電子的診療情報連携体制整備加算の新設|医療DX推進体制整備加算からの移行と要件一覧

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電子的診療情報連携体制整備加算の新設|医療DX推進体制整備加算からの移行と要件一覧

最終更新日: 2026年8月15日

本記事では、令和8年度診療報酬改定で新設された「電子的診療情報連携体制整備加算」について、廃止された医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算からの移行内容、初診加算1~3の点数・要件比較、マイナ保険証関連の要件、サイバーセキュリティ対策の統合、経過措置までを解説する。同加算は2026年6月1日に施行済みである。

令和8年度診療報酬改定シリーズ
改定の全体像と施設基準の基礎
急性期病院一般入院料の新設と再編
医療DX・電子的診療情報連携体制(本記事)


電子的診療情報連携体制整備加算の新設(医療DX関連の再編)

廃止された加算と新設された加算

令和8年度改定では、医療DX推進体制整備加算医療情報取得加算が廃止され、診療録管理体制加算のサイバーセキュリティ対策に関する要件を統合した上で、新たに電子的診療情報連携体制整備加算が設けられた(2026年6月1日施行)。この再編は、改定率+3.09%・基本方針の第3の柱「安心・安全で質の高い医療の推進」の具体策であり、改定の全体像については「令和8年度診療報酬改定の全体像と施設基準の基礎」で解説している。

項目 廃止された加算 新設された加算
名称 医療DX推進体制整備加算、医療情報取得加算 電子的診療情報連携体制整備加算
趣旨 オンライン資格確認等の体制評価 医療DX推進+サイバーセキュリティ対策の一体的評価

電子的診療情報連携体制整備加算の点数と区分

初診料に対する加算(月1回)

区分 点数 施設基準(保医発0305第7号 第1の8)
加算1 15点 (1)〜(11)の全て(共通要件+電子処方箋+電子カルテ+情報共有サービス活用)
加算2 9点 (1)〜(8)の全て かつ (9)〜(11)のいずれか
加算3 4点 (1)〜(8)の全て(共通要件のみ。電子処方箋・電子カルテ要件は不要)

再診料・外来診療料に対する加算(月1回)

区分 点数
統一 2点

入院に対する加算(入院初日)

区分 点数 施設基準(保医発0305第7号 第4の5)
加算1 160点 (1)〜(13)の全て。加算2の要件に加え、(12)バックアップの複数方式確保・一部オフライン保管(数世代・少なくとも3世代)と(13)BCPの策定および年1回以上の訓練・演習が必要
加算2 80点 (1)〜(11)の全て。共通要件(1)〜(8)+(9)安全管理ガイドライン準拠+(10)専任の医療情報システム安全管理責任者の配置と年1回以上の職員研修+(11)同責任者の資格(望ましい)

共通の施設基準要件

加算1〜3のいずれを算定する場合も、施設基準(1)〜(8)の全てを満たす必要がある。以下は保医発0305第7号 第1の8 の記載に沿った整理である。

番号 要件区分 具体的要件
(1) レセプトオンライン請求 電子情報処理組織を使用した診療報酬請求を行っていること
(2) 明細書の無償交付 算定した診療報酬の区分・項目の名称と点数(金額)を記載した詳細な明細書を、患者に無償で交付していること
(3) オンライン資格確認 オンライン資格確認を行う体制を有すること。導入に際しては医療機関等向けポータルサイトで運用開始日の登録を行うこと
(4) マイナ保険証利用率30%以上 算定月の3月前のレセプト件数ベースマイナ保険証利用率が30%以上であること(支払基金から報告される値)
(5) (4)の代替措置 (4)の値に代えて、その前月または前々月のレセプト件数ベース利用率を用いることができる
(6) 健康相談体制 マイナポータルの医療情報等に基づき、患者からの健康管理に係る相談に応じる体制を有すること
(7) 院内掲示 ア 診察室等でオンライン資格確認等システムにより取得した診療情報等を活用して診療していること/イ マイナ保険証を促進する等、医療DXを通じて質の高い医療を提供できるよう取り組んでいること/ウ 明細書を無料交付していること——を見やすい場所に掲示
(8) ウェブサイト掲載 (7)の掲示事項を、原則としてウェブサイトに掲載していること。自ら管理するホームページ等を有しない場合はこの限りでない

加算1・2で問われる(9)〜(11)は次のとおりである。

番号 要件
(9) 電子処方箋を発行する体制、または調剤情報を電子処方箋管理サービスに登録する体制
(10) ア 安全管理ガイドライン準拠/イ 電子処方箋管理サービスとの接続インターフェース/ウ 電子カルテ情報共有サービス(CLINS)との接続インターフェース——の全て、または エ 厚生労働省が認証する電子カルテ製品であること
(11) ア 国等が提供するCLINSにより取得される診療情報等を活用する体制、または イ 一定規模の地域連携ネットワーク(参加医療機関10以上・うち情報開示病院2以上、登録患者1,000人以上または新規年間100人以上 等)の活用体制、または ウ 検査・画像情報提供加算等の届出+院内掲示
⚠️ (4)は「3月前」の実績で判定される

