本記事は2026年10月15日時点で国税庁が公表している「令和8年分 年末調整のしかた」「昨年と比べて変わった点」「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」「通勤手当の非課税限度額の改正に関するQ&A」「令和8年分 年末調整チェック表」と、e-Govの所得税法施行令をもとに作成しています。個別の事情(非居住者の親族、年の途中の退職・休職、給与計算ソフトの仕様など)によって取扱いは変わります。最終判断は所轄税務署または税理士にご確認ください。
結論|令和8年分の年末調整で変わる4点と、担当者がやること
令和8年分(2026年分)の年末調整で変わるのは、基礎控除の引上げ、給与所得控除の最低保障額の引上げ、扶養親族等の所得要件の改正、23歳未満の扶養親族がいる場合の生命保険料控除の特例の4点です。年末調整とは、毎月の給与から天引きした所得税の合計と、1年分の正しい税額との差を12月にまとめて精算する手続きです。
最大の注意点は時期です。基礎控除などの改正は令和8年12月1日に施行され(令和8年分の所得税から適用)、令和8年11月までの源泉徴収事務(毎月の天引き)に変更はありません。つまり11月までは旧制度のまま天引きし、12月の年末調整で新しい控除額を使って1年分を計算し直し、差額を精算します(国税庁「昨年と比べて変わった点」)。
| 変わる点 | 適用の時期 | 担当者の主な作業 |
|---|---|---|
| 基礎控除の引上げ(最大104万円) | 令和8年分から(施行は12月1日) | 基礎控除申告書の金額確認、12月の計算を新しい控除額で行う |
| 給与所得控除の最低保障額 65万円→74万円 | 令和8・9年分 | 国税庁の令和8年分「給与所得控除後の給与等の金額の表」を使う |
| 扶養親族等の所得要件 58万円→62万円 | 令和8年12月1日以後の給与から | 新たに対象になる親族の扶養控除等(異動)申告書を回収 |
| 23歳未満の扶養親族がいる場合の生命保険料控除の特例 | 令和8・9年分 | 保険料控除申告書で扶養親族の年齢を確認し、計算式を切り替える |
| 通勤手当の非課税限度額(別の改正) | 令和8年4月1日以後に支払われるべき手当 | 4月分以降の給与計算が新限度額になっているか確認 |
年末調整の対象になる人の範囲や、確定申告との関係は年末調整はいくらから必要?2026年分の対象・対象外の解説で整理しています。本記事は、その先の担当者の実務(何が変わり、何を集め、何を再計算するか)に絞ります。改正全体の背景と減税額の試算は税制改正2026年|年収の壁178万円・基礎控除引上げと給与計算の変更点をご覧ください。
この記事の対象読者
経理・総務・給与計算の担当者を主な対象としています。「昨年のやり方のままで大丈夫か」「従業員から何を集め直すのか」「ソフトの設定はどこを見るのか」に答える構成です。従業員本人が自分の控除額を知りたい場合は、本記事の表の金額をそのまま使えますが、勤務先の案内(提出期限・様式)が優先されます。
今年の変更点と担当者がやること(チェックリスト)
- 基礎控除は最大104万円に。申告書の金額と12月の計算を新額にする → 基礎控除の改正前後
- 11月支給分までは旧制度で天引きし、12月に精算する → 精算の仕組み
- 配偶者・親族の所得見積りが、給与所得控除74万円・所得要件62万円で書かれているか → 所得要件の表
- 特定親族(19〜22歳)の控除額を確認する → 特定親族特別控除額の表
- 23歳未満の扶養親族がいる人は、生命保険料控除の計算式を切り替える → 生保の特例
- 通勤手当は4月分以降が新限度額か(片道65km以上・駐車場料金) → 通勤手当
- 書類を集め、ソフト設定を確かめる → 回収書類・再計算チェック・スケジュール・よくあるミス
昨年と比べて何が変わったか(改正前後の比較)
1. 基礎控除の引上げ(令和8・9年分は最大104万円)
基礎控除は、本人の合計所得金額(給与のみの人なら、収入から給与所得控除を引いた後の金額)に応じて決まります。令和8年度税制改正で、本則の額が58万円から62万円に上がり、そこに租税特別措置法第41条の16の2による加算が付きます。令和8年分・令和9年分の金額は次のとおりです(国税庁「昨年と比べて変わった点」3ページ)。
