派遣法改正2026年10月|待遇説明義務化・同一労働同一賃金ガイドライン改正の実務対応完全ガイド

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派遣法改正2026年10月|待遇説明義務化・同一労働同一賃金ガイドライン改正の実務対応完全ガイド
目次

最終更新日: 2026年9月

2026年10月1日施行。令和8年4月28日公布の厚生労働省令第87号・告示第200〜203号により、労働者派遣法の実施規則とガイドラインが改正される。派遣元事業主には雇入れ時・派遣時の書類改訂と待遇規程の点検が急務。派遣先企業にも待遇差の合理的説明準備が求められる。本記事では、施行前に何をどう準備すべきかを実務チェックリスト付きで解説する。


免責事項
本記事は2026年9月時点の公開情報(厚生労働省公布の省令・告示、告示の新旧対照表、同省Q&A等の一次ソース)に基づいて作成した一般的な情報提供を目的とするものです。個別案件への適用可否・具体的な対応方法については、必ず所轄の都道府県労働局、ハローワーク、または社会保険労務士・弁護士等の専門家にご確認ください。本記事の内容に基づく判断・行動により生じた損害について、筆者および運営者は一切の責任を負いません。


2026年10月改正の全体像:省令・ガイドラインレベルの実施改正

どんな改正か

2026年の労働者派遣法に関する改正は、法律(法律号)そのものの大幅改正ではなく、施行規則(省令)・ガイドライン(告示)レベルの実施改正である。2020年4月に「同一労働同一賃金」規定(派遣法第30条の3・第30条の4)が施行されてから5年が経過し、労働政策審議会「職業安定分科会・雇用環境・均等分科会 同一労働同一賃金部会」による施行5年後見直し審議(2025年2月〜2026年3月)を経て、省令・告示が改正された。

公布日 2026年(令和8年)4月28日
施行日 2026年(令和8年)10月1日
根拠法令 厚生労働省令第87号(省令改正)、告示第200〜203号(告示4件。厚生労働省令第87号と合わせ計5件)
出典 厚生労働省「同一労働同一賃金 法律・省令・告示・通達一覧」

今回の改正で変わる点・変わらない点

分類 内容
変わる点① 雇入れ時・派遣時の明示書に「待遇差説明を求める権利がある旨」を追記する義務(省令改正)
変わる点② 同一労働同一賃金ガイドラインに退職手当・無事故手当・家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇・褒賞の6待遇が新規追加。賞与・病気休職は既存記載の拡充(告示改正・初改正)
変わる点③ 令和8年度の一般賃金水準(労使協定方式の基準賃金)が1,289〜1,442円/時に引き上げ
変わる点④ 派遣元指針(告示第200号)・派遣先指針(告示第201号)の改正
現行維持① 3年ルール(派遣期間制限・同一組織継続3年上限)
現行維持② 日雇い派遣原則禁止(日雇い=30日以内の有期雇用による派遣は原則禁止)
現行維持③ 許可制(派遣業は厚生労働大臣の許可が必要)
現行維持④ 2つの待遇確保方式(派遣先均等・均衡方式 / 労使協定方式)

ポイント: 「3年ルールが撤廃される」「日雇い派遣が解禁される」といった情報は今回の改正には含まれない。法的な骨格は維持されたまま、「同一労働同一賃金の実効性強化」に絞った改正である。


改正A:雇入れ時・派遣時の待遇差説明明示義務化(省令改正)

何が変わるのか

2026年10月1日以降、派遣元事業主は派遣労働者を雇い入れる際(雇入れ時)および労働者派遣を行う際(派遣時)に交付する書類に、「待遇の相違の内容・理由等について説明を求めることができる旨」 を明示しなければならない。

現行制度でも、派遣労働者が待遇差の説明を求めた場合に説明する義務はある(派遣法第31条の2第4項)。今回の改正は、その「説明を求める権利の存在」を書面で能動的に告知することを義務化するものである。

改正前 改正後
求めがあれば説明する義務あり(受動的) 雇入れ時・派遣時の書類に「説明を求める権利がある旨」を明示する義務(能動的告知)

