相続土地国庫帰属制度 実務ガイド2026|要らない土地を国へ返す手順・費用・却下事由を完全解説

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相続土地国庫帰属制度 実務ガイド2026|要らない土地を国へ返す手順・費用・却下事由を完全解説
目次▼

最終更新日: 2026年10月

結論から言えば、相続した土地を国に引き取ってもらうには「審査手数料(1筆14,000円)」と「負担金」の2段階の費用がかかります。負担金は地目・地域・面積によって異なり、市街化区域外の宅地や原野等は一律20万円、市街化区域・農用地区域・土地改良事業等の区域内にある宅地や農地・すべての森林は面積に応じて算定されます。法務省が公表する最新の数値(令和8年8月31日現在)では申請累計5,997件・帰属3,119件と制度は着実に利用されていますが、却下85件・不承認100件の実績も示すとおり、すべての土地が引き取られるわけではありません。なお、相続登記が済んでいない土地でも、相続を証する書面を添付すれば申請できます。

免責事項: 本記事は一般的な制度解説であり、個別案件の法的判断・税務判断を提供するものではありません。適用可否は個人の状況によって異なります。最新情報は法務省ウェブサイトまたは司法書士・弁護士にご確認ください。本記事の情報に基づいて行動した結果生じた損害については、当サイトは責任を負いません。


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【早わかり】制度の基本情報

項目 内容
制度名 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和三年法律第二十五号)
施行日 令和5年(2023年)4月27日
申請先 土地が所在する都道府県の法務局・地方法務局の本局(不動産登記部門)。支局・出張所では受け付けない
審査手数料 1筆あたり14,000円(返還不可)
負担金 地目・地域・面積に応じて算定(下表参照)
申請できる人 相続または相続人への遺贈で土地を取得した者
審査の標準処理期間 8か月(法務省Q&A 3-12。事案によって超える場合あり)
見直し時期 施行後5年経過後(目安:令和10年=2028年4月頃)

根拠条文: 審査手数料は「相続土地国庫帰属法施行令(令和4年政令第316号)第3条」、負担金は「法第10条第1項」と「施行令第5条」。


1. 制度の目的と背景

1-1. なぜこの制度ができたのか

日本では近年、相続を機に「管理できない・売れない・手放したい」という土地が増加しています。山間地の山林、農村部の農地、都市近郊でも利用見込みのない宅地など、地方に点在する「負動産」問題は深刻化の一途を辿ってきました。

従来の法制度では、相続した土地を手放す手段が事実上なく、固定資産税の負担だけが続くという状況がありました。相続放棄という選択肢はあるものの、これは「プラスの財産も含めた全財産の放棄」を意味するため、メインの財産は引き継ぎつつ特定の不要な土地だけを放棄したいというニーズには対応できませんでした。

こうした背景から、特定の土地に限って国に返納できる制度として、「相続土地国庫帰属制度」(正式名称:相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律)が令和3年に成立し、令和5年(2023年)4月27日に施行されました。

1-2. 制度の位置づけ

本制度は土地の一方的な「放棄」ではなく、法務大臣の承認を受けて国に引き取ってもらう手続きです。国が引き取れる土地かどうかを審査し、承認された場合に申請者が負担金を納付すると、納付した時点で土地の所有権が国庫に帰属します(法第11条第1項)。国が代金を払うのではなく、申請者が10年分の管理費用相当の負担金を払う点が売却とは逆です。移転後の登記手続きは国が行うため、申請者が改めて登記申請する必要はありません。


2. 最新運用状況(法務省統計・令和8年8月31日現在)

2-1. 全体概況

法務省が公表する最新の数値(令和8年8月31日現在・2026年9月16日掲載)は以下のとおりです。

区分 件数
申請累計(総数) 5,997件
 うち 田・畑 2,335件
 うち 宅地 2,091件
 うち 山林 902件
 うち その他 669件
帰属(総数) 3,119件
 うち 宅地 1,164件
 うち 農用地 989件
 うち 森林 203件
 うち その他 763件
却下 85件
不承認 100件
取下げ 1,139件