| 合計所得金額(括弧内は収入が給与だけの場合の収入金額) | 改正後(令和8・9年分) | 改正前(令和8年分に適用されていた額) | 増える額 |
|---|---|---|---|
| 132万円以下(206万円以下) | 104万円 | 95万円 | 9万円 |
| 132万円超336万円以下(206万円超475万1,999円以下) | 104万円 | 88万円 | 16万円 |
| 336万円超489万円以下(475万1,999円超665万5,556円以下) | 104万円 | 68万円 | 36万円 |
| 489万円超655万円以下(665万5,556円超850万円以下) | 67万円 | 63万円 | 4万円 |
| 655万円超2,350万円以下(850万円超2,545万円以下) | 62万円 | 58万円 | 4万円 |
- 括弧内の収入金額は、改正後の給与所得控除に基づく目安です。特定支出控除(仕事のための特定の支出を差し引ける制度)や所得金額調整控除の適用がある人は、表の金額と異なります。
- 合計所得金額が2,350万円を超える場合の基礎控除額に改正はありません。
- 104万円や67万円の「加算」部分は令和8年分・令和9年分だけの扱いです。令和10年分以後は、合計所得132万円以下が99万円、それを超えると62万円になります(同ページの表)。
- 加算は居住者にだけ適用されます。1年を通じて非居住者の人の基礎控除は62万円です(国税庁Q&A Q6-4)。
2. 給与所得控除の最低保障額が65万円から74万円へ
給与所得控除(給与収入から差し引ける、経費に相当する控除)の最低保障額が、65万円から74万円に上がりました。令和8年分・令和9年分の扱いです。国税庁の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」(令和8年分)は、この改正に加え、給与の収入金額が69万1,000円以上220万円未満の場合の特例(令和8・9年分)を織り込んだ表になっています。電卓や旧版の表で計算せず、令和8年分の表(「年末調整のしかた」47〜54ページ)を使うのが原則です。
あわせて、配偶者や特定親族に給与収入がある場合、その人の合計所得金額は改正後の給与所得控除額で計算します(国税庁Q&A Q2-3・Q2-4)。従業員が配偶者・親族の所得を見積もるとき、昨年の感覚(65万円控除)で書いてしまうと控除区分を誤ります。
3. 扶養親族等の所得要件(58万円→62万円)
基礎控除の引上げに合わせ、扶養控除などの対象となる扶養親族等の所得要件が改正されました。括弧内は収入が給与だけの場合の収入金額です(「昨年と比べて変わった点」4ページ)。
| 区分 | 改正後の所得要件 | 改正前の所得要件 |
|---|---|---|
| 扶養親族・同一生計配偶者・ひとり親の生計を一にする子 | 62万円以下(収入136万円以下) | 58万円以下(収入123万円以下) |
| 特定親族(19〜22歳の親族) | 62万円超123万円以下(収入136万円超197万円以下) | 58万円超123万円以下(収入123万円超188万円以下) |
| 配偶者特別控除の対象となる配偶者 | 62万円超133万円以下(収入136万円超207万円以下) | 58万円超133万円以下(収入123万円超201万5,999円以下) |
| 勤労学生 | 89万円以下(収入163万円以下) | 85万円以下(収入150万円以下) |
たとえば、給与収入だけで年130万円の大学生(19〜22歳)の場合、給与所得は改正前なら130万円−65万円=65万円(58万円を超え、扶養親族に該当しない)、改正後なら130万円−74万円=56万円(62万円以下)で、特定扶養親族として扶養控除の対象になります。この例は本記事の計算で、国税庁の表の範囲(収入136万円以下)と整合します。特定扶養親族とは、控除対象扶養親族のうち19歳以上23歳未満(平成16年1月2日〜平成20年1月1日生まれ)の人をいい、合計所得が62万円を超え123万円以下の人は特定扶養親族ではなく「特定親族」(特定親族特別控除の対象)になります(「年末調整のしかた」11ページの注意事項)。
