相続放棄2026年完全ガイド|3か月の期限・借金や負動産の判断基準と家庭裁判所への手順

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相続放棄2026年完全ガイド|3か月の期限・借金や負動産の判断基準と家庭裁判所への手順
目次

最終更新日: 2026-06-17

結論: 相続放棄は、被相続人(亡くなった方)のプラスの財産もマイナスの財産(借金)も一切相続しないための手続きです。期限は「自己のために相続の開始があったことを知った時から原則3か月以内」(熟慮期間)で、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所への申述によって行います。間に合わないときは期間伸長の申立てで延長できます。借金が明らかに上回るケースや、資産価値より維持費・固定資産税が上回る「負動産」を引き継ぎたくないケースで有力な選択肢です。ただし、相続放棄は一度受理されると原則撤回できず、放棄しても次順位の相続人や相続財産清算人へ引き継ぐまでは一定の保存義務が残る場合があります。本記事は、限定承認との違い、負動産・相続土地国庫帰属制度の使い分け、生命保険金の扱い、申述の必要書類・費用までを2026年6月時点の現行制度でまとめた実務ガイドです。


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【まとめ表】相続放棄2026年の要点

項目 2026年6月時点の内容
効果 プラスの財産もマイナスの財産(借金)も一切相続しない(初めから相続人でなかったものとみなす)
期限(熟慮期間) 自己のために相続の開始があったことを知った時から 原則3か月以内
手続き先 被相続人の最後の住所地を管轄する 家庭裁判所
方法 相続放棄の 申述(申述書+添付書類を提出)
収入印紙 申述人1人につき 800円
撤回 受理後は 原則撤回不可
期間の延長 家庭裁判所への 期間伸長の申立てで延長可能
放棄後の管理 「現に占有している」財産は、引き継ぐまで一定の保存義務(2023年改正)
負動産対策の別ルート 相続土地国庫帰属制度(一定要件・負担金の納付が必要)

根拠: 民法第915条(熟慮期間)、第938条〜第940条(相続放棄の申述・効力・保存義務)、第939条(放棄の効力)、相続土地国庫帰属法、裁判所ウェブサイト「相続の放棄の申述」。


1. 相続放棄とは|「受けたくない相続」を断る手続き

1-1. 相続放棄の基本構造

人が亡くなると、その財産は法律上、相続人に承継されます。このとき相続人がとれる選択肢は、大きく次の3つです。

選択肢 内容 向いているケース
単純承認 プラスもマイナスもすべて相続する 資産が借金を明らかに上回る
相続放棄 プラスもマイナスも一切相続しない 借金や負動産が上回る/関わりたくない
限定承認 プラスの財産の範囲内でのみマイナスを引き継ぐ 資産と負債のどちらが多いか不明

相続放棄をすると、その人は初めから相続人でなかったものとみなされます(民法第939条)。したがって被相続人の預貯金・不動産などのプラスの財産を受け取れない代わりに、借金・保証債務・未払税金などのマイナスの財産も一切引き継ぎません。「借金だけ放棄して預金はもらう」といったいいとこ取りはできません

根拠: 民法第939条(相続放棄の効力)、裁判所「相続の放棄の申述」。

【ポイント】 「相続放棄」という言葉は日常会話では「遺産分割で何も受け取らないことにした」という意味でも使われますが、本記事で扱うのは家庭裁判所での法的な相続放棄です。遺産分割協議で「何も要らない」と合意しても、それは法的な相続放棄ではなく、被相続人の借金の支払義務からは免れません。この違いは実務で誤解が非常に多い点です。

1-2. 相続放棄が選ばれる典型ケース

  • 被相続人に多額の借金・連帯保証債務があり、資産では返しきれない
  • 引き継ぐ不動産が負動産(資産価値より固定資産税・管理費・解体費が上回る山林・空き家など)である
  • 被相続人と疎遠で、財産・負債の実態がわからず関わりたくない
  • 事業の連帯保証など、想定外の債務が後から判明するリスクを避けたい

