最低賃金2026年度改定|発効日は都道府県ごとに違う。中小企業の実務対応・賃金計算・届出チェックリスト

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最低賃金2026年度改定|発効日は都道府県ごとに違う。中小企業の実務対応・賃金計算・届出チェックリスト

最も見落とされやすい点から述べる。地域別最低賃金の発効日は全国一律ではない。中央最低賃金審議会が目安を示した後、各都道府県の地方最低賃金審議会が個別に審議して答申し、都道府県労働局長が決定する。このため発効日は都道府県ごとにばらつく。

直近の令和7年度改定では、発効日は令和7年10月1日から令和8年3月31日まで、実に半年にわたって分散した(後述)。「10月1日に一斉改定」という前提で準備を進めると、自社の所在地によっては対応が早すぎたり、逆に間に合わなかったりする。

影響を受ける従業員を見落とした場合、最低賃金法違反として50万円以下の罰金の対象になる。早めの実務準備が必要だ。

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最低賃金の種類と現状

種類 概要 決定主体
地域別最低賃金 都道府県単位で定める 都道府県労働局
特定(産業別)最低賃金 特定の産業・職種に適用(地域別より高い水準) 都道府県労働局(業者申出)

地域別最低賃金は全ての労働者に適用される下限ラインだ。時給制・日給制・月給制・出来高払制を問わず対象となる。

令和7年度(2025年度)改定の確定額

厚生労働省「令和7年度 地域別最低賃金全国一覧」による確定値は以下のとおり。括弧内は前年度(令和6年度)の額である。

区分 令和7年度 令和6年度 引上げ額 引上げ率 発効日
全国加重平均 1,121円 1,055円 66円 6.3%
東京都(最高) 1,226円 1,163円 63円 5.4% 令和7年10月3日
神奈川県 1,225円 1,162円 63円 5.4% 令和7年10月4日
大阪府 1,177円 1,114円 63円 5.7% 令和7年10月16日
宮崎県・沖縄県・高知県(最低) 1,023円 952円 71円 7.5% 令和7年11〜12月
秋田県(発効が最も遅い) 1,031円 951円 80円 8.4% 令和8年3月31日

【2026年8月7日 訂正】 本記事は当初、「現行(2025年10月改定後)の全国加重平均:約1,055円、東京都1,163円」と記載していましたが、これらは令和6年度(2024年10月改定後)の数値でした。正しくは上表のとおり全国加重平均1,121円・東京都1,226円です。あわせて「2025年実績は50円引き上げ」も66円引き上げに訂正します。厚生労働省の一次資料で確認のうえ差し替えました。

発効日は全国一律ではない

令和7年度改定の発効日を集計すると、以下のように分散している。

発効日 都道府県数
令和7年12月1日 7
令和7年10月4日 5
令和7年11月1日 5
令和7年11月21日 4
令和8年1月1日 4
その他(10月1日〜令和8年3月31日に分散) 22

最も早い栃木県が令和7年10月1日、最も遅い秋田県が令和8年3月31日。半年の開きがある。自社の事業場が所在する都道府県の発効日を、都道府県労働局の公表で個別に確認すること。複数県に事業場を持つ企業は、県ごとに異なる日から新額を適用する必要がある。

令和8年度(2026年度)の目安 ── 2026年7月28日答申

第75回中央最低賃金審議会(2026年7月28日)で、令和8年度の地域別最低賃金額改定の目安が答申された。

ランク 引上げ額の目安 対象
Aランク(6都府県) 54円 埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知・大阪
Bランク(28道府県) 56円 北海道・宮城・福島・茨城・栃木・群馬・新潟・富山・石川・福井・山梨・長野・岐阜・静岡・三重・滋賀・京都・兵庫・奈良・和歌山・島根・岡山・広島・山口・徳島・香川・愛媛・福岡
Cランク(13県) 56円 青森・岩手・秋田・山形・鳥取・高知・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄

仮に目安どおりに各都道府県で引上げが行われた場合、全国加重平均は1,176円となる。上昇額は55円(昨年度66円)、引上げ率に換算すると4.9%(昨年度6.3%)である。

根拠: 厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」(令和8年7月28日報道発表)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74920.html