マイナ保険証利用率の要件は「今の利用率」ではなく、算定する月の3月前のレセプト件数ベース利用率(支払基金から報告される値)で判定される。ただし(5)により、その前月または前々月の値に代えることもできる。つまり直近3か月のうち最も高い月を選べる設計である。今から利用率を上げても、算定に反映されるのは数か月先になる点を織り込んで届出時期を決めること。

なお、(4)および(6)については、基準を満たしていればよく、地方厚生(支)局長への届出は不要である(同通知 第1の8の4(3))。


マイナ保険証関連の要件

電子的診療情報連携体制整備加算の全区分で共通して、オンライン資格確認体制の構築が必須要件となっている。これはマイナ保険証(マイナンバーカードの健康保険証利用)によるオンライン資格確認の仕組みを基盤としている。

具体的には、以下の体制が求められる。

番号 要件 内容
(3) オンライン資格確認体制 顔認証付きカードリーダー等の設置・運用。医療機関等向けポータルサイトでの運用開始日の登録まで求められる
(4) マイナ保険証利用率30%以上 加算1〜3の全区分に共通する必須要件。算定月の3月前のレセプト件数ベース利用率で判定。実績値であり「取組み」では代替できない
(5) (4)の代替措置 3月前の値に代えて、その前月または前々月の値を用いることができる
(6) 健康相談体制 マイナポータルの医療情報等に基づき、患者からの健康管理に係る相談に応じる体制
(7) 院内掲示 診察室等で取得した診療情報等を活用して診療していること、マイナ保険証を促進していること、明細書を無料交付していること
(8) ウェブサイト掲載 (7)の掲示事項をウェブサイトにも掲載(自らHPを有しない場合を除く)
⚠️ 最大の関門は「マイナ保険証利用率30%以上」

令和8年3月5日公布の告示・通知で、「(4) 電子的診療情報連携体制整備加算を算定する月の3月前のレセプト件数ベースマイナ保険証利用率が、30%以上であること」が施設基準に置かれた。これは加算1〜3の全区分に共通する必須要件であり、最も低い加算3(4点)であってもこれを満たさなければ算定できない。今回の改定で評価の軸が体制の「整備」から利用の「実績」へ移った、最も大きな変更点である。電子カルテや電子処方箋への投資を検討する前に、まず自院の直近のマイナ保険証利用率が30%に達しているかを確認すること。要件を満たさないまま届出・算定した場合は返還請求の対象となる。


経過措置

令和6年度改定の経過措置(現状)

以下は令和6年度改定に伴う主要な経過措置の状況である。いずれも期限が到来しており、現時点での届出・算定は令和8年度改定後の基準を全て満たす必要がある。なお、医療DX推進体制整備加算そのものが令和8年度改定で廃止され、電子的診療情報連携体制整備加算に統合再編されている。

対象項目 期限 現状
医療DX推進体制整備加算(電子処方箋) 令和7年3月31日 終了
医療DX推進体制整備加算(電子カルテ情報共有) 令和8年5月31日 終了

令和8年度改定の経過措置

本加算の経過措置は、保医発0305第7号 第1の8の4(2) に定める1件のみである。

対象要件 経過措置の内容 期限
(10)のウ:電子カルテ情報共有サービス(CLINS)との接続インターフェースの保有 「当面の間に限り、当該基準を満たしているものとみなす」 具体的な終了期日の定めなし

通知は続けて「ただし、保険医療機関は、国等が全国で電子カルテ情報共有サービスの運用を開始した場合には、速やかに導入するように努めること」と定めている。

⚠️ 「2027年5月末まで猶予」は本加算の経過措置ではない

令和9年5月31日という期日は令和8年度改定の多くの項目で経過措置の期限として用いられているが、電子的診療情報連携体制整備加算については、保医発0305第7号に当該期日の定めがない。本加算で猶予されているのは(10)のウ(CLINS接続インターフェース)のみで、その期限は「当面の間」である。ウェブサイト掲載(8)を含むそれ以外の要件は、2026年6月1日の施行時点から満たしている必要がある。「2027年5月末まで全部待てる」という理解で届け出れば、要件不適合のまま算定することになり返還請求の対象となる。なお「当面の間」は無期限の猶予ではなく、全国運用開始後は速やかな導入が努力義務とされている点にも注意すること。

令和8年度改定の告示・通知は2026年3月5日に公布済みである(令和8年厚生労働省告示第69号〜第71号、保医発0305第6号〜第8号)。経過措置の詳細および疑義解釈は訂正版・追加版が随時発出されているため、厚生労働省サイトで最新版を確認すること。


収入シミュレーションと導入判断

加算区分ごとの年間収入試算(1日平均初診患者20人の診療所の場合):

加算区分 初診時点数 年間初診加算収入(概算) 必要な体制
加算1 15点 約75万円 電子処方箋+電子カルテ情報共有サービス
加算2 9点 約45万円 電子処方箋または電子カルテ情報共有のいずれか
加算3 4点 約20万円 オンライン資格確認のみ

