最終更新日: 2026年4月
本記事では2026年7月1日施行の障害者法定雇用率2.7%引上げに関する3大変更点(雇用率2.5%→2.7%、対象企業範囲が常用労働者37.5人以上に拡大、製造業等の除外率引下げ)を整理し、新たに対象となる中小企業(従業員37.5〜100人規模)の人事担当者・経営者向けに、現状診断から定着支援までの5ステップ実務対応を解説する。法令解説の総論は障害者法定雇用率2.7%引上げ2026年7月|対象企業の拡大と実務対応ガイドも参照されたい。
関連記事(同クラスター・予定)
– 従業員37.5人判定ガイド(slug: shogaisha-koyou-handan-37-5-guide) — 常用労働者・短時間労働者0.5人カウント・除外率の境界事例を網羅
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– 社会保険適用拡大2026年10月 — 障害者雇用と短時間労働者の社保適用の関係
– 短時間勤務制度の手続き2026 — 障害者の合理的配慮としての短時間勤務制度
– ストレスチェック義務化(中小企業) — 精神障害者雇用と職場メンタルヘルスの関連
⚠️ 本記事は2026年4月時点の障害者雇用促進法・厚生労働省告示・独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)公表資料に基づく。 雇用率2.7%・対象企業37.5人以上・納付金月額50,000円/人・調整金月額29,000円/人・報奨金月額21,000円/人は確定値。一方で「除外率の各業種別引下げ後の数値」「精神障害者算定特例の取扱い見直し」については最終要件が告示で確定する可能性があるため、必ず厚生労働省・JEEDの最新公示を確認してください。
2026年7月1日施行の障害者雇用促進法改正により、民間企業の法定雇用率が2.5%から2.7%へ引き上げられ、対象企業は常用労働者37.5人以上に拡大する。新たに対象となる中小企業は数万社規模であり、未対応のまま施行日を迎えると不足1人あたり月50,000円の納付金(300人超企業)または行政指導の対象となる。本記事は、現状診断から定着支援までの5ステップで、人事担当者が今すぐ着手すべき実務対応を整理した。
① 対象企業の拡大が最大インパクト。常用労働者40人の企業は現行「対象外」だが、施行後は雇用義務1人が発生する。判定境界の37.5〜45人規模は要注意ゾーンである。
② 採用準備リードタイムは最低4〜6か月。求人票作成・職務再設計・受入研修・ハローワーク経由の応募者選考を考えると、2026年4〜5月の段階で計画策定を開始しないと7月施行に間に合わない。
③ 納付金より採用と定着が経済合理的。月5万円×12か月=年60万円の納付金より、報奨金(常用労働者100人以下の中小企業向け月21,000円/人)または調整金(100人超企業向け月29,000円/人)+助成金活用で実質コストを抑えつつ雇用する方が、長期的に見て企業価値・人事評価ともに有利である。
2026年7月改正の概要
法定雇用率の段階的引上げ
障害者の法定雇用率は、障害者雇用促進法(昭和35年法律第123号)第43条第2項に基づき、5年ごとに見直される。直近の引上げ経緯は次のとおりである。
| 時期 | 民間企業 | 国・地方公共団体 | 都道府県等の教育委員会 | 対象企業の規模要件 |
|---|---|---|---|---|
| 2021年3月まで | 2.2% | 2.5% | 2.4% | 45.5人以上 |
| 2021年3月〜2024年3月 | 2.3% | 2.6% | 2.5% | 43.5人以上 |
| 2024年4月〜2026年6月 | 2.5% | 2.8% | 2.7% | 40人以上 |
| 2026年7月〜(予定) | 2.7% | 3.0% | 2.9% | 37.5人以上 |
注: 2024年4月の引上げ(2.3%→2.5%)から2年3か月後の再引上げとなる。これは2018年改正時に「段階的に2.7%まで引き上げる」方針が示されていたことに基づく。
3年で0.4ポイント引き上がる背景