影響を受ける書類と対応作業

派遣元が改訂すべき書類

書類 改訂内容 対応期限
雇入れ時の労働条件通知書 「待遇差説明を求める権利がある旨」を追記 2026年9月30日まで
派遣時の就業条件等の明示書(派遣法第34条に基づく書面) 同上 2026年9月30日まで

既存の派遣労働者への遡及義務はない

施行日(2026年10月1日)より前に雇い入れた既存の派遣労働者について、遡って明示し直す義務はない。ただし、施行日以降に更新・新規雇入れを行う際には改訂後の様式が必要になる。また、施行前であっても労働者から説明を求められた場合の説明義務は現行どおり継続する。

パートタイム・有期雇用労働者への同時適用

同じ省令改正(厚生労働省令第87号)で、パートタイム・有期雇用労働法施行規則も同時改正されている。パートタイム・有期雇用労働者についても、雇入れ時に「待遇差説明を求める権利がある旨」の明示義務が課される。派遣と直接雇用の双方を抱える企業は、両方の書類改訂が必要になる。パート・有期雇用労働者向けの改正内容(条文レベルの明示事項・同一労働同一賃金ガイドラインの新設6待遇等)はパート・有期雇用2026年10月ルール改正|労働条件明示1項目追加・同一労働同一賃金ガイドライン改正の実務対応で詳しく解説している。


改正B:同一労働同一賃金ガイドラインの初改正(6待遇が新規追加)

2020年以来の初改正

「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」(同一労働同一賃金ガイドライン)は、2020年4月の施行以来初めて改正される(令和8年厚生労働省告示第203号)。改正前のガイドラインに記載のなかった待遇として、6つの待遇が新たに記載された。

厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン及び雇用管理指針に関するQ&A(令和8年改正)」問1-7は、この点を次のように述べている。

改正前のガイドラインに記載のなかった待遇で、令和8年改正で追加されたものは、退職手当、無事故手当、家族手当、住宅手当、夏季冬季休暇及び褒賞の6つです。このうち褒賞を除く5つについては、最高裁判決を踏まえて記載したものです。

褒賞のみ、メトロコマース事件の東京高裁判決(平成31年2月20日)を踏まえたものとされている(同Q&A 問1-7の2)。ただし告示第203号の本文に判決名の記載はなく、6つの待遇それぞれがどの最高裁判決に対応するかは公式には示されていない。個別の待遇と判決を結び付けて解説する情報を見かけた場合は、出典を確認したうえで扱うこと。

新規追加された6つの待遇

告示第203号の新旧対照表で「(新設)」と表示されている待遇は、以下の6件である。内容は告示本文の記述による。

待遇 ガイドラインが求める内容 告示に載った「問題となる例」
退職手当 労務の対価の後払い・功労報償等の目的が短時間・有期雇用労働者にも妥当するにもかかわらず、職務の内容等の相違に応じた均衡のとれた退職手当を支給せず、その見合いとして基本給を高く支給している等の事情もない場合、退職手当の相違は不合理と認められうる —(告示に例示なし。「留意すべきである」との記述形式)
無事故手当 通常の労働者と業務の内容が同一の短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の無事故手当を支給しなければならない —(告示に例示なし)
家族手当 労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の家族手当を支給しなければならない 更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる有期雇用労働者に家族手当を支給していない
住宅手当(転居を伴う配置の変更の有無に応じて支給されるもの) 通常の労働者と同一の転居を伴う配置の変更がある短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の住宅手当を支給しなければならない 配置変更が見込まれることを理由に正社員のみ支給しているが、実態としては正社員にも転居を伴う配置の変更を命じていない
夏季冬季休暇 短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の夏季冬季休暇を付与しなければならない 繁忙期に限定された短期間の勤務ではない有期雇用労働者に、通常の労働者と同一の夏季冬季休暇を付与していない
褒賞(一定の期間勤続した労働者に付与するもの) 通常の労働者と同一の期間勤続した短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の褒賞を付与しなければならない —(告示に例示なし)

