本記事は2026年10月22日時点で確認できた、所得税法・同施行令・同施行規則(e-Gov法令検索)、国税庁タックスアンサー No.1122・No.1125・No.1127(令和8年4月1日現在法令等)、国税庁質疑応答事例「寝たきりの者のおむつ代」(令和7年8月1日現在)、国税庁「医療費控除を受けられる方へ」(令和7年分手引)、厚生労働省老健局振興課の事務連絡(平成28年10月3日・介護保険最新情報Vol.565)をもとに作成しています。令和8年分の申告に使う国税庁の最新資料は公表され次第ご確認ください。対象になるかどうかは、介護サービス計画の内容や領収書の記載、世帯の所得によって変わります。最終判断は所轄税務署または税理士にご確認ください。
結論|施設は種類で、在宅は「医療系サービスと併用か」で決まる
介護費用の医療費控除(1年間に払った医療費が一定額を超えたとき、超えた分を所得から差し引ける制度)は、介護にかかったお金の全部が対象になるわけではありません。対象になるかは、次の3点で決まります。
- 施設に入所しているか、自宅で介護サービスを使っているか
- 施設なら施設の種類(特別養護老人ホーム=特養は自己負担の2分の1、介護老人保健施設=老健や介護医療院は全額)
- 自宅なら、訪問看護・通所リハビリなどの「医療系サービス」と併せて使っているか(併用していれば、デイサービスなどの福祉系サービスも対象。福祉系だけの利用は対象外)
おむつ代は、原則として「おむつ使用証明書」などの書類があれば対象です。控除額は、払った医療費の合計から、保険金などで補てんされた額と足切り額(総所得金額等の5%、10万円を超える場合は10万円)を引いた額です。上限は200万円です(所得税法第73条第1項)。
令和8年分は、2026年1月1日から12月31日までに支払った費用が対象で、申告は2027年に行います。介護保険の自己負担の目安を先に知りたい方は、要介護度別の支給限度額と自己負担シミュレーションも参考にしてください。
医療費控除の基本|誰の分を、いくらから差し引けるか
計算式と足切り額
所得税法第73条第1項は、自分、または自分と生計を一にする配偶者その他の親族の医療費を支払った場合に、その年に支払った医療費の合計額が次の金額を超えるとき、超えた部分を所得から差し引くと定めています(生計を一にするとは、生活費を共にしている関係のこと。別居の親が該当するかなど判断が難しいときは、税務署に確認してください)。
- 足切り額:その年の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の5%(10万円を超える場合は10万円)
- 控除額の上限:200万円
- 医療費から差し引くもの:保険金、損害賠償金など補てんされる部分
つまり、所得が200万円未満の方は足切り額が10万円より低くなります。たとえば総所得金額等が150万円なら、足切り額は5%の7万5千円です。
誰が申告できるか
法律の文言は「医療費を支払つた場合」です。親の介護費用であれば、実際に費用を負担した人が、自分の医療費として申告します。同じ親の費用を兄弟で分担したなら、それぞれが自分の負担した額を申告する形になります。逆に、親が自分の年金から払った費用は親本人の医療費で、子は申告できません。
- 親の介護費用を子が払い、親と「生計を一にしている」→ 払った子が申告できる
- 親が自分の財布から払った → 親の医療費。親の所得が少なく税額がなければ、控除の効果は出にくい
- 兄弟で費用を分け合った → 各自が負担分を申告(同じ領収書を二重に使わない)
通常の医療費控除とセルフメディケーション税制は選択適用
市販薬の購入費に使うセルフメディケーション税制は、通常の医療費控除とどちらか一方しか使えません。介護費用が数十万円単位になる世帯では、通常の医療費控除を選ぶほうが有利になる場面が多いはずです。詳しくはセルフメディケーション税制2026|令和8年分と令和9年分以後の違いを参照してください。
【一覧表】施設サービスの対象と対象外
国税庁タックスアンサー No.1125「医療費控除の対象となる介護保険制度下での施設サービスの対価」(令和8年4月1日現在法令等)は、次のように整理しています。
| 施設 | 医療費控除の対象 | 対象外 |
|---|---|---|
