管理薬剤師になる要件・年収相場2026|薬機法の資格要件と業務・キャリアを解説

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管理薬剤師になる要件・年収相場2026|薬機法の資格要件と業務・キャリアを解説
目次

最終更新日: 2026年8月21日

【結論】 薬局の「管理薬剤師」は薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)第7条〜第9条で定められた役職で、薬局を実地に管理し、法令遵守の最終的な責任を負う立場である。法律上は「必要な能力及び経験を有する者」であればよく条文上に年数の数値要件はないが、厚生労働省の局長通知(薬生発0625第13号)は実務経験5年以上・認定薬剤師であることを実務上の目安として示している(義務ではなく推奨水準)。中央社会保険医療協議会「第25回医療経済実態調査」(令和7年実施)によれば、保険薬局における管理薬剤師の平均給料年額+賞与は約725.4万円で、薬剤師(役職なし)の約479.5万円より約246万円高い(前年度・全体の数値)。厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」による職種「薬剤師」全体(管理薬剤師かどうかを区別しない業態横断の参考値)の年収換算値は約566.8万円である。

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この記事の対象読者

本記事は、薬局に勤務する薬剤師本人(20〜40代・勤務経験を積んできた方)が、次のような疑問に答えることを目的としている。

  • 「自分は管理薬剤師になれるのか。何年の経験が必要なのか」
  • 「管理薬剤師になると、業務・責任・給与はどう変わるのか」
  • 「登録販売者が店舗の管理者になる場合と、薬剤師の管理薬剤師はどう違うのか」

制度の対象者(薬局開設者・患者)向けの解説ではなく、薬剤師本人のキャリア判断に軸足を置いている点が、当サイトの他の調剤報酬・制度解説記事との違いである。


管理薬剤師とは|法律上の定義

「管理薬剤師」は法律上の正式な資格名ではなく、薬機法が薬局に設置を義務づけている「薬局の管理者」を、薬剤師が務める場合の実務上の呼び名である。根拠条文は薬機法第7条〜第9条にある。

薬局は必ず薬剤師が実地に管理する(第7条)

薬機法第7条は、薬局の管理体制を次のように定めている(e-Gov法令検索・薬機法全文、2026年8月19日確認)。

第七条 薬局開設者が薬剤師(略)であるときは、自らその薬局を実地に管理しなければならない。ただし、その薬局において薬事に関する実務に従事する他の薬剤師のうちから薬局の管理者を指定してその薬局を実地に管理させるときは、この限りでない。
2 薬局開設者が薬剤師でないときは、その薬局において薬事に関する実務に従事する薬剤師のうちから薬局の管理者を指定してその薬局を実地に管理させなければならない。
3 薬局の管理者は、次条第一項及び第二項に規定する義務並びに同条第三項に規定する厚生労働省令で定める業務を遂行し、並びに同項に規定する厚生労働省令で定める事項を遵守するために必要な能力及び経験を有する者でなければならない。
4 薬局の管理者(略)は、その薬局以外の場所で業として薬局の管理その他薬事に関する実務に従事する者であつてはならない。ただし、その薬局の所在地の都道府県知事の許可を受けたときは、この限りでない。

ポイントは3つある。

  1. 薬局の管理者は必ず薬剤師である(開設者自身が薬剤師なら自分で管理してもよいし、薬剤師でない開設者〔法人など〕は薬剤師のうちから管理者を指定しなければならない)
  2. 管理者の資格要件は「必要な能力及び経験を有する者」という抽象的な表現にとどまり、条文上「勤続◯年以上」のような数値基準は存在しない
  3. 管理薬剤師は原則として1つの薬局にしか勤務できない(第4項=掛け持ち原則禁止。都道府県知事の許可があれば例外あり)