2024年→2026年の連続引上げは、(1) 障害者雇用が量・質ともに進展したこと、(2) 国際労働機関(ILO)勧告水準への接近、(3) 障害者の就労意欲の高まり——を背景とする。一方で、企業側からは「採用人材の確保が間に合わない」「除外率の縮小と重なって負担が大きい」との声があり、厚生労働省は採用支援メニュー(ジョブコーチ・特定求職者雇用開発助成金等)の拡充で対応している。
2.7%
37.5人以上
5万円/人月
2.9 / 2.1万円
対象企業の判定(常用労働者37.5人以上)
「常用労働者」の定義
障害者雇用促進法でカウントする「常用労働者」とは、雇用契約の形式・名称(正社員・契約社員・パート等)を問わず、1年を超えて雇用される見込みがある者または1年を超えて引き続き雇用されている者を指す。試用期間中であっても、引き続き1年を超えて雇用される見込みがあれば算入される。
短時間労働者の0.5人カウント
週所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者は、1人を「0.5人」としてカウントする。週20時間未満の超短時間労働者は原則として算入されない(特定短時間労働者の特例算入を除く)。
| 区分 | 週所定労働時間 | カウント |
|---|---|---|
| 通常の労働者 | 30時間以上 | 1人 |
| 短時間労働者 | 20時間以上30時間未満 | 0.5人 |
| 超短時間労働者 | 10時間以上20時間未満 | 原則対象外(特定短時間労働者として0.5人算入の特例あり) |
| 上記未満 | 10時間未満 | 対象外 |
判定の境界事例(要注意ゾーン)
| 企業の労働者構成 | 常用労働者数 | 2026年7月以降の取扱い |
|---|---|---|
| 正社員30人+週25時間パート15人 | 30+7.5=37.5人 | 雇用義務発生(境界ジャスト) |
| 正社員35人+週20時間アルバイト4人 | 35+2=37人 | 雇用義務なし(37.5未満) |
| 正社員40人+契約社員5人 | 45人 | 雇用義務1.2人→2人雇用必要 |
| 正社員90人+短時間20人 | 90+10=100人 | 雇用義務2.7人→3人雇用必要 |
除外率の引下げ
「除外率制度」は、障害者の就業が一般的に困難な業種(鉄鋼業・建設業・林業等)に対し、雇用率の算定基礎となる労働者数から一定割合を除外できる経過措置である。2002年の制度廃止以降、段階的に縮小・廃止が進められてきた。
| 業種例 | 現行除外率 | 2025年4月引下げ後(参考) | 今後の方向性 |
|---|---|---|---|
| 道路旅客運送業(タクシー等) | 5% | 0% | 2025年4月に廃止済み |
| 倉庫業 | 5% | 0% | 同上 |
| 鉄鋼業 | 30% | 20% | 段階的に10pt引下げ |
| 林業 | 35% | 25% | 同上 |
| 建設業 | 20% | 10% | 同上 |
| 採石業・砂・砂利・玉石採取業 | 旧除外率設定業種 | 廃止 | 2025年4月以降除外率制度の対象外 |
注: 2025年4月に各業種の除外率が一律10ポイント引き下げられた。2026年7月の雇用率引上げと組み合わさることで、これら業種の実質的な雇用義務人数は大幅に増加する。除外率は将来的に廃止される方針であり、各業種ごとの2026年7月時点の数値は厚生労働省の最新告示で確認すること。
納付金・調整金の制度
障害者雇用納付金制度は、法定雇用率を達成できない企業から「納付金」を徴収し、達成企業へ「調整金・報奨金」として再分配する仕組みである(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が運営)。
制度の対象企業と単価
| 区分 | 対象企業規模 | 不足分の徴収 | 超過分の支給 |
|---|---|---|---|
| 納付金 | 常用労働者100人超の企業 | 不足1人あたり月額50,000円(年額60万円、一律) | ― |