| 指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、指定地域密着型介護老人福祉施設 | 施設サービスの対価(介護費、食費、居住費)として支払った額の2分の1 | 日常生活費、特別なサービス費用 |
| 介護老人保健施設(老健) | 施設サービスの対価(介護費、食費、居住費)として支払った額の全額 | 日常生活費、特別なサービス費用 |
| 指定介護療養型医療施設(令和6年3月31日に廃止) | 同上(全額) | 同上 |
| 介護医療院 | 同上(全額) | 同上 |
押さえておきたい点は次のとおりです。
-
指定介護療養型医療施設は、令和6年3月31日で廃止されています(健康保険法等の一部を改正する法律〔平成18年法律第83号〕附則第130条の2第1項の経過措置期限。厚生労働省の事務連絡〔令和6年3月29日〕による)。国税庁の令和7年分の一覧には名前が残っていますが、令和8年分の申告で新たに当てはまるのは、介護医療院などへ移行した後の施設です。2026年に支払う費用で「介護療養型」の領収書が出ることは通常ありません
-
食費と居住費も対象に含まれます。介護保険の給付の対象外ですが、自己負担額(特養は2分の1)が医療費控除の対象になります
- 日常生活費とは、理美容代など、日常生活でも通常必要になるもので入所者に負担させることが適当とされる費用です。対象外です
- 入所者のおむつ代は介護費に含まれるため、自己負担額(特養は2分の1)が対象です。施設サービスの自己負担として扱われます
- 老健・介護療養型医療施設・介護医療院の個室などの特別室の使用料は、診療や治療を受けるためにやむを得ず支払うものに限り対象になります
- 特養などが発行する領収書には、医療費控除の対象となる金額が記載されることになっています
【一覧表】居宅サービス(在宅介護)の対象と対象外
在宅の介護サービスは、3つに分かれます。ここが最も間違えやすいところです。
区分A|それだけで対象になる(医療系サービス)
国税庁タックスアンサー No.1127と手引「医療費控除を受けられる方へ」(令和7年分)の一覧では、次のサービスが「サービスの対価が医療費控除の対象となる居宅サービス等」(①)です。厚労省の事務連絡(Vol.565)は、訪問看護から介護予防短期入所療養介護までのサービス(同事務連絡の1(2)イ〜ヲ)について、「対象者の要件を満たすか否かに関係なく、利用者の自己負担額全額が医療費控除の対象となる」と定めています。
- 訪問看護、介護予防訪問看護
- 訪問リハビリテーション、介護予防訪問リハビリテーション
- 居宅療養管理指導、介護予防居宅療養管理指導
- 通所リハビリテーション(デイケア)、介護予防通所リハビリテーション
- 短期入所療養介護(医療系のショートステイ)、介護予防短期入所療養介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用する場合に限る)
- 看護小規模多機能型居宅介護(上記の居宅サービスを含む組合せのもの。国税庁の一覧では、生活援助中心型の訪問介護の部分を除く。介護保険法上の名称は「複合型サービス」)
なお、看護小規模多機能型居宅介護は通称で、介護保険法第8条第23項の条文上の名称は「複合型サービス」です(厚労省の事務連絡Vol.565も「複合型サービス」と表記しています)。
区分B|区分Aと併せて使う場合だけ対象(福祉系サービス)
次のサービスは、区分Aのサービスと併せて利用している場合に限り対象です。国税庁は「併せて利用した場合」を、1か月単位のケアプランに医療系サービスが位置付けられている場合とし、居宅介護支援事業者等から交付される「サービス利用票」に医療系サービスが記載されているかで判断するとしています(タックスアンサー No.1127)。
- 訪問介護(生活援助中心型を除く)
- 夜間対応型訪問介護
- 訪問入浴介護、介護予防訪問入浴介護
- 通所介護(デイサービス)、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、介護予防認知症対応型通所介護
- 小規模多機能型居宅介護、介護予防小規模多機能型居宅介護
- 看護小規模多機能型居宅介護(区分Aの居宅サービスを含まない組合せのもの。生活援助中心型の訪問介護の部分を除く)
- 短期入所生活介護(福祉系のショートステイ)、介護予防短期入所生活介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型で訪問看護を利用しない場合、連携型事業所)