出典: 法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00579.html(2026-10-03参照)
注記: 数値は随時更新されます。最新の数値は法務省の公式ページでご確認ください。

2-2. 取下げ理由の内訳

取下げ1,139件の理由内訳も法務省が公開しています。

取下げ理由 件数
総数 1,139件
有効活用の見込みが生じた 586件
却下・不承認であることが判明した 405件
その他 148件

取下げ件数のうち約51%が「有効活用の見込みが生じた」となっており、申請後に土地の活用方法が見つかるケースも一定数あることがわかります。

地目別の「承認率」について: 法務省は地目別の承認率を公表していません。申請件数は申請時の地目(田・畑・宅地・山林)で、帰属件数は帰属後の国有地の種目(宅地・農用地・森林)で数えられており、分類が一致しないため、両者を割り算した値は承認率として使えません。


3. 申請できる人・対象となる土地

3-1. 申請権者の要件

申請できるのは、相続または相続人に対する遺贈によって土地を取得した者に限られます(法第2条)。

要件 詳細
相続による取得 法定相続・遺産分割協議による相続 ○
相続人への遺贈 遺言で相続人に土地を遺贈した場合 ○
第三者への遺贈 相続人以外への遺贈(例:内縁の配偶者・友人・法人)×
売買・贈与による取得 相続以外の原因による取得 ×(共有の場合の例外は3-2参照)
制度開始前の相続 令和5年4月27日より前に相続した土地 ○(数十年前の相続も対象)
相続登記が未了 相続を証する書面(戸籍事項証明書等)を添付すれば申請可 ○

法務省Q&A(2-1)より: 「相続又は遺贈を原因として土地の所有者となった方がすることができます」。ただし「法定相続人以外の者が遺贈により取得した土地は本制度の対象外です」(Q&A 6-2)。相続登記をしていない土地も「相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限ります。)によって取得したのであれば、申請することができます」(Q&A 6-3)。

3-2. 共有土地の取り扱い

相続した土地が複数の相続人による共有状態にある場合、共有者全員で申請しなければなりません(法第2条第2項)。1人でも同意しない共有者がいる場合には申請できません(法務省Q&A 6-7)。兄弟間で意見が分かれやすいこの点は、実務上の最大のハードルの一つです。

一方で、共有者の中に売買など相続以外の原因で持分を取得した人がいても、相続等で持分を取得した共有者がいれば、全員が共同することで申請できます(法第2条第2項後段)。


4. 却下される土地(法第2条第3項各号)

申請前の形式審査・要件審査の段階で却下(申請を受け付けない)となる土地は以下の5類型です。

号 類型 具体的な内容
一号 建物がある土地 登記・未登記を問わず、建物が存在する土地。建物を解体すれば申請できる
二号 担保権等が設定されている土地 抵当権・地上権・地役権・賃借権等が設定された土地。抹消が必要
三号 他人の利用が予定されている土地 現に通路の用に供されている土地、墓地内の土地、境内地、現に水道用地・用悪水路・ため池の用に供されている土地(施行令第2条)
四号 土壌汚染がある土地 土壌汚染対策法に規定する特定有害物質により汚染されている土地
五号 境界不明・所有権争いのある土地 境界が明らかでない土地、所有権の存否・帰属・範囲に争いがある土地

出典: 法令原文は「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」第2条第3項(e-Gov法令 https://laws.e-gov.go.jp/law/503AC0000000025)

実際の却下85件(令和8年8月31日現在)の内訳をみると「添付書類の提出がなかった(37件)」「境界が明らかでない(23件)」「現に通路の用に供されている(22件)」が上位を占めます(1件に複数の理由が認められる場合があるため、内訳の合計は総数と一致しません)。却下はいずれも法第4条第1項に基づくもので、上の5類型に該当する土地は同項第2号(第2条第3項違反)、添付書類の不提出も同項第2号(第3条違反)、申請の権限を有しない者の申請(10件)は同項第1号による却下です。正当な理由なく実地調査に応じない場合も却下されます(同項第3号)。書類準備の不備による却下が相当数あることに注意が必要です。


5. 不承認となる土地(法第5条第1項各号)