派遣労働者についても、告示の「第4 派遣労働者」に同趣旨の規定が新設されている。

改正前から記載があり、今回記述が拡充された待遇

賞与と病気休職は、改正前のガイドラインにも記載があった既存項目である。新規追加ではないが、今回の改正で記述が加わっているため、点検の対象からは外せない。

待遇 今回加わった内容
賞与 末尾に「(注)」が新設された。労務の対価の後払い・功労報償・生活費の補助・労働意欲の向上等の目的が短時間・有期雇用労働者にも妥当するにもかかわらず、均衡のとれた内容の賞与を支給せず、その見合いとして労使交渉を経て基本給を高く支給している等の事情もない場合、賞与の相違は不合理と認められうる旨
病気休職 見出しが「病気休職(療養への専念を目的として付与する病気休暇を含む。)」に変わった。加えて「通常の労働者に病気休職期間に係る給与の保障を行う場合には、労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の給与の保障を行わなければならない」との一文と、「問題となる例」が新設された

派遣労働者への適用

このガイドライン改正はパートタイム・有期雇用労働者だけでなく、派遣労働者にも直接適用される

  • 派遣先均等・均衡方式(派遣法第30条の3)を採用している場合:退職手当・家族手当等の新規追加待遇について、派遣先の正社員と派遣労働者の間の待遇差に合理的説明がつかない場合は問題となる。
  • 労使協定方式(派遣法第30条の4)を採用している場合:協定内容(賃金水準・手当支給基準・福利厚生等)に今回の6待遇の観点が反映されているかが問われる。退職金相当額の処理(賃金への上乗せ・退職金制度の整備・確定拠出年金への拠出等)が適切かを点検すること。

改正C:派遣元指針・派遣先指針の改正

4件の告示が同日公布

2026年4月28日、同一労働同一賃金に関連する以下4件の告示が公布された。

告示番号 内容 施行日
令和8年厚生労働省告示第200号 派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針(派遣元指針)の改正 2026年10月1日
令和8年厚生労働省告示第201号 派遣先が講ずべき措置に関する指針(派遣先指針)の改正 2026年10月1日
令和8年厚生労働省告示第202号 事業主が講ずべき短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等についての指針の改正(パートタイム・有期雇用労働法に基づく指針。派遣労働者には直接適用されない 2026年10月1日
令和8年厚生労働省告示第203号 同一労働同一賃金ガイドラインの改正 2026年10月1日

派遣元指針・派遣先指針の改正趣旨

告示第200号(派遣元指針)・告示第201号(派遣先指針)の主な改正趣旨は以下のとおりである。

  • 公正な評価による待遇改善の促進: 派遣労働者の能力・スキルを公正に評価し、待遇に反映させる取り組みの強化
  • 待遇差説明義務の実効性向上: 説明の内容・方法の明確化、分かりやすい説明の実施
  • 制度周知強化: 派遣労働者が自分の権利を知り、活用できるよう情報提供を充実させる

留保事項: 告示第200号・第201号の各条文レベルの具体的な改正内容については、告示本文(厚生労働省ウェブサイト掲載の各告示PDF)を確認することを推奨する。本記事では告示の趣旨・概要レベルの情報にとどめている。


改正D:令和8年度 労使協定方式の一般賃金水準引き上げ

毎年更新される一般賃金水準とは

労使協定方式(派遣法第30条の4)を採用する派遣元事業主は、協定に定める賃金を「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準以上」にしなければならない(同条第1項第2号イ)。この「一般賃金水準」は厚生労働省職業安定局長通達で毎年度更新される。

令和8年度(2026年4月〜2027年3月)の改定値

令和8年度適用の一般賃金水準は、2025年8月25日付け局長通達(職発0825第1号)で公表された。

統計ベース 令和8年度水準 前年度比
職業安定業務統計 職業計 1,289円/時 +41円
賃金構造基本統計調査 産業計 1,442円/時 +122円

(出典:厚生労働省職業安定局長通達「職発0825第1号」令和7年8月25日公表)

この水準は令和8年度(2026年4月1日〜2027年3月31日)の協定に適用される。適用開始は2026年4月1日であり、派遣法改正の施行日(2026年10月1日)とは無関係である。2026年4月以降に締結・更新した労使協定は、すでに上記水準以上の賃金設定が求められている。4月の協定更新で反映できていない場合は、10月を待たずに速やかに協定を見直すこと。