- 地域支援事業の訪問型・通所型サービス(生活援助中心のサービスを除く)
事務連絡(Vol.565)は、対象者の要件を「居宅サービス計画(ケアプラン)または介護予防サービス計画に、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、通所リハビリテーション、短期入所療養介護などのいずれかが位置付けられること」としています。計画に位置付けられていることが条件で、「たまたま同じ年に医療機関を受診した」だけでは足りません。
区分C|併用しても対象にならない
厚労省の事務連絡(Vol.565)が列挙しているのは、区分Aと区分Bに当たるサービスです。区分Cは、国税庁タックスアンサー No.1127と手引(令和7年分)が「医療費控除の対象とならない居宅サービス等」(③)として挙げているものです。掲載はタックスアンサー No.1127 に合わせています。
- 訪問介護(生活援助中心型)。調理・洗濯・掃除など家事の援助が中心のもの
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、介護予防認知症対応型共同生活介護
- 特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム等)、地域密着型特定施設入居者生活介護、介護予防特定施設入居者生活介護
- 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護(タックスアンサー No.1127に掲載)
- 福祉用具貸与、介護予防福祉用具貸与
- 看護小規模多機能型居宅介護のうち生活援助中心型の訪問介護の部分
- 地域支援事業の生活支援サービス、および生活援助中心の訪問型・通所型サービス
なお、区分Bまたは区分Cのサービスの中で介護福祉士などが行う喀痰吸引(たんの吸引)等がある場合は、居宅サービス等の対価として支払った額の10分の1に相当する金額が医療費控除の対象になります(国税庁の一覧の注記。区分Bは区分Aと併用しない場合に限る)。
また、通所リハビリテーションや通所介護、短期入所生活介護などを受けるために介護老人保健施設や特別養護老人ホームなどへ通う際の交通費は、そのサービスの自己負担額が医療費控除の対象になった場合で、かつ通常必要なものに限り、対象になります(タックスアンサー No.1127 注3)。
判定の早見表
| あなたの在宅介護の状況 | 控除の対象 |
|---|---|
| 訪問看護だけ使っている | 訪問看護の自己負担の全額が対象 |
| デイサービスだけ使っている | 対象外(喀痰吸引等があれば、支払額の10分の1が対象) |
| デイサービス+訪問看護を使っている | デイサービス・訪問看護とも対象 |
| 訪問介護(生活援助中心型以外)+通所リハビリを使っている | 両方対象 |
| 生活援助(掃除・調理)だけの訪問介護を使っている | 対象外 |
| 福祉用具をレンタルしている | 併用しても対象外 |
| グループホームや有料老人ホームに入居している | 対象外(居宅サービスとしての扱い) |
訪問看護や通所リハビリを使っているかどうかが分かれ目です。ケアマネジャー(介護支援専門員)に、今のケアプランにこれらが位置付けられているかを確認してください。
領収書の見方|「医療費控除の対象となる金額」欄を使う
厚労省の事務連絡(Vol.565)は、居宅サービスの領収証に対象費用の額を記載するよう定めています。様式例には「うち医療費控除の対象となる金額」の欄があり、次のように使い分けられています。
- 様式の注記では、訪問介護事業者の場合、この欄には利用者負担(保険対象分)のうち、生活援助中心型以外のサービスの利用者負担額の合計を記載するとされています
- 区分支給限度基準額を超えて全額自己負担になった部分は、「その他費用(保険給付対象外のサービス)」の欄に記載する扱いです
- この様式でなくても、「居宅サービス計画を作成した事業者名」と「医療費控除の対象となる金額」が書かれていれば差し支えないとされています
申告に使うのは、この「うち医療費控除の対象となる金額」欄の合計です。領収額の合計を使うと過大になります。対象費用の額は、事務連絡で「介護サービスの費用額から介護保険が給付する額を引いた自己負担額」と定められており、保険給付の対象外の費用は含まれません。