| 調整金 | 常用労働者100人超の企業 | ― | 超過1人あたり月額29,000円(年額34.8万円)※年120人月超分は23,000円に減額 |
| 報奨金 | 常用労働者100人以下の中小企業 | ― | 超過1人あたり月額21,000円(年額25.2万円)※年420人月超分は16,000円に減額 |
| 在宅就業特例調整金 | 100人超の企業 | ― | 在宅就業障害者への発注額に応じて算定 |
注: 納付金は2026年4月時点で月額50,000円の本則のみが適用される(過去に「100人超300人以下」を対象とした月40,000円の経過措置が存在したが既に終了済み)。調整金・報奨金の対象規模は「100人ジャスト=100人以下扱いで報奨金対象、101人以上=調整金/納付金対象」が原則。境界企業はJEED都道府県支部に事前確認すること。
規模別の対象制度の整理
常用労働者数による制度対象区分は以下のとおり整理できる。
- 常用労働者100人以下(37.5〜100人規模): 納付金徴収の対象外。ただし雇用義務は発生し、未達成は行政指導・社名公表のリスクあり。法定雇用率を超えて雇用した場合は報奨金(月額21,000円/人)の支給対象(要件: 各月の常用労働者数の年間合計の4%または年72人月のいずれか多い数を超える雇用)
- 常用労働者100人超(101人以上): 納付金(月額50,000円/人、一律)の徴収対象。法定雇用率を超えて雇用した場合は調整金(月額29,000円/人)の支給対象
注: かつて「常用労働者100人超300人以下」を対象に納付金を月額40,000円に減額する経過措置(5年間の暫定措置)が設けられていたが、既に適用期限が終了しており、現在は本則の月額50,000円が一律適用される。最新の取扱いは厚生労働省・JEED公式の案内で確認すること。
申告・申請の期限
| 手続き | 提出時期 | 提出先 |
|---|---|---|
| 障害者雇用状況報告書(ロクイチ報告) | 毎年6月1日基準・7月15日まで | ハローワーク |
| 障害者雇用納付金 申告・申請 | 毎年4月1日〜5月15日 | JEED都道府県支部 |
| 調整金・報奨金の支給申請 | 毎年4月1日〜5月15日 | JEED都道府県支部 |
5ステップ実務対応
ステップ① 現状診断(2026年4〜5月)
やること
- 常用労働者数のカウント: 2026年7月1日時点見込みで「30時間以上」「20時間以上30時間未満」「20時間未満」に区分集計する
- 除外率の確認: 自社業種の除外率(2025年4月引下げ後の数値)を厚生労働省告示で確認
- 必要雇用数の算出:
(常用労働者数 − 除外労働者数) × 2.7% = 必要雇用数(小数点以下切捨て) - 現雇用障害者数のカウント: 在籍する障害者の障害者手帳・年金証書・指定医診断書を確認し、重度・短時間別にカウント
- 過不足の特定: 必要数 − 現雇用数 = 不足数
算定上の障害者カウントルール
| 区分 | 通常勤務(30時間以上) | 短時間勤務(20〜30時間) |
|---|---|---|
| 身体障害者・知的障害者(重度) | 2人 | 1人 |
| 身体障害者・知的障害者(重度以外) | 1人 | 0.5人 |
| 精神障害者 | 1人(特例: 1人として算定) | 0.5人(特例: 1人として算定) |
注: 精神障害者の短時間勤務(20〜30時間)を「1人」としてカウントする特例措置は2023年4月以降「当分の間」延長されており、2026年4月時点で終了期限は示されていない。少なくとも2026年7月施行時点では継続適用される見通しである。最新の取扱いは厚生労働省の最新告示で確認すること。
ステップ② 採用計画(2026年5〜6月)
計画策定のポイント
- 採用人数の決定: 不足数+安全マージン1名(離職リスク対応)を基本とする
- 採用時期の逆算: ハローワーク求人公開→応募→選考→内定→入社で平均3〜4か月。6月公開なら9〜10月入社が現実的
- 職務の切り出し: 既存の職務を「障害特性に合った形に再設計」する。例: データ入力・郵便発送・社内便配達・清掃・社員食堂補助・PCキッティング等
