薬局のGLP-1受容体作動薬 調剤・供給・服薬指導ガイド|適応外処方・疑義照会・最適使用GLの実務

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薬局のGLP-1受容体作動薬 調剤・供給・服薬指導ガイド|適応外処方・疑義照会・最適使用GLの実務
目次

最終更新日: 2026年8月15日(令和8年5〜6月の最適使用推進ガイドライン改訂・ウゴービのMASH適応追加・ゼップバウンドの閉塞性睡眠時無呼吸症候群適応追加を反映)

【結論】 GLP-1受容体作動薬(オゼンピック・リベルサス・マンジャロ等)は、日本では原則2型糖尿病を効能・効果として承認された薬剤であり、肥満症で承認されているのはウゴービ皮下注(セマグルチド)・ゼップバウンド皮下注(チルゼパチド)に限られる(2026年8月時点)。この2剤には肥満症以外の適応も追加されており、ウゴービは肝硬変を伴わない代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)(令和8年6月)、ゼップバウンドは中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(令和8年5月)について、それぞれ別建ての最適使用推進ガイドラインが策定されている。美容・痩身を目的とした適応外使用は、PMDA・厚生労働省・日本糖尿病学会・日本医師会がいずれも注意喚起しており、薬局には(1)処方意図に疑義がある場合の疑義照会(薬剤師法第24条)、(2)糖尿病患者への安定供給を守る在庫管理、(3)個人輸入・偽造品・適応外使用のリスクを伝える服薬指導が求められる。本記事は、PMDA・厚生労働省の通知や最適使用推進ガイドラインをふまえ、薬局・管理薬剤師の実務対応をチェックリスト形式で整理する。承認範囲・供給状況・保険適用要件は流動的なため、最終確認は各製造販売元・厚生労働省の最新情報で行うこと。

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この記事の対象読者

本記事は、次の薬局実務者を主な読者として想定している。

  • 薬局経営者・管理薬剤師: GLP-1の供給管理、適応外処方の応需方針、適正使用の体制整備を検討したい方
  • 調剤薬局の薬剤師・事務: 「2型糖尿病と肥満症で何が違うのか」「自由診療の処方箋が来たらどう対応するか」「患者にどう服薬指導するか」を整理したい方

ダイエット薬としての紹介記事ではなく、薬局のコンプライアンス・供給・服薬指導の観点から、現場で迷いやすい論点を一次情報をもとに整理する。


GLP-1受容体作動薬とは|薬局が押さえる基本

GLP-1受容体作動薬は、消化管ホルモンであるGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)の働きを利用し、血糖値に応じてインスリン分泌を促す薬剤群である。血糖降下作用に加え、胃排出の遅延・中枢への摂食抑制作用により体重減少が得られることが、糖尿病治療薬としての評価と同時に「痩せる薬」としての社会的関心を高めている。

近年は、GIP受容体にも作用するGIP/GLP-1受容体作動薬(チルゼパチド)も登場し、これらを総称して「GLP-1関連薬」「インクレチン関連薬」と呼ぶことがある。

【ポイント】 薬局実務でまず区別すべきは「その薬剤が、何の効能・効果で承認されているか」である。同じ有効成分(セマグルチド・チルゼパチド)でも、製品(販売名)ごとに承認された適応(2型糖尿病か肥満症か)と用法・用量が異なる。承認範囲を外れた使用は、製造販売承認の範囲外(適応外使用)となる。


主なGLP-1関連薬の承認適応一覧(2026年8月時点)

