iDeCo加入年齢70歳未満への引上げ|2026年12月1日施行『第5号加入者』は誰が対象か

本記事は法令・通達・官公庁資料に基づき編集部が作成・検証しています。個別の法的・税務判断ではありません。最新の法令はe-Gov法令検索でご確認ください。
iDeCo加入年齢70歳未満への引上げ|2026年12月1日施行『第5号加入者』は誰が対象か
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この記事の結論(30秒サマリ)

  • 2026年12月1日、令和7年法律第74号に基づき、iDeCoに加入・拠出できる年齢の上限が70歳未満まで引き上げられます。本記事作成時点(2026年9月14日)ではまだ施行前です。
  • ただし「70歳まで誰でも入れるようになる」という理解は不正確です。新設される「第5号加入者」の対象は、60歳以上70歳未満で国民年金被保険者ではない人のうち、①すでにiDeCo加入者である、②iDeCoの運用指図者である、③企業年金からiDeCoへ資産を移換する、のいずれかに該当し、かつ老齢基礎年金の受給権の裁定を受けておらず・iDeCo老齢給付金の受給権を有しておらず、マッチング拠出もしていない人に限定されます(老齢基礎年金を繰り下げて老齢厚生年金だけを受給している人は対象外になりません)。
  • 一方、施行日(2026年12月1日)から3年間(令和11年=2029年11月末まで)に「申出」ができる経過措置があります。ただし対象になれるかどうかは申出時点ではなく施行日、または施行日から1年以内の状態で決まるため、「3年間は誰でも新規加入しやすい」という理解は誤りです(詳細は§2-2)。
  • 拠出限度額は第5号加入者も月62,000円(企業年金等との合算枠)が上限です。
  • 拠出を続けている間は老齢給付金を受け取れません。「70歳まで拠出を延ばす」か「60代前半で受け取り始める」かは二者択一であり、本記事のいちばんの判断ポイントです。

本記事は2026年9月14日時点の情報に基づきます。iDeCoは運用商品により元本が変動し、損失が生じる場合があります。制度の詳細・最新情報は厚生労働省・iDeCo公式サイト(https://www.ideco-koushiki.jp/)でご確認ください。個別の加入判断・税務判断は社会保険労務士・税理士など専門家へのご相談を推奨します。詳細は免責事項をご覧ください。


1. 何が変わるのか(結論と全体像)

1-1. 根拠法・施行日

今回の改正は、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」(令和7年法律第74号)に基づきます。2025年6月13日に成立、同年6月20日に公布されました。

加入年齢引上げの施行日は、令和7年政令第441号・第442号によって2026年12月1日と確定しています。「政令で定める日」という留保はすでに解消されており、大綱・審議会段階の見込み情報ではなく確定した法令情報です。厚生労働省年金局長通知(年発1224第1号・令和7年12月24日)でも「施行の日(令和8年12月1日)」と明記されています。

なお、iDeCo自体の制度・拠出限度額・税制優遇の全体像はiDeCo完全ガイド2026、拠出限度額の職業別内訳と穴埋め計算はiDeCo拠出限度額引き上げ2027で詳しく解説しています。本記事はそれらでは深掘りしきれていない「加入年齢の引上げそのものの対象要件」に絞って解説します。

1-2. 現行制度のおさらい

現行制度では、iDeCoに加入・拠出できるのは「国民年金被保険者」であって「老齢基礎年金・iDeCoの老齢給付金を受給していない」人に限られます。60歳以降でいうと、実務上加入を続けられるのは次の2パターンだけです。

  • 厚生年金に加入して働き続ける人(第2号被保険者)
  • 国民年金の任意加入被保険者(第4号加入者、原則65歳未満まで)

つまり現行制度では、厚生年金に加入して働いている会社員でも、iDeCoに拠出できるのは65歳までです。国民年金法附則第3条により、65歳以上の第2号被保険者は「老齢給付等の受給権を有しない者」に限られており、老齢厚生年金・老齢基礎年金の受給権は65歳到達(受給資格期間10年)で請求の有無にかかわらず発生するため、65歳以上の厚生年金加入者の大半はそもそも第2号被保険者ではなくなります。国民年金被保険者でなくなる以上、現行のiDeCo加入要件(国民年金被保険者であること)も満たせません。今回の改正の目玉は、まさにこの「65歳で第2号被保険者でなくなり拠出を止めざるを得ない会社員」を含め、自営業を続ける人・企業年金からの資産移換者・すでに加入している運用指図者などに対象を広げる点にあります。