派遣料金交渉への影響

一般賃金水準の引き上げは、労使協定方式を採用する派遣会社の原価上昇に直結する。職業安定業務統計ベースで前年度比+41円/時の引き上げは、月160時間勤務換算で1人あたり月6,560円のコスト増となる。複数の派遣労働者を抱える派遣元にとっては相当規模のコスト増であり、派遣料金の見直し交渉が必要になるケースが多い。

項目 試算例
水準引き上げ幅(職業安定統計ベース) +41円/時
月160時間勤務の場合のコスト増 月+6,560円/人
派遣社員10人の場合 月+65,600円(年+787,200円)

派遣先企業の担当者も、派遣元から料金改定の申し入れがあった場合、この水準引き上げが背景にあることを理解した上で交渉に臨む必要がある。


三者別:実務影響と対応優先順位

派遣元事業主(派遣会社)の対応

即座に着手すべき対応(2026年9月30日まで)

優先度 対応項目 担当部門 期限
最高 雇入れ時の労働条件通知書に「待遇差説明請求権の告知」文言を追加 人事・総務 9/30
最高 就業条件等の明示書(派遣時書面)の様式改訂 人事・総務 9/30
労使協定方式の賃金水準が令和8年度一般賃金水準以上であるか確認 労務・経営 2026年4月1日から適用済み。未反映なら即時
退職手当・家族手当・夏季冬季休暇等、新規追加6待遇(+賞与・病気休職)の支給実態を点検 人事・コンプライアンス 9/30まで
派遣料金改定の交渉準備(コスト増の試算) 営業・経営 随時

3行目のみ期限が異なる点に注意。令和8年度の一般賃金水準は派遣法改正とは別の枠組みで、2026年4月1日からすでに適用されている。2026年10月1日の施行を待つ性質のものではないため、未反映であれば直ちに協定を見直す必要がある。

待遇規程の点検フロー

新規追加された6待遇と、記述が拡充された賞与・病気休職について、以下の手順で点検する。

  1. 現行の待遇規程を洗い出す: 退職手当規程・無事故手当・家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇・褒賞の各制度が社内規程に存在するか確認。あわせて賞与・病気休職(休職期間中の給与保障を含む)の規程も点検する
  2. 継続的勤務が見込まれる派遣労働者を特定する: 複数回更新している労働者、期間の定めのない雇用への転換対象者を抽出
  3. 「問題となる例」に該当しないか確認: 上記対象者への各待遇の支給状況を確認。不支給の場合は合理的理由が説明できるか検討
  4. 問題がある場合は制度設計を修正: 支給対象拡大・金額調整・退職金相当額の処理方法変更(賃金上乗せ・外部積立等)を検討
  5. 社内規程・労使協定の改訂: 制度変更を経て規程を改訂。労使協定方式の場合は協定書を更新

派遣先企業の対応

対応が求められる主なポイント

対応項目 内容 期限
待遇情報提供義務の継続 派遣先均等・均衡方式採用の場合、正規労働者の比較対象者の待遇情報を派遣元に提供する義務(現行法・現行維持)。退職手当・家族手当等が追加された今、提供情報の精度を上げる必要 随時
福利厚生施設の利用機会確保 食堂・休憩室・更衣室等を派遣労働者に利用させる義務(現行法・現行維持)。指針改正で行政指導が強化される可能性あり 施行前に再確認
待遇差の合理的根拠整備 ガイドライン改正で新たに追加された6待遇について、正規社員との差に合理的説明ができるよう社内規程・労使協議の整備が必要 9/30まで
派遣元からの料金改定申し入れへの対応準備 一般賃金水準の引き上げを背景とした料金改定交渉が想定される 随時

派遣で働く個人への影響

2026年10月以降に新しくなること

  • 雇入れ時・派遣時の書類で権利告知が受けられる: 2026年10月1日以降に雇入れ・派遣が行われる際、「待遇差の説明を求める権利がある」ことが書面で明示される。この権利を活用して、正社員との待遇差の内容・理由を派遣元に尋ねることができる。
  • 退職手当・家族手当・夏季冬季休暇等が是正対象に: 長期にわたって更新を繰り返している場合、これらの待遇が「問題となる例」の対象に含まれた。不支給に疑問を感じる場合は、派遣元への説明要求や都道府県労働局・ハローワークへの相談を検討できる。
  • 協定方式派遣会社では時給が上がる可能性: 労使協定方式の派遣会社は一般賃金水準(1,289〜1,442円/時)以上の賃金を協定で定める義務がある。水準引き上げにより、時給の改善が期待できる。