薬局でよく扱う主な製品と、日本での承認適応を整理する。同じ成分でも販売名によって適応が異なる点が最大の注意点である。

販売名 一般名(成分) 剤形 国内の承認適応
オゼンピック皮下注 セマグルチド 注射(週1回) 2型糖尿病
リベルサス錠 セマグルチド 経口(1日1回) 2型糖尿病
ウゴービ皮下注 セマグルチド 注射(週1回) 肥満症(要件あり)/肝硬変を伴わない代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)(中等度又は高度の線維化を有する場合に限る。令和8年6月に最適使用推進GL策定)
マンジャロ皮下注 チルゼパチド 注射(週1回) 2型糖尿病
ゼップバウンド皮下注 チルゼパチド 注射(週1回) 肥満症(要件あり)/中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(BMI 27kg/m²以上に限る。令和8年5月に最適使用推進GL策定)
ビクトーザ皮下注 リラグルチド 注射(1日1回) 2型糖尿病
トルリシティ皮下注 デュラグルチド 注射(週1回) 2型糖尿病

出典: 各製品の添付文書、PMDA「GLP-1受容体作動薬及びGIP/GLP-1受容体作動薬の適正使用に関するお知らせ」(PMDA該当ページ)。PMDAは「現時点で日本においてGLP-1受容体作動薬及びGIP/GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病等を効能・効果として承認されており、それ以外の目的で使用された場合の安全性・有効性は確認されていない」旨を継続して注意喚起している。承認適応・用法用量は改訂されうるため、調剤時は最新の添付文書で確認すること。

【2026年5〜6月の適応追加に注意】 ゼップバウンド皮下注は令和8年5月に中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(BMI 27kg/m²以上に限る)、ウゴービ皮下注は令和8年6月に肝硬変を伴わない代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)(中等度又は高度の線維化を有する場合に限る)の効能が加わり、いずれも専用の最適使用推進ガイドラインが策定された(後述)。「GLP-1=糖尿病薬か肥満症薬」という従来の二分は、もはや正確ではない。 肥満症以外の傷病名で処方箋が来た場合に「適応外では」と早合点しないこと。適応は随時更新されるため、調剤時は最新の添付文書で確認すること。

ポイント:「セマグルチド=ダイエット薬」ではない

「セマグルチド」という成分名だけで適応を判断するのは危険である。オゼンピック・リベルサスは2型糖尿病薬であり、肥満症の適応を持つのはウゴービである。同様に、チルゼパチドでもマンジャロは2型糖尿病薬、ゼップバウンドは肥満症薬と分かれる。処方箋の「販売名」を正確に確認し、適応・用法用量に整合しているかを鑑査することが、薬局の第一の役割である。


適応外使用とは|薬局が知るべき「いわゆるGLP-1ダイエット」の論点

「GLP-1ダイエット」とは、2型糖尿病治療薬等として承認されたGLP-1受容体作動薬を、承認された効能・効果の範囲外(美容・痩身・ダイエット目的)で使用する適応外使用を指す通称である。これは医学的に確立した治療概念ではなく、薬局実務では以下の論点を理解しておく必要がある。

関係機関の見解(一次情報)

  • PMDA・製造販売各社: GLP-1受容体作動薬・GIP/GLP-1受容体作動薬は2型糖尿病等を効能・効果として承認されており、それ以外の目的での安全性・有効性は確認されていないとして、適正使用を継続的に呼びかけている(PMDA 関係学会等からの適正使用に関するお知らせ)。
  • 日本糖尿病学会: 「GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する見解」を公表し、不適切な薬物療法による健康被害の危険を念頭に、誤解を招く広告表示を戒め、国内承認状況をふまえた適正な処方を求めている(日本糖尿病学会 見解)。
  • 日本肥満学会: GLP-1受容体作動薬は、健康障害を伴わない(肥満症と診断されない)肥満や、低体重・普通体重の人に対し、美容・痩身・ダイエット目的で用いる薬剤ではないとしている。
  • 日本医師会: 自由診療・オンライン診療による糖尿病治療薬の適応外使用の増加を問題視し、適正使用への協力を関係者に依頼している(日医on-line)。

健康被害のリスク(服薬指導で伝える要点)

GLP-1関連薬は、悪心・嘔吐・下痢などの消化器症状のほか、急性膵炎・胆嚢障害・低血糖(他剤併用時)などの重大な副作用が知られる。健康障害のない人が痩身目的で使用すれば、得られる利益が乏しい一方でこれらのリスクのみを負うことになる。薬局は、用法用量・副作用初期症状・受診の目安を丁寧に説明する役割を担う。