【ポイント】 「かかりつけ薬剤師」の個人要件(保険薬剤師として3年以上の勤務経験、当該薬局に週31時間以上・6か月以上在籍など)と混同しやすいが、これは調剤報酬上の別制度(かかりつけ薬剤師の記事参照)であり、薬機法上の「管理薬剤師(薬局の管理者)」の要件とは根拠法令が異なる。管理薬剤師になるための年数要件は、薬機法そのものには明記されていない。

管理者の3つの義務(第8条)

第8条は、管理薬剤師(薬局の管理者)が負う義務を定めている。

第八条 薬局の管理者は、保健衛生上支障を生ずるおそれがないように、その薬局に勤務する薬剤師その他の従業者を監督し、その薬局の構造設備及び医薬品その他の物品を管理し、その他その薬局の業務につき、必要な注意をしなければならない。
2 薬局の管理者は、保健衛生上支障を生ずるおそれがないように、その薬局の業務につき、薬局開設者に対し、必要な意見を書面により述べなければならない。
3 薬局の管理者が行う薬局の管理に関する業務及び薬局の管理者が遵守すべき事項については、厚生労働省令で定める。

第3項の委任を受けた薬機法施行規則第11条は、管理者の具体的な業務・遵守事項をさらに定めている(e-Gov法令検索・薬機法施行規則、2026年8月19日確認)。

第十一条 法第八条第三項の薬局の管理者が行う薬局の管理に関する業務は、次のとおりとする。
一 法第九条の二第一項第一号に規定する薬局の管理者が有する権限に係る業務
二 (略)医薬品の試験検査及び(略)試験検査の結果の確認
三 (略)帳簿の記載
四 (略)記録の保存
2 法第八条第三項の薬局の管理者が遵守すべき事項は、次のとおりとする。
一 保健衛生上支障を生ずるおそれがないように、その薬局に勤務する薬剤師その他の従業者を監督し、その薬局の構造設備及び医薬品その他の物品を管理し、その薬局の業務に係るサイバーセキュリティの確保のために必要な措置を講じ、その他その薬局の業務につき、必要な注意をすること。
二 法第八条第二項の規定により薬局開設者に対して述べる意見を記載した書面の写しを三年間保存すること。

管理薬剤師の業務は「薬を渡す・服薬指導をする」という薬剤師本来の業務に加えて、人(従業者の監督)・物(構造設備・医薬品の管理)・情報(サイバーセキュリティを含む)の3方向の管理責任を負う点が、一般の勤務薬剤師との最大の違いである。


管理薬剤師になるには|必要な実務経験年数と資格

法律上は年数の定めなし(薬機法第7条3項)

前述のとおり、薬機法第7条3項が求めるのは「第8条1〜2項の義務および施行規則で定める業務を遂行し、遵守事項を守るために必要な能力及び経験を有する者」という抽象的な基準であり、具体的な勤続年数・実務経験年数は条文に明記されていない。誰を管理薬剤師に指定するかは、最終的には薬局開設者の判断に委ねられている。

実務上の目安「実務経験5年以上+認定薬剤師」(2021年厚労省ガイドライン)

条文に年数要件がないとはいえ、行政が実務上の目安を何も示していないわけではない。厚生労働省医薬・生活衛生局長通知「薬生発0625第13号」(令和3年6月25日)「薬局開設者及び医薬品の販売業者の法令遵守に関するガイドライン」は、別添ガイドライン第4-1で次のように述べている(2026年8月19日確認)。

薬局開設者においては、こうした管理者の選任義務を適切に果たすため、原則として、管理者は薬局における実務経験が少なくとも5年あり、中立的かつ公共性のある団体(公益社団法人薬剤師認定制度認証機構等)により認証を受けた制度又はそれらと同等の制度に基づいて認定された薬剤師であることが重要である。

この「実務経験5年以上+認定薬剤師」は義務ではない。 原文は「〜であることが重要である」という表現であり、「〜しなければならない」ではなく、「原則として」という留保もついている。局長通知は薬機法の条文そのものではなく行政指導文書であるため、罰則を伴う法的義務ではなく、行政が示した実務上の推奨水準という位置づけである。