書面審査・実地調査後の実質審査で「国が管理するには不適切」と判断されると不承認になります。法第5条第1項の5類型です。

号 類型 具体的な内容
一号 崖がある土地(管理に過分の費用) 勾配30度以上かつ高さ5メートル以上の崖があり(施行令第4条第1項)、その通常の管理に過分の費用・労力を要する土地
二号 地上に管理阻害工作物等がある土地 廃屋・放置車両・倒木等の工作物・樹木が存在し、通常管理を阻害する土地
三号 地下に除去が必要な有体物がある土地 産業廃棄物・旧建築資材・浄化槽・井戸等が地下に存在する土地
四号 隣接所有者との争訟が必要な土地 (1)民法上の通行権が妨げられている土地、(2)所有権行使が妨害されている土地
五号 その他、通常の管理に過分の費用・労力を要する土地 (1)災害危険で措置が必要な土地、(2)動物被害をもたらす土地、(3)市町村森林整備計画に適合せず、追加の造林・間伐・保育が必要な森林、(4)国庫帰属後に国が管理費用以外の金銭債務を負うことが確実な土地、(5)申請者の金銭債務を国が承継することになる土地(施行令第4条第3項)

実際の不承認100件(令和8年8月31日現在)の内訳では「管理・処分を阻害する工作物等が地上にある(46件)」「国による追加の整備が必要な森林(37件)」「国庫帰属後に国が管理費用以外の金銭債務を負担する土地(12件)」「災害の危険により措置が必要(11件)」が上位を占めます(1件に複数の理由が認められる場合があるため、内訳の合計は総数と一致しません)。山林を申請する場合は、追加の整備が必要な森林に当たらないかが大きな分かれ目になります。


6. 費用の全体像:手数料と負担金

相続土地国庫帰属制度を利用する際の費用は「審査手数料」と「負担金」の2段階です。

6-1. 審査手数料(申請時・返還不可)

項目 金額 根拠
審査手数料 1筆あたり14,000円 施行令(令和4年政令第316号)第3条

【重要】 手数料は申請書に収入印紙を貼付して納付します。申請を取り下げた場合、却下・不承認になった場合でも返還されません。「とりあえず申請してみる」という姿勢はリスクが高く、事前に要件を十分に確認することが重要です。

6-2. 負担金の算定区分(承認後・納付必須)

負担金は「国有地の種目ごとにその管理に要する10年分の標準的な費用の額を考慮して算定した額」(法第10条第1項)とされており、地目と地域・面積によって大きく異なります。

「負担金は原則20万円」という説明が流通していますが、正確ではありません。 以下の表で区分を確認してください。

(A)宅地の負担金

地域区分 面積 算定方式
市街化区域・用途地域外 — 一律20万円(定額)
市街化区域・用途地域内 50㎡以下 地積 × 4,070円 + 208,000円
同 50〜100㎡ 地積 × 2,720円 + 276,000円
同 100〜200㎡ 地積 × 2,450円 + 303,000円
同 200〜400㎡ 地積 × 2,250円 + 343,000円
同 400〜800㎡ 地積 × 2,110円 + 399,000円
同 800㎡超 地積 × 2,010円 + 479,000円

(1,000円未満は端数切り捨て。施行令第5条第2項)

計算例: 市街化区域内の150㎡宅地 → 150 × 2,450円 + 303,000円 = 670,500円 → 670,000円(端数切り捨て)

(B)農地(田・畑)の負担金

地域区分 面積 算定方式
市街化区域・農用地区域・土地改良区域外 — 一律20万円(定額)
上記区域内 250㎡以下 地積 × 1,210円 + 208,000円
同 250〜500㎡ 地積 × 850円 + 298,000円
同 500〜1,000㎡ 地積 × 810円 + 318,000円
同 1,000〜2,000㎡ 地積 × 740円 + 388,000円
同 2,000〜4,000㎡ 地積 × 650円 + 568,000円
同 4,000㎡超 地積 × 640円 + 608,000円