2. 相続放棄 vs 限定承認|比較表でわかる違い

「マイナスが多いか不明」という場合に検討されるのが限定承認です。相続放棄との違いを整理します。

比較項目 相続放棄 限定承認
引き継ぐ範囲 一切引き継がない プラスの財産の範囲内でマイナスを弁済し、余りがあれば取得
申述する人 各相続人が単独で可能 相続人全員が共同で申述する必要がある
期限 熟慮期間(原則3か月) 熟慮期間(原則3か月)
手続きの負担 比較的簡易 財産目録の作成・官報公告・清算手続きなど負担が大きい
向くケース 借金が明らかに多い/関わりたくない 資産と負債のどちらが多いか不明だが、自宅など残したい財産がある

根拠: 民法第922条〜第937条(限定承認)、第938条〜第940条(相続放棄)。


3. 3か月の熟慮期間|起算点はいつか

3-1. 起算点は「死亡日」ではない

相続放棄の期限である熟慮期間は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から原則3か月以内です(民法第915条第1項)。

重要なのは、起算点が被相続人の死亡日そのものではない点です。「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、一般に①被相続人が死亡した事実と、②自分がその相続人になったことの両方を知った時点と解されています。

ケース 起算点の考え方
同居家族 死亡を知った日=起算点となることが多い
疎遠な親族 死亡の事実と自分が相続人だと知った日が起算点
先順位の相続人が放棄した結果、自分が相続人になった 先順位者の放棄により自分が相続人になったことを知った日が起算点

根拠: 民法第915条第1項。

3-2. 借金の存在を後から知った場合(再転・例外的取扱い)

「資産も借金もないと信じていたが、3か月経過後に多額の借金が判明した」というケースでは、最高裁(昭和59年4月27日判決)が示した判例法理により、①相続財産が全く存在しないと信じ、②そう信じることについて相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があるという2要件を満たす場合に限り、熟慮期間の起算点を「借金の存在を知った時」と評価して放棄が認められる場合があります。

ただしこれは例外的な救済であり、「著しく困難な事情」の認定は個別事情によります。3か月を過ぎてから借金が判明した場合は、自己判断せず速やかに弁護士・司法書士へ相談してください。


4. 3か月で決められないとき|期間伸長の申立て

相続財産の調査が3か月で終わらない場合、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てることで、熟慮期間を延長できます(民法第915条第1項ただし書)。

4-1. 期間伸長の申立て手順

ステップ 内容
1 熟慮期間内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申立書を提出
2 申立人の戸籍謄本、被相続人の住民票除票(または戸籍附票)等を添付
3 収入印紙(申立人1人につき800円)・連絡用郵便切手を納付
4 家庭裁判所が事情を審理し、延長期間を定める

根拠: 民法第915条第1項ただし書、裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」。


5. 相続放棄後も残る保存義務|2023年民法改正で何が変わったか

「相続放棄すれば、その不動産にはもう一切関わらなくてよい」と考えるのは誤りになり得ます。放棄しても、次の引き継ぎ先が定まるまでは一定の管理(保存)義務が残る場合があるためです。

5-1. 2023年4月施行の改正点(占有要件への限定)

2023年4月1日施行の改正民法第940条第1項により、相続放棄後の保存義務の対象が見直されました。改正後の規律では、放棄した者は、放棄の時に「現に占有している」相続財産について、相続人または相続財産清算人に引き渡すまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって保存しなければならないとされています。

区分 改正前(〜2023年3月) 改正後(2023年4月〜)
義務の対象 解釈に幅があり、占有していない財産にも管理義務が及ぶおそれがあった 放棄時に「現に占有している」財産に限定
義務の内容 管理を継続 引き継ぐまで「自己の財産と同一の注意」で保存
義務の終期 解釈に争い 相続人または相続財産清算人に引き渡すまで

つまり、遠方にある一度も占有したことのない実家・山林などは、改正後は保存義務の対象外と整理されやすくなりました。一方、被相続人と同居していて現に住んでいる家屋などを放棄する場合は、引き渡すまで保存義務が残る点に注意が必要です。

根拠: 改正民法第940条第1項(令和3年法律第24号、2023年4月1日施行)、法務省「民法等の一部を改正する法律」関連資料。

5-2. 全員が放棄したら誰が管理するのか

相続人全員が相続放棄をすると、その不動産を最終的に管理・処分する者がいなくなります。この場合、利害関係人(債権者など)や検察官の申立てにより、家庭裁判所が相続財産清算人を選任します(民法第952条以下)。清算人が選任され、財産の引き渡しが完了するまでは、占有していた放棄者の保存義務が続く点に留意してください。

