最終更新日: 2026年2月
本記事では、令和8年度診療報酬改定で新設される「電子的診療情報連携体制整備加算」について、廃止される医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算からの移行内容、初診加算1~3の点数・要件比較、マイナ保険証関連の要件、サイバーセキュリティ対策の統合、経過措置までを解説する。
令和8年度診療報酬改定シリーズ
– 改定の全体像と施設基準の基礎
– 急性期病院一般入院料の新設と再編
– 医療DX・電子的診療情報連携体制(本記事)
– 届出手続き・定例報告・自主点検
電子的診療情報連携体制整備加算の新設(医療DX関連の再編)
廃止される加算と新設される加算
令和8年度改定では、医療DX推進体制整備加算と医療情報取得加算が廃止され、診療録管理体制加算のサイバーセキュリティ対策に関する要件を統合した上で、新たに電子的診療情報連携体制整備加算が設けられる。この再編は、改定率+3.09%・基本方針の第3の柱「安心・安全で質の高い医療の推進」の具体策であり、改定の全体像については「令和8年度診療報酬改定の全体像と施設基準の基礎」で解説している。
| 項目 | 廃止される加算 | 新設される加算 |
|---|---|---|
| 名称 | 医療DX推進体制整備加算、医療情報取得加算 | 電子的診療情報連携体制整備加算 |
| 趣旨 | オンライン資格確認等の体制評価 | 医療DX推進+サイバーセキュリティ対策の一体的評価 |
電子的診療情報連携体制整備加算の点数と区分
初診料に対する加算(月1回)
| 区分 | 点数 | 主な要件 |
|---|---|---|
| 加算1 | 15点 | 電子処方箋+電子カルテ情報共有サービスの両方の体制が必要 |
| 加算2 | 9点 | 電子処方箋または電子カルテ情報共有サービスのいずれか一方の体制 |
| 加算3 | 4点 | 基本的なオンライン資格確認体制のみ |
再診料・外来診療料に対する加算(月1回)
| 区分 | 点数 |
|---|---|
| 統一 | 2点 |
入院に対する加算(入院初日)
| 区分 | 点数 | 主な要件 |
|---|---|---|
| 加算1 | 160点 | サイバーセキュリティ対策を含む高度な体制 |
| 加算2 | 80点 | 基本的な体制 |
共通の施設基準要件
| 要件区分 | 具体的要件 |
|---|---|
| レセプトオンライン請求 | レセプトのオンライン請求を実施していること |
| 明細書無料発行 | 患者への明細書を無料で発行していること |
| オンライン資格確認 | オンライン資格確認体制を構築していること |
| 診療情報閲覧・活用 | 診療室で診療情報を閲覧・活用できる体制を有すること |
| サイバーセキュリティ | 「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を遵守していること(ガイドラインの詳細は「3省2ガイドライン対応実務」を参照) |
マイナ保険証関連の要件
電子的診療情報連携体制整備加算の全区分で共通して、オンライン資格確認体制の構築が必須要件となっている。これはマイナ保険証(マイナンバーカードの健康保険証利用)によるオンライン資格確認の仕組みを基盤としている。
具体的には、以下の体制が求められる。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| オンライン資格確認等システムの導入 | 顔認証付きカードリーダー等の設置、資格確認端末の運用 |
| 薬剤情報・特定健診情報等の閲覧 | マイナ保険証を通じて取得される患者の薬剤情報・特定健診情報等を診療に活用できる体制 |
| 院内掲示 | オンライン資格確認を行う体制を有していること等を院内に掲示 |
| マイナ保険証の利用実績 | 加算1・2では、マイナ保険証の利用率向上に向けた取組みを行っていること |
注: マイナ保険証の利用率そのものは施設基準の要件としては設定されていないが、利用促進の取組み(声かけ・院内ポスター掲示等)は体制整備の一環として求められる。
経過措置
令和6年度改定の経過措置(現状)
以下は令和6年度改定に伴う主要な経過措置の状況である。大半は既に期限が到来しているため、現時点での届出・算定は改定後の基準を全て満たす必要がある。
| 対象項目 | 期限 | 現状 |
|---|---|---|
| 医療DX推進体制整備加算(電子処方箋) | 令和7年3月31日 | 終了 |
| 医療DX推進体制整備加算(電子カルテ情報共有) | 令和8年5月31日 | 有効 |
令和8年度改定の経過措置(新設予定)
| 対象項目 | 経過措置の内容 | 期限 |
|---|---|---|
