薬機法改正2026わかりやすく|5月1日施行済・指定8成分と登録販売者常駐の対応チェック

本記事は法令・通達・官公庁資料に基づき編集部が作成・検証しています。個別の法的・税務判断ではありません。最新の法令はe-Gov法令検索でご確認ください。
薬機法改正2026わかりやすく|5月1日施行済・指定8成分と登録販売者常駐の対応チェック
目次

最終更新日: 2026年8月19日

2026年5月1日施行の薬機法改正で、指定濫用防止医薬品の対象は従来6成分から8成分に拡大されました。ポイントは3つ:①販売義務が「努力義務」から「法的義務+罰則」に格上げ(違反で業務改善命令→業務停止→許可取消の連鎖)、②18歳未満には氏名・年齢の書面確認が必要かつ少量(最大1箱)のみ販売可、③陳列規制により、施行規則第218条の5が定める2つの方法(専用陳列区画内への陳列/情報提供設備から7m以内かつ有資格者の継続配置)のいずれかへの変更が義務。前者には「鍵をかけた陳列設備・直接手を触れられない陳列設備なら区画外でも可」というただし書きがある。本記事は2025年5月21日公布・令和7年法律第37号をもとに実務対応を解説します。

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2026年5月1日、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)等の一部を改正する法律」(2025年5月21日公布)の主要規定が施行される。最大の柱は「指定濫用防止医薬品」制度の創設だ。コデイン・エフェドリン・デキストロメトルファン・ジフェンヒドラミンを含む8成分含有OTC薬に、薬局・ドラッグストアは法律上の義務として「年齢確認」「陳列規制」「記録保管」に対応しなければならない。従来の「努力義務」から「法的義務+罰則」へ格上げされるこの改正、現場が今すぐ取り組むべき実務対応を体系的に解説する。


改正の全体像|いつ何が変わるのか

2025年5月21日公布の改正薬機法は2段階で施行されます。2025年11月20日に本則が施行され、2026年5月1日に附則第1条第2号に掲げる規定が施行されました。薬局・ドラッグストアが対応すべき最重要規定である指定濫用防止医薬品制度(8成分・3義務)は、後者の2026年5月1日施行分です。要指導医薬品のオンライン販売(オンライン服薬指導による特定販売)も同じ2026年5月1日施行です。

施行スケジュール

2025年5月21日に公布された改正法は、段階的に施行される。

施行期日は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」で定められている。同政令の要綱(厚生労働省、https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001580517.pdf )は次のとおり規定する。

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律(令和七年法律第三十七号)の施行期日は令和七年十一月二十日とし、同法附則第一条第二号に掲げる規定の施行期日は令和八年五月一日とすること。

施行日 根拠 主な内容
2025年11月20日 本則 医薬品の安定供給確保に関する規定等
2026年5月1日 附則第1条第2号 指定濫用防止医薬品制度(メイン規制)/要指導医薬品のオンライン販売

薬局・ドラッグストアが最も影響を受けるのは、2026年5月1日施行の指定濫用防止医薬品規制だ。

改正の3本柱

内容 対象
1. 濫用防止対策の強化 指定濫用防止医薬品制度の創設 薬局・薬店・コンビニ等
2. 販売制度の整備 要指導医薬品のオンライン販売解禁 薬局
3. 承認制度の合理化 条件付き承認制度の拡充(ドラッグ・ラグ対策) 製薬企業・PMDA

💡 【実務ポイント】 薬局経営者が最優先で対応すべきは「1の濫用防止対策」だ。「3の条件付き承認」は主に製薬企業・PMDAが対応主体であり、薬局の日常業務への直接的影響は限定的。本記事では薬局実務に直結する「1」と「2」を中心に解説する。

🎯 【専門家の視点】 今回の改正で重要なのは「努力義務から法的義務への転換」だ。従来は省令レベルで運用されていた販売規制が、薬機法という法律本体に組み込まれた。これにより、違反すれば「業務改善命令→業務停止命令→許可取消」という行政処分の連鎖が現実的な脅威となる。「今まで通りの対応でいい」という姿勢は、2026年5月以降、法的リスクそのものだ。