【制度補足】 2023年4月施行の改正(令和3年法律第24号)で、旧「相続財産管理人」は清算目的の手続きとして相続財産清算人に改称されました。なお同改正で、相続財産の清算ではなく保存・管理のみを目的とする別制度(相続財産管理人)も新設されており、申立て目的によって選択する制度が異なります。

【実務ポイント】 相続財産清算人の選任には、申立人が予納金(裁判所により数十万円〜100万円程度を求められることがある)を納める必要があるのが一般的です。負動産から完全に解放されるためにこの費用負担が生じる点は、放棄前に把握しておくべき盲点です(金額は事案・裁判所により異なるため、申立て前に管轄裁判所へ確認してください)。


6. 負動産の判断|放棄すべきか持ち続けるかチェックリスト

「負動産」とは、所有していることで得られる価値よりも、固定資産税・管理費・修繕費・解体費などのコストが上回る不動産を指します。山林、再建築不可の空き家、需要のない郊外の土地などが典型です。

6-1. 負動産かどうかのチェックリスト

  • [ ] その不動産に買い手・借り手の需要が現実的に見込めるか
  • [ ] 固定資産税(および都市計画税)を毎年負担し続けられるか
  • [ ] 建物の老朽化・倒壊リスクや、解体費(木造でも100万円超になることが多い)を負担できるか
  • [ ] 管理(草刈り・見回り・近隣対応)を継続できる距離・体力か
  • [ ] 特定空家等に指定され固定資産税の住宅用地特例が外れる(最大約6倍)リスクはないか
  • [ ] 他に価値のあるプラス財産があり、放棄すると損になるおそれはないか

上のチェックで「負担できない」「需要がない」が多く、かつ放棄により失うプラス財産が小さいほど、相続放棄を検討する合理性が高まります。負動産を持ち続ける場合、毎年の固定資産税・都市計画税が継続的なコストとなる点は、放棄を判断するうえで必ず織り込んでおきましょう。一方、自宅など価値ある不動産を受け継ぐ場合は小規模宅地等の特例(自宅敷地を最大80%減額)で相続税を大幅に圧縮できるため、放棄の前に財産全体のバランスを確認することが重要です。


7. 相続放棄 vs 相続土地国庫帰属制度|使い分け判定フロー

不要な土地を手放す方法として、相続放棄のほかに相続土地国庫帰属制度(2023年4月27日運用開始)があります。これは、相続・遺贈で取得した土地を、一定の要件を満たし負担金を納付することで国に引き取ってもらう制度です。両者は目的が似ていますが、対象・効果が大きく異なります。

7-1. 比較表

比較項目 相続放棄 相続土地国庫帰属制度
対象 相続財産のすべて(預金・建物・借金含む) 相続・遺贈で取得した土地のみ
選んで手放せるか 不可(全部放棄) 不要な土地だけを対象にできる
借金からの解放 される されない(債務は対象外)
建物 含めて放棄 建物がある土地は申請できない(却下事由)。解体して更地にした後の申請は可能
期限 熟慮期間(原則3か月) 期限の定めなし(取得後いつでも申請可)
費用 収入印紙等の少額+(清算人選任時は予納金) 審査手数料+10年分の管理費相当の負担金の納付
申請先 家庭裁判所 法務局(法務大臣)

7-2. 使い分け判定フロー

  1. 被相続人に借金がある/財産全体がマイナス相続放棄を検討(土地だけ手放しても借金は残るため)
  2. 借金はなく、欲しい財産(預金・自宅)はあるが、特定の土地だけ不要相続土地国庫帰属制度を検討(土地だけ手放せる)
  3. 手放したい土地に建物が建っている → 国庫帰属は建物がある土地は申請できない(却下事由)。解体して更地にしてから申請するか、建物含めて相続放棄するかを比較検討
  4. 3か月の期限が迫っている → まず相続放棄の可否を急いで判断(国庫帰属は期限がないため後回し可)

根拠: 相続土地国庫帰属法(令和3年法律第25号、2023年4月27日運用開始)、法務省「相続土地国庫帰属制度について」。


8. よくある盲点|数次相続・代襲・生命保険金

8-1. 相続放棄と代襲相続の関係

相続放棄をした人は「初めから相続人でなかったもの」とみなされるため、その子への代襲相続は発生しません。たとえば子が相続放棄をしても、その孫が代わりに相続人になることはありません(代襲は死亡・欠格・廃除の場合に生じ、放棄では生じない点に注意)。