- 配属先の選定: 受入経験のある部署 or 業務がパターン化されている部署を優先
- 採用予算: 給与(最賃水準〜)+設備改修費(バリアフリー化等)+ジョブコーチ費用(公的支援活用可)
助成金活用の組み合わせ
| 助成金名 | 主な要件 | 支給額 |
|---|---|---|
| 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) | 障害者をハローワーク等の紹介で継続雇用 | 後掲の区分別表を参照 |
| トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース) | 3か月間の試行雇用 | 月額40,000円×最大3か月 |
| 障害者雇用安定助成金(職場定着支援コース) | ジョブコーチによる支援等 | コース別(30〜800万円超) |
| 障害者作業施設設置等助成金 | 作業施設・設備の設置 | 上限450万円(重度の場合) |
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の支給額・期間
| 区分 | 中小企業 | 大企業 | 助成期間 |
|---|---|---|---|
| 重度障害者等(重度身体・重度知的・45歳以上の身体/知的・精神障害者等) | 240万円 | 100万円 | 3年 |
| 重度等以外の身体・知的障害者 | 120万円 | 50万円 | 2年 |
| 短時間労働者(週20〜30時間、身体・知的・精神) | 80万円 | 30万円 | 2年 |
注: 2026年4月時点の厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」の支給額。中小企業の重度障害者等は最大240万円・3年支給。支給は対象労働者の継続雇用を前提に、半年ごとの分割支給となる。最新の支給要件・額は厚生労働省・ハローワークで確認すること。
【実務ポイント】 特定求職者雇用開発助成金とトライアル雇用助成金は併給不可(一方を選択)。中小企業(常用労働者300人以下)は支給額が手厚いため、計画段階で社労士・JEEDアドバイザーと相談して最適な組み合わせを設計すること。詳細手順は障害者採用 実務フロー(公開予定)で解説する。
ステップ③ 受入準備(2026年6〜8月)
物理環境
- バリアフリー対応: 段差解消・手すり設置・多目的トイレ(身体障害者向け)
- 執務スペース: 集中しやすい個室・パーティション(精神・発達障害者向け)
- 設備投資: 拡大読書器・音声読み上げソフト・段差解消スロープ等([障害者作業施設設置等助成金]の対象)
人事制度
- 就業規則の見直し: 通院・服薬時間の柔軟対応・短時間勤務制度(参考: 短時間勤務制度の手続き2026)
- 合理的配慮の整理: 障害者雇用促進法第36条の3に基づく合理的配慮の提供(採用時・採用後)の方針書を作成
- 評価制度: 障害特性を踏まえた配慮を含めた評価項目に修正
受入研修
- 管理職向け: 障害特性の基礎知識・合理的配慮の進め方・差別禁止のポイント(半日〜1日)
- 配属部署向け: 同僚としての関わり方・困った時の相談先・障害者本人の希望事項共有(2〜3時間)
- 全社向け: 障害者雇用方針の周知(社内報・全体朝礼等)
ステップ④ 採用活動(2026年6〜10月)
求人媒体の選択
| 媒体 | 特徴 | 適性 |
|---|---|---|
| ハローワーク(障害者専門援助部門) | 無料・支援機関連携が手厚い | 中小企業の標準ルート |
| 特別支援学校・障害者職業能力開発校 | 新卒採用ルート、職場実習可 | 計画的・継続的採用 |
| 民間人材紹介(障害者専門) | 即戦力・短期間で母集団確保 | 専門スキル人材が必要な場合 |
| 障害者就業・生活支援センター | 地域密着・定着支援つき | 重度・精神障害者の採用 |
| 自社採用ページ | コスト最小・応募者が限定的 | 認知度のある企業向け |
求人票作成の要点
- 業務内容を具体化: 「軽作業」ではなく「商品ラベル貼付・梱包・伝票入力」等の具体的記述