改正の背景|なぜ今、OD対策が急務なのか

若年者オーバードーズの急増

2010年代後半から、日本では市販薬のオーバードーズ(OD)が深刻な社会問題として認識されるようになった。特に10〜20代の若年層において、風邪薬・咳止め・睡眠改善薬の大量服用による救急搬送件数が急増している。

厚生労働省の研究データによれば、ODによる救急搬送患者の多くが10代であり、「手軽に入手できる市販薬」が乱用対象となっている実態が浮き彫りになった。

既存規制の限界

改正前の制度では、「濫用等のおそれのある医薬品」として6成分が指定され、販売時の確認・制限が省令(薬機法施行規則)で定められていた。しかし:

  • 法的拘束力が弱い:省令レベルの努力義務のため、守らなくても直接罰則なし
  • 指定成分が不足:デキストロメトルファン(市販の咳止め主成分)、ジフェンヒドラミン(睡眠改善薬主成分)が対象外
  • 陳列規制なし:棚から自由に手が届く状態での販売が可能
  • 記録義務なし:販売状況の追跡が困難

これらの課題を解決するため、2025年の薬機法改正で「指定濫用防止医薬品」が法律上の概念として明確に位置づけられた。

⚠️ 【注意】 「濫用等のおそれのある医薬品(6成分)」の時代の管理方法を継続していても、2026年5月以降は法律違反になる可能性がある。対象成分の拡大(8成分)と義務内容の格上げを正確に把握する必要がある。


指定濫用防止医薬品とは|定義と対象8成分

法令上の位置づけ

「指定濫用防止医薬品」は、2025年改正薬機法により新設された概念だ。厚生労働大臣が指定する一般用医薬品(OTC医薬品)のうち、乱用されるおそれがあるとして特別な販売規制が適用されるものを指す。

法令根拠: 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)等の一部を改正する法律(令和7年法律第37号)

対象8成分と代表的な市販薬

従来の「濫用等のおそれのある医薬品」は6成分だったが、2026年1月に厚生労働省の薬事審議会医薬品等安全対策部会での審議を経て、2成分が追加され計8成分に拡大された。

成分名 主な薬効 代表的な製品カテゴリ
コデイン 鎮咳(咳止め) 総合感冒薬、鎮咳去痰薬
ジヒドロコデイン 鎮咳(咳止め) 総合感冒薬、鎮咳去痰薬
エフェドリン 気管支拡張 鼻炎用内服薬、気管支炎薬
プソイドエフェドリン 鼻粘膜収縮 鼻炎用内服薬
メチルエフェドリン 気管支拡張 総合感冒薬、気管支炎薬
ブロモバレリル尿素 鎮静 鎮静薬、頭痛薬
デキストロメトルファン ★新規 鎮咳(中枢性) 咳止め、総合感冒薬
ジフェンヒドラミン ★新規 鎮静・抗ヒスタミン 睡眠改善薬、鼻炎薬

★:2026年改正で新たに追加

💡 【実務ポイント】 デキストロメトルファンは「メジコン」「ブロン」系の咳止め、ジフェンヒドラミンは「ドリエル」「ナイティドリーム」系の睡眠改善薬に含まれる。これらは従来「自由に棚陳列・複数個販売OK」だった成分。2026年5月以降は全て規制対象となるため、在庫確認と陳列変更の作業量は想定より大きくなる可能性がある。

⚠️ 【注意】 外用剤(湿布、目薬等)やトローチ剤は規制対象外だ。ただし、「内用液剤のメチルエフェドリン」等、剤形によって対象・非対象が変わる成分もある。成分名だけでなく「剤形」も確認して在庫を洗い出すこと。


販売制限の具体的内容|何が義務化されるのか

3つの新義務

改正法により、指定濫用防止医薬品の販売において、以下の3点が法的義務となる。

義務1:年齢確認と販売制限

購入者の年齢 販売可能数量 確認方法
18歳以上 原則1箱(適正量) 口頭確認、年齢確認
18歳未満 最大1箱(少量)のみ 氏名・年齢の書面確認必須
年齢不明 確認が完了するまで販売不可 身分証提示を求める