1-3. 改正後:「第5号加入者」の新設

改正後は、上記の要件に加えて、国民年金被保険者でない60歳以上70歳未満の人の一部にも、加入・継続拠出を認める区分が新設されます。これが確定拠出年金法第62条第4項第2号に定める「第5号加入者」です(第1号〜第4号の既存区分に新しく追加される区分で、俗称ではなく法令上の正式な呼び方です)。

1-4. 現行と改正後の対比

項目 現行(2026年11月30日まで) 改正後(2026年12月1日〜)
加入可能年齢の上限 第1号=60歳未満、第2号=65歳未満、第3号=60歳未満、第4号(任意加入)=65歳未満 70歳未満(第5号加入者として)
国民年金被保険者であることの要否 必要 第5号加入者は国民年金被保険者でなくても加入可
該当する加入者区分 第1号〜第4号加入者 第1号〜第4号に加え第5号加入者を新設(①iDeCo加入者/②運用指図者/③企業年金資産移換者。老齢基礎年金・iDeCo老齢給付金を未受給かつマッチング拠出未実施であることが要件)
拠出限度額 区分により異なる(本記事では割愛) 第5号加入者は月62,000円(企業年金等との合算枠)

2. 「第5号加入者」の対象要件(誤解しやすいポイント)

2-1. 「70歳まで誰でも入れる」ではない

見出しやSNSの要約で「iDeCo加入年齢70歳未満に引上げ」とだけ聞くと、60〜70歳未満なら無条件で新規加入できるように読めてしまいますが、恒久ルールとしての第5号加入者は対象が限定されています。

第5号加入者になれるのは、60歳以上70歳未満で国民年金被保険者ではない人のうち、次の①〜③のいずれかに該当し、かつ後述の除外要件に当てはまらない人です。

対象パターン 内容
① iDeCo加入者 すでにiDeCoに加入し拠出を続けている人が、60歳到達後も国民年金被保険者資格を失った後で継続する場合
② iDeCo運用指図者 拠出は止めているが、iDeCo口座内で資産を保有し運用のみ続けている人
③ 企業年金からの資産移換者 退職等に伴い、企業型DC・DBの資産をiDeCoに移換する人。確定拠出年金法第62条第1項第5号が定める移換は4類型あります:(a)企業型DCの個人別管理資産の移換(同法第82条第1項)、(b)確定給付企業年金の脱退一時金相当額の移換(確定給付企業年金法第82条の3第1項)、(c)同・残余財産の移換(同法第82条の4第1項)、(d)同・積立金の移換(同法第91条の28第1項)

※ (b)〜(d)に該当して第5号加入者になった人は、厚生労働省令で定める期間内に移換の申出をしないと資格を喪失し、確定拠出年金法第62条第5項により資格を取得した日に遡って加入者でなかったものとみなされます。期限内の申出を忘れないでください。

さらに、①〜③のいずれかに該当していても、次のいずれかに当てはまると第5号加入者になれません。根拠となる条文が2箇所に分かれているので、条文を直接確認する方は注意してください。

  • iDeCoの老齢給付金の受給権を有する者、またはその受給権を有していた者(すでに一時金を受け取り終えた人も含みます)……確定拠出年金法第62条第2項第1号
  • 老齢基礎年金を受ける権利の裁定を受けた者……同条第2項第2号
  • マッチング拠出(企業型DCで加入者自身も上乗せ拠出する制度)を実施している者……同条第1項第5号の括弧書き「(企業型掛金拠出者等を除く。)」。「企業型掛金拠出者等」の中身は同項第2号が「企業型年金加入者掛金を拠出する企業型年金加入者その他政令で定める者」と定義しています