- 必要な配慮の明示: 「車椅子対応可」「服薬時間の配慮可」等
- 障害種別の特定を避ける: 「身体障害者限定」等の限定はNG(合理的配慮による職務調整を前提にする)
- 賃金・労働時間の具体記載: 最賃水準でも記載必須。短時間勤務の選択肢を明記
注: 求人票における障害種別を限定した募集は、職業安定法および障害者雇用促進法第34条(差別禁止)の観点から原則として認められない。障害特性に応じた合理的配慮の協議を前提に、職務遂行可能性を個別判断するのが正しい運用である。
ステップ⑤ 定着支援(採用後継続)
入社直後(〜3か月)
- オリエンテーション: 業務手順を文書化(口頭説明だけに頼らない)
- OJT担当者の選定: 障害特性を理解した社員を担当に。可能ならジョブコーチ(外部支援員)を併用
- 週次1on1: 困りごと・体調・職場関係の早期把握
- トライアル雇用助成金の活用: 3か月間の試行雇用期間として位置づけ
定着期(3〜12か月)
- 業務範囲の段階的拡大: 慣れに応じて新しい業務を追加(本人合意のうえ)
- 支援機関との連携: 障害者就業・生活支援センター・主治医との情報共有(本人同意必須)
- メンタルヘルス対策: 精神・発達障害者の場合、定期的なストレスチェック実施(参考: ストレスチェック義務化)
- キャリア面談: 6か月経過時点でキャリア展望を本人と協議
長期(1年以降)
- 賃金改定: 最賃水準スタートの場合、業務範囲拡大に応じて昇給を検討
- 資格取得支援: 業務関連資格の取得支援(事務系: 簿記・MOS等)
- キャリアパス整備: 同僚と同じキャリアラダーへの組み込み(本人希望に応じて)
業種別 雇用率達成のヒント
製造業
- 強み: 業務がパターン化されており、職務切り出しが容易
- 戦略: 検品・梱包・倉庫管理・製造補助等の職務に身体障害者を配置。除外率業種(鉄鋼・建設)は除外率引下げの影響を直接受けるため早期対応必須
小売業
- 強み: バックヤード(品出し・在庫管理)に職務が豊富
- 戦略: レジ業務は接客負荷が高いため、バックヤード中心の配置が定着しやすい。短時間勤務との相性も良好
IT・情報通信業
- 強み: 在宅勤務との親和性が高く、身体障害者・精神障害者の配属が比較的容易
- 戦略: テスト・データ入力・キッティング等の職務切り出し。在宅勤務制度を整備すれば応募者母集団を全国規模に拡大できる
医療・福祉業
- 強み: 福祉的視点を持つ職員が多く、合理的配慮の理解が進みやすい
- 戦略: 病棟クラーク・受付・洗濯室等の補助業務に配置。特例子会社化の検討も有効
建設業
- 課題: 除外率の引下げ(10ポイント縮小)で実質的な雇用義務人数が増加
- 戦略: 現場作業員より、本社事務部門(経理補助・書類整理・図面トレース等)に配置。建設業特有の助成金(建設労働者確保育成助成金等)と組み合わせる
支援制度・助成金
主要支援メニュー一覧
| 支援名 | 内容 | 申請先 |
|---|---|---|
| 特定求職者雇用開発助成金 | 障害者の継続雇用に対する賃金助成 | ハローワーク |
| トライアル雇用助成金 | 3か月の試行雇用に対する月額助成 | ハローワーク |
| 障害者雇用安定助成金(職場定着支援コース) | ジョブコーチ・職場介助・通勤援助等 | 都道府県労働局 |
| 障害者作業施設設置等助成金 | バリアフリー改修・設備投資 | JEED都道府県支部 |
| 障害者介助等助成金 | 業務遂行援助者の配置 | JEED都道府県支部 |
| 重度障害者等通勤対策助成金 | 通勤用バス・住宅手当・指導員配置等 | JEED都道府県支部 |
| 在宅就業障害者特例調整金 | 在宅就業障害者への発注額に応じた調整金 | JEED都道府県支部 |
ジョブコーチ制度
ジョブコーチ(職場適応援助者)は、障害者の職場定着を支援する専門員である。
| 種別 | 配置主体 | 費用 |
|---|---|---|
| 配置型ジョブコーチ | 地域障害者職業センター | 無料(公的支援) |
| 訪問型ジョブコーチ | 民間支援機関 | 助成金活用で実質負担軽減 |