ウゴービ・ゼップバウンド(肥満症)の保険適用要件|最適使用推進ガイドライン

肥満症の適応を持つウゴービ皮下注(セマグルチド)ゼップバウンド皮下注(チルゼパチド)には、それぞれ厚生労働省の最適使用推進ガイドライン(最適使用推進GL)が策定されており、保険診療で使用できる施設・医師・患者が厳格に限定されている。薬局も、この枠組みを理解しておくと服薬指導や疑義の判断に役立つ。

参照すべきGLは4本ある(2026年8月時点)。効能ごとに別のGLが策定されているため、処方箋の傷病名によって参照先が変わる点に注意すること。

医薬品 効能 GLの版
ウゴービ皮下注 肥満症 令和5年11月(令和8年6月改訂
ウゴービ皮下注 肝硬変を伴わない代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH) 令和8年6月(新規策定)
ゼップバウンド皮下注 肥満症 令和7年3月(令和8年5月改訂
ゼップバウンド皮下注 中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群 令和8年5月(新規策定)

【重要】ウゴービはもはや「糖尿病薬か肥満症薬か」の二分では捉えられない。 令和8年6月にMASH(肝硬変を伴わない代謝機能障害関連脂肪肝炎。中等度又は高度の線維化を有する場合に限る)の効能が加わり、専用の最適使用推進GLが策定された。同様にゼップバウンドにも令和8年5月に中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(BMI 27kg/m²以上に限る)が加わっている。肥満症以外の傷病名で処方箋が来た場合に「適応外では」と早合点しないこと。

患者要件(BMI・健康障害)

肥満症の最適使用推進GLは、投与対象を以下のすべてを満たす患者と定めている。ウゴービ・ゼップバウンドで内容は同一である。

① 診断とBMI

最新の診療ガイドラインの診断基準に基づき、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれか1つ以上の診断がなされ、かつ次のいずれかを満たすこと。

内容
いずれか BMI 27kg/m² 以上かつ、肥満に関連する健康障害を2つ以上有する
いずれか BMI 35kg/m² 以上

肥満に関連する健康障害は、GLが次の11項目を列挙している。(1)耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)(2)脂質異常症(3)高血圧(4)高尿酸血症・痛風(5)冠動脈疾患(6)脳梗塞(7)非アルコール性脂肪性肝疾患(8)月経異常・不妊(9)閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群(10)運動器疾患(11)肥満関連腎臓病

② 前治療(食事療法・運動療法)

本剤を投与する施設において、食事療法・運動療法の治療計画に基づく治療を6か月以上実施しても十分な効果が得られないこと。かつ、この間に2か月に1回以上の頻度で管理栄養士による栄養指導を受けていること。他施設での治療歴では要件を満たさない。

③ 合併症への薬物療法

見落とされやすい要件がこれである。本剤で治療を始める前に、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれか1つ以上に対して適切に薬物療法が行われている必要がある。生活習慣の指導のみで薬物療法が行われていない患者は対象にならない。

【実務ポイント】薬局は患者のBMI・健康障害を処方箋から確認できない。 処方箋には傷病名すら記載されないことが通常である。したがって薬局側で要件適合を判定することは制度上想定されていない。薬局に求められるのは判定ではなく、疑義がある場合の照会である(薬剤師法第24条)。照会すべき典型は、①施設要件を満たすとは考えにくい医療機関(美容クリニック等)からの処方、②自由診療と保険診療の別が不明な処方、③糖尿病の既往が確認できない患者への肥満症薬の長期処方、である。照会時は「BMI・健康障害2つ以上・前治療6か月・合併症への薬物療法の4点を確認したい」と論点を絞ると、処方医との齟齬が起きにくい。