(C)森林の負担金

森林はすべての面積・地域について面積に応じた算定となります(定額20万円の特例はありません)。

面積区分 算定式
750㎡以下 地積 × 59円 + 210,000円
750〜1,500㎡ 地積 × 24円 + 237,000円
1,500〜3,000㎡ 地積 × 17円 + 248,000円
3,000〜6,000㎡ 地積 × 12円 + 263,000円
6,000〜12,000㎡ 地積 × 8円 + 287,000円
12,000㎡超 地積 × 6円 + 311,000円

計算例: 500㎡の山林 → 500 × 59円 + 210,000円 = 239,500円 → 239,000円(端数切り捨て)

(D)原野・雑種地・その他

宅地・農地・森林以外の土地は一律20万円(定額)。

負担金の算定に使う面積は、現況ではなく登記記録の地積です。現況と異なる場合は、承認前に地積更正・地積変更の登記をするのが原則とされています(法務省Q&A 9章)。

出典: 施行令(令和4年政令第316号)第5条(e-Gov法令 https://laws.e-gov.go.jp/law/504CO0000000316)、法務省負担金ページ https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00471.html

6-3. 隣接する複数筆の負担金を合算する特例(施行令第6条)

隣接する2筆以上の土地が、いずれも上の(A)〜(D)の同じ区分に属する場合、申出によって1筆の土地とみなして負担金を算定してもらえます(施行令第6条第1項)。面積に応じて算定する区分では、1筆ごとに加算額(区分と面積により20万8千円〜60万8千円)がかかるのを1回分にできるため、費用を抑えられる可能性があります。隣接する土地の所有者が異なる場合は、所有者が共同で申し出る必要があります(同条第2項)。

6-4. 負担金の納付方法と期限

承認後、法務局から承認通知・負担金の額の通知・納入告知書が送付されます。受領した翌日から30日以内に、日本銀行・日本銀行代理店の窓口、またはインターネットバンキングやATMでの電子納付で納付しなければなりません。30日以内に納付しないと承認は効力を失います(法第10条第3項)。負担金の分割納付はできず、共有地の場合も一括で納付します(法務省Q&A 9章)。

納付が完了した時点で土地の所有権が国へ移転し、移転登記は国が行います。


7. 申請から帰属までの流れ

7-1. 全体ステップ

STEP 1  事前確認
  申請できない土地(却下事由)に該当しないか確認。
  境界確認・建物解体・抵当権抹消など前処理が必要な場合は事前に対応。

STEP 2  申請書類の準備
  申請書(法務省の様式)に、土地の位置・範囲を示す図面、
  隣接地との境界点の写真、土地の形状の写真、申請者の印鑑証明書を添付。
  相続登記が未了なら、登記名義人から相続があったことを証する書面
  (戸籍事項証明書・遺産分割協議書等)も添付する。

STEP 3  申請書提出(法務局窓口または郵送)
  土地が所在する都道府県の法務局・地方法務局の本局(不動産登記部門)へ。
  郵送は書留郵便かレターパックプラス。支局・出張所は受付不可。
  審査手数料(1筆14,000円)の収入印紙を申請書に貼付。

STEP 4  書面審査(法務局)
  却下事由(法2条3項各号)に該当しないかを審査。
  不備・却下事由があれば却下通知(手数料返還なし)。

STEP 5  実地調査(法務局)
  法務局職員が現地を確認。不承認事由(法5条1項各号)の有無を判断。

STEP 6  承認・負担金通知
  審査通過で承認。負担金の額が記載された通知・納入告知書が届く。

STEP 7  負担金の納付(30日以内)
  日本銀行・代理店の窓口、または電子納付。
  期限超過で承認失効。

STEP 8  所有権移転(登記は国が実施)
  負担金納付確認後、法務局が職権で所有権移転登記を実施。
  手続き完了後、申請者の土地管理義務は消滅。

7-2. 申請前の重要チェックポイント

①境界が明確か
境界不明は主な却下事由の一つ(却下85件中23件)。登記所備付地図や隣接地との実測確認を事前に行う。確定測量図があれば申請がスムーズです。

②建物・工作物の存否
古い納屋・倉庫・廃屋が残っていないか確認。未登記建物も却下対象。解体して滅失登記を完了させてから申請。

③抵当権・地上権等の登記を確認
担保権や使用権が残っていると却下。申請前に抹消登記を済ませる。

④山林は造林・間伐の実施状況を確認
市町村森林整備計画に適合せず、追加の造林・間伐・保育が必要な森林は不承認事由(不承認100件中37件)。山林を申請する場合は、適切な森林管理が行われているかを確認しておく。