特定親族(合計所得金額が62万円超123万円以下の19〜22歳の親族)がいる場合の特定親族特別控除額は、その親族の合計所得金額に応じて次のとおりです(国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」56ページ)。
| 特定親族の合計所得金額(括弧内は収入が給与だけの場合の収入金額) | 控除額 |
|---|---|
| 62万円超85万円以下(136万円超159万円以下) | 63万円 |
| 85万円超90万円以下(159万円超164万円以下) | 61万円 |
| 90万円超95万円以下(164万円超169万円以下) | 51万円 |
| 95万円超100万円以下(169万円超174万円以下) | 41万円 |
| 100万円超105万円以下(174万円超179万円以下) | 31万円 |
| 105万円超110万円以下(179万円超184万円以下) | 21万円 |
| 110万円超115万円以下(184万円超189万円以下) | 11万円 |
| 115万円超120万円以下(189万円超194万円以下) | 6万円 |
| 120万円超123万円以下(194万円超197万円以下) | 3万円 |
特定支出控除の適用がある場合は、表の金額と異なります。
年収の壁(扶養に入れる収入の上限)の全体像は年収の壁2026年最新|税の壁は136万円・178万円で解説しています。
4. 23歳未満の扶養親族がいる場合の生命保険料控除の特例
年齢23歳未満(平成16年1月2日以後生まれ)の扶養親族がいる場合、令和8年分・令和9年分の新生命保険料に係る一般生命保険料控除は、次の計算式で求めます(国税庁「年末調整のしかた」24ページ・「昨年と比べて変わった点」4ページ)。
| 年間の新生命保険料 | 控除額(特例あり) |
|---|---|
| 30,000円以下 | 全額 |
| 30,000円超60,000円以下 | 保険料×1/2+15,000円 |
| 60,000円超120,000円以下 | 保険料×1/4+30,000円 |
| 120,000円超 | 一律60,000円 |
また、旧生命保険料と、この特例の適用がある新生命保険料の両方について控除を受ける場合の一般生命保険料控除の限度額は6万円(改正前4万円)です。ただし、一般・介護医療・個人年金の3つを合わせた限度額は昨年と同じ12万円で、変わりません。
国税庁の計算式から当編集部が計算した、年間の新生命保険料別の一般生命保険料控除額は次のとおりです。
| 年間の新生命保険料 | 従来の計算式 | 23歳未満の扶養親族がいる場合 |
|---|---|---|
| 20,000円 | 20,000円 | 20,000円 |
| 30,000円 | 25,000円 | 30,000円 |
| 40,000円 | 30,000円 | 35,000円 |
| 60,000円 | 35,000円 | 45,000円 |
| 80,000円 | 40,000円 | 50,000円 |
| 120,000円 | 40,000円 | 60,000円 |
特例の対象は新生命保険料の一般生命保険料控除だけです。介護医療保険料と個人年金保険料の計算式は変わりません。また、同じ世帯の夫婦の間に23歳未満の扶養親族である子が1人いる場合、夫婦の両方がこの特例を受けられます(「年末調整のしかた」22ページの注意事項7)。
5. 通勤手当の非課税限度額(令和8年4月1日以後)
通勤手当の非課税限度額は、令和8年度税制改正(令和8年政令第93号による所得税法施行令第20条の2の改正)でも変わりました。令和7年11月に行われた別の改正(令和7年4月1日以後分に遡って適用)とは別物で、今回の改正は令和8年4月1日以後に支払われるべき通勤手当に適用されます(国税庁「通勤手当の非課税限度額の改正について」令和8年4月)。
| 片道の通勤距離(自動車・自転車などを使う人) | 改正後(令和8年4月1日以後) | 改正前 |
|---|---|---|
| 55km以上65km未満 | 38,700円 | 38,700円 |