ただし、老齢基礎年金を繰り下げて老齢厚生年金だけを受給している人は対象外になりません。繰下げ待機中は老齢基礎年金の裁定を受けていないため、上記の除外要件に当たらないからです(厚生労働省資料の脚注)。60代で繰下げ受給と就労継続をあわせて検討している人にとっては重要な例外です。逆に、施行日までに老齢基礎年金またはiDeCoの老齢給付金をすでに受給した場合は加入不可である点もあわせて押さえてください。

つまり「今まで一度もiDeCoに触れたことがなく、企業年金もない60〜70歳未満の人」は、恒久ルールの第5号加入者の対象にはなりません。この点は必ず押さえておいてください。

2-2. 経過措置:対象は「施行日時点の状態」で決まる

令和7年改正法附則第33条第1項により、施行日(2026年12月1日)から3年間、つまり令和11年(2029年)11月末までは連合会に「申出」をすることができます。ただし、ここでいう3年間は申出ができる期間であって、対象になれるかどうか(資格そのもの)は施行日、または施行日から1年以内の状態で決まります。「3年間はいつでも誰でも新規加入しやすい」という理解は誤りです。

附則第33条第1項は、次の2類型のいずれかに該当し、かつ①申出の時点で日本国内に住所を有すること、②企業型掛金拠出者等(=マッチング拠出をしている人等)でないことを満たす人を対象としています。さらに同条第2項により、第62条第2項の除外要件(iDeCo老齢給付金の受給権を有する/有していた者、老齢基礎年金の裁定を受けた者)も経過措置に及びます。

類型 資格が決まるタイミング 要件
第1号型 施行日(2026年12月1日)時点 施行日において第62条第1項各号のいずれにも該当せず、かつ施行日までの間に国民年金の被保険者であったことがある
第2号型 施行日から1年以内(〜2027年11月30日) この期間内に、第62条第1項第1号〜第4号のいずれにも該当しなくなった

つまり、実質的な期限は施行日側、または2027年11月30日側の「状態」にあります。2028年・2029年に60歳になる人や、2029年に国民年金被保険者資格を失う人は、施行日時点でも施行日から1年以内でもこの状態に当てはまらないため、経過措置は使えません。「まだ3年ある」と考えて先送りすると、実際には対象外になっている場合があります。

なお、経過措置終了日の2029年11月末(2029年11月30日)という日付自体は正しく、民法第143条第2項により起算日2026年12月1日から3年の期間は2029年11月30日に満了します。また、過去に一度も国民年金の被保険者になったことがない人(長期の海外居住者等)や、申出の時点で日本国内に住所がない人は、この経過措置の対象外です。

ここで示した経過措置の要件は、令和7年改正法附則第33条第1項の原文に基づく確認済み情報です。ただし個別のケースで自分が第5号加入者・経過措置対象のいずれに該当するかは、金融機関(運営管理機関)または年金事務所への確認を推奨します。

2-3. 自分がどちらに当てはまるか、確認する順序

60〜70歳未満で国民年金被保険者でない方は、次の順序で自分の立場を整理すると判断しやすくなります。

  1. 今、iDeCoに加入中か、または運用指図者かを確認する(すでに加入していれば要件①②に該当し、経過措置の有無にかかわらず第5号加入者への移行対象になります)
  2. 企業年金(企業型DC・DB)からiDeCoへ資産を移換する予定があるかを確認する(該当すれば要件③)
  3. 上記1・2のどちらにも当てはまらない場合、施行日(2026年12月1日)時点、または施行日から1年以内(2027年11月30日まで)の状態が、上記の第1号型・第2号型のいずれかに当てはまるかを確認する。該当すれば、2029年11月末までに申出をすることで新規加入できます
  4. 老齢基礎年金の裁定を受けていないか(繰下げ待機中は除外されません)、iDeCoの老齢給付金の受給権を有していないか、マッチング拠出を実施していないかを最後に確認する(いずれかに該当すると対象外です)

いずれの段階でも、最終的な加入可否の判定は金融機関(運営管理機関)が行います。上記はあくまで自己診断のための整理であり、正式な加入可否は加入申込みの手続きの中で確認してください。