領収書で次の点を確認してください。
- 対象金額の欄が書かれているか(空欄なら事業所に確認)
- 年間の合計が出せるか(12か月分をそろえる)
- 医療系と福祉系のサービスが同じ領収書に混ざっていないか(ケアプランとの対応)
施設の領収書も、特養など指定介護老人福祉施設が発行するものには医療費控除の対象となる金額が記載されることになっています。
おむつ代の条件と書類
対象になる条件
国税庁の質疑応答事例「寝たきりの者のおむつ代」(令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づく)は、次のように答えています。
- 傷病によりおおむね6か月以上にわたり寝たきりであり、医師の治療を受けている人のおむつ代は、医師による治療を受けるため直接必要な費用として、医療費控除の対象になります
- 対象になるには、治療を行っている医師が発行した「おむつ使用証明書」を確定申告書に添付するか、申告書の提出時に提示することが必要です
なお、施設に入所している場合は、おむつ代が介護費に含まれるため、前章のとおり施設サービスの自己負担額として扱われます。この章は主に在宅で介護している場合の話です。
証明書の代わりになる書類(主治医意見書)
おむつ使用証明書は、医療機関に発行してもらう必要があり、費用がかかる場合があります。国税庁の質疑応答事例(令和6年分以後の確定申告書を令和7年1月1日以後に提出する場合)では、証明書の代わりに主治医意見書(要介護認定の審査で医師が作成する書類)の内容を市町村が確認した書類、またはその写しを、添付または提示してもよいとされています。主治医意見書には次の要件があります(いずれも「一定の記載があるものに限る」)。
| 申告の年 | 主治医意見書の要件 |
|---|---|
| おむつ代の医療費控除を受けるのが1年目 | おむつを使用した年に現に受けていた要介護認定、およびそれを含む複数の要介護認定(有効期間が連続しているものに限る)で、有効期間(その年以降のものに限る)を合算して6か月以上となるものの審査にあたり作成されたもの |
| 2年目以降 | おむつを使用した年に主治医意見書が作成されていない場合は、その年に受けていた要介護認定(有効期間が13か月以上のものに限る)の審査にあたり作成されたもの |
つまり2年目以降は、前年以前に作成された主治医意見書でも、おむつを使用した年に現に受けている要介護認定の有効期間が13か月以上であれば、写しや市町村の確認書類を証明書の代わりにできます。
「一定の記載」の中身
「一定の記載」は市町村の案内に具体的に出ています。たとえば横浜市は、確認書の交付条件として次の2点を挙げています。
- 主治医意見書の「障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)」がB1、B2、C1、C2のいずれか
- 「失禁への対応」として「カテーテル」または「尿失禁」にチェックがある
確認書を交付するかどうか、申込先や様式は市町村ごとに違い、要介護認定を受けた市町村に申し込む形です(横浜市の案内)。まず要介護認定を受けた自治体の介護保険担当窓口で、確認書の取扱いを聞くのが近道です。確認書が受けられない場合は、かかりつけ医に「おむつ使用証明書」を依頼します。
おむつ代で対象にならないもの
- 6か月以上の寝たきりでない人の、一時的なおむつ代
- 証明書・確認書などの書類で、治療のための必要性が示せないおむつ代
申告の手順
- 領収書を整理する。施設・事業所ごとに、2026年1月〜12月に支払った分をそろえる
- 対象金額の欄を確認する。「うち医療費控除の対象となる金額」の合計を出す
- おむつ代の書類を用意する(おむつ使用証明書、または主治医意見書の写し・市町村の確認書類)
- 高額介護サービス費などの払戻しを確認する。払戻しを受けた額は、医療費から差し引く
- 医療費控除の明細書を作成する。国税庁の案内では、医療費控除を受けるには、領収書をもとに作成した医療費控除の明細書(または医療保険者等の医療通知書)を確定申告書に添付します
- 確定申告書を提出する(e-Taxまたは書面)
- 領収書・証明書を5年間保存する。申告期限等から5年間、税務署から領収書の提示や提出を求められることがあります