18歳未満であることが確認された場合:
– 大容量製品への案内は禁止
– 複数個の販売は禁止
– 薬剤師または登録販売者が対面またはテレビ電話で応対

⚠️ 【注意】 「18歳未満への販売禁止」ではない。18歳未満でも「1箱(少量)のみ」は販売可能だ。ただし、氏名を含む本人確認と、他店での購入状況の確認が義務となる。「未成年は一切売れない」と誤解して不必要に販売拒否すれば、正当な購買機会を損なうことになる。

義務2:陳列規制

指定濫用防止医薬品の陳列方法について、以下のいずれかが義務化される。

陳列方法の選択肢:

根拠は薬機法施行規則第218条の5(指定濫用防止医薬品の陳列)である。同条は指定濫用防止医薬品(第二類医薬品または第三類医薬品に限る)について「次に掲げるいずれかの方法により陳列しなければならない」として、2つの号を定めている。

条文の要求 実務上の形
第1号 指定濫用防止医薬品陳列区画の内部の陳列設備に陳列する 専用の区画を設けて、その中に置く
第1号ただし書き 鍵をかけた陳列設備、その他購入者等が直接手を触れられない陳列設備に陳列する場合は、区画内でなくてよい 施錠ショーケース、カウンター後ろの棚など
第2号 情報を提供するための設備から7メートル以内の範囲に陳列し、当該設備に薬剤師または登録販売者を継続的に配置する 相談カウンターの近くに置き、有資格者を常時置く

「7メートル」は施行規則第218条の5第2号の条文上の数値である。「情報を提供するための設備」は薬局等構造設備規則第1条第1項第14号・第2条第13号に規定するものを指す。

⚠️ 【注意】いわゆる「空箱陳列」は、条文が定める選択肢そのものではない。 棚に空箱を置き現品をカウンターで保管する運用は、第1号ただし書きの「購入者が直接手を触れられない陳列設備」に該当させるための一つの手段として説明されることがあるが、条文に「空箱陳列」という方式が独立して列挙されているわけではない。自店の運用が第218条の5のどの号を満たすのかを整理したうえで、所管の都道府県薬務主管課に確認することを勧める。

🎯 【専門家の視点】 陳列変更はコスト面での影響が大きい。施錠棚の設置費用、レイアウト変更に伴う工事費、店舗によっては数十万円規模の投資が必要になるケースもある。薬剤師・登録販売者が常時いない売場では第2号を選べないため、第1号ただし書きの施錠設備で対応することになり、投資額はその分大きくなりやすい。

義務3:確認と記録

販売時に以下の確認・記録が義務となる。

購入者への確認事項:
– 購入者の年齢
– 18歳未満の場合:氏名
– 他の店舗での同種医薬品の購入状況
– 適切な数量を超えて購入しようとする理由

情報提供の義務:
– 乱用のリスクに関する説明
– 購入者が内容を理解したことの確認

記録の保管:
– 確認した内容の記録(様式は各団体のガイドラインを参照)
– 一定期間の保存


薬局・ドラッグストアの実務対応|何をどの順序でやるか

ステップ1:在庫の棚卸し(2026年3月〜4月)

まず自店舗に指定濫用防止医薬品の在庫がいくつあるかを把握する。

作業手順:
1. 8成分(コデイン・ジヒドロコデイン・エフェドリン・プソイドエフェドリン・メチルエフェドリン・ブロモバレリル尿素・デキストロメトルファン・ジフェンヒドラミン)の一覧表を作成
2. 全在庫品の添付文書・外箱を確認し、上記成分が含まれるか照合
3. 対象品のリストを作成し、棚位置をマッピング
4. 剤形(内用剤・外用剤・トローチ等)を確認し、規制対象を絞り込む

💡 【実務ポイント】 デキストロメトルファン・ジフェンヒドラミンは、従来「自由棚」で管理されていることが多い。これらは今回の改正で新規追加の成分であるため、特に意識的な棚卸しが必要だ。POS・在庫管理システムを活用して、JANコード単位で対象品を特定するのが効率的。

ステップ2:陳列方法の決定と工事(2026年4月)