| 65km以上75km未満 | 45,700円 | 38,700円(55km以上一律) |
| 75km以上85km未満 | 52,700円 | 同上 |
| 85km以上95km未満 | 59,600円 | 同上 |
| 95km以上 | 66,400円 | 同上 |
55km未満の区分(2km以上10km未満4,200円〜45km以上55km未満32,300円)は、令和8年の改正では変わりません。電車・バス等の定期代は従来どおり1か月15万円が上限です。
もう1つの変更は駐車場等の料金です。自動車などを使い、一定の要件を満たす駐車場等の料金を負担することを常例とする人(片道2km未満の人を除く)は、通勤距離に応じた非課税限度額に、1か月当たりの駐車場等の料金相当額(上限5,000円)を加えた額まで非課税になります。要件を満たす駐車場等とは、勤務場所の周辺、または通勤で利用する駅・停留所などの周辺にある駐車施設で、自転車やバイクの駐輪場も含みます。自宅付近の駐車場等は対象外です(国税庁Q&A Q2-1〜Q2-4)。国税庁の設例では、片道50km・駐車場料金月8,000円の人に32,300円+8,000円=40,300円を支給した場合、非課税限度額は32,300円+5,000円=37,300円となり、超えた3,000円が課税になります(Q3-1ケースA)。
所得税法施行令第20条の2の令和8年3月31日時点の条文は「ト 片道55km以上 3万8,700円」までで、現行の条文には「チ 65km以上75km未満 4万5,700円」から「ル 95km以上 6万6,400円」と、駐車場等に関する第三号・第六号が加わっています(e-Gov 所得税法施行令第20条の2、–asof 2026-03-31 との比較)。附則第4条により、新しい規定は施行日(令和8年4月1日)以後に受けるべき手当に適用され、施行日前に受けるべき手当(その差額の追給を含む)は従前の例によります。令和7年の改正のような遡及適用ではありません。
なお、食事の現物支給の非課税限度額も、令和8年4月1日以後に支給する食事から月額7,500円(改正前3,500円)に上がっています(国税庁「食事の現物支給に係る所得税の非課税限度額の引上げについて」)。年末調整の計算には直接関係しませんが、ソフト設定の確認時に見ておくと漏れを防げます。
変わらないもの(誤って適用しやすい点)
- ひとり親控除の引上げ(35万円→38万円)は令和9年分以後です。令和8年分の年末調整には影響しません(国税庁Q&A Q3-2)。
- 給与所得の源泉徴収票の様式は、令和8年度税制改正による改正はありません(Q3-3)。ただし国税システムの更改により、令和8年8月以降は全ての法定調書の様式が変わっています。書面で提出する場合は最新の様式を使います。2027年1月に提出する源泉徴収票・法定調書の変更点(みなし提出・30枚基準など)は令和8年分 法定調書の変更点で整理しています。
11月までの源泉徴収は変わらない|12月の年末調整で精算する仕組み
国税庁の説明を実務の流れに直すと、次のようになります。
- 11月支給分まで: 改正前の源泉徴収税額表で、これまでどおり天引きします。扶養親族等の数にも、改正で新たに対象になった親族は含めません(国税庁Q&A Q2-1の注)。
- 12月の年末調整: 改正後の基礎控除額と令和8年分の「給与所得控除後の給与等の金額の表」で1年分の税額(年調年税額)を計算し、改正前の税額表で天引きした合計額と比べます。
- 差額の精算: 天引き額が多ければ還付、少なければ追加徴収です。控除が増える改正のため、他の条件が同じなら年税額は減り、還付が出やすくなる、または不足額が小さくなります(確度は高いが、個人ごとの結果は計算するまで分かりません)。
還付額(過納額)は、年末調整を行った月分(通常12月分)として納める源泉所得税から差し引いて本人に返します。納付する税額がゼロでも、所得税徴収高計算書(納付書)は所轄税務署に提出します。12月分の納付額で還付しきれない場合は、その後に納付する源泉所得税から順次差し引きます(国税庁「年末調整のしかた」39〜42ページ)。還付することとなった日の翌月から2か月を過ぎても還付しきれないと見込まれる場合は、「年末調整過納額還付請求書兼残存過納額明細書」を税務署に提出する方法もあります(国税庁Q&A Q3-1)。