【重要】この目安は確定額ではない。厚生労働省も「今後は、各地方最低賃金審議会で、この答申を参考にしつつ、地域における賃金実態調査や参考人の意見等も踏まえた調査審議の上、答申を行い、各都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定する」としている。実際の改定額と発効日は、所轄の都道府県労働局の公表で確認すること。上表のランクは目安の区分であり、各都道府県が目安どおりに決定するとは限らない。

なぜ引き上げ対応が重い課題になっているか

政府は全国加重平均1,500円という目標を掲げているが、達成時期の表現は2度変わっている点に注意したい。当初は「2030年代半ばまで」(2023年8月表明)とされ、骨太方針2025で「2020年代に」へ前倒しされた。その後、骨太方針2026(経済財政運営と改革の基本方針2026)では「遅くとも2030年代前半のできる限り早期に」へ改められている。2026年8月時点で参照すべきはこの最新の表現である。

令和7年度は66円・6.3%の引き上げで、全国加重平均は1,121円に達した。1,500円までは残り379円であり、目標時期が2030年代前半であれば年3%を超えるペースの引き上げが必要になる計算だ。複数年連続の大幅引き上げは小幅な対応では追いつかないリスクがある。

特に影響が大きいのは次のケースだ:

  1. 時給制パート・アルバイトを多数雇用している業種(小売、飲食、介護、物流)
  2. 固定残業代込みで月給を設定している場合(最低賃金を下回るケースが見落とされやすい)
  3. 特定最低賃金が存在する産業(製造業の一部職種など)

STEP1:影響を受ける従業員の洗い出し

改定前に必ず実施すること:

時給換算の計算方法

月給制・日給制の場合、時給換算して最低賃金と比較する必要がある。

月給制の時給換算式:

時給換算額 = 月給 ÷ 月の所定労働時間

ただし、以下は最低賃金との比較対象から除外する:
– 精皆勤手当、通勤手当、家族手当
– 時間外・深夜・休日割増賃金

計算例(除外対象を差し引いてから計算):
– 月給200,000円の内訳:基本給180,000円+通勤手当15,000円+精皆勤手当5,000円
– 比較対象額(除外後):180,000円(通勤手当・精皆勤手当は除外)
– 180,000 ÷ 160時間 = 1,125円 → 最低賃金と比較する数字はこちら
– ※月給総額(200,000円)をそのまま割ると誤って高い数字になるため注意

チェックすべき従業員リスト

  • [ ] 時給制アルバイト・パート全員
  • [ ] 日給制の日雇い・短時間労働者
  • [ ] 月給制の中で最低賃金付近の従業員
  • [ ] 試用期間中(許可を受けていなければ全額適用。減額特例は下記のとおり許可制であり、自動的には適用されない)

【訂正・2026年8月13日】 本記事は当初「試用期間中も最低賃金は全額適用される。減額特例はない」と記載していましたが、誤りでした。最低賃金法第7条第2号は「試の使用期間中の者」を減額特例の対象として明記しています。ただし適用には都道府県労働局長の許可が必要で、減額率の上限は20%(最低賃金法施行規則第5条)です。許可を受けずに減額して支払えば最低賃金法違反になります。また、試用期間後の本採用が予定されていることが要件であり、「当該業種・職種等の実情に照らして必要と認められる期間」に限って許可されます。申請は様式第2号を所轄労働基準監督署に2部提出します。
出典: 厚生労働省「最低賃金の減額の特例許可申請書様式・記入要領

STEP2:賃金テーブルの見直し

影響従業員の確認と引き上げ幅の決定

最低賃金を下回っている従業員には必ず引き上げが必要だ。ただし、ちょうど最低賃金に合わせるだけでは不十分な場合がある。

実務上の注意点:
1. 最低賃金スレスレに合わせると、翌年また違反リスクが生じる
2. 他の従業員との賃金バランス(逆転現象)に注意
3. 正社員登用時の賃金体系との整合性

賃金逆転問題への対処

パートの時給が引き上げられた結果、正社員の賃金との差が縮まる「逆転」が起きることがある。この場合、正社員側の賃金体系も見直す必要が生じる。

STEP3:就業規則・賃金規程の変更

賃金改定に合わせ、就業規則(賃金規程)を変更する場合は手続きが必要だ。

就業規則変更の流れ

① 変更案の作成
   ↓
② 過半数代表者(または労働組合)への意見聴取
   ↓
③ 労働基準監督署への届出(変更届+意見書)
   ↓
④ 従業員への周知(掲示・配布・イントラネット等)