明細書の欄外余白に、おむつ使用証明書などの証明年月日、証明書の名称、証明者の名称(医療機関名等)を記載すれば、証明書そのものの添付や提示は省略できます。その場合も、証明書は領収書とともに5年間保存します(国税庁質疑応答事例)。
副業収入がある方や、給与以外の所得がある方は、同じ申告書で一緒に手続きするのが効率的です。要否の判定は副業の確定申告2026完全ガイドにまとめています。
補てんされた分は差し引く|高額介護サービス費の扱い
医療費控除の対象額は、支払った額から保険金などで補てんされた金額を除いた額です(所得税法第73条第1項)。介護では、次の点が実務上の注意点です。
- 高額介護サービス費(自己負担が上限額を超えたときに払い戻される制度)の払戻しを受けた場合は、その高額介護サービス費を医療費の金額から差し引いて計算します(タックスアンサー No.1125 注3・No.1127 注4)
- 特養などの施設サービス費に係る自己負担額のみに対する高額介護サービス費は、2分の1に相当する金額を医療費から差し引きます
- 払戻しが翌年になった場合の扱いなど、細かい点は税務署または税理士に確認してください
払戻しの通知書は、ほかの書類と一緒に保管しておきましょう。
計算例
以下は、仕組みを理解するための仮定の数値です。実際の金額や税率は個々の事情で変わります。
例1|特養に入所している母の費用を、子(総所得金額等400万円)が負担したケース
前提
- 申告者(子)の総所得金額等:400万円(足切り額は5%の20万円ではなく、上限の10万円)
- 母(生計を一にする親族)が特養に入所。介護費・食費・居住費の自己負担:年間120万円
- 高額介護サービス費の払戻し:年間6万円(特養の施設サービス費に係る分のみ)
- 子本人の通院・薬代:年間5万円(補てんなし)
計算
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 特養の自己負担のうち対象(120万円×1/2) | 60万円 |
| 高額介護サービス費の差引き(6万円×1/2) | △3万円 |
| 子本人の医療費 | 5万円 |
| 医療費の合計 | 62万円 |
| 足切り額 | △10万円 |
| 医療費控除額 | 52万円 |
仮に適用される所得税率が10%なら、所得税は約5万2千円減ります(住民税にも別途反映されます)。
例2|在宅で父を介護。デイサービスと訪問看護を併用しているケース
前提
- 申告者(子)の総所得金額等:150万円(足切り額は5%の7万5千円)
- 父(生計を一にする親族)が在宅。年間の自己負担は次のとおり(金額は領収書の「医療費控除の対象となる金額」欄の合計を想定)
| サービス | 年間の自己負担 | 判定 |
|---|---|---|
| 通所介護(デイサービス) | 18万円 | 訪問看護と併用のため対象 |
| 訪問看護 | 6万円 | 対象(医療系) |
| 訪問介護(生活援助中心型) | 12万円 | 対象外 |
| 福祉用具貸与 | 3万円 | 対象外 |
| おむつ代(おむつ使用証明書あり) | 9万円 | 対象 |
計算
- 対象になる額:18万円+6万円+9万円=33万円
- 足切り額:7万5千円
- 医療費控除額:33万円-7万5千円=25万5千円
もし訪問看護を使っておらずデイサービスだけなら、18万円は対象外になります。同じ金額を払っていても、ケアプランの組合せで結果が変わるという点が、この制度の最大の落とし穴です。
対象外になりやすい費用と落とし穴
- 福祉系サービス単独の利用。デイサービスや訪問入浴だけでは対象外です。ケアプランに医療系サービスが位置付けられているかが条件です
- 生活援助中心型の訪問介護。掃除・調理・洗濯の援助は、併用しても対象外です
- 日常生活費・特別なサービス費用。施設の理美容代や、特別なサービスにかかる費用は対象外です
- グループホームや有料老人ホーム(特定施設)の費用。国税庁の一覧では、居宅サービスの区分Cで対象外です。入居中の費用の扱いに迷う場合は、事業所や税務署に確認してください
- 領収額をそのまま使うこと。対象金額の欄の合計を使わないと、過大申告になります
- 高額介護サービス費の差引き忘れ。払戻しを受けたのに差し引かないと、控除が過大になります
- 特養の2分の1の見落とし。特養では支払った額そのものではなく2分の1が対象です。領収書の対象金額の欄の記載を確認しましょう