棚卸し結果と店舗レイアウトをもとに、陳列方法を決定する。

店舗タイプ 現実的な選択
薬剤師・登録販売者が常駐 第2号(情報提供設備から7m以内+有資格者の継続配置)、または第1号ただし書き(カウンター後ろ等の直接手を触れられない設備)
専門家が交代勤務 第1号ただし書き(施錠設備・直接手を触れられない設備)。有資格者が不在になる時間帯があると第2号の「継続的に配置」を満たせない
コンビニ・一般店舗 第1号ただし書き(施錠設備)。ただし対象商品を販売し続けるには登録販売者等の確保が前提

施錠棚の設置やカウンター改修は施工日数が必要なため、4月中の着工・完了を目指したい。

ステップ3:POSシステム・会計フローの変更(2026年4月)

指定濫用防止医薬品をレジでスキャンした際に、確認フローが自動で起動する仕組みを整備する。

レジ対応フローの例:

対象商品スキャン → POSに「年齢確認アラート」表示
→ 薬剤師/登録販売者が呼ばれる
→ 購入者に年齢確認・他店購入状況を質問
→ 18歳未満と確認 → 氏名確認・1箱のみ販売
→ 記録用紙/タブレットに入力 → 会計完了

POSシステムのマスタ設定変更(対象JANコードへのフラグ付け)は、システムベンダーへの依頼が必要なため、早めに連絡を取ること。

⚠️ 【注意】 「対象医薬品をレジで弾く」のではなく、「確認フローが入る」設計にすること。誤ってPOSに「販売禁止」設定をすると、適正な購入者にも商品を渡せなくなる。テスト運用の期間を設けて、フロー通りに動くか確認することを推奨する。

🎯 【専門家の視点】 複数のレジが並ぶ大型ドラッグストアでは、「対象商品を持って来た客がどのレジに並んでも適切に対応できる」体制が必要だ。「薬剤師がいないレジでは販売不可=会計待機が発生」という事態を避けるため、呼び出しシステムの整備や、レジ担当者全員が基本フローを理解しておく研修が欠かせない。

ステップ4:従業員教育(2026年4月〜5月施行前)

薬剤師・登録販売者はもちろん、レジ担当の非薬剤師スタッフも「対象商品が来たら専門家を呼ぶ」対応を学ぶ必要がある。

教育内容のポイント:
– 指定濫用防止医薬品の8成分と代表的な商品名の暗記
– 年齢確認の方法(口頭確認→身分証提示要求のフロー)
– 18歳未満への対応手順(1箱制限・氏名確認・記録)
– 断られた際の対応(「申し訳ありませんが、法律の規定により…」等の標準文言)
– 記録用紙・システムへの入力方法

推奨研修スケジュール:
– 4月前半:管理者・薬剤師向け説明会
– 4月後半:全スタッフ向けロールプレイ研修
– 4月末〜5月初旬:施行前の模擬運用

💡 【実務ポイント】 4月後半〜5月の研修ピークと、6月1日施行の調剤報酬改定の準備が時期的に重複する。同じ管理薬剤師が両方の対応を兼務するとリソースが逼迫しがちだ。月別タスクの切り分けと人員配置の指針は薬機法+調剤報酬改定 並行対応ロードマップ2026に整理してある。研修担当・届出担当・在庫担当を明確に分け、5月施行と6月施行を並行で乗り切る運用設計を先に固めること。


条件付き承認制度の拡充|製薬企業と患者への影響

改正前後の比較

条件付き承認制度とは、希少疾患や難治性疾患等で通常の臨床試験の実施が困難な場合に、一定の有効性・安全性が確認された段階で承認を与える制度だ。

項目 改正前 改正後(2026年〜)
承認条件 比較的厳格な臨床データが必要 探索的臨床試験段階での承認が可能
対象疾患 希少疾患等(限定的) 重篤かつ代替治療法のない疾患全般
取消し規定 規定なし 承認取消し規定を整備
ドラッグ・ラグ対策 限定的 海外承認薬の迅速承認を促進

薬局への間接的な影響

条件付き承認の拡充は主に製薬企業・PMDAが対応主体だが、薬局には以下の間接的影響がある。

  • 従来は海外のみで使用可能だった希少疾病薬が国内で流通するようになる
  • これまで患者が海外から個人輸入していた医薬品が国内処方に切り替わる
  • 承認後調査(市販後調査)の強化により、副作用報告・調剤記録の保管重要性が増す