従業員から回収する書類と確認ポイント
| 書類 | 今年の確認ポイント |
|---|---|
| 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 | 令和8年12月1日の改正で新たに対象になった親族(収入が123万円超136万円以下の扶養親族など)がいる従業員は、「異動月日及び事由」欄に「令和8年12月1日 改正」などと書いて提出する。年末調整を行う時までに出ればよい |
| 基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書 | 基礎控除額は改正後の金額で記載されているか。配偶者・特定親族の所得は改正後の給与所得控除で計算されているか |
| 給与所得者の保険料控除申告書 | 23歳未満の扶養親族の有無を確認し、新生命保険料の計算式を切り替える。扶養親族が23歳未満(平成16年1月2日以後生まれ)か生年月日で確かめる |
| 通勤手当の支給状況(社内データ) | 片道65km以上の通勤者、駐車場料金を負担している通勤者を洗い出す |
国税庁は、令和8年12月1日以後に適用される改正を反映した年末調整関係書類を、12月1日より前から提出してもらってよいとしています。12月1日から回収を始めたのでは年末調整に間に合わない場合を想定した扱いです(Q&A Q1-2)。なお、令和8年分の扶養控除等申告書は、様式の裏面の注意事項が改正前の内容になっている場合があるため、従業員への案内文は最新の内容で作り直すのが安全です(同Q2-1の注)。
再計算・システム設定のチェックリスト
年末調整の前に、次の点を確認します。国税庁の「令和8年分 年末調整チェック表」の項目に、今年の改正に関する点を加えたものです。
- 給与計算・年末調整ソフトが令和8年分に更新されているか(基礎控除、給与所得控除後の給与等の金額の表、扶養親族等の所得要件、23歳未満の生命保険料控除の特例)
- 控除対象扶養親族と、障害者控除の対象になる同一生計配偶者の合計所得金額の判定が62万円以下になっているか
- 特定扶養親族(扶養控除の対象)と特定親族(特定親族特別控除の対象)の判定が正しいか
- 基礎控除額が合計所得金額に応じて正しいか(昨年分と金額が異なります)
- 課税給与所得金額は1,000円未満を切り捨て、年調年税額は復興特別所得税を含めて(102.1%)100円未満を切り捨てているか
- 納付する税額がなくても納付書を作成しているか
スケジュールの目安
法令や国税庁が示している日付と、社内運用の目安を分けて整理します。
| 時期 | 作業 | 区分 |
|---|---|---|
| 10月〜11月上旬 | 給与・年末調整ソフトの令和8年分更新を確認。新様式の申告書を配布 | 社内の目安(12月1日前の提出は国税庁が容認) |
| 11月中 | 申告書の回収。社内の提出締切を設定 | 社内の目安(法定期限は年内最後の給与を受ける日の前日まで) |
| 11月30日まで | 旧制度のまま天引き。新たに対象になる親族は税額表の人数に含めない | 国税庁Q&A Q2-1 |
| 12月1日以後 | 新たに対象になる親族の扶養控除等(異動)申告書の提出を受ける | 国税庁Q&A Q2-1 |
| 12月の最後の給与の支払時 | 年末調整の計算・過不足の精算 | 所得税法第190条 |
| 令和9年1月12日(火)が原則 | 12月分の源泉所得税の納付 | 下記の注 |
| 令和9年1月20日(水) | 納期の特例(給与の支給人員が常時10人未満の事業者が、半年分をまとめて納める特例)を受けている場合の7〜12月分の納付 | 国税庁タックスアンサーNo.2505 |
| 令和9年2月1日(月) | 税務署に提出する法定調書の提出期限。給与所得の源泉徴収票は、市区町村へ給与支払報告書を提出していれば税務署への提出は不要(みなし提出) | 国税庁「法定調書の作成と提出の手引」令和8年分 |