一方で、子が全員放棄すると相続権は次順位(直系尊属=親、さらに兄弟姉妹)へ移ります。親や兄弟姉妹に予期せず借金が回らないよう、相続放棄をする際は次順位者へ早めに知らせるのが実務上のマナーです。

8-2. 数次相続のときの放棄

相続放棄をするか決めないうちに相続人自身が亡くなると、その地位がさらに次の相続人へ承継されます(数次相続・再転相続)。この場合の熟慮期間の起算点は複雑になり、自分の選択(一次相続の放棄/承認)の余地が残る点も含め、専門的な判断が必要です。

8-3. 生命保険金は放棄しても受け取れる

被相続人が亡くなったことで支払われる死亡保険金は、保険金受取人として指定された人の固有の財産であり、相続財産には含まれません。そのため、相続放棄をしても、受取人として指定されていれば死亡保険金は受け取れます

ただし、税務上は注意が必要です。死亡保険金は相続税法上の「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。さらに、相続放棄をした人は、相続税の「500万円×法定相続人の数」の生命保険金非課税枠を自分では使えません(非課税枠は「相続人」が受け取った場合に限られるため。相続税法第12条第1項第5号、国税庁No.4114)。

ここで重要な二重構造があります。非課税枠を「使えない」のは放棄した本人だけであり、非課税限度額を計算する際の「法定相続人の数」には相続放棄した人も含めてカウントされます(放棄がなかったものとした数)。つまり、放棄によって家族全体の非課税枠の総額が減ることはありません。受け取れること(民法)・非課税枠の対象外であること・法定相続人の数の計算に含まれること、これら三点の区別が税務上のポイントです。相続税の全体像は相続税2026年完全ガイドで詳しく解説しています。

【ポイント】 「死亡退職金」も同様に受取人固有の財産として放棄しても受け取れる場合がありますが、保険金とは規程・税務の扱いが異なります。高額な保険金・退職金がある場合は、放棄前に税理士へ相続税への影響を確認してください。

根拠: 民法第896条・第939条、相続税法第3条・第12条(みなし相続財産・非課税枠)、最高裁判例(死亡保険金は受取人固有の財産)。


9. 家庭裁判所への申述手順|必要書類・費用・期限

9-1. 申述先と方法

相続放棄は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対し、相続放棄の申述を行います(相続人の住所地ではない点に注意)。郵送での提出も可能です。

9-2. 主な必要書類

# 書類 備考
1 相続放棄申述書 裁判所ウェブサイトに様式・記載例あり
2 被相続人の住民票除票(または戸籍附票) 最後の住所地の確認用
3 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍)謄本 続柄により追加の戸籍が必要
4 申述人(放棄する人)の戸籍謄本 被相続人との関係を示すもの
5 収入印紙 申述人1人につき 800円
6 連絡用の郵便切手 金額は管轄裁判所により異なる

9-3. 手続きの流れ

ステップ 内容
1 相続財産(プラス・マイナス)を調査し、放棄するか判断
2 申述書を作成し、必要書類・収入印紙・切手を準備
3 被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ提出(窓口または郵送)
4 後日、裁判所から「照会書(回答書)」が届くので回答・返送
5 受理されると「相続放棄申述受理通知書」が届く
6 債権者対応等で必要なら「相続放棄申述受理証明書」を取得(債権者へ提示)

根拠: 民法第915条・第921条・第938条、裁判所「相続の放棄の申述」。


10. よくある質問(FAQ)

A

相続放棄が家庭裁判所に受理されれば、その人は初めから相続人でなかったものとみなされ、被相続人の借金や連帯保証債務を引き継ぎません。ただし、遺産分割協議で「何も要らない」と合意しただけでは法的な相続放棄にはならず、債権者からの請求を免れません。借金から確実に解放されるには、家庭裁判所での正式な相続放棄手続きが必要です。なお、放棄により次順位の相続人(親・兄弟姉妹)に借金が回るため、事前に知らせておくのが実務上望ましいです。