投与期間の上限——薬局実務に直結する

最適使用推進GLは投与期間の上限を定めている。これは調剤の継続可否に直結するため、薬局が把握しておくべき数少ない「日数で判定できる」要件である。

医薬品 投与期間の上限 中止の判断
ウゴービ皮下注(肥満症) 最大68週間 投与開始後、3〜4か月投与しても改善傾向が認められない場合は中止
ゼップバウンド皮下注(肥満症) 最大72週間 同上

上限が異なるのは、それぞれの日本人対象臨床試験の評価期間(68週・72週)に基づくためである。GLは「上限までに中止できるよう適切な指導が必要」としており、投与開始時点で治療計画に中止時期が織り込まれていることが前提になっている。開始から1年半近く継続している患者の処方箋を応需する際は、投与期間を確認する価値がある。

なお投与中も、2か月に1回以上の管理栄養士による栄養指導の継続が求められる。

施設・医師要件

肥満症の最適使用推進GLは、①施設・②院内の医薬品情報管理体制・③副作用への対応体制のすべてを満たす施設で使用すべきとしている。ウゴービ・ゼップバウンドでほぼ同一の内容である。

① 施設について

  • 内科・循環器内科・内分泌内科・代謝内科・糖尿病内科のいずれかを標榜している保険医療機関であること
  • 下記<医師要件>に掲げる各学会専門医のいずれかを有する常勤医師が1人以上所属し、本剤による治療に携われる体制が整っていること。自施設に所属していない専門医がいる場合は、当該専門医が所属する施設と適切に連携がとれる体制を有すること
  • 下記<医師要件>に掲げる各学会のいずれかにより教育研修施設として認定された施設であること
  • 常勤の管理栄養士による適切な栄養指導を行うことができる体制が整っている施設であること(実施した栄養指導は診療録等に記録)

<医師要件>(治療の責任者について、次の両方を満たす)

  • 医師免許取得後2年の初期研修を修了した後に、高血圧・脂質異常症又は2型糖尿病並びに肥満症の診療に5年以上の臨床経験を有すること。または医師免許取得後満7年以上の臨床経験を有し、そのうち5年以上は同分野の臨床研修を行っていること
  • 日本内分泌学会・日本糖尿病学会・日本循環器学会のいずれかの専門医を有すること(日本肥満学会の専門医を有していることが望ましい)。なお、ゼップバウンドのGLでは、日本内分泌学会・日本糖尿病学会の専門医に両学会が認定する「内分泌代謝・糖尿病内科専門医」も含まれる旨が注記されている

② 院内の医薬品情報管理の体制 — 製薬企業等からの有効性・安全性等の情報管理、有害事象発生時の対応・報告業務を速やかに行える体制

③ 副作用への対応 — RMPの安全性検討事項・使用上の注意に記載された副作用に対し、当該施設又は近隣医療機関の専門性を有する医師と連携し、直ちに適切な処置ができる体制

【重要】「教育研修施設として認定」「常勤の管理栄養士」の2つが実質的なハードルである。 標榜科と常勤専門医だけを見て要件を満たすと判断してはならない。学会の教育研修施設認定は一般的な無床クリニックでは取得が難しく、常勤管理栄養士の配置も同様である。美容・痩身を掲げるクリニックからのウゴービ・ゼップバウンドの保険処方箋は、要件を満たしていない可能性を疑うべき類型といえる。

ただし、薬局が医療機関の要件適合性を最終判定する立場にはない点も押さえておきたい。厚生労働省は最適使用推進GLの対象施設リストを一般公開していないため、薬局側で名簿照合する手段は存在しない。実務的には、疑義がある場合に処方医へ照会し、それでも解消しない場合は所轄の地方厚生局・都道府県薬務主管課、または所属薬剤師会に相談する経路になる。

【実務ポイント】 薬局がウゴービ・ゼップバウンドの院外処方箋を応需する場面は、上記の施設要件を満たす医療機関からのものが中心となる。肥満症の最新点数・診療報酬上の扱いは2026年調剤報酬改定のまとめ記事で整理した対人業務評価とあわせて理解しておくと、服薬指導の位置づけが明確になる。ゼップバウンド等の新薬は、新医薬品としての投薬日数制限(原則1回14日分、発売から所定期間)が設けられる場合があるため、調剤時は告示・添付文書で投薬日数の上限を確認すること。