| 企業在籍型ジョブコーチ | 企業内(自社社員) | 助成金支給対象 |
特例子会社制度
特例子会社は、障害者の雇用に特別の配慮をした子会社で、厚生労働大臣の認定を受けた場合、親会社・グループ会社全体で雇用率を通算できる制度である。
メリット
- グループ全体で雇用率を達成しやすい
- 障害者向けに特化した職務・職場環境を整備できる
- 人事制度・賃金体系を独立して設計可能
デメリット・留意点
- 設立コスト(資本金・事務局・初期研修費)が発生
- 親会社からの業務委託契約・グループ内取引価格設定の整備が必要
- 認定要件が厳格(障害者雇用5人以上・全従業員に占める障害者比率20%以上等)
注: 特例子会社の活用は中堅・大企業(300人超)向けの選択肢である。中小企業(37.5〜300人)は、まず社内雇用+ジョブコーチ活用で達成を目指すのが現実的。詳細は中小企業の障害者雇用対策(公開予定)で解説する。
規模別シミュレーション
4規模パターンでの必要雇用数・コスト試算
| 規模 | 常用労働者数 | 必要雇用数(2.7%) | 不足時の納付金(年額) | 超過時の調整金/報奨金(年額・1人超過) |
|---|---|---|---|---|
| 境界規模 | 38人 | 1人 | 納付金対象外(100人以下のため) | 報奨金: 25.2万円/人(要件充足時) |
| 小規模 | 100人 | 2人(2.7人→切捨) | 納付金対象外(100人以下扱い) | 報奨金: 25.2万円/人(要件充足時) |
| 中規模 | 300人 | 8人(8.1人→切捨) | 不足1人で60万円 | 調整金: 34.8万円/人 |
| 中堅規模 | 500人 | 13人(13.5人→切捨) | 不足1人で60万円 | 調整金: 34.8万円/人 |
| 大規模 | 1,000人 | 27人 | 不足1人で60万円 | 調整金: 34.8万円/人(年120人月超分は27.6万円) |
注: 必要雇用数は「常用労働者数×2.7%」で算定し、小数点以下を切り捨てる(除外率業種は除外労働者数を控除する)。納付金・調整金の対象規模区分は「常用労働者100人超」が境界——100人ジャスト=100人以下扱いで報奨金対象、101人以上=調整金/納付金対象。境界企業はJEED支部に事前確認すること。報奨金は単純な「法定雇用率超過」ではなく、各月の常用労働者数の年間合計の4%または年72人月のいずれか多い数を超える雇用が要件である点に注意(中小企業=100人以下では実質的に「年72人月超の雇用」が基準)。
規模別の戦略指針
38〜100人規模(新規対象企業)
- 納付金は対象外、ただし行政指導リスクあり: 雇用義務未達成は厚生労働省・都道府県労働局の行政指導対象
- 採用1人で達成可能: ハローワーク求人+特定求職者雇用開発助成金(重度等の場合は最大240万円・3年支給、重度等以外でも120万円・2年支給)の組み合わせが基本戦略
- 報奨金は要件充足時に支給: 100人以下企業は報奨金(月21,000円/人)の対象。ただし要件は「年4%または年72人月のいずれか多い数を超える雇用」であり、単純な法定雇用率超過ではない点に注意
- 重要: 雇用率2.7%引上げで新規対象となった企業は、施行日前の早期採用でリードタイムを確保
100〜300人規模
- 納付金は本則の月50,000円が適用: かつての「月40,000円減額の経過措置」は適用期限切れで終了済み。不足1人あたり年60万円が本則
- 調整金で実質コスト軽減: 法定雇用率+1人超過なら年額34.8万円の調整金(年120人月超分は23,000円/月=年27.6万円に減額)
- 特定求職者雇用開発助成金との合算で、初年度は実質プラス収益(給与負担<助成金+調整金+業務貢献度)となる場合もある
300〜1,000人規模
- 調整金による収益化: 法定雇用率を超える雇用は1人あたり年額34.8万円の調整金(年120人月=10人月×12を超える分は23,000円/月に減額)
- 特例子会社の検討余地: 雇用人数が増えるとグループ統合管理の効率化が見込める