相談窓口

窓口 内容 利用方法
都道府県労働局 雇用環境・均等部(室) 同一労働同一賃金・待遇差についての相談・是正指導 最寄りの都道府県労働局へ
ハローワーク(公共職業安定所) 労働条件・待遇に関する相談 最寄りのハローワークへ
総合労働相談コーナー 労働問題全般の相談(都道府県労働局・ハローワーク内) 都道府県労働局

施行前の「改正前 vs 改正後」対照表

派遣元の明示書類

項目 改正前(〜2026年9月30日) 改正後(2026年10月1日〜)
雇入れ時書類 待遇差説明権の告知:なし(求められれば説明) 待遇差説明を求める権利がある旨を明示義務
派遣時書類(就業条件等の明示書) 同上 同上

同一労働同一賃金ガイドライン

項目 改正前(2020年4月〜) 改正後(2026年10月1日〜)
ガイドラインに記載のある待遇 基本給・賞与・各種手当・福利厚生等(6待遇の追加前) 退職手当・無事故手当・家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇・褒賞を新規追加。賞与・病気休職は記述を拡充
裁判例の反映 なし 新規追加6待遇のうち褒賞を除く5つは最高裁判決を踏まえたもの、褒賞はメトロコマース事件の東京高裁判決を踏まえたものとされる(厚労省Q&A 問1-7)。個別の待遇と判決の対応は公表されていない

労使協定方式の一般賃金水準

統計ベース 令和7年度(〜2026年3月) 令和8年度(2026年4月〜)
職業安定業務統計 職業計 1,248円/時 1,289円/時(+41円)
賃金構造基本統計調査 産業計 1,320円/時 1,442円/時(+122円)

実務チェックリスト:2026年9月30日までに確認すること

派遣元事業主向けチェックリスト

書類・様式改訂

No. チェック項目 対応状況
1 雇入れ時の労働条件通知書に「待遇差説明請求権の告知」文言を追加したか [ ]
2 就業条件等の明示書(派遣時書面)を改訂したか [ ]
3 改訂後の様式を2026年10月1日以降の雇入れ・派遣時に使用する準備ができているか [ ]
4 パートタイム・有期雇用の雇入れ時書類も同様に改訂したか(同時改正対象) [ ]

待遇規程の点検

No. チェック項目 対応状況
5 退職手当の支給対象・算定基準を確認し、長期継続の派遣労働者への対応方針を決定したか [ ]
6 家族手当の支給対象に継続的勤務が見込まれる派遣労働者が含まれているか確認したか [ ]
7 夏季・冬季休暇を通年勤務の派遣労働者に付与しているか確認したか [ ]
8 無事故手当(同一業務従事の場合)・病気休職・褒賞の派遣労働者への適用状況を確認したか [ ]
9 住宅手当について、転居を伴う配置転換の「実態」と制度の整合性を確認したか [ ]
10 不支給・不付与がある場合、合理的理由を文書化できているか [ ]

労使協定方式の賃金水準

No. チェック項目 対応状況
11 現行の協定賃金が令和8年度一般賃金水準(職業安定統計:1,289円/時、賃金構造統計:1,442円/時)以上であるか確認したか [ ]
12 令和8年度協定(2026年4月更新分)に上記水準が反映されているか確認したか [ ]
13 賃金水準引き上げに伴うコスト増を試算し、派遣料金改定の交渉方針を決定したか [ ]

派遣先企業向けチェックリスト

No. チェック項目 対応状況
1 派遣先均等・均衡方式の場合、退職手当・家族手当等の待遇情報を派遣元に提供済みか [ ]
2 食堂・休憩室・更衣室等の福利厚生施設を派遣労働者に利用させているか [ ]
3 新規追加6待遇について、正規社員との待遇差に合理的説明ができる準備ができているか [ ]
4 派遣元からの料金改定申し入れへの対応方針を検討したか [ ]
5 比較対象となる正規労働者の待遇情報(退職手当・家族手当等を含む)の提供体制を整備したか [ ]