とはいえ、多くの薬局チェーン・企業がこのガイドラインを参考に社内基準を組み立てているのが実情で、「何年で管理薬剤師になれるか」という問いに対して最も公的性格の強い目安といえる。求人票で見かける「実務経験◯年以上」という条件も、このガイドラインの水準を参考にしている場合がある(各社の採用基準そのものは薬機法上の要件ではない点は変わらない)。

掛け持ちは原則できない(第7条4項)

管理薬剤師は、その薬局以外の場所で業として薬局の管理その他薬事に関する実務に従事してはならない(第7条4項)。複数店舗の管理薬剤師を兼務することは原則として認められていない。例外的に、薬局の所在地の都道府県知事の許可を受けた場合に限り兼務が可能になるが、これは限定的な運用である。転職・異動で複数店舗を任されそうになった場合は、この兼務禁止原則に抵触しないか確認する必要がある。


管理薬剤師の仕事内容と責任

管理薬剤師の日常業務は、大きく分けて次の4つに整理できる(薬機法第8条・施行規則第11条に基づく)。

区分 内容
人の管理 薬局に勤務する薬剤師・登録販売者・事務員等の監督
物の管理 薬局の構造設備、医薬品その他の物品の管理、医薬品の試験検査・結果確認
記録・帳簿 薬局の管理に関する帳簿の記載、記録の保存
情報・体制 サイバーセキュリティ確保のための措置、薬局開設者への書面による意見具申(意見書の写しを3年間保存)

一般の勤務薬剤師との最大の違いは、「調剤する薬剤師」から「薬局全体の運営が法令に適合しているかを監督する立場」に責任範囲が広がる点である。開設者に対して書面で意見を述べる義務(第8条2項)は、経営判断と現場の法令遵守がぶつかったときに管理薬剤師が声を上げるための法的な仕組みであり、単なる「役職名」以上の責任を伴う。


働く場所でどう変わるか|薬局・ドラッグストア・病院・企業の違い

「管理薬剤師」という呼び名は、どの職場でも同じ意味で使われているわけではない。混同されやすい4つの働く場所を整理する。

調剤薬局|薬機法上の「管理薬剤師」そのもの

ここまで解説してきた薬機法第7条〜第9条の「薬局の管理者」を薬剤師が務める場合が、狭い意味での「管理薬剤師」である。本記事で扱う要件・義務・年収データは、基本的にこの立場を指す。

ドラッグストア(店舗販売業)|「管理薬剤師」ではなく「店舗管理者」

ドラッグストア等の店舗販売業にも管理者の設置義務があるが、根拠条文は薬局とは別の第28条・第29条であり、扱う医薬品の区分によっては薬剤師でなく登録販売者でも管理者になれる(詳細は後述「参考:関連する条文」を参照)。薬剤師が店舗販売業の管理者を務める場合を「管理薬剤師」と呼ぶことはあるが、法律上の正式な位置づけは、薬局の「管理薬剤師(薬局の管理者)」とは別条文に基づく別の役職である。

病院|薬機法の管理薬剤師には該当しない

病院に勤務する薬剤師は、薬機法上の「薬局」または「店舗販売業」に所属しているわけではないため、薬機法第7条〜第9条の「管理薬剤師(薬局の管理者)」には該当しない。病院内の薬剤部門を統括する立場は、薬機法の管理薬剤師とは根拠となる制度が異なる、院内の職制上の役職である。同じ「管理薬剤師」という言葉が使われている記事・求人でも、勤務先が病院かどうかで法的な位置づけが変わる点は見落とされやすい。

企業(卸売・製薬)|薬機法上の別の管理者制度が適用される

医薬品卸売業者・製薬会社(製造販売業者)にも、薬局とは別の管理者制度が薬機法上に置かれている。「対象外」ではなく、根拠となる条文が薬局とは違うというのが正確な整理である。