💡 【実務ポイント】 条件付き承認薬は「市販後調査中」という位置づけのため、添付文書の改訂頻度が高い。患者への服薬指導時に「最新の添付文書を確認した」という記録を残しておくことが、万一の副作用トラブル時の証明になる。


要指導医薬品のオンライン販売解禁

改正の内容

2026年5月1日から、要指導医薬品のオンライン販売が一定条件下で解禁された(施行通知: 令和7年12月26日付 医薬発1226第2号)。指定濫用防止医薬品制度と同じ日の施行である。

解禁の条件:
– 薬剤師がオンラインで服薬指導を実施すること
– 映像及び音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話することが可能な方法で、双方向の情報提供が行われること
– ただし「適正使用のために必要な確認を対面で行うことが適切である品目」は対象から除外される

除外される品目の代表例が緊急避妊薬である。 レボノルゲストレル製剤は「特定要指導医薬品」に指定されており、条文の括弧書きでオンライン販売の対象から明示的に除かれている。薬剤師の面前で購入者が直ちに服用することが求められるため、対面でしか販売できない。詳しくは緊急避妊薬の薬局販売2026|取扱い薬局の3要件・面前服用・研修まで実務で解説で解説している。

今後の展開:
– 主要な要指導医薬品のオンライン販売が本格化
– 競合薬局のEC対応が進み、地域独占モデルが崩れる可能性

🎯 【専門家の視点】 要指導医薬品のオンライン販売解禁は、薬局経営モデルを根本から変える可能性がある。地域密着型の薬局にとっては脅威に見えるが、「オンライン薬剤師相談の実績」「かかりつけ患者への継続フォロー」など、対面の信頼関係を強みとして打ち出せる薬局には追い風にもなる。自薬局の強みとEC対応の必要性を早期に見極めることが重要だ。


違反時のリスク|何がどうなるか

行政処分の段階

段階 処分内容 主なトリガー
1段階 業務改善命令 法令違反の初回・軽微な違反
2段階 業務停止命令 改善命令後も違反継続
3段階 許可・登録の取消 重大な違反・反復的違反
刑事罰 拘禁刑・罰金 悪質な違反行為(量刑は下表のとおり条文ごとに異なる)

罰則の規模

薬機法の罰則は、違反した条文ごとに量刑が分かれている。よく混同されるので、e-Gov法令検索で条文を確認した実際の量刑を挙げておく。なお2025年6月1日施行の刑法改正により、「懲役」は「拘禁刑」に改められている。

条文 量刑 主な対象
第83条の9 5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、または併科 指定薬物を業として製造・輸入・販売・授与・所持したとき
第84条 3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、または併科 無許可の製造販売業・薬局開設(第4条第1項)等
第86条 1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、または併科 薬局・店舗の管理者を置かない(第7条第1項・第28条第1項等)等
第87条 50万円以下の罰金 立入検査の拒否・妨害、報告義務違反等

「5年以下・500万円以下」は指定薬物(いわゆる危険ドラッグ)に関する第83条の9の量刑であり、指定濫用防止医薬品の販売方法違反に対する罰則ではない。 混同して社内研修の資料に載せないよう注意されたい。

課徴金についても同様である。 薬機法第75条の5の2が定める課徴金は「第66条第1項の規定に違反する行為」=虚偽・誇大広告を対象とするもので、課徴金対象期間に取引した対価合計額の4.5%が課される。指定濫用防止医薬品の販売方法に関する義務違反に対して課される制度ではない。

指定濫用防止医薬品の販売方法に関する義務違反は、まず上表の行政処分(業務改善命令等)による是正が基本となる。個別の違反にどの罰則条文が適用されるかは違反の態様によって異なるため、判断に迷う場合は所管の都道府県薬務主管課または地方厚生局に確認されたい。

⚠️ 【注意】 罰則の対象は「店舗の開設者(会社・法人)」が基本だが、担当した薬剤師・登録販売者個人も責任を問われる場合がある。「会社が決めたマニュアル通りにやっただけ」という言い訳は、法的義務を理解した上で実施された違反には通用しない。個人の資格(登録販売者証)に影響が及ぶリスクも認識しておくべきだ。