供給状況と在庫管理|「糖尿病患者への安定供給」を最優先に

GLP-1関連薬は、適応外使用を含む需要急増により、過去に複数の製剤で限定出荷が生じた経緯がある。供給状況は流動的なため、薬局は最新情報を常時確認する必要がある。

これまでの経緯(一次情報)

厚生労働省は、供給逼迫を受けて医療機関・薬局・卸に対し、買い込みを控え当面の必要量に見合う量のみを購入すること、卸に対しては承認の範囲(2型糖尿病治療)での使用かを確認し、承認外目的が明らかな場合は納入しないことなどを依頼する事務連絡を発出してきた(令和5年7月・11月等)(これらは供給逼迫期=令和5年当時の要請であり、現在の出荷状況は下記参照)。日本医師会のアンケートでも、院外処方で処方困難となった事例が多数報告されている。

2026年時点の状況(時点明示・要確認)

2025年9月時点の厚生労働省資料では、リベルサス・オゼンピック・ウゴービ・マンジャロ・ゼップバウンド等の主要品目はいずれも「通常出荷」に回復していることが確認されている。ただし、各製造販売元・関係学会の公表によれば、限定出荷を経て多くの品目が通常出荷へ回復している一方、規格・時期によっては限定出荷や一時的な供給停止が生じうる(例:特定規格の品質確保措置に伴う一時停止など)。個別規格のリアルタイムな出荷状況は、各製造販売元の公式発表および医薬品供給情報データベース等で必ず確認すること(2026年8月時点。状況は変動する)。


適応外処方・自由診療の処方箋への対応|疑義照会の実務

薬局に、明らかに痩身目的とみられる用法や、自由診療由来とみられるGLP-1の処方箋が持ち込まれることがある。ここでの対応の法的根拠と実務を整理する。

疑義照会は薬剤師の法的義務

薬剤師法第24条は、薬剤師が調剤にあたって処方箋に疑わしい点があるときは、処方した医師等に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ調剤してはならないと定めている。さらに、疑義照会の内容・回答は、処方箋の変更の有無にかかわらず処方箋・調剤録に記載することが求められる(薬剤師法施行規則等)。

出典: 薬剤師法第24条。なお、疑義照会の簡素化プロトコルにおいても、効能・効果が異なる(適応外)使用や麻薬等は簡素化の対象外とされ、薬剤師による個別確認が必要とされている(厚生労働行政推進調査事業 院外処方箋の問い合わせ簡素化プロトコルのガイドライン)。

適応外とみられる処方への対応ステップ

  1. 承認適応・用法用量との整合を鑑査する: 販売名(オゼンピック・マンジャロ=2型糖尿病/ウゴービ・ゼップバウンド=肥満症)と用法用量が、承認範囲に整合するかを確認する
  2. 疑義があれば処方医に照会する: 用量・適応・併用薬・処方意図に疑わしい点があれば、薬剤師法第24条に基づき処方医へ疑義照会する
  3. 照会内容・回答を記録する: 内容と回答を処方箋・調剤録に記載する(義務)
  4. 患者へ適応・リスクを確認・説明する: 患者が適応・副作用・受診体制を理解しているかを確認し、必要な服薬指導を行う
  5. 判断に迷う場合は所属薬剤師会等に相談する: 自由診療由来の処方箋の応需方針は薬局ごとに判断が分かれるため、地域薬剤師会の方針も参考にする

個人輸入・偽造品への注意喚起|服薬指導での伝え方

GLP-1関連薬は世界的に需要が高く、個人輸入や偽造品による健康被害が国内外で問題となっている。薬局は、患者からの相談に対して正しい情報を提供する役割を担う。

個人輸入の主なリスク(厚生労働省の整理)

厚生労働省は、医薬品の個人輸入について、品質・安全性が国内法(医薬品医療機器等法)で確認されたものではないこと、副作用が生じた際の対応が困難であること、医薬品副作用被害救済制度の対象外となること等のリスクを示している。GLP-1関連薬もこの注意喚起の対象である。