  • 医薬品卸売業: 薬機法第35条1項は「卸売販売業者は、営業所ごとに、薬剤師を置き、その営業所を管理させなければならない」と定めている(卸売販売業者自身が薬剤師で自ら管理する場合を除く)。この立場は同条2項により「医薬品営業所管理者」と呼ばれ、開設者が管理者の意見を尊重し講じた措置を記録・保存する義務(第36条・第36条の2の2)も、薬局の第9条と同様の構造で置かれている。業界内で「管理薬剤師」と呼ばれることがあるが、根拠条文は薬局の第7条〜第9条ではなく第35条・第36条である
  • 製薬会社(製造販売業): 薬機法第17条1項は、医薬品の製造販売業者に薬剤師等(医薬品等総括製造販売責任者)を置くことを義務づけている。これも薬局の管理薬剤師とは別の条文に基づく役職である

いずれも「管理薬剤師」と呼ばれる場合があるが、社内の独自呼称にすぎないわけではなく、薬局とは異なる条文(第35条・第17条等)を根拠とする別の法定の管理者制度である。


管理薬剤師の年収相場

管理薬剤師固有の統計は存在する|第25回医療経済実態調査(令和7年実施)

厚生労働省「賃金構造基本統計調査」には管理薬剤師という役職別の区分はないが、管理薬剤師そのものを対象にした公的統計は別に存在する。 中央社会保険医療協議会「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」(令和7年実施、厚生労働省保険局医療課保険医療企画調査室)の「保険薬局 開設者別(集計2)」表がそれで、管理薬剤師と一般の薬剤師を区別した給与データを公表している(2026年8月19日、厚生労働省サイト掲載のPDFを直接確認)。

この統計の項目は「年収」そのものではなく、「平均給料年(度)額+賞与」である。 通勤手当等の諸手当をどこまで含むかは、この表からは判別できない。以下の数値もこの前提で読む必要がある。

区分(前年(度)=令和6年度) 管理薬剤師 薬剤師(役職なし) 差額
全体 約725.4万円 約479.5万円 約246万円
法人(開設者が法人の薬局) 約726.2万円 約480.3万円 約246万円

※ 「前年(度)」は令和6年度を指す(第25回調査は令和7年に実施され、対象期間は令和6年度分の実績)。
※ 個人立の薬局については、同表で管理薬剤師の欄が「-」(データなし)となっている。

参考:職種「薬剤師」全体の統計(賃金構造基本統計調査)

厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」にも薬剤師の賃金データがあるが、こちらは職種「薬剤師」全体(業態を問わず、管理薬剤師かどうかも区別しない)の集計であり、管理薬剤師固有の数値ではない。

区分 きまって支給する現金給与額(月額) 年間賞与その他特別給与額 年収換算(月額×12+賞与)
男女計 39.87万円 88.35万円 約566.8万円
男性 42.54万円 95.23万円 約605.7万円
女性 37.99万円 83.50万円 約539.4万円

※「年収換算」は、公表されている「きまって支給する現金給与額(月額)×12か月+年間賞与その他特別給与額」で算出した目安であり、統計上の公式な「年収」項目そのものではない。

この2つの統計は、母集団も「年収」に相当する項目の定義も異なるため、単純に比較することはできない。 医療経済実態調査は保険薬局に限定され「平均給料年額+賞与」という項目であるのに対し、賃金構造基本統計調査は業態を問わない職種「薬剤師」全体を対象にした「きまって支給する現金給与額+賞与」である。管理薬剤師としての待遇水準を知りたい場合は前者(医療経済実態調査)、薬剤師という職種全体の相場感を知りたい場合は後者(賃金構造基本統計調査)、と使い分けるのが実態に近い。