| 電子的診療情報連携体制整備加算(電子カルテ情報共有) | 電子カルテ情報共有サービスの活用体制要件を猶予 | 令和9年(2027年)5月31日まで |
令和8年度改定の経過措置の全容は、2026年3月下旬の告示・通知の公布後に確定する。告示後速やかに内容を精査し、該当項目がないか確認すること。
収入シミュレーションと導入判断
加算区分ごとの年間収入試算(1日平均初診患者20人の診療所の場合):
| 加算区分 | 初診時点数 | 年間初診加算収入(概算) | 必要な体制 |
|---|---|---|---|
| 加算1 | 15点 | 約75万円 | 電子処方箋+電子カルテ情報共有サービス |
| 加算2 | 9点 | 約45万円 | 電子処方箋または電子カルテ情報共有のいずれか |
| 加算3 | 4点 | 約20万円 | オンライン資格確認のみ |
※ 再診加算(2点/月)による収入は別途加算される。
よくある質問(FAQ)
医療DX推進体制整備加算は廃止され、「電子的診療情報連携体制整備加算」に再編されます。現在の届出は自動的に移行されません。2026年3月下旬の告示後、新たな加算の区分(加算1~3)を選択した上で改めて届出を行う必要があります。電子カルテ情報共有サービス(CLINS)の体制がある場合は加算1(15点)を、電子処方箋またはCLINSのいずれかがある場合は加算2(9点)を目指してください。
取得できます。電子処方箋もCLINSも未導入でも、オンライン資格確認体制(顔認証付きカードリーダー等の設置・運用)を整備していれば加算3(4点)の届出が可能です。電子処方箋またはCLINSのいずれか一方があれば加算2(9点)、両方あれば加算1(15点)となります。段階的なステップアップが可能な設計です。
加算の施設基準上、マイナ保険証の利用率そのものの数値要件は設定されていません。ただし加算1・2では「マイナ保険証の利用促進に向けた取組みを行っていること」が要件となっています。具体的には、受付での声かけ・院内ポスター掲示・患者向け案内文書の配布などが該当します。形式的な掲示だけでなく実質的な取組みが求められる点に留意してください。
外来の加算と同様に、電子処方箋・CLINSの導入状況とサイバーセキュリティ対策の水準によって区分されます。加算1(160点)はサイバーセキュリティ対策を含む高度な体制が要件となっており、医療情報システム安全管理責任者の設置やインシデント報告体制の整備が必要です。2026年3月の告示でより詳細な要件が示されますので、告示後に確認の上で届出区分を選択してください。
経過措置(2027年5月31日まで)期間中はCLINSの体制要件が猶予されます。つまり、経過措置期間中はCLINSなしでも加算1相当の区分を届け出られる可能性があります(詳細は告示で確定)。経過措置終了後の2027年6月以降はCLINS体制が必要となるため、2026年中に導入計画を策定し準備を進めることを推奨します。
厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版」に自己チェックリストが含まれています。主なチェック項目は、(1)医療情報システム安全管理責任者の選任、(2)情報セキュリティポリシーの策定・周知、(3)インシデント発生時の対応手順の文書化、(4)定期的なバックアップの実施、などです。3省2ガイドラインへの対応実務の詳細は「医療情報・3省2ガイドライン対応実務」をご参照ください。
月1回算定できますが、同一月に「加算1・2・3いずれかの初診加算」を算定した患者については再診加算を重複算定できません。また、加算を算定するには施設基準の届出が前提です。届出なしに算定した場合は不正請求となります。毎月のレセプト作成時に、算定ルールの誤りがないか確認する仕組みを整備してください。
参考法令・出典一覧
| 法令・資料名 | URL |
|---|---|
| 令和8年度診療報酬改定について | 厚生労働省 |
| 令和8年度診療報酬改定の基本方針 | 厚生労働省 |
| 令和8年度診療報酬改定 中医協答申(2026年2月13日) | 東京保険医協会 |
| 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン | 厚生労働省 |
免責事項: 本記事は2026年2月時点の法令・告示・通知および中医協答申内容に基づき、一般的な情報提供を目的として作成したものである。令和8年度改定の具体的な施設基準・算定要件は、2026年3月下旬の告示・通知の公布をもって正式に確定する。本記事に記載の改定内容は2026年2月13日の中医協答申に基づくものであり、告示段階で変更される可能性がある。実際の届出・算定にあたっては、必ず厚生労働省の最新の告示・通知及び管轄の地方厚生局にご確認いただきたい。本記事の内容に基づく判断・行動により生じたいかなる損害についても、筆者は責任を負わない。



