最終更新日: 2026年9月
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不動産を売却して利益(譲渡所得)が発生すると、所得税・住民税が課される。税率は所有期間によって大きく異なり、5年超の長期譲渡所得は20.315%、5年以下の短期譲渡所得は39.63%となる。本記事では、譲渡所得の計算式、取得費の算定方法(実額法・概算法)、減価償却費の計算、所有期間の判定ルール、そして3パターンの具体的な計算例までを体系的に解説する。
譲渡所得の基本計算式
不動産売却時の譲渡所得は、次の計算式で算出します。
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除額
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 売却価格 | 不動産の売却代金(固定資産税精算金を含む) |
| 取得費 | 購入代金+購入時の諸費用 − 建物の減価償却費 |
| 譲渡費用 | 売却時の仲介手数料、印紙税、測量費、解体費など |
| 特別控除額 | 3,000万円特別控除など、要件を満たす場合に適用 |
根拠: 国税庁タックスアンサーNo.3202「譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」
長期譲渡所得と短期譲渡所得の税率
不動産の譲渡所得は、所有期間に応じて「長期」と「短期」に区分され、それぞれ異なる税率が適用されます。
| 区分 | 所有期間 | 所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | 合計税率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 5% | 0.315% | 20.315% |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
復興特別所得税は基準所得税額の2.1%が上乗せされるもので、令和29年(2047年)12月31日までの所得に適用されます(復興財確法第9条。令和8年法律第12号により、従来の2037年から10年延長されました)。なお2027年1月1日以後は、復興特別所得税の税率が2.1%から1.1%へ下がる一方で防衛特別所得税1.0%が新設されるため、上乗せ率の合計は2.1%のまま変わりません。上表の税率(長期20.315%・短期39.63%)も2027年以降そのまま使えます。詳しくは防衛特別所得税の源泉徴収2027で整理しています。
根拠: 国税庁タックスアンサーNo.3208「長期譲渡所得の税額の計算」、No.3211「短期譲渡所得の税額の計算」
所有期間の判定ルール|「1月1日基準」に注意
所有期間の判定には、一般的な感覚とは異なる独自のルールがあります。
判定基準
所有期間は、売却した年の1月1日時点で何年経過しているかで判定します。実際の売却日ではありません。
| 取得日 | 売却日 | 1月1日時点の所有期間 | 区分 |
|---|---|---|---|
| 2020年4月1日 | 2026年5月1日 | 2026年1月1日時点で5年9ヶ月 → 5年超 | 長期 |
| 2021年3月1日 | 2026年5月1日 | 2026年1月1日時点で4年10ヶ月 → 5年以下 | 短期 |
| 2021年3月1日 | 2027年5月1日 | 2027年1月1日時点で5年10ヶ月 → 5年超 | 長期 |
起算日の決定
取得日は原則として引渡し日ですが、売買契約日を取得日とすることも認められています(契約効力発生日基準)。相続・贈与により取得した不動産は、被相続人・贈与者の取得日を引き継ぎます。
取得費の算定方法|実額法と概算法
取得費の算定には「実額法」と「概算法」の2つの方法があります。
実額法
購入時の売買契約書や領収書等に基づき、実際の購入価格に購入時の諸費用を加え、建物については減価償却費を差し引いて計算する方法です。
取得費 = 土地の購入価格 +(建物の購入価格 − 減価償却費)+ 購入時の諸費用
取得費に含められる諸費用の例:
- 購入時の仲介手数料
- 登録免許税・不動産取得税
- 売買契約書の印紙税
- 借入金の利子(使用開始前の期間分)
- 造成費用・測量費
概算法(5%ルール)
購入時の売買契約書がない、購入価格が不明といった場合に、売却価格の5%を取得費とみなす方法です。
概算取得費 = 売却価格 × 5%
根拠: 国税庁タックスアンサーNo.3258「取得費が分からないとき」
また、相続で不動産を取得した段階で相続税がかかっていた場合、その相続税相当額の一部を取得費に加算できる「相続税の取得費加算の特例」(租税特別措置法第39条)もある。相続税の課税対象となったかどうかは、相続税の基礎控除・税率・申告期限と計算ステップの全体像で自身の遺産規模と照らして確認しておくとよい。