8. 相続放棄との違い・使い分け

「相続放棄」と「相続土地国庫帰属制度」は、「相続した財産を手放す」という点で混同されやすいですが、仕組みはまったく異なります。

比較項目 相続放棄 相続土地国庫帰属制度
手放せる範囲 全財産(プラス・マイナス含め) 特定の土地だけ
費用 家庭裁判所への申述費用(収入印紙800円+連絡用の郵便切手等) 審査手数料14,000円/筆+負担金(最低20万円〜)
期限 自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内 制度上の期限なし(ただし相続登記は義務化)
現金・株式等 一緒に放棄 現金・株式等は引き続き相続できる
特定の土地だけ放棄 不可 可能
利用場面 債務超過・マイナス財産が多い場合 現金・有価証券等は相続しつつ不要な土地のみ手放したい場合

重要: 相続放棄は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」という厳格な期限があります(家庭裁判所に申し立てて伸長できる場合があります)。この期限を過ぎると放棄できなくなるため、相続開始直後から選択肢を検討することが必要です。相続放棄の手続き詳細は相続放棄の手続き完全ガイド2026をご参照ください。

なお、国庫帰属の申請自体は相続登記が未了でも可能です(相続を証する書面の添付が必要。法務省Q&A 6-3)。ただし、申請を取り下げたり却下・不承認になったりすると土地は申請者の所有のまま残るため、その場合は相続登記(相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内の申請義務)が必要になります。相続登記義務化のガイドもあわせてご確認ください。


9. 附則の見直し規定と今後の動向

相続土地国庫帰属法の附則第2項には、以下の見直し規定が設けられています。

附則第2項(原文): 「政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」

施行日が令和5年(2023年)4月27日であることから、見直し時期の目安は令和10年(2028年)4月頃となります。

令和8年(2026年)10月時点では、附則に基づく制度改正の内容は未定です。運用統計(令和8年8月31日現在で申請5,997件・帰属3,119件)を踏まえ、負担金の水準・対象土地の範囲・申請要件の緩和等について議論が行われる可能性があります。2028年以降に制度変更があれば、本記事も更新します。


10. FAQ

Q1. 相続登記をまだしていませんが、国庫帰属の申請はできますか?

できます。法務省のQ&A(6-3)は「相続登記が未了であっても、申請する土地を相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限ります。)によって取得したのであれば、申請することができます」としています。この場合は、登記名義人から相続があったことを証する書面(被相続人の出生から死亡までの戸籍、相続人の戸籍、遺産分割協議書など)を添付します。ただし、取下げ・却下・不承認になると土地は申請者の所有のまま残るため、その場合は相続登記を申請する必要があります。相続登記の義務については相続登記義務化のガイドをご参照ください。

Q2. 「境界が明らかでない」とはどういう状態ですか?どう確認すればよいですか?

登記所備付地図(公図)上の境界が現地と一致していない、または隣接地所有者との境界合意が取れていない状態を指します。実際の却下事例でも23件(令和8年8月31日現在)が境界不明で却下されています。確認方法としては、①法務局で公図・地積測量図を取得して現地との整合を確認する、②土地家屋調査士に依頼して境界確認・確定測量を実施する、の2段階が一般的です。費用は数十万円かかる場合もありますが、申請手数料(14,000円)を無駄にしないためにも事前確認を推奨します。

Q3. 山林の国庫帰属は難しいと聞きましたが、実際のところはどうですか?