A

原則として熟慮期間(3か月)内に申述する必要がありますが、「相続財産がまったく存在しないと信じ、そう信じることに相当な理由があった」等の事情があれば、起算点を借金を知った時とみて放棄が認められる場合があります。これは例外的な救済で、認められるかは個別事情によります。期限経過後は難易度が大きく上がるため、自己判断せず速やかに弁護士・司法書士へ相談してください。

A

放棄した財産のうち「放棄の時に現に占有している」ものについては、次順位の相続人や相続財産清算人に引き渡すまで、一定の保存義務が残ります(2023年4月施行の改正民法第940条)。一度も占有したことのない遠方の不動産は対象外と整理されやすい一方、同居していた家屋などは引き渡しまで管理が必要です。全員が放棄して引き継ぐ人がいない場合は、相続財産清算人の選任(予納金が必要なことが多い)まで解放されないことがあります。

A

受取人として指定されている場合、死亡保険金は受取人固有の財産であり相続財産に含まれないため、相続放棄をしても受け取れます。ただし税務上は「みなし相続財産」として相続税の課税対象になり、さらに相続放棄をした人は「500万円×法定相続人の数」の生命保険金非課税枠を使えない点に注意が必要です。詳しくは相続税2026年完全ガイドをご覧ください。

A

借金など土地以外のマイナス財産がある、または財産全体を引き継ぎたくないなら相続放棄が適します。一方、借金はなく欲しい財産(預金・自宅など)はあるが特定の土地だけ不要という場合は、土地だけを手放せる相続土地国庫帰属制度が適します。ただし国庫帰属は要件が厳しく、建物がある土地は申請できない(却下事由)ため解体が必要で、審査手数料(土地一筆14,000円、返還不可)と10年分の管理費相当の負担金の納付が必要です。3か月の期限がある相続放棄を先に検討し、国庫帰属は期限がないため後から検討する順序が現実的です。

A

申述書の様式は裁判所ウェブサイトにあり、本人での手続きも可能です。費用は収入印紙(申述人1人につき800円)+連絡用郵便切手+戸籍等の取得実費(数千円程度)で、専門家に依頼しない場合は少額で済みます。司法書士・弁護士に依頼する場合は別途報酬がかかります。相続人の範囲が複雑(兄弟姉妹・数次相続など)、または3か月経過後・債権者対応が絡むケースでは、専門家への依頼を検討してください。


11. まとめ|相続放棄2026年の押さえどころ

2026年6月時点の現行制度では、相続放棄は「自己のために相続の開始があったことを知った時から原則3か月以内」に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ申述して行います。押さえるべきは次の5点です。

  1. プラスもマイナスも一切相続しない(いいとこ取り不可)。借金から確実に解放されるには家庭裁判所での正式手続きが必要
  2. 3か月の起算点は死亡日ではなく「知った時」。間に合わないときは熟慮期間満了前に期間伸長を申し立てる
  3. 放棄後も「現に占有している」財産には保存義務が残る場合がある(2023年改正)。引き継ぐ人がいないと相続財産清算人の選任が必要
  4. 負動産は放棄か国庫帰属かを使い分ける。借金があるなら放棄、土地だけ不要なら国庫帰属(負担金あり)
  5. 相続放棄は受理後は原則撤回不可。生命保険金は受け取れても相続税の課税対象になるなど、税務と民法で扱いが異なる

相続放棄は一度受理されると原則やり直せない、影響の大きい手続きです。借金・負動産・数次相続が絡む判断は、弁護士・司法書士・税理士などの専門家に相談したうえで決定してください。

【免責】 本記事は2026年6月17日時点の公開情報に基づく一般的な解説であり、個別の相続放棄の可否・税務判断を保証するものではありません。相続放棄は家庭裁判所に受理されると原則として撤回できません。 期限(3か月)・必要書類・収入印紙額・国庫帰属の負担金等は管轄家庭裁判所・法務局・裁判所ウェブサイトで必ず最新情報をご確認のうえ、判断に迷う場合は弁護士・司法書士・税理士へご相談ください。


参考一次ソース

  • 裁判所「相続の放棄の申述」: https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazikenkasitu/syosiki_01_17/index.html
  • 裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」: https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazikenkasitu/syosiki_01_16/index.html
  • 法務省「民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)について」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html
  • 法務省「相続土地国庫帰属制度について」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00454.html
  • e-Gov 法令検索「民法」: https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
  • e-Gov 法令検索「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」
JG

実務ガイド編集部

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