3. 拠出限度額(第5号加入者も月62,000円)

第5号加入者の拠出限度額は、企業年金等との合算枠で月62,000円です。これは会社員(第2号被保険者・企業年金なし)の新上限と同水準になります。

拠出限度額の全体像(職業別の新旧比較・企業型DC/DBがある場合の「穴埋め方式」の計算)は、本記事では詳しく扱いません。具体的な計算例はiDeCo拠出限度額引き上げ2027|職業別・穴埋め計算にまとめています。

経過措置で第5号加入者とみなされる人(附則第33条第1項該当者)についても、限度額は同じく月62,000円です。


4. 60代の最大の判断ポイント:「拠出を続ける」と「受け取る」は両立しない

これが本記事でもっとも重要な実務ポイントです。

iDeCoは拠出を続けている間、老齢給付金を受け取ることができません。 第5号加入者の要件そのものにも「老齢基礎年金・iDeCoの老齢給付金を受給していない者」という条件が明記されており、改正後もこの原則は維持されます。

つまり60代の読者にとっての選択は、単純化すると次の二択になります。

  • A. 拠出を続けて70歳近くまで積立を延長する → 受取開始はその後になる。所得控除による節税効果を長く受けられる一方、資産を受け取れるのは先になる
  • B. 60代前半〜半ばで受給を開始する → 拠出は終了。以後は運用のみ、または資産を取り崩していく

「70歳まで入れるなら、とりあえず限度いっぱいまで延長すればお得」と単純に考えるのではなく、いつ資産を使いたいか(生活費に充てる時期)から逆算して、拠出継続か受給開始かを選ぶ必要があります。

4-1. 60歳以降に新規加入した場合の受給開始ルール

受給開始年齢は原則60歳〜75歳の間で本人が選択します。通算加入者等期間が10年以上あれば60歳から受給できますが、10年未満だと受給開始可能年齢が段階的に後ろ倒しになります。

ここで重要な例外があります。60歳以降に新規でiDeCoに加入した人は、通算加入者等期間の有無にかかわらず、加入から5年を経過した日から受給できます。 たとえば65歳で新規加入した人は、70歳から受給を開始できる計算になります。このルール自体は今回の改正で新設されたものではなく、確定拠出年金法第33条第1項ただし書にもとから定められている既存の規定です。同項は「六十歳以上七十五歳未満のもの」を対象としており、今回新設される65〜70歳の区分にもそのまま適用されます。経過措置での新規加入を考える人には効いてくる規定なので、あらためて押さえておいてください。

70歳ぎりぎりで新規加入しても「積立期間が短いから実質メリットがない」わけではなく、5年経過ルールがあるため加入から5年後には受給できるという点は、経過措置を使って加入を検討する読者にとって重要な情報です。

なお、受給開始年齢の上限は75歳のままで、今回の年齢引上げによって変更されるという記載は一次資料に見当たりません。確定拠出年金法第34条(iDeCoは第73条で準用)により、75歳に達しても老齢給付金の請求をしていない場合は、請求しなくても連合会が裁定を行い、老齢給付金が支給されます。「請求を忘れると資産を受け取れなくなる」わけではありません。

出口戦略(退職金との受取順序・重複期間の調整)を詳しく検討したい場合は、iDeCo一時金と退職金 受取順序シミュレーション2026、企業型DC・DBがある人は企業型DC・DBと退職金の重複期間調整2026を参照してください。


5. 60代で働き続ける人は「在職老齢年金」との組み合わせも要確認

60〜70歳の間に厚生年金に加入して働き続ける人は、給与と年金の受給状況によって年金の一部または全部が支給停止になる「在職老齢年金」制度の対象になります。2026年には、この支給停止の基準額が引き上げられており、就労を続けやすくなっています。

iDeCoの加入年齢延長と在職老齢年金の基準額見直しは、いずれも60〜70歳の就労継続層に関わる改正ですが、根拠となる制度の趣旨や適用条件は別物です。両方に該当する可能性がある人は、給与・年金・iDeCoの3つを分けて設計する必要があります。在職老齢年金の基準額見直しの詳細は在職老齢年金の支給停止基準額引上げ2026で解説しています。