🎯 【専門家の視点】 実際の行政処分は「1回の違反で即業務停止」という強権発動はまれで、まず指導・改善命令が先行する。しかし、社会的インパクトが大きい事案(メディア報道された事例、組織的・反復的な違反)では初動から厳しい処分が下るケースもある。SNSでの拡散により「あのドラッグストアが法律違反」と広まれば、ブランドへのダメージは測り知れない。法令対応はコンプライアンス上の義務だけでなく、ブランドリスク管理でもある。


調剤報酬・経営への影響

調剤報酬体系との連動として、2026年6月施行の調剤報酬改定(調剤報酬改定2026年ガイド参照)と合わせて考える必要がある。

  • 薬局と指定濫用防止医薬品:調剤薬局でも、OTC薬を販売している場合は規制対象。院内処方箋の調剤だけでなく、OTC販売部門の管理体制を整備すること。
  • 地域支援体制加算との関連:薬局の「地域への貢献度」が加算に反映される中、ODリスクがある市販薬の適正販売は「かかりつけ薬局」としての信頼につながる(地域支援体制加算の全区分比較ガイド参照)。
  • 健康保険法改正との連動:市販品類似薬(OTC類似薬)の保険給付の見直しは、処方薬需要の変化を通じて薬局の処方箋収入にも影響する。2026年の健康保険法改正の全体像で制度変更の概要を確認しておきたい。
  • 人件費への影響:年齢確認・記録作業の発生により、繁忙時間帯の業務負荷が増加する。レジ待機時間延長によるクレームリスクも考慮に入れ、人員配置を見直すこと。

🎯 【専門家の視点】 5月1日の薬機法施行と6月1日の調剤報酬改定(地域支援体制加算の再編・服薬管理指導料一本化)は、対応領域が異なるが時期がほぼ連続している。同じ人員が両改正を担うとリソース逼迫により対応漏れが発生するため、月別タスクと担当者を分離した「並行対応設計」が現実的だ。具体的な月次タスク・人員配置・届出期限は薬局の薬機法+調剤報酬改定 並行対応ロードマップで確認できる。


今すぐやること|アクションチェックリスト

2026年3〜4月中の必須対応

  • [ ] 自店舗の在庫から指定濫用防止医薬品8成分含有品をリストアップする
  • [ ] 対象商品のJANコードリストを作成し、POSシステムへの設定変更を発注する
  • [ ] 陳列方法を施行規則第218条の5のどの号で満たすか(第1号/第1号ただし書き/第2号)を決定する
  • [ ] 選択した陳列方法に応じた什器・棚の工事・改修を手配する
  • [ ] 確認・記録用紙(または電子フォーム)のフォーマットを整備する
  • [ ] 販売手順書(SOPに相当する店内マニュアル)を作成する

2026年4月〜5月施行前の研修・テスト対応

  • [ ] 薬剤師・登録販売者全員に改正内容の説明会を実施する
  • [ ] レジ担当スタッフ向けに「対象商品のスキャン時の対応」ロールプレイ研修を実施する
  • [ ] 年齢確認の標準文言(スクリプト)を作成し全スタッフに配布する
  • [ ] 施行前の模擬運用(2〜3日程度)を実施し、フローの問題点を洗い出す
  • [ ] 日本薬剤師会・チェーンドラッグストア協会等の販売等手順書ガイドラインを確認する
  • [ ] 本社・フランチャイズ本部からの追加通達を確認し、店舗対応に反映する

2026年5月1日以降の運用定着

  • [ ] 毎月1回、記録書類の保管状況を確認する
  • [ ] 販売拒否・トラブルがあった事例は記録し、翌月の研修に活用する
  • [ ] 厚生労働省の通知・Q&A等を定期的に確認し、対応マニュアルを更新する

関連記事

指定濫用防止医薬品への対応とあわせて、薬局経営の他の重要ポイントも確認しておこう。


よくある質問(FAQ)

Q1. 2026年5月1日までに対応が間に合わない場合はどうなりますか?