年齢・勤続年数との関係

賃金構造基本統計調査によれば、薬剤師の平均勤続年数は男女計で8.6年、男性9.8年・女性7.8年となっている。管理薬剤師の登用にあたって前述の厚労省ガイドライン(実務経験5年以上)や各社の内部基準が設けられる場合、この平均勤続年数の水準感と照らし合わせて自身のキャリア段階を判断する材料にはなる。ただし繰り返しになるが、これは統計上の平均像であり、個々の薬局の登用基準を保証するものではない。


管理薬剤師になるメリット・デメリット

メリット

  • 年収面の差がある: 前述の医療経済実態調査によれば、保険薬局における管理薬剤師の平均給料年額+賞与は薬剤師(役職なし)より約246万円高い(全体・前年度=令和6年度)。ただし職位間の平均の差であり、個人の昇給幅を保証するものではない
  • 薬局運営に関与できる立場になる: 薬局開設者に対して書面で意見を述べる権限(第8条2項)があり、法令遵守面で薬局全体を主導する役割を担える
  • 薬局全体の実績に関与しやすい: 地域支援体制加算など薬局単位の実績要件に対して、管理薬剤師は牽引役になりやすい

デメリット

  • 責任範囲が拡大する: 人(従業者の監督)・物(構造設備・医薬品の管理)・記録(帳簿・意見書の保存)・情報(サイバーセキュリティ)の4方向の管理責任を負う(第8条・施行規則第11条)。調剤業務だけでなく、薬局運営全体の法令違反リスクを背負う立場になる
  • 複数店舗の掛け持ちは原則できない: 第7条4項により、転勤・異動の自由度が下がる可能性がある
  • 意見具申の書面化義務がある: 開設者との間で、法令遵守をめぐる板挟みになりやすい(第8条2項・第9条2項。詳細は後述「参考:関連する条文」を参照)
  • 調剤ベースアップ評価料の賃上げ対象から外れる: 2026年6月1日に新設された調剤ベースアップ評価料は、薬局が受け取った収入を対象職員の賃上げに充てさせる仕組みだが、その「対象職員」の定義から管理者(管理薬剤師)は明文で除外されている(令和8年3月5日 保医発0305第8号「第109 調剤ベースアップ評価料」1の(2))。年齢が40歳未満であっても、管理薬剤師である以上は対象外である。同じ規定で40歳以上の薬剤師と本部職員・エリアマネージャー等も除外されている。管理薬剤師の処遇は、この制度ではなく勤務先の役職手当で決まると考えたほうがよい。制度の中身と自薬局での試算は調剤ベースアップ評価料シミュレーター2026を参照

管理薬剤師求人の探し方

管理薬剤師の求人を検討する際は、求人票の次の項目を確認しておくとミスマッチを防ぎやすい。

  • 管理薬剤師手当の有無・金額: 役職手当は各社独自の設定であり、公的統計には存在しない(前述)。求人票に金額の明記があるかを確認する
  • 一人薬剤師かどうか: 管理薬剤師が実質的に唯一の薬剤師として勤務する店舗か、複数名体制かで、日々の業務負荷・休暇の取りやすさが大きく変わる
  • 在庫・監査責任の範囲: 医薬品その他の物品の管理(第8条)について、会社としての在庫管理体制があるか、管理薬剤師個人にどこまで責任が及ぶか
  • 開局時間・営業時間: 管理薬剤師は原則1つの薬局にしか勤務できない(第7条4項)ため、勤務先の営業時間がそのまま自身の稼働時間の目安になる

求人票だけでは分からない社内の登用基準・実際の労働時間などは、面接や転職エージェントへのヒアリングで確認するとよい。管理薬剤師としての経験を積んだ後は、複数店舗を統括するエリアマネージャー、開設許可を取得しての独立開局、他の薬局・企業への管理薬剤師としての転職などのキャリアパスも一般的に語られる。なおエリアマネージャーは会社の職制上の役職であって、薬機法上の管理者を複数店舗で兼ねる立場ではない。各店舗の管理薬剤師は別途1名ずつ指定されるため、第7条4項の掛け持ち禁止と矛盾しない。いずれも法律上の要件というより各社・各人のキャリア設計の問題であり、個別のキャリア相談は専門の転職支援サービス等の利用を検討されたい。