現行制度の再確認:変わらない「派遣のルール」

今回の改正で変わらない現行制度を再確認する。「2026年の改正で3年ルールがなくなった」等の誤情報が流れやすいため、現行維持事項を正確に把握しておくことが重要である。

3年ルール(期間制限)は現行維持

派遣先の同一の組織単位(課・グループ等)に同一の派遣労働者を3年を超えて継続して派遣することは原則できない(派遣法第35条の3)。この「3年ルール」は今回改正されない。

派遣先が継続して派遣を受け入れたい場合は、3年到来前に(1)派遣先による直接雇用への申し込み、(2)別の組織単位への異動、(3)クーリング期間(3か月超)の設定のいずれかが必要となる。

日雇い派遣原則禁止は現行維持

日雇い派遣(日々又は30日以内の有期雇用によって雇用された派遣労働者の派遣)は、一定の例外を除き原則禁止(派遣法第35条の4)。この規定も改正されない。例外は、①60歳以上の者、②雇用保険の適用外の者(副業等)、③主婦・学生の一部、④専門業務(ソフトウェア開発・財務処理・秘書等)に限られる。

許可制は現行維持

労働者派遣事業を行うためには、厚生労働大臣の許可が必要(派遣法第5条)。無許可での派遣は1年以下の拘禁刑(2025年6月施行の刑法改正で「懲役」から改称)または100万円以下の罰金(同法第59条)。許可要件・更新制度に変更はない。

2つの待遇確保方式は現行維持

派遣労働者の待遇を確保するための2方式(派遣先均等・均衡方式・労使協定方式)の仕組み自体は変わらない。ただし、各方式の内容基準(ガイドライン・一般賃金水準)が今回改正されている。


同一労働同一賃金と他の労働法改正との関係

2026年10月は複数の労働関係法令が同時に施行される時期である。派遣法改正と合わせて確認しておく必要がある。

派遣先での就業条件に影響する最低賃金の引き上げ(発効日は都道府県ごとに異なり、令和7年度は10月1日〜翌3月31日に分散した)は、派遣先の地域別最低賃金が適用される。最低賃金の改定内容・地域別の水準については最低賃金2026年度改定|発効日は都道府県ごとに違うで詳しく解説している。

派遣労働者も適用対象となる可能性がある社会保険適用拡大(106万円の壁の撤廃。施行日は政令未定、企業規模要件は2027年10月に36人以上へ縮小)は、派遣元の保険料負担・協定賃金の計算にも影響する。詳細は社会保険適用拡大2026年|106万円の壁の撤廃時期と週20時間ルールを早わかりを参照されたい。

派遣労働者の労働条件通知書の記載事項については雇用契約書の必須項目と書き方|2026年最新も参考になる。

フリーランス・業務委託との比較で自社の雇用区分を整理したい場合はフリーランス保護法2026年|発注者7義務・違反事例・契約書対応を参照されたい。


FAQ:派遣法2026年10月改正 よくある質問

Q1. 2026年10月1日施行の改正は「法律」の改正ですか?省令・告示の改正ですか?

令和8年4月28日に公布されたのは、省令(厚生労働省令第87号)および告示(第200〜203号)の計5件です。法律(労働者派遣法本体)の改正ではなく、実施規則・ガイドラインレベルの改正です。したがって、「3年ルール」「日雇い派遣原則禁止」「許可制」「2つの待遇確保方式」といった法律に定められた制度的枠組みは、今回の改正では変更されていません。

Q2. 「待遇差説明を求める権利がある旨」を明示する義務は、いつ・どこで果たせばよいですか?

派遣元事業主は、(1)派遣労働者として雇い入れる際の書面(労働条件通知書等)と、(2)労働者派遣を行う際の書面(就業条件等の明示書)の2か所で明示することが求められます。対象は2026年10月1日以降に行われる雇入れ・派遣です。既存の派遣労働者への遡及義務はありませんが、書類の様式は施行日前に改訂を完了させておく必要があります。

Q3. 退職手当を派遣労働者に支給しないといけなくなったのですか?

