのものが効力の要件で、遺言書保管官の前で全文を口述するなどの手続きが必要です。保管の申請を撤回したときの扱いも逆で、自筆証書遺言は返してもらうだけで遺言は有効なままですが、保管証書遺言は撤回すると遺言を撤回したものとみなされます。保管証書遺言の施行は上限2029年6月23日までの見込みです。

A

はい。今回の改正は自筆証書遺言・秘密証書遺言・特別方式などが中心で、公正証書遺言はこれまでどおり利用できます。公証人が関与するため方式不備の心配が小さく、確実性を重視する方には有力な選択肢です。改正の施行を待つ必要はありません。なお、公正証書遺言の遺言者等の押印要件は、令和5年の公証人法改正で既に廃止されています。

A

無効になりません。改正法の附則第五条が、施行日前にされた遺言については「なお従前の例による」と定めており、作成した時点のルールで有効性が判断されます。不安がある場合は、弁護士・司法書士にご相談ください。

A

はい。今回の遺言制度改正は「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)に含まれ、同じ法律に成年後見制度の抜本改正も同梱されています。ただし施行日は改正内容ごとに異なり、押印の任意化・特別方式の見直し等が上限2027年6月23日まで、成年後見制度の見直しが上限2028年12月23日まで、保管証書遺言・保管法改正が上限2029年6月23日までの3区分に分かれています。成年後見制度の改正内容は成年後見制度の抜本改正2026で解説しています。

A

いいえ。録音・録画による方式が使えるのは特別方式であり、死亡の危急に迫った場合や、天災その他避けることのできない事変から生じた重大かつ急迫の危難を避けることが困難な場所にいる場合など、普通の方式で遺言できない緊急時に限られます。元気なうちに録音・録画で遺言を残しておくことはできません。

さらに、家庭裁判所の確認が必要です。死亡危急時の遺言は遺言の日から20日以内、船舶遭難者等の遺言は遅滞なく、家庭裁判所に確認を請求しなければなりません。


9. まとめ|遺言制度改正2026の要点

遺言制度改正(令和8年法律第45号)のポイントを整理します。

確定した事実
– 2026年4月3日 国会提出 / 5月26日 衆議院可決 / 6月17日 成立 / 6月24日 公布
– 自筆証書遺言などの押印を任意化(署名=自書は引き続き必要)
– パソコン等で作成できる「保管証書遺言」を法務局保管方式として新設
– 特別方式の遺言に録音・録画による記録方式を追加(死亡危急時は証人1人以上、船舶遭難者等は証人なしの方式も)
– 証人・立会人の欠格事由を拡張
– 遺言書保管法を改正し、自筆証書遺言書保管制度もオンライン申請化・死亡時通知の仕組みを追加

施行時期(政令で確定)
– 押印の任意化・特別方式の見直し・証人等の欠格事由の拡張:上限2027年6月23日
– 成年後見制度の見直し:上限2028年12月23日
– 保管証書遺言の新設・保管法改正:上限2029年6月23日

今からできること
1. 遺言が必要な事情が今あるなら、現行ルール(押印が必要)で書く。施行を待って先送りしない
2. 確実性を重視するなら公正証書遺言も検討する
3. 財産の棚卸しをして、相続税がかかる規模か相続税シミュレーター2026で概算を把握する
4. 判断に迷うときは、弁護士・司法書士・公証人に早めに相談する

制度が変わっても、遺言を残すべき事情が今ある方がすべきことは「先送りにせず、現行ルールで確実に書く」ことです。施行日・運用の詳細は政令公布後に更新します。


参考資料
– 法務省「『民法等の一部を改正する法律』(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00410.html
– 法務省「民法等改正法の概要」: https://www.moj.go.jp/content/001465481.pdf
– 法務省 自筆証書遺言書保管制度 手数料: https://www.moj.go.jp/MINJI/09.html
– 日本公証人連合会「令和7年の遺言公正証書の作成件数について」: https://www.koshonin.gr.jp/news/nikkoren/yuigon2025.html
– 裁判所「遺言書の検認」: https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_17/index.html
– e-Gov 法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)
– 民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)2026年6月24日公布

当記事は2026年9月7日時点の情報に基づきます。施行日・運用の詳細(保管証書遺言の手数料・署名に代わる措置の内容、政令で定める施行日等)は政令・省令公布後に更新します。遺言の作成・有効性の判断には個別の事情が大きく影響するため、弁護士・司法書士・公証人へのご相談を強くお勧めします。

JG

実務ガイド編集部

AI執筆 + 編集部レビュー済み

本記事はAIが初稿を作成し、編集部が法令原文・官公庁通知・審議会資料等の一次情報と照合のうえ、内容を確認・編集しています。行政手続き・法改正・制度改正の実務情報を専門に扱う編集チームが、企業実務担当者・士業専門家向けに正確性の高いコンテンツを提供します。