A. 施行日以降は法的義務が発生するため、未対応のまま営業を続けることは薬機法違反となります。即時の業務停止処分が下るわけではありませんが、都道府県の薬務担当部門による立入検査・指導の対象となり、改善命令→業務停止という行政処分の連鎖が起こりうります。施行日までの対応完了を強く推奨します。

Q2. 「18歳未満は一切販売禁止」ではないのですか?

A. 禁止ではありません。18歳未満の購入者には「1箱(少量)のみ」の販売は認められています。ただし、氏名を含む本人確認と他店での購入状況確認が義務です。また、薬剤師または登録販売者が直接対応する必要があります。「全部断れば安全」と誤解して一律販売拒否すると、正当な購入機会を奪うことになり、別の問題が生じます。

Q3. コンビニに設置されているOTC薬コーナーも対象ですか?

A. 対象です。薬局・薬店(店舗販売業)のみならず、コンビニエンスストアやスーパーマーケットでOTC薬を販売している場合も、指定濫用防止医薬品の規制が適用されます。薬剤師・登録販売者を継続的に配置できない店舗は、施行規則第218条の5第2号(情報提供設備から7m以内+有資格者の継続配置)を満たせないため、第1号ただし書きの「鍵をかけた陳列設備」等での対応が必要になります。なお、対象商品を販売し続けるためには登録販売者等の確保が前提となります。

Q4. インターネット通販(EC)で指定濫用防止医薬品を販売している場合はどうですか?

A. オンライン販売においても、2026年の改正により規制が強化されます。年齢確認(テレビ電話等による対面確認またはオンライン本人確認)と数量制限の適用が義務となります。従来のWebフォームで「18歳以上です」にチェックを入れるだけの確認方法は不十分となる可能性があり、オンライン本人確認システムの導入等、対応が必要となります。

Q5. 購入者に「市販薬の複数箱購入を断った」場合、クレームを受けた際の対応は?

A. 「薬機法の規定に基づく対応」であることを穏やかに説明するのが基本です。標準文言の例:「大変恐れ入りますが、2026年5月施行の薬機法改正により、こちらの商品はお一人様1箱までとなっております。ご理解いただけますと幸いです。」感情的にならず、法令上の義務であることを伝えることがポイントです。クレーム事例は記録し、管理者に報告する運用を整えておくことを推奨します。

Q6. 薬剤師がいない時間帯(夜間・早朝)の対応はどうなりますか?

A. 登録販売者が在店していれば、指定濫用防止医薬品の販売(年齢確認・情報提供・記録を含む)が可能です。薬剤師・登録販売者が誰も在店していない時間帯は、指定濫用防止医薬品の販売自体ができません。このような時間帯には対象商品を施錠棚に収納するか、「販売なし」の運用を徹底する必要があります。

Q7. 指定濫用防止医薬品を販売する店舗に登録販売者の「常駐義務」はありますか?

A. 「24時間常駐」という意味の常駐義務は法令上ありません。ただし、指定濫用防止医薬品を販売する時間帯には、薬剤師または登録販売者のいずれかが必ず店舗に在店している必要があります(薬機法第28条・第31条の2の店舗管理者要件、施行規則第15条等の販売従事者要件)。在店していない時間帯は、対象商品の販売自体ができないため、施錠棚に収納する・「販売停止中」表示を出すなどの運用が現実的です。同一時間帯に1人の登録販売者が複数店舗を兼務する運用は、物理的に在店できないため認められません(時間帯を分けた異なる店舗での勤務は、店舗管理者要件等を満たす限り可能)。


参考・出典

  • 厚生労働省「2026年5月1日施行の医薬品販売制度の改正内容」(https://www.mhlw.go.jp/stf/web_magazine/closeup/20.html)
  • 厚生労働省「令和7年の薬機法等の一部改正について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_58083.html)
  • 薬事日報「指定濫用防止医薬品とは:一般用医薬品のオーバードーズ対策」(https://www.yakuji.co.jp/entry121153.html)
  • DGS Online「指定濫用防止医薬品にデキストロメトルファンとジフェンヒドラミン/調査会方針」(https://www.dgs-on-line.com/articles/3107)
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律(令和7年法律第37号)
JG

実務ガイド編集部

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