- 専任担当者の配置: 人事部内に「障害者雇用担当」を1名配置することを推奨
1,000人超規模
- 不足は経営リスク: 27人以上の障害者雇用が必要、不足1人で年60万円の納付金は経営インパクト大
- 調整金の減額に留意: 1,000人規模で雇用率を大きく上回る場合、年120人月超分の調整金は23,000円/月に減額される
- 特例子会社化が標準: グループ全体での雇用率管理、障害特性に合った職場環境整備が両立
- CSR・統合報告書での開示: 投資家・取引先への情報開示項目として位置づける
未達成(行政指導リスク・社名公表リスク・採用機会損失込み)
2人雇用+助成金フル活用(重度等以外なら中小企業120万円×2年、重度等なら240万円×3年の特定求職者雇用開発助成金を年度按分で活用想定)
※給与年額(最賃水準想定)−助成金(年度按分)−業務貢献度を概算。報奨金は「年72人月超の雇用」要件を満たす場合のみ加算可能。職務内容・地域・障害特性・併給制限により実額は変動。
よくある質問(FAQ)
障害者雇用納付金制度における「常用労働者数」は、原則として毎月の常用労働者数の年間合計を12で除した平均値で判定します。月ごとに30人〜45人と変動する場合、年平均で37.5人を超えていれば対象です。境界規模の企業は、4月入社・3月退職等の繁閑差を踏まえた年間平均で確認してください。なお、ロクイチ報告(毎年6月1日基準)は単月時点の数値を報告しますが、納付金算定は年平均が用いられます。詳細な計算方法は障害者雇用納付金 計算ガイド(公開予定)を参照してください。
雇用率の算定は毎月1日時点の在籍者で判定します。離職した翌月以降は雇用率に算入されません。年平均で雇用率を割った場合は不足分が発生し、納付金の対象となる可能性があります。離職リスクへの対応は、(1) 採用時にトライアル雇用助成金(3か月間)で適性確認、(2) ジョブコーチ制度の活用で定着支援、(3) 求人計画段階で「不足数+安全マージン1名」の超過採用——が有効です。離職率を下げる最大の要因は「直属上司・OJT担当者の理解度」と言われており、研修費用を惜しまないことが重要です。
法定雇用率未達成の企業に対する直接的な罰則(罰金・刑事罰)はありませんが、以下の段階的措置が講じられます。(1) 障害者雇用納付金の徴収(常用労働者100人超のみ、不足1人あたり月50,000円)、(2) 雇入れ計画の作成命令(厚生労働大臣・都道府県労働局長による命令、障害者雇用促進法第46条)、(3) 計画適正実施勧告(同法第47条、計画が著しく不適切な場合に発出)、(4) 企業名公表(同法に基づく公表制度。第47条勧告に従わない悪質な未達成企業について厚生労働省が公表)。企業名公表は対外的なレピュテーション・取引・採用への影響が大きいため、納付金より重い実質的なペナルティとなります。特に上場企業・公共調達参入企業は、未達成が長期化すると入札参加資格に影響する場合があります。条文番号は法改正で繰上がる場合があるため、最新はe-Gov法令検索で確認してください。
精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方は雇用率算定対象です。発達障害は単独の手帳制度がなく、精神障害者保健福祉手帳または療育手帳(知的障害を伴う場合)の保有が算定の前提です。精神障害者の雇用については、短時間勤務(週20〜30時間)でも「1人」としてカウントする特例措置が2023年4月以降「当分の間」延長されており、2026年4月時点で終了期限は示されていません(少なくとも2026年7月施行時点では継続適用される見通し、最新告示で確認すること)。定着が課題となる精神障害者の雇用を促進する仕組みです。実務面では、(1) 服薬・通院時間の柔軟対応、(2) 業務負荷の段階的拡大、(3) 主治医・支援機関との連携——が定着の鍵となります。職場のメンタルヘルス対策はストレスチェック義務化(中小企業)も参考にしてください。