原則の納付期限は給与を支払った月の翌月10日です(No.2505)。令和9年1月10日は日曜日で、期限が休日に当たるときは翌日が期限とみなされ(国税通則法第10条第2項)、翌11日も成人の日(1月の第2月曜日。国民の祝日に関する法律第2条)で休日のため、1月12日(火)になると考えられます。これは条文から当編集部が導いた日付で、国税庁の案内に同じ日付を示した資料は確認できていません。納付書の記載や国税庁の案内で最終確認してください。
保険料控除の証明書類は、交付を請求中などで確認できない場合でも翌年1月末日までに提出または提示することを条件として、控除をしたうえで年末調整を行ってよいとされています(「年末調整のしかた」22ページ)。
よくあるミス・落とし穴
- 11月分の給与から基礎控除の引上げを反映してしまう。改正は12月1日施行で、11月までの源泉徴収事務は変わりません。先取りすると天引き額が合わなくなります。
- 年内最後の給与を11月30日以前に支払った人に、改正後の控除を使ってしまう。年末調整は年内最後の給与を支払う時に行うため、11月30日以前に最後の給与を支払った人(死亡退職、海外転勤で非居住者になった人など)の年末調整には改正後の控除が適用されません。本人が改正後の控除を受けるには確定申告が必要です(国税庁Q&A Q1-3・Q7-1)。年の中途で退職し、年末調整を受けていない人も同様です。
- 昨年の給与所得控除(65万円)で配偶者・親族の所得を見積もった申告書をそのまま通す。令和8年分は74万円で計算するため、控除区分が変わる人がいます。
- 特定扶養親族と特定親族を取り違える。扶養控除等申告書に「特定親族」と書かれている人を、控除対象扶養親族として扶養控除してはいけません(「年末調整のしかた」11ページの注意事項)。
- 23歳未満の特例を、介護医療保険料や個人年金保険料、旧生命保険料にも使う。対象は新生命保険料の一般生命保険料控除です。3区分の合計の上限12万円も変わりません。夫婦のうち片方にしか適用しない誤りもあります。
- ひとり親控除を38万円で計算する。令和9年分以後の改正で、令和8年分は従来の額です。
- 通勤手当の2つの改正を混同する。令和7年の改正(令和7年4月1日以後分に遡及)は令和7年分の年末調整で扱った話で、令和8年の改正は4月1日以後に支払われるべき手当に適用されます。駐車場料金は、自宅付近の駐車場だと非課税になりません。
令和9年分に向けて
年末調整が終わると、令和9年分の源泉徴収事務が始まります。令和9年1月1日以後に支払う給与には、基礎控除などの改正に伴って改正された令和9年分の源泉徴収税額表を使います(国税庁は令和8年8月31日付で公表)。あわせて、令和9年分の給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は、毎年最初に給与の支払を受ける日の前日までに提出してもらいます(「年末調整のしかた」44ページ)。
令和9年1月1日からは防衛特別所得税(源泉徴収する所得税額の1%)が始まりますが、復興特別所得税が2.1%から1.1%に下がるため合計の率は2.1%のまま変わらず、源泉徴収税額の計算方法に変更は生じません(同44ページ)。詳しくは防衛特別所得税の源泉徴収2027|合計税率は2.1%のままで整理しています。
また、令和9年1月1日以降に市区町村へ給与支払報告書を提出した場合は、税務署に給与所得の源泉徴収票を提出したものとみなされ(源泉徴収票のみなし提出の特例)、令和8年分以降は税務署提出用の源泉徴収票を作成・提出する必要がなくなります(国税庁「法定調書の作成と提出の手引」令和8年分・第1章)。従業員への交付は引き続き必要です。法定調書のe-Tax等による提出義務の基準も、前々年に提出すべきだった枚数が「100枚以上」から「30枚以上」に引き下げられています(同手引)。
FAQ
Q1. 11月の給与から、引き上がった基礎控除を反映して天引きしてよいですか?
A. 反映しません。改正の施行は令和8年12月1日で、令和8年11月までの給与の源泉徴収事務に変更は生じません。12月の年末調整で、改正後の基礎控除額と令和8年分の「給与所得控除後の給与等の金額の表」を使って1年分の税額を計算し、改正前の税額表で天引きした合計額との精算を行います(国税庁Q&A Q1-1)。
Q2. 年末調整の書類は、12月1日より前に集めてもよいですか?