法務省は地目別の承認率を公表していません。ただし、不承認100件(令和8年8月31日現在)のうち37件が「国による追加の整備が必要な森林」を理由としており、山林特有の不承認事由が大きな割合を占めています。山林を申請する場合は、(1)適切な森林管理が行われているかの確認、(2)崖・土砂崩れリスクの有無、(3)林業関係者・森林組合への事前相談、を行った上で臨むことをお勧めします。

Q4. 申請から帰属決定まで、どのくらい時間がかかりますか?

法務省のQ&A(3-12)では「標準処理期間は8か月とされていますが、事案によっては標準処理期間を超える場合もあります」とされています。書面調査と実地調査を行うため、土地の状況によっては長引きます。受付時に標準的な処理期間の目安が伝えられるほか、申請前に申請先の法務局(本局)に相談することもできます。

Q5. 複数の兄弟で共有している土地を申請したいのですが、1人が反対しています。

共有土地の申請は共有者全員の同意が必要です(法務省Q&A 6-7)。1人でも反対する共有者がいる場合には、その土地についての国庫帰属申請はできません。この場合の選択肢としては、(1)反対する共有者から持分を買い取る、(2)共有物分割請求を行う、(3)土地の売却活動を継続する、等が考えられます。相続土地をめぐる共有者間のトラブルは複雑になりやすいため、弁護士・司法書士への相談をお勧めします。

Q6. 負担金を納付せずに放置するとどうなりますか?

承認通知と合わせて届く負担金通知の到達翌日から30日以内に納付しないと、承認は効力を失います(法第10条第3項)。納付は強制ではなく、金額を見て納付しないという選択もできます(法務省Q&A 9章)。承認が失効した場合でも、審査手数料(14,000円/筆)は返還されません。その後、改めて申請を行うことは可能ですが、改めて手数料と審査を要します。資金の準備ができているかを確認した上で申請することが重要です。


まとめ

相続土地国庫帰属制度(令和5年4月27日施行)は、「相続した不要な土地を、ほかの財産には影響を与えずに手放したい」というニーズに応える制度です。

制度利用の要点を整理します。

  1. 費用は2段階: 審査手数料1筆14,000円(返還不可)+承認後の負担金(最低20万円〜、地目・地域・面積で異なる)
  2. 負担金は一律ではない: 市街化区域外の宅地・農用地区域等外の農地・原野等は一律20万円定額。市街化区域・農用地区域・土地改良事業等の区域内にある宅地や農地・すべての森林は面積比例算定
  3. 却下事由5類型・不承認事由5号を事前確認: 境界不明・建物の存在・抵当権残存が主な却下理由。山林は造林・間伐未実施で不承認になりやすい
  4. 共有土地は全員合意が必要: 1人でも反対すると申請不可
  5. 相続放棄との違いを理解する: 本制度は「特定の土地だけ手放せる」が「費用がかかる」。相続放棄は「全財産放棄」だが「費用が低廉」

不要な土地を抱えていると固定資産税や管理費用が発生し続けます。制度の要件を確認した上で、司法書士・弁護士に相談しながら活用を検討することをお勧めします。相続税全体の負担については相続税2026年完全ガイドもあわせてご参照ください。


出典
– 法務省「相続土地国庫帰属制度について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html(参照日: 2026-10-03)
– 法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」(令和8年8月31日現在)https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00579.html(参照日: 2026-10-03)
– 法務省「相続土地国庫帰属制度に関するQ&A」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00459.html(参照日: 2026-10-03)
– 法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00471.html(参照日: 2026-10-03)
– 裁判所「相続の放棄の申述」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html(参照日: 2026-10-03)
– e-Gov法令「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和三年法律第二十五号)」https://laws.e-gov.go.jp/law/503AC0000000025(参照日: 2026-10-03)
– e-Gov法令「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令(令和4年政令第316号)」https://laws.e-gov.go.jp/law/504CO0000000316(参照日: 2026-10-03)

免責事項: 本記事は2026年10月3日時点の情報に基づく一般的な制度解説です。制度の適用可否・費用の算定は個人の状況によって異なります。最終的な判断は法務省の公式情報の確認、または司法書士・弁護士・税理士にご相談ください。本記事の情報に基づいて行動した結果生じた損害については、当サイトは責任を負いません。


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実務ガイド編集部

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