よくある誤解と注意点

誤解 正しい理解
管理薬剤師になるには法律で定められた年数(例:5年)が必要 薬機法第7条3項は「必要な能力及び経験」という抽象的な要件のみで、条文上の年数基準はない。年数要件は各薬局の内部基準
5年の実務経験がないと管理薬剤師になれない 2021年厚労省ガイドライン(薬生発0625第13号)が示す「実務経験5年以上+認定薬剤師」は行政指導上の推奨水準であり、義務ではない。条文上の年数要件も存在しない
管理薬剤師とかかりつけ薬剤師は同じ制度 管理薬剤師は薬機法上の「薬局の管理者」、かかりつけ薬剤師は調剤報酬上の個人資格。根拠法令も要件も別
複数店舗の管理薬剤師を兼任できる 第7条4項により原則禁止。都道府県知事の許可がある場合のみ例外的に可能
登録販売者が店舗管理者になれば「管理薬剤師」と呼べる 登録販売者が管理者を務める場合は「店舗管理者」であり「管理薬剤師」とは呼ばれない(薬局と店舗販売業は別制度)

FAQ|管理薬剤師に関するよくある質問

A

薬機法第7条3項は「(管理者の義務を遂行し遵守事項を守るために)必要な能力及び経験を有する者」という要件を定めていますが、具体的な年数は条文に明記されていません。一方、2021年の厚生労働省ガイドライン(薬生発0625第13号)は、管理者について「実務経験が少なくとも5年」「認定薬剤師等の認証」が重要であるという実務上の目安を示しています。これは義務ではなく行政指導上の推奨水準であり、条文上の義務ではありません。実際に年数を基準にするかどうかは各薬局・企業の内部基準によります。

A

管理薬剤師は薬機法第7条〜第9条に基づく「薬局の管理者」という役職で、薬局全体の管理責任を負います。かかりつけ薬剤師は調剤報酬制度上の個人資格で、患者の服薬を一元的に管理する役割です(かかりつけ薬剤師の詳細記事を参照)。根拠となる法令・制度が異なり、両立は可能です。

A

原則できません。薬機法第7条4項は、薬局の管理者がその薬局以外の場所で業として薬局の管理その他薬事に関する実務に従事することを禁止しています。ただし、薬局の所在地の都道府県知事の許可を受けた場合に限り、例外的に認められることがあります。

A

中央社会保険医療協議会「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」(令和7年実施)によれば、保険薬局における管理薬剤師の平均給料年額+賞与は約725.4万円、薬剤師(役職なし)は約479.5万円で、差額は約246万円です(いずれも前年度=令和6年度、全体の数値)。ただしこれは同一人物が昇格した場合の昇給幅ではなく、職位間の平均値の差です。また「年収」ではなく「平均給料年額+賞与」という統計項目であり、通勤手当等をどこまで含むかは公表資料から確認できません。管理薬剤師手当の有無・金額は、必ず個別の求人条件・雇用契約で確認してください。

A

なれません。「管理薬剤師」は薬剤師が薬局の管理者を務める場合の呼び名です。登録販売者は、ドラッグストア等の「店舗販売業」で、扱う医薬品が第二類・第三類医薬品に限られる店舗であれば「店舗管理者」になれる場合があります(要指導医薬品・第一類医薬品を扱う店舗の管理者は薬剤師に限られます)。薬局と店舗販売業は薬機法上別の業態であり、管理者の呼称・要件も異なります。