- おむつ使用証明書を取り忘れる。書類がないと、おむつ代は認められません。年明けに医療機関や市町村へ依頼しても間に合うよう、早めに動いてください
なお、介護保険の自己負担の月額や地域ごとの単価は、介護保険 地域区分一覧2026の考え方とあわせて見ると、領収書の数字の意味がつかみやすくなります。
よくある質問
法律は「自己と生計を一にする配偶者その他の親族」の医療費と定めています(所得税法第73条第1項)。同居か別居かだけで決まるとは書かれていません。生計を一にしているかどうかは、生活費の負担の実態で判断されるため、具体的な事情は税務署または税理士に確認してください。
いいえ。居宅サービスでは、区分Aは全額、区分Bは区分Aと併用する場合のみ対象、区分Cは対象外です。施設サービスは、特養なら2分の1、老健・介護療養型・介護医療院なら全額です。
国税庁の手引(令和7年分)によると、医療費控除の適用を受けるには、領収書をもとに作成した医療費控除の明細書を添付します。領収書は添付ではなく、申告期限等から5年間保存し、税務署から求められたときに提示・提出する扱いです。
おおむね6か月以上の寝たきりで、医師の治療を受けていることが条件で、これはおむつ使用証明書で示すことができます。主治医意見書で代える方法は要介護認定を受けている人向けなので、認定を受けていない場合は、医師の「おむつ使用証明書」が必要です。
実際に費用を支払った人が、自分の支払った分を申告します。同じ領収書を複数人で二重に使うことはできません。誰がどれだけ負担したかを、振込記録などで残しておくと安心です。
どちらか一方の選択適用です。介護費用が大きい年は、通常の医療費控除のほうが有利になることが多いです(セルフメディケーション税制2026)。
ケアマネ・介護事業所の方へ|利用者への案内ポイント
- 領収書に「うち医療費控除の対象となる金額」を必ず記載する。様式例の注記では、訪問介護事業者は生活援助中心型以外のサービスの利用者負担額の合計を記載することとされている
- 利用者から「デイサービスだけなのに対象になるか」と聞かれたら、ケアプランに医療系サービス(訪問看護・通所リハビリなど)が位置付けられているかを説明する
- おむつ代の相談があれば、主治医意見書の内容を市町村が確認する制度(確認書)があることを案内する。取扱いは市町村ごとに違うため、要介護認定を受けた市町村の窓口を紹介する
- 高額介護サービス費の払戻しを受けた分は医療費から差し引く点を、あわせて伝える
まとめ
- 介護費用の医療費控除は、施設なら施設の種類(特養は2分の1、老健・介護医療院は全額)、在宅なら医療系サービスとの併用で対象が決まる
- 申告に使うのは、領収書の「うち医療費控除の対象となる金額」の合計。高額介護サービス費の払戻しは差し引く
- おむつ代は、おおむね6か月以上の寝たきりで医師の治療を受けていることが条件。おむつ使用証明書、または主治医意見書を市町村が確認した書類で示す
- 足切り額は総所得金額等の5%(10万円を超える場合は10万円)、上限は200万円
- 令和8年分の領収書は、2026年12月末までに整理し、2027年の確定申告に備える
- セルフメディケーション税制とは選択適用。介護費用が大きい年は通常の医療費控除を軸に検討する
参考|一次ソース
- 所得税法 第73条(e-Gov法令検索)
- 所得税法施行令 第207条、所得税法施行規則 第40条の3(e-Gov法令検索)
- 国税庁 タックスアンサー No.1122「医療費控除の対象となる医療費」、No.1125「医療費控除の対象となる介護保険制度下での施設サービスの対価」、No.1127「医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価」(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 質疑応答事例(所得税)「寝たきりの者のおむつ代」(令和7年8月1日現在)
- 国税庁「医療費控除を受けられる方へ」(令和7年分 確定申告の手引・07.12)の介護保険制度下の施設・居宅サービス等の一覧
- 厚生労働省老健局振興課 事務連絡「介護保険制度下での居宅サービス等の対価に係る医療費控除等の取扱いについて」(平成28年10月3日・介護保険最新情報 Vol.565)