ポイント:
– 意見聴取は「同意」ではなく「聴取すること」が義務(反対意見でも届出は可能)
– 届出は事業場を管轄する労働基準監督署へ
– 常時10人以上の労働者を使用する事業場が届出義務の対象(10人未満は届出義務なし。ただし就業規則を作成・運用している場合は従業員への周知が必要)

賃金改定通知書の交付

就業規則の変更とあわせ、個別の従業員に賃金改定の通知書を交付することが望ましい。特に労働条件通知書(雇用契約書)に賃金額を明記している場合は、書面による合意変更が必要になる。

STEP4:給与計算システムの更新

自社の都道府県の発効日以降の給与から新しい最低賃金を反映させる。給与の支払日が翌月の場合も、発効日以降の労働時間分から新賃金を適用する(日割り計算)。

よくある計算ミス

  • 発効日を含む月は「改定前の日数分」と「改定後の日数分」を分けて計算する必要がある(発効日が月初でない都道府県が多いため、ほぼ確実に按分が発生する)
  • 複数県に事業場がある場合、県ごとに発効日が異なる。同じ月の給与計算でも事業場ごとに適用開始日が変わる
  • 深夜・時間外手当も時給ベースが上がれば割増額が増える点を忘れない

実務チェックリスト

以下の時期は「自社の都道府県の発効日」を起点とした相対的な目安である。発効日が12月や翌年3月の都道府県では、全体を後ろにずらして運用すること。

答申の公表後すみやかに:
– [ ] 自社が属する都道府県の新最低賃金額と発効日の確認(金額だけでなく発効日を必ず控える)
– [ ] 複数県に事業場がある場合、県ごとの発効日一覧の作成
– [ ] 特定最低賃金の確認(製造業・小売業等は要確認)
– [ ] 影響従業員のリストアップと時給換算
– [ ] 賃金テーブル改訂案の作成
– [ ] 正社員との逆転チェック

発効日の2〜3週間前まで:
– [ ] 過半数代表者への意見聴取(就業規則変更の場合)
– [ ] 就業規則変更届の作成
– [ ] 従業員への賃金改定通知

発効日前後:
– [ ] 労働基準監督署への届出
– [ ] 給与計算システムの更新
– [ ] 従業員への周知

発効日を含む月の給与支払後:
– [ ] 最低賃金違反がないか最終確認

特定最低賃金に注意

製造業、小売業、その他一部の産業では、地域別最低賃金より高い「特定最低賃金」が設定されている場合がある。特定最低賃金が適用される場合は、その額が下限となる。

確認方法:厚生労働省の「最低賃金特設ページ」または各都道府県労働局のウェブサイト。

まとめ

最低賃金改定への対応は、「改定額を確認して給与を上げるだけ」ではない。就業規則の変更、従業員への通知、給与計算システムの更新まで一連の手続きが必要だ。特に影響従業員の洗い出しは丁寧に行い、見落としによる最低賃金法違反を防ぐことが重要だ。

そして発効日が全国一律ではない点を、実務上の前提として押さえておきたい。

中央最低賃金審議会の目安は例年7〜8月頃、各都道府県の答申はその後に出る。そして繰り返しになるが、発効日は都道府県ごとに異なり、令和7年度は10月1日から翌年3月31日まで分散した。金額の確認と同時に、必ず自社の発効日を押さえること。

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本記事は公開時点の情報に基づいています。最低賃金額は毎年改定されるため、厚生労働省および各都道府県労働局の最新情報を必ず確認してください。個別の労務管理については社会保険労務士へのご相談をお勧めします。

JG

実務ガイド編集部

AI執筆 + 編集部レビュー済み

本記事はAIが初稿を作成し、編集部が法令原文・官公庁通知・審議会資料等の一次情報と照合のうえ、内容を確認・編集しています。行政手続き・法改正・制度改正の実務情報を専門に扱う編集チームが、企業実務担当者・士業専門家向けに正確性の高いコンテンツを提供します。