6. シミュレーション:3つの読者パターン

以下はいずれも前提条件を明示した試算です。実際の税額・受給額は個々の所得・加入履歴により変動するため、目安としてご覧ください。

パターン1:60歳で企業年金からiDeCoへ資産移換した人(第5号加入者・要件③該当)

  • 前提: 60歳で退職し、企業型DBの資産をiDeCoへ移換。移換と同時に第5号加入者として拠出を再開。月拠出額は上限62,000円
  • 65歳まで5年間拠出を継続した場合の拠出総額: 62,000円 × 12ヶ月 × 5年 = 372万円(検算: 62,000×12=744,000円/年、744,000×5=3,720,000円)
  • この期間の所得控除は、拠出額に本人の限界税率(所得税+住民税)を乗じた分だけ毎年発生します。たとえば限界税率30%なら、年間の節税額は744,000円×30%=223,200円が目安です。

パターン2:65歳で新規に第5号加入者となった人(経過措置または要件①②該当)

  • 前提: 65歳で新規加入。60歳以降の新規加入のため「加入から5年経過」で受給可能(§4-1参照)
  • 受給開始可能時期: 70歳(65歳加入+5年)
  • 拠出期間5年・月拠出額62,000円の場合の拠出総額は、パターン1と同じ計算で372万円

パターン3:65歳以降も厚生年金に加入して働き続ける会社員(今回の改正の中心的な受益者)

  • 前提: 60歳以降も厚生年金加入を継続(第2号被保険者)。ただし現行制度では65歳到達時点で老齢厚生年金・老齢基礎年金の受給権が発生し、大半の人は第2号被保険者でなくなるため、iDeCoの拠出はそこで止めざるを得ません(§1-2参照)
  • 改正後は、65歳で第2号被保険者でなくなった後も、第5号加入者(①iDeCo加入者)として70歳未満まで拠出を継続できます。「今回の改正の影響は限定的」ではなく、60代で厚生年金に加入して働き続ける会社員こそ、この改正でいちばん拠出可能期間が延びる層です
  • 拠出限度額は企業年金の有無により異なります(詳細はiDeCo拠出限度額引き上げ2027参照)。第5号加入者移行後は月62,000円(企業年金等との合算枠)

上記はいずれも拠出額・拠出期間の前提を単純化した概算です。実際の節税額は扶養家族数・社会保険料・他の所得控除等により変動します。


7. よくある誤解

誤解1: 「2026年12月から70歳まで誰でもiDeCoに入れる」

不正確です。恒久制度としての第5号加入者は、すでにiDeCo加入者・運用指図者・企業年金からの資産移換者のいずれかに該当する人に限られます(§2-1)。ただし施行から3年間の経過措置により、当面はこの限定が緩和されます(§2-2)。

誤解2: 「70歳まで拠出すれば、その分受け取りも70歳から」

拠出を続けている間は受給できないため、拠出を70歳近くまで延ばせば、その分受給開始も後ろにずれます。「拠出期間を延ばす=総受取額が増える」わけではなく、いつ受け取りたいかとのトレードオフである点に注意してください。

誤解3: 「加入期間が短いから60代からの新規加入は意味がない」

通算加入者等期間が10年未満でも、60歳以降に新規加入した人は加入から5年経過で受給できるという別ルールがあります(§4-1)。65歳や67歳からの新規加入でも、70歳前後には受給を開始できる計算です。

誤解4: 「第3号被保険者(専業主婦・主夫)の限度額も同じように上がる」

第5号加入者の限度額改定と、既存区分の限度額改定は別の話です。第3号被保険者の拠出限度額は据置で月23,000円のままです。確定拠出年金法施行令第36条第6号は、現行版・改正後版(2026年12月1日施行版)のいずれも「法第六十九条に規定する第三号加入者 二万三千円」と定めており、改正で変更されていません。