A

薬機法第8条2項は、管理薬剤師が保健衛生上の観点から必要な意見を書面で薬局開設者に述べる義務を定めています。さらに第9条2項は、薬局開設者に対してこの意見を尊重し、法令遵守のための措置を講じた場合はその内容を(講じない場合はその旨と理由を)記録・保存する義務を課しています。管理薬剤師の意見具申は、単なる社内的な提案ではなく法律上の位置づけを持つ行為です。


まとめ

  • 管理薬剤師は薬機法第7条〜第9条に基づく「薬局の管理者」であり、条文上の年数要件はない。ただし2021年厚労省ガイドライン(薬生発0625第13号)は「実務経験5年以上+認定薬剤師」を実務上の推奨水準として示している(義務ではない)
  • 管理薬剤師の義務は、人(従業者の監督)・物(構造設備・医薬品管理)・記録(帳簿・意見書の保存)・情報(サイバーセキュリティ)の4方向に及ぶ(第8条・施行規則第11条)
  • 複数店舗の掛け持ちは原則禁止(第7条4項)
  • 薬機法上の「管理薬剤師(薬局の管理者)」は薬局に置かれる役職。病院に勤務する薬剤師はこの制度に該当せず、院内の職制上の役職となる。店舗販売業の「店舗管理者」(第28条・第29条)、医薬品卸の「医薬品営業所管理者」(第35条)、製造販売業の総括製造販売責任者(第17条)は、いずれも「管理薬剤師」と呼ばれることがあるが、根拠条文が異なる別の役職である
  • 年収は中央社会保険医療協議会「第25回医療経済実態調査」(令和7年実施)で管理薬剤師固有の統計が存在し、保険薬局全体で約725.4万円(薬剤師〔役職なし〕より約246万円高い、前年度=令和6年度)。ただし「平均給料年額+賞与」という項目であり通勤手当等の扱いは不明、対象は保険薬局に限られる

管理薬剤師は「役職が上がる」以上に、法律上の管理責任が明確に定義された立場である。要件・業務・責任・待遇を正しく理解したうえでキャリアを判断してほしい。

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参考:関連する条文

本文で扱いきれなかった関連条文を、参考として掲載する。

薬局開設者側の遵守事項(薬機法第9条)

第9条は、管理薬剤師個人ではなく薬局開設者(経営側)が負う義務を定めている。

第九条 厚生労働大臣は、厚生労働省令で、次に掲げる事項その他薬局の業務に関し薬局開設者が遵守すべき事項を定めることができる。(医薬品の試験検査・管理の実施方法、調剤・販売の実施方法等)
2 薬局開設者は、第七条第一項ただし書又は第二項の規定によりその薬局の管理者を指定したときは、第八条第二項の規定により述べられた薬局の管理者の意見を尊重するとともに、法令遵守のために措置を講ずる必要があるときは、当該措置を講じ、かつ、講じた措置の内容(措置を講じない場合にあつては、その旨及びその理由)を記録し、これを適切に保存しなければならない。

つまり、管理薬剤師が書面で意見を述べても、それを開設者が無視して記録も残さない、という運用は法律違反になる。管理薬剤師の意見具申には法的な重みがあるということを、薬局開設者・薬剤師双方が理解しておく必要がある。

店舗販売業の管理者(登録販売者)との違い(第28条・第29条)

ドラッグストア等の「店舗販売業」にも、薬局と同様に管理者の設置義務がある(第28条・第29条)。ただし薬局と異なり、扱う医薬品の区分によっては薬剤師でなくても管理者になれる点が大きな違いである。

薬機法第28条は次のように定める(e-Gov法令検索・薬機法全文、2026年8月19日確認)。

第二十八条 店舗販売業者は、その店舗を、自ら実地に管理し、又はその指定する者に実地に管理させなければならない。
2 前項の規定により店舗を実地に管理する者(以下「店舗管理者」という。)は、厚生労働省令で定めるところにより、薬剤師又は登録販売者でなければならない。