※ 再診加算(2点/月)による収入は別途加算される。


よくある質問(FAQ)

A

医療DX推進体制整備加算は廃止され、「電子的診療情報連携体制整備加算」に再編されました。現在の届出は自動的に移行されません。加算の区分(加算1〜3)を選択した上で改めて届出を行う必要があります。改定時の届出締切(2026年6月1日必着)は終了していますが、届出は通年で受け付けられており、各月の末日までに受理されれば翌月1日から算定できます(令和8年3月5日 保医発0305第7号 第2の7)。区分の選び方は、まず施設基準(1)〜(8)(特にマイナ保険証利用率30%以上)を満たせるか確認し、そのうえで電子処方箋・電子カルテ・情報共有サービスの充足状況に応じて加算3→2→1と段階的に上げていくのが実務的です。

A

取得できます。電子処方箋もCLINSも未導入でも、オンライン資格確認体制(顔認証付きカードリーダー等の設置・運用)を整備していれば加算3(4点)の届出が可能です。電子処方箋またはCLINSのいずれか一方があれば加算2(9点)、両方あれば加算1(15点)となります。段階的なステップアップが可能な設計です。

A

あります。 施設基準(4)に「マイナ保険証利用率が、30%以上であること」が定められており、これは加算1〜3の全区分に共通する必須要件です。加算3(4点)だけを算定する場合も例外ではありません。「利用促進の取組みを行っていればよい」というものではなく、実績値としての利用率が問われます。自院の利用率はオンライン資格確認等システムの実績で確認できます。30%に満たない場合は、まず受付での声かけ・院内掲示・患者向け案内等で利用率そのものを引き上げる必要があります。

A

外来の加算と同様に、電子処方箋・CLINSの導入状況とサイバーセキュリティ対策の水準によって区分されます。加算1(160点)はサイバーセキュリティ対策を含む高度な体制が要件となっており、医療情報システム安全管理責任者の設置やインシデント報告体制の整備が必要です。詳細な要件は2026年3月5日公布の告示・通知(令和8年厚生労働省告示第70号、保医発0305第7号)で確定していますので、これらを確認の上で届出区分を選択してください。

A

猶予されているのは施設基準(10)のウ(CLINSとの接続インターフェースの保有)だけです。保医発0305第7号 第1の8の4(2) は「当面の間に限り、当該基準を満たしているものとみなす」と定めており、終了期日は示されていません。ただし同項は続けて「国等が全国で電子カルテ情報共有サービスの運用を開始した場合には、速やかに導入するように努めること」としています。

注意すべきは猶予されていない要件のほうです。(10)のアとイ(安全管理ガイドライン準拠・電子処方箋管理サービスとの接続インターフェース)、および(11)(CLINSで取得した診療情報等を活用する体制、または地域連携ネットワークの活用体制)には経過措置がありません。(10)のウが猶予されていることをもって「電子カルテ関連はまだ全部待てる」と読むのは誤りです。加算1を算定するには(11)も満たす必要があります。

判断に迷う場合は管轄の地方厚生局に事前照会してください。要件不適合のまま算定すれば返還請求の対象となります。なお、経過措置に依存せずCLINS導入を進めることが結果的に最も確実です。

A

厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版」に自己チェックリストが含まれています。主なチェック項目は、(1)医療情報システム安全管理責任者の選任、(2)情報セキュリティポリシーの策定・周知、(3)インシデント発生時の対応手順の文書化、(4)定期的なバックアップの実施、などです。3省2ガイドラインへの対応実務の詳細は「医療情報・3省2ガイドライン対応実務」をご参照ください。

A

月1回算定できますが、同一月に「加算1・2・3いずれかの初診加算」を算定した患者については再診加算を重複算定できません。また、加算を算定するには施設基準の届出が前提です。届出なしに算定した場合は不正請求となります。毎月のレセプト作成時に、算定ルールの誤りがないか確認する仕組みを整備してください。


参考法令・出典一覧

法令・資料名 URL
令和8年度診療報酬改定について 厚生労働省
基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日 保医発0305第7号) — 本記事の施設基準の記載はこの通知の第1の8(外来)・第4の5(入院)による 厚生労働省(PDF)
令和8年度診療報酬改定の基本方針 厚生労働省
令和8年度診療報酬改定 中医協答申(2026年2月13日) 東京保険医協会
医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 厚生労働省

免責事項: 本記事は2026年3月5日公布の告示(令和8年厚生労働省告示第69号〜第71号)および通知(保医発0305第6号〜第8号)、ならびに厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について【全体概要版】」に基づき、一般的な情報提供を目的として作成したものである。令和8年度診療報酬改定は2026年6月1日に施行済みであるが、通知は訂正版が発出されており疑義解釈も随時追加されている。実際の届出・算定にあたっては、必ず厚生労働省の最新の告示・通知及び管轄の地方厚生局にご確認いただきたい。本記事の内容に基づく判断・行動により生じたいかなる損害についても、筆者は責任を負わない。

JG

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