建物の減価償却費の計算
建物は経年により価値が減少するため、取得費から減価償却費を差し引く必要があります。土地は減価償却の対象外です。
まず「賃貸に出していたか」で式が変わる
同じ建物でも、人に貸して家賃を得ていた期間と、自分で住んでいた(または空き家だった)期間とで、差し引く減価償却費の計算が別になります(所得税法第38条第2項)。ここを取り違えると取得費が数百万円ずれます。
| 自宅・別荘など(非事業用) | 賃貸に出していた(業務用) | |
|---|---|---|
| 計算式 | 取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数 | 取得価額 × 償却率 × 業務に使った月数 ÷ 12 |
| 耐用年数 | 事業用の1.5倍 | 事業用の法定耐用年数そのまま |
| 根拠 | 所得税法第38条第2項第2号 | 同項第1号(各年の必要経費に入れた償却費の累計額) |
根拠: 所得税法第38条第2項(e-Gov 340AC0000000033)。業務用で「×0.9」を使わないのは、平成19年4月1日以後に取得した建物が定額法によるためです(国税庁タックスアンサーNo.2100)。
計算式(非事業用・自宅や別荘)
減価償却費 = 建物の取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
主な構造別の償却率(非事業用・居住用)
非事業用の耐用年数は事業用の1.5倍で計算します。
| 構造 | 事業用耐用年数 | 非事業用耐用年数 | 償却率 |
|---|---|---|---|
| 木造 | 22年 | 33年 | 0.031 |
| 軽量鉄骨造(3mm超4mm以下) | 27年 | 40年 | 0.025 |
| 鉄筋コンクリート造(RC) | 47年 | 70年 | 0.015 |
経過年数の端数処理
非事業用建物の経過年数は、6ヶ月以上は1年に切り上げ、6ヶ月未満は切り捨てます。業務用(賃貸)にはこの切り上げ・切り捨てはなく、実際に貸していた月数で按分します。
根拠: 国税庁タックスアンサーNo.3261「建物の取得費の計算」
主な構造別の償却率(業務用・賃貸)
賃貸に出していた期間は、次の法定耐用年数と定額法償却率を使います。
| 構造 | 法定耐用年数(住宅用) | 定額法償却率 |
|---|---|---|
| 木造 | 22年 | 0.046 |
| 軽量鉄骨造(3mm超4mm以下) | 27年 | 0.038 |
| 鉄筋コンクリート造(RC) | 47年 | 0.022 |
根拠: 減価償却資産の耐用年数等に関する省令(e-Gov 340M50000040015)別表第一「鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造のもの/住宅用、寄宿舎用、宿泊所用、学校用又は体育館用のもの=四七年」、別表第八(平成19年4月1日以後取得分の償却率表)「四七=〇・〇二二」
【計算例】3パターンで理解する譲渡所得税
パターン1: マンション売却(長期・売却益あり)
前提条件
– 2018年5月に新築マンションを4,500万円で購入(建物2,700万円・土地1,800万円)
– 2026年6月に5,500万円で売却
– 購入時の諸費用: 180万円、売却時の仲介手数料: 171.6万円
– セカンドハウスとして自分で使っており、賃貸には出していない(全期間が非事業用)
– 構造: RC造・非事業用(耐用年数70年・償却率0.015)
– 3,000万円特別控除は適用しない(主たる住まいではないため)
STEP 1: 減価償却費の計算
賃貸に出していないので非事業用の式(×0.9・耐用年数1.5倍)を使う。
経過年数: 2018年5月→2026年6月 = 8年1ヶ月 → 8年(6ヶ月未満切り捨て)
減価償却費 = 2,700万円 × 0.9 × 0.015 × 8年 = 291.6万円
STEP 2: 取得費の計算
取得費 = 1,800万円(土地)+(2,700万円 − 291.6万円)(建物)+ 180万円(諸費用)= 4,388.4万円
STEP 3: 譲渡所得の計算
譲渡所得 = 5,500万円 −(4,388.4万円 + 171.6万円)= 940万円
STEP 4: 所有期間の判定
2026年1月1日時点で7年8ヶ月 → 長期譲渡所得
STEP 5: 税額の計算
税額 = 940万円 × 20.315% = 約191.0万円
パターン2: 戸建て売却(概算法使用・長期)
前提条件
– 1995年に父が購入した戸建てを2020年に相続、2026年に3,000万円で売却
– 購入時の売買契約書なし(取得費不明)
– 売却時の仲介手数料: 105.6万円