施行規則第140条は、扱う医薬品の区分に応じて店舗管理者の資格要件を区分している。

店舗で扱う医薬品 店舗管理者になれる者
要指導医薬品・第一類医薬品 薬剤師のみ
第二類医薬品・第三類医薬品 薬剤師、または一定の実務経験・研修要件を満たす登録販売者

第二類・第三類医薬品を扱う店舗で登録販売者が店舗管理者になる場合、施行規則第140条1項は次のいずれかを満たすことを求めている。

  • 過去5年間のうち、薬局・店舗販売業・配置販売業での実務従事期間(一般従事者としての期間+登録販売者としての業務期間)が通算2年以上
  • 過去5年間のうち従事期間が通算1年以上で、継続的研修+店舗管理・法令遵守に関する厚生労働大臣が必要と認める研修を修了
  • 従事期間が通算1年以上で、店舗管理者または区域管理者としての業務経験がある

この「従事期間」は月単位で数える。1つ目のルートは1か月に80時間以上、2つ目のルート(研修修了)は1か月に160時間以上従事した月が、1か月分として認められる。ただし月ごとの時間がこれに届かない場合でも、月単位で従事した期間が通算1年以上または2年以上あり、かつ過去5年間の合計が1,920時間以上であれば、それぞれ1年以上・2年以上とみなして差し支えないとされている(薬生発0331第16号「登録販売者制度の取扱い等について」令和5年3月31日)。パート勤務で日数だけを数えて要件を満たしたと考えるのは危険で、時間数の裏づけが要る。

「管理薬剤師」という言葉は、通常薬剤師が管理者を務める場合を指す。登録販売者が店舗の管理者(店舗管理者)を務める場合は「管理薬剤師」とは呼ばれない。両者は法律上も呼称上も別物である。


免責事項

本記事は2026年8月19日時点でe-Gov法令検索、厚生労働省サイト(医薬・生活衛生局長通知を含む)、政府統計の総合窓口(e-Stat)、中央社会保険医療協議会「医療経済実態調査」で確認できた情報に基づいて作成しています。薬機法・同施行規則の解釈、厚生労働省ガイドラインの推奨水準、管理薬剤師の登用基準・待遇は、各薬局開設者・地方厚生局・都道府県薬務主管課の運用により異なる場合があります。年収データは統計上の平均値であり、個別の求人条件・雇用契約の内容を保証するものではありません。本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別のキャリア判断・雇用契約の内容については、勤務先・転職支援サービス・専門家にご相談ください。本記事の内容に基づく判断・行動によって生じたいかなる損害についても、筆者は責任を負いかねます。


参考資料・一次情報

本記事の作成にあたり、以下の一次資料を参照しています。最新の情報は各機関の公式サイトでご確認ください。

  • e-Gov法令検索 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法、昭和35年法律第145号)第7条・第8条・第9条・第28条・第29条 — https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000145
  • e-Gov法令検索 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則 第11条・第140条 — https://laws.e-gov.go.jp/law/336M50000100001
  • 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(職種)第1表 職種(小分類)、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) — 政府統計の総合窓口(e-Stat) https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450091&tstat=000001011429
  • 中央社会保険医療協議会「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」(令和7年実施) — https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/database/zenpan/jittaityousa/dl/25_houkoku_iryoukikan.pdf
  • 厚生労働省医薬・生活衛生局長通知 薬生発0625第13号(令和3年6月25日)「薬局開設者及び医薬品の販売業者の法令遵守に関するガイドライン」について(別添ガイドライン) — https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000812083.pdf
  • 厚生労働省保険局医療課長通知 保医発0305第8号(令和8年3月5日)「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」第109 調剤ベースアップ評価料 — https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001688452.pdf
  • 厚生労働省医薬・生活衛生局長通知 薬生発0331第16号(令和5年3月31日)「登録販売者制度の取扱い等について」 — https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc7567&dataType=1&pageNo=1
JG

実務ガイド編集部

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