2025年4月の除外率一律10ポイント引下げにより、除外率業種(鉄鋼・建設・林業・採石等)の実質的な雇用義務人数は増加しました。例えば、建設業で常用労働者500人の企業の場合、(1) 改正前: 500×(1−20%)×2.5%=10人、(2) 2025年4月以降: 500×(1−10%)×2.5%=11.25→11人、(3) 2026年7月以降: 500×(1−10%)×2.7%=12.15→12人——と段階的に増えます。除外率は将来的に廃止される方針のため、長期的には他業種と同水準の雇用率が求められます。除外率業種の企業は、現場作業員以外の本社部門(事務・経理・図面トレース等)への配置や、特例子会社設立による職務切り出しが現実的な戦略となります。
はい、雇用契約に基づく労働者であれば、在宅勤務であっても雇用率算定対象です。週所定労働時間に応じて通常勤務(30時間以上:1人)または短時間勤務(20〜30時間:0.5人または特例で1人)としてカウントされます。在宅勤務は身体障害者(通勤困難な方)・精神障害者(環境刺激に敏感な方)にとって有効な配慮の一つで、IT・情報通信業を中心に活用が進んでいます。在宅勤務の障害者を雇用する場合、(1) 業務管理ツールの整備、(2) 緊急連絡体制の確立、(3) 月1回以上の対面または同期型コミュニケーション機会の設定——が定着のポイントです。なお、業務委託契約(フリーランス・在宅就業障害者)の場合は雇用率にはカウントされず、別途「在宅就業障害者特例調整金」の対象となります。
特例子会社は、障害者雇用に特化した子会社を設立し、親会社・グループ会社全体で雇用率を通算できる制度です(障害者雇用促進法第44条)。メリットは、(1) グループ全体での雇用率達成が容易、(2) 障害者向けに特化した職務設計・職場環境整備が可能、(3) 人事制度・賃金体系を独立設計可能、(4) 親会社からの業務委託で安定収益化、(5) CSR・統合報告書での発信効果——です。デメリット・留意点は、(1) 設立コスト(資本金・事務局・初期研修費)が数千万円規模、(2) 認定要件が厳格(障害者雇用5人以上・全従業員に占める障害者比率20%以上等)、(3) 親会社との取引価格設定・税務上の留意点、(4) 単独では収益化が困難で親会社の継続支援が必要——です。中小企業(300人以下)には適さず、500人超〜大企業向けの選択肢です。100〜300人規模の企業は、社内雇用+ジョブコーチ活用で達成するのが現実的です。
参考資料
| 資料名 | 参照先 |
|---|---|
| 障害者雇用促進法(障害者の雇用の促進等に関する法律) | e-Gov法令検索 |
| 障害者雇用率制度の概要 | 厚生労働省 |
| 障害者雇用納付金制度の概要 | 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) |
| 障害者雇用関係助成金 | 厚生労働省 |
| ジョブコーチ(職場適応援助者)支援事業 | JEED |
編集部からのご案内
障害者雇用2.7%引上げへの対応は、現状診断・採用計画・受入準備の3点を2026年4〜5月のうちに着手しないと7月施行に間に合いません。「自社が新規対象になるのか」「除外率の影響をどう見積もるか」「最適な助成金の組み合わせは」といった具体相談は、社労士・JEED支部・ハローワーク障害者専門援助部門への相談を強く推奨します。本サイトでは中小企業の人事実務に特化したガイドを継続的に拡充しており、関連クラスター記事の公開もあわせて参照いただくことで、施行日までに必要な対応を漏れなく整理できます。
免責事項: 本記事は2026年4月時点の障害者雇用促進法・厚生労働省告示・独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)公表資料に基づき、一般的な情報提供を目的として作成したものである。雇用率算定・納付金計算・助成金申請の最終確定は、厚生労働省・都道府県労働局・JEED都道府県支部の最新公示を必ず確認すること。本記事の内容に基づく判断・行動により生じたいかなる損害についても、筆者は責任を負わない。個別企業の状況に応じた具体的判断は、社会保険労務士・障害者職業生活相談員・JEEDアドバイザー等の専門家に相談することを推奨する。