リスク 内容
品質・安全性の不保証 国内の品質・有効性・安全性の確認を経ていない。不衛生な製造・誇大表示の可能性
偽造品 有効成分が含まれない、別物質に置き換えられている等の偽造品が世界的に流通。注射製剤は温度管理を欠くと変質・健康被害の恐れ
救済制度の対象外 個人輸入品で重い副作用が起きても、医薬品副作用被害救済制度による給付を受けられない
法的リスク 個人輸入した医薬品の譲渡・転売は法令違反となりうる

出典: 厚生労働省の医薬品の個人輸入に関する注意喚起、PMDA・各社の適正使用に関するお知らせ。注射製剤の偽造品については、WHO・各国規制当局も警告している。

服薬指導での伝え方

  • 個人輸入品・ネット購入品は品質・安全性が保証されず、副作用被害救済制度の対象外であることを明確に伝える
  • 正規の医療機関で、医師の診断のもとで処方された正規流通品を使用することの重要性を説明する
  • 自己判断での使用・中止・増量を避け、副作用の初期症状(強い腹痛・嘔吐・低血糖症状等)があれば速やかに受診するよう指導する

薬局の実務チェックリスト|GLP-1関連薬の調剤対応

GLP-1関連薬を扱う薬局・管理薬剤師が、調剤・供給・服薬指導の各場面で確認すべき項目を整理する。

調剤鑑査時

  • [ ] 販売名と承認適応(2型糖尿病/肥満症)の区別を確認したか
  • [ ] 用法用量が添付文書・承認範囲に整合しているか
  • [ ] 用量・適応・併用薬に疑義があれば処方医へ疑義照会したか(薬剤師法第24条)
  • [ ] 疑義照会の内容・回答を処方箋・調剤録に記載したか
  • [ ] 肥満症適応薬(ウゴービ・ゼップバウンド等)の新薬の投薬日数制限を確認したか

在庫・供給管理

  • [ ] 規格ごとの最新の出荷状況(通常/限定出荷)を発注前に確認したか
  • [ ] 糖尿病患者の継続処方分を優先確保しているか
  • [ ] 過剰発注(買い込み)を控えているか
  • [ ] 限定出荷時の代替薬切替を処方医と連携できる体制があるか

服薬指導

  • [ ] 用法用量・自己注射手技(注射剤)・保管方法を説明したか
  • [ ] 主な副作用(消化器症状)と重大な副作用(急性膵炎・胆嚢障害・低血糖等)の初期症状・受診の目安を説明したか
  • [ ] 個人輸入・偽造品のリスク(品質不保証・救済制度対象外)を伝えたか
  • [ ] 自己判断での増量・中止を避けるよう指導したか

よくある誤解と落とし穴

GLP-1関連薬をめぐる薬局実務では、適応や供給の理解に誤りが起きやすい。代表的なものを整理する。

誤解 正しい理解
セマグルチドはすべて「痩せ薬」 オゼンピック・リベルサスは2型糖尿病薬。肥満症適応はウゴービ
チルゼパチドはすべて肥満症薬 マンジャロは2型糖尿病薬、ゼップバウンドが肥満症薬
適応外処方は一律に違法 医師の裁量による適応外処方が直ちに違法とは限らない。薬局は疑義があれば照会し記録する
痩身目的の処方箋は無条件で応需拒否すべき 薬剤師法は「疑義照会」を定める。応需方針は薬局ごとに判断。一方的拒否ではなく確認が原則
供給不安時は多めに発注して確保 買い込みは地域の糖尿病患者への供給を圧迫。必要量のみ発注
個人輸入でも副作用救済が受けられる 個人輸入品は医薬品副作用被害救済制度の対象外