– 居住用のため3,000万円特別控除を適用
STEP 1: 取得費の計算(概算法)
概算取得費 = 3,000万円 × 5% = 150万円
STEP 2: 譲渡所得の計算
譲渡所得 = 3,000万円 −(150万円 + 105.6万円)− 3,000万円(特別控除)= マイナス
譲渡所得がマイナスとなるため、税額は0円。
ただし、3,000万円特別控除を適用するには確定申告が必要です。
パターン3: 短期譲渡所得のケース
前提条件
– 2022年4月に投資用マンションを2,800万円で購入(建物1,600万円・土地1,200万円)
– 購入直後から賃貸に出しており、全期間が業務用
– 2026年10月に3,500万円で売却
– 購入時の諸費用: 120万円、売却時の仲介手数料: 115.5万円
– 構造: RC造・住宅用(法定耐用年数47年・定額法償却率0.022)
STEP 1: 減価償却費の計算
賃貸物件なので業務用の式を使う。非事業用の「×0.9・耐用年数1.5倍」は使わない(所得税法第38条第2項第1号)。
業務に使った期間: 2022年4月→2026年10月 = 54ヶ月(月数で按分。切り上げ・切り捨てはしない)
減価償却費 = 1,600万円 × 0.022 × 54ヶ月 ÷ 12 = 158.4万円
STEP 2: 取得費の計算
取得費 = 1,200万円 +(1,600万円 − 158.4万円)+ 120万円 = 2,761.6万円
STEP 3: 譲渡所得の計算
譲渡所得 = 3,500万円 −(2,761.6万円 + 115.5万円)= 622.9万円
STEP 4: 所有期間の判定
2026年1月1日時点で3年9ヶ月 → 短期譲渡所得
STEP 5: 税額の計算
税額 = 622.9万円 × 39.63% = 約246.9万円
仮にこれが長期譲渡所得であった場合の税額は622.9万円 × 20.315% = 約126.5万円であり、短期であることで約120.3万円も税額が増える計算となる。
10年超所有の軽減税率の特例
マイホーム(居住用財産)を売却する場合、所有期間が10年を超えていれば、3,000万円特別控除に加えて軽減税率の特例を併用できます。
| 課税譲渡所得 | 所得税 | 住民税 | 合計税率 |
|---|---|---|---|
| 6,000万円以下の部分 | 10.21% | 4% | 14.21% |
| 6,000万円超の部分 | 15.315% | 5% | 20.315% |
根拠: 国税庁タックスアンサーNo.3305「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
確定申告の手続き
不動産を売却した年の翌年2月16日から3月15日までに確定申告を行います。譲渡所得がマイナス(譲渡損失)であっても、特別控除や損益通算の特例を利用する場合は確定申告が必要です。
必要書類
- 確定申告書(分離課税用)
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
- 売買契約書の写し(購入時・売却時)
- 仲介手数料等の領収書
- 登記事項証明書
- 特別控除を利用する場合は住民票の写し等の追加書類
実際の売却で手取り額がいくらになるか気になる方は、売れる家ナビの手取り額シミュレーターで概算を確認できます。
今すぐやること|アクションチェックリスト
- [ ] 売買契約書(購入時)を探し、取得費の証拠書類を確保する
- [ ] 建物と土地の価格区分を確認し、減価償却費を計算する
- [ ] その建物を賃貸に出していた期間があるかを確認する(あれば業務用の式。非事業用の「×0.9・耐用年数1.5倍」は使えない)
- [ ] 売却年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるか確認する(長期・短期の判定)
- [ ] 譲渡費用に算入できる項目(仲介手数料、印紙税、測量費等)を漏れなくリストアップする
- [ ] 3,000万円特別控除や10年超の軽減税率など、適用可能な特例を確認する
- [ ] 概算法(5%)しか使えない場合は、実額を推定できる資料がないか税理士に相談する
- [ ] 売却翌年の確定申告期限(3月15日)までに申告書を作成・提出する
不動産売却の実践ガイド
税金の仕組みを理解したら、次は実際の売却準備です。
- 相続した不動産を売る全手順ガイド2026|査定・登記・特例・総コストを一本で解説 — 相続不動産の売却フロー全体(税金・費用・落とし穴)を総まとめしたサブハブ記事
- 不動産売却の税金ガイド|節税のコツまで解説(売れる家ナビ) — 譲渡所得税の節税テクニックを売主目線で解説
- 不動産査定の流れと注意点(売れる家ナビ) — 査定額を正しく比較する方法
FAQ
Q: 相続した不動産の所有期間はいつから数えますか?