A. 差し支えありません。12月1日以後に適用される改正を反映した書類を、同日前から提出してもらってよいと国税庁は示しています。12月1日から回収を始めると年末調整に間に合わない事態を想定した扱いです(Q&A Q1-2)。
Q3. 12月より前に退職する従業員は、新しい基礎控除になりますか?
A. 年末調整を令和8年11月30日以前に行った人は、改正後の基礎控除などが適用されません。そのため、本人が確定申告をして改正後の控除を受けることになります。給与の源泉徴収税額が0円の場合は、確定申告をしても還付される税金はありません(Q&A Q1-3・Q7-1)。
Q4. 23歳未満の子が2人いると、生命保険料控除はさらに増えますか?
A. 国税庁の資料は、23歳未満の扶養親族を有するかどうかで計算式が切り替わる書き方で、人数に応じた加算の記載は確認できていません。上限も一般生命保険料控除が6万円、3区分の合計が12万円のままです。同じ世帯の夫婦の両方が、それぞれ特例を受けられる点は確認できます(「年末調整のしかた」22ページ)。
Q5. 通勤手当を旧限度額で課税計算していた場合は、年末調整で直しますか?
A. 令和8年の改正については、国税庁の令和8年4月のQ&A(12問)に、年末調整での精算手順を扱う設問は含まれていません。令和7年11月の改正では、国税庁が、既に旧限度額で支給した分について遡って税額を再計算する必要はなく、その年の年末調整の際に新しい限度額を適用した場合に過納付となる税額を精算する、と案内しました(令和7年11月Q&A Q10)。令和8年4月1日以後の手当に旧限度額を当てはめた月がある場合も、同じ考え方で年末調整の際に非課税として扱い直すのが自然ですが、国税庁が令和8年の改正でこの手順を明示した資料は確認できていません。該当者がいる場合は所轄税務署に確認してください。
まとめ
令和8年分の年末調整は、基礎控除(最大104万円)、給与所得控除の最低保障額(74万円)、扶養親族等の所得要件(62万円)、23歳未満の扶養親族がいる場合の生命保険料控除の特例の4点が変わります。改正の施行は12月1日で、11月までの源泉徴収は旧制度のまま、12月の年末調整でまとめて精算するのが最大のポイントです。
担当者の準備は、(1)ソフトを令和8年分に更新する、(2)新たに対象になる親族の申告書を回収する、(3)配偶者・親族の所得見積りが改正後の給与所得控除(74万円)で書かれているか確認する、(4)11月30日以前に年末調整を終える退職者に確定申告が必要なことを案内する、の4つです。通勤手当は令和8年4月1日以後の別の改正があり、65km以上の通勤者と駐車場料金の負担者を確認してください。
対象者の範囲は年末調整はいくらから必要?2026年分の対象・対象外の解説、改正の全体像は税制改正2026年|年収の壁178万円・基礎控除引上げと給与計算の変更点で確認できます。
出典(いずれも2026年10月15日に取得):
- 国税庁「年末調整がよくわかるページ(令和8年分)」 https://www.nta.go.jp/users/gensen/nencho/index.htm
- 国税庁「昨年と比べて変わった点」 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/nencho2026/pdf/102.pdf
- 国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/nencho2026/01.htm
- 国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」 https://www.nta.go.jp/users/gensen/2026kiso/pdf/0026005-024.pdf
- 国税庁「通勤手当の非課税限度額の改正について」(令和8年4月) https://www.nta.go.jp/users/gensen/2026tsukin/index.htm
- 国税庁「通勤手当の非課税限度額の改正に関するQ&A」(令和8年4月) https://www.nta.go.jp/users/gensen/2026tsukin/pdf/01.pdf
- 国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げに関するQ&A」(令和7年11月) https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025tsukin/pdf/03.pdf
- 国税庁「令和8年分 年末調整チェック表」 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/nencho2026/pdf/206.pdf
- 国税庁タックスアンサーNo.2505 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2505.htm
- 国税庁「令和8年分 法定調書の作成と提出の手引」第1章 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hotei/tebiki2026/PDF/01.pdf
- 所得税法施行令第20条の2・附則(令和8年政令第93号) e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000096