FAQ|薬局のGLP-1対応に関するよくある質問

A

オゼンピック・マンジャロは、日本では2型糖尿病を効能・効果として承認された薬剤です(肥満症の適応はありません)。痩身・美容目的での使用は適応外使用にあたり、PMDA・厚生労働省・日本糖尿病学会・日本医師会がいずれも適正使用を呼びかけています。調剤にあたっては、販売名と承認適応・用法用量の整合を鑑査し、疑わしい点があれば薬剤師法第24条に基づき処方医へ疑義照会してください。

A

肥満症の適応を持つのはウゴービ皮下注(セマグルチド)ゼップバウンド皮下注(チルゼパチド)です(2026年8月時点)。両剤とも厚生労働省の最適使用推進ガイドラインがあり、BMI(35以上、または27以上で健康障害2つ以上)・前治療(本剤を投与する施設で食事運動療法6か月以上+2か月に1回以上の管理栄養士による栄養指導)・合併症への薬物療法が既に行われていること・施設要件・医師要件などを満たす医療機関でのみ保険処方されます。投与期間の上限はウゴービ68週間・ゼップバウンド72週間です。

なお、この2剤は肥満症以外の適応も持ちます。ウゴービは肝硬変を伴わない代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)、ゼップバウンドは中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群で、それぞれ別のガイドラインが適用されます。傷病名によって参照すべきガイドラインが変わる点に注意してください。

A

「適応外=一律拒否」ではありません。薬剤師法第24条は、処方箋に疑わしい点があるときは処方医に問い合わせて確認した後でなければ調剤してはならないと定めています。用量・適応・処方意図に疑義があれば疑義照会し、その内容・回答を処方箋・調剤録に記録してください。応需方針は薬局として統一し、判断に迷う場合は所属の薬剤師会にも相談するのが実務的です。

A

買い込みは控えてください。厚生労働省は供給逼迫時に、医療機関・薬局・卸に対し当面の必要量に見合う量のみの購入を依頼しています。過剰発注は地域全体の糖尿病患者への供給を圧迫します。規格ごとの出荷状況を発注前に確認し、糖尿病患者の継続処方分を優先確保したうえで、限定出荷時は代替薬への切替を処方医と連携してください。

A

個人輸入・ネット購入品は、国内法(医薬品医療機器等法)による品質・有効性・安全性の確認を経ておらず、偽造品のリスクや、副作用が起きても医薬品副作用被害救済制度の対象外となるリスクがあることを説明してください。注射製剤は温度管理を欠くと変質・健康被害の恐れがあります。国内承認・正規流通・医師の管理下での使用という適正使用の原則を一貫して伝え、自己判断での入手を助長しないトーンで対応します。

A

用法用量・自己注射手技(注射剤)・保管方法に加え、消化器症状(悪心・嘔吐・下痢)や、急性膵炎・胆嚢障害・低血糖(他剤併用時)などの重大な副作用の初期症状・受診の目安を説明します。自己判断での増量・中止を避けるよう指導し、継続使用と副作用モニタリングのため、かかりつけ薬剤師による継続フォローにつなげることが望ましいです。


まとめ

薬局がGLP-1受容体作動薬を扱ううえでの要点を整理する。

  • GLP-1関連薬は原則2型糖尿病の承認薬。肥満症適応はウゴービ・ゼップバウンドに限られる(2026年8月時点)。同一成分でも販売名で適応が分かれ、さらに同一販売名でも効能ごとに別の最適使用推進ガイドラインが適用される点に注意(ウゴービ=肥満症/MASH、ゼップバウンド=肥満症/閉塞性睡眠時無呼吸症候群)
  • 肥満症の投与期間には上限がある(ウゴービ68週間・ゼップバウンド72週間)。長期継続中の患者の処方箋は投与期間を確認する
  • ウゴービ(肥満症)は最適使用推進ガイドラインでBMI・前治療・施設要件・医師要件が厳格に限定されている
  • 痩身・美容目的の適応外使用は、PMDA・厚生労働省・各学会・日本医師会が適正使用を呼びかけ。薬局は疑義があれば薬剤師法第24条に基づき疑義照会し、記録する
  • 供給は流動的。買い込みを控え、糖尿病患者への安定供給を優先。規格ごとの出荷状況を発注前に確認する
  • 個人輸入・偽造品は品質不保証・救済制度対象外。服薬指導で正規流通・医師管理下での使用を一貫して伝える
  • 承認範囲・供給状況・保険適用要件の最終確認は各製造販売元・厚生労働省・PMDAの最新情報で行う