A: 相続や贈与により取得した不動産は、被相続人(亡くなった方)や贈与者の取得日を引き継ぎます。たとえば、父が2000年に購入した土地を2025年に相続した場合、所有期間は2000年から起算されるため、長期譲渡所得に該当します(国税庁タックスアンサーNo.3270)。
Q: 取得費がわからない場合、概算法以外に方法はありますか?
A: 概算法(5%)は最終手段です。まず、購入時の不動産会社・金融機関に契約書の写しや融資記録を問い合わせてください。通帳の振込記録、当時の固定資産税課税明細書、住宅ローンの残高証明書なども取得費を推定する材料になります。税務署や国税不服審判所の裁決例では、市街地価格指数を用いた合理的な取得費推計が認められたケースもあります。
Q: 復興特別所得税は2026年の売却にも適用されますか?
A: はい、適用されます。復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)は令和29年(2047年)12月31日までの所得に課されます(復興財確法第9条)。この期限は、令和8年法律第12号により従来の2037年から10年延長されたものです。
同じ改正により、2027年分以降は復興特別所得税が2.1%から1.1%へ引き下げられ、代わりに防衛特別所得税1.0%が課されます(復興財確法第13条の改正・防衛財確法)。ただし合計の上乗せ率は2.1%のままなので、長期20.315%・短期39.63%という譲渡所得の合計税率は2027年以降も変わりません。2026年分の売却には従来どおり復興特別所得税2.1%が適用されます。源泉徴収実務への影響は防衛特別所得税の源泉徴収2027で解説しています。
Q: 居住用財産の3,000万円特別控除を使えば確定申告は不要ですか?
A: いいえ、確定申告は必要です。3,000万円特別控除の適用を受けた結果、税額がゼロになる場合でも、確定申告書に特例の適用を記載して提出しなければなりません。申告を怠ると特例の適用が認められず、本来不要な税金が課されるおそれがあります。
Q: 土地と建物を一括で購入した場合、どう区分しますか?
A: 売買契約書に土地と建物の価格が区分されている場合はその金額を使います。区分がない場合は、購入時の固定資産税評価額の比率で按分するのが一般的な方法です。たとえば、固定資産税評価額が土地2,000万円・建物1,000万円であれば、購入価格の2/3が土地、1/3が建物となります。消費税額が記載されていれば、消費税から建物価格を逆算することも可能です(土地は非課税のため)。
Q: 売却損が出た場合、他の所得と損益通算できますか?
A: 原則として、不動産の譲渡損失は他の所得(給与所得など)と損益通算できません。ただし、マイホームの買換えで譲渡損失が生じた場合や、住宅ローン残高が売却価格を上回る場合には、一定の要件のもとで損益通算および繰越控除(最大3年間)が認められる特例があります(国税庁タックスアンサーNo.3370、No.3390)。
免責事項: 本記事は2026年9月時点の税制に基づき、国税庁タックスアンサー等の一次情報を参照して作成しています。個別の税額計算や特例の適用判断については、税理士等の専門家にご相談ください。