一律に「支給義務が新設された」わけではありません。ガイドライン改正により、「継続的勤務が見込まれる有期雇用労働者(派遣労働者含む)への一律不支給」が「問題となる例」に追加され、合理的な説明がない場合に是正指導の対象となりやすくなりました。対応策は「退職金制度の適用拡大」「退職金相当額の賃金上乗せ」「中退共・確定拠出年金等への加入」など複数あります。自社の状況を社会保険労務士等と確認した上で選択することを推奨します。

Q4. 労使協定方式で令和8年度の一般賃金水準(1,289円/時等)を下回っている場合、どうすればよいですか?

令和8年度(2026年4月〜2027年3月)の協定では、局長通達(職発0825第1号)が示す一般賃金水準以上の賃金を定める義務があります。令和8年度の協定更新時に基準を下回っていた場合は、協定を改訂して水準を引き上げる必要があります。2026年4月の協定更新で対応できていない場合は、速やかに協定を見直してください。職種別の賃金水準については局長通達PDFを参照してください。

Q5. 派遣先均等・均衡方式を採用していますが、今回の改正で何を準備すればよいですか?

主に2点です。①退職手当・家族手当等の新規追加6待遇について、比較対象となる派遣先の正規労働者の待遇情報(支給の有無・水準等)を派遣元に提供できる体制を整備すること。②正規労働者と派遣労働者の間の待遇差について、合理的な理由を説明できる準備をすること。ガイドライン改正により「問題となる例」が具体化された今、曖昧な根拠では行政指導の対象となるリスクが高まります。

Q6. 派遣先指針(告示第201号)の改正で、派遣先企業に新しい義務は生まれましたか?

告示第201号(派遣先指針)は2026年4月28日公布・10月1日施行です。改正の趣旨は待遇差説明の実効性向上・公正な評価による待遇改善の促進であり、派遣先企業への周知強化が図られています。ただし、告示本文の条文レベルの詳細については、厚生労働省公表の告示原文を確認してください。現行の「待遇情報提供義務」「福利厚生施設の利用機会付与」は引き続き重要な義務として維持されています。


まとめ:2026年10月1日までに動く3つの優先事項

2026年10月1日の施行まで残り僅かである。派遣元事業主・派遣先企業それぞれが、以下の3点を優先的に実施することを推奨する。

派遣元事業主の優先3項目

  1. 書類改訂を先行実施する: 雇入れ時・派遣時の書面に「待遇差説明請求権の告知」を追記する。様式変更だけでよいため、最も速く対応できる。
  2. 新規追加6待遇の社内点検を行う: 特に退職手当・夏季冬季休暇は、更新を繰り返している有期雇用者への取扱いが論点になりやすい。記述が拡充された病気休職(休職期間中の給与保障)とあわせ、施行前に点検し、問題があれば制度設計の修正を検討する。
  3. 令和8年度協定の賃金水準を確認する: 一般賃金水準(1,289〜1,442円/時)との乖離がある場合は協定の見直しと料金改定交渉を進める。

派遣先企業の優先3項目

  1. 待遇情報の提供体制を整備する: 退職手当・家族手当等を含む正規労働者の待遇情報を派遣元に提供できる体制を確認・整備する。
  2. 待遇差の合理的理由を文書化する: ガイドライン改正で「問題となる例」が拡充された今、曖昧な根拠では行政指導リスクが高まる。
  3. 料金改定交渉に備える: 一般賃金水準引き上げを背景とした派遣元からの料金改定申し入れに備え、対応方針を社内で検討しておく。

いずれの対応も、社会保険労務士・弁護士等の専門家に相談しながら進めることを強く推奨する。


参考法令・一次ソース

資料 URL
厚生労働省 同一労働同一賃金 法律・省令・告示・通達一覧ページ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00011.html
厚生労働省 同一労働同一賃金(派遣)概要ページ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00001.html
局長通達(令和8年度一般賃金水準)「職発0825第1号」PDF https://www.mhlw.go.jp/content/001547248.pdf
同一労働同一賃金部会 第30回 報告書 PDF https://www.mhlw.go.jp/content/001629296.pdf
日本人材派遣協会 省令公布案内 https://www.jassa.or.jp/information/6493/
e-Gov 法令検索 労働者派遣法 https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088
JG

実務ガイド編集部

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