制度全体の見取り図は2026年調剤報酬改定のまとめ記事で、医薬品の適正な流通を支える規制は薬機法改正2026の解説で確認してほしい。


免責事項

本記事は2026年8月15日時点で公表されている情報に基づいて作成しています。GLP-1受容体作動薬・GIP/GLP-1受容体作動薬の承認適応・用法用量・最適使用推進ガイドラインの要件(BMI・前治療・施設要件・医師要件)・供給状況・投薬日数制限・保険適用上の取扱いは、厚生労働省・PMDA・各製造販売元の通知や添付文書改訂により変更される場合があります。特に承認適応・供給状況(通常出荷/限定出荷)・肥満症薬の保険適用要件については、各製品の最新の添付文書、PMDA・厚生労働省の公表情報、各製造販売元の供給情報で必ずご確認ください。本記事は薬局実務者向けの一般的な情報提供を目的としており、特定の薬剤の使用・適応外処方の可否・個別の治療上の判断を推奨・否定するものではありません。医薬品の使用は医師の診断に基づき、適正使用の原則に従ってください。本記事の内容に基づく判断・行動によって生じたいかなる損害についても、筆者は責任を負いかねます。


参考資料・一次情報

本記事の作成にあたり、以下の公的資料・関係機関の情報を参照しています。最新の情報は各機関の公式サイトでご確認ください。

  • PMDA「GLP-1受容体作動薬及びGIP/GLP-1受容体作動薬の適正使用に関するお知らせ」「関係学会等からの医薬品の適正使用に関するお知らせ」(PMDA該当ページ
  • 厚生労働省・PMDA「最適使用推進ガイドライン セマグルチド(遺伝子組換え)(販売名:ウゴービ皮下注)〜肥満症〜」令和5年11月(令和8年6月改訂)(PMDA該当PDF
  • 厚生労働省・PMDA「最適使用推進ガイドライン セマグルチド(遺伝子組換え)(販売名:ウゴービ皮下注)〜代謝機能障害関連脂肪肝炎〜」令和8年6月(PMDA該当PDF
  • 厚生労働省・PMDA「最適使用推進ガイドライン チルゼパチド(販売名:ゼップバウンド皮下注)〜肥満症〜」令和7年3月(令和8年5月改訂)(PMDA該当PDF
  • 厚生労働省・PMDA「最適使用推進ガイドライン チルゼパチド(販売名:ゼップバウンド皮下注)〜閉塞性睡眠時無呼吸症候群〜」令和8年5月(PMDA該当PDF
  • 厚生労働省「医薬品・医療機器等安全性情報 No.406」(GLP-1受容体作動薬等の適正使用について/2023年12月)(厚生労働省PDF
  • 日本糖尿病学会「GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する見解」(日本糖尿病学会PDF
  • 日本医師会「自由診療におけるオンライン診療の不適切事例について(医薬品の適応外使用)」(日医on-line
  • 厚生労働行政推進調査事業「院外処方箋の問い合わせ簡素化プロトコル業務のガイドライン」(mhlw-grants PDF
  • 薬剤師法第24条(疑義照会の義務)
  • 各GLP-1関連薬(オゼンピック・リベルサス・ウゴービ・マンジャロ・ゼップバウンド・ビクトーザ・トルリシティ等)の添付文書
JG

実務ガイド編集部

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本記事はAIが初稿を作成し、編集部が法令原文・官公庁通知・審議会資料等の一次情報と照合のうえ、内容を確認・編集しています。行政手続き・法改正・制度改正の実務情報を専門に扱う編集チームが、企業実務担当者・士業専門家向けに正確性の高いコンテンツを提供します。