8. 混同しやすい別の改正との整理

同時期にiDeCo・退職金まわりの改正が複数動いているため、時点を混同しないよう整理します。

改正内容 施行時期 本記事との関係
加入年齢70歳未満化・第5号加入者新設(本記事主題) 2026年12月1日施行 本記事の主題。2026年9月14日現在は施行前
拠出限度額の引上げ(同一法律・同一施行日) 2026年12月1日施行 加入年齢延長と同時に施行。職業別の内訳はiDeCo拠出限度額引き上げ2027で解説
DC一時金の退職所得控除・重複判定期間拡大(いわゆる10年ルール) 2026年1月1日施行済み 別の法律(税制改正)による変更。本記事作成時点ですでに施行済みであり、加入年齢延長とは施行時点が異なる
連合会の加入者手数料改定(105円→120円) 2027年1月26日引落分から 加入年齢延長・拠出限度額引上げとも別のタイミング。詳細はiDeCo手数料値上げ2027
在職老齢年金の支給停止基準額引上げ 2026年4月施行 同じ「60〜70歳の就労継続層」に関わる改正だが、根拠制度は別。詳細は在職老齢年金の支給停止基準額引上げ2026で解説

とくに退職所得控除の「10年ルール」はすでに施行済みである一方、加入年齢の引上げはまだ施行前です。同じニュースの中で語られることが多いため、「iDeCoの改正で退職所得控除も変わった」と一括りにする書き方は不正確です。


9. 手数料は変わらない(拠出額が増えても手数料水準は別枠)

第5号加入者として新規加入・拠出を再開する場合も、既存の加入者と同じ手数料体系が適用されます。加入中の連合会手数料は本記事作成時点で月105円(拠出のたびに発生)で、2027年1月26日引落分からは月120円に改定されることが確定しています(未施行)。このほか、事務委託先金融機関等の手数料が別途かかりますが、金額は運営管理機関により異なるため、加入前に各金融機関の手数料ページで確認してください。

手数料改定の詳細な試算はiDeCo手数料値上げ2027で解説しています。


10. FAQ

A

いいえ、まだできません。 加入年齢70歳未満への引上げは2026年12月1日施行で、本記事作成時点(2026年9月14日)は施行前です。現行制度では、厚生年金に加入して働いている人(第2号被保険者)でも拠出できるのは65歳までで、それ以外の人の加入年齢上限は原則60歳未満(任意加入は65歳未満)です。

A

恒久ルールでは、①すでにiDeCo加入者、②iDeCoの運用指図者、③企業年金からiDeCoへ資産を移換する人、のいずれかに該当し、かつ老齢基礎年金を受ける権利の裁定を受けていない、iDeCoの老齢給付金の受給権を有していない(有していたこともない)、マッチング拠出をしていない、という条件を満たす必要があります(老齢基礎年金を繰り下げて老齢厚生年金だけを受給している人は対象外になりません)。ただし施行日、または施行日から1年以内(2027年11月30日まで)の状態が一定の要件を満たす人は、2029年11月末までに申出をすることで、これらに該当しなくても新規加入できる経過措置があります(§2-2)。個別の該当判定は、加入予定の金融機関(運営管理機関)または年金事務所に確認するのが確実です。

A

意味があります。60歳以降に新規加入した場合、通算加入者等期間が短くても加入から5年経過すれば受給を開始できるという別ルールがあるためです。たとえば67歳で新規加入すれば、72歳から受給を開始できる計算になります(ただし受給開始の上限は75歳のため、加入時期が遅すぎると75歳までの猶予が短くなる点に注意してください)。

A

第5号加入者の拠出限度額は、企業年金等との合算枠で月62,000円です。これは企業年金のない会社員(第2号被保険者)の新しい上限と同水準です。

A

一概には言えません。拠出を続けている間は所得控除による節税効果が続く一方、その間は老齢給付金を受け取れません。生活費として資産をいつ使いたいか、退職金の受取時期との兼ね合いなどを踏まえて判断する必要があります。退職金との受取順序による税額の違いはiDeCo一時金と退職金 受取順序シミュレーション2026で試算しています。

A

いいえ、別の改正です。DC一時金の退職所得控除に関する重複判定期間の拡大(いわゆる10年ルール)は、税制改正により2026年1月1日からすでに施行済みです。今回解説した加入年齢の引上げ(2026年12月1日施行)とは根拠法も施行時点も異なります。

A

直接の制度上の関係はありませんが、どちらも「60〜70歳の就労継続層」に影響する改正です。厚生年金に加入して働きながらiDeCoの第5号加入者になろうとする人は、給与・年金・iDeCoの受給をどう組み合わせるか、あわせて検討する価値があります。詳細は在職老齢年金の支給停止基準額引上げ2026を参照してください。


11. まとめ

  • 加入年齢70歳未満への引上げ(第5号加入者の新設)は2026年12月1日施行。本記事作成時点(2026年9月14日)ではまだ施行前です。
  • 恒久ルールでは、第5号加入者になれるのは「すでにiDeCo加入者・運用指図者・企業年金からの資産移換者」のいずれかに該当する人に限られます。「70歳まで誰でも入れる」という理解は不正確です。
  • 施行から2029年11月末までに申出をすれば、この限定が緩和される経過措置がありますが、対象になれるかどうかは申出の時点ではなく施行日、または施行日から1年以内(2027年11月30日まで)の状態で決まります(§2-2)。「まだ3年ある」と先送りすると対象外になっている場合があります。
  • 老齢基礎年金を繰り下げて老齢厚生年金だけを受給している人は対象外になりません。除外されるのは老齢基礎年金の裁定を受けた者、またはiDeCoの老齢給付金の受給権を有する(有していた)者です(§2-1)。
  • 拠出限度額は第5号加入者も月62,000円。
  • 拠出継続と受給開始は両立しません。 何歳まで拠出を続け、いつ資産を受け取りたいかを先に決めておくことが、今回の改正を活かす最大のポイントです。
  • 60歳以降に新規加入した場合は、通算加入者等期間にかかわらず加入から5年経過で受給可能という別ルールがあり、経過措置での新規加入を検討する後押しになります。

関連記事(次に読むべき)


出典・一次ソース

  • 「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」(令和7年法律第74号)2025年6月13日成立・6月20日公布
  • 厚生労働省「2025年の制度改正」— 2026年12月1日施行関係の関係法令一覧(施行期日を定める政令=令和7年政令第441号、国民年金基金令等の一部を改正する政令=令和7年政令第442号)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/2025kaisei.html)
  • 厚生労働省年金局長通知「国民年金基金令等の一部を改正する政令の公布について(通知)」年発1224第1号・令和7年12月24日(https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001621974.pdf)
  • 厚生労働省資料「iDeCoの加入可能年齢の引き上げ」(https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001597572.pdf)
  • 厚生労働省資料「iDeCo拠出限度額の引き上げ」(https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001597573.pdf)
  • 確定拠出年金法(平成13年法律第88号)第62条第1項第5号(第5号加入者の対象要件・マッチング拠出実施者の除外)・第2項(老齢給付金の受給権者等の除外)・第4項第2号(「第5号加入者」の定義)・第5項(資格喪失の遡及)、第33条第1項ただし書(5年経過受給ルール)、第34条・第73条(75歳到達時の支給・個人型年金への準用)
  • 確定拠出年金法施行令第36条第6号(第3号加入者の拠出限度額2万3千円)
  • 国民年金法附則第3条(被保険者資格の特例)
  • 令和7年改正法附則第33条第1項・第2項(経過措置)
  • 民法第143条第2項(期間の満了日)
  • iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)「iDeCo(イデコ)の加入資格・掛金・受取方法等」(https://www.ideco-koushiki.jp/guide/structure.html)
  • iDeCo公式(国民年金基金連合会)リーフレット「iDeCo加入者に係る手数料を見直します」(https://www.ideco-koushiki.jp/library/pdf/leaflet202604.pdf)

本記事は2026年9月14日時点の情報に基づきます。制度改正・手数料・各社サービス内容は変動する場合があります。最新情報は厚生労働省・iDeCo公式サイト等の一次情報でご確認ください。本記事は制度概要の情報提供を目的としており、投資助言・税務助言ではありません。個別の加入判断・税務判断は社会保険労務士・税理士など専門家へご相談ください。詳細は免責事項をご覧ください。

JG

実務